日本ユネスコ国内委員会科学小委員会(第6回) 議事録

1.日時

令和4年9月1日(木曜日)13時30分~15時30分

2.場所

オンライン開催

3.出席者

(委員)
日比谷委員長、道田委員長代理、大谷委員、沖委員、小池委員、鈴木委員、野村委員、林委員、藤田委員、渡邉委員

(事務局)
岡村事務総長(文部科学省国際統括官)、加藤副事務総長(同省国際統括官付国際交渉分析官)、白井事務局次長(同省国際統括官付国際戦略企画官)、堀尾事務総長補佐(同省国際統括官付国際統括官補佐)、その他関係官

4.議事録

【日比谷委員長】  皆様、本日はお忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。まず事務局から定足数の確認をお願いいたします。
【堀尾国際統括官補佐】  出席の委員が現在10名で、委員の過半数、定足数を満たしております。
 本日、一般からの傍聴については、YouTube配信にて御覧いただいております。また、報道関係者の取材を受け付けておりまして、時事通信社の方から取材申込みがございましたので、あらかじめお知らせいたします。
 また、今回の議題に関係の深い省庁や機関の方々も傍聴される予定です。
 以上でございます。
【日比谷委員長】  それでは、ただいまから第6回科学小委員会を開催いたします。
 私は、本日の議事進行をいたします、委員長の日比谷でございます。
 議事に先立ちまして、事務局から、今年の4月以降の事務局の交代について御報告をお願いいたします。
【堀尾国際統括官補佐】  事務局の異動についてお知らせいたします。
 本年4月1日より、文部科学省国際統括官、日本ユネスコ国内委員会事務総長として岡村直子が、また国際戦略企画官、日本ユネスコ国内委員会事務局次長として白井俊が、ユネスコ第三係長として氏師大貴、そして5月1日より、国際交渉分析官、日本ユネスコ国内委員会副事務総長として加藤敬が着任いたしております。
 また、私、国際統括官補佐の堀尾多香も今年度より科学の担当になりましたので、よろしくお願いいたします。
 以上です。
【日比谷委員長】  ありがとうございました。皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、岡村国際統括官から一言御挨拶をお願いします。
【岡村国際統括官】  御紹介いただきました岡村でございます。本日4月に着任しております。どうぞよろしくお願いいたします。本日の会議の開催に当たりまして一言御挨拶を申し上げます。
 委員の皆様におかれましては、御多忙の中、本日も委員会に御参加いただき、誠にありがとうございます。日頃より大変な御協力を頂いておりますこと、心より御礼申し上げます。本日も引き続き、この委員会につきまして、積極的な御意見、建設的な御意見を賜れればと思います。よろしくお願いいたします。
 まず、本日は初めに、日本ユネスコ国内委員会の科学分野における活動について、各部門より御報告をさせていただきます。前回の第41回ユネスコ総会でMAB(Man and the Biosphere:人間と生物圏)の計画国際調整理事会の理事国に復帰いたしましたので、今年は、科学小委員会の下に分科会が設置されているIOC(Intergovernmental Oceanographic Commission:政府間海洋学委員会)、IHP(Intergovermental Hydrological Programme:政府間水文学計画)、MAB計画の各事業の理事会に、各分科会主査の皆様の下、御対応いたしました。各分科会及び理事会での議論を踏まえながら、それぞれの事業における最新の国際的な動向や国内外での取組状況、今後の推進などについて御意見を頂戴できますと幸いに存じます。
 さて、本日、もう一つ重要な御議論を頂きたいと存じております。現在、新型コロナウイルスの感染症でありますとか、気候変動、経済格差等々、様々な地球規模の課題が生じております。また、皆様、もう御案内のように、ロシアのウクライナ侵略に見られますような権威主義の台頭などもございまして、これまでの国際社会が大切にしてきた価値観が揺らぎつつあるという状況かと存じます。こうした状況におきまして、改めて民主主義や基本的人権、多様性の尊重、地球環境の保存といった普遍的価値を全ての国や人々が共有するとともに、一人一人が、また全ての国がこうした様々な課題を自分事として考えて行動していくということが求められていると考えます。こういう認識の下で、本日の議題2では、これからの時代におけるユネスコ科学分野の推進についてとして、意見交換の時間を設けさせていただいております。
 皆様におかれましては、ユネスコの理念を推進していくために、本小委員会としてどのような役割を果たすことができるか、大所高所からの御意見を賜れますと幸いです。この時代に求められるユネスコの科学の推進につきまして、各地域でユネスコの活動を推進していただいているユネスコ協会の皆様の御知見もお借りしながら、幅広い視点で御議論いただきまして、私どもとしましても、頂戴しました御意見をしっかりと具体化していけるように尽力してまいりたいと考えております。
 さらなるユネスコ活動をしっかりと推進していきますために、委員の皆様方にはより一層の御支援と御協力を賜りますよう改めてお願いいたしまして、私の御挨拶とさせていただきます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
【日比谷委員長】  岡村統括官、ありがとうございました。
 それでは、本日の会議の配付資料について、事務局から説明をお願いいたします。
【堀尾国際統括官補佐】  本日の会議資料としまして、資料1と資料2、また附属資料として附属資料1-1から1-3、また附属資料2-1から2-5、そして参考資料として参考資料1から参考資料4をPDFで配付させていただいております。
 もし足りない資料等ございましたら、事務局まで御連絡いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
<議題1.昨今のユネスコ科学分野に係る動きについて(報告・意見交換)>
【日比谷委員長】  まず議題の1、昨今のユネスコ科学分野に係る動きについて、報告と意見交換を行います。
 まず、ユネスコ本部での主な動きの報告と、国内の取組について情報共有をいたします。また、前回の科学小委員会から今回までの期間にIOC分科会、IOC執行理事会、IHP分科会、IHP政府間理事会、MAB計画分科会及びMAB計画国際調整理事会が開催されておりますので、これらにつきましては、本日御出席の各分科会の主査からそれぞれ所感などを御報告いただければと存じます。
 それではまず、資料1-1に基づいて、事務局からの報告をお願いいたします。
【堀尾国際統括官補佐】  それでは、資料1、1ページ目からになります。まず、政府間海洋学委員会(IOC)の活動についてでございます。
 本年6月14日から17日にユネスコ本部(パリ)にて第55回IOC執行理事会が開催され、我が国からは道田豊IOC分科会主査ほか関係者が出席いたしました。
 その前にIOC分科会を開催しております。こちらについては、後ほど道田主査から詳細について御報告いただきますので、割愛させていただきます。
 続きまして、3ページの関係機関が対応いただいた会議についてでございます。第2回「持続可能な開発目標(SDG)14」の実施支援・国連会議が6月27日から7月1日にポルトガルのリスボンで開催されております。こちらは、日本からも三宅外務大臣政務官をはじめとする外務省、環境省、水産庁から成る政府代表団が参加し、日本の国内外での取組等を紹介したほか、我が国として引き続きSDG14の実現に向けて貢献していくことが表明されております。
 次に、第2回WMO-IOC合同協働評議会でございますが、こちらはIOCと世界気象機関(WMO:World Meteorological Organization)との関連活動のハイレベル調整メカニズムとして設置されたもので、日本からは気象庁長官がメンバーとして参画いたしております。こちらは3月1日から2日にオンラインで開催されています。
 次に、第38回GEBCO(General Bathymetric Chart of the Oceans:大洋水深総図)指導委員会でございますが、これは、大洋水深総図、全世界の海底地形図の作成を目的として、IOCとIHO(International Hydrographic Organization:国際水路機関)の共同プロジェクトとして始まったもので、こちらの指導委員会が4月20日から22日に開催されております。
 次のページに行きまして、国連の世界海洋評価についての第3版の報告書の作成に向けて、専門家グループ会合が開催されております。
 次に、「国連海洋科学の10年」の開始に伴う社会的成果ごとの活動への参加ということで、6月までの1年間にドイツ政府が主催し、七つの社会的成果ごとにサテライト活動がリモート形式により世界中で開催され、162のグループが参加しております。
 IOCに関しましては以上でございます。
【日比谷委員長】  ありがとうございました。
 それでは、IOC分科会道田主査から、分科会の議論、また執行理事会の議論について、補足や所感などをお願いいたします。
【道田委員長代理】  ありがとうございます。道田でございます。今、事務局から御説明いただいた内容のうち、IOCの分科会、これは6月に行われた執行理事会に先立って対処方針等を検討する会でございましたので、その内容は執行理事会の報告として代えさせていただきたいと思います。
 まず執行理事会ですけれども、3年ぶりの対面開催となりました。従前は日本からは大体10名近くの代表団を派遣していたのですけれども、今回はCOVID-19の関係で各国代表の人数制限がございまして、4人に絞り込んで参加したということでございます。なお、議事の模様については、配信が行われましたので、国内からも傍聴することができました。
 主な議題につきまして、簡単に御説明申し上げたいと思いますが、一つは、2021年に開始された「国連海洋科学の10年」、2030年までの間に七つの社会的目標の達成のために海洋科学に力を入れるということでございますが、ようやく本格的に始まりまして、その進捗状況について報告がなされて、今後の方向性について議論がなされて、決議が採択されています。基本的にはこれまでの方向性どおり進めていこうということでございました。
 そのほか注意すべき議題として一つ取り上げておきたいのが、国家管轄権内区域における海洋観測です。これは、各沿岸国の排他的経済水域(EEZ:Exclusive Economic Zone)の中での海洋観測をいかに充実させるのかということでございます。というのは、EEZの範囲を世界的に全部足し合わせると結構広うございまして、広い海洋のうちでもEEZの中での海洋観測がしっかりできないと、「国連海洋科学の10年」をはじめとする海洋科学あるいは海洋に関する社会問題の解決という目標達成がおぼつかないのではないかと、そういう問題意識の下で、国家管轄権内区域において、いかにその沿岸国の権限を守りつつ海洋観測を充実させるのかという議論が始まったということでございます。国連海洋法条約の247条に、国際機関が主導あるいは関係する海洋観測についてという項目があるのですけれども、それを具体的に進めるような方向で検討ができないかという頭出し的な議論が執行理事会においてなされたということでございます。御案内のとおり、各国の権限に関わる話ですので、簡単に結論が出るとは思いませんけれども、今後、議論の行方によっては、我が国の海洋観測及び海洋研究に大きな影響を及ぼし得る議題ですので、今後も注視しつつ、我が国として適切に対応する必要があるかなと思っております。
 それから、来年、第32回のIOC総会がありますけれども、現在の事務局長ウラジミール・リャビニン氏の任期が来年の12月で切れます。これに伴って、来年の総会の前日に行われる執行理事会において後任の事務局長の選考に関するプロセスが始まるということになっておりまして、事務局長の選出については、我々としても注意する必要がありますし、的確に対応していきたいと思っているところでございます。
 なお、今回の会議の冒頭、ウクライナ問題に関係して、30数か国を代表してアメリカの代表から、海洋関係の研究に関する悪影響も含めてロシアに対する批判演説が行われたところでございまして、IOCは基本的には科学、Oceanographic Commissionでございますけれども、関係する国際情勢と無縁ではいられないなというのが感想でございます。
 以上でございます。ありがとうございました。
【日比谷委員長】  道田委員、ありがとうございました。
 それでは、続いてIHPについて、これもまず事務局から、その後、主査に御報告いただきます。 
【堀尾国際統括官補佐】  ありがとうございます。資料1の5ページ目になります、政府間水文学計画(IHP)の動きでございます。こちらは、4月24日から30日、第25回IHP政府間理事会がユネスコ本部で開催され、沖大幹IHP分科会主査ほか関係者が出席いたしました。また、その前に4月13日にIHP分科会を開催し、対処方針等を議論しております。こちらについては、後ほど沖主査から御説明いただきますので、割愛させていただきます。
 次に移りまして、関係機関からの対応等でございます。第4回アジア・太平洋水サミットが4月23日から24日に熊本市で開催されました。我が国を含むアジア太平洋地域30か国の首脳級・閣僚級のほか、国内外からオンラインを含めて多くの国や地域の代表が参加し、「持続可能な発展のための水~実践と継承~」というテーマの下、議論が行われました。日本からは、岸田総理大臣より、気候変動対策等を軸とした水問題解決への日本の貢献策として「熊本水イニシアティブ」が発表された後、各国首脳の決意表明として「熊本宣言」が採択されております。
 次に、水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM:International Centre for Water Hazard and Risk Management under the auspices of UNESCO)、我が国に設置されておりますユネスコのカテゴリー2センターでございますけれども、こちらの運営理事会が6月21日にハイブリッド形式で開催され、本年度からの6年間で実施される土木研究所中長期計画に合わせて作成したICHARMプログラムと今後2年間の活動計画としてのWork Planについて審議が行われ、いずれも満場一致で採択されております。
 次に、京都大学を中心とする研究教育機関により設置されております「水・エネルギー・災害研究に関するユネスコチェア(WENDI:UNESCO Chair on Water, Energy and Disaster Management for Sustainable Development)」の取組について、こちらは、分野の垣根を越えた新たな学際的・系統的な水関連の大学院教育カリキュラムを確立し、人材を育成するとともに、社会や地域、行政機関と研究機関との橋渡しや国際的な連携の役割を担っていくことを狙いとしております。ユネスコエコパークを対象とするフィールド学習をカリキュラムに取り込み、MAB計画との連携等も図られているところです。2021年度は6名が修了し、修了証を授与して、2022年度は4月8日にガイダンスが実施されたところです。また、ユネスコチェアの事業継続のための書類をユネスコに提出しているところです。
 次、8ページに行きまして、モンゴルにおける持続可能な地下水マネジメントに関するユネスコチェア、こちらはモンゴル科学アカデミーと筑波大学が設立しているものでございます。こちらは、3月8日から11日に同位体を用いた水資源マネジメントに係る人材育成について意見交換を行い、また、IAEA(International Atomic Energy Agency:国際原子力機関)からの要請により、トレーサー水文学に関するオンライン講義コンテンツを作成し、関係国に共有されております。
 以上でございます。
【日比谷委員長】  ありがとうございました。
 それでは、IHP分科会主査の沖委員、お願いいたします。
【沖委員】  沖でございます。まず、世界的な水分野に関するユネスコを中心とした動きといたしましては、3月に第9回世界水フォーラムがセネガルのダカールで開催されました。それを受けて、先ほど御紹介のありました4月の熊本でのアジア・太平洋水サミットが開催されて、その後にIHP政府間理事会が開催されました。その後は、来年の2月にICHARMがホストとなって第9回国際洪水管理会議が開催され、それらの成果を基に、来年3月に国連水会議がニューヨークの国連本部で開催されます。3月22日「世界水の日」を皮切りに3日間の予定で開催されまして、その国連の水会議は1977年にマル・デル・プラタで開催されて以来46年ぶりということで、国連組織を挙げて、この国連水会議に向けて有用な貢献をしようということで頑張っています。ユネスコも非常に力を入れて準備をしていまして、例えばSDG6の進捗とそこに対するサイエンスの貢献というところに焦点を絞った報告書を、来年3月に向けて仕上げようという国際チームをつくりまして、準備をしているということになります。
 IHPの中で少し注目していただきたいのは、資料の6ページにございますテーマ別作業部会というものがございまして、戦略計画優先領域テーマ五つ、それから分野横断的なテーマ三つ、合わせて八つのテーマに分かれて、IHPの戦略に関して議論しようということになっていまして、その一つぐらいには日本から知恵を出した方がいいだろうということで、ICHARMの小池センター長に議長をお引き受けいただき、これら八つの分科会に日本のIHPの委員の先生方がそれぞれアサイン、手を挙げてくださいまして、議論があるときには参加して、日本から適宜インプットし、また日本の中で情報を共有することになっている状況です。見ていただきますと分かるとおり、科学的研究とイノベーション、それから第四次産業革命における水教育、それからデータと知識のギャップの橋渡し、それから変動している環境下における統合的水資源管理、IHPの次のフェーズの一つのコアですけれども、あとは水ガバナンス、そして水-食料-エネルギーのNexus(連環)と、地下水、そして生態水文学と水質といった感じになっております。
 ユネスコIHPと国際水文科学会(IAHS:International Association of Hydrological Sciences)が非常に密に科学的な面で協働しているのですが、若干、私がこの主査を仰せつかってから観察していまして心もとなく思っておりますのは、せっかくユネスコを通しているので、国際的な学術的な動きと日本の学術界がつながればいいと思います。先ほど御紹介いただきましたような関係機関対応会議というのがかなり日本独自の動きになっていて、地域には貢献しているのですけれども、世界の学術をできればリードするような旗を振って、こういうことをやろうと提案する必要があると思います。少なくともそのコミュニティーに入る必要があるのですが、例えばIAHSがこの夏に、世界の洪水に関してネイチャーに論文を発表しました。ここには30人~40人ぐらいの著者がいるのですが、日本からの著者は一人もいないという状況を見まして、これはまずいなということで、せっかくユネスコIHP活動を文部科学省の後押しで頑張っていますので、粛々と業務を行うだけではなく、そういう学術的なところでもより貢献していけるように、今後、活動を活発化させていければなと思っております。
 以上です。
【日比谷委員長】  ありがとうございました。
 続きまして、MAB計画に移りますが、同じ順番で、まず事務局から、そして主査へと行きますので、お願いいたします。
【堀尾国際統括官補佐】  ありがとうございます。資料は9ページになります。人間と生物圏(MAB)計画についてでございます。
 昨年の第41回ユネスコ総会において、日本はMAB計画国際調整理事会の理事国に復帰いたしまして、3年ぶりに理事国として出席いたしました。6月17日から23日にハイブリッドで開催され、渡邉綱男MAB計画分科会主査ほか、関係者が出席しております。
 これに先立ちまして、5月24日にMAB計画分科会が開催されております。こちらについても、渡邉主査から後ほど御説明いただきますので、割愛させていただきます。
 そのほか、次の10ページに移りまして、国内委員会の対応した事業といたしまして、ユネスコ未来共創プラットフォーム事業、こちらは、ユネスコの分野横断的な取組を推進していくということで、委託事業として実施しているものでございます。その事業のうちの一つとして、国際的な動向を踏まえたユネスコエコパークの管理運営を推進していくために、国内のユネスコエコパークの実務者向けのワークショップの企画と開催を日本自然保護協会に委託し、10年に一度、各ユネスコエコパークから報告することになっている定期報告に関する情報交換や国内外の事例についての共有を図っております。今年度のワークショップの計画は、こちらに書いてあるとおり、8回を予定しております。
 そのほか、こども霞が関見学デーを8月3日と4日の2日間にわたり、文部科学省を含めた関係省庁で実施しており、文部科学省では、日本ユネスコエコパークから、各エコパークでこういった題材を持ち寄って、「ユネスコエコパークを楽しもう」と題したプログラムを実施しております。
 関係機関による会議等といたしまして、日本ユネスコエコパークネットワーク大会が7月26日に、日本ユネスコエコパークネットワーク(JBRN:Japanese Biosphere Reserves Network)の事務局である只見ユネスコエコパークで開催され、こちらの関係の自治体担当者が参加し、ユネスコエコパークによる取組の発表や、今後の事業報告や事業計画について議論が行われております。
 次のページに行きまして、信州大学教育学部において構成されている「信州ESDコンソーシアム成果発表会&交流会」が2月5日に開催され、こちらにユネスコスクールを含む23校の児童生徒と教員が参加し、ESDの学習成果について発表と交流を行っております。こちらにはユネスコエコパークの8か所からも参加いただき、ユネスコエコパークにおける地域資源を活用した学習成果が発表されております。その成果については、こちらに掲載されているURLに紹介されておりますので、お時間がありましたら御参照ください。
 また、日本MAB計画連携大学間ネットワークが、金沢大学を中心として、横浜国立大学、愛媛大学、筑波大学、京都大学及び宮崎大学によって設立され、日本各地のユネスコエコパークと大学との連携が進められております。このネットワークの設立を記念し、7月16日にキックオフシンポジウムが開催されております。
 次に、横浜国立大学がユネスコに申請しておりました「生物圏保存地域を活用した持続可能な社会のための教育ユネスコチェア」が、3月に承認され、4月から本格的に開始されました。今後、生物圏保存地域及びその隣接した都市地域との間の相互利益関係の調査研究や、パイロット教育プログラムとしての「MAB/SDGs国際プロジェクトベースラーニング研修コース」などが予定されております。
 以上でございます。
【日比谷委員長】  ありがとうございます。
 続きまして、MAB計画分科会渡邉主査、お願いいたします。
【渡邉委員】  ありがとうございます。渡邉です。事務局から御紹介いただいたとおり、3年ぶりにMAB計画国際調整理事会に日本からも参加いたしました。その中身を少し御紹介したいと思います。
 この理事会の中で、重要な議題の一つとして、新しいBiosphere Reserves、略してBR、生物圏保存地域、日本国内ではユネスコエコパークと呼んでおりますが、そのBRの新しい登録と拡張の審査があります。
 今回の理事会の中で、11のサイトが新規にBRとして報告されて、二つのサイトで拡張が認められました。国としてチャドとジョージアとザンビア、この3か国が新たにBRを持つことになり、トータル、BRを持つ国の数が134か国、そして世界全体で738のサイト、国境をまたがるサイトが22になりました。
 また、理事会でいろいろな議論がありましたけれども、ユースの関係で、各国あるいはアジア地域とかヨーロッパ地域とか、地域ごとにいろいろなレベルでユースの活動が活発化してきていますけれども、それをより戦略的にユースの参画をMAB計画の中にどう組み込んでいくかが大事だという議論も行われて、そういったユースのネットワークを今後どうしていくかということを議論するワーキンググループというものが設置されて、日本も今後それに参加していくことになっています。
 それからもう一つ、このMABの関係で、およそ10年に1回、世界BR会議、世界生物圏保存地域会議というものが行われます。2025年が次の回になりまして、中国がホストをするという表明をして、世界各国がそれを支持して、中国での開催が決まり、アジアでは初めての開催になります。およそ10年に1回開催して、その10年の行動計画を策定していくというのが大事な中身になっております。
 それからもう一つ、御紹介があります。ウクライナには八つBRのサイトがあります。今回のロシアのウクライナへの侵攻によって、そのうち三つのBR内の環境が破壊されているということで、ウクライナへの攻撃をやめるよう求める共同声明が欧州を中心に42の国で、日本も参加して、会議直前にまとめられて、事務局に報告をするということをスロバキアが代表して表明して、ロシアが反論するといった議論が理事会の中で起こりました。
 それからもう一つ、この理事会開催に当たって、各国がナショナルレポートを提出することが求められています。日本から提出する内容について、MABの計画分科会でも議論して、日本国のナショナルレポートをまとめて提出しています。日本の特徴を世界に伝えていこうということで、日本の特徴として、10のBR、ユネスコエコパークのサイトがあって、そのサイトが自発的に国内のネットワークを立ち上げて、積極的な活動をしているということをレポートに盛り込んでいます。その中で、それを後押しする取組として、事務局から紹介のあったユネスコ未来共創プラットフォーム事業を活用して、MABの国内外の情報共有とか、学び合いの活動をしていること、あるいは民間との連携ということで、日本ユネスコエコパークネットワークが公益財団法人イオン環境財団と連携協定を結んで、民間の力も加えて活動を展開しているということもナショナルレポートに盛り込んでいるところです。
 最後にもう一つ、今後の動きですけれども、日本のBR、ユネスコエコパークが1984年に4か所、最初の登録が行われて、2012年に宮崎県の綾が久しぶりに地域の協力を受けて、それ以来、各地の新規登録が続いて、10か所まで増えているということになります。綾が2012年登録ということで、今年で10年目になります。このBRの仕組みは、10年たつと、10年間の状況の変化とか新しい取組を定期報告という形でユネスコに提出して審査を受けるという仕組みになっていまして、今まさに綾からその定期報告をユネスコに提出する準備をしているという状況です。
 以上、私から補足として御説明いたしました。ありがとうございます。
【日比谷委員長】  渡邉委員、ありがとうございました。
 それでは最後に、その他の事業について事務局から御報告をお願いいたします。
【堀尾国際統括官補佐】  ありがとうございます。資料は14ページになります。ユネスコ世界ジオパークというのが科学事業としてございまして、こちらは、ユネスコ世界ジオパークの新規申請について、現在、白山手取川ジオパークの申請書をユネスコに提出しております。ユネスコ世界ジオパークは、ユネスコによる現地審査を経て、その後に開催される世界ジオパークカウンシルで審議され、翌年のユネスコ執行委員会にかけられて登録の可否が正式に決定されるのですけれども、このコロナの影響で現地審査が少し延びておりまして、こちらはまだ審査中という形になっております。現地審査が順次再開されておりますので、今年中には何とか現地審査が来るのではないかと期待しているところです。
 次に、ユネスコ世界ジオパークの再認定審査につきまして、こちらは認定後も4年に一度、再認定審査を受けることになっております。令和3年度は、糸魚川、隠岐、島原半島と伊豆半島の4地域、そして令和4年度は、阿蘇と山陰海岸の2地域が再認定の審査対象となっております。こちらも、昨年から現地審査がコロナの影響で止まっている関係なのですけれども、今年中に順次実施される見込みであるという連絡が事務局から来ておりますので、順次対応していく予定になっております。
 そのほか、こども霞が関見学デーで、先ほどユネスコエコパークのところでも紹介いたしましたが、ジオパークでも日本ジオパークネットワークから「ジオパークに行ってみよう!」と題したプログラムにて、全国のジオパークから持ち寄られた岩石標本の展示や石琴の体験等が行われました。
 そのほか、オープンサイエンスに関する勧告が、昨年のユネスコ総会で採択されましたが、それを受けて、各国の現状について情報交換するためのテーマ別の作業部会が開催されております。こちらはオンラインで開催されておりまして、日本からも関係省庁のほかに、NISTEP(National Institute of Science and Technology Policy:科学技術・学術政策研究所)、NII(National Institute of Informatics:国立情報学研究所)の専門家等に参加いただいております。
 次に、「AIの倫理に関する勧告」でございますが、こちらも昨年のユネスコ総会で採択されております。我が国は、外務省の日本信託基金を通じて、勧告の効果的な実施を念頭に、アフリカ、小島嶼開発途上国を対象とした途上国支援を実施しているところです。
 以上でございます。
【日比谷委員長】  ありがとうございました。
 これをもちまして事務局及び主査の方々からの御報告が終わりましたけれども、これまでの全ての事柄につきまして御意見、御質問等がありましたらお願いいたします。特に、各分科会所属の委員の方、またユネスコで開催された会議に実際に参加なさった委員の方から補足等がありましたら、是非よろしくお願いいたします。
 よろしければ、それでは次の議題は意見交換、ディスカッションが中心ですので、その中でまた何かありましたら、前の議題に関連してということでおっしゃっていただければ、それで結構でございます。
 
<議題2.これからの時代におけるユネスコ科学分野の推進について(討議)>
【日比谷委員長】  それでは、議題の2、これからの時代におけるユネスコ科学分野の推進について。これは討議の議題でございます。
 こちらは、昨今の、今も何人かの方々からの御発言の中にありましたけれども、ウクライナ危機、これはもちろんのことですが、世界各地において、平和がなかなか危うい状況になっているという状況にございます。御承知のとおり、ユネスコは、平和を希求するという憲章をもってできたところでございますので、その実現に向けて、特にこの科学小委員会としては、科学の側面からどのような役割を果たすことができるかについて意見交換をしたいと考えております。初めに、事務局から資料2を使って、これからの時代におけるユネスコ科学分野の推進について、説明をお願いします。その後、意見交換を行いたいと思います。
 このテーマは、ユネスコにとりまして、官とか民という立場の違いを超えた本質的なものでございますので、今日、残りの時間は限られてはおりますけれども、忌憚のない意見交換になればと考えております。
 それでは、まず事務局から説明をお願いいたします。
【白井国際戦略企画官】  文部科学省の国際戦略企画官の白井でございます。今、委員長からもお話しいただきました資料2に基づいて簡単に御説明を申し上げます。
 「これからの時代におけるユネスコ科学分野の推進について」というタイトルをつけておりますけれども、背景としては、これまで当省の国際統括官の岡村や委員長からもお話しいただいたようなことでございます。新型コロナウイルス感染症、気候変動、経済格差、ウクライナの問題、いろいろな問題が生じているという中で、一人一人が行動を変容していくことが求められています。
 ユネスコについては、特に教育、科学、文化という側面から、これまでも様々な提案をしたり、勧告を頂いたり、規範設定に取り組まれているところでございます。
 少し大きな変化としてあったのが、2022年、今年からの中期戦略において、特に優先グループとして「ユース」が位置付けられているということがございます。これは、教育、科学、文化、全ての側面において、次世代を担う重要なパートナーとして、若者の意見をどう取り入れていくのかということがユネスコにおいて非常に重視されるようになってきているということが一つございます。
 振り返りますと、丸の4番目になりますけれども、2011年、この日本ユネスコ国内委員会から「サステイナビリティ・サイエンス」に関する提言を行うなど、日本ユネスコ国内委員会は、もともと様々な形で活発に議論をして、ユネスコの議論に対しても影響を与えてきたという経緯もございました。
 そういったことも踏まえながら、これまでも同様の議論はあったと思うのですけれども、こうした時代の変化とか背景も踏まえながら、今回御議論いただきたいポイントとして二つ御用意いたしております。特に国際的、国内的な両方の取組ということはあると思うのですけれども、まず1点目としまして、特にこの国際面として、現在の諸情勢を踏まえた上で、日本からユネスコ事務局や各加盟国に対して、どのような付加価値を提供することができるかという点でございます。もちろん、拠出金をお支払いしたり、あるいは人材を派遣したりといういろいろな形での貢献はしてきているわけでございますけれども、例えば先ほどの「サステイナビリティ・サイエンス」に見られるような、例えば理念であるとか、考え方であるとか、実践事例であるとか、そういったものを提供していくことによって、どのように日本としてプレゼンスを示しながらも同時に貢献していくことができるのかという点が1点目でございます。
 それから2点目としまして、国内の活動の在り方についてという点でございます。現在の諸情勢は、いろいろ時代の変化もあるわけでございますけれども、ただ一方では、中にはユネスコ関係の事業において、登録することが目的化してしまったりしていて、その憲章の本来の理念と若干そごが生じているようなケースもなくはないかということがございます。この辺については、令和元年に日本ユネスコ国内委員会から頂きました建議の中でも、そういった問題意識をお示しいただいているところでありますけれども、このユネスコが目指す理念とそれぞれの具体的な活動をどのように結びつけてこの国内の活動を盛り上げていくのかといったこと。特にこの2点について是非御議論を頂きたいなと思っております。
 なお、御参考までに、こういった論点につきましては、表現は必ずしも同一ではございませんけれども、教育、文化・コミュニケーション、そしてこの科学の3小委員会において基本的に同じことを議論いただきまして、総会に持ち帰り、また総会から各小委員会に議論を還元する形で議論を深めさせていただきたいなと考えてございます。
 こちらからは以上でございます。
【日比谷委員長】  それでは、先ほど申し上げましたとおり、これから1時間ぐらい議論の時間がございます。挙手機能を使ってお知らせくださいましたら、事務局から指名いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【堀尾国際統括官補佐】  では、渡邉委員、お願いします。
【渡邉委員】  ありがとうございます。今後の活動を進めるに当たっての大事な点ということで、一つ、その分野間の連携というか、シナジーをいかに重ねていくかということを一つ挙げたいなと思います。それに関連して幾つか、いろいろな動きを情報共有させていただければと思うのですけれども、そのシナジーという関係で、気候変動の問題とSDGsのシナジーに関する国際会議というのがあります。これは、気候変動枠組みの条約UNFCCC(United Nations Framework Convention on Climate Change)の事務局とSDGsを所管しているUNDESA(United Nations Department of Economic and Social Affairs:国際連合経済社会局)が共催してやってきて、過去2回開かれていたのですけれども、3回目をこの7月に日本で国連大学の会議場で行いました。環境省がホストをして、国連大学とIGES(Institute for Global Environmental Strategies:公益財団法人地球環境戦略研究機関)が協力という形で、いかにこの気候変動とSDGsの取組のシナジーを高めるか、その辺りに生物多様性の問題なども結びつけていくというようなことを議論いたしました。
 そのサイドイベントで、この科学小委員会でも私から以前に申し上げました「国連生態系回復の10年」、「国連海洋科学の10年」と同じ2021年が開始年になった「10年」があります。その生態系回復ということに焦点を当てたサイドイベントというのを国連大学とFAO(Food and Agriculture Organization of the United Nations:国際連合食糧農業機関)と生物多様性条約事務局が共催して行いました。その中で生物多様性の問題、気候変動の問題、持続可能な開発といった地球規模の課題を結びつけて解決策を検討していく。それが大事であれば、そのために生態系回復の取組というのは一つ重要性が増していくのではないかということを議論いたしました。そういう分野間の連携というのは、このユネスコの活動の中でも大事なテーマになるのではないかなと感じています。
 それから、「国連海洋科学の10年」と「国連生態系回復の10年」ということを申し上げましたけれども、それを結びつけていこうという試みとして、今年2月に里海・沿岸域の生態系をテーマにして、その生態系回復をテーマにしたシンポジウムを行いました。たくさんの人に参加していただいたのですけれども、その第2回を今月9月20日に行う予定で、笹川平和財団の海洋政策研究所と国連大学とで今、開催の準備を進めているところです。テーマとしては、気候リスクの問題とか、シチズンサイエンスをどう生かしていくかとか、ブルーカーボン生態系をどう考えていくかというようなことで、「国連海洋科学の10」と「国連生態系回復の10年」をつなぐような議論をしていければなと思っています。この具体的なプログラムが固まりましたら、事務局を通じて皆様にも御紹介していきたいと思っています。
 もう1点、この国際的な課題と現場の取組をどうつなぐかということの重要性ということなのですけれども、MABの取組、まさにユネスコエコパークのサイトがあり、ジオパークのサイトが現場にある。そこでの活動とその国際的な動きをどう結びつけていくかということも、今後の方向として大事ではないかなと思っています。先ほどの紹介の中で、ユネスコ未来共創プラットフォーム事業を活用してMABの学び合いというのを始められていますけれども、そこで私もお話しする機会があって、是非「国連生態系回復の10年」とか「国連海洋科学の10年」の取組を現場からも発信していくというのをユネスコエコパークのサイトなりジオパークのサイトなりで展開していくことが大事ではないか、それにユースの世代に是非参加してもらうことが大事ではないかという呼びかけをして、今後各地で検討してくださいねという呼びかけをしたところです。
 最後に、そのユースの世代の参画が、ユネスコエコパークやジオパークの活動にとっても今後とても大事かなと思っています。3月に日本ユネスコ国内委員会で次世代ユネスコ国内委員会からの提言というのもありましたけれども、その中でも、ユネスコエコパークやジオパークとユースの関わりが今まで希薄だったのをどう深めていくかというのが大事で、具体的な提言ももらったところです。
 そのユースの参画に関しては、いろいろな動きが出始めていて、MABのところで紹介した、MABの大学間連携の活動が、金沢大学を中心に幾つかの大学で立ち上がりました。7月にキックオフしましたけれども、その大学間のネットワークで地域と大学の連携ということもテーマなのですけれども、そこに大学の学生が研究フィールドとして関わって他の大学とも交流する機会が生み出されて、ユースの人たち自体がそういうフィールドでの交流を通じて、自ら主体的にユースのネットワークを立ち上げていくような動きを作り出していけないかということを、MABの大学間ネットワークでも議論がされ始めつつあります。
 また、ジオパークでは、10月にジオパークの全国大会があり、そこでもユースの参加というのを一つ大事なテーマに上げていて、その次世代ユネスコ国内委員会のメンバーも何人かジオパークの全国大会のユースセクションに参加するというような動きも出てきていたり、次世代ユネスコ国内委員会のメンバーがユネスコエコパークやジオパークの現場を実際に訪ねて地域の人と交流したり、そういう形でいろいろな形でユースの参画が自発的に広がっていくような動きが出つつあって、それをいかに後押ししていくことができるかということも、私たちとしても真剣に考えていく必要があるなと感じています。
 以上です。ありがとうございます。
【堀尾国際統括官補佐】  ありがとうございます。
 では次に、道田委員、お願いします。
【道田委員長代理】  ありがとうございます。今の渡邉委員の御発言にも幾つか重なるところがありますけれども、二、三、申し上げたいことがあります。
 まず、御承知だと思いますけれども、IOC、政府間海洋学委員会は、もちろん日本だけの発案ではないのですけれども、1954年、後の東大総長の茅誠司先生が、海洋の特別委員会の設置というのを提言するという、そのことを含め演説されたことも一つのきっかけになり、我が国の太平洋戦争の後の新しい社会の構築の中で海の平和利用というのが打ち出されて、その文脈の中でIOCということになっています。ほかの科学の分野ももちろんそうでしょうけれども、海はつながっていますので、国際連携なしにはあり得ないですよね。昨今のロシアのウクライナ侵攻などを考えますと、せっかく海洋環境保全という方向に世の中は向かっているにもかかわらず、環境問題に対するコントロールが、たがが外れてしまって、海洋環境に対する非常に大きなリスクになりますので、そういう観点からIOCとして今年何かやるべきことがあるだろうと思っています。
 その中で具体的には、我が国から何か言えることがあるとすると、社会情勢はいろいろ厳しい中でも、例えばIOCの地域小委員会にWESTPAC、西太平洋海域小委員会というのがあります。そこでは基本的には極めて良好な協力関係が維持されておりますので、地域レベルの協力関係を広げていくというか、そういうことによって世界の海洋の問題に対して、いろいろな厳しい社会情勢はありつつも、地球環境の保全とか生態系の保全といったことについて、やるべきことは進めていきましょうという雰囲気を醸成する一助になるのではないかなというのが1点です。
 それから、渡邉委員がおっしゃいましたけれども、せっかく科学のプログラムが三つありますので、相互に連関する課題というのはあると思うのですよね。それを、先ほど渡邉委員がおっしゃった、国内で「国連生態系回復の10年」と「国連海洋科学の10年」の両方に関係するシンポジウムがあるということですので、それを我が国として、ほかの国も皆様やったらどうですかというような提言にもつなげることができるでしょうし、あるいはもう一歩進んで、私はIOCの立場ですけれども、IOCのガバニングボディーの会議の中で、実際にMABあるいはIHPと具体的に連携するテーマを本気で探ったらいいのではないですかという提案をすることができると思うのですよね。
 「国連海洋科学の10年」が始まってから、MABあるいはIHPとの連携は不可欠ですよという議論はしていますけれども、では具体的に進んでいるかというと、「国連海洋科学の10年」も始まったばかりで、まずは足元を固めるのが先になっていたので、そこまで手が回っていませんが、始まって間もなく3年目を迎えようとしていますから、いよいよ残りの数年間、具体的にMABあるいはIHPとの連携について、連携の具体策を練るということをこちらから提案すればいいのではないかなというのが2点目です。
 それからもう一つは、関連しますけれども、日本の好事例としてと言っていいかどうか分かりませんが、「国連海洋科学の10年」のキーワードの一つにIndigenous knowledge、Indigenous and local knowledge、Indigenousは「土着の」とか「原住民の」とか、そういう意味の言葉ですけれども、それをうまく引き上げて、例えば科学あるいは社会問題の解決にそういった知識をうまく生かしていくということも大事なのではないかということが大きな柱になっているのです。具体的にどうするかということは、なかなか、言うのは簡単だけれども、実際に行うのは難しいということがありますが、我が国は、科学の世界に乗っているかどうかということについては議論があるとは思いますけれども、古くから、例えば水産業の現場の方との連携、あるいは水産業の方々あるいは水産関係の漁師の方々が持っている知識とかが基になってその海洋学の幾つかの課題に迫るということも行われてきています。そういったことについて、日本ができていること、ほかの国は水産業に関する社会体制とかも違いますので、そのまま日本のように行うというわけにはいかないかもしれませんけれども、例えばIndigenous knowledgeやLocal knowledgeの重要性を引き上げるという観点から、日本からその提言ができるのではないかなと思っています。それらを幾つかのことを通じて何かうまく発信できるといいなと思っています。
 最後にもう1点だけ。ユースの話が出ましたけれども、我が国は、海洋学を担う若手というのは層が薄くて、なかなか大変なところはあるのですが、「国連海洋科学の10年」の中でECOP、Early Career Ocean Professionalsというグループがあり、そこに遅ればせながら我が国の態勢を整えて、若手のリーダーになっている方々を中心に強いコミットを始めていますので、そういったことを通じて「ユース」というキーワードにも貢献できればいいのではないかなと思いました。
 以上です。ありがとうございます。
【堀尾国際統括官補佐】  ありがとうございます。
 では、小池委員、お願いいたします。
【小池委員】  鎌倉ユネスコの小池といいます。民間ユネスコの委員として参加させていただいております。よろしくお願いいたします。
 今、渡邉委員と、それから道田委員から非常にハイレベルなお話を伺った後で、私たちの地域の民間ユネスコの話をするのは気が引けるのですけれども、関係しているところもあると思いますので、特に2番目の今の国内でのこれからの活動の在り方というところに係ってくると思うのですが、少し民間ユネスコの話をさせていただければと思います。
 私たち民間のユネスコは、全国に270ぐらい、各地に協会とかクラブがあるのです。まさにユネスコの精神を達成するためにいろいろな活動をしているのですけれども、その中には地域の課題あるいは地球課題に対して科学的アプローチに立って活動している、調査や研究を行っている、そういう団体もかなりあるのです。私自身も少しそういうものに関わっているのですけれども、こうした活動というのは、いわゆる市民の科学的探求心を醸成したりとか、科学リテラシーを向上させたりとか、あるいは先ほど道田委員もおっしゃいましたけれども、ローカルな知を再発見するという点で重要な役割を担っているのではないかと、少し自分ではそう思っているのです。これは、併せて資料にも詳しく載っていますけれども、日本ユネスコ国内委員会が提唱された「サステイナビリティ・サイエンス」の一翼を担うものではないかなと思っています。
 本日は、実は私は民間ユネスコの中の関東甲信越・中部東というブロックの代表なのですけれども、そこでどんな科学的な分野で活動しているのかという事例を紹介させていただきながら少しお話をしたいと思います。
 事務局で私のスライドを出していただけますでしょうか。ありがとうございます。
 今御覧いただけていると思うのですけれども、これは四つだけ出したのですが、左側の1番と2番というのが昨年の11月に中部東ブロックの研究会で報告された事例です。実は、2021年のときには民間ユネスコの取組ということで、私どもの鈴木郁香委員から結構膨大な資料を出させていただいたと思うのですけれども、余り深く書いていなかったものですから、その中で注目していただきたいようなものを出してみました。
 一つは、甲府のユネスコ協会の報告で、これは山梨英和高等学校、ユネスコスクールになっているのですけれども、そこの自然科学部の学生たちが「ミズダニを指標動物とした山梨県の水質評価と山梨ミズダニマップの作成」という報告をしました。これは、山梨県内の河川で春のミズダニを採取して、それを水質評価の指標として使えないかということを研究したものです。ミズダニというのは、その報告を聞いて初めて納得したのですけれども、川の宝石と言われているらしくて、非常にいろいろな種類があって、いろいろな色をしていて、すごくきれいらしいのです。ミズダニは水のきれいなところに生息しているということで、調べて、指標にして、水質の評価の指標にしようという研究でした。
 二つ目は、静岡県の磐田ユネスコ協会が、桶ケ谷沼というところの生態系保存活動をされているのです。モリアオガエルの保護活動をしたり、あるいはここには絶滅危惧ⅠA類のベッコウトンボが生息しているのですけれども、その個体数調査というものを小学生と一緒にされているのです。
 それから、これはブロック研究会の報告にはなかったのですけれども、浜松ユネスコ協会は昔からユネスコ科学教室をやっていらっしゃって、先ほども少し出てきましたけれども、岩石標本を作るという活動をされているようです。
 また、私が所属している鎌倉ユネスコ協会では、科学・環境委員会の勉強会で今年は「『たたら製鉄』の再現~郷土史から消えた鎌倉の製鉄文化の謎」ということをやりました。これは、前の鎌倉高校の先生で科学部の顧問だった木浪信之様に来ていただいて、そして稲村ヶ崎海岸の砂鉄を原料とするたたら製鉄を再現する実験の成果報告をしていただいたというものであります。
 ごく一部を御紹介しましたけれども、もっとこれから全国各地のユネスコの科学分野の取組についていろいろ集めて、来年の2月に恐らく開催されるであろう次の科学小委員会のときには少しまとまった報告ができればと思っています。
 民間のユネスコというのはとても小さな組織なのです。人も少ないし、お金もないし、だけれども一生懸命、地域のそういう持続可能な開発あるいはESDに取り組んでいる団体が多いのですけれども、こういった小さな取組というのは、先生方が取り組まれているMABとか、あるいはジオパークに比べると本当にスケールが小さいものなのですけれども、多分、日本中にこういう注目に値する小さな取組はユネスコ以外にもたくさんあるのではないかと。これを全国で進めていく、こういう小さな取組を進めていくということが、日本のSDGsとか、あるいは科学にとって重要なのではないかなと思っているのです。なかなか大学の研究者の皆様方もお忙しいので、こういう小さな地域の取組には余り関心を持っていただけていないような気もするのですけれども、こういう民間ユネスコだけではなくて、ユネスコスクールも含めて、地域のNPOとか、地域の住民の皆様とか、いろいろな取組に関心を持っていただいて、科学的なアドバイスをしていただくとか、一緒に調査をするとか、そうやって地域との連携とか協働を進めていただければと考えているところです。
 先ほどローカルな知と言いましたけれども、本当に日本というのは小さな国ではありますけれども、ローカルナレッジというのは実に地域によって多様であって、多分それは日本のエコシステムが非常に多様性に富んでいるからであって、たしか金沢の方の国連大学のセンターだと思いますけれども、生物文化多様性とおっしゃっているのです。これには食文化も入るし、先ほどのトンボなどもそうかもしれませんけれども、あるいは農業もそうかもしれませんが、そういう地域のエコシステムと私たちの文化との関係などというのは、非常に重要な課題だと思いますし、またそこで得られたナレッジといいますか、それは国際的にも私たちはいろいろな形で多分提供できるのではないかなと思っています。
 また、先ほど岩石標本とか砂鉄の話をしましたけれども、生物文化多様性だけではなくて、これは私の造語かもしれないのですけれども、Geocultural diversityといいます地理・地学と文化の結びつきというのも結構ありそうな気がするのです。この辺で世界的に注目されているかどうか、全く私は素人なので分からないのですけれども、ジオパークがそういうことをやっていらっしゃる。ジオパークはとてもブランドが高くてメジャーな取組なのですけれども、地域にもいろいろな小さな取組がありそうな気がするので、何かその辺にも着目していただきたいというのが、私たちというか、私の個人かもしれませんけれども、ささやかな願望です。
 少しお時間を頂戴して、失礼しました。どうもありがとうございました。
【堀尾国際統括官補佐】  小池委員、ありがとうございました。
 野村委員、よろしくお願いいたします。
【野村委員】  小池委員の今の具体的なお話大変勉強になりました。ありがとうございます。
 二つの論点の中のまず一つ目なのですけれども、日本から各国、世界に対してどう貢献できるかということで、今までの御発言と少し重ならないかと思うことを一つ挙げますと、日本はというか、日本企業は、世界一環境コンシャスな国と言っていいと思うのです。ということを踏まえて、日本がもう産官学連携の環境分野の研究プロジェクトというものを率いて、世界に貢献して、プレゼンスを示すことができるのではないかと思っています。
 その根拠は何かといいますと、これは金融分野なのですけれども、各国の中央銀行とか金融関係省庁がつくっておりますTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)というものがございまして、気候関連の情報開示を進めるというタスクフォースです。情報開示を進めるというからには、もちろんそれを実行していこうということが前提なのですけれども、このTCFDに賛同する企業・機関が日本は世界一多いのです。1,000以上、既に8月末時点で賛同していて、これはイギリスとかアメリカの倍以上なのです。イギリス、アメリカは500に満たないのに、日本は1,000以上の企業を中心に賛同しているという、それが世界一環境コンシャスだと言った根拠なのですけれども、こういう企業が環境に対しての取組を世界一取り組もうとしているということを使って連携研究を進めてはどうかというのが、世界への貢献で是非提案したいことです。
 二つ目の論点で、日本国内の今後の活動の在り方についてですけれども、二つ挙げたいと思います。一つは、今、小池委員からお話があったような全国のユネスコ協会の活動が盛んだということと、加えてユネスコスクールが、これも世界一その加盟校が多いというのは皆様御承知のとおりで、すばらしい基盤が日本にはあります。まずベースにすばらしいものがあるということを使って、特に今は「国連海洋科学の10年」ですので、これは「海の10年」とかというぐらいに簡単な言葉で全国の教育現場に浸透させていくということ、これは教育委員会でも多分議論されていることかと思いますけれども、是非「海の10年」の教材とか学びとかの好事例の共有などがなされるといいのではないかと思います。もし既にもうされているということでしたら、後で教えていただきたいと思います。
 それから、今後の国内の活動についての二つ目なのですけれども、ジェンダー視点を持っての科学研究というものに今後もっと力を入れてもいいのではないかと考えております。御存じのように、SDGsの中の項目の一つでジェンダー平等というものが掲げられているわけで、特にこのコロナにおいてジェンダー視点で見ていく重要性は高まっております。これは、社会経済という人文科学だけではなくて、科学分野でも同様であろうかと思います。
 最近、この春、お茶の水女子大学がジェンダード・イノベーション研究所というものを立ち上げておりまして、ジェンダード・イノベーション研究所に加わっている研究者の分野は、社会学、経済学のみならず、海洋学とか、生物学とか、機械工学とかという理系の先生も多く参加していらっしゃいます。このような動きが少し出てきているところでもありますので、少しジェンダー視点の研究というのもこれから視野に入れてはどうかと思います。
 以上です。
【堀尾国際統括官補佐】  ありがとうございました。
 次に、大谷委員、お願いいたします。
【大谷委員】  東京都市大学の大谷です。私の専門はITになりますので、こちらの観点から意見を述べさせていただきます。
 ここ2年半、コロナ禍になって、皆様が限られた制約の中で様々な取組をされてきた。それでうまくいったこと、どうしてもうまくいかないこと、対面の有り難さといろいろ感じてきたかと思いますが、これこそがまさに科学を発展させるための宝なのではないかと思っていて、皆様が取り組まれたそのいい事例というのを、そしてうまくいかなかった事例もうまく共有するというのが、これからの科学の発展にすごく役立つのではないかと考えております。
 そして、先ほど道田委員から、ローカルナレッジを吸い上げることが大切だという御意見がありました。また、小池委員からは、小さな取組だけれども、すばらしい取組というものがたくさん紹介されたのですけれども、そういうものもうまく吸い上げる、そして皆様で共有するということが重要になるかと思います。
 昨今、主に企業で、企業の利潤を追求するためにデジタルトランスフォーメーションというものが強く推進されていますけれども、このユネスコの取組にもデジタルトランスフォーメーションというものを積極的に導入することによって、なかなかデジタルのデータとして吸い上げられてこなかったものを吸い上げられるようにして、皆様で共有して、科学の発展につなげていくということが重要なのではないかと考えています。
 以上です。
【堀尾国際統括官補佐】  ありがとうございました。
 次に、林委員、お願いいたします。
【林委員】  旭川ユネスコ協会北海道ブロックの国内委員をしております林です。どうぞよろしくお願いいたします。
 私も地域ユネスコ協会の出身ということで、小池委員と同じような立場で、地域で次世代育成のためのいろいろな様々な草の根のユネスコ活動を通じて、次世代の青少年の育成活動や、それから成人の社会活動、社会教育活動に取り組んでいる団体です。私自身は、旭川市という地方中核都市で小児科の開業医として働いております。
 特にこのコロナ禍で、先ほどは大谷委員からもお話がありましたように、発達に脆弱性のある子供たち、それからその御家族は、SNSをはじめとするAIによる選択的に選別された情報に振り回される傾向が大変強く、危惧することがしばしばでございます。そのような中で、リアルな体験を通してこそ得られることというのは様々にありまして、先ほどの小池委員の発言の中にあったようなことを含めて、二つほどお話しさせていただきたいと思います。
 一つは、地域のユネスコ活動と、それから科学館、博物館、図書館など、そのような人たちが同じ目的を持ってユネスコの理念を広めるような意識でプロジェクトに取り組んでみると、協働が、面白い化学反応が見られるのではないかという一つの提案です。
 それはなぜかといいますと、事例は二つなのですが、一つは、旭川市が2019年にユネスコ創造都市ネットワークに加盟認定されたことから、今年6月にはデザインとSDGsに関わるイベントを開催しました。このまちなかキャンパスというイベントなのですけれども、市内の全ての高校に声がけをして、あと専門学校、大学4校にも声がけをして、全体で36団体、高校は一つの高校で二つ、三つというブースを出した学校もあるのですけれども、その子たちが探求活動をする中で、自分たちのSDGsの取組などを市内の小中学生に自分たちが自ら教えるという活動でした。それは、ちょうどコロナの少し落ち着いた6月にされたものですから、市内のにぎわいも、動員数というのですか、旭川市は人口が32万しかいないのですけれども、この期間中に2日間で6万4,000人の動員がありました。そして、400以上の小中学生のアンケートを見ますと、体験活動、それから実験、工業高校とか農業高校とか、様々な学校からのブースが出ておりましたので、そういうところでも体験活動を大変楽しんでおりました。子供たちには、そういう対面での活動の機会があると、それを楽しむ要素はこのような時代でも十分にあると、それを一つ感じたわけです。
 もう一つは、7月の下旬から夏休み期間に、サイパルというところがいろいろなところと協働して恐竜展を開催したのですが、こちらも人口32万の都市で、有料のイベントだったのですけれども、入場者数が1万人を超えまして、いかに子供たちがそのような探求心とか、ものに触れることに飢えているか。そして現場に行ってみますと、学術員の方やボランティアをなさっている理科の先生たちのお話を本当に一生懸命聞いている子供たちを見ますと、このリアルな体験というものが地元の子供たちを本当に育てるのにすばらしい力を発揮するので、こういうことを集めて、検証しつつやっていくのがいいなと考えた次第です。博物館、科学館、様々、ユネスコ協会もこのまちなかキャンパスの実行委員でしたので、このような団体が協働するということの意義を感じました。
 もう一つは、この高校の中に旭川西高校という高校があるのですが、そこがスーパーサイエンスハイスクールという文部科学省の指定を受けている高校になります。全国に200以上あるわけですけれども、そちらの高校の生徒たちは、地域の大学や専門学校とつながって、科学的な分野での探求活動を随分一生懸命進めています。ですので、今回それはまちなかキャンパスをやって分かったことだったのですけれども、その生徒たちは熱心に自分たちの環境活動を生き生きと報告しておられましたので、その生徒たちを指定しているのは文部科学省でも別の局かとは思いますけれども、ぜひ学校教育とその次の教育を結ぶ役割としてこのスーパーサイエンスハイスクールというものに着目して、是非若手の研究者の方たちにも目をかけていただきたいなと思いました。
 以上2点が、私の考えた、今後のユネスコの科学分野の活動の中で考えていただきたいことです。ありがとうございました。
【堀尾国際統括官補佐】  ありがとうございます。
 次に、沖委員、お願いいたします。
【沖委員】  ありがとうございます。皆様の御意見はもっともなので、多少重複するかもしれませんが、私からもユネスコにいかに日本から貢献するかについて幾つか述べたいと思います。
 まず、ユネスコとしては、国連全体として目指している2030アジェンダ、いかに格差をなくし、より良い世界をつくるかということに関して、科学や教育がいかに貢献できるかということをはっきりとした証拠で示したいという気持ちが強いと思います。それを海洋、水循環、そして生物多様性といった側面でのSDGsの14、6、そして生物多様性のところにどうやって科学や教育というのは役に立っているかというのをきちんと日本の研究者が取りまとめ、必ずしも学術論文でなくていいと思いますけれども、発表していくかということが地道に求められていて、それは会議で発言することと同時にそういう文書にするということが非常に大事かなと考えます。
 また、道田先生がおっしゃったIndigenous knowledge、伝統的な知を生かすというのは、気候変動対策でもずっと言われておりますが、もう一つ、Nature-based Solutions、自然を利用した解決策というのが非常に望まれているのだけれども、なかなか具体例が、いいプラクティスが共有されていない、あるいはその限界というのも指摘されるという中で、日本の生物多様性を守りながら上手に海洋資源を使う、あるいは自然の恵みを生かしながら防災・水防災を行うといった知見を報告書なりレポートなりにしていくといった地道な努力が必要なのかなと思いました。
 また、大谷委員がおっしゃった、日本のアイデアを世界にというところでも、例えば気候変動では、トランスフォーマティブなアダプテーション、変革的な適応策が必要だということが言われますが、日本で昨年導入されました流域治水という、これまでのように何とか川の堤防や貯水池建造によって洪水被害を減らそうという考え方から、流域の全体で、関係者全員で治水を行おうという考え方に変わったわけです。こういう、必ずしも技術ではなくて、フィロソフィーといいますか、考え方で、日本はそのように転換しましたといった経験を、必ずしも世界中どこにでも当てはまるかどうかは分かりませんが、きちんと広報していくようなやり方というのが大事かなと思いました。
 また、これも道田先生がおっしゃった話ですが、ユースにつきましては、例えば私もこの4月にはIHPに行かせていただきましたが、仲間の何人かはかなり前にお会いした方だったりするのです。そういう機会を今の若い方々にも何かあげられるようなプログラム、それはサマーキャンプかもしれませんし、二国間交流あるいは多国間での交流かもしれませんが、何かそういうことを機会を見て、是非企画するようなことを政府の方でも、また学術界あるいはこの委員会でも検討してはどうかなと思います。
 最後に、これは小池委員がおっしゃった地域ユネスコの活動をどう全体に結びつけるかという話かと思いますが、学術界でもフューチャー・アースというものに代表されますようにtransdisciplinaryなり、従来のinterdisciplinaryなりという、学問と学問がくっつくのではなくて、学問と社会がくっつく、しかも、何か学問が進んだので、これを少し応用しませんかと社会に聞くのではなくて、研究を始める最初から社会と一緒に研究をつくっていくというような思想がこの10年ぐらい生まれています。なかなか浸透していないかなと思ったのですが、日本学術会議の方で昨日会議があって検討して、確かにすごくブームにはなっているわけではないけれども、10年前に比べるとそういう動きも学術界に広まってきたと思いますので、派手ではないかもしれませんが、是非、日本中に広がる学術の方々と地域社会が一緒になって地域の課題解決に取り組む、最初から一緒に取り組んでいくというような動きがもっと広がればいいのかなと思いました。
 以上です。
【堀尾国際統括官補佐】  ありがとうございました。
 次に、藤田委員、お願いいたします。
【藤田委員】  ありがとうございます。京都大学iPS細胞研究所の藤田といいます。生命倫理学の研究をしておりまして、IBC(International Bioethics Committee)、ユネスコの生命倫理学の委員会とか、国際幹細胞学会の倫理委員とか、そういうことをさせていただく機会がありまして、そういった経験的な点から議論のポイントを二つ、今日挙げていただいたことについてお話しさせていただきたいと思います。
 まず一つ目の、現在の情勢を踏まえた上で、日本からどういった付加価値を提供することができるか。これについては、国際的な情勢の中で日本がどういうプレゼンスを出していくかというところに課題があるということを皆様お考えなのかなと思いながらお聞きしていました。
 そのときに、私がそういった国際会議に出ている限り、アジアで女性というだけで非常に重用されるということがございます。国際会議の場で、アジアから誰かいないかとか、女性で誰かいないかとか、科学的な会議の場で文系の人はいないかということは、皆、多様性を非常に意識するので、すごく探すわけです。ですから、そういうときに、もし今後、国際的な会議の場に日本のユネスコからどなたかを派遣するということがありましたら、是非比較的年齢層の若い女性を応援するような形で後押しして、派遣する機会を提供するということがあってもいいのかなと思います。
 登壇者とか委員とかというところまでいかなくても、若い方をオブザーバーという形で早い時期から参加させて、そこで交流を持って、次に人がいないというときに、またその若い方にチャンスが来る、声がかかる、そういうことがあると思いますので、是非、そういう若い方、女性を会議に行けるような形で支援する。中には子どもがいる方とか、御家庭をお持ちの方とかもいらっしゃる。それも含めて支援することで、日本のユネスコも、支援のシステム、体制というのが非常に手厚く整っていくのではないかということを思いました。
 2点目、国内の活動の在り方について。林委員と小池委員のお話は非常にすばらしい取組で、興味深く聞かせていただきました。民間の地域の活動ということで、地域の子どもの活動ということだったのですけれども、地域で当たり前のことというのが、もしかしたらこの国際的に海外の方に発信したときに、びっくりするような、非常に新鮮に映るということはあるかと思うのです。砂鉄から鉄をつくるとか、非常にすばらしいなと思いながらお聞きしていました。
 そこで私自身が思い出したケースというのは、去年のことなのですけれども、中学生の男の子が私の研究所にメールを入れてきまして、「藤田先生にiPS細胞の生命倫理の講義をしてほしい」と言って、中学生が自分で企画をして、依頼をして、打合せも全部して、「子供だからと簡単な話をしないでほしい」と、そこまで言われて、本人が司会をして、企画をして、募集をかけて、インターネットで配信したところ、実に数百人規模で人が集まってきて、中には海外にいる日本人学校の生徒とか、教室の先生とか、そういうところからも関心を持って聞きたいという申込みが多数ありました。なので、そういったところで、子どもたちが世界とつながって、自分たちが小さく大事にしてきたことがこのように受け止められると思う、そういう体験というのは、すごくきらきらした、その後の人生を変えるような経験だと思うので、是非そういった形で国内の活動の在り方だけれども、国際的につなげていく。それを経験した若い世代がまた次に国際的な発信をして、プレゼンスを高めてくれるということにつながるのではないかなと思いながらお聞きしました。
 以上です。
【堀尾国際統括官補佐】  ありがとうございます。
 それでは、鈴木委員、お願いいたします。
【鈴木委員】  千葉県の柏ユネスコ協会に所属しております鈴木郁香と申します。
 今、藤田委員から大変すばらしい事例を御紹介いただいて、すごく感動しているところなのですけれども、様々な会議にユースの意見を反映させたり、研究者を育成したりということも大変重要なことですけれども、それに加えて、どうユースの世代に広く広めていくか、広く関わりを広げていくかということが大変重要だと感じます。ユネスコスクールやユネスコ協会の青年だけではなく、地域や学校、団体、個人との広い展開というところをしっかりと模索しながら進めていくことが非常に重要だなと感じました。
【日比谷委員長】  委員の皆様全員から御発言を頂きまして、大変ありがとうございました。まだ少し時間がございますが、何かほかの方々への質問、コメント、ここは少し言い足りなかったというところがありましたら、挙手機能を使ってお知らせください。
【堀尾国際統括官補佐】  すみません。野村委員から御質問のありました「国連海洋科学の10年」とユネスコスクールとがもっと結びついたらいいのではないかという点についてなのですけれども、これは道田先生からまた何か補足があればお願いできればと思うのですけれども、実はそちらの方は、この「国連海洋科学の10年」の中に「心揺さぶる魅力的な海」ということで、広報、普及についても取り組むということになっておりまして、ユネスコスクールとの連携というものが国内実施計画にも入れられております。
 その中で、以前に国内委員で教育小委員会に入られていた及川先生がユネスコスクール向けに海洋教育こどもサミットというものを開催して、ユネスコスクールにもお声がけいただいて、実際に宮城県気仙沼市、福島県の只見町や福岡県大牟田市など、結構日本全国からこちらのサミットにオンラインで開催いただいたので、そういった日本全国から高校生が参加して、この海洋教育についての議論をしたり、あとその教材を使って各学校のカリキュラムに取り入れたりということをしておりました。福島県の只見町が、実はこれはユネスコエコパークに登録された後に、そこのまちの小学校がユネスコスクールに入って、最初はユネスコエコパークとの連携でしていたのですけれども、この海洋教育についての話を聞いて、海洋プラスチックごみの問題を自分たちも考えようということで、新潟県に行って海岸のごみ拾いをして、そこから海岸のごみというのは沿岸部だけではなく、実は自分たちの町を流れる川からもごみを出しているのではないかということで、川を遡ってごみ拾いをして、そのごみを少なくするためにはどうしたらいいかということを小学生・中学生が考えていくという取組にも発展しております。
 もし道田先生から何か補足がありましたら、お願いいたします。
【道田委員長代理】  ありがとうございます。今御紹介いただいたとおり、活動はそれぞれやっています。御紹介のあった及川先生の御活動とかも含めて、あるいは私が加わっている日本海洋学会の教育問題研究会などとも、直接「国連海洋科学の10年」とリンクした形では今のところないですけれども、同種の活動を盛んにやっておりますので、もう一段組織立って進める必要があるかなと思っておりますので、その際是非御協力をお願いできればと思います。
 ありがとうございます。
【日比谷委員長】  小池委員、お願いいたします。
【小池委員】  少し言い忘れたといいますか、林委員の御発言で思い出したのですけれども、これからの科学、特に地域レベルでの科学の振興・発展となると、地方自治体の果たす役割が非常に大きいと思うのですよね。教育委員会だけではなくて、先ほど博物館とかとありましたけれども、いろいろな科学に関わる組織というのは地方自治体に結びついているものも多いので、地方自治体の役割が非常に大きくなるかなと。
 どうも地方自治体というと、私も少し関わっていますけれども、ユネスコエコパークとか、ジオパークとか、あと文化遺産とか、そういう何かツーリズムに結びつくものには熱心なのですけれども、地道な科学的な研究にはなかなか関心を持っていただけないということがあるので、地方自治体がもっと活発に活動するようなことを少し考えるといいのかなと思ったことが一つです。
 それからもう一つは、ユネスコスクールの話が今出ましたけれども、私たちはたまたまこういう発表会か何かで、ユネスコスクールでこういう取組をしていますということを聞いて、なるほどと分かるのです。ところが、今ユネスコスクールがどういう科学的な活動をしているのかというディレクトリといいますか、そういうデータベースといいますか、そういったものがないので、どこでどんな貴重な面白い研究をしているのだろうということがなかなか分からないのです。これはユネスコスクールだけではないと思うのですけれども、科学部とか自然科学部でいろいろな面白い活動をしている中学校とか高校もあるような気もするのですけれども、そういったことを私たちがデータとして手に入れられたら、もっと地域と学校との連携なども進んでいくのではないかなと思った次第です。
【日比谷委員長】  ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 皆様から論点二つにつきまして非常に貴重な御意見をたくさん頂きましたし、また地域での事例の御報告も参考になるものがたくさんございまして、ありがとうございました。
 来週、総会がございますけれども、本日の科学小委員会での議論は、これから事務局と私が取りまとめまして、総会に報告をいたします。同じようにほかの小委員会からも議論の内容は上がっていきますので、また全体としてこれからどのように取り組んでいくかということを次に考えていくことになろうかと思います。
 ありがとうございました。
 
<議題3.その他>
【日比谷委員長】  これで議題2を終えまして、何かその他ということで御発言御希望の方いらっしゃいますでしょうか。
 特になければ、事務局から連絡等ありましたら、よろしくお願いいたします。
【堀尾国際統括官補佐】  ありがとうございます。本日はお忙しい中御出席いただき、また貴重な御意見を多数頂きまして、ありがとうございました。
 今後の予定でございますが、今、日比谷委員長からもお伝えいただきましたが、来週9月8日木曜日15時から17時半までの間で、第151回日本ユネスコ国内委員会総会を開催いたします。既に皆様には御案内をさせていただいておりますが、御出席のほどよろしくお願いいたします。
 本日の科学小委員会での議論については、総会で日比谷委員長から御報告いただく予定になっておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【日比谷委員長】  それでは、これをもちまして第6回科学小委員会を終えたいと思います。
 皆様それぞれに地域の現場あるいは大学等の研究機関にまたお戻りになりましたときに、本日の議論も是非周りの方にも広げていただき、また御自身の今後の活動でも、いろいろ良い御意見がありましたので、それを生かしていく道をお考えいただくことが、実はその分野横断的な連携の促進上、私は大変重要だと思っているのですけれども、その第一歩にもなるかなと感じたところですので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、これをもちまして本日は終わりにいたします。ありがとうございました。
 

―― 了 ――

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