日本ユネスコ国内委員会 自然科学(第128回)及び人文・社会科学(第116回)合同小委員会 議事録

1.日時


平成28年1月21日(木曜日)16時00分~18時00分


2.場所


文部科学省 3F 3F3特別会議室


3.出席者


[委員]

青野由利、阿部宏史、礒田博子、伊東信一郎、稲葉カヨ、猪口邦子、植松光夫、加藤淳子、黒田一雄、黒田玲子、西園寺裕夫、重政子、那谷屋正義、西尾章治郎、濵口道成、林梓、観山正見、吉見俊哉


[事務局]

豊岡国際課長、福田国際戦略企画官、野田ユネスコ協力官、その他関係官

 

4.議事録


【植松自然科学小委員会委員長】

 本日は、御多忙中のところ、お集まりいただき、大変ありがとうございます。定刻になりましたので、事務局は定足数の確認をお願いいたします。

【野田ユネスコ協力官】

 自然科学小委員会、出席の先生、11名、それから、人文・社会科学小委員会、出席の先生が7名で、いずれも委員の過半数、7名以上に達しておりますので、定足数は満たしております。

【植松自然科学小委員会委員長】

 どうもありがとうございます。大変さい先のよいスタートだと思います。

 それでは、ただいまから始めさせていただきます。本日の議題のうち、議題1に関しましては自然科学小委員会の人事案件の審議となりますので、日本ユネスコ国内委員会の会議の公開手続第1項に基づき非公開とさせていただきます。非公開の部分を除いて、御発言は、議事録としてそのままホームページ等で公開されますので御承知おきください。

 また、報道関係の方も2名傍聴されております。今回は合同会議といたしますので、議事進行については、前半を自然科学小委員会委員長である私が行い、後半を人文・社会科学小委員会の吉見委員長にお願いしたいと思います。

 それでは、議事に先立ちまして、委員及び事務局の異動がありましたので、事務局から報告をお願いします。

【野田ユネスコ協力官】

 配付資料のうち、参考資料3と参考資料4、名簿を付けさせていただいておりますけれども、まず、自然科学小委員会の方では、昨年12月1日付けで、新たな委員といたしまして、お三方に加わっていただいております。

 まず、伊東信一郎委員でいらっしゃいます。

【伊東委員】

 伊東でございます。よろしくお願いいたします。

【野田ユネスコ協力官】

 それから、本日欠席でございますけれども、立川康人委員にも加わっていただいております。

 また、濵口道成委員にも加わっていただいております。

【濵口委員】

 濵口です。よろしくお願いします。

【野田ユネスコ協力官】

 それから、人文・社会科学小委員会の方でございますが、こちらも昨年12月1日付けで、本日御欠席でございますが、小林真理委員に加わっていただいております。ほか、加藤委員についても再任ということで、引き続きお願いをしてございます。

 続きまして、事務局の異動もございましたので、御報告させていただきます。

 まず、昨年8月4日付けで、豊岡宏規大臣官房国際課長、着任しております。

【豊岡国際課長】

 国際課長の豊岡でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【野田ユネスコ協力官】

 また、国際戦略企画官といたしまして福田和樹が着任しておりますほか、ユネスコ第三係長の仙台文子が着任しております。

【仙台ユネスコ第三係長】

 仙台と申します。よろしくお願いいたします。

【野田ユネスコ協力官】

 以上でございます。

【植松自然科学小委員会委員長】

 どうもありがとうございました。

 続いて、本日の会議の配付資料について事務局から説明をお願いします。


 (事務局より配付資料について説明)


【植松自然科学小委員会委員長】

 それでは、議題1、「政府間海洋学委員会(IOC)分科会、国際水文学計画(IHP)分科会、人間と生物圏(MAB)計画分科会の構成について」に入ります。

 なお、本議題は人事案件の審議となりますので、日本ユネスコ国内委員会の会議の公開手続第1項に基づき非公開とさせていただきます。傍聴者の方は、一時退出ください。


 (傍聴者退室)


 <議題1.政府間海洋学委員会(IOC)分科会、国際水文学計画(IHP)分科会、人間と生物圏(MAB)計画分科会の構成について(非公開)>

 (人事に関する事項のため、非公開)


【植松自然科学小委員会委員長】 

 それでは、議題2、「日本ユネスコ国内委員会の活動に関する報告について」に入りますが、ここから再び公開といたします。


 (傍聴者入室)


【植松自然科学小委員会委員長】

 まず、平成27年11月の第38回ユネスコ総会に関して、事務局から報告をお願いいたします。

【野田ユネスコ協力官】

 それでは、配付資料の資料2を御覧いただきたいと思います。

 昨年11月5日、ユネスコ総会が開かれまして、馳文部科学大臣が出席をしております。4ぽつの「概要」のところから御覧いただきたいと思いますけれども、まず、(1)「一般政策演説」ということで、馳大臣から、ESDの推進、サステイナビリティ・サイエンスの推進、また、文化多様性の推進について述べますとともに、記憶遺産事業の在り方等について演説をしたところでございます。

 (2)「ボコバ事務局長との協議」。これは、馳大臣がボコバ事務局長と会談を行いまして、記憶遺産事業の改善を働き掛けますとともに、G7教育大臣会合への参加の要請等を行ったところでございます。

 2ページ目は、(3)、これは関係国とのカウンターパートとなります大臣とも会談を行ったということでございます。

 (4)、ユネスコ/日本ESD賞でございますが、これは日本政府の支援によりまして、2014年10月、執行委員会で創設された賞でございます。第1回といたしましては、グアテマラ・エルサルバドル、インドネシア、ドイツの3団体が受賞いたしまして、馳大臣が副賞を授与いたしました。

 2ぽつのユネスコ国内委員会会長ステートメント、こちらは去年、国内委員会で議論をしていただいて策定されたものでございますが、同じくユネスコ総会に出席をいたしました安西国内委員会会長からボコバ事務局長に、このステートメントを手交したところでございます。ステートメントの内容につきましては資料3に付けさせていただいております。

 3ぽつ、「その他の主な決定事項」、丸1といたしまして、昨年の9月の国連総会の際に各国首脳が合意をいたしました「持続可能な開発のための2030アジェンダ」、これにつきましては、ユネスコにおいても関係分野における各国の取組を主導していくことを確認いたしまして、また、教育分野については、「教育2030行動枠組み」というものを採択したということでございます。

 丸2の「ユネスコ世界ジオパークの正式事業化」でございますが、ジオパークにつきましては、地質学的に貴重な地域を認定いたしまして、研究、教育、また、地域の振興に生かしていこうとする事業でございますが、この事業について昨年のユネスコ総会において、ユネスコ世界ジオパークとして正式事業化することが決定されております。こちらについては、また後ほど議題に挙げさせていただいておるところです。

 以上でございます。

【植松自然科学小委員会委員長】

 どうもありがとうございました。

 引き続いて、平成27年4月以降の日本ユネスコ国内委員会自然科学・人文社会科学分野の活動に関して、事務局から報告をお願いいたします。

【野田ユネスコ協力官】

 それでは、資料4を御覧いただきたいと思います。こちら、主に、先ほどのIOC、IHP、MAB分科会の関係の活動の報告になります。

 最初にIOC関係でございますが、1ページ目の最初、こちら、IOCの地域委員会であります西太平洋海域小委員会(WESTPAC)の政府間会合が昨年5月にプーケットで開かれておりまして、植松IOC分科会主査その他が出席されました。

 その下が、IOCにつきましては別途総会が設けられておりますが、昨年の6月にフランス・パリでこの総会と執行理事会が開催され、植松主査そのほかが出席をし、2016年から17年の事業予算等について審議を行いましたほか、我が国が引き続いて、このIOCの執行理事国に選出されております。

 次のページが、IOC分科会の委員を務めていただいております東京大学の道田先生がIOCの副議長を務められるなど、海洋分野における日本の国際的地位の向上に貢献されたということで第8回海洋立国推進功労者表彰を受賞されております。写真は、マレーシア・トレンガヌ大学名誉博士号の授与式でございます。

 また、その下の方が、先ほどのWESTPACのSomkiat議長ほかが文部科学省を表敬訪問されたという内容でございます。

 次のページがIHPでございますが、第7回世界水フォーラムが昨年4月に韓国のテグで開催されておりまして、ICHARMの竹内先生でありますとか、IHP分科会、当時、調査委員でいらっしゃいました立川先生等が出席されております。

 その下が、乾燥地における水・開発情報の地球規模ネットワークアジア会議等についてでございまして、これは昨年の6月にイランのテヘランで開催されておりまして、水管理の理解推進でありますとか情報共有、人材育成等について議論が行われております。

 次のページが、ユネスコ国際科学シンポジウムということで、昨年の7月に京都大学と滋賀県琵琶湖環境科学研究センターにおきまして、「ポスト2015持続可能開発目標枠組みにおける水質モニタリングに関する科学技術と政策の革新」という議題で開催されております。松浦ユネスコ前事務局長ほか、当時のIHP分科会、寶主査等が参加をされております。

 また、その下が、同じくIHPのアジア太平洋地域の運営委員会がインドネシアのメダンで昨年10月に開催されておりまして、当時、IHP主査を務めておられました寶先生、立川先生等が出席をされております。

 それから、1ページ飛ばしまして、IHPにつきましては、毎年、トレーニングコースということで、アジア太平洋地域の人材育成のために開催されておりますものでございますが、今年は京都大学で開催、参加者14名であったということでございました。

 その下からMAB計画の活動でございますけれども、昨年6月、このMAB計画の国際調整理事会がパリで開催されておりまして、MAB計画分科会の松田調査委員ほかが出席しております。このときに、2015年から25年までのMAB活動の戦略文書というものが採択されております。

 それから、その次が東アジア・ネットワーク会議が昨年の10月に長野県山ノ内町で開催されておりまして、MAB計画分科会の主査であります礒田委員ほかが参加をしていただいたということでございます。

 また、そのとき、同時開催といたしまして、日本ユネスコエコパークネットワーク会議の全国大会といったものも開催をされております。

 また、次のページ、ユネスコ世界ジオパークの関係でございますが、昨年9月に、これはまだユネスコの正式事業化される前でございますが、アポイ岳が世界ジオパークとして認定されております。その下の世界ジオパーク正式事業化につきましては、先ほど御報告をさせていただいたとおりでございます。

 以上でございます。

【植松自然科学小委員会委員長】

 どうもありがとうございます。IOC、IHP、MABの分科会、それぞれ皆さん、国際的に非常に活躍されているという報告で、本当に日本も頑張っているなというのを感じます。

 余談になりますが、道田先生がマレーシアのトレンガヌ大学名誉博士号、非常にカラフルなガウンを着ていましたが、実は、そのまま本人が頂いて持ち帰ってきたということで、しばらく研究室に飾っておりました。日本の大学に比べると華やかな卒業式というか、式典だったと聞いております。

 続いて、サステイナビリティ・サイエンスの概要と最近の動きに関して、事務局から報告をお願いいたします。

【福田国際戦略企画官】

 資料5でございます。「サステイナビリティ・サイエンスの概要と最近の動きについて」でございます。「サステイナビリティ・サイエンスとは」ということで、既に御承知の方もいらっしゃると思いますけれども、喫緊の地球規模課題の解決に向けて、細分化した学問領域ごとに取り組むのではなく、自然科学と人文・社会科学の多様な学問分野の知を統合して取り組むことを促すアプローチであるということでございまして、日本学術会議ですとか、いろいろな先生方の御助力を賜りながら、こういったことを進めていくべきであるという、我が国としての提言というものを、既に提言としてまとめたものをユネスコなどにも提出しているところでございます。

 この働き掛けてきた結果、下の3の「過去の取組」のところで、少し飛びますけれども、2013年11月のユネスコ総会において、ユネスコの次期中期戦略、それから、事業・予算にその概念が盛り込まれるということにすることができました。このことは、次の予算においても同様に盛り込まれているところでございます。

 私どもといたしまして今進めているところでは、この真ん中、2ぽつのところでございます。「当面の取組予定」でございますけれども、サステイナビリティ・サイエンスを世界に普及させるためのシンポジウムの開催ということでございます。つまり、概念としてのサステイナビリティ・サイエンスというものの理解は得られたとしても、それを具体的にどのように形作っていくのか、そして、研究者の先生方にどのようにそれに関わっていただくのか、また、それを政策にどのように反映していくのかといったようなことについて、多様な分野の研究者の方に集まっていただいて、そういった詳細な議論をしていただく場というものを提供することが必要と、このように考えている次第でございます。

 これは、日本の財政支援によりまして、そういったシンポジウムを開催することをユネスコで調整しておりまして、それもユネスコの個別の局ではなくて、複数の局の連携により開催するということになったのですが、国際機関も縦割りでございますので、こういった調整、非常に難を要したわけでございますけれども、そういった調整がほぼ整いつつありまして、本年、そう遠くない時期に、早速、第1回のシンポジウムを開催できる見込みでございます。私どもといたしましては、これの第2回、第3回をつなげていき、そして、またその成果を各国に発信していくというように取り組んでいきたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

【植松自然科学小委員会委員長】

 どうもありがとうございます。ただいまの活動報告について、何か御質問、御意見はございませんでしょうか。もしありましたら、お願いいたします。

【猪口委員】

 どうもありがとうございます。立派な活動を相次いで展開されていることで敬意を表したいと思います。国連と我が国との関係で、実は12月に世界津波の日の制定ということが、多国間外交として成功を収めました。これは、11月5日を世界津波の日と国際の記念日として国連が制定するものであって、日本が提出した決議案、これに最終的には多くの、「cosponsor」と呼びますけれども、共同提案国が賛成をしつつ、自分も提案国側になりたいと申し出てくれて、140か国を超える共同提案国となり、国連総会で12月22日に全会一致で採択されたものでございます。これは非常に画期的なもので、いろいろな東アジアの緊張した関係が場合によってはあるにも関わらず、また、多くの国が内陸国であるにも関わらず、日本がイニシアチブを取った世界津波の日の制定に全会一致採択ができたということでございます。国連外交の大きな成果ということですね。

 私の質問は、また、お願いでもあるんですけれども、世界が日本の防災努力とその知見、津波のみでなく水害、あるいは、そのような作用の研究、これを評価して、そして、この分野のイニシアチブは日本発なので、それをもって11月5日、毎年めぐるたびに、いろいろな研究を深め、Awarenessといいますか、英語では「Tsunami Awareness Day」というんですね。そういうAwarenessを広げて、備えるといいますか、多くの人がその知識を持つことによって、みずから、あるいは周りの人を守ることができ、政府も自治体もそのような研究と防災政策の推進の責任を負う、こういうことが求められることだと思うんです。

 今後、11月5日をめぐるたび、世界は日本にその知見を求めるだろうと思いますので、私のお願いは、既に海洋関係の研究が非常に活発でいらっしゃいますので、世界津波の日が制定されて、かなり永久的なものとして世界がそのことを毎年考える日がめぐってくると。そのときに日本が知的なリーダーシップを取れるようにと思いますので、是非国内の研究体制と、あと、ユネスコは国連機関ですので、発信、世界から期待される分野ということで、既にある日本の知見、これを津波の発生構造でありますとか、それに対する備えでありますとか、そういうことをお願いしたいと思います。

 ここからは私の個人的な意見なのですけれども、そのような記念日を制定して、世界中でこの研究を進める体制を取るのはすごいことだと思います。そのとき、人の力で全く防ぐことができないけれども、その影響をできるだけ緩和するための全知全能の努力をするということを日本が主張し、世界の全ての国が賛同したということで推進体制が整うとき、人が防げる、そのような被害、あるいは命の剥脱、こういうことについてどういうことなのかということを問い掛ける運動にもなるのだと思います。ですから、これは単に防災思想の国連展開ではなくて、私的には防災平和の国連展開であると。ですから、それは言う必要もないのですが、この分野に情熱を掛ければ掛けるほど、いかに戦争、紛争、テロ、そういう人が防げることを、それを防いでいけないということがどれほど愚かなことになるのかということを、みんなが自問自答すればいい。そのために、この世界津波の日という、本当に大きな運動として、人の命を大事にし、防げるものは防ぎ、備えるものは備え、万が一のときにはmitigationを行うという、そういう努力をするという迫力を持って、それをやってもらいたいということでございますので、委員長はじめ関係者の研究者の皆様にはよろしくお願いしたいと思います。

【植松自然科学小委員会委員長】

 貴重な御意見、どうもありがとうございます。津波に関しては、IOCも津波警戒・減災システムということで、ハワイとか東南アジア、そういったところで太平洋津波警報センター(PTWC)という早期に津波の到来を予測して警報するという、そういうシステムが確立しており、現在もやっていますし、この間言われました東北での国連防災世界会議でも、やっぱり海というのは非常に大事だと。今年はG7があるので、是非そこでも防災ということで日本がやはりリーディングすればと思います。どうもありがとうございます。

【猪口委員】

 お願いします。

【植松自然科学小委員会委員長】

 ほかに、どなたか御意見お持ちの方いらっしゃるでしょうか。

 では、私から。サステイナビリティ・サイエンスというのは、これはアジア・太平洋地域を今、中心に取り組んでいられて、第1回のシンポジウムというのは、これはもうグローバルというか、ワールドワイドにやる方向なのでしょうか、それともリージョナルな関係国だけで……、だけでと言うとおかしいのですが、どういうふうに……。

【福田国際戦略企画官】

 「過去の取組」の最初のところで、マレーシアで行われているということを書いておりますけれども、基本的には、特にアジア・太平洋に限定することなくワールドワイドに進めていきたいと思っております。したがいまして、第1回のシンポジウムもパリで開催する予定でございます。第2回については、これは恐らくパリとまた別の場所がいいだろうと。ただ、アジアではなくて別の地域でやった方がいいのではないかということで調整を進めております。決してサステイナビリティ・サイエンスに関心を持っているのはアジア大洋州だけではございませんので、そこは先進国、途上国を問わず、幅広に声を掛けて進めていきたいと思っております。

【植松自然科学小委員会委員長】

 はい、分かりました。

 いかがでしょうか。ほかに御質問、御意見ないようでしたら、では、どうもありがとうございました。

 それでは、議題3「日本国内におけるユネスコ世界ジオパーク事業の登録審査業務について」に入りたいと思います。本日は、日本ジオパーク委員会、日本ジオパークネットワークの取組等について御説明をいただくため、同委員会の中田副委員長、同ネットワークの米田理事長に御出席いただいております。お忙しいところ、ありがとうございます。

 まず、世界ジオパークのユネスコ正式事業化に関して、事務局から説明をお願いいたします。

【野田ユネスコ協力官】

 それでは、資料6でございます。先ほども御説明しましたとおり、世界ジオパークにつきましては、1の概要の最初の丸にございますような地層ですとか岩石、地形など、地質学的な遺産を保護いたしまして、研究に活用する、科学教育や防災教育の場とする、また、地域の振興に生かすといったことが目的でございまして、2015年11月現在、33か国・120の世界ジオパークが認定されております。日本からも8地域が、この世界ジオパークに認定されています。

 これにつきましては、正式事業化前におきましては、フランスのNGOであります世界ジオパークネットワークが審査・認定を行っておりましたが、今般、昨年のユネスコ総会において正式事業化されたものでございます。

 2ぽつの「正式事業化について」というところに書いておるとおりでございますが、38回ユネスコ総会において正式事業化。このときに、先ほど申し上げました日本の8つの世界ジオパークにつきましても、ユネスコの正式事業として、ユネスコ世界ジオパークとして認定をされております。

 また、正式事業化後の審査業務についてでございますが、こちらは世界ジオパークネットワークとの連携の下、ユネスコ世界ジオパーク・カウンシルという専門家による会議体でございますが、こちらが審査を行いまして、最終的な認定につきましては、このカウンシルの勧告を踏まえて、ユネスコ執行委員会が行うことになっております。

 参考のところに書いてございますとおり、日本におきましては、先ほどの8つのユネスコ世界ジオパークのほか、独自のものとして、日本ジオパークが31か所認定をされておるところでございます。

 以上でございます。

【植松自然科学小委員会委員長】

 どうもありがとうございます。ただいまの説明について、何か御質問はございませんでしょうか。特になければ……。

 じゃ、青野委員。

【青野委員】

 ユネスコの世界ジオパークに認定されると、何か義務も生じたりするんですかというのが一つ。つまり、認定されることによって、どういうことが起こるのかということ。

 あと、日本ジオパークは31あるということですけれども、これを積極的にユネスコ世界ジオパークに認定してもらおうという、そういう動きになっているのかどうか。すみません、この辺、よく知らなくて。

【植松自然科学小委員会委員長】

 その前に、今からジオパークの委員会とネットワークの方のプレゼンテーションがございますので……。

【青野委員】

 すみません、先走りまして。

【植松自然科学小委員会委員長】

 いや、先に私が、何か御質問はと聞いてしまったので、すみません。ありがとうございます。じゃ、遅れましたけれども、日本ジオパーク委員会及び日本ジオパークネットワークのこれまでの取組と今後の活動予定について、同委員会の中田副委員長、同ネットワークの米田理事長から御説明をお願いします。どうも失礼しました。

【中田副委員長】

 今日はこの場で、ジオパーク委員会の活動について紹介する機会を与えてくださいまして、ありがとうございました。私、副委員長の中田といいます。東京大学に属しています。

 ジオパークの活動は、1990年代からヨーロッパで始まった構想で、2000年に実際にヨーロッパでジオパークが設定されて、2004年から世界ジオパークが発足しています。日本でも、この仕組みがいいなというので、産総研の研究者たちが中心になってジオパーク委員会というのを設置しました。それが2008年です。当初は産総研が事務局をしていましたけれども、昨年からは日本ジオパークネットワークが事務局を担当しています。年に3回ぐらい委員会をやっていますけれども、何をやっているかといいますと、世界ジオパークの下に日本ジオパークがあるんですけれども、それの申請についての審査を行っています。それから、4年に1回チェックをする、そういう機能があるんですけれども、それの審査も行っています。それと同時に、日本ジオパークの中から世界へ申請するところがあるわけですけれども、それの選出を行っているのがこの委員会です。

 ここで申請が出たものは、国内委員会の支持を経て、今までユネスコにある事務局に提出していたという形になります。そのほか、後で紹介されますネットワークと非常に連携して、世界に申請するところ、国内に申請するところにアドバイスをしたり、世界ネットワークの窓口になっている、そういう関係であります。

 委員会の構成は、委員長は設立当初から、元京都大学総長の尾池和夫先生にやっていただきまして、そのほか、関連学会、ここでは地震学会、地理学会、第四紀学会、火山学会、地質学会、そこから推薦される委員で構成されています。

 そのほか、地質調査業協会連合会の代表、自然公園財団の代表、日本ジオパークネットワークの代表がここの委員会を構成しています。オブザーバーとして、関連省庁、内閣府、外務省、文科省、環境省、経産省、そういうところが毎回参加してきています。

 仕組みを絵に描くとこのようになるわけですけれども、繰り返しですから省略しますが、日本ジオパークの中にジオパークを目指す地域があって、正会員になるとジオパークなるわけですが、その中から世界を目指すところがある。そういうところに対して認定、あるいは選出作業をやっているのが私たちの委員会です。選出方法は、申請書をプレゼンテーション、それから現地審査という形で行います。

 審査の基準は何かというと、基本は世界のジオパークの概念にのっとっています。御存じかもしれませんが、ジオパークというのは、地形、地質学的に重要な資源がある、これを「ジオサイト」と呼んでいますけど、そういうものを含んで、それを保全することと、それを活用する、教育とか観光に使う、そういう仕組みで地域が経済的に発展するような、そういうボトムアップの仕組みのことです。

 その発想は、地形、地質というのが物事のベースにあって、その上に生態系という多様性がある。さらに、その上に人間生活が営まれているわけです。ですから、これを「ジオ」と呼んでいますけど、ジオから文化まで、そういうものを包括したそういう仕組みのことです。

 自然の価値というのは、国際的には国際地質科学連合というところで独立に評価します。日本の場合は、我々委員会の中で、価値があるかどうかという審査を行ってきています。そういう具合にして、地質学とか、それに関連する科学を推進することによって、教育、文化、交流、ユネスコの目的を達成するための貢献をやっているということです。

 もう少し具体的に言うと、ジオパークというのは実はそういう仕組みのことなんですけれども、実際にはエリアのことを指します。そこでは、ジオサイトを複数含んで、ある程度の大きさがあること、つまり、地域が含まれるということですね。それで、地域を管理する団体、この場合、ほとんど自治体ですけれども、自治体が管理するということです。それで、関連する行政、研究者、地域住民が一緒になってこの仕組みを盛り上げていくということです。

 世界の自然保護プログラムとしては、世界自然遺産、ユネスコエコパークがあるわけですけれども、基本的にはこういうものと地域が完全にはオーバーラップしない。一部オーバーラップするにしても、きちんとした理由があるということです。両方に相乗効果があるということが確認できた段階でジオパークと認めましょうということになっています。

 具体的に審査ってなかなか難しくて、採点表みたいなもののがあるんですけど、それよりも自治体、地域による現状、あるいは背景というのは違いますので、特に審査に当たっては、自治体の長、事務局と対話をするわけですね。その上で、ここがジオパークとして持続的に発展できる体制があるか、それから、財政的な裏付けがあるか、将来計画があるか、ジオパークとしてなれるだけの教育とか、あるいはツアーが実施されているかどうかということを重視します。基本は、審査は公開するということですね。

 ちょっと文字が多くて申し訳ないんですけど、世界ジオパークというのはどれぐらいあるかというのは、先ほど事務局で紹介されましたけど、2004年にできました。それが時間とともに増えて、今、120あるわけですね。その中で中国が4分の1を占めます。日本はそのうちの、2009年から始まっていますので、現在、8個です。これは、日本ジオパーク全体の活動の変化を示しています。

 国別に見ますと、今の中国を除いて、実は日本は3番目に多くジオパークを有しています。そういう意味で世界が日本に期待するのは、これから非常に大きく、世界的な貢献を打ち出さなければいけないと思います。

 審査のプロセスというのは、細かくなるからあれですけれども、結構時間がかかります。相談会から始まって、申請、審査を経て、これまでは翌年の9月に国際会議の場で承認されていたわけですが、今後は、先ほど紹介ありましたように、ジオパーク・カウンシルで最終的な承認をして、それをユネスコ執行委員会の承認を得るという形になりますので、2年半から3年ぐらい掛かることになります。

 現在、申請したものがどれぐらい通るかというと、昨年は35%の認定率です。日本はこれまで、2009年に3か所、10年に1か所、11年に1か所、12年には保留ということになって、翌年にこれは認定されました。これが阿蘇で、昨年がアポイ岳です。伊豆半島も同時に出していましたけれども、問題があって内容的には保留ですが、今度の新しいプログラムの下では再申請という形になります。日本では、そのほか、白山手取川、霧島、桜島・錦江湾、南紀熊野が申請を準備しているところです。

 ジオパークのいいところは再審査システムを持っているところで、ほかの二つのユネスコプログラムとは異なるところです。審査で、まず認定されますと、4年後に必ず再認定が来ます。そこでグリーンカード、イエローカード、レッドカードがあるわけです。レッドカードはガイドラインをひどく逸脱している場合、2年という場合は条件付きですから、ちょっと不満があるけれども通しましょうということです。2年後に、もう一回、再々審査があって、そこでオーケーですとグリーンカードですけれども、イエローカードをもう一回もらうと、出てくださいということになります。

 こういう仕組みは、ジオパークの世界的なクオリティを維持する上で不可欠なわけですね。その上で、ネットワークというのは後で話しますけれども、ネットワークも非常に重要な役目をします。これが、背景に写っているのは地球ですけど、ヨーロッパ、東アジアに偏っています。今後、ユネスコプログラムになった段階では、こういうところにどんどん世界ジオパークを増やしていきたいということを世界的には考えられています。世界ジオパークネットワークの下に、ヨーロッパのネットワーク、アジア太平洋ネットワークがあります。さらに、各国の下に、日本の場合は日本ジオパークネットワークがあるわけです。

 ここでも、各国にジオパークネットワークがありますけど、日本のジオパークが最も体系立って経験を積んでいる、すぐれたネットワークです。こういう経験、あるいはノウハウを海外に輸出して、こういう発展途上国でも今後作ることが国際的には期待されています。国際会議はいろいろ日本でも開かれていますし、ここにいらっしゃる黒田先生も参加されました。

 ユネスコの事業化でどう変わるかというと、基本的に大きくは変わりません。ただ、ユネスコというブランドがありますので、そういう国際的な価値が問われることと、そのために審査のハードルがもっと高くなるだろうと思っています。それから、審査に国際的な判断、そういうものが入らざるを得ないだろうと思っています。

 これによって、先ほどのキャパシティビルディングが可能になることと、各ジオパークにとっては外部資金が取りやすい、そういう状況が生まれるだろうということを期待しています。

 日本に期待されていることですが、一般的には、日本からもいろんな貢献をすること。例えば、世界の審査員をもっと多く派遣するとか、ユネスコのブランドを保つために、なかなかうまくいかないところはおやめくださいとか、積極的にしてくれと、そういうこともありますし、とにかくネットワークを活用してクオリティを高くする、世界にジオパークを増やすことを期待されています。特に日本の場合は、先ほどからあったように、津波とか震災を体験しているわけですから、日本に対する期待も大きくて、特にジオパークというのは、自然保護だけではなくて、過去に起きた環境変動、自然災害についても学ぶいい場所です。それから、将来に何が起こるかということも学ぶ、そういうすぐれた野外教室でありますので、日本での経験を、特に教育、そういう面において世界的に主導することが期待されています。

 以上で委員会の説明は終わりたいと思います。次は、理事長。

【米田理事長】

 皆さん、こんにちは。私、日本ジオパークネットワークの理事長を務めさせていただいております糸魚川市長の米田でございます。きょうは、このような機会をいただきまして、ありがとうございます。

 日本ジオパークネットワークの目的は、世界ジオパークのガイドラインに沿って、その目的の向上に向かって推進することと、住んでいる地域住民との自然の共生、また、資源保護への意識向上を図ることであるわけでございまして、具体的には、自分たちの持ち得る自然、資源に対して愛着と誇りを持ってもらうことが保護、保全につながると捉えております。

 それには地域の存続が大切であるわけでございまして、ジオツーリズムによりまして来訪者を拡大することによって、また、地域に還元が起きまして持続可能な社会になっていくという、鶏が先なのか卵が先みたいな感覚で地域が大切に捉えていければと思っている次第であります。

 そのようなためにも、このネットワーク活動をしっかりしながら、ジオパークの品質を管理し向上させていくことがネットワークの大きな仕事と捉えているわけでございます。現在、日本ジオパークの認定地域団体が39団体、そして、今それを目指そうとしているところが16団体。また、今、関心を持っているところが15団体ぐらいあるわけでありまして、非常に多くの団体が取り組んでおります。全国にはこのように展開いたしております。そして、全国の市町村の数は、1,718市町村あるわけであります。今、ジオパークに関係いたしております市町村は2,200を超え多くの市町村がジオパーク活動をいたしております。

 何でそんなに多くの地域がジオパークを目指すかというのを、私の糸魚川市で少し説明させていただきたいと思います。糸魚川市はこのような状況の地形にあるところでございまして、東京23区がすっぽり入るぐらいの面積を持っており、その中に4万5,000人が住んでおります。糸魚川市は1987年に、御存じのように、糸魚川静岡構造線、フォッサマグナがございまして、その断層の露頭を地域振興につなげていきたいということで取組をさせていただきました。そして、1991年にその場所をジオパークと名付け、1994年には博物館を造り、学芸員を雇い、そこを情報発信基地として進めてまいりました。

 しかしながら、なかなか目的は達せられず、軌道には乗らない状況であったわけでございます。しかし、2007年5月8日に学芸員の案内で、地底6,000メートルの地層が見られるところでジオパークの情報を聞きました。そのとき私は、これだと思いました。と申しますのは、ただ単に糸魚川市だけでジオパークという活動をしてきても、何ら注目を浴びない、へえ、そうなんだという形ぐらいで終わっていたわけでございますが、やはり世界基準であったり世界のレベルの位置付けの中で評価いただければ、多くの皆様方から御理解いただけるのではないかな、そのような形で取り組ませていただいたわけでございまして、また、恐らく全国のジオパークを目指す人たちも同じだろうと思っているわけでございまして、自分たちの住んでおる自然、資源、非常にすぐれているんだという気持ちの中で、ただ単にそこだけを言っていても広がりはないわけでございますが、ネットワークの中で、みんなで情報発信すれば評価をいただき、価値も付くし付加価値も増えるんだろうということで増えてきているのだろうと思っておる次第であります。

 そのようなことで、2007年10月4日に、NPO法人地質情報整備・活用機構の情報を頂く中で、全国で目指しているところを情報収集させていただいて、まだジオパークというのは分からない状況があったものでございますので、調査、研究をしていこうということで、ネットワークの前身であります日本ジオパーク連絡協議会を作っていこうという発起人会を開きまして、その年の12月26日に正式に日本ジオパーク連絡協議会を設立いたしました。そのときには13地域50名が参加いたしましてスタートさせていただきました。地方の首長が多く集まってスタートさせていただきました。その情報をお聞きした中で、もう認定をする組織が必要だろうということで立ち上げていただいたのが、今、前段でお話しいただきました日本ジオパーク委員会であるわけでございまして、委員長は現職でありました京都大学の尾池総長にお受けいただきました。そのときにお願いに行ったりお礼に行ったりいたしたときに、尾池委員長は、世界のジオパークは古い大地が多いので、日本のジオパークは新しい大地であることを明確にし、それを特徴にしていこうということを申されました。

 そのときに我々といたしましても、そうであるなら、やはり災害、減災・防災も入れていただけないだろうかというお話をさせていただいて、日本は今、そういう特徴のあるジオパーク活動をしておるわけであります。

 ジオパークがスタートいたしまして、日本ジオパーク全国大会、糸魚川大会が第1回であるわけでございますが、昨年、第6回の日本ジオパーク霧島大会が開かれました。第1回目のときには約1,000人の人が集まったわけでございますが、霧島大会には1万人の人たちが集まっております。非常に多くの人たちが集まり、関心を持って、今、進めさせていただいております。そして、いろんな人たちがお集まりいただいております。若い人から年配の方までお集まりいただき、学者の皆様方からまちのガイドさんまで集まっておるわけであります。そして、大会には当然、いろんな分科会が開かれ、問題、テーマを中心にして論議をいたします。また、パネルディスカッションやワーキングなどをしながら自分たちのジオパーク活動を発表したり、そしてまた、それをみんなで共有しながら、さらにボトムアップなどを進めておるわけでございますし、また、大会以外でも問題をテーマにしながら全国で集まったり、また、各ジオパークに集まり、研究会などを進めております。非常に多くの皆様方が集まっております。現地見学もありますから、いろんな服装でいるわけでございますが、学者の皆様方や地元のガイド、そういった方々も一緒になって、非常にアットホーム的に進めております。

 そして、このような分科会、また、日本ジオパークネットワークの運営会議なども多く行っております。そして、それらで得たいろんな情報は、その都度まとめ、各ジオパークにフィードバックするわけでございますが、中身のいいものにつきましては機関誌の中に載せさせていただいております。地方自治体は非常に厳しい財政状況の中でありますが、やはり自らの財源の中で出し合いながら運営をしているのが実情でございます。そしてまた、今、いろんな情報提供させていただいて、マスコミ等にも載せていただいて、普及啓発にも非常に力を注いでいただいております。

 そして、活動の成果でございますが、前段でも申し上げましたように、まだ8年しかたっていないのに、全国にこのように広がりを持っておるわけでございます。また、その認知度も今、非常に高くなっておりまして、これは早稲田大学のマニフェスト研究所が調査をしていただいた認知度向上のデータでございますし、また、委員長の尾池先生が新聞掲載数を検索いただいておる件数がこのように載っておるわけであります。ちなみに、当初はインターネットで検索しても、NHKのスタジオパークしか出なかったということもございました。

 先ほどのお話にもありましたように、非常に多様性のあるジオパークでございまして、今、ジオパーク活動の中においては、いろんなジャンルが広がりつつあるわけでございまして、ガイドの部分であったり防災教育、そしてまたジオ鉄という鉄道、やはり断層のあるところに鉄道が通っているということで、鉄道とジオを関わり合わせたり、また、ジオ食などもやっております。特にジオ食なんかは、お菓子を地層などに見せるような作り方をして、大会が始まると、本当にこんなに売れるのかという、段ボールみたいなのに持ってくる菓子がぼんぼん売れる。3,000円以上する高いものなんですが、ぼんぼん売れる状況がございます。

 そのようなこともあって、昨年の霧島大会では表彰をさせていただきました。非常にユニークな取組もその中で結構行われております。そして、何よりも非常にありがたいのは、地質学とか地理学というのは大学の入試から消えたとき、学生の人気が減って、何か聞くところによりますと、絶滅危惧種と同じような状況だということだったんですが、ジオパークに取り組み始めましたら、各地域で専門員が必要だという状況になりまして、このようなジオパークの就職相談なども出てくるようになり、専門員、本当は正式に雇っていただければいいのですが、臨時だというような身分のところもあって、何とか正職員にしてもらいたいなと思っております。そのような効果が今、表れておるわけであります。

 しかし、いいばかりではなくて、こういう人気にただ乗りたいという地域も現れておるわけであります。私は、決してそのような、ただ人気にあやかって認定ありきではいけないと思っておるわけでございまして、昨年の霧島大会におきましては、出席をいたしております50人ほどの首長を集めて、首長セッションという形の上、他の人たちを中に入れないで、最前線にある基礎自治体の首長はしっかりと地域住民と連携を取り、一体となってジオパーク活動をしていかないと本来の目的を達せないんじゃないか。そういう形で取り組まなかったら、悪いですけれども外れてほしいと言うぐらいまで言わさせていただきました。それにはやはり、昨年の11月17日に正式事業化になったユネスコの事柄を見据えながら、我々はしっかりとした目的を作りながら、ハードルを超えていくことが大事であるわけでございますので、その辺を御理解いただきたいという話もさせていただきました。

 そして、我々が目指すものは、今までと同じように、これからも地域に住み続け、10年、30年、50年先もなくならない地域としなくてはいけないわけでございますので、ジオパーク活動を進めながら取り組んでいきたいと思っております。

 以上でございますが、よろしくお願いいたします。

【植松自然科学小委員会委員長】

 どうもありがとうございます。中田先生が、日本のジオパークが非常に進んでいるとおっしゃったのは、先ほどのお話で本当に分かりました。

 引き続きまして、日本ジオパーク委員会への認証通知案に関して、事務局から説明をお願いいたします。

【野田ユネスコ協力官】

 それでは、資料7でございます。こちらの通知案につきましては、国内委員会の会長から日本ジオパーク委員会の委員長宛ての通知の案でございまして、昨年のユネスコ総会で決議されました、正式事業化の際に決議をされましたジオパークの作業指針の中に、各国においてユネスコへ提出します申請の審査業務等を行いますナショナル・コミッティを国内委員会として認証することができるという規定がございますが、それに基づきまして、日本ジオパーク委員会をナショナル・コミッティとして認証し、また、登録審査業務に関する権限ある機関として認証するという通知案でございます。

 1ぽつ以下に留意事項を記載してございますけれども、最初の1ぽつが、次の事項を適切に実施することということで、1から5まで、募集方法についての審議でありますとか選考基準の策定、推薦地域の選定などとなってございます。

 次のページの2ぽつのところが、当然でございますけれども、作業指針を遵守するように、また、3ぽつが、選定した場合、ユネスコへ推薦する推薦地域の候補を選定した場合は国内委員会に報告すると。4ぽつが、その報告のあった推薦地域について、国内委員会からジオパーク委員会に説明を求めることがある。5ぽつのところは、日本ジオパーク委員会は、国内委員会の助言を適切に求めること。また、6につきましては、この認証によって、財政上その他の支援を講ずるものではないという趣旨を記載させていただいております。

 以上でございます。

【植松自然科学小委員会委員長】

 どうもありがとうございます。ただいまの説明について、何か御質問ございますでしょうか。

 じゃ、青野委員。

【青野委員】

 先ほど二つ目に言ったことは、お答えはイエスだったと思うので、それで。つまり、日本ジオパークをさらに世界ジオパークに昇格させるというか、ステップアップさせるということなんだと思うんですけれども、さっき、ちょっと「義務」という言い方をしましたけど、それは条件ということなのかもしれませんけれども、保護、保全というのは当然だと思うんですけれども、例えば、教育とか何か、そういう幾つかのコアとなる主たる条件というのがあるんだと思うんですけれども、それがどういうものなのかというのと、例えばの話、さっきのジオ菓子は、あれ、伊豆半島のものだと思うんですけれども、伊豆半島は、先ほどの話にもあったように、ちょっと条件が不足しているということだったと思うんですけれども、例えばの話、それはどういうものなのかというのを教えていただけないかなと。

【植松自然科学小委員会委員長】

 具体的な……。

【青野委員】

 例えばということでいいんですけれども。

【植松自然科学小委員会委員長】

 何か、お願いします。

【中田副委員長】

 今の、伊豆半島がどうして保留になったかという、そういうことですね。実は二つ理由がありまして、一つは、先ほど言った、ほかの機関で学術価値を判断するんですけれども、そこの判断が余り芳しくなかったということです。ですから、科学的価値をもう少し明確にするようにというリクエストが来ています。

 もう一つは、イルカの問題ですね。それがやはり少しはひっかかったということです。ですから、それら二つを解決すれば、次、再申請のときは問題ないだろうという気はしています。

【青野委員】

 やっぱり実際に認定されたときにはというか、その条件としては、教育活動みたいなことも審査の対象になっているんですよね。

【中田副委員長】

 もちろん審査の対象に、教育活動が行われているかというのは重要な事項となります。

【青野委員】

 じゃ、やっぱり学芸員が必要……。

【中田副委員長】

 そうです。それを支えるための事務局スタッフ、あるいは専門員がいるかどうかというのも重要な判断材料です。

【青野委員】

 分かりました。

【植松自然科学小委員会委員長】

 よろしいですか。

【青野委員】

 はい。

【植松自然科学小委員会委員長】

 じゃ。

【黒田(玲)委員】

 去年、偶然、第4回のAPGNで特別講演させていただいて、山陰でやったんですけど、地磁気の逆転の場所とか玄武洞とかいろいろ見せていただいて、非常にいい活動だと思ったんですが、先ほど、世界ジオパークになると、日本だけがやっている4年に1回の再審査、これはどういう関係になるんでしょうか。日本で再審査してだめだと言っても、世界登録……。

【中田副委員長】

 すみません。あれは、世界の審査の図を描いたんですね。それを日本でも導入しているということです。

【黒田(玲)委員】

 ああ、そうなんですか。じゃ、それはずっと続けていくということですね。

【中田副委員長】

 そうです。はい。

【黒田(玲)委員】

 はい、分かりました。ありがとうございます。

【植松自然科学小委員会委員長】

 ほかにどなたか、御意見、御質問ございますでしょうか。

 じゃ、私から。ユネスコ世界ジオパークというのは、日本で八つ動いている。動いているというか、活動されていると思うんですが、実際にそういうふうにサイトになったということで、大きなメリットとかデメリットというんでしょうか、具体的に何かあればお聞かせいただきたいかと思うんですが。

【米田理事長】

 デメリットはございません。メリットは、やはり自分たちのジオパークが世界に通用したという、自尊心なり自負心は非常に高まっておりまして、地元の人たちは非常に喜んでおります。

【植松自然科学小委員会委員長】

 8か所で、余りにも観光客が来過ぎて困るとか、そういうようなことはまだ、まだというか、そういう性格ではないと思うんですが。

【米田理事長】

 本来はそうなりたい部分もございますが、そこまではいっておりません。しかし、広く関心は持たれて、最近は糸魚川のジオパークを見ると、リュックをしょったりトレッキングシューズで訪れる方が増えております。

【植松自然科学小委員会委員長】

 そうなんですか。国際的には、外国から見に来られる方はまだこれからですか。

【米田理事長】

 当然、多国語で表記もしたり、看板等も整備いたしているわけでございますので、まだユネスコ世界ジオパークとなる前の段階であっても、英語表記などは必要と位置付けられております。

【植松自然科学小委員会委員長】

 分かりました。

 いかがでしょうか。ほかに。8年間で1万人の方が集まって、そういう議論するとか話し合うというのはすばらしいことだと思います。

 それでは、自然科学小委員会委員の皆様におかれましては、資料7の通知案について、ただいまの議論に基づき、事務局で修正し、最終的な文言については私に御一任いただくということでよろしいでしょうか。


 (「異議なし」の声あり)


【植松自然科学小委員会委員長】

 ありがとうございます。

 それでは、本件は2月1日に開催予定の日本ユネスコ国内委員会総会において御報告させていただきます。中田副委員長、米田理事長におかれましては、お忙しい中、御出席ありがとうございました。

【中田副委員長】

 どうもありがとうございました。

【米田理事長】

 どうもありがとうございました。

【植松自然科学小委員会委員長】

 それでは、最初に申し上げたとおり、ここで進行を人文・社会科学小委員会の吉見委員長にお願いしたいと思います。

【吉見人文・社会科学小委員会委員長】

 吉見でございます。後半の議事を担当させていただきます。

 それでは、早速、次の議題に移らせていただきたいと存じます。議題4でございます。「ユネスコの事業等を通じた加盟国間の相互理解と連帯のあり方について」です。

 まず、事務局から資料の説明をお願いいたします。

【福田国際戦略企画官】

 資料8を御覧いただきたいと思います。「日本ユネスコ国内委員会会長ステートメントを踏まえた今後の取組のあり方について」ということでございます。冒頭、昨年のユネスコ総会について御報告申し上げましたけれども、その中で、ユネスコの創設70周年に当たって、国内委員会の会長、安西会長名のステートメントというものを作成し、そして、ユネスコのトップであるボコバ事務局長にも手交したところでございます。

 その中で、今後のユネスコの目指すべき方向性といたしまして、「国際社会における『知的リーダー』としての役割」、これに加えまして、「持続可能な社会の実現への貢献」及び「多様性を尊重する社会への貢献」、これを打ち出したところでございます。

 また、昨年11月にユネスコ総会で、馳文部科学大臣が一般政策演説を行った中におきまして、ユネスコが実施する事業が「人の心の中に平和のとりでを築く」とのユネスコの基本精神に基づき、ボコバ事務局長が強調しているとそく聞するところの「分断ではなく融合を」、これをもたらすため、加盟国間の相互理解と連帯を一層強化するためのものでなければならないという旨を強調したところでございます。

 このことに関しましては、昨今、ユネスコをめぐりましては、例えば、記憶遺産ということで、総会でも馳文部科学大臣から申し上げたことがございましたけれども、その事業の在り方等々につきまして、国内外におきましても議論が起こっていることは承知のことかと思います。もともとユネスコという国際機関は、本来、国家と国家の間で様々な利害の対立ですとか、そういったことが起こらざるを得ない現実の中で、国の違い、それを超えた対話というものを、例えば、外交官の間だけではない、学者でありますとか、あるいは芸術家でありますとか、そういった方々が様々な立場で対話を行うことがユネスコとして期待される役割であったところでございます。

 まさしくそういったことが、国際社会における知的リーダーとしての役割であるわけでございますけれども、一方で、申し上げたような記憶遺産でありますとか、あるいは、それ以外にも様々な利害の対立というものがユネスコの中で決して見られないわけではない、そういった状況におきまして、対話というもの、また、相互理解と連帯を促進していくことを、このステートメントに基づきまして、我が国として強く呼び掛けていく必要があるのではないかと考えているところでございます。

 そういったことを呼び掛けるに当たりましては、それを具体的にどう進めていくかという具体性を持って働き掛けていくことが大変重要であると思っております。このことにつきまして、関連する取組の例というものを、やや幅広に記載させていただいたところでございます。当然その中には、本日お集まりの自然科学、あるいは人文、そういったものにとらわれず、中には教育に関するものなども記載させていただいておりますが、きょうは是非、そういった分野にとらわれずに、幅広に相互理解の在り方について御議論いただきたいという趣旨で、論点例として記載させていただいているものでございます。

 関連する取組の例につきまして、簡単に申し上げます。まず冒頭は、「持続可能な開発のための教育(ESD)の推進」でございます。ESDというものを我が国として推進しているということは、既に御承知のことかと思っております。一昨年、2014年のユネスコ世界会議の開催でありますとか、あるいは、昨年、第1回ユネスコ/日本ESD賞、これを我が国の財政支援によりまして授与したなど、我が国の主導によりまして、国内外において取組が広がっているということでございます。

 また、ここには記載しておりませんが、我が国におきましても、ユネスコスクール、これは当然、ESDを行う以外にも様々な取組があるわけですけれども、ユネスコスクールに登録した学校数が1,000を超えるなど、それが我が国の学校においても非常に広がっているところでございます。

 他方で、ESDというものは、持続可能な開発のための教育。そこで言う持続可能な開発というのはどのように捉えていくかというものは、当然、多様性が認められるべきであると考えておりますけれども、他方で、多様性ということから、当然ながら、様々な考え方とがあり得るわけでございまして、そのようにESDの取組が広がっていけばいくほど、逆に本来の在り方、あるいは、どのように進めていけばいいのかというのがなかなかよく分からない、あるいは分かりにくいといったような御指摘を頂くことも多くなってきた次第でございます。

 したがいまして、地球規模の課題について、より具体的な、例えば教育内容を示すべきではないかですとか、あるいは、そういったESDというのを考えていくことによって、批判力ですとか思考力、そういったものが育まれるというような効果があるという指摘もありますが、他方で、そういったような効果というのは、当然、ESDのみに限られるものではないのではないかというような指摘もあります。したがいまして、ESDの在り方を今後どのように考えていくか。それによって、ユネスコを通じた加盟国間の相互理解ですとか連帯にどうつなげていくことができるかというものが、一つ考えられるのではないかと思っている次第でございます。

 次のページをお開きいただきたいと思います。サステイナビリティ・サイエンス、この取組につきましては、先ほど、私どもから御報告差し上げたところでございまして、常にシンポジウムというのを開いていくようなことが予定されているところでございます。他方で、これもESDと若干類似のところがございますけれども、私どもといたしまして、サステイナビリティ・サイエンスというところに、できるだけ多くの、つまり自然科学であるとか、あるいは工学系であるだとか、そういった特定の分野にとらわれることなく、人文・社会も含め、様々な知見を総合的に捉えることができるようなアプローチというものを施行しているわけでございますけれども、それをどのように統合していって、そして一つの体系立った学問にしていけばよいのかといったようなことでありますとか、あるいは、サステイナビリティをどう捉えるか。地球規模の課題と捉える向きもあれば、ただ、そういった科学を行うに当たっては、例えば、そもそも科学を遂行する体制自体がサステイナブルなものでなければならない、そういった事情も当然ながら、先進国、途上国の間でも異なると。そういったことに目を向けずして、このサステイナビリティ・サイエンスを語ることはなかなか難しいのではないかというような御指摘なども頂くところでございます。したがいまして、そういったものをどのように捉えていくかということを各国の間で議論していくことは、それはユネスコを通じた相互の理解というものにも大いにつながっていくのではないかと考えております。

 それから、三つ目でございます。これは、グローバルシチズンシップ教育(GCED)という教育が、これがESDとは別に提唱されているところでございます。このグローバルシチズンシップとは何ぞやというところでございますけれども、広範なコミュニティー及び共通の人類に属するという感覚を指すものであり、地域、国家、あるいはグローバルのそれぞれの層、レイヤーにおける政治的、経済的、社会的及び文化的な相互依存、相互連関、これを強調するものであって、そういった感覚を育む教育であるとされているところでございます。

 具体的には2012年9月ということでございますけれども、潘基文国連事務総長が開始したGlobal Education First Initiativeというものがございますが、その中で、こういった教育を進めていくべきであるというものを優先分野の一つに挙げられているというところでございます。

 現在、こういったGCEDという考え方、それからESDという考え方、もちろん相通ずるところもあれば、また異なるアプローチということも言えようかと思っておりますけれども、ユネスコの事務局においても、こういったものを連携して進めていこうというような形で、今、体制の整備が進められているところでございます。

 また、国家レベルにおきましては、もともとこれは国連事務総長、潘基文さんが開始と書いておりますけれども、御承知のとおり、潘基文さんは韓国の御出身でいらっしゃいます。したがいまして、そういったことも背景にあるのかもしれませんけれども、韓国は比較的、GCEDの推進、これに積極的なところであると承知しておりまして、様々な場でこういったことを国際的な枠組みで推進していくべきであるというようなことを提唱されているということでございます。

 こういった切り口をどう相互理解につなげていくかというところは、それぞれのお立場、様々な御意見があろうかと思います。私どもといたしましても、本日頂いた御意見を踏まえて、それをまた、どのように具体的なものにしていくかということを検討していって、是非それをいい形で呼び掛けていきたいと考えております。

 以上でございます。

【吉見人文・社会科学小委員会委員長】

 どうもありがとうございました。それでは、ただいま頂いた説明資料に基づいて、少し意見交換をさせていただきたいと存じますが、先立ちまして一言私から、最後に出ましたGCED(Global Citizenship Education)について若干補足をさせていただきたいと思います。

 今、福田企画官からの御説明もございましたように、これは潘基文事務総長が三つの優先分野の一つとして大変推進しているものでございますけれども、今日、参考6に、GCED(Global Citizenship Education)についての国連のガイドラインといいますか、パンフレットを付けさせていただきました。この14ページを見ていただきますと、世界市民、Global Citizenshipの概念、基本的な方向性が示されております。国民、国家を超えた形でのグローバルな共同性あるいは人類規模のヒューマニティーズに対する帰属意識、そして、それに関する基本的な認識というものをどのように世界各国で育てていくかという取組である。そのための政治的、経済的、社会的、文化的な相互依存性、相互関係性についての認識を深めていくという趣旨のことが書かれてございます。

 15ページをめくっていただきますと、三つの柱で推進することになっております。一つがCognitive、認知的な次元、もう一つがSocio-emotional。認知的な次元というのは、要するに、世界中でどういう問題が発生していて、そして、どことどこがどういうふうに関係し合っているのかということについての認識を深めるということでございますが、Socio-emotionalなところは、ある種の共同性の世界の中に私たちが生きていることの感覚を育てていくというレベルでございます。そして、三つ目がBehavioural、行動といいますか、じゃ、そこでどう行動することができるのか、行動すればいいのかという実践に関わる次元を三つ立てております。

 これは、ずっと見ていただきますと、29ページのところに全体のマトリックスが示されておりまして、Cognitive、Socio-emotional、Behavioural、この三つの軸について、KEY LEARNING OUTCOMESとKEY LEARNER ATTRIBUTESとTOPICSという、ある種のマトリックスを示して、これに従って、教育のプロジェクトが世界各国で展開しているのが現状でございます。

 さらに31ページを見ていただきますと、それがもうちょっと具体的にどういうトピックを素材にしながら教育活動が展開されているのかということが、31ページに出ている1から9まで、いろいろ出ておりますけれども、いろんな教育のシステムといいますか、カリキュラムみたいなもの、そういうものがここに示されてございまして、今、韓国は大変熱心なんですけれども、韓国だけではなくて、幾つか世界各国の取組が、こちらの47ページ以降に、オーストラリアとかインドネシアとかフィリピンとかイギリスとか南アフリカとか、それぞれの国でどういった形で、Global Citizenship Educationが具体的に取り組まれているかという例が出ております。

 これは、こちらのパンフレットについて一言御紹介申し上げさせていただきましたけれども、サステイナビリティ・サイエンスの方、自然科学を中心に大変積極的に取り組まれているということがあって大きな成果を上げておりますけれども、人文・社会科学を考えますと、こうしたGlobal Citizenship Educationの取組も大変意味があるのではないかと考える次第でございます。これについても御意見を頂けますと大変幸いでございます。一言補足をさせていただきました。

 それでは、今のユネスコ事業等を通じた加盟国間の相互理解と連帯の在り方について、委員の先生方から御意見を頂ければ幸いでございます。

【阿部委員】

 よろしいですか。

【吉見人文・社会科学小委員会委員長】

 はい。

【阿部委員】

 岡山大学の阿部と申します。国内委員会では、教育小委員会の方で、ESDの取組についていろいろと発言させていただいております。その関係で、先ほど、ESDとサステイナビリティ・サイエンスのお話がありまして、ESDについては、国内の状況を見ますと、先ほどお話がありましたように、国連ESDの10年の間に、文科省の方でユネスコスクールをESDの拠点と位置付けるということで1,000校近くになっているということです。その意味で非常に大きな成功を収めていると思うのですけれども、一方で、大学教育の中でのESDの取組が必ずしも十分ではない。私、岡山大学におりますけれども、大学の中では、サステイナビリティですとか持続可能社会については、皆さん方、非常に関心もあるし賛成されるのですが、それを具体的にどう教えるかという話になると、それぞれの専門分野でばらばらのところがございます。それから、文科省のこれまでの取組も、高等教育機関の中でのESDではなくて、どちらかというと小・中・高、学校教育の中でのESDの取組に重点が置かれてまいりました。そういう意味で、高等教育機関の中でのESDの取組をもっと進めていく必要があるのではないかということを常々思っております。

 そういう意味で、2番目のサステイナビリティ・サイエンス、これは分野を超えた形で学問体系として確立して、これを高等教育機関の中で広めていくという努力が必要なのではないかと思います。こういった試みは、東京大学等でサステイナビリティ学の体系化ということで、人材育成にも取り組んでおられると思いますが、そういった成果をもう少しレビューして、積極的に推進していく必要があるという気がいたします。

 特に昨今、グローバル人材育成ということが叫ばれておりますけれども、このサステイナビリティ・サイエンス、あるいはESDの考え方というのは、グローバル人材の育成にとって非常に有益だと思いますので、そういう意味でもしっかりと考えていただければと思います。

 以上です。

【吉見人文・社会科学小委員会委員長】

 ありがとうございました。

 ほかに何か御意見ございますでしょうか。どうぞ。

【黒田(一)委員】

 まず、この会長ステートメントなんですが、ユネスコの知的リーダーとしての役割、それから持続可能な社会の実現への貢献、多様性を尊重する社会への貢献、特に多様性に対する貢献をユネスコができるんだということを、これは歴史的にそういった機関なわけですけれど、改めてここで示して、日本の貢献可能性についても言及してくださったということ、非常によかったと思います。まさに、これから日本がユネスコに関わっていく中で一つの指針になるようなステートメントになっていますので、これを活用していくことが非常に重要なことだと考えます。

 きょうのような機会を持ってくださったことも本当にありがたいことだなと思うんですが、では、どうやってこの方向性というのをユネスコの中でインスティチューショナライズしていくかということなわけですが、これまで、例えばESDであれば、今御紹介もありましたように、ユネスコスクールのアプローチであるとか、ちょっと違うんですが、文化の分野では、まさに、今のジオパークも同じだと思いますけれど、遺産といいますか、認定するというようなガバナンスのやり方、これは特に松浦事務局長のときに非常によくやられて、これが一つのユネスコの持ったグローバルガバナンスへのミーンズとして非常に力強いものになったということだと理解しています。

 また、ESDの分野ですと、ユネスコスクールだけではなくて、ディケードという形でやったということがユネスコのESDの深化にもつながったということで、このような枠組みを、例えば、サステイナビリティ・サイエンス、若しくは多様性についても何か考えていかないといけないのではないかなということを思います。枠組みがなくて、ただ単に理念を提唱するだけでは、どうしてもメカニズムとして国際社会の中で広まっていかない、若しくはガバナンスのツールとなっていかないのではないかなと考える次第です。

 すごくグッドアイデアがあるわけではないわけですけれど、日本がこれまでやってきた、例えばESDについては、2002年に当時の小泉首相がヨハネスブルグのサミットで提唱されて、その2年後にディケードが始まってという形のプロセスを踏んでおります。そういう意味では、首相レベルのところでいろいろな国際社会に対しての発信というのを、まさに考え方、例えば多様性へのリスペクトであるとか、サステイナビリティ・サイエンスを提唱していく方向性が日本としてできることなのではないか。その中で大きなメカニズムを作っていくことが必要なのではないかというのが1点です。

 それから、韓国がGlobal Citizenship Educationを今、本当に頑張っていらっしゃるのは、潘基文さんの関係でそうなんですけれど、2014年に2015年以降の枠組みの準備会合みたいなものがマスカットで行われたんですけれど、私はそのときに参加いたしまして、非常におもしろいなと思ったのは、韓国がGlobal Citizenship Educationを言う。日本は当然、ESDを言うわけですね。これを拮抗したというか、競争的なものとして出すのではなくて、韓国政府と実は協力して、お互いにGlobal Citizenship Education、ESDという非常に連関した枠組みを2015年以降の枠組みの中に入れていこうということを一緒にやったことが国際社会にとっては非常に受け入れられやすかったなということを、当時、日韓関係、そんなによくはなかったわけですけれど、非常に協力して行われたということで、これからもそういった取組を続けていかなくてはいけない。ESDとGlobal Citizenship Education、違うところもありますけれど、かなり共通な部分もありますので、特にこれから2015年以降の枠組みはもう既にできたわけですけれど、その中でインディケーター作りというのが、これからの2、3年の大きな焦点になってまいります。

 そのインディケーター作りというところで、日本が、若しくは韓国などと協力しながら、今、SDGsのうちの4項目が教育なわけですけれども、その中の7項目に、このESDやGlobal Citizenship Educationが入っているわけですけれど、ここについてのインディケーターをどのように作っていくかというところで、日本がほかの国と協力しながらイニシアチブを取っていくことをやっていくことが非常に重要なのではないかなと思う次第です。

 もう1点だけ申し上げると、協力国を作っていくというのは、例えばESDのときも、ドイツとかカナダとか、ほかの国が一緒になってやってくれたから国際的な枠組みになっていったというのもありますので、サステイナビリティ・サイエンスについても、そういった形で、よきパートナーを国際社会の中で求めていくことも必要だと思いますし、その枠組み作りというところでは、先ほどお話のあったように、例えば、東大は非常に先駆的な取組をされていますし、日本にある国際機関である国連大学にもそういった取組がございます。日本でできた枠組みを国際社会に発信していく。そのときには、例えばファンディングのメカニズム、例えば日本学術振興会、科研とかそういったところでも、何か新しい枠組みをやってみて、日本でこういうことで成功したということで、世界にそれを発信していくというようなことも含めて御検討いただければなと考える次第です。

 長くなって申し訳ありませんでした。

【吉見人文・社会科学小委員会委員長】

 ありがとうございました。大変貴重な幾つかの論点が出たと思いますけれども、今の御指摘も含めて、何か御意見ございますか。どうぞ。

【西園寺委員】

 先ほどの阿部先生の御発言にも関連するんですけれども、確かにESDというのは、学校単位の取組という意味では、ユネスコスクールで小学校、中学校というのがメインであるわけですが、もうちょっと高学年、高年齢といいますか、高等教育においては、学校単位ということでなくても、実際にESDに取り組んでいる若者たちは結構多いんですね。今、黒田先生がおっしゃったように、ディケードが終わったのが2014年で、その最終年会合が行われたときに私どもも協力をさせていただいて、ESDに取り組んでいる若者たちを50人選抜するというので、それに対して世界から5,000人の若者の応募があったんですね。そこから50人に絞って、そして、岡山でユースコンファレンスをやったわけです。

 それに先立って日本でも、日本国内での選抜という意味も含めて、約半年前に日本でも約50人の若者たちを集めたユースコンファレンスを開催しました。18歳から35歳ぐらいなんですが。ところが、彼らは自分たち自身が必ずしもESDをやっているという自覚がなくても、やっていることはまさにESDという人たちが随分多いんですね。ですから、そういう意味では、学校単位の取組という意味では、高等教育がそれほど目立たないかもしれないけれども、しかし、卒業した人たちも含めた若者たちが実際に、特に3・11の震災以降、そういう若者たちの動きは目立ってきていると私は思っていますので、それは非常に期待できるんじゃないかなと思います。

 それから、サステイナビリティ・サイエンス、これは前にも私、何回か申し上げたんですが、サステイナビリティ・サイエンスとESDというのは、ある意味じゃ、両方とも日本がイニシアチブを取っているプロジェクトで、これは関係を持たせていくべきだと考えています。なぜかというと、ESDをやっている先生たちは実際現場で、何を教えていいのかという戸惑いがあったわけです。最近はかなり事例が出てきているので、随分状況は変わってきていますが、それでも、どういうことをカリキュラムとしてESDに取り組んだらいいのかという疑問を持っている先生たちも現場ではかなり多いわけです。それに対して、サステイナビリティ・サイエンスというものが本当に確立されてきて、持続可能な世界に向けて科学が、ある意味のカリキュラムというものを作ってくれれば、その科学のバックボーンがあれば、ESDというものが非常にやりやすくなる、教えやすくなると思います。ですから日本が、そういう連携も含めて、さらに推進をしていくべきじゃないかと思います。

【吉見人文・社会科学小委員会委員長】

 ありがとうございました。

 猪口委員。

【猪口委員】

 この会長ステートメント、立派なんですが、一つ、私、ちょっと別の観点から今後のためにも問題提起しておきたいんですけれども、多様性というときに、まず一番大事なのは、身近なところで、ジェンダー、ガールズみたいな観点だと思うんですね。ESDの場合はサステイナビリティ・サイエンスという観点で、地球環境自身のサステイナビリティを含めてのことでしょうけれども、今、世界でいろんな問題があるんですけれど、非常に長期的なサステイナビリティの問題、それから、もう一つ、やはりガールズの問題というのが非常に大きくて、もし私がそういう立場にあったら、これからガールズ・ディケードというのを日本として提唱すべきではないかと思うぐらいなんですね。いろんな人類の問題で、日本はとにかく人口減少がすごく激しく起こっていて、それが世界から見ると日本の特徴で、それについて日本がどういう努力をしているのか世界は知りたいということなんですね。世界には190以上も国があるわけだから、やっぱりその国の特徴、それは世界から見て日本は何を努力しているのかということ、あれもこれもということにはいかないので、一つは、環境の取組ということがあるとESDは大きな成果であり、それは類似の会合で私も意見を述べております。

 だけど、もう一つは、やはりジェンダー・イクオリティがなかなか進まず、その狭間で人口減少の問題も起きていると感じるんですね。世界を広く見れば、女児の問題は非常に大きくて、だから、マララさんのノーベル平和賞の受賞なども世界的な問題提起としてもなされているわけだと思うんです。どういうコメントを今後会長として、あるいは政府のハイレベルとしてユネスコの枠で発信してもらいたいかということなんですけれども、必ずこういうガールズの問題について言及してほしいなというのが私の希望なんです。

 個別具体のことは今しゃべるタイミングでもないかもしれないけれども、考えを鮮明にするために一つの例を挙げたいんですけれど、それは女児の識字率が改善することが乳幼児死亡率を下げる一番重要なことなんですね。では、女児はどうして、小学校に入学するけれども卒業できないのかと。卒業する率が非常に低いままなんですけれど、それをいろいろ研究した結果、別に差別意識があるとかそういうことじゃなくて、小学校に女子トイレがないという問題が分かってきているわけですね。ですから、入学時はいいんだけども、思春期を経て、非常に危険だし、男子と同じトイレを使うことでレイプされる危険性とか、そういうことも不安であるし。家庭としては、そういうところまでやらなくてもいいんじゃないかと言って、もうそろそろ学校はいいんじゃないかということになり、でも、家にいてもしようがないので、早くお嫁に出されて、児童婚の問題。未熟な身体のままの妊娠となるので、そのまま命を失う子がすごく多いと。そういう世界の現実が他方であるわけですから、こういうことについて、全ての小学校に女子のトイレをきちっと設置していこうじゃないかという、そういう運動の在り方、あるいは主張の在り方もあると思うんですね。教育機関じゃないですか。ユネスコは、文化、教育機関と関わるわけですから、何かそういう観点を入れていただけたらありがたいかなと。大きな意味でジェンダー・イクオリティとかじゃなくて、やっぱり女児のことに集中して考える年月というのを今後やったらどうかと。

 その上でリコンシレーション、そこはすごくいいんですね。融合というか、和解ですよね。いろんな考え方の対立を溶いていくということで、リコンシレーション、それは女性が参加すればリコンシレーションが進むというわけではないかもしれないけれども、最も身近なダイバーシティがそうなんであるわけだから、それを受け入れることで、様々な妥協とか寛容とか許容とか、多様性の許容、そういうことにつながるということを意見だけ申し述べておきますので、よろしくお願いします。

【吉見人文・社会科学小委員会委員長】

 ありがとうございました。時間的には、あと5分ぐらいございますけれども、お一方、お二方、追加的に御意見ございませんでしょうか。

 先ほど、黒田委員から大変重要な論点、一つはファンディングの問題、もう一つは、これは日韓関係等も大変いい方向に向かいつつあるということで、ESDとGCED、こういう幾つかの国連が推進している柱を国際協力で連携させていく可能性があるんじゃないか、そういう御意見もございました。そのあたり、もし御意見を頂ければ幸いでございますけれども、よろしゅうございますでしょうか。

 特になければ、ここまでということにさせていただきまして、ありがとうございました。頂いた御意見を踏まえ、今後もユネスコの事業等を通じた加盟国間の相互理解と連帯に取り組んでいくことにしたいと思います。

 それでは、議題5に入ってよろしいですか。議題5「その他」に入ります。事務局から、今後の日本国内委員会関連行事についての御説明がございます。野田協力官から御説明を頂きたいと存じます。

【野田ユネスコ協力官】

 参考資料8でございますけれども、今後の関係行事ということで、ユネスコ関係の国際会議といたしまして、MAB関係の世界大会でありますとか国際調整理事会が3月、また、4月にユネスコ執行委員会が予定されております。

 また、国内委員会の関係では、1月28日、運営小委員会、2月1日、第138回総会が予定されております。また、そのほか、小委員会、分科会等が、ここに記載のとおり予定をされております。

 以上でございます。

【吉見人文・社会科学小委員会委員長】

 よろしいですか。ありがとうございました。

 その他、特に報告、審議すべき案件ございますでしょうか。よろしゅうございますか。特になければ、早いのですけれども、早ければ早いことはいいことですので、「閉会」と書いてございまして、私の発言メモは、「それでは、これで閉会いたします。本日は御多忙の中、御出席いただきありがとうございました」。どうもありがとうございました。

 

―― 了 ――

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