日本ユネスコ国内委員会 自然科学(第126回)及び人文・社会科学(第115回)合同小委員会議事録

1.日時

平成27年4月8日(水曜日) 10時00分~11時45分

2.場所

文部科学省 旧文部省庁舎 2階 文化庁第2会議室

3.出席者(敬称略)

〔委員〕

礒田博子、稲葉カヨ、猪口邦子、植松光夫、宇佐美誠、長有紀枝、加藤淳子、黒田一雄、黒田玲子、西園寺裕夫、重政子、寶馨、中川正春、西尾章治郎、林梓、観山正見、吉見俊哉

〔事務局〕

文部科学省:山脇国際統括官、籾井国際戦略企画官、野田ユネスコ協力官

4.議事録

【植松自然科学小委員会委員長】
 そうしましたら、時間になりました。本日は、御多忙の中お集まりいただき、ありがとうございます。定刻になりましたので、ただいまから第126回自然科学小委員会と第115回人文・社会科学小委員会の合同小委員会を開始したいと思います。
 議事の進行ですが、自然科学小委員会委員長の私、植松が前半の進行を務めさせていただきます。後半は、人文・社会科学小委員会の吉見委員長に議事の進行をお願いしたいと思います。
 それでは、会議を開くに当たり、事務局は定足数の確認をお願いいたします。
【野田ユネスコ協力官】
 自然科学小委員会の御出席の委員が8名、人文・社会科学小委員会の御出席の委員が8名で、それぞれ過半数で定足数は満たしております。
【植松自然科学小委員会委員長】
 ありがとうございます。
 それでは、ただいまから第126回自然科学小委員会と第115回人文・社会科学小委員会の合同小委員会を始めます。本小委員会は、第131回総会、平成24年9月13日において改正された、会議の公開手続の第1条及び第5条に基づいて公開で行っております。また、同手続の第4条及び第5条に基づき、御発言はそのまま議事録に掲載され、ホームページ等で公開されます。
 開会に当たりまして、文部科学省の山脇国際統括官より御挨拶を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。
【山脇国際統括官】
 文部科学省の国際統括官の山脇でございます。本日は、御多忙のところ御参加いただきまして、本当にありがとうございます。
 ユネスコ活動の中で、自然科学、人文・社会科学の果たすべき役割などについて、今年は、ユネスコ総会が2年に一度開催されます。そのときに、どのような形で日本として主張するのか、さらに本年はユネスコ創立70周年ということで、先日のユネスコ国内委員会の総会におきましても、70周年に当たった会長ステートメントについて検討を深めていこうということが議論されたところでございます。その意味からも、ユネスコにおける科学活動の今後の在り方などについて、本日も御議論を頂ければありたがたいと考えております。
 また、この国内委員会で提唱し、ユネスコの活動の中に取り入れられましたサステナビリティ・サイエンスについて、本格的な進め方について、ユネスコの方とも我々接触をし始めておりますが、その方向性について御議論を頂ければありがたいと思っています。
 また、人文・社会科学の分野においても、ユネスコの活動をどのような形で重点化していくべきなのか、優先度を置くべきなのかなどについて、忌たんのない御議論を頂ければ幸いと考えております。よろしくお願い申し上げます。
【植松自然科学小委員会委員長】
 どうもありがとうございました。
 続いて、前回会議以降、委員の異動がありましたので、事務局から報告をお願いいたします。
【野田ユネスコ協力官】
 それでは、新たに御就任いただきました委員を御紹介申し上げます。
 まず、自然科学小委員会でございますが、礒田博子委員でいらっしゃいます。
【礒田委員】
 よろしくお願いいたします。
【野田ユネスコ協力官】
 続きまして、稲葉カヨ委員でいらっしゃいます。
【稲葉委員】
 稲葉でございます。よろしくお願いいたします。
【野田ユネスコ協力官】
 那谷屋正義委員も新たに加わっていただいておりますが、本日御欠席でいらっしゃいます。
 続きまして、西尾章治郎委員でいらっしゃいます。
【西尾委員】
 西尾です。どうぞよろしくお願いいたします。
【野田ユネスコ協力官】
 続きまして、人文・社会科学小委員会でございますが、阿部宏史委員が新しく就任されておりますが、本日御欠席でございます。
 それから、猪口邦子委員は、本日遅れていらっしゃる予定でございます。
 それから、中川正春委員でいらっしゃいます。
【中川委員】
 おはようございます。よろしくお願いします。
【野田ユネスコ協力官】
 御紹介は以上でございます。
【植松自然科学小委員会委員長】
 ありがとうございました。
 次に、資料の確認をお願いいたします。

事務局より配布資料について説明。

【植松自然科学小委員会委員長】
 よろしいでしょうか。
 では、議題1に入ります。ユネスコでは、地球規模課題の解決に向けて、自然科学と人文・社会科学の全ての学問領域の統合によるアプローチである「サステナビリティ・サイエンス」を推進すべく検討が行われています。我が国は、「サステナビリティ・サイエンス」の推進をユネスコに提唱した国として、そのさらなる推進、発展のために何をなすべきか、これを検討していく責務を負っております。そこで本日は、今後のサステナビリティ・サイエンスの推進方策等について御意見を頂きたいと思います。
 それでは、まず事務局から資料の説明をお願いいたします。
【野田ユネスコ協力官】
 この議題に関しまして、二つの資料、資料3、資料4を御用意してございます。まず、資料3について御説明いたします。
 資料3、サステナビリティ・サイエンスの概要と最近の動きについてでございます。まず、1ぽつといたしまして、サステナビリティ・サイエンスとはでございますが、この定義につきましては、喫緊の地球規模課題の解決に向けて、細分化した学問領域ごとに取り組むのではなく、自然科学と人文・社会科学の多様な学問分野の知を統合して取り組むことを促すアプローチであると定義されます。
 また、その下に御参考までに、平成23年にユネスコ国内委員会からユネスコの方に提言をいたしました「『サステナビリティ・サイエンス』に関するユネスコへの提言」という文書のポイントをまとめてございます。
 三つほどございますが、まず価値観を変えることも含めた真の問題の解決には、全ての学問領域の協力が不可欠。それから、科学全体を持続可能な地球社会という目標を達成するためのものとなっているかどうかという視点から問い直さなければならない。また、地球規模の問題に取り組むために必要なものといたしまして、地球、社会、人といった異なる時空間スケールでの持続可能性及びwell-beingの追求を目的とした総合的な科学の取組。また、人文・社会科学を含む全ての学問分野の知を統合した新しいアプローチとしての科学の取組が必要ということが述べられているところでございます。
 2ぽつといたしまして、サステナビリティ・サイエンスに関するこれまでの取組でございますが、これまでワークショップでありますとかシンポジウムといったものをユネスコと協力して開催してございまして、これまで研究者を中心とした情報の交換といったようなことにとどまっているということが実情でございます。
 それから、次のページの今後の取組予定でございますが、これは2点ほどございまして、まず(1)の方がサステナビリティ・サイエンスを世界に普及させるためのシンポジウムの開催、これは政策決定者へのメッセージの発信でありますとか、ユネスコ事務局内での自然科学局、人文・社会科学局、また教育局といった部局の協力を促すといった目的を持ったものでございます。
 (2)といたしまして、アジア・太平洋地域におけるサステナビリティ・サイエンスの考えを取り入れた科学事業の推進、こちらは、より実践的なものでございまして、ユネスコの科学分野の既存のプログラム、IOC、海洋科学関係、IHP、水科学関係、MAB、環境科学関係といった既存のプログラムにおきまして、サステナビリティ・サイエンスの考えを取り入れた活動をユネスコとも連携して実施していくというのが二つ目でございます。これが今後の取組予定ということでございます。
 続きまして、資料の4でございますが、サステナビリティ・サイエンスの推進方策についてということで、これは本日御議論いただく際の論点をメモとしてまとめたものでございます。
 まず、上の方から、国際的なシンポジウム等の目的で、これは先ほどの、前の資料の3ぽつの1にございましたシンポジウムでございますが、この目的を達成するためにどのような実施方策があるのかということで、1番目がサステナビリティ・サイエンスの実践を政策立案者を共有し、議論をすること。2番目といたしまして、人文・社会科学の関与・貢献の度合いを高めること。3番目が人材育成の在り方について議論。4番目が推進に向けたポリシー・メッセージの発信。5番目といたしまして、こういったシンポジウムの準備を通じまして、特にユネスコ事務局内において、サステナビリティ・サイエンスの実施に向けた具体的な連携の体制を構築することといったことが目的として考えられております。
 次が、より一般的な議論のポイントといたしました検討項目、これは上記とも関連いたしますけれども、1番目といたしまして、これまでの取組を踏まえまして、実践といったものが成功するための必要な条件は何か。また、人文・社会科学に期待される役割は何か。人文・社会科学の貢献を高めるためにはどうしたらよいか。3番目が、関連部局間の連携を促進するためにはどうしたらよいかといったことを議論のポイントとして掲げさせていただいております。
 資料の説明は以上でございます。
【植松自然科学小委員会委員長】
 どうもありがとうございます。それでは、資料4にまとめられています論点、これを踏まえていただいて、今後のサステナビリティ・サイエンスの推進方策について御意見をお願いしたいと思います。どうか忌たんのない御意見を出していただければと思います。
 特に、最初に出ております国際的なシンポジウム等の目的ということでもかなり具体的な御意見など頂ければと思いますが、いかがでしょうか。
 事務局に質問なんですが、これまでの取組ということで、2013年4月からあって、何回かこのワークショップ、シンポジウムを開催されているんですけれども、これは日本が主導している、ほかの国と共催という形をとっているんでしょうか。ユネスコと連携しているとは思うんですけれども。
【籾井国際戦略企画官】
 いずれもユネスコ本部が主導になっておりまして、2013年のワークショップは、たしかマレーシアとユネスコが共催という形をとっていたかと思います。2013年9月の国際シンポジウムは、ユネスコ本部と国連大学が共催という形で、日本はあくまでもドナーというか、お金は出しているんですけれども、共催者というか主催者には入っていない形で。
【植松自然科学小委員会委員長】
 そういう活動の支援をしていると。
【籾井国際戦略企画官】
 はい、開催されております。
【植松自然科学小委員会委員長】
 分かりました。では、お願いいたします。黒田さん。
【黒田(一)委員】
 このサステナビリティ・サイエンス、日本が提唱しているということで、その前に日本がやった一つの非常に大きなアチーブメントはESDだと思うんです。Education for Sustainable Developmentについて、2002年に小泉首相がヨハネスブルグのサミットで提唱して、2004年から10年のディケードが行われたということで、非常に大きなインパクトが、課題はいろいろあったんだと思うんですけれども、結局2015年のこれからの大きな枠組みの中にもESDの精神が入っていくということ。
 それから、各国の教育のカリキュラムの中にも影響があったということで、ここから、もちろんネガティブな部分も含めて学んでいく必要があるのかと思います。つまりは、サステナビリティ・サイエンスというコンセプトを国際社会に日本が問うていって、日本だけでなくて、ほかの国々、若しくは関係機関とも協力しながらこれを問うていったときに、何を大きな目標として、もちろんシンポジウムとかそういうのはあるわけですけれども、例えば研究費のアロケーションの仕方が変わっていくであるとか、それから大学や学会の構成というものが、サステナビリティ・サイエンスということである程度変わっていくであるとか、そういったことを目指していくときに、どのような振興策があるのか。つまりは、グローバルガバナンスとしての一つの目標としてのサステナビリティ・サイエンスを定着させるということが必要なんだろうと考えます。
 もちろんその過程の中ではいろんな努力の仕方があると思うんですが、何を目標としてやっていくのかというところを先に明確にしていくことが必要かと思います。もちろん、2030年にもう一度、次のグローバルガバナンスの在り方を問うような大きな節目があるんだろうと思うんですけれども、そこを目標とするのか、それとも、そうじゃなくて、多分科学分野ではまた別のいろんなグローバルガバナンスの枠組みがあると思いますので、そこにターゲットしていくのかということを明らかにしていかないといけないのかなと考えます。
【植松自然科学小委員会委員長】
 ありがとうございます。では、長委員。
【長委員】
 長と申します。お願いいたします。難民を助ける会の理事長として名前をさせていただいていますが、立教大学の教員もしておりまして、そちらで国際関係ですとか人間の安全保障についても研究しております。その点から申し上げたいと思います。
 サステナビリティ・サイエンス、私は専門でもなくて、少し場違いなコメントであったらお許しいただきたいのですが、日本が提唱するということ、それからここに入ってきている非常に重要な文言が、自然科学と人文・社会科学の多様な学問の知を統合するであったり、統合的な科学の取組、これ、すごく強調されています。
 その統合というのが人間の安全保障の視点とすごく合致していまして、人間の安全保障というのは、日本を挙げて世界に国連でもアピールしていこうという概念でもあるので、そういうものと絡めた議論、そういう言葉もここに入れてもいいのではないかと思いました。それがコメントでございます。
【植松自然科学小委員会委員長】
 どうもありがとうございます。はい、観山委員。
【観山委員】
 随分、このサステナビリティ・サイエンスというのは、日本が提案したということもあって非常に重要な項目だと思うんですけれども、資料5にある地球的な問題に関して、人文・社会科学の貢献というものが、今まではないためにとか、今後あるために、どのようにうまく動く可能性があるとか、今までのいろんな政策とか立案の中で、どういう問題があったかということを掘り下げないと、今言われているような、実際にこれを政策に、各国に訴えていくときに、どういうやり方があるのかということが、言葉だけではなかなか通じないところがあるのではないかと思うんです。
 だから、そこを、さらに国連とか国の政策として訴える場合には、掘り下げた提案みたいなものがないと、なかなか言葉だけでは人文社会とサイエンスが一緒になって、自然科学が一緒になってという言葉だけでは、なかなか今後の一層の展開が難しいんじゃないかという気が、10年間やって、非常にいろんな活動をされてきてあるわけですけれども、そういう感じを持ちました。
【植松自然科学小委員会委員長】
 ありがとうございます。
 喫緊の地球規模課題の解決に向けてということで、どちらかというと、自然科学の方は非常に明確な問題意識を持って、何を解決すべきかというテーマが挙げられていると思うんですが、ここでも挙げられていますように、人文・社会科学とどういうふうにつないでいくかというのは非常に大きな問題だと思います。
 今、一つ、フューチャー・アースというイニシアチブが動いているんですが、それはどちらかというと、全く、サステナビリティ・サイエンスとかなり近い考えなんですけれども、一つはCo-Design、Co-productionということで、この時点で社会科学、それから自然科学、それからステークホルダーも一緒になって議論しよう、そういうことで立案していこうということが今一つの動きとしてあります。そうして、ここを見てみますと、実に、ここはもう既にこの委員会がステークホルダーから自然科学、人文科学、全部が入って議論しているということで、非常にふさわしい場であるかと今回再認識をしました。
 そういうことで、具体的にというか、どういうふうに、そういった、一緒にやっていくんだということを皆さんに知らしめて、それで一緒に考えていく、そういうきっかけを作るということがとても大事だと思いますし、今回、ここで挙げられています、そういうシンポジウムを開催する、これはインターナショナルだけじゃなしに、国内でもそういうことを考えてもいいのではないかと思うんですが、これは私の意見で。
 ほかに、皆さん、御意見ございましたら。
【黒田(玲)委員】
 ESD会合も成功裏に日本で開催しましたし、いろんなことがあるんですけれども、やはり抽象的に自然科学と人文科学のどちらもやらないと解決できないといっているばかりでは、そこから先、なかなか進まないというのは、今、委員のおっしゃったとおりだと思います。フューチャー・アースも、一番の新しいポイントというのは、一般の素人もCo-Designの時期から参加するというやり方です。今までは人文・社会科学と自然科学の専門家がいろいろ議論して得た結果を市民に伝えそこから参画してもらうというものでしたが、そうではなく、デザインするときからステークホルダーの一員として入っていくということが全く新しくてすばらしいと思うんですが、実はバークアウト氏に聞いてみると、難しいんだよな、やっぱりうまくいっていないと本音をおっしゃっていました、やはりそうなんだなと思いました。
 あと、私は、国連の潘基文のサイエンスアドバイザリーボード(科学諮問委員会)のメンバーにはいっているんですけれども、SDGに17の目標と、169項目が作られていて、その中にはジェンダー・イクオリティーもあれば、エデュケーションもあれば、水、海洋の話もあれば、食品安全と、総花的に全部出ていて、この169をどうやってまとめていくのかというのはすごく大変です。その後、6個のエレメントに、少しクラスタリングをしているものの、その後は政治のマッスルパワーで決まっていくのじゃないかと心配はしています。
 ただ、そのときに、では、具体的にいろんなそういうターゲットが出ているので、それに対して人文科学、社会科学、あるいは自然科学がどうやって貢献していくかというように、具体的に、17の目標のどれかの中にどうやって貢献していくかということを考えていった方が、もう少し具体的に考えられるのではないかと思います。ですから、独立にやらないで、そういう項目が既に出ているので、ユネスコは国連の組織でもあるのですから、SDG、あるいはフューチャー・アースもそうですけれども、その中のどれかに具体的なターゲットをまず置いて、そこでどういうふうにやるかと進めた方が、より実のある議論と、実のある行動ができるんじゃないかと思います。
【植松自然科学小委員会委員長】
 はい、寶委員。
【寶委員】
 昨年11月にESDの会議をやりましたね。3月には国連防災世界会議がありまして、国連防災世界会議は大変たくさんの方が参加されまして、日本が主催した国連関係の会議では過去最大じゃないかと言われているんです。結果として、Sendai Framework for Disaster Risk Reductionというものを採択したんですけれども、そこ
では七つのターゲットと四つのプライオリティーアクションズが決められたわけです。
 必ずしもサステナビリティ・サイエンスという言葉は出てこないんですけれども、そういったターゲットと、それからプライオリティーアクションズにサステナビリティ・サイエンスがどういうふうに役立っていくのかという観点から、せっかく世界的な動きが防災の分野でも出ているわけなので、これは地球規模の課題ですから、それに対してサステナビリティ・サイエンスがどういうふうに役立っていくのか、あるいはサステナビリティ・サイエンスを防災の観点からどういうふうに発展させていかないといけないのかとか、そういうESDのターゲットもそうですし、国連防災会議のターゲットもそうですし、今度、SDGもできるわけですから、そういった世界的な動向をうまく活用しながら、このサステナビリティ・サイエンスを発展させていくということだろうかと思うんですけれども。
【吉見人文・社会科学小委員会委員長】  一つ、よろしいでしょうか。
 私、サステナビリティの専門家でも何でもないんですけれども、先ほど長委員がお話しになられたことと少し絡めて御発言させていただきたいんですが、サステナビリティというと、どうしても日本では自然環境ベースの話になり、なおかつ自然科学系がそうするとメーンになる、それは致し方ない面があるんです。ただ、例えばヨーロッパ、例えば北欧とかドイツとか、そういう地域でサステナビリティ科学がどういうふうに議論されているのかということ、少し又聞きなのでよく分からないんですけれども、もう少し人文・社会系もかなり関与しているという話を聞いたりもします。
 そのときに、やはりサステナビリティの概念の中に、先ほど出ました貧困の問題ですとか難民の問題ですとか、つまり平和ですとか、あるいは紛争、あるいは災害、そういうことから起こってくる様々な社会的な問題、これが自然環境の破壊とも関わってくるわけですから、そういうところをどのくらい入れていくのかという、そこになってくると、人文・社会科学が、貧困の問題、平和構築の問題、難民の問題、それから災害支援の問題、その辺のテーマは、人文・社会科学系が十分関与できるストックを持っている分野だと思いますので、少しサステナビリティという概念そのものを広げていただくというか、欧米、特にヨーロッパでどういう議論をされているかということを参照しながら、そのあたりまで広げていただくと、その辺の連携がうまくできてくるのではないかという気がいたします。
【植松自然科学小委員会委員長】
 どうもありがとうございます。では、宇佐美委員。
【宇佐美委員】
 今の御発言やこれまでのいろいろな方からの御発言を踏まえてということで、私なりに少し発言させていただきたいんですけれども、人文・社会科学の具体的な貢献の仕方ということですね。今具体的な提案が委員長の方からございましたけれども、幾つか考えられると思います。
 一つは、きょうの資料ですと、資料4の一番最初のシンポジウムのところで、政策立案者との共有ということに関わってくるかと思うんですけれども、具体的な学問的な蓄積を公共政策へと実装していくところで、その実装の段階で人々の誘因、インセンティブをどのように考慮するかということがまずは重要になってくるので、例えばこれは私の専門ではございませんけれども、例えば、経済学の中にはメカニズムデザインといって、それぞれの、原則的には自己利益を大事だと考える人たちを対象にして、どうやって集団的な問題を解決してうまくやっていくかということの制度設計をする、そういった分野もございます。
 そこからさかのぼって考えますと、これは先ほど植松委員長がおっしゃったCo-Designとも関係するんですけれども、もっと早い段階で意思決定に参加するということが、誘因を与えるというときにも重要だというような形で、両者実はリンクをしていて、インプリメンテーションの話はそこの段階に進んで初めて出てくるのではなくて、もっと前から関わっているということで、その参加の仕方ですね、これについても随分社会科学的な、実験的な試みが世界中で実は行われておりまして、専門家による自然科学的、あるいは社会科学的な専門知を提供してもらった上で、比較的少人数で、例えば市民参加型で議論をすると、随分とそういった情報を得る前と意見が変わって、より問題について熟議した上で意思決定をすると、いろいろな点でより賢明な意思決定ができるとか、意見分布が変わるということが世界中で行われておりまして、実は日本でも自治体レベルや国のレベルで行われていますので、御存じの先生方もいらっしゃるかと思うんですけれども、そういうことで一つの貢献の仕方として、意思決定であるとかインプリメンテーションであるとかというのが一つ考えられると思います。
 もう一つ考えられますのは、もう既に御発言がありましたことと関係しているんですけれども、サステナビリティの人間社会へのインパクトの問題、世界全体でということと同時に、特にアジアの場合に、アジアの途上国におけるポバティーの問題であるとか、ディベロップメントの問題であるというときに、国際的な連携も含めて、人文・社会科学で地域研究の蓄積は、ここでは大いに活用できるかと思いますし、社会科学のその分野の専門家たちは、それぞれに国際的なネットワークを持っている研究者がたくさんいますので、そういった面でもいろいろな形で貢献ができるのではないかと思います。
【植松自然科学小委員会委員長】
 どうもありがとうございます。では、猪口委員、お願いします。
【猪口委員】
 少し迷って遅れて来てすみませんでした。
 非常に重要な御議論を伺っております。私は人文・社会科学の方からの貢献とか接点というときに、そもそもサイエンスという分野が思想の先導なくしてどういう方向に向かうというのかと。要するに哲学とか思想の発展があって、そういうニーズが認識されて、そこにサイエンスが導かれていくと。そうでなくて、サイエンスがただサイエンスの、サイエンスのサイエンスによるサイエンスのためのサイエンスみたいなものでは、時々とてつもないおかしなことが起こるでしょう。だから、そういう意味では思想の先導がまずあってということだと思うんです。
 ですから、人文・社会科学系の学者は、では、どこからその思想性というのを持ってくるのかというと、それは一般の人たちを研究するからです。人間社会というものを考えるからです。だから、当然そこから抽出される現在の思想性というものを主流化して、サイエンティストたちはそれとの関係の中で問題解決に向けてサイエンスの能力を高めると、まずこういう流れだろうと本当に思うんです。
 今、委員長もおっしゃったんですけれども、それではこの時代の思想の先導の中に、どういう要素があるものをサステナブルにしていくという観点から重要なのかと考えると、まさに戦争は最大の環境破壊でもあるし、文明破壊でもあるし、人間破壊でもあるわけだから、これはノー・サステナブルです。ディプロマシーこそが、物事を妥協しながらでもサステナブルに解決しようというものであるから、そういう意味では21世紀は、19世紀のある時期もそうだったんですけれども、アート・オブ・ディプロマシーといいますか、外交こそが能力を問われる、平和的解決を求めるというのが一つの思想の軸だし、あとはジェンダー・イクオリティー、黒田先生おっしゃったけれども、そういうジェンダー・イクオリティーとかインクルージョンの考え方も、思想性、思想の先導の中にあると。それから次世代です。やはりジェンダーということの横串と、あと年齢の縦串の連携で次世代。そうすると教育、エンパワーメント、プロアクティブなエンパワーメントでESDの会議がそういうことだったんでしょうということがあると思いますので。
 あと、例えば災害との関係では、大災害が起きた翌日、このシステムを維持するのを、BCPプラン、ビジネス・コンティニュイティ・プランというのがあるわけですよね。だから、そういう考え方も思想の先導を、今この災害が、巨大化する21世紀の不幸な要素との対応で出てきた考え方ですよね。だから、ビジネス・コンティニュイティ・プランは災害時だけれども、ゆっくり来る、スローモーションのような大災害に対してサステナビリティ・プランみたいなものがあると、このプランを実現するのにサイエンスはどういう貢献をしてくれるのかということで、サイエンティストに対する質問が人文から出てきて、答えが有り難く頂けるという、こういう関係性というのが私はいいんだと思います。
 それから、やっぱりこういう問題を考えるときに、ユネスコというと世界の困っている国とか思うんだけれども、国内でも同じ要素で形を変えて困っていることはたくさんあって、必ずそういう問いかけをしないと、国際シンポジウムでは何か宙に浮いちゃう感じなんですよ。こういう活動が長期的に有権者の本当の支持を得られるかと。
 例えば、貧困の問題といったって、今、子供の貧困ということがあるでしょう。あと数年すれば、現在も既に起きているんだけれども、学生の貧困ということがあるわけですよね。もう昼御飯も食べられないほどの貧困の中で、何とか学業をぎりぎり、アルバイトをしながらとか、そういう教育機会の非常に厳しい状況というものを、我々がどう国内的に理解しているか、どうサステナブルに次世代の高等教育ということを望む全ての子供たちに可能にするのかとか、そういう問い掛けを本当は国内的にもして、それで対外発信するからインパクトが出てくるんだと思いますので、そういうふうにお願いしたいと思っております。
 それで、最後は、全ての人がサステナビリティに関わるというときに、サイエンティストたちが生活パラダイムに落としたときのノウハウであるとか、優良技術というものを提供してくれると。だから、最初、思想の先導があって、最後、生活パラダイムの改革があってというところで、いいことになるのではないかなと思うんです。
 それで、コンサーブするということですよね。保存するために変えなきゃならないというか、保存するために革新が必要だと思うんです。ヴィスコンティの映画じゃないですけれども、保存するために変わらなければならないという、昔のイタリアの貴族制について彼の決意があった有名な言葉がありますけれども。
 ですから、サステナブルであるために非常にイノベーティブでなきゃならないと。コンサーブするために、コンサベーションとイノベーションというのは、そういう対のものであると、そこにサイエンティストの役割があり、何をどうコンサーブするのかというところに、私たち人文からのインプットがあると思うんです。
 最後に、長先生のおっしゃったサステナビリティとかヒューマンセキュリティーとか、私は非常に日本初の重要概念だと思うんです。BCPプランなんかも、世界的にも言われていますけれども、今回の国連会議は、日本として史上最大の国際会議となったんです。格においても閣僚級が何人来たかと。参加者においても、4万人と考えていたのが15万人も参加する、もうすごいことなので、そういうことでやっぱり発信できる、我々が掲げたサステナビリティあるいはレジリエンス、そういう考え方というのを大事に発信してもらいたいと思うんです。
 なぜそういうふうなことを考えるかというと、少しテーマとずれますけれども、中国がインフラ金融銀行、AIIBというのを作って、日本がそれに参加するしない、しないことを一応アメリカと決めたみたいな、そういう議論がすごく一般ににぎやかにされています。そこで私が思うのは、例えばブレトン・ウッズを作ったときには、そこには思想の先導があったんです、それは自由・無差別・多角主義という。これが戦後、第二次世界大戦の反省、戦間期の反省から出た自由・無差別・多角主義の貿易金融、こういう世界を作るという思想の先導があった。
 それで、今度AIIBというのはどういう思想の先導性があるのかということを考えたときに、少し答えがすぐ出てこないということなんですよ。それはサイエンスだけじゃなくて、大きな国際的なアーキテクチャーを作るときに、幾らお金があっても、幾ら雄大な大地があってそこを開発しなきゃということがあっても、思想の先導がないプロジェクトというのは、やはり少し心もとない気がします。今後出てくるかもしれない。今後、思想の先導を日本から提供、まさに大きなインフラを開発するのはサステナブルじゃなかったらどうするんですかということじゃないですか。
 だから、やっぱり思想の先導性というのはとても大事だから、是非ここを、もう既にこうやってサステナビリティ・サイエンスとかヒューマンセキュリティーとか使っているわけですから、そこを大事に国際発信をするということで、そういうためにシンポジウムをやるんだと。
 今度、このシンポジウムですけれども、単体としてあっても、世の中にシンポジウムって、きょうだって10個ぐらい東京で行われていますから、そういうことになっちゃうんですよ。だから、どういうプロセスの中に位置付けるのかと。多分、ESDから引っ張ってきて、あるいは国連防災会議から引っ張ってきて、このシンポジウムをやって、それで、そのシンポジウムはどこに向かうのかと、誰にどう発信する。例えばG7のプロセスに何かフィードインしたいためにこういうのをやるのか、あるいはG20にやるのか、国連での総理演説の中に反映してもらいたいのか、そういう中の、あるモジュールを我々は担当するという位置付けじゃないと、自己満足的になっちゃうといけないと思っています。
【植松自然科学小委員会委員長】
 どうもありがとうございます。確かに来年は、G7は日本がホスト国ですね。
【猪口委員】
 そうです。正にそうでしょう。
【植松自然科学小委員会委員長】
 正にそういう点で、あるいは学術会議からアカデミーの何かステートメントが出ると思うんですけれども。本当にありがとうございます。
【猪口委員】
 はい。
【植松自然科学小委員会委員長】
 では、西尾委員。
【西尾委員】
 イノベーションという観点から見た場合に、人文学とか社会科学は新たな物の見方とか、制度的仕組みの設計などを提案していく役目がありますので、社会の変革、つまり、イノベーションの源泉となり得ます。もう一方で、自然科学における革新的な研究成果を社会の変革につなげていくという役割も期待されると思っております。特に、、人文学、社会科学の学術の知というものは、先端的な自然科学の学術の知を、現在あるいは将来の人類の福祉の改善に寄与するような方向に導くという重要な役割を持っていると思います。
以上のようなことから、持続的なイノベーションということを考えたときに、それは、人文、社会、自然の全ての領域において創出される多種多様な知に耕された社会的土壌を基盤にして初めて可能になると思っています。
 そのときに、論点のメモの中で、「グッドプラクティスを共有し」という記述について提案があります。イノベーション創起と関連して先ほどから申し上げているようなことについてのグッドプラクティスが、今までにないのか、あるいは、今後、具体的にこういうことが考えられるのではないか、いうことを調査してみることが、この論点の中での「グッドプラクティスを共有し」という観点からは非常に重要であると思います。これは、観山先生が先ほどおっしゃったように、もう今までに議論はいろいろなされているのだけれども、では、具体的にどういうものがあるのかということを明示していく観点からも大切であり、さらに議論を活発化するためにも重要であるとを思っています。
 以上です。
【植松自然科学小委員会委員長】
 そうですね。一つのケーススタディーというか、実際にあるものというか。
 では、礒田委員、お願いします。
【礒田委員】
 現場でそういった研究を進める上で、例えば地球規模課題を考えるときに、水資源や生物資源という具体的な対象がございまして、そういったものについて、自然科学系の研究者がいろいろな解析に取り組むときに、やはり先ほども宇佐美先生の方からありましたけれども、地域研究の蓄積、そういったデータというのが自然科学の研究者が進めていく上で非常に重要となります。その地域の歴史とか言語とか文化とか、そういったものがやはり壁になる部分もありますので、そういった部分で非常に文理融合的なアプローチというのは必須になっていると思っております。
 その中で日本が進める、ほかの先進国でもかなり認められておりますけれども、科学技術外交というものがありまして、その取組は非常に具体的な文理融合的な取組が必要なものになっていると思います。植松先生が先ほどおっしゃいましたフューチャー・アースの考え方というのは、それをもっと発展的にしていくものだと思っておりますので、やはりそういった具体的な対象を含めて取り組む中で、是非、文理融合が必要であるということを、いろいろな現場の研究者からも意見を集めて言っていくのがいいのではないかと思っております。
【植松自然科学小委員会委員長】
 どうもありがとうございます。ほかにどなたか。お願いします。
【加藤委員】
 加藤と申します。私は政治学が専門でして、ですから、こちら人文・社会の側になります。今まで大きな問題で、自然科学と人文・社会の協働が必要である、高いレベルで必要であるというようなお話は、皆さんが述べてくださいましたが、私はどちらかというと具体的個別な問題の解決に関しても、両者の協働は欠かせないのではないかと思います。
 この議論のポイントを読んで少し気になったのですが、「地球規模の課題の解決に向けた研究は自然科学の分野を中心になされることが多いが、人文社会科学に期待される役割は何か。また、人文社会科学の貢献を高めるためにはどうしたらよいか」と書いてありまして、どちらかというと自然科学で問題解決はできるけど、人文・社会も何かした方がいいのではないですかというふうにも読めます。
 今、私たちが現状を見るときにそう見がちであると、そういうふうに見る観点の方が強いというのはよく分かりますが、私は現在、自然科学はかなり成果を上げているのに様々な問題が解決できない理由は、人文・社会とうまく協働ができていないからではないかと思っています。
 私自身がこんな生意気なことを言うのではなく、私自身が非常に感動したことでそれを説明したいと思います。理系の方は全員御存じだと思うんですけれども、リチャード・ファインマンという有名な物理学者がいて、彼がチャレンジャーの爆発事故の原因究明をしたという話は御存じだと思います。
 そのときに、もちろん彼は優れた物理学者ですので、この部品が問題あるという、そういうような自然科学的な問題特定をしたのですが、私が感心したのはその後です。爆発につながるかもしれない問題があることを知っている技術者がいたけれども、それが組織の中で上まで伝わらなかった。だから、最後に爆発事故が起こってしまったというところまで究明した。これには非常に感心しました。彼の手法は人文・社会の優れた学者がやるようにすばらしく、この本を私の学生に読ませたぐらいです。こうやって問題は解決するのだと。
 言い換えますと、リチャード・ファインマンは自然科学者ですけれども、本来の彼の専門で期待されるところだけでは本当の問題は解決しないということを知っていたわけです。人文・社会の方は組織の中で情報が伝わらないと言った問題一般には習熟していますけれども、それが具体的個別の問題としてこういう事故になってしまうというところは自然科学の領域です。人文社会科学者は自然科学者のように事象を理解できないけれども人間社会についてはよく知っている、自然科学者は事象の原因を理解できても、人間社会で問題解決を図る際に何が起こるかについては知らない。問題解決に最後まで至るには両者が必要なので、お互い相手の領域に関して少しでも興味を持てば、必ず何か協働は可能になるのではないかと思います。
 少し失礼な言い方をしましたけれども、どちらかというと、人文・社会の側が自然科学だけで問題解決できると思いこんでいる場合が多いような気がします。ですから、人文・社会の側が、もう少しどういう形で具体的に貢献できるかということを考えていくということも大切ではないかと思っております。
【植松自然科学小委員会委員長】
 ありがとうございます。では、中川委員。
【中川委員】
 少し基本的なところになるんですけれども、今後の取組の予定のところに、一つはシンポジウムの開催をしていくことによってサステナビリティ・サイエンスを世界に普及させるということと、それから、二つ目が科学事業を推進する、いわゆる研究という分野でテーマを決めてやっていこうということが掲げられているんですけれども、これまでやってきた、一つは反省というか、どこまで効果的にこういうことがやられてきたのかということがまずあって、それに対してこうしていこう、ああしていこうという議論が一つは必要なんだろうと思うんです。
 それと同時に、この科学事業のテーマも、さっきいろいろ出ましたけれども、これに人文科学を含めてさらに幅広く、そして、かつ日本の研究者がそこに貢献していく形として、具体的にこういうテーマの中でこんなことがあるのではないかという、そういう議論をしないと、世間話みたいな話で、ここでいろいろ皆さんの知見を合わせて、恐らく何らかの形にまとめて総会の中で委員長なり何なりから発表してもらおうということだけで終わっていくと、何となく気の抜けたコカ・コーラみたいな感じになってしまうのではないかなということだと思います。
 だから、そこの、恐らく事務局の組立ても必要なんだろうと思うんだけれども、もう少しめりはりのある議論ができないかなというのを感じているんですが、どうですか。
【植松自然科学小委員会委員長】
 もう少し具体的な提案というか、そういうところを話す……。
【中川委員】
 日本はせっかくあれだけの金を出しているんですから、それに対して具体的にこういうことをやっていこうよという話が、もっと具体性を持って出てきていいと思うんですけれどもね。
【植松自然科学小委員会委員長】
 いかがでしょう。また今までこういった取組というのは、初めて起こるわけじゃなしに、昔からこういう類似したことが行われてきているわけですよね。それを見て将来というか、具体的に、では何を、プライオリティーを持って取り組むかということかなとは思うんですが。
【中川委員】
 恐らく毎年こういう形で、私たちも充て職でここへ来て、こんな発言をさせていただいているんですけれども、毎年こういう形で終わっていくとすればもったいないような。これだけ皆さん集まっていただいて、具体的なところへ向いて結集していければ、もっと力になっていくと思うんです。それだけユネスコに対して日本は貢献しているはずなんだけれども、実は総会に行っても、そういうダイナミズムが見えてこないという感じがしています。
【植松自然科学小委員会委員長】
 事務局から何か。
【山脇国際統括官】
 今の中川先生のお話は、我々事務局も同じような悩みというか、どういうところに持っていくのかなと。今の議論の中にも出ましたが、黒田玲子先生がおっしゃった持続可能な開発目標、今、参考7に……。
【黒田(玲)委員】
 そうですか。見ておりませんでした。
【山脇国際統括官】
 目標17、配付させていただいています。持続可能な開発としてSDGsの議論がされていて、この17と169項目の文書があるということなんですけれども、これは非常に広範囲で、ここにいろいろサステナビリティ・サイエンスの概念が、当然いろいろ役に立つだろうなと思うんですが、余り逆に広範過ぎると、先ほど中川先生がおっしゃった具体性とか、方向性というシャープさがなくなっていくので、そこを、どのあたりに焦点化するのか、重点化するのかというのが、我々としても悩んでいることです。
 ただ、少なくともシンポジウムでは、今まで分散的にやられていた、あるいは各地域、事務所とか各大学レベル、研究レベルでされていたもの、それから、最近では地球規模課題という形で政府においてもSATREPSでのプロジェクトの中でサステナビリティを維持するための実際の途上国との研究の協力というような活動をなされているので、そこからもう少しメタレベルで集約できるような形につなげられないかなということを、シンポジウムではできないかなと、まあ、その次のステージでですね。
 ただ、猪口先生がおっしゃったように、もう少しつながりとかターゲットをしっかり置くとかというようなことも必要かなということで、事務局も同じような悩みの中で重点化を、道筋をどうしていこうかということを悩んでいて、そのためにきょうはいろいろ御議論をお聞きして、少し具体性の道筋を作っていきたいなというふうな思いでございます。
【植松自然科学小委員会委員長】
 どうもありがとうございます。では、黒田委員。
【黒田(一)委員】
 今、中川先生がおっしゃられたように、サステナビリティ・サイエンスとは何かという議論については、このサステナビリティ・サイエンスを提唱する前にも相当な議論をして、そこで例えば文理融合のアプローチであるとか、地球規模課題に対する、その中に平和とかも、もっと広い概念で考えていくべきだということは、もう重々に議論をして、皆さん共通認識を持っていると思うんです。
 ですので、やっぱり具体的に何をやるかというところで、繰り返しになりますけれども、先ほど猪口先生もおっしゃった、例えば首相ステートメントに入れていくとか、2015年以降の枠組みの中に、具体的に科学がどういうふうな役割を果たせるかということについてのイニシアチブを出すとか、それから、ESDの場合はディケードをやったわけですけれども、そういう具体的な国際機関、グローバルガバナンスの枠組みを作っていくであるとか、そういったことの目標が必要なのかなと思うんです。
 ですので、国際シンポジウムのターゲットについても、そこを具体的にこういう枠組みでということを入れていかないと、本当に議論だけになってしまうと。もう少し発信だけではなくて、枠組みだけではなくて、ある意味でタンジブルなものとして、例えば研究費のアロケーションをどう変えていくかであるとか、それから学会の在り方、少し繰り返しになるんですけれども、例えば大学ランキングとかが、もうすごく今、科学の在り方に実は影響を与えていて、そこの中にどのような形で、サステナビリティ・サイエンスの考え方によって大学若しくはアカデミアというものが評価されるような状況を作っていくのか。
 例えば、今、ジャーナルパブリケーションについても一部の会社が非常に大きな力を持って、それをある意味では抱え込んで、途上国に高く売るみたいな状況が出てきているわけですけれども、そういったストラクチャーを変えていくために、本当にタンジブルな形でサステナビリティ・サイエンスが地球規模課題の解決に役に立つ方向性というものを具体的に作って、それで、そのためのイニシアチブとかフレームワークをやっていかないといけないのではないかなと思います。
【植松自然科学小委員会委員長】
 ありがとうございます。
 大体予定している時間がほぼ来たんですが、もう一言、特に御意見ございますでしょうか。
 では、ないようでしたら、大変貴重な御意見をありがとうございました。サステナビリティ・サイエンスにつきましては、本日の御意見を踏まえ、今後とも積極的に推進していくことといたします。どうもありがとうございます。
 続いて、議題2に入りますが、ここからは吉見委員長に議事進行をお願いしたいと思います。
 吉見委員長、どうぞよろしくお願いします。
【吉見人文・社会科学小委員会委員長】
 ありがとうございます。議題2、ユネスコにおける科学事業の在り方についての議論に入らせていただきます。
 最初、私の方でというよりも、事務局の方で用意してくださいました導入の司会進行の文言を読ませていただきます。
 議題2に移ります。現在国連では、ポスト2015開発アジェンダ(ポストMDGs)の議論がなされており、本開発アジェンダについては、科学も重要な役割を担うものとして位置付けられています。
 また、国連科学諮問委員会がユネスコが事務局を務める形で設置され、科学と政策の連携等に関する議論が行われております。
 本日は、こうした状況の中、ユネスコの科学事業の在り方について、改めて議論したいと思います。なお、この議論はユネスコ創立70周年の機会に発出する国内委員会の会長ステートメントにも反映できればと考えております。
 ということで、ポスト2015開発アジェンダの議論、それから国連科学諮問委員会という場、それからユネスコ科学事業の在り方、これをユネスコ創立70周年というタイミングでどのようにフォーカスしていくかということがこれからの議論だと思います。当然ながら、こういった科学事業をどのように政策立案に反映していくのかという、科学と政策の関係というのが、この議論の中で先生方に御意見を頂きたい、御議論を頂きたいところのコアになってまいります。
 まずは、資料が幾つかございますので、事務局から御説明を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。
【野田ユネスコ協力官】
 こちらの議題に関しまして、3点ほど資料を準備させていただいております。資料5、6、7でございます。
 まず、資料5、ユネスコ科学事業の在り方について、論点メモとしてまとめさせていただいております。
 まず最初が、平和及び公平で持続可能な開発を目的に掲げているユネスコが21世紀に取り組むにふさわしい科学事業は何か。
 2点目といたしまして、教育、科学、文化等、様々な分野を所掌しておりますユネスコにとって、科学分野において特に貢献すべき分野は何か。
 3番目といたしまして、SDGs(持続可能な開発目標)の議論も踏まえ、以下のような諸課題にユネスコの科学事業として何ができるのかということで、異文化の衝突でありますとか、グローバル化と格差社会、貧困、気候変動などがあるかと考えられます。
 また、次が、このような課題の解決に向け、人文・社会科学の果たすべき役割は何か。特にMOST(社会変容のマネージメント)、これはまた後刻、説明いたしますが、この枠組みにおきまして、日本として発信すべきものは何か。
 最後にジェンダー平等性、また、女性・若者の活躍促進にどう対応するかといったことでございます。
 次に、資料6ですが、こちらはユネスコの中期戦略、2014年から2021年にかけてのものでございますが、その中での科学分野の戦略目標がどうなっているかというものを説明したものでございます。
 まず、全体のミッションステートメントがございまして、平和の構築、貧困の撲滅、持続可能な開発、異文化間の対話といったこと。
 これを受けまして、包括目標、地球規模の優先課題などがございますが、各事業の戦略目標として九つほど挙げられております。真ん中の段の戦略目標4、5、6といったところが科学分野の戦略目標となっております。戦略目標4が、「国・地域・グローバルレベルの科学・技術・イノベーションシステムと政策の強化」、戦略目標5、「持続可能な開発のための重要課題に関する国際科学協力の推進」、この二つが主に自然科学分野でございます。6番目が主に人文・社会科学でございまして、「包摂的社会開発の支援、文化の関係改善のための文化間対話の促進及び倫理原則の推進」となってございます。
 また、資料7につきましては、先ほど出てまいりましたMOST、社会変容のマネージメントについての説明資料でございますが、こちらがユネスコの人文・社会科学分野の主要な事業の一つとされておりまして、社会変容の結果として生じる課題への対処、研究者と政策立案者の持続可能な対話を通じたエビデンスに基づくアプローチ、政策立案を改善することなどが目的とされておりまして、現在、35か国から成ります政府間理事会の中で、我が国もメンバーとなってございます。
 活動の四つの柱といたしまして、人文・社会科学の研究を支援し交流する、閣僚レベルの政府間フォーラムの開催、政策立案への貢献、それから人材育成を行うことが挙げられます。
 また、戦略目標といたしましては、人文社会科学-政策インターフェースを通じて加盟国のSDGsの実施を支援すること。また、研究の学術以外のインパクトを評価する加盟国の能力を高めることといったことが戦略目標として掲げられております。
 また、参考資料といたしまして、参考資料5でGCED、Global Citizenship Education(地球市民教育)についての資料を付けさせていただいております。参考6として、先ほども話題に上りました国連科学諮問委員会についての資料、それから、7が先ほどのSDGsの仮訳でございますので、こちらも適宜、御参照いただければと存じます。
 資料の説明は以上でございます。
【吉見人文・社会科学小委員会委員長】
 ありがとうございました。若干、せん越ながら少し補足をさせていただきますけれども、事務局の方で資料5に当たるような幾つかの論点を整理していただきました。これが資料6や7、参考資料に関わるところと非常に関連しているんですけれども、一番恐らくクリアなところというのは、資料6に整理されているユネスコの中期戦略、科学分野の戦略目標に整理されているとおりのところだと思います。
 ミッションステートメントに、既に先ほど来、サステナビリティの議論の中で出てきましたような主要な論点、つまり平和の構築、貧困の撲滅、持続可能な開発、異文化間の対話といった、ここでの議論の中でも、かなり議論が先ほどされてきたような主要課題が既に挙げられております。
 なおかつ、その戦略的目標の中で、今、科学分野として御説明いただいた中の戦略目標5、戦略目標6で、これらの課題と若干関連するところが出ているんですけれども、お読みいただければ分かりますように、戦略目標5が持続可能な開発に関わり、戦略目標6が異文化間の対話に関わるんですけれども、ざっと見たところの印象としては、平和の構築あるいは貧困の撲滅といったところが、かなり具体的な形でこの戦略目標に掲げられるには至っていないように見受けられます。それもあって、下の方に紛争・災害後の状況への対応というような、少しぼかした形で出ているような印象を持ちます。
 このような全体的なユネスコ自体の議論の状況を前提に、もう一方で、科学あるいは研究と政策をどうつなぐのかということが、もう一つの事業の中で議題とされてきたということです。
 1994年ですから、もう20年もたっているので見るからに文言の印象がとても古くて、オールドファッションかなという感じもするんですが、しかしながら、ここの中で恐らく言わんとしているところは、研究と政策をどうつなぐかというインターフェースの問題だと思います。研究と政策をつなぐ、そのために政府間フォーラムを開催するということと、人材育成を行うということが重要であると出されていて、この含意そのものは今でも有効性を持っていると思います。
 先ほどの議論との関係で言えば、恐らく幾つかの課題を解決していく上で、教育をどうするのかという課題と、政策をどうするのかという課題の二つがあると思われます。この教育と政策をつなぐ部分で研究科学というのがある。そうすると、科学と教育と政策の関係をどうするのかということが、恐らくこれから議論されていかなければならない課題、きょうの課題だと私は考えました。
 それで、教育の方は別の委員会でもあると思うんですけれども、特に科学と政策の関係というものが、今出たようなサステナビリティ、貧困、戦争と平和、あるいは異文化間の対話、こういったことで科学がいかなる役割を、特に政策との関係において果たし得るのかということについて、具体的な提案等、もしありましたら是非頂きたいと存じます。
 ちょうど黒田先生が国連の、きょうの資料6にございます国連科学諮問委員会の委員でもいらっしゃいますので、もしできましたら、諮問委員会の役割、このあたりのことも含めて、一言、国連での議論等も御紹介いただければと思いますけれども。
【黒田(玲)委員】
 そうですね。準備してくればよかったなと今思ったんですが、第2回の会合が12月にパリで開かれまして、そのときに方針を、具体的な内容を少し変えました。5月25、26日にクアラルンプールで第3回を開きます。
 今までポリシー・ペーパーを作るということで活動していたんですが、第2回の会合の結果検討したビッグデータに関しての意見は、すでに意見書をまとめて潘基文の方に送ってあります。それは終わっているんですが、今は今年の12月にパリで開かれるCOP21に向けての活動と、国連総会に向けてのSDGsにおけるサイエンスの役割強化、国連のグロ-バル・サステイナブル・ディヴェロプメント レポートへの意見とハイレベル ポリティカル フォーラム(HLPF)の強化など新しくミッションが潘基文から来ています。その上に、Any idea、この全ての17目標、169項目に含まれていないか、SDGsをインプリメントするための何か特別のアイデアがあったら、それをアドバイズしてほしいという話が来ていて、私は実はそのグループに属しています。
 それで、今、各26の委員にアイデアを出してもらっていて、デルファイ法を使って、絞っていこうというプロセスを今ちょうど始めたところです。少ない数にまとめてマレーシアの会議でみんなでディスカッションしようという活動をやっています。
 ですが、25、26日の会議でもう少し具体的なことが出るのではないかと思うのです。今年は非常に大変な年で、SDGsがニューヨークの国連総会で決まった後、今度各国のポリシーに落としていくので、その前に意見を言おうということで、25、26日の第3回会合ために全員、忙しく活動しています。
 ですから、余りゆっくりしていると、いろいろなサステナビリティ・サイエンスのシンポジウムとかをやっても、何となくAfter the eventになるのではないかなと少し心配しながら、先ほど来のお話を伺っていたのですが、今年はすごい勢いでいろんなことが動いている年だということだと思います。
 具体的に1、2、3のところは、もし必要でしたら後で、どこまで公開していいのか分からないですけれども、多分大丈夫だと思いますので、資料としてお送りしたいと思います。きょうは準備してこなかったので申し訳ないんですが。
【吉見人文・社会科学小委員会委員長】
 ありがとうございました。今のお話の中でも、タイミングといいますか、先手必勝ということで。先手、先手を打っていかないと、余りインパクトを持たないということが、常に、特にグローバルなレベルではあると思いますので、その辺もやはりこういうユネスコのような場で、何か日本がやっていくというときに重要な論点だと思います。
 はい。猪口先生。
【猪口委員】
 この参考6というのを見ていて、まさにアドバイザリーボードの紙なんですけれども、なるほどと思ったのは、やはり思想の先導というのは、国連というのはなかなか立派なんですよ。そういうのをとるんですよね。それを2012年1月の早い時点で、Resilient People, Resilient Planet、この言葉を本意にできているということですよね。その後、レジリエンスというのは、日本でも大いにはやって、政策的にも国土強靱化政策で、みんなインフラの話だろうと言うんだけど、実に思想的に、ここでこういうサステナビリティとのセットとか人間の自立ということについて書いている。だから、こういうのを、もう一回日本の社会の中でフィードバックして、この段階でちゃんと勉強すべきだという感じがするんですよね。
 それで、仙台での国連防災世界会議で、このレジリエンスというのは、まさに本当の主流化した概念へと、こういうサイエンティフィック・アドバイザリーボードから、やっぱり思想の先導は出ていると。それで、ああいう巨大な国連会議で主流化すると。それで、各国が命令されるわけではないけど、自分のものとしてオーナーシップをもって国内政策に落とし込んでいくと、これで思想がついに主流化して、サイエンスはこの思想に奉仕してほしいと。これをどうやって進めるのか、これはサイエンスが答えを出すしかないということじゃないかなと思うので、黒田先生の参加されているこの会議というのは、まさにそういう重要な役割を果たしていると思うので、もし機会があれば、Resilient People, Resilient Planetみたいなのを、もう少し話を伺いたいなとか、今回の国連でのビルド・バック・ベターという仙台で出た概念ですよね。これもレジリエンスというだけじゃなくて、それよりもっと一歩先に行きますよね。単に強いと、絶対屈しないとか、サステナブルでちゃんと維持するというのではなくて、もっといいものを作っていく。より良い地球のための学びとかというのがESDのスローガンだから、あれと似ているんですよね。ビルド・バック・ベターという考え方、そうやって思想も発展するんですよ。このサイエンティフィック・アドバイザリーボードから始まる思想の萌芽というのは発展していくんだと感じましたので、また何かのときに教えてください。
【黒田(玲)委員】
 あと、Earth we wantというもう一つ大きなターゲットが、レジリエントのほかにあると思っています。私たちはどういう地球にしていきたいのかという思想があってやっているので、その辺も考えるといいかもしれません。ネットからダウンロードできると思いますので、皆さん、すごく大部ですけれども、是非短いエグゼクティブサマリーだけでも読んでいただけるとありがたいです。いいターゲットと思います。ESDもいいこと言っているし、みんないいことを言っているんですけれども。
【吉見人文・社会科学小委員会委員長】
 ありがとうございました。今、猪口先生がおっしゃっていただいたように、やっぱり国連自体が2012年から具体的に表明してきていることのコアの部分を我々自身が学んで、それで議論の輪を広げていくというようなことはとても重要なことだと思います。
 どうぞ先生方、何か御発言を頂きたいと存じますけれども。
 中川先生、先ほど具体的な大変重要な御指摘を頂いて、やはり議論のための議論ではなくて、具体的な政策とか、具体的なアクションとか、そういうものにつながる議論をここでしていかなければいけないというお話を頂きました。この科学と政策をつなぐということで、先生の側から何か御提案はございませんでしょうか。
【中川委員】
 いやいや、スタンスとしては申し訳なかった。第三者的な、評論家的な発言になっちゃって申し訳なかったです。それでこっちにまた打ち返しがあったような感じなんだと思うんですけれども。
 やっぱり、ISILのとんでもない形で現れてきた活動というか、思想というか、そんなものをどういうふうに国際社会の中でつかんでいくかというような議論というのは、喫緊の、この異文化の衝突なり、あるいは格差という問題で、さらに広がっていく中での、排除された社会あるいは民族、あるいは文化とか、そんなような切り口の議論がもっともっとなされて、その中から、では、教育の分野でそれをどう捉えてやっていかなきゃいけないかとか、そんな具体的な、今の課題に対しての議論というのを是非やってもらいたいなと思うんです。
 私はある意味では、私の座右の銘というのは、和して同ぜずなんですよ。大人は和して同ぜず、小人は同じて和せずらしいので。複眼的にそれぞれの持っている文化なり価値観なりというのを、それはそれで尊重していきながら、だけど和していくという、どう作っていくか。さっき外交という話が出ましたけど、そんなものを国連の中で打ち出していって、世界の共通の思いとして、教育の中にもそれを含めると。例えば、今、日本は教科書の検定で政府の価値観をそこに持ち込めようと一生懸命になっているけれども、もう一方で、では、韓国はどう考えているのかとか、中国はどう考えているのかということを、子供たちの複眼的な教育の中に持ち込むような考え方というのが、和して同ぜずであってもいいでしょうというふうな、そんなふうに全体をリードしていく、おおらかと言ったらいいのか、もっと温かいというか、そんなものを醸し出す機会にしていただければなと思います。
【吉見人文・社会科学小委員会委員長】
 ありがとうございます。まさに今、前半の部分で御指摘を頂いたような状況の中でこの問題を考えるという意味で、資料の参考5になるような形でのGlobal Citizenship Educationという、こうしたような動きも起きてきているということで、参考資料の方に事務局にお願いして付けさせていただきました。是非ほかの先生方からも御意見を頂ければ。どうぞ。
【宇佐美委員】
 資料6に関連して思いましたことをお話ししたいと思うんですけれども、先ほどの口頭での御説明で、戦略目標4、5が主に自然科学で、戦略目標6が人文・社会というふうにおっしゃって、多分、比重としては確かにそうなんだろうなと思ったんですけれども、先ほどの発言で、私、少し申しましたように、科学の知見を政策に実装するというフェーズで、社会科学の知見というのは非常に重要になるということで、そこは多分、事務局としても踏まえられて、比重としてはということだったんでしょうけれども、戦略目標4のところでも社会科学は重要になるでしょうし、それから、ここの戦略目標の九つの中には、明示的に具体化した形で挙がっていませんけれども、例えば資料に表れている言葉に即して言うと、包括目標のところの、公平で持続可能な開発の、では、公平というのはどういうような意味なんだろうかと。
 実は、これは先ほどの前半で議論をしていましたテーマに関わる大きな話につながっているんだろうと私は思っていまして、どういうことかと申しますと、人文・社会科学というふうにつなげて言っているんですが、実は人文学の貢献の仕方と社会科学の貢献の仕方というのは、少し重なりながらも違うところがかなりあって、先ほど猪口委員が言われた思想の先導ということに、まさに関わるのは人文学の、特に規範に関する分析をする分野が哲学の中でございますので、そういったところからの貢献の仕方を、先ほど私の発言の中では、政策実装、その他、あるいは合意形成のようなところは、むしろ社会科学というところに比重を置いた形で発言させていただきましたけれども、両方を少し違った形で、人文学と社会科学の貢献の仕方は違っていて、そこをもう少し御留意いただくと、人文・社会科学の貢献というのが、実は当初想定されているより、もっと広範囲にわたってくるのではないかと思いますので、そのあたりも御留意いただければなと思いました。
【吉見人文・社会科学小委員会委員長】
 ありがとうございました。今、御指摘いただいたように、戦略目標のどれをとって見ても、文系や理系、それぞれ組み合わさっているという……。
 どうぞ。
【籾井国際戦略企画官】
 今の点に関しまして、事務局から補足でございますが、戦略目標自体はこういう割と短いターゲットとして掲げられているんですけれども、実はそれぞれに附属するもう少し長い文章がございまして、その中では、もちろん人文科学、社会科学にも触れられておりまして、まさに本当に比重の問題として、具体的な事業を考えたときに、今やっているユネスコの事業が自然科学のものが多いと。ただし、当然のことながら人文・社会科学の分野とも連携をしながら、そういったところのインプットも得ながら、最終的には取り組んでいくことが必要というのが戦略目標4、それから5についても書かれております。
【宇佐美委員】
 なるほど。ありがとうございます。
【吉見人文・社会科学小委員会委員長】
 適切なコメントをありがとうございました。そこと、もう一つ、この資料6に関しましては、一番下の、つまり戦略目標が向かっていく先のところで書いてございます。紛争・災害後の状況への対応と、これも大変重要なポイントかと存じます。特に国連防災会議をこの3月にやった後、防災、やはり日本は蓄積が大変ございます。この防災であるとか、ISの問題を考えてみても、平和構築の問題、紛争の問題、これは大変、とてつもなく大きな問題に現代社会でなっております。こういう具体的な課題状況というものの中でお話を頂ければ幸いでございます。
【観山委員】
 今後のユネスコ科学事業の在り方の論点メモを見ていて、教育とか科学とか文化、簡単な意味の文化遺産とかそういう面もありますけれども、もう一つはコミュニケーションという部分、これが結構、今後、少し具体的にどういうことをしたらいいかという提案をしているわけじゃないんですけれども、異文化の衝突だとか、いろいろな問題というのは、一つコミュニケーションという部分が非常に重要だと思われるわけです。これは科学的に、テクノロジー的には非常に発展をしているわけだけれども、それをいろいろな政策とか、いろいろな国別の考え方があって、コミュニケーションというのはなかなか取れていないということに発生する問題というのは、結構出てきているのではないかと思うので、今後、ユネスコの一つの在り方として、コミュニケーションというものを一つの核にすることも一つの方向性じゃないかなと私は思いました。今までの文化とか科学教育というのは、非常にいろいろな実績を設けてきていると思うんですけれども。
【吉見人文・社会科学小委員会委員長】
 ありがとうございました。どんな御意見でも……。
 長さん。
【長委員】
 意見と申しますか、もしかしたらこれは事務局に対する質問かもしれないのですが、資料6を拝見していて、私自身が国際協力とかそちらに関係してきたものですから、ユネスコでこんな議論が行われて、少しびっくりしましたといいますか。
 それで、素朴な質問なのですが、国内的にはこういう事業と文部科学省、こちらの御担当と外務省のしかるべき部署がどういう連携をなされているのか。それと、ユネスコ本体については、ユネスコとほかの国連機関で、まさにこういったことをやっていらっしゃる局とどういうような連携とか調整とかがなされているのだろうということを、素朴な疑問として伺いたい。
【吉見人文・社会科学小委員会委員長】
 事務局の方で。
【籾井国際戦略企画官】
 テーマによってやり方はまちまちですけれども、まずユネスコと他の国連機関との関係について申し上げますと、テーマに応じて、例えばUNDPと連携することもあれば、UNEPと連携することもあるということで、多分プロジェクトベースでやっているのと、あと国連機関同士のネットワークというのがありまして、そこの中で情報共有はしているという仕組みになっております。
 文部科学省と外務省の関係についても、本当に事業ベースで必要があれば協議は当然しますし、例えば国際協力に関する部分を文科省は外務省に何の調整もせずに勝手にやるということはまずあり得なくて、そこは事業に参加するにしても、常に政府間、外務省に限らず関係部署はプロジェクトに応じていろいろ出てきますので、調整をしながら進めております。
【吉見人文・社会科学小委員会委員長】
 よろしいでしょうか。ほかに御意見ございましたら。どうぞ。
【中川委員】
 さっきのコミュニケーションで少し誘発をされたんですけれども、日本のユネスコとして、あるいは日本として、日本の中にあるコンテンツ、防災の関係の資料というのは相当ありますし、あるいは文化的な、日本の持っている文芸書を含めた、あるいはアニメなんかはもう外へ出ていますけれども、そういうものを、これまでは海外へ向いて積極的に発信するというマインドが余りないんですよね。国会なんかでも法律はたくさん作っているんですけれども、それは当然英語で翻訳されて全部アップされているんだと思っていたら、そうではないんです。やっと最近そのことに問題意識がなってきて。
 外から見ていると、日本で何をやっているかが分からない。それも、英語だけじゃなくて多言語化するようなプロジェクトというのが、日本のような国ではあってしかるべきなんだと思うんだけれども、これは恐らく日本だけではなくて、英米語を中心にした国は当然自分の言葉で世界と勝負できるわけですから、だけど、それでないアラブ系の国々とかアフガン系の国々とかというのは、その国々の中で起こっていることが多言語化されていくようなプロセスというのがもっと必要なんだと。それをネットの社会ですから、ネットでどんどんアップしていけるわけで、必ずしも本で出版しなきゃいけないという世界でもないので。
 そういう意味で、具体的なコミュニケーション事業というのが、そろそろ出てきていいのではないかなというような思いをしているんですけどね。そんなことも一つの具体的な案として出してみてはどうかなと思います。
【吉見人文・社会科学小委員会委員長】
 ありがとうございました。西尾委員、お願いします。
【西尾委員】
 私もコミュニケーションであるとか、コンテンツであるとか、メディアということとか、それから黒田先生が、先ほどビッグデータとおっしゃられたこともありまして、どういうことが提案されているのか非常に興味があります。ただし、これらのことは、戦略目標9のところだけで議論される課題なのでしょうか。そこら辺が少し分からないのですけれども。
【吉見人文・社会科学小委員会委員長】
 これは多分、国内委員会の中の役割分担とか、それから戦略目標と国内委員会の関係とか、そういうこととも関わってくると思うので、事務局の方から少し補足を頂けないでしょうか。
【籾井国際戦略企画官】
 担当としては、ユネスコの事務局の中にも、コミュニケーション局という部署がございまして、そこは、例えばメディアリテラシーですとか、ICTの活用、それから表現の自由、言論の自由といったような問題を取り扱っていると。あと、いろいろな情報へのアクセスの問題などを取り扱っているという部署でございます。
 それを受けて、今、吉見委員長からお話がありました国内委員会のコミュニケーション小委員会というのがございますので、恐らくそういう話というのは、戦略目標9というのが、まさにそのコミュニケーション局の対応する部分にはなりますので、この枠組みの中に入ってくるということになろうかと思います。
【西尾委員】
 黒田先生がおっしゃっておられましたようなビッグデータの関連については、ビッグデータの有用によって、科学の方法論自体が変わりかけていますので、科学のところできっちりと述べるべきだと考えます。
【籾井国際戦略企画官】
 そうですね。関わってはくるのかもしれませんけれども、今のところ具体的にそういった議論をコミュニケーション局でしているという状況にはないというところです。
【吉見人文・社会科学小委員会委員長】
 恐らくアジェンダがもう少しクリアになってくれば、今、中川委員、西尾委員から頂いたような話というのは、コミュニケーション小委員会と、この人文・社会科学小委員会や自然科学小委員会、これは合同というか、そこでのお話し合いをしていきながら、もう少し共通のアジェンダという形に絞り込むことができるのかもしれないと思います。
【西尾委員】
 先の総会のときも言わせていただいたのですけれども、ユネスコの活動の中で、最先端の情報通信技術の有用が、今後非常に大きな役割を果たしていくのではないかと思いますので、そのようなことがもう少し強調されていくといいのではないかと思いました。
【吉見人文・社会科学小委員会委員長】
 どうしてもユネスコのフレームそのものが、1960年代のときにセットアップされたという基本フレームがあると思いますので、90年代以降のいろいろな技術的な変化とずれてきているということはどうしてもあるかと思います。
 先生、どうぞ。
【植松自然科学小委員会委員長】
 そうしますと、資料5の21世紀に取り組むにふさわしい科学事業は何かということなんですが、それまでに、では、20世紀にどういう科学事業をユネスコがやってきたかというのが、どれだけ皆さんに見えるかということもあると思います。具体的にユネスコがやったということをベースに、今度、21世紀はこういうことができるんだというふうになると思うんですが、そこの点というのが意外とクリアになっていないような気がします。
【寶委員】
 資料6の戦略目標4で政策の強化というのがありますよね。それから、戦略目標5で国際科学協力の推進とありますけれども、これはもちろん戦略目標1、2、3とも関連するんですが、例えば日本ですと、政策として去年3月、水循環基本法というのを作ったんですよね。水に関する初めての基本法を作りました。これは日本の政策なわけです。それをどう強化するのかというところは、まだサイエンスの観点からは余り強化に貢献していないわけです。フューチャー・アースは貢献し得ると思いますけれども。
 そういう、せっかく政策を打ち立てても、それを強化する実際の取組がどこまでできているのかと。災害対策基本法も改正されました。これも改正されたところをどう強化していくのかという。だから、どこが改正されて、そのためにどういう科学なり研究なり教育なり、あるいは一般的な教育なりをしていかないといけないのかというところは議論不足だと思うんですよね。
【植松自然科学小委員会委員長】
 基本計画というものが、もう少しすると出るのではないですか。
【寶委員】
 出ますね。今、もうそろそろ策定されていると思いますけれども、基本法ができますと、基本計画が……。
【植松自然科学小委員会委員長】
 基本計画が出ますよね。
【寶委員】
 だから、そこにどういうふうに書き込まれているのか、調べていませんけれども。それで、そういうことを考えると、特に今、日本の国内委員会で御議論しているわけですから、日本が打ち出している政策、これは世界にも役立つはずだというような形で、日本の政策をもっとバックアップしていくと、そういう活動を強化していく必要があるのではないかなと思います。
 例えば水循環基本法ですと水問題になりますが、海洋も生態系も自然科学小委員会の三つの分科会は全部関連しますけれども、資料5の真ん中にある異文化の衝突から自然災害、これは全て水が関係するわけです。エネルギー問題は、水力発電はもちろんありますけれども、水素を使った自動車、これはもうエネルギーの問題ですし、気候変動にも関係してくる。そういう横断的に取り扱える素材をうまく見つけて、それと今、日本国がやり始めている新しい政策とのマッチングをさせて、そこを重点化していくと、それを世界に打ち出していくというのが一つの方向だと思います。
【吉見人文・社会科学小委員会委員長】
 ありがとうございました。
 ちょうど指定されている時間になっているんですけれども、本日どうしてもという御発言がありましたら、是非。
 では、黒田先生。
【黒田(玲)委員】
 今の水関係ですと、例えばSDGsの目標の一つに水というセクションもあって、全ての人々に対して水と、その持続可能な管理及び衛生の確保みたいな、テーマがあります。みんなが議論して議論して作っているので、それをうまく取り入れながら、日本ではここをやるとした方が良いと思います。ただ、各国もやっているので、そこを日本だけでやったものが全ていくとは思えないし、いろいろな水に関するもの、海水の淡水化が問題になっている国もあればそうじゃない国もあるし、衛生状態とか、いろいろなことがありますよね。だから、日本の強いところを生かしながら、この枠組みの中でいくと、みんな聞く耳をもってくれると思うんです。何もないところからぽんと出しても、また勝手に日本が日本の国内の宣伝をしているなとなったらインパクトがないので、SDGsでもフューチャー・アースでもいいですけれども、そういう大きな枠組みの中でも、ここは日本が強いんだというふうに持っていくのがいいのかなと思いました。
【吉見人文・社会科学小委員会委員長】
 ありがとうございました。大変重要かつ根本的な御議論をしていただいたと思います。
 私の印象では、一方できょうの資料ですと、資料6、それから参考6にありますような、かなり深さのある国連の議論が既になされていて、そして、ある種必要なカードというのは相当程度、少なくとも2010年代前半段階の現状においては出そろっているというふうなことがある。それを一方では、私たちがどれをどう使えるかということをもっと学んでいく必要があるということを感じたように思います。
 それから、もう一つは、これと九つの戦略目標もそうなんですけれども、これは2次元で書かれておりますが、3次元目といいますか、縦の軸にグローバルな国連の文脈と我が国の国内の文脈といいますか、今、水資源のお話もございました、それからコンテンツのお話もありました、防災の話もありました。そういうふうな日本の国内の状況についてアピールできるポイントが随分あると思いますので、それをもう一つ、この九つの縦横のマトリックスを3次元にするといいますか、3次元にして、もう一つのZ軸のところで日本と国連との対応関係をもう少し精査していくという作業が、この委員会においても必要であり、また、可能なのではないかという印象を持ちました。
 ちょうどここには学識、サイエンスのといいますか、学者の先生方と、それから政策立案の先生方と両方いらっしゃっておりますので、こういう場で政策の面と研究の面と両方から縦軸のつながりというものを、もう少しクラリファイするというか、明確化するといいますか、そういう作業をこれからしていければと思います。
 本日の合同委員会で、本件について随分御議論を頂きましたけれども、引き続き議論をしていく必要があると考えております。今後とも、現下の世界情勢はなかなか厳しい世界情勢がございますけれども、その情勢の中でユネスコの科学事業が何をなすべきかについて考えていく場にできればと思います。
 時間もございますので、議題3に移らせていただきます。その他事項です。
 それでは、議題3、事務局から世界ジオパークのユネスコ正式事業化に関する検討状況について報告がございます。お願いいたします。
【野田ユネスコ協力官】
 資料8を御覧いただきたいと思います。世界ジオパークでございますが、世界ジオパークは地質学的重要性、希少さ、美しさを持つ場所を認定・保護しまして、持続可能な経済開発の場とするという事業でございます。
 こちらはユネスコではありませんで、世界ジオパークネットワークという組織が認定するものでございます。ユネスコはこれまで側面支援を行ってきたという経緯がございます。
 現在、日本から認定されております世界ジオパークが洞爺湖有珠山など7地域。また、日本独自に認定をしております日本ジオパークが29地域ほどございます。
 この世界ジオパークの事業について、ユネスコの正式な事業とすることについて、現在議論が行われておりまして、これまでユネスコ総会、ユネスコ執行委員会、又はワーキンググループ等で議論が行われてきたところでございます。予定といたしましては、本年の11月に予定されております第38回ユネスコ総会におきまして、この世界ジオパークのユネスコ正式事業化が審議される予定でございまして、承認をされましたら、ユネスコの正式事業となる予定になってございます。
 以上でございます。
【吉見人文・社会科学小委員会委員長】
 ありがとうございました。ただいまの報告について、御質問等はございますでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、この件はそういうことで進めさせていただきます。
 その他、特に報告、審議すべき案件はございますでしょうか。事務局、何かございますでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは、これで閉会をさせていただきます。本日は御多忙の中、御出席いただきまことにありがとうございました。

―― 了 ――

 

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