資料7 2020-2021年のユネスコ活動に関する方針(答申案)(普及分野抜粋)

A.2020-2021年のユネスコ活動に関する我が国の基本的方針(普及分野)

1.ユネスコにおける主な取組の現状

○ ユネスコ活動の普及に関しては、現在、事務局長のリーダーシップの下進められている「戦略的なユネスコ改革」の中で、(1)コミュニケーション、(2)民間セクターとの戦略的パートナーシップ、そして(3)世界におけるユネスコのプレゼンス向上が重要なテーマとなっている。具体的には、
(1)コミュニケーションについては、ユネスコのイメージ向上、多様なメディアやユネスコネットワークの活用など、
(2)戦略的パートナーシップについては、パートナーシップのマネジメントプロセスの洗練化など、
(3)ユネスコのプレゼンス向上については、戦略的ゴールへの貢献や国連内の他機関との強化に向けた組織再編など
が目指されているところである。

○ これらのテーマそれぞれについて、具体的改革案を検討するための作業部会が設置されている。現在報告されている各作業部会の進捗状況については、次のとおりである。
(1)コミュニケーションについては、ユネスコのコミュニケーションに関する新たな構造やフローの提案を含むレビューを行ったほか、新たなソーシャルメディアポリシーの策定に向けた調整が行われた。
(2)戦略的パートナーシップについては、現行の「包括的パートナーシップ戦略」の改訂に向けた予備的勧告が行われた。この勧告では、これまでの戦略で明示されてこなかったパートナーを含めることや、ユース、都市、民間セクターといった層との関係強化が提言された。なお、実際の改訂版については、第207回執行委員会において提出される予定である。
(3)ユネスコのプレゼンス向上については、フィールド組織の改善に資するよう、世界におけるユネスコのプレゼンスに関する新たな原理と基準を提案したほか、フィールド事務所を巻き込んだ意見交換を行った。

○ また、ユースの参加拡大については、2014-2021ユネスコ・ユース事業戦略に基づき、若者が自らに関係する政策やプログラムに関与し、自分の国やコミュニティにおける平和構築や持続可能な発展を主導することを目指している。この戦略は、社会・人文科学局を中心に、ユース関係事業実施に当たっての重要な指針となってはいるものの、より分野横断的かつ部局横断的な定着を進めることが今後の課題として指摘されている。

○ これらのテーマについては、今後更に検討が進められ、検討結果は今後の中期計画や事業計画・事業予算に反映される予定である。

2.我が国の主な活動状況

○ 我が国におけるユネスコ活動の普及については、1947年に設立されたユネスコ協力会(後のユネスコ協会)による民間ユネスコ運動に端を発し、今年で30周年を迎える「世界寺子屋運動」やユネスコスクールを中心としたESDの実践、ユネスコエコパーク・ジオパーク等の地域横断的な取組による自然の利活用や科学の普及(海洋科学、水資源等)、そして世界遺産や無形文化遺産の保存活用等、様々な分野・レベルのネットワークを通じて実施されてきている。

○ 全国規模の普及活動としては、ユネスコ協会が毎年実施する民間ユネスコ運動を主体とした「日本ユネスコ運動全国大会」を始め、「ユネスコスクール全国大会」、「ESD日本ユース・コンファレンス」等におけるESDの普及促進や、ESD活動支援センターによる、ESDに関する各ステークホルダーの繋がりを構築・強化することを目的とした「ESD推進ネットワーク全国フォーラム」等が毎年開催されている。

○ 各地域においては、地域のユネスコ協会やユネスコスクール、ESDコンソーシアムESD活動支援センター等のネットワークを通じた普及活動、ユネスコの各種登録制度を生かした普及活動なども展開されている。

○ また、近年では日本ユネスコ国内委員会をはじめ各主体がソーシャルメディアを用いた普及活動にも積極的に取り組んでいる他、2012年からは日本ユネスコ国内委員会において「広報大使」を任命し、学校への訪問や「子ども霞ヶ関見学デー」におけるユネスコ活動の広報等を実施している。

○ ユネスコの理念を実現するために、それぞれの担い手が創意に基づくユネスコ活動の実践及び普及活動に努めているが、長年の担い手であるユネスコ協会においても、会員数減や高齢化、活動の地域差などが課題となっている。各地域においては、社会の変化への対応の観点から、ユネスコ活動が直面する課題の克服に向けて努力する例も見られるものの、現在ユネスコ活動の大きな柱となっているESDやSDGsに対する理解や認識の深まりが、必ずしも十分とは言えない状況である。

○ 一方で、SDGsに向けた取組全体に目を向ければ、従来のユネスコ活動の担い手に加えて、その他のNPOや民間企業など多様なステークホルダーによる取組の広がりがみられるところである。こうした取組とユネスコ活動は理念を共有していると考えられることから、SDGsの達成に資するESDの深化をはかるべく、多くの担い手がユネスコ精神を生かして連携・協働できるようなネットワークの構築が目指されている。


3.2020-2021年のユネスコ事業に関する我が国の基本的方針

(1)新たな地域課題を踏まえたユネスコ活動の活性化
○ 我が国の発展を支えてきた地方の活力を維持していくため、各地域がその特色を生かして活性化を図っていくことが喫緊の課題となっている。ユネスコが行う各種登録事業等は、地方の自然や文化を生かしたまちづくりのきっかけとなる枠組みでもあり、ESDの実践や地域版SDGsのような取組と連携した人材育成や地方創生に資する包括的なアプローチとして捉え直し、これを地域の特色あるユネスコ活動として活性化することが望まれる。

○ また、近年、入管法等改正により新たな在留資格「特定技能」が創設されたことなどを受け、我が国に在留する外国人は増加しており、今後も更なる増加が予想されるところである。地域の国際化に対応して、各地域で在留外国人が共に生活できる環境づくり、異文化理解・多文化共生社会をめざしたユネスコ活動が期待される。

(2)世代を超えて持続可能なユネスコ活動
○ 地域のユネスコ活動を持続可能なものとしていくためには、ユースの参加が欠かせない。ユネスコの理念を継承する次世代の育成を図るためにも、子供やユース層を対象に展開するユネスコ活動の充実を図るとともに、大学のユネスコクラブにおける活動を発信するなど、若者に対しユネスコ活動が分かりやすく魅力的なものとなるような工夫が求められる。

○ 同時に、ユネスコ活動をさらに強力に推進するためには、ユースにとどまらず、働く世代や退職後のシニア層にとっても魅力的なユネスコ活動の在り方を追求することも重要である。現在、民間企業でもSDGsが高い関心を集めており、この流れを捉えて、ユネスコ活動への共感と協力を得ていく必要がある。また、個々人が培ってきた経験や専門性、ネットワークを生かせる場として、ユネスコ活動の充実を図っていくことが期待される。

(3)多様な担い手が連携するプラットフォームづくり
〇 国内外のユネスコ活動には、長年地域のユネスコ活動を支えてきているユネスコ協会や、世界一の数を誇るユネスコスクールのネットワーク、ユネスコチェアとなっている大学等はもちろんのこと、地方自治体やNPO、公益法人、企業なども含め、多くの組織や個人が関わっている。今後、個々の活動の質を高めていくのみならず、多様なステークホルダー同士の連携を深め、オールジャパンでの戦略的な取組を推進し、我が国のユネスコ活動の未来を共創するプラットフォームの構築が望まれる。

B.第40回ユネスコ総会における2020-2021年事業・予算案(40C/5)等に関する方針(普及分野)

(1)「戦略的なユネスコ改革」と軌を一にした取組
○ 「戦略的なユネスコ改革」のテーマである(1)コミュニケーション、(2)民間セクターとの戦略的パートナーシップ、(3)世界におけるユネスコのプレゼンス向上や、ユースの参加拡大は、我が国のユネスコ活動に関する課題とも共通するものである。ユネスコにおける戦略的な取組を支援するとともに、これらと軌を一にしながら、国内のユネスコ活動の活性化を図っていくことが重要である。

(2)国内の活動成果を世界に発信・共有する機会の拡大
○ 日頃のユネスコ活動の活動成果を海外に発信することは、国を越えた成果の共有につながるのみならず、今後の活動への活力にもつながるものである。国連主催の各種会議における関連イベントの開催など、我が国の信託基金も効果的に活用しながら、ユネスコ活動の担い手が参加し交流・発信できる場の拡大を引き続き求めていく。
 

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