持続可能な開発のための教育に関する関係省庁連絡会議
関係省庁は、1)の政策的支援での取組が、他の優先行動分野における多様なステークホルダーによる取組の基盤になることに留意して、ESD関連施策を推進する。
我が国においては、従来からESDに組織的・体系的に取り組んできた。引き続き、ESDに関する取組が推進され、持続可能な開発への理解や実践力が育成されるよう、関係省庁において、教材提供や支援、広報啓発活動、優良な取組に係る情報提供、政策対話の開催等を実施し、多様な分野の取組を支援する。
令和元年12月に策定された「SDGs実施指針改定版」においてESDを位置付け、教育機関の役割として、ESDに関する国内外の活動の充実に貢献すること、ユネスコスクールネットワークのさらなる活性化を図ること、社会教育関連機関も含めてSDGsに資するように多様な文化とつながりながら学習できる環境づくりを促進することを期待している。
健康教育の推進、食育の推進、安全教育の推進、外国人児童生徒等に対する教育の推進、生活者としての外国人に対する日本語教育の推進、環境教育の推進、協働取組の推進、地域循環共生圏の創造、農業分野における次世代を担う人材育成、アジア地域における産業人材の育成、「倫理的消費(エシカル消費)」の普及・啓発活動等、教育機関の内外を問わず、SDGs4の実現に資する様々な政策分野においてESDの取組を推進する。
また、政府が策定するSDGs4に資する各種文書においても、ESDの考え方が反映されるよう努める。
2020年度より順次実施される新しい学習指導要領においては、前文及び総則において「持続可能な社会の創り手」となることが掲げられている。新しい学習指導要領に基づき、学校現場におけるESDの着実な実施を進める。
平成30年に策定された第3期教育振興基本計画においても、我が国がESDの推進拠点と位置付けているユネスコスクールの活動の充実を図り、好事例を全国的に広く発信・共有することや、ESDの実践・普及や学校間の交流を促進することが掲げられている。
ESDは、気候変動、生物多様性、資源循環、災害リスク削減、協働取組の推進など、環境政策の重要な分野とも深く関連している。特に、2011年に環境教育等による環境保全の取組の促進に関する法律(環境教育等促進法)(2003年成立、文部科学省、経済産業省、農水省、国土交通省、環境省の5省共管)が改正され、ESDの視点がより強く盛り込まれた。政府は、引き続き、同法及び同法に基づく基本方針の実施において、ESDの普及と推進に取り組む。
第五次環境基本計画において、持続可能な地域づくりのために環境・経済・社会の統合的向上を目指す地域循環共生圏の概念が提唱され、ESDの考え方をベースにその担い手を育成することが示されている。
日米環境政策対話を通じた米国との連携、日中韓三カ国教育大臣会合の枠組みを通じた中国・韓国との連携、東南アジア教育大臣機構(SEAMEO)加盟国との連携に加え、ASEAN諸国やアフリカ諸国との連携や、日本型教育の戦略的な海外展開等により、海外諸国とともにESDを推進する。
JICA等と連携し、途上国の未来と発展を支えるリーダーの育成等を支援することで、途上国におけるESDの推進に貢献する。
SDG4のリーディングエージェンシーであるユネスコに対する信託基金の拠出等を通じて、ESDの提唱国として、各国においてESDが推進されるよう支援を行う。また、国際連合やユニセフとの協力を通じた教育分野での協力を通じて、SDGsやESDの推進を図る。
さらに、国連大学サステイナビリティ高等研究所が実施するESDプログラム(RCE認定、ProSPER.NET構築)及びSDGsの統合的達成に向けた政策形成支援事業に協力するとともに、国内大学との連携強化を図りながら、サステイナビリティ分野の教育研究を基盤とした SDGs の達成に向けた取組を支援する。
持続可能な社会の創り手を育成するためには、教育機関、社会教育施設、企業等の学習機関自体が持続可能な社会に適応するための変革が必要である。また、各機関が独自にESDに取り組むのではなく、地域における目標を共有し、各ステークホルダーが担うべき役割を整理したうえで、課題解決に向けて共同して取組を実施することが望ましい。
政府は、ESD推進ネットワークの一層の強化やESDコンソーシアムのさらなる推進、モデル事業の展開等を通じ、機関包括型アプローチの推進を図る。また、「ESD推進の手引」やユネスコスクールネットワークの強化等を通じ、学校と地域、大学、企業、社会教育施設等との連携を促進する。
教育機関、社会教育施設、大学、地域、企業、市民社会等には、様々なステークホルダーと連携した機関包括型アプローチの発展、展開や、機関包括型アプローチを実現するためのガバナンス強化等が期待される。
ESDでは、学習者が実体験で得る気づきや五感に基づく直観的理解も重視する。政府は、各機関が連携し取り組む必要がある事例の一つとして、学校内外における青少年の体験活動の推進、「体験の機会の場」認定制度の運用等、体験活動の充実に向けた取組を支援する。また、ESD地方センターは、各地域において体験活動が可能な場所等の情報を収集しウェブサイトで広く情報発信する。
また、環境教育等促進法が定める「体験の機会の場」認定制度は、土地又は建物の所有権等を有する国民や民間団体が、その土地又は建物で自然体験活動や社会体験活動等の場として提供する場合、申請に基づき、都道府県知事の認定を受けることができることとしている。政府は、「体験の機会の場」認定制度の普及を図るとともに、認定を受けた「体験の機会の場」の周知と活用を促進する。
各地域においては、世界遺産や伝統行事をはじめとする地域の文化や様々な活動、ユネスコエコパークやジオパーク等の地域の資源を活用した活動、及び国際理解に関連するESDの取組を、学校教育機関、社会教育施設、大学、地域、企業、市民社会等が連携して実践することが期待される。
地域の学校や自然学校と連携して自然観察会や自然環境学習を実施する等により、子どもたちが自然とふれあう機会を創出する。また、エコツーリズムに取り組む地域の活動支援やエコツアーにおいて解説を担うガイド等の人材育成等により、より効果的に自然を体験できる機会を提供する。さらに、子どもの水辺再発見プロジェクト、国立公園ライブ画像等を配信する生物多様性情報システム等を通じ、ユネスコエコパークやジオパークを含めた海、河川、森林、公園等、多様な自然環境においてESDの学びを体験できる機会を提供する。
政府は、Society 5.0時代に求められる学びの実現に向けて、「GIGAスクール構想」に基づき、本年4月から1人1台端末環境での学びを本格的にスタートさせるべく、学校ICT環境整備を全国一斉に進める。また、子供たちが学校教育で学んだものを地域でさらに深め、実践的な学びを行うための支援を実施する。
ESDを実践するためのファシリテーターとして、各教育現場における指導者の役割は非常に大きい。学校や大学の教員のみでなく、教職を目指す学生や、ノンフォーマル、インフォーマルなESDに取り組む教育者の能力育成が求められている。
政府は、時代の変化に応じた質の高い学びの実現と、複雑化する教育課題に適切に対処するための指導力の向上等を図るため、教員研修等においてSDGsやESDの考え方を推進する。また、「ESD推進の手引」等を通じた教職員の資質能力の向上を図るとともに、教師教育の推進に関するモデル事例を展開する。
また、環境教育等促進法が求める学校教育等における環境教育の支援として、政府は、学校や地域における質の高い環境教育・ESDを実践・推進するリーダーとなる人材を育成することを目的とした研修を実施する。
各自治体や教育委員会、大学や社会教育施設等は、地域課題等を踏まえた指導者研修会等を自主的に実施することや、「ESD推進の手引」等を活用し教職員がESDを実践するための研修等を充実させることが期待される。
政府は、諸外国の教員等を我が国に招聘するとともに、我が国からも教職員等を諸外国に派遣し、諸外国の学校及び地域社会におけるESDと国際理解教育の好事例を探るとともに、ESDに関する諸外国との連携強化を図る。
政府は、ESDの実践者を効果的に育成するため、実践者支援のための研修プログラムを設計する人材等を育成し、その活動を支援する。
また、政府は、環境教育等促進法に規定される人材認定等事業を運用し、環境人材の円滑な活用等を目的として民間事業者が行う、環境保全に関する知識や指導に係る能力を有する者等の育成・認定、環境教育等に関する教材の開発等の事業の推進を図る。また、環境カウンセラーの活躍の機会を広げるよう、広報等を行う。
地方公共団体、社会教育施設、民間企業等、各機関においては、当該機関でESDを実践する者に対し、日頃の取組にESDの視点を反映させる実践的な研修を行うことが求められる。また、その際、市民社会組織の積極的な活用が期待される。
多様なステークホルダーが参加するESD推進ネットワークにおいて、ESDに関する最新の動向を共有するとともに、各地の優れたESD実践事例を共有し、ネットワーク参加者が交流し相互に学びあう場となるESD推進ネットワーク全国フォーラムを開催する。
ユースは、持続可能な社会の創り手そのものであり、ESDの実践にあたって核となるステークホルダーである。日本政府は、「SDGsアクションプラン」においても、日本の「SDGsモデル」の三本柱に「次世代・女性のエンパワーメント」を掲げており、各ステークホルダーには、ユースの主体的な活動を支援するとともに、様々な手段を通してユースの声を反映させる仕組みづくりが求められる。
政府をはじめとする各機関は、プラットフォームやネットワークの構築、フォーラムの開催、ポータルサイトの開設等を通じて、若者が国内外のユースと意見交換する場を確保し、SDGsやESDの主役となるユース同士の繋がりを多様な分野において構築するとともに、ユースの声が社会に活かされる環境づくりを推進する。
また、政府は、関係機関と協力して、ユースによる環境活動の発表、交流、大臣表彰を行なう「全国ユース環境活動発表大会」を開催する。また、全国大会に先立ち8ヶ所で地方大会を開催し、実践活動の普及を図る。
政府は、上記プラットフォーム等を活用し、国連機関のユースフォーラム等の様々な機会を捉え、国際的な場でユースが発信を行う機会を確保するよう努める。また、ユネスコにおける国際事業との連携等を通し、ESDに参画する若者が世界との接点を持つことができるよう支援する。
各機関においても、様々な場をとらえてユースが国際的議論に参画できる機会を創出することが期待される。
青少年教育施設を中核として、自治体や青少年団体等との連携を強化し、青少年に対し、国内外における異文化交流や持続可能な社会の重要性を学ぶ機会を充実させ、次世代を担うグローバル人材の育成につながるきっかけを提供する。
高校生による具体的な実践活動を奨励し、実践するユースに交流の機会を提供するため、政府は、関係機関と協力して、ユースによる環境活動の発表、交流、大臣表彰を行なう「全国ユース環境活動発表大会」を開催する。また、全国大会に先立ち8ヶ所で地方大会を開催し、実践活動の普及を図る。
また、若年層への環境保全の必要性への認識、取組等の促進につなげるコンテンツ事業として、様々な分野で活躍する一方で、環境問題等に関して特別に意識する機会が少なかった高校生たちに対して、彼らの活躍を応援し、新たなリレーションシップを構築しながら、環境に対する意識や共感を高める機会となるよう関心の高い分野とコラボレーションした参加型企画(「環境×高校生プロジェクト」)を実施する。
さらに、体験の機会の場の研究機構と協力して、グリーン・ブルー・エデュケーション・フォーラム(GBEF)を開催し、ユース等の優れた主張に大臣表彰を行うとともに、広くウェブ上で情報発信する。
持続可能な開発のための先進的な取組は地域において実践されることが多いという認識のもと、地域において、様々なステークホルダーと連携しながら、ESDで身につけた能力・資質をもって、地域課題の解決や地域の発展に寄与することが期待される。
ESDの実施により、学習者が地域の課題や地域社会の発展について理解を深め、身近なところから解決に向けた実践活動を行うことで、地域づくりが推進される例がある。ESD実施の成果が地域社会の発展に与える効果を十分認識し、地域からSDGsの実現を目指す「地域循環共生圏」の創造を行う人材育成を目的としたESDを実施することができる。政府は、地域循環共生圏の創造に向けた人材育成を目的とした地域のESD活動について、様々な方策により可能な範囲で支援して強化を図る。
また、政府は、ESDで学習した人材による実践活動が地域の課題解決に役立つことに鑑みて、地域からSDGs達成やグリーン社会の構築に取り組む、地域循環共生圏に関する情報を発信する。また、地域循環共生圏の創造や協働取組の人材育成にESDを反映する。
地方公共団体には、各機関において策定される各種計画の中に、SDGsやESDの理念を取り込むよう努めることが期待される。
政府は、ESDに取り組む様々な主体が参画・連携するESD推進ネットワークのハブとなる「ESD(全国・地方)活動支援センター」を運営し、全国で等しくESD 実践のための支援を受けられる体制を維持するとともに、地方センター及び地域ESD推進拠点において、地域の実態に応じた助言や支援が行われるよう、センターを運用する。また、地域の優れたESD活動の横展開を図るため、成果事例をネットワーク活動を通じて全国レベルで共有する。
各地域の課題に応じ、大人・子どもを問わず地域の身近な場においてESDの学びが提供されるよう、ASPUnivNetや国連大学RCE等も活用しながら、教育機関、社会教育施設、大学、企業、市民団体等と連携して事業を実践していくことが期待される。また、地域の身近な学習拠点である公民館等の社会教育機関同士のネットワークを構築することも期待される。
各地域においては、世界遺産や伝統行事をはじめとする地域の文化や様々な活動、ユネスコエコパークやジオパーク等の地域の資源を活用した活動、及び国際理解に関連するESDの取組を、学校教育機関、社会教育施設、大学、地域、企業、市民社会等が連携して実践することが期待される。
(以上)
国際統括官付
【終了した事業】