資料3-1 我が国における「持続可能な開発のための教育(ESD)」に関する実施計画(第2期ESD国内実施計画)(案)

持続可能な開発のための教育に関する関係省庁連絡会議 

1.序

(1)ESDの意義

  • 「持続可能な開発のための教育(ESD)」とは、人類が将来の世代にわたり恵み豊かな生活を確保できるよう、気候変動、生物多様性の喪失、資源の枯渇、貧困の拡大等、人類の開発活動に起因する現代社会における様々な問題を、各人が自らの問題として主体的に捉え、身近なところから取り組むことで、それらの問題の解決につながる新たな価値観や行動等の変容をもたらし、もって持続可能な社会を実現していくことを目指して行う学習・教育活動のことである。
  • 2015年9月、国連はアジェンダ2030を採択し、人類が持続的かつ強靭な発展経路に移行するために経済・社会・環境の三則面を調和させる、「持続可能な開発目標(SDGs)」を示した。2019年の国連総会決議においては、ESDがこのSDGs全てのゴールを達成するための鍵であると述べられている。学校教育に留まらず、あらゆる場面での教育活動を通じて習得された知識、技能、価値観を行動変容に活かすことにより、持続可能な社会を実現することが可能になる。
  • SDGsは、現代の社会が抱えている気候変動、自然災害、脱炭素、異文化共生等、様々な課題解決に向けて、世界が共有する具体的な達成目標である。
  • また、「ウィズコロナ」、「アフターコロナ」においては、教育活動の中で社会情緒的能力を育むことの重要性も確認することができた。今後、持続可能な開発のためには、一人一人が自らの行動を変革し社会に働きかけていく必要があり、ESDの重要性はより一層高まりつつある。
  • ESDを通じて、新しい学習指導要領に示されている資質・能力の3つの柱(知識及び技能・思考力、判断力、表現力等・学びに向かう力、人間性等)を全ての学習段階で培うことが目指される。
  • 我が国におけるESD推進の意義は、上記を背景に、日本社会のあらゆる主体を対象に様々な場面でのESD実施を推進し、SDGs実現に向けた人材育成を推進することである。ESDの推進にあたっては、SDGs実施指針、グリーン社会の実現、AI及びDXの推進と社会システムのデジタル改革等、我が国のSDGs実現に関する方針を踏まえつつ、効果的に具体策を展開する。

(2)「持続可能な開発のための教育(ESD)に関するグローバル・アクション・プログラム(GAP)」の取組とその成果及び課題

  • 国連持続可能な開発のための教育の10年を踏まえ、2015年より「持続可能な開発のための教育に関するグローバル・アクション・プログラム(GAP)」が開始。
  • これを受けて日本では2016年にESDの国内実施計画を策定し、優先行動分野の推進、ステークホルダーのコミットメントの促進等を基本的考え方としてESDを推進してきたところ。GAP期間の最終年である2019年には国内実施計画に係るレビューを実施し、後述のESD for 2030を踏まえつつ、様々なステークホルダーと連携した施策の展開していくことや、優良事例の横展開を含めた国内外への情報発信機能の強化を行っていくこと等が求められている。

(3)「持続可能な開発のための教育:SDGs実現に向けて(ESD for 2030)」の策定

  • SDGsにおいては、ESDはターゲット4.7に記載されているが、2019年の第74回国連総会において、ESDが全てのSDGsの達成の鍵であるとされ、ESDはSDGsのターゲットの1つであるだけでなく、SDGs全体を支えるものとしても位置付けられた。
  • そのような動きも踏まえ、2020年~2030年までを期限とし、ESDとSDGsを結び付けることの重要性を強調しつつ、GAPの後継プログラムとして2019年にESD for 2030が策定された。
  • ESD for 2030では、ESDを強化し、17のSDGsの実現に貢献することを通じて、より公正で持続可能な世界を構築することを目指すことが目的とされている。
  • 特徴として、1)SDGsの17全ての目標実現に向けた教育の役割を強調、2)持続可能な開発に向けた大きな変革への重点化、3)ユネスコ加盟国によるリーダーシップへの重点化があげられている。
  • また、5つの優先行動分野を継続しつつ、実施へのメカニズムとして、1)国レベルでのESD for 2030の実施(国内イニシアチブの設定)、2)パートナーシップとコラボレーション、3)行動を促すための普及活動、4)新たな課題や傾向の追跡、5)財政資源の動員、6)進捗モニタリングに言及がある。

2.基本的考え方

(1)SDGs実現へのコミットメント(新規)

  • 持続可能な開発とは、「将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発」(「環境と開発に関する世界委員会」)のことを言う。SDGsは、世界全体の経済、社会及び環境の三側面を不可分のものとして調和させ、誰一人取り残すことなく、この持続可能な世界を実現するための先進国と開発途上国が共に取り組むべき普遍的な目標であり、本ESD国内実施計画は、ESDを通じてこの持続可能な開発目標の実現に貢献するものである。
  • 全てのESD活動がSDGsの実現に貢献していることを前提に、よりSDGsに明確に言及し、積極的にSDGs実現に資する学習や人材養成施策を展開していく。
  • 多様なステークホルダー間の連携にあたっては、ESDコミュニティに限らず、持続可能な開発コミュニティやSDGsコミュニティも含めた、さらに広範なパートナーシップを発展させていくとともに、各ステークホルダーの普及・啓発活動の中で、全てのSDGsを実現するものとしてのESDの役割を強調する。
  • その際、気候変動に係るパリ協定、国連海洋科学の10年等、SDGsに関するイニシアチブを意識しつつ施策を講じていく。

(2)ステークホルダー間のパートナーシップの促進(新規)

  • ESD for 2030では、加盟国は、SDGsに関する国内の枠組みに関連して、各分野のステークホルダーを動員し、協調戦略の下で協働型ネットワークの構築を支援することが求められている。
  • 国際機関、地方自治体、NGO/NPO、公益法人、企業、メディア、研究機関、学校を含む教育機関、教員を含む個人など、関係する全てのステークホルダーを巻き込みながらESDを展開していく。
  • 政府においても、省庁の垣根を超えて関係省庁連絡会議の枠組みの中で様々な省庁が連携してESDの実現を目指す。
  • また、分野間でのパートナーシップを促進するために、各ステークホルダーの取組に関する情報発信を強化する。

(3)優先行動分野の推進

  • 本実施計画においては、ESD for 2030の目的に沿って、以下の5つの優先行動分野の下での各ステークホルダーのコミットメントに資する計画を示す。
    1) 政策の推進(ESDの政策への取り込み)
    2) 学習環境の変革(機関包括型アプローチの実施)
    3) 教育者の能力構築(ESDを実践する教育者の育成)
    4) ユースのエンパワーメントと動員(ESDを通じて持続可能な開発のための変革を進める若者の参加の支援)
    5) 地域レベルでの活動の促進(ESDを通じた持続可能な地域づくりの促進) 
 

 関係省庁は、1)の政策的支援での取組が、他の優先行動分野における多様なステークホルダーによる取組の基盤になることに留意して、ESD関連施策を推進する。

(4)国際社会におけるESD推進の先導的役割

  • 我が国が、ESDの概念を提唱して世界的な取組に発展したという歴史的事実と地位を踏まえ、引き続き、我が国から優れた実施事例を提示するなど、世界のESD活動を先導することを目指す。
  • 各ESD推進策においては、可能な範囲で国際機関等との協力及び国際発信情報の整備につなげていく。

3.本実施計画の位置づけと実施体制

  • 本実施計画は「持続可能な開発のための教育に関する関係省庁連絡会議(ESD関係省庁連絡会議)」において、5つの優先行動分野の下での政府を含む各ステークホルダーのコミットメントに資する計画を示すためのもの。
  • ESD関係省庁連絡会議による府省横断の連携体制による政策立案や、有識者会議を通じて多様なステークホルダーの知見が反映する仕組みを維持し、各省庁が緊密に連携し、所管する分野におけるESDの普及・推進に努めるとともに、「持続可能な開発のための教育円卓会議(ESD円卓会議)」や、日本ユネスコ国内委員会において、ESDの推進方策について意見交換を行うなど、幅広い関係者の意見を聴取しつつ、本実施計画の下で取組を実施する。

4.ステークホルダーの取組

(1) 優先行動分野1:政策の推進

 我が国においては、従来からESDに組織的・体系的に取り組んできた。引き続き、ESDに関する取組が推進され、持続可能な開発への理解や実践力が育成されるよう、関係省庁において、教材提供や支援、広報啓発活動、優良な取組に係る情報提供、政策対話の開催等を実施し、多様な分野の取組を支援する。

a)SDGs関連政策へのESDの反映に関すること

  • SDGs実施指針等のESDの位置付け

 令和元年12月に策定された「SDGs実施指針改定版」においてESDを位置付け、教育機関の役割として、ESDに関する国内外の活動の充実に貢献すること、ユネスコスクールネットワークのさらなる活性化を図ること、社会教育関連機関も含めてSDGsに資するように多様な文化とつながりながら学習できる環境づくりを促進することを期待している。

  • SDG4に資する各政策分野におけるESDの推進

 健康教育の推進、食育の推進、安全教育の推進、外国人児童生徒等に対する教育の推進、生活者としての外国人に対する日本語教育の推進、環境教育の推進、協働取組の推進、地域循環共生圏の創造、農業分野における次世代を担う人材育成、アジア地域における産業人材の育成、「倫理的消費(エシカル消費)」の普及・啓発活動等、教育機関の内外を問わず、SDGs4の実現に資する様々な政策分野においてESDの取組を推進する。
 また、政府が策定するSDGs4に資する各種文書においても、ESDの考え方が反映されるよう努める。

b)教育政策へのESDの位置付けに関すること

  • 学習指導要領に基づくESDの実施

 2020年度より順次実施される新しい学習指導要領においては、前文及び総則において「持続可能な社会の創り手」となることが掲げられている。新しい学習指導要領に基づき、学校現場におけるESDの着実な実施を進める。

  • 第3期教育振興基本計画への位置付け

 平成30年に策定された第3期教育振興基本計画においても、我が国がESDの推進拠点と位置付けているユネスコスクールの活動の充実を図り、好事例を全国的に広く発信・共有することや、ESDの実践・普及や学校間の交流を促進することが掲げられている。

c)環境政策におけるESDの実施

  • 環境教育等促進法の実施との連携

 ESDは、気候変動、生物多様性、資源循環、災害リスク削減、協働取組の推進など、環境政策の重要な分野とも深く関連している。特に、2011年に環境教育等による環境保全の取組の促進に関する法律(環境教育等促進法)(2003年成立、文部科学省、経済産業省、農水省、国土交通省、環境省の5省共管)が改正され、ESDの視点がより強く盛り込まれた。政府は、引き続き、同法及び同法に基づく基本方針の実施において、ESDの普及と推進に取り組む。

  • 第五次環境基本計画(平成30年4月閣議決定)における位置づけ

 第五次環境基本計画において、持続可能な地域づくりのために環境・経済・社会の統合的向上を目指す地域循環共生圏の概念が提唱され、ESDの考え方をベースにその担い手を育成することが示されている。

d)国際的なESDの推進に関すること

  • ESD推進に向けた海外諸国との連携

 日米環境政策対話を通じた米国との連携、日中韓三カ国教育大臣会合の枠組みを通じた中国・韓国との連携、東南アジア教育大臣機構(SEAMEO)加盟国との連携に加え、ASEAN諸国やアフリカ諸国との連携や、日本型教育の戦略的な海外展開等により、海外諸国とともにESDを推進する。

  • 途上国における教育支援

 JICA等と連携し、途上国の未来と発展を支えるリーダーの育成等を支援することで、途上国におけるESDの推進に貢献する。

  • 国際機関を通じたESDの推進

 SDG4のリーディングエージェンシーであるユネスコに対する信託基金の拠出等を通じて、ESDの提唱国として、各国においてESDが推進されるよう支援を行う。また、国際連合やユニセフとの協力を通じた教育分野での協力を通じて、SDGsやESDの推進を図る。
 さらに、国連大学サステイナビリティ高等研究所が実施するESDプログラム(RCE認定、ProSPER.NET構築)及びSDGsの統合的達成に向けた政策形成支援事業に協力するとともに、国内大学との連携強化を図りながら、サステイナビリティ分野の教育研究を基盤とした SDGs の達成に向けた取組を支援する。

(2) 優先行動分野2:学習環境の変革

 持続可能な社会の創り手を育成するためには、教育機関、社会教育施設、企業等の学習機関自体が持続可能な社会に適応するための変革が必要である。また、各機関が独自にESDに取り組むのではなく、地域における目標を共有し、各ステークホルダーが担うべき役割を整理したうえで、課題解決に向けて共同して取組を実施することが望ましい。

  • 機関包括型アプローチの推進に向けたネットワークの形成・強化

 政府は、ESD推進ネットワークの一層の強化やESDコンソーシアムのさらなる推進、モデル事業の展開等を通じ、機関包括型アプローチの推進を図る。また、「ESD推進の手引」やユネスコスクールネットワークの強化等を通じ、学校と地域、大学、企業、社会教育施設等との連携を促進する。
 教育機関、社会教育施設、大学、地域、企業、市民社会等には、様々なステークホルダーと連携した機関包括型アプローチの発展、展開や、機関包括型アプローチを実現するためのガバナンス強化等が期待される。

  • 地域における体験活動を通じたESDの推進

 ESDでは、学習者が実体験で得る気づきや五感に基づく直観的理解も重視する。政府は、各機関が連携し取り組む必要がある事例の一つとして、学校内外における青少年の体験活動の推進、「体験の機会の場」認定制度の運用等、体験活動の充実に向けた取組を支援する。また、ESD地方センターは、各地域において体験活動が可能な場所等の情報を収集しウェブサイトで広く情報発信する。
 また、環境教育等促進法が定める「体験の機会の場」認定制度は、土地又は建物の所有権等を有する国民や民間団体が、その土地又は建物で自然体験活動や社会体験活動等の場として提供する場合、申請に基づき、都道府県知事の認定を受けることができることとしている。政府は、「体験の機会の場」認定制度の普及を図るとともに、認定を受けた「体験の機会の場」の周知と活用を促進する。
 各地域においては、世界遺産や伝統行事をはじめとする地域の文化や様々な活動、ユネスコエコパークやジオパーク等の地域の資源を活用した活動、及び国際理解に関連するESDの取組を、学校教育機関、社会教育施設、大学、地域、企業、市民社会等が連携して実践することが期待される。

  • 多様な学習機会の提供

 地域の学校や自然学校と連携して自然観察会や自然環境学習を実施する等により、子どもたちが自然とふれあう機会を創出する。また、エコツーリズムに取り組む地域の活動支援やエコツアーにおいて解説を担うガイド等の人材育成等により、より効果的に自然を体験できる機会を提供する。さらに、子どもの水辺再発見プロジェクト、国立公園ライブ画像等を配信する生物多様性情報システム等を通じ、ユネスコエコパークやジオパークを含めた海、河川、森林、公園等、多様な自然環境においてESDの学びを体験できる機会を提供する。

  • ICT化を通じた教育環境の充実

 政府は、Society 5.0時代に求められる学びの実現に向けて、「GIGAスクール構想」に基づき、本年4月から1人1台端末環境での学びを本格的にスタートさせるべく、学校ICT環境整備を全国一斉に進める。また、子供たちが学校教育で学んだものを地域でさらに深め、実践的な学びを行うための支援を実施する。

(3) 優先行動分野3:教育者の能力構築

 ESDを実践するためのファシリテーターとして、各教育現場における指導者の役割は非常に大きい。学校や大学の教員のみでなく、教職を目指す学生や、ノンフォーマル、インフォーマルなESDに取り組む教育者の能力育成が求められている。

  • 教員に対する研修等

 政府は、時代の変化に応じた質の高い学びの実現と、複雑化する教育課題に適切に対処するための指導力の向上等を図るため、教員研修等においてSDGsやESDの考え方を推進する。また、「ESD推進の手引」等を通じた教職員の資質能力の向上を図るとともに、教師教育の推進に関するモデル事例を展開する。
 また、環境教育等促進法が求める学校教育等における環境教育の支援として、政府は、学校や地域における質の高い環境教育・ESDを実践・推進するリーダーとなる人材を育成することを目的とした研修を実施する。
 各自治体や教育委員会、大学や社会教育施設等は、地域課題等を踏まえた指導者研修会等を自主的に実施することや、「ESD推進の手引」等を活用し教職員がESDを実践するための研修等を充実させることが期待される。

  • 教職員を対象とした国際交流

 政府は、諸外国の教員等を我が国に招聘するとともに、我が国からも教職員等を諸外国に派遣し、諸外国の学校及び地域社会におけるESDと国際理解教育の好事例を探るとともに、ESDに関する諸外国との連携強化を図る。

  • 各機関においてESDを実践する者の育成

 政府は、ESDの実践者を効果的に育成するため、実践者支援のための研修プログラムを設計する人材等を育成し、その活動を支援する。
 また、政府は、環境教育等促進法に規定される人材認定等事業を運用し、環境人材の円滑な活用等を目的として民間事業者が行う、環境保全に関する知識や指導に係る能力を有する者等の育成・認定、環境教育等に関する教材の開発等の事業の推進を図る。また、環境カウンセラーの活躍の機会を広げるよう、広報等を行う。
 地方公共団体、社会教育施設、民間企業等、各機関においては、当該機関でESDを実践する者に対し、日頃の取組にESDの視点を反映させる実践的な研修を行うことが求められる。また、その際、市民社会組織の積極的な活用が期待される。

  • ESD推進ネットワークにおける学びあいの推進

 多様なステークホルダーが参加するESD推進ネットワークにおいて、ESDに関する最新の動向を共有するとともに、各地の優れたESD実践事例を共有し、ネットワーク参加者が交流し相互に学びあう場となるESD推進ネットワーク全国フォーラムを開催する。

(4) 優先行動分野4:ユースのエンパワーメントと動員

 ユースは、持続可能な社会の創り手そのものであり、ESDの実践にあたって核となるステークホルダーである。日本政府は、「SDGsアクションプラン」においても、日本の「SDGsモデル」の三本柱に「次世代・女性のエンパワーメント」を掲げており、各ステークホルダーには、ユースの主体的な活動を支援するとともに、様々な手段を通してユースの声を反映させる仕組みづくりが求められる。

  • ユース同士のコミュニティづくり

 政府をはじめとする各機関は、プラットフォームやネットワークの構築、フォーラムの開催、ポータルサイトの開設等を通じて、若者が国内外のユースと意見交換する場を確保し、SDGsやESDの主役となるユース同士の繋がりを多様な分野において構築するとともに、ユースの声が社会に活かされる環境づくりを推進する。
 また、政府は、関係機関と協力して、ユースによる環境活動の発表、交流、大臣表彰を行なう「全国ユース環境活動発表大会」を開催する。また、全国大会に先立ち8ヶ所で地方大会を開催し、実践活動の普及を図る。

  • 国際的な議論にユースが参加できる環境づくり

 政府は、上記プラットフォーム等を活用し、国連機関のユースフォーラム等の様々な機会を捉え、国際的な場でユースが発信を行う機会を確保するよう努める。また、ユネスコにおける国際事業との連携等を通し、ESDに参画する若者が世界との接点を持つことができるよう支援する。
 各機関においても、様々な場をとらえてユースが国際的議論に参画できる機会を創出することが期待される。

  • 青少年の国際交流の推進

 青少年教育施設を中核として、自治体や青少年団体等との連携を強化し、青少年に対し、国内外における異文化交流や持続可能な社会の重要性を学ぶ機会を充実させ、次世代を担うグローバル人材の育成につながるきっかけを提供する。

  • ユースの主体的な取組の促進

 高校生による具体的な実践活動を奨励し、実践するユースに交流の機会を提供するため、政府は、関係機関と協力して、ユースによる環境活動の発表、交流、大臣表彰を行なう「全国ユース環境活動発表大会」を開催する。また、全国大会に先立ち8ヶ所で地方大会を開催し、実践活動の普及を図る。
 また、若年層への環境保全の必要性への認識、取組等の促進につなげるコンテンツ事業として、様々な分野で活躍する一方で、環境問題等に関して特別に意識する機会が少なかった高校生たちに対して、彼らの活躍を応援し、新たなリレーションシップを構築しながら、環境に対する意識や共感を高める機会となるよう関心の高い分野とコラボレーションした参加型企画(「環境×高校生プロジェクト」)を実施する。
 さらに、体験の機会の場の研究機構と協力して、グリーン・ブルー・エデュケーション・フォーラム(GBEF)を開催し、ユース等の優れた主張に大臣表彰を行うとともに、広くウェブ上で情報発信する。

(5) 優先行動分野5:地域レベルでの活動の促進

 持続可能な開発のための先進的な取組は地域において実践されることが多いという認識のもと、地域において、様々なステークホルダーと連携しながら、ESDで身につけた能力・資質をもって、地域課題の解決や地域の発展に寄与することが期待される。

  • ESDによるローカルSDGsの推進、地域循環共生圏の創造を目指した人材育成

 ESDの実施により、学習者が地域の課題や地域社会の発展について理解を深め、身近なところから解決に向けた実践活動を行うことで、地域づくりが推進される例がある。ESD実施の成果が地域社会の発展に与える効果を十分認識し、地域からSDGsの実現を目指す「地域循環共生圏」の創造を行う人材育成を目的としたESDを実施することができる。政府は、地域循環共生圏の創造に向けた人材育成を目的とした地域のESD活動について、様々な方策により可能な範囲で支援して強化を図る。
 また、政府は、ESDで学習した人材による実践活動が地域の課題解決に役立つことに鑑みて、地域からSDGs達成やグリーン社会の構築に取り組む、地域循環共生圏に関する情報を発信する。また、地域循環共生圏の創造や協働取組の人材育成にESDを反映する。

  • 地方公共団体におけるESDやSDGsの目標策定

 地方公共団体には、各機関において策定される各種計画の中に、SDGsやESDの理念を取り込むよう努めることが期待される。

  • 全国的なESD支援のためのネットワーク機能の発揮

 政府は、ESDに取り組む様々な主体が参画・連携するESD推進ネットワークのハブとなる「ESD(全国・地方)活動支援センター」を運営し、全国で等しくESD 実践のための支援を受けられる体制を維持するとともに、地方センター及び地域ESD推進拠点において、地域の実態に応じた助言や支援が行われるよう、センターを運用する。また、地域の優れたESD活動の横展開を図るため、成果事例をネットワーク活動を通じて全国レベルで共有する。

  • 教育機関や社会教育施設等との連携の促進

 各地域の課題に応じ、大人・子どもを問わず地域の身近な場においてESDの学びが提供されるよう、ASPUnivNetや国連大学RCE等も活用しながら、教育機関、社会教育施設、大学、企業、市民団体等と連携して事業を実践していくことが期待される。また、地域の身近な学習拠点である公民館等の社会教育機関同士のネットワークを構築することも期待される。

  • 体験活動を重視した学習の推進【再掲】

 各地域においては、世界遺産や伝統行事をはじめとする地域の文化や様々な活動、ユネスコエコパークやジオパーク等の地域の資源を活用した活動、及び国際理解に関連するESDの取組を、学校教育機関、社会教育施設、大学、地域、企業、市民社会等が連携して実践することが期待される。

5.実施のためのメカニズム(重点実施領域)

(1)ステークホルダーのネットワーク・情報発信の強化(新規)

  • 5つの優先行動分野における取組を着実に実施するため、分野を超えた協力の促進に資する多様なステークホルダーから成る重層的なネットワーク形成を推進する。そのために、ユネスコ未来共創プラットフォーム等を活用し、SDG4に取り組むステークホルダーが協力して取り組むことのできる体制を整備する。
  • ESD活動がすべてのSDGsのゴールを実現するものであることを強調し、国内外への広報・普及活動に取り組む。SDGs及びESDに関係する様々な分野において、国民、事業者、民間団体等における主体的な教育や学習の取組が促進され、持続可能な開発への理解や実践力が育成されるよう、関係省庁において教材提供や支援、広報啓発活動、各種ESD関連情報の提供、優良な取組に係る情報提供等を実施する。
  • 特に、我が国の優れたESD実践事例についての国際発信を積極的に行うため、英語による情報発信を強化する。発信にあたっては、日本とユネスコ、国連大学等の国際機関との協力、日米環境政策対話及びGEEP、ASEAN+3環境教育ワーキンググループ、日中韓環境教育ネットワーク等の国際的な枠組みも活用して、効果的に行う。
  • ネットワークの強化については、政府は、ESD活動支援センター(1カ所)及び地方ESD活動支援センター(8カ所)を運営し、1)情報共有機能、2)ESD活動に関する各種相談対応や連携促進等の支援機能、3)ネットワークの形成及び学びあいの促進機能、4)人材育成機能、の4つの機能の発揮を追求することにより、ESDの全国的な展開、支援体制の充実、様々な主体によるESD活動の高度化と多様な連携を推進する。また、全国で等しくESD 実践のための支援を受けられる体制を維持するとともに、ネットワークの拡大を受けてテーマ別の学びあいの仕組みを導入し、ESD活動の高度化を図る。

(2)点検・評価

  • ESD円卓会議や日本ユネスコ国内委員会を活用するなどして多様なステークホルダーから定期的に意見を聴くこととし、ESD関係省庁連絡会議においても本実施計画に基づく施策の進捗状況の点検・見直しに努める。
  • 2025年に中間的なレビュー、2029年に総括的なレビューを行う。最終年における評価は、2030年以降のESDの更なる効果的な推進につながるよう実施するものとする。
  • ESD for 2030の実施期間中においても、国内の環境、経済、社会の情勢の変化や国際的潮流の動向等を注視し、必要に応じて本実施計画の見直しを検討する。

(以上)

お問合せ先

国際統括官付