参考6 次期ユネスコ中期戦略について

次期ユネスコ中期戦略(2022年~2029年)について

 ユネスコ中期戦略は、ユネスコの活動に関する戦略的見通し及び事業の枠組を定めた8カ年の戦略であり、ユネスコの事業運営に関する基本文書。ユネスコ総会において事務局提案が議論され、加盟国が承認する。

 現行の中期戦略(2014年~2021年)は、「平和」と「持続可能な開発」の2つの包括的目標の下に、その実現にあたっての9つの戦略目標を設定。また、「アフリカ」及び「ジェンダー平等」の2点を地球規模の優先課題として設定(別添参照)。

 次期ユネスコ中期戦略については、2019年7月と10月に開催された加盟国との対話で事務局から説明が行われており、要約は以下のとおり。

<次期中期戦略の策定スケジュール>

 2020年2~5月  ユネスコ事務局から加盟国、各地域等とコンサルテーション
 2020年春  ユネスコ事務局による2020戦略成果報告書まとめ
 2021年春  2022-2029年中期戦略の草案にかかる審議(ユネスコ執行委員会)
 2021年秋  2022-2029年中期戦略の相談にかかる審議(ユネスコ総会)

 

<現プログラム期間中に表明されたプログラム関連事項に関する視点の要約>

A. 横断的な課題

(1)グローバルな優先課題と優先課題グループ
アフリカ、ジェンダー、小島嶼開発途上国(SIDS)、若者及びそれらの特定の課題に対処する。

(2)運用及び構造に関する課題
(a)ユネスコによる行動の影響を増加させる。このため、結果に基づく管理を強化し、プログラム変化の理論のために開発する。組織の比較優位に基づくユネスコのイニシアチブのエビデンスに基づいた慎重な優先順位付けを確保し、国家、準地域及び地域レベルでの加盟国の特定のニーズ、並びに過去の経験及び評価から学んだ教訓を考慮する。
(b)プログラムの計画と提供における統合アプローチを定義及び適用する。これには、プログラムの計画と実施のすべての段階での強化された横断だけでなく、部門間及び部門内協力が含まれるべき。プログラミング及びレポート用の組織のコアシステムツールは、それに応じて再設計する。
(c)資金、管理及び責任の観点から、現地事務所への分権化を促進する。
(d)ユネスコの議長やカテゴリー2の研究所やセンターなど、ユネスコのネットワークとの協力の強化、及び戦略的パートナーシップの開発に重点を置く。
(e)ユネスコのすべてのプログラムと介入において、人権に基づくアプローチが主流になっていることを確認する。

B. 分野別重点課題

【教育】
・教育におけるリーダーシップを強化し、SDGsとして重要であることを強調。
・教師トレーニング: 教育における男女平等、アフリカを中心とした高等教育、持続可能な開発とグローバル市民権のため(SDGターゲット4.7)、人工知能(AI)とデジタル教育、移民と難民のための教育、データの収集と分析、メディアリテラシーを含むリテラシー(ヘイトスピーチになどへの対抗)の分野で教育プログラムの強化。

【自然科学】
・SDGs、及び他の国際的に合意された開発枠組み、特にアフリカ連合アジェンダ2063、気候変動に関するパリ協定、「仙台枠組み」、生物多様性条約、及び先住民族の権利に関する国連宣言の強化。
・政府間水文学計画(IHP)、国際基礎科学計画(IBSP)、国際地質科学計画(IGGP)、人間と生物圏(MAB)、及び関連するユネスコの登録指定サイト(生物圏保護地域、ユネスコ世界ジオパーク)、気候変動に対処するため、国際及び政府間事業の強化。

【政府間海洋学委員会(IOC)】
・世界遺産、政府間水文学計画(IHP)、教育(ED)、人文社会科学(SHS)など他のセクターやそのプログラムとの相乗効果と協力関係の構築。
・国連持続可能な開発のための海洋科学の10年の準備における役割強化。
・管理:災害リスク軽減、特に津波、気候変動における海洋の役割強化。
・IOCとアフリカ連合(AU)の作業連携。

【人文社会科学(SHS)】
・2030アジェンダとアフリカ連合アジェンダ2063を達成するためのSHSセクターの任務と作業の関連性と適切性、横断的かつ統合的なアプローチの強化。
・若者、スポーツ(体育、ドーピング防止、伝統的なスポーツとゲーム)、倫理(人工知能(AI)と気候変動を含む)、人権、哲学、社会変容のマネージメント(MOST)事業、及び異文化間の対話と平和の文化、過激主義の防止に取り組むことを優先すること。
・ユースに対するユネスコのコミットメントを維持することの重要性、この点で統合的かつ横断的なアプローチをもって、国連ユース2030戦略とAUアジェンダ2063も考慮に入れて、ユースに関する最新の戦略を策定すること。
・インクルージョン、エクイティ、女性、人権に関連する問題に取り組むための重要なオペレーターとしてのスポーツの重要性。

【文化】
・SDGsの達成に果たす文化の役割を再確認し、多国間システムのこの戦略的分野でのリーダーシップの再確認。
・文化の多様性と多元主義の防御、遺産教育、芸術教育、グローバル市民権教育の教育部門と文化の自由な流れを含む、人権に基づくアプローチの開発。
・相互理解、交流、対話; 紛争の予防と緩和においては、コミュニケーション及び情報部門の連携。
・気候変動の面では自然科学部門との協力。

【情報・コミュニケーション(CI)】
・表現の自由を促進するユネスコの活動の継続。
・今後数年のデジタル変革を注視し、インターネット普遍性フレームワーク、人工知能(AI)に関してユネスコがイニシアチブをとって取り組むこと。
・表現の自由、安全性の分野でも引き続き主導的役割を果たし、SDGターゲットに沿ったジャーナリストと情報へのアクセスの必要性の強調。その観点で国連行動計画を実施するための行動を強化し、事務局長の報告とSDG指標の重要性。
・アフリカと発展途上国での能力開発については、情報の内容に焦点を合わせてデジタル格差に取り組むこと。
・メディア及び情報リテラシー(MIL)の重要な役割に取り組むこと。
・ジャーナリズム教育。包括的な知識社会の構築におけるユネスコの役割、特に情報に関する取り組みを通して開発、情報倫理、情報へのアクセス、情報プライバシー、過激主義防止、自然災害・人災からのドキュメンタリーの遺産保存。
・ジェンダー平等の観点(女性ジャーナリストの安全、メディア内及びメディアを通じた代表を含む組織の仕事、及び人工知能(AI)。ITU EQUALSプログラムとの相乗効果の実現。)

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