日本ユネスコ国内委員会 第139回教育小委員会 議事録

1. 日時

令和元年7月26日(金曜日)10時00分~12時00分

2. 場所

文部科学省国際課応接室(12階)

3. 出席者

(委員)
秋永名美、安西祐一郎、及川幸彦、萱島信子、杉村美紀、東川勝哉、日比谷潤子、吉田和浩〔敬称略〕

(事務局)
大山真未日本ユネスコ国内委員会事務総長(文部科学省国際統括官)
平下文康日本ユネスコ国内委員会副事務総長(文部科学省文部科学戦略官)
大杉住子日本ユネスコ国内委員会事務局次長(文部科学省国際統括官付国際戦略企画官)
植村正樹日本ユネスコ国内委員会事務総長補佐(文部科学省国際統括官補佐)
磯谷桂太郎日本ユネスコ国内委員会事務総長補佐(文部科学省国際統括官付ユネスコ協力官)
その他関係官

4. 議事

【杉村委員長】   それでは、始めさせていただきます。ユネスコ国内委員会第139回教育小委員会を開会させていただきます。
 本日は御多忙のところお集まりいただきまして、ありがとうございます。定刻になりましたので、事務局はまず定足数の確認をお願いいたします。
【植村国際統括官補佐】   本日は出席の委員が、教育小委員会委員8名で、委員の過半数8名以上でございますので、定足数を満たしています。
【杉村委員長】   ありがとうございます。
 まず初めに、事務局に人事異動がございましたので、事務局から御紹介をお願いいたします。
【植村国際統括官補佐】   本年4月に文部科学戦略官・日本ユネスコ国内委員会副事務総長として平下文康が着任しました。
【平下文部科学戦略官】   よろしくお願いいたします。
【植村国際統括官補佐】   同じく、国際統括官付国際戦略企画官・日本ユネスコ国内委員会事務局次長として大杉住子が着任しました。
【大杉国際戦略企画官】   よろしくお願いいたします。
【植村国際統括官補佐】   同じく、私、植村が国際統括官補佐として着任いたしました。よろしくお願いします。
 また、7月に国際統括官付ユネスコ協力官として磯谷桂太郎が着任しております。
【磯谷ユネスコ協力官】   よろしくお願いいたします。
【杉村委員長】   ありがとうございました。
 それでは、大山国際統括官から一言御挨拶を頂戴できれば幸いでございます。よろしくお願いいたします。
【大山国際統括官】   杉村先生、ありがとうございます。皆様、おはようございます。本日の教育小委員会の開催に当たりまして一言御挨拶申し上げます。本日は、まず大変御多忙のところ、また、このような暑い中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。日頃よりユネスコの教育分野の活動に関しまして大変御尽力、御協力いただいておりますことに心から感謝を申し上げます。
 さて、最近の教育分野におけるユネスコの活動の状況についてでございますが、今月ニューヨークで2019年国連のハイレベル政治フォーラムが開催され、吉田先生にも御出席いただいたところでございますが、ここにおいて、2015年の開発目標設定以来、初めてSDG4の進捗状況のレビューがなされました。また、フォーラム期間中には文部科学省からも平下文部科学戦略官が出席いたしました。ユネスコ及び数か国で共同開催したESDのサイドイベントでは、ESDがSDGs達成に向けての貢献する鍵であるということが再確認されたとともに、ESDの活用事例についても活発な意見交換がされるという意義のあるイベントになったところでございます。また、今月初めには柴山文部科学大臣がパリに出張いたしまして、アズレー・ユネスコ事務局長と会談いたしました。引き続き教育・科学・文化の各分野での幅広い協力推進について意見交換をしましたほか、気候変動とESDに関しまして新たに日本とユネスコが共同イニシアチブとして取り組んでいくことに合意しました。文科省としましても、今後とも国内外でのユネスコ活動の推進にしっかりと取り組み、特にESDでは世界をリードして我が国の先進的な取組を国際的にも積極的に発信して貢献していければと考えております。先生方におかれましても、まさに一層の御支援、御協力を賜りますようお願い申し上げまして御挨拶とさせていただきたいと存じます。本日も活発な御意見、どうぞよろしくお願い申し上げます。
【杉村委員長】   大山国際統括官、ありがとうございました。
 それでは、引き続き、本日の会議の資料につきまして、事務局より説明をお願いいたします。
【植村国際統括官補佐】   今回の国内委員会教育小委員会より、資料のペーパーレス化を進めさせていただきたいと思います。机上配付資料を除き、全ての会議資料はお手元のタブレットPCにて御覧いただく形となりますので、よろしくお願いします。
 本日の会議の資料構成については、議事次第、タブレットの一番上に書いている配付資料のとおりでございます。今日、全て資料は格納されております。資料は一つのPDFのファイルでまとめておりまして、各ページの下に通し番号を振っております。画面の左側にしおりがございます。こちらのそれぞれ資料番号、手で触っていただきますと、順次、それぞれの資料の頭、最初に飛んでいただくことが可能でございます。なお、タブレットPCですが、卓上のセットの仕方として、スタンドを立てた状態で置いてございますが、この角度は自由に変えられますので、適宜調整していただけます。また、縦置きにしていただきますと、画面が自動回転いたします。今後、PCに不具合等生じた場合、操作方法が不明な場合は、お近くの事務局職員の方に順次お申し付けいただければと思います。よろしくお願いします。
【杉村委員長】   ありがとうございました。それでは、本日の会議はペーパーレスで進めさせていただきます。
 それでは、議題1に入りたいと思います。最近のユネスコ活動について御報告を頂きます。初めに、資料1-1から資料1-10につきまして、事務局から報告をお願いいたします。
【大杉国際戦略企画官】   資料が10種類ございまして、時間は5分ということで、少し駆け足になってまいりますけれども、執行委員会の状況など含めて御紹介させていただきたいと思います。
 まず、資料1-1でございますが、最近の主な課題を含めたユネスコの現状をまとめさせていただいております。日本が中国に次いで分担金2位である現状なども含め、また最近、「世界の記憶」に関する制度改善の状況なども含めてまとめさせていただいております。
 画面、めくっていただき、2ページ目に参りますが、2ページ目にはESDの推進によるSDGs達成への貢献ということで、国際論議における主導的な役割、それから、学習指導要領も含めた国内の教育の充実というようなことを整理させていただいております。
3ページ目は、IOCや2021年から始まります「国連海洋科学の10年」など、これは恐らく科学分野だけではなく、教育、ESDとの連携も含めた様々な取組が必要になってこようかと思いますが、そうした他分野も含めた現状についてでございます。
 続きまして、左側の目次をタップしていただきますと、資料1-2が4月のユネスコ執行委員会の結果でございます。主なものといたしましては、SDG4-教育あるいはESDということに関しての御報告と、ユネスコで「教育の未来」の議論が始まるということ、それから、AIに関しての様々な可能性ということでございます。
 1枚おめくりいただきますと、別紙1ということで、SDG4-教育及びESDに関する議論ということで報告させていただいております。日本からも信託基金を通じた貢献など発言をさせていただいておりますが、特に現在の枠組みであるGAPの後継となるESD for 2030に向けまして国際的な枠組みの議論のリードを図っているということ、それから、それに向けての信託基金の新たな枠組みということも検討しているということでございます。
 もう1枚おめくりいただきますと、ユネスコの「教育の未来」ということで、ユネスコでは従来、過去にも学習の宝というようなものですとか、様々レポート、生涯学習等に関しましても出されておりますが、今回、不確実な世界において教育の在り方ということを根本から議論しようとする国際委員会が立ち上がるということで、これにもしっかり関与していきたいと考えているところでございます。その他、議題は多岐にわたりますが、詳細は今回割愛させていただきます。大きなポイントとしましては、こうした点になってまいります。
 それから、資料1-3のAIに関しましては、ユネスコの優先順位の高い分野ともなってきておりますが、先日、中国でAIと教育に関する国際会議が開催され、文科省からも菱山サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官が出席させていただいたところでございます。日本のプレゼンテーションは非常に高く評価されまして、文科省として取り組んでいる先端技術を活用した教育も非常に関心を集めたところでございます。
 それから、資料1-4でございますが、7月頭に柴山大臣がG7の教育大臣会合の際にアズレー事務局長を表敬いたしまして、教育・科学・文化の各分野の取組や「世界の記憶」の制度的枠組みの包括的見直しを含めて意見交換を行ったところでございます。教育に関しましては、冒頭、大山からも御紹介させていただきましたとおり、9月に気候変動アクションサミットがニューヨークでございますが、ここで日本の信託基金を活用したサイドイベントを実施できないかというようなことを議論させていただいたところでございます。
 それから、国連の枠組みでもかなりSDG4、それからESDをめぐる動きが活発になっておりまして、資料1-5でございますが、7月のSDG4のレビューの中で、教育も含めたレビューがニューヨークで国連ハイレベル政治フォーラムという形で実施されたところでございます。当省から平下文部科学戦略官も出席させていただき、吉田先生にも御出席いただきました。詳細はまた後ほど吉田先生の方から御紹介していただければと思います。日本の信託基金を活用したサイドイベントをESDに関して日本・ケニア・ドイツ共催で実施させていただいたところでありまして、岡山大学などにも御協力いただいて、非常に盛況だったと聞いているところでございます。
 少しめくっていただきますと、この資料1-5の3ページ目に今後の予定がございますが、9月の国連総会の時期に近接いたしまして気候変動サミットやSDGサミットが開催される予定になってございます。先ほどの「教育の未来」のローンチイベントなどもニューヨークで予定されているということで、気候変動サミットに関するサイドイベントも含めて、日本としてもしっかり貢献していきたいというところでございます。
 その他、国内の動きでございますが、資料1-6は8月に開催されるESD学会の概要、それから、資料1-7は、9月に開催されます日本ユネスコ運動全国大会が東京で開催される予定でございます。
 また、資料1-8はユネスコスクール全国大会、今回は広島で開催される予定となっておりまして、ESDでどんな資質・能力を育むのか、カリキュラム・マネジメントとどうリンケージしていくのかというようなことを含めて幅広く御議論いただく予定でございます。
 それから、資料1-9はESD推進ネットワーク全国フォーラムということでございまして、12月にオリセンの方で開催させていただく予定でございます。
 それから、先ほど若干御紹介申し上げたように、ESDの推進枠組みがESD for 2030という新しい2020年から2030年の枠組みになっていくということで、資料1-10にございますように、新たに国内実施計画を環境省さん等とも連携しながら策定していきたいということで、それに向けた、まずは現状のレビュー、そして実施計画の柱の検討ということが始まっているところでございます。
ユネスコ活動に関する国内外の取組の現状ということで御紹介させていただきました。
【杉村委員長】   大杉国際戦略企画官、ありがとうございました。
 それでは、続きまして、ただいま企画官の方から資料1-5で概要説明のありました国連ハイレベル政治フォーラムにつきまして、会議に出席されておられた吉田委員の方から、資料1-11に基づいて御報告をお願いできればと存じます。よろしくお願いいたします。
【吉田委員】   今、企画官から御報告のありました、先般の国連の持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラムについてのごく簡単な説明をさせていただきます。
 ページをめくっていただきまして、このフォーラムですけれども、2030アジェンダ、SDGsをグローバルにレビューする仕組みとして国連に置かれているもので、年次の会合としては経済社会理事会の主催のものがございます。それから、4年に1回は国連の総会の主催として行われます。偶然、今年はその2会合が行われ、そのうちの7月のECOSOCの主催による会合に参加したということです。昨年、一昨年とSDGsのうちの幾つかのゴールについて集中的にレビューしていたものですけれども、今年につきましては、教育のほかに、先ほどありました8、10、13、16、17がレビューされます。今後もこのような同じグルーピングでレビューがされるのかどうかはまだ分からないということだそうです。これに加えまして、毎年、自発的国家レビューが行われ、私が見た当時ですけれども、今年は47か国が参加しておりました。
 今年のフォーラムのテーマは「人々をエンパワーし、包摂性と公正さを確保する」ということで、これはこのハイレベルフォーラムに至るまで、特に教育分野ではグローバル・エデュケーション・ミーティングが昨年の12月に行われました。これが分野別の専門家会合と位置付けられていて、他のゴールについてもこのような専門家会合が開かれています。あるいは、地域の意見を吸収するということで、ESCAPのレビューというのも行われました。こういうものを踏まえまして、私が所属していますSDG-教育2030ステアリング・コミッティーでは、ブリュッセル宣言を基にインプットをしました。このほかにもこのハイレベルフォーラムの期間中には、先ほどのESDも含め、たくさんのサイドイベントがございました。
 次に行きますと、SDG4についてのレビューの際には、ECOSOCの議長が司会をしまして、それからユニセフ事務局長がモデレーター、ユネスコ教育担当ADGと私が参加する、という形で議論が進められました。
 次に実際にどのような議論をしたかということですけれども、教育が全てのSDGs達成のための重要な原動力であるということは重ねて主張されました。ただ、その一方で、これまでのSDG4に向けた努力の継続だけでは目標は達成されないということも改めて指摘いたしました。
 どうしたらいいのかということを、ビヨンド・アベレージ、ビヨンド・アクセス、ビヨンド・ベーシックとかビヨンド・スクーリング、ビヨンド・エデュケーション、ビヨンド・ネーション、こういう形で、ここに写真も出ておりますけれども、ビヨンド・コミットメントという形で私どもSDG-教育2030ステアリング・コミッティー、そしてユネスコと共同で発出した、これからどういうところに中心を置いて活動していく必要があるかということを述べさせていただきました。
 特に具体的にどのような議論がされたかということを次に少し紹介させていただいています。例えば、教育が持続可能で長期的な変革をSDGsの趣旨に沿って促進するためにはどのような方法が一番効果的なんだろうか等々、こういうかなり踏み込んだ内容の議論が、短時間の間ですけれどもなされました。また、ESDはどのようにSDGsの達成に貢献できるのかという、ESDをテーマにした議論というのもなされたところでございます。
 一番最後に、今使ったところの参考資料としてのレファレンスをお示ししております。
 以上です。
【杉村委員長】   吉田先生、ありがとうございました。
 それでは、続きまして、資料1-12につきまして、文部科学省高等教育局の南国際企画室長補佐から御報告を頂きます。南補佐、よろしくお願いいたします。
【南国際企画室長補佐】   それでは、資料1-12でございますが、まずユネスコにおける高等教育の資格の承認に関する規約の世界的な流れを御説明した上で、地域規約である、東京規約の内容、それから今後の方向性等について御説明させていただきます。
 資料1-12の最初のページにありますとおり、世界においては今、6地域において地域規約が作られております。この経緯、背景としては、世界的に高等教育の学生のモビリティーが高まっているということでございます。1960年代ぐらいから、このような流れを受けて、地域規約を作る必要があるのではないかという動きが出てきました。その後、70年代に入りまして実際に規約ができておりますが、それぞれの地域において改正が行われているところです。特に欧州についてはリスボン規約がありまして、これは実際の規約を作る会議が行われた場所の名前をとって付けられております。それが一番進んでいるものではありますが、アジア太平洋地域におきましても1983年に地域規約ができ、その後、2011年に東京で開催された会議で東京規約という改定された規約が今できているということです。アジア太平洋地域におきましては、1983年規約がありましたが、日本は加盟しておりません。それはなぜかというと、例えば医師や看護師、薬剤師のような職業資格に関する部分について日本は受けられないということがあり、その部分を除いた形で、実際、高等教育に限定した形で2011年に作られた規約が東京規約でございます。東京規約について、アジアにおきましては今、7か国プラス1、これはバチカン市国ですが、パーマネントオブザーバーということで、トータルで8か国が加盟している状況です。発効要件は5か国ということで、韓国が入った時点で2018年に発効しております。ちょうど1年半前でございます。
 その次のページ、2ページ目を御覧いただきますと、実際の東京規約の詳細が書かれております。実際のところ、この規約がなくても現場レベルでは資格の承認は行われていますが、この規約を作ることでよりスムーズに学位等の資格の承認が行われていき、アジア地域全体の高等教育の質の改善や向上を図っていくことを目的としております。主な内容は、資料に書いてあるとおりですが、基本原則として、第3章と括弧書きで書かせていただいているところで、実際に承認手続等が差別的ではないものであること等が書かれております。2ポツ目ですが、基本的には、実際に大きな違いがない限りは締結国間で資格の相互承認をしていきましょうということで、承認又は評定という言葉を使っていますが、実際に承認に至る前の評定、書面による審査は少なくともやっていきましょうという精神です。その対象としましては、①から③まであるとおり、入学資格、単位、実際に取った学位等を対象としております。もう一つ大きなポイントは、国内情報センターを締約国各国は作るということになっております。資料右側にありますけれども、国内情報センターを作って、それぞれの国の高等教育の制度や実際にどのような大学があるのか、それから質の保証の仕組みはどうなっているのか等をセンターで整備して、それぞれの国に実際に申請があったときの問い合わせ先であったり、センター間で情報を交換したりということが求められております。
 日本の場合ですが、4ページ目でございます。国内情報センターについては本年秋頃に設立の方向でございます。実際の設置に向けた取組として、大学改革支援・学位授与機構で調査研究を行っております。
 5ページ目になりますが、国内情報センターの設置に伴いまして、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構法を学校教育法の改正とあわせて改正しております。具体的には右上の緑で囲った中にありますが、見直しによって機能強化され、内外の高等教育機関の入学資格等に関する情報の収集・整理・提供といった内容を入れたり、それから中期計画、中期目標の中に位置付けたりすることにより、設立の方向で準備しているところでございます。
 以上です。
【杉村委員長】   どうもありがとうございました。
 ただいま議題1として、最近のユネスコ活動について、大変多岐にわたるいろいろな資料や情報を提供していただきましたこと、お礼申し上げます。この議題1に係る御意見、御質問につきまして、次の議題2、国内の教育改革動向の報告が終わりました後に最後にまとめて行わせていただきたいと思います。
 次に、議題2に移ります前に、安西委員がもう少しすると御退出にならなくてはいけないので、もしよろしければ御退出前に御意見を頂戴できればと思います。よろしくお願いいたします。
【安西委員】   2点ほど申し上げますが、吉田先生が大変御尽力いただいているSDGsに向けての件について、ESDをベースにしてSDGsに向けて、ユネスコに協力しつつ、日本の教育を押し上げていきたいということは、これは大変真っ当なというのでしょうか、そういう流れで、是非これは教育小委員会で応援して、リードしていただければと思っております。いろいろな長い歴史は、私もこのユネスコ国内委員会は長いものですから、今までいろいろな経緯、歴史がありましたけれども、それはもう全部省略いたしまして、これからのことを考えると、是非頑張っていただければと思います。それにつきましては、いろいろなステークホルダーがおられて、ユネスコスクール、ユネスコ協会、いろいろな方々がおられるのでありますけれども、若い方々も含めて活動を是非進めていっていただきたいなと思っております。
 もう1点は、今、文科省の方からもいろいろ、文科省というか、日本ユネスコ国内委員会事務局の方からいろいろ御説明がありましたけれども、私自身、AIに40年余り関わっておりまして、今、内閣府のAI戦略の、AI戦略実行会議というのですけれども、有識者会議の座長をやっておりまして、先ほどのユネスコのAIと教育会議で日本側が話をしたAI戦略というのは私どもが取りまとめたものなのです。その一番の目玉は人材育成、教育でございまして、新聞にも少し最近出ておりますけれども、日本の教育を変えていきたい。ややもすると「AI人材の育成」というふうに新聞でぼんと書かれるので、狭い意味でのAI技術者を養成するのではないかと思われるのでありますが、それは全くのでたらめでございまして、やりたいことはユネスコの国連ハイレベルパネルの教育で言っていることとほとんど同じでございまして、今、国が取りまとめましたAI戦略の人材育成というのは、いわばこのユネスコがやろうとしている教育の転換を日本で始めたい。現在、文科省と一緒に協力しながら、主に高等局、初中局と協力しながらいろいろなことをもう始めておりますので、そのことも、ユネスコの国内委員会とは別に聞こえるかもしれませんけれども、ほとんど方向はみんな似ているのです。ただ、日本の国内、特に教育現場ではなかなかそこまでグローバルな視野でもって教育を考えられるという立場におられる方が非常に少なくて、まだまだ、来年からセンター入試が変わりますけれども、センター入試の点数がどうだからやめた方がいいのではないかとか、そういう議論ばっかりやっておりまして、世界に対する日本の教育の在り方を、世界も動いていますので、打ち出していっていただければありがたいというのが第2点であります。
 次の先端技術活用推進方策は私の分野でございまして、もう長年やっているのですけれども、先に申し上げるとあれですが、これは最終まとめと書いてありますが、やはり一番ボタンを押すべきところを本当に押しているのかということが課題で、何がボタンなのかというところが実はなかなか分かられにくいんです。例えば日本の高等学校では、タブレットパソコンを自宅に持って帰れないわけです。自宅でパソコンでは宿題できない。そういう状況では幾ら学校のIT設備を強化しようとしたところで、ITの設備さえそろえば勉強できるというものではないので、もっと人の学びというのはどういうふうに行われているのかということをしっかり詰めないと、ただ予算をとって設備さえ置けば、それでよいということではないと思います。どうやら小・中学校は義務教育だからやりやすいようですが、本当に課題なのは高等学校なのです。今、日本では高等学校へ98%ぐらいの進学率がありますので、そこのITベースの学びをどうするのかということはほとんど考えられていないので、杉村委員長にリードしていただいて、是非、皆様、頑張っていただければと思います。
【杉村委員長】   ありがとうございました。この後、しっかり議論させていただきます。安西会長の方から今、大事な宿題を頂きましたので、これに基づき、次の審議を進めていきたいと思います。
 それでは、議題2の方に入らせていただきます。議題2は国内の教育改革の動向について(報告)でございます。実は次の議題3では答申案を皆様に御議論いただくことになっておりますが、そちらでは日本の強みを生かした貢献ということが基本方針の柱となっています。それを考えていく上で、我が国の教育における強みを生かした支援というものにシフトしていくためには、現在、国内の教育改革動向がどういうふうに動いているのか、それを把握した上で御議論いただきたいということから、この議題2を設けさせていただきました。まず初めに、資料2-1-1及び資料2-1-2を御覧いただきまして、それに基づきまして、初等中等教育における最近の教育改革動向について、初等中等教育局の佐藤初等中等教育企画課専門官ならびに学びの先端技術活用推進室専門官より御報告をお願いしたいと思います。佐藤専門官、どうぞよろしくお願いいたします。
【佐藤専門官】   初等中等教育企画課の佐藤でございます。私からは初等中等教育関係の教育動向について2点、1点目が、今、安西先生からもお話がありましたが、「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策」、これは先月末に取りまとめたものでございます。もう1点といたしまして、今年4月、中央教育審議会に、「新しい時代の初等中等教育の在り方について」という包括的な諮問をしたところでございます。この2点について、時間の都合上、少し駆け足となって恐縮ですが、御説明させていただければと存じます。
 資料2-1-1の1ページを御覧いただければと思います。「新時代における先端技術を効果的に活用した学びの在り方」という表題でございますが、左上にSociety5.0時代の到来、右上に子供たちの多様化について記載しております。これらを踏まえまして、ICTを基盤とした先端技術や教育ビッグデータの効果的な活用に大きな可能性があるということで、多様な子供たちを「誰一人取り残すことのない、公正に個別最適化された学び」を実現しようというものがこのプランの大きな全体像でございます。
 資料の2ページは、教育現場でICT環境を基盤とした先端技術・教育ビッグデータを活用することの意義として1枚にまとめたものでございます。真ん中に4つほどシャボン玉のようなものがございますが、主なものとしましては、学びにおける時間・距離などの制約を取り払うこと。右上にございます、個別に最適で効果的な学びや支援を行っていくこと。右下になりますが、学びの知見の共有や生成を行っていくこと。左下にございますが、校務、先生方の日頃の業務をいかにICTを活用して効率化していくか。こういったことをICT環境、先端技術で目指していきたいというところでございます。
 資料の3ページをお開きいただければと思います。202X年、未来のイメージ・スナップショットとしまして、将来、先端技術がどのように活用されるかということについて示したものでございます。大きく視点からまとめておりまして、左上が先生方、教師の視点でございます。例えば、先生方がそれぞれ指示した事項ですとか、子供たちの登校時間、若しくは家庭学習の状況など、データを一目で把握できるようになる。そういったことを踏まえまして、指導案や教材のレコメンドなども可能になってくるのではないかと考えております。右上が子供たちの視点でございますが、例えばVR・ARなどを活用しまして、疑似体験を含めた深い学びをすることができたりですとか、また、欠席した日の授業が動画で送られてきて学校や友人の様子が分かる。若しくは学習記録のデータに基づいて、効果的な問題ですとか興味のありそうな学習分野等のレコメンド、こういったことも可能になってくるのではないかと考えております。
 4ページでございます。今、未来像のお話をさせていただきましたけれども、現在の学校をめぐる状況には大きな課題があるところでございます。
 まず、ハード上の課題としましては、学校のICT環境整備がまだまだ不十分である。なおかつ、地域間格差が大きくなってしまっているということを課題として意識しております。また、2つ目の項目で太字で書いておりますが、学校で使うパソコン等の機器につきまして、価格も市場の機器と比較して高く整備されてしまっている場合が多い。これでは幾ら予算化を進めていってもなかなか整備が進んでいかない。こういったところも課題として認識しております。
 また、利活用上の課題につきましては、1つ目の項目でございますが、どんどん技術が進展していく中で、どのような場面でどのような機器を利活用することが効果的なのか、こういったことの実証についてもどんどんグッドプラクティスを集めて広げていかなければならないという課題がございます。3つ目の項目でございますが、セキュリティの確保やプライバシー保護の観点、そういったことを踏まえまして、データの利活用やICTの活用がまだまだ進んでいない、こういったことも課題として認識しておりまして、下に大きく①、②と記載しておりますが、先端技術の効果的な活用の在り方、基盤となるICT環境整備について方向性を示したというものがこの推進方策でございます。
 あとは少しかいつまみながらの説明で恐縮でございますが、例えば6ページをお開きいただければと思います。先端技術の機能に応じた効果的な活用の在り方ということで、例えば遠隔教育、オンライン教育ですとか、AIを活用したドリル、デジタル教科書、こういったものもどんどん出てきておりますので、こういったことについて、この推進方策では効果、留意点を整理してみたところでございます。右下に記載しておりますが、まだまだ考え方、更なる実証や精緻化が必要だと考えておりますので、ガイドラインの策定など、引き続き進めていきたいと考えております。
 また、8ページでございますが、ICT環境整備のあるべき姿と現状と課題といたしまして、左側の中ほどに学校ICT環境整備の現状とございます。例えば、教育用コンピューターの台数で申し上げますと、全国平均について、5.6人に1台という状況でございます。私どもの目標として、3クラスに1クラス分程度を目指しておりますが、まだまだ半分程度というところでございます。また、先ほど地域間格差の話を申し上げましたが、最も高い都道府県が1.8人に1台なのに対して、最も低い都道府県が7.9人に1台と、かなりの格差が出てしまっております。この状況を踏まえまして、下で記載しておりますが、世界最先端のICT環境の実現に向けて、今年度中にロードマップをまず策定しようということをこれから進めていきたいと考えております。
 9ページをお開きいただければと思います。環境整備についてどういったことを進めていきたいかということについて全体像をまとめたものでございます。下に推進方策として記載しておりますが、例えば(2)にございますとおり、学校におけるクラウド活用を積極的に進めていこうということですとか、(3)にございますとおり、いかに安価に良い環境を整備していくかということについてモデルをどんどん作って提示していかなければならないと考えております。
 13ページをお開きいただければと思います。学校が持つ子供たちや保護者の情報は大変機微なものでございまして、これまでの我が国の教育情報の活用の考え方からすると、どちらかというとセキュリティをいかに確立して守っていくかというところが中心になってきたところでございました。しかし、AIをはじめ先端技術が進んでいく中で、今、いかにデータをうまく安全に利活用していくかということについて進めていきたいと思っているところでございます。下のところにガイドラインの改訂と記載しておりますが、例えば①のところでパブリッククラウドの利活用を進めたりですとか、こういったことを進めていけば、ICTを家庭でも使いながら子供たちの学びをシームレスにつないでいく、そういったこともより可能になってくると考えております。
 最後、もう1点、14ページを御覧いただければと思います。先ほど、いかに安くていいものをそろえていくかということを申し上げましたが、安価な環境整備に向けたモデル例というものもお示ししたところでございます。なかなか教育委員会、自治体の皆様からすると、どのような機器をどうそろえたらいいのかというのが見えにくいという御指摘もありましたので、こういったモデル例を示すとともに、これからはこのモデル例に沿った調達仕様書例というのも作っていきたいと考えているところでございます。
 続いて、資料2-1-2を御覧いただければと思います。私からの2点目としまして、今年4月の中央教育審議会で行われました、初等中等教育に関する諮問について説明申し上げます。
 本諮問につきましては、初等中等教育における様々な課題を克服して、これからの時代を見据えて教育の水準を高めていく、そういったために総合的な諮問をしたというのが大きな特徴でございます。
 上のところに学校教育の成果の例の下に四角で囲んでおりますが、知・徳・体を一体で育む「日本型学校教育」については、これまで着実に成果を上げてきているところでございます。一方、下の青いところに書いております、例えば子供たちの語彙力や読解力などの基礎学力といった人材育成の観点からの課題ですとか、また、中ほどにございますが、いじめの重大事態、児童虐待の件数、若しくは障害のある子供たち、不登校の子供たち、外国人の子供たちの数の増加、その下にございますとおり、教師の長時間勤務の実態を踏まえた働き方改革、こういったことへの取組が今求められているところでございます。
 下の黄緑のところになりますが、例えば2つ目の丸にございますとおり、先ほどの御説明と重なるところもありますが、先生方を支援するツールとして先端技術をより効果的に活用できるのではないか。また、「チームとしての学校」をいかに推進していくかということについても、これからの重要なテーマとなっているところでございます。
 これらを踏まえまして、資料2ページ、中央教育審議会において審議をお願いしたい事項として、この4つの事項を中心に今、審議いただいているところでございます。
 まず1つ目といたしまして、新時代に対応した義務教育の在り方といたしまして、発達の段階に応じて学級担任制、教科担任制をどう考えていくかということですとか、先端技術の活用など、様々な指導形態等出てきておりますので、授業時数の在り方を含む教育課程がどうあるべきかということ、又は特別な配慮を要する子供たちに対する指導や支援など一人一人の能力、適性等に応じてどのような指導ができているかということについて、義務教育の在り方について検討をお願いしているところでございます。
 2つ目、高等学校教育の在り方、こちらについても大きな課題となっておりますが、例えば1つ目の丸にございますとおり、普通科改革など各学科の在り方、こういったことについて検討をお願いしているところでございます。
 3つ目、増加する外国人の子供たちへの教育の在り方というところでございますが、例えば1つ目の丸のところにございますとおり、就学機会の確保ですとか、教育相談などの包括支援の在り方、こういったことについて審議をお願いしております。
 4つ目の丸でございます。これまで申し上げた1から3を成り立たせていく上では教育環境の整備が不可欠でございます。一番下のところにございますとおり、先生方や専門的な人材の配置、またICT環境、先端技術の活用を含めた条件整備についても今審議をお願いしているところでございます。
 駆け足となり恐縮でございますが、私からは以上でございます。
【杉村委員長】   大変包括的な御報告をありがとうございました。佐藤専門官におかれましては、別用務でこの後、御退席になられますので、ただいまの説明についてのみ、何かこの場で御意見、御質問ありましたらと思いますが、いかがでございましょうか。
 それでは、御質問がないようでしたら、次の御発表に移らせていただきます。佐藤専門官、ありがとうございました。
 続きまして、資料2-2を御覧いただければと思います。今度は高等教育の最近の教育改革動向について、高等教育局の奥井高等教育企画課課長補佐より御報告お願いいたします。
【奥井課長補佐】   資料2-2の1ページを御覧ください。高等教育の改革の全体像をお示ししております。現状認識として、幾つか書かれておりますが、やはり産業構造、社会構造の変化に大学教育はしっかり対応していくべき、また、社会からの理解が足りないのではないか、あとは18歳人口の減少の影響があるといった現状認識の下で、この5つの検討の方向性というのが示されております。きょうは時間の関係もありますので、昨年11月に今後の高等教育のグランドデザインとして答申が取りまとめられておりますので、そこを中心に御紹介させていただきます。
 2ページ目を御覧ください。この答申は2040年、22年後を見据えて取りまとめられております。これは昨年取りまとめたときに生まれた子供たちがちょうど大学を卒業するときにしっかり大学教育が充実していること、また、学生一人一人が充実、満足度を持って卒業してほしいと、そういった思いが答申には込められているというように御理解いただければと思います。
 次に、3ページは2040年の社会の姿、こういったものをイメージしながら、大学教育はどうあるべきかというものがいろいろと述べられております。
 4ページ目を御覧ください。これは非常に複雑な資料になるのですけれども、概要を1枚でまとめたものでございまして、5つの柱からそれぞれ書かれております。今日は時間の関係で、1、2、3の点について少し御紹介したいと思います。
 5ページ目を御覧ください。まず、2040年の展望と高等教育が目指すべき姿と。左側に、そのときに必要とされる人材像ということが言われております。予測不可能な時代を生きる人材像ということで、普遍的知識、汎用的能力を文理横断に身に付けていく。論理的思考力を持って社会を改善できる、そういう人材を養成していくということを目指して、大学教育は、今はどちらかというと教員の主体に基づく教育が展開されておりますけれども、この答申では初めて学生本位、学修者本位、学生を主役にしてしっかりと教育を展開していこうということが強く言われているところでございます。
 6ページ目を御覧ください。では、そういった新しい教育をしていく上で、多様性というものが1つ大きなキーワードになってございます。学生の多様性、18歳から入る方のみならず、社会人ですとか外国人留学生、様々な方をやはり対象として考えていく必要。そのときに、そういった方を教育する教員の多様性というものも非常に求められていると。かつ、多様で柔軟な教育プログラムと真ん中の矢印の下に書かれておりますけれども、学部横断的あるいは分野横断的な教育プログラムというものをやはり構築していくことが望ましいという指摘を受けて、分野横断、学部横断したような形の学位プログラム、教育プログラムを提供するような制度改正というものを近日中に予定しているところでございます。
 続きまして、8ページ目を御覧ください。先ほどのユネスコの答申案でも少し触れられておりますが、高等教育の質向上、改善というものがやはり大きな課題になってございます。先ほど申しました学修者本位の教育へ転換していくためには、やはり教育の質というものをどう担保していくかということもこの答申ではかなり詳しく触れられているところでございます。中を見ますと、高等教育の質保証については積極的に行っている大学もありますが、全体としての社会からの評価は十分得られているとは言い難いと、答申ではそういった厳しい指摘もなされているところでございます。教育の質保証は基本的には大学が自ら取り組むものでございますが、この答申では、上段の3つの囲いがございますけれども、全学的な教学マネジメントの確立、学修成果の可視化と情報公表の促進、質保証システムの確立といった、大きくこの3点について説明がなされております。左側の教学マネジメントの確立につきましては、こちらにおられる日比谷委員が座長を務めて、今、教学マネジメント指針というものを取りまとめておりますので、そういったものも参考に、大学の教育の質向上というものを是非期待したいというところでございます。また、真ん中でございます。学修成果の可視化、先ほどの社会からの評価ということにもつながるわけでございますけれども、やはり大学教育をしっかりと情報公表していくことの重要性というものも改めて指摘されているところでございます。右側の質保証システムの確立でございますが、日本の大学の質保証としては、大学設置基準を基盤に、設置認可制度と認証評価制度というものが両輪になって行われているわけでございますが、時代に即した形で大学設置基準を見直すべきではないかというような御提言も頂いておりまして、今後、中教審の方に部会を設けて、どういったものが望ましいのか、求められるものなのかということを中心に御議論いただく予定になっております。
 次に9ページ目を御覧ください。先ほど情報公表の観点で触れました、今回、学修者主体ということで、あるいは学生が主役になるということで、国としても、学生がどういう大学での学び、経験をしているのかというのを初めて学生の目線で聞き取るという試みをする予定でございます。この調査のみで大学教育全て表せるものではございませんけれども、大学で学ぶ学生がどういうふうに思っているかというのを是非くみ上げて、今後の高等教育のより充実に生かしていきたいと考えているところでございます。
 駆け足になりましたが、説明は以上でございます。
【杉村委員長】   奥井補佐、高等教育の動向についての御説明ありがとうございました。
 それでは、続きまして、今度は資料2-3を御覧いただければと思います。客観的な根拠を重視した教育政策の推進(EBPM)というものについて、総合教育政策局の岡田調査企画課課長補佐の方から御報告をお願いしたく思います。よろしくお願いいたします。
【岡田課長補佐】   調査企画課の岡田と申します。私の方からは、客観的な根拠を重視した教育政策の推進(EBPM)について、現在文科省で取り組んでいる概要を御説明させていただきたいと思います。
 現在、政府全体としてもEBPMの推進といったことが求められていますが、政府全体の議論としましては、予算の効率化の観点からですとか、統計改革と車の両輪として進めるといった観点ですとか、そういった形でいろいろな議論が行われている中、教育分野においても、教育分野の特性というものを踏まえながらEBPMを推進していくことが重要だと考えております。
 資料1ページを御覧いただいて、昨年6月に閣議決定されました第3期教育振興基本計画においても、教育政策の推進に当たって特に留意すべき事項の一つとして、客観的な根拠を重視した教育政策の推進といったことを掲げております。文科省としても、この点に留意しながら教育政策全体を推進していく必要があると考えております。
 更に1枚おめくりいただいて、2ページの資料になりますが、今回の第3期の教育振興基本計画の中では、左端にあります5つの基本的な方針というものの下に21の教育政策の目標、更にその下にその進捗を測る測定指標ですとか参考指標といったものを掲げ、策定時には計画全体をロジックモデルのような形で整理させていただいております。基本計画の中におきましても、教育分野については成果が出るまでに一定の時間が掛かるものが多いですとか、学校だけでなく、家庭環境など様々な要因があって、因果関係が必ずしも明確にならないものが多いといったような指摘がありますので、そういった特性を踏まえながら、必ずしも数値化できない部分も含めて、教育政策については多角的な分析を行いながら政策立案をしていくことが必要だと考えています。
 資料3ページを御覧いただいて、今申し上げたような教育分野の特性というものを踏まえながら客観的根拠を重視した教育政策を推進していくためには、まず、下の部分にあります、EBPMを推進するための基盤形成といたしまして、省内の体制作りですとか、データ利活用を推進するための様々な方策、これとともに、上の部分にありますPDCAサイクルを十分に機能させていくために、それぞれの段階でいろいろな取組をしていくことが必要だということをまとめています。
 資料4ページの方で、今のような基本計画の内容を踏まえまして、文部科学省が今後どういう形でEBPMを推進していくかという現状を、ちょっと抽象的な話になりますが、全体像をお話しさせていただければと思います。まず、上の黄色囲いのところにありますが、基本計画に基づいて、教育政策のエビデンスに基づいて推進されるよう、政策立案に活用できるエビデンスの開発ですとか、EBPMの実践事例の創出を国として進めたいと思っております。それとともに、国だけではなく、地方自治体でもEBPMの推進、PDCAサイクルの構築といったことが進められることが望ましいと思っておりますので、各地方自治体における教育振興基本計画の策定の推進ですとか、先進的な事例の共有、コンソーシアムの構築といったことを進めてまいりたいと思っています。これらの状況については中央教育審議会でも早期に検討を実施して、3期計画のフォローアップを行っていきたいと思っております。併せて、文科省内の体制構築ですとかデータ収集・活用の改善に向けた体制整備を進めております。
 具体的には、まずオレンジ色の部分を御覧いただければと思いますが、まず政策立案に活用できるエビデンスの開発といたしまして、例えば教育政策に関する実証研究の推進ということで、平成28年度に教員の勤務実態調査を実施しまして、働き方改革の観点から、学校においてどういった働き方改革を進めていくべきかの議論に活用したり、あとは教育現場での加配教員の成果の実態調査研究をしながら、そういったことを教員定数の中期見通しの策定に活用したといった例があります。それから、先ほどの御説明の中にもありましたが、高等教育段階におきましては、大学生を対象とした学修成果の可視化に資する調査を実施していって、こういったことを政策立案に活用していこうという動きもあるところです。そのほか、外部有識者をアドバイザーとして活用しながら、省内の各課が取り組んでいるEBPMの実践に対する支援を行い、その中で教育分野の特性を踏まえた手法の整理を今後進めていきたいと考えております。
 その下のオレンジ色の部分にあります、地方自治体のPDCAサイクルの確立に向けた方策としましては、先ほど学びの先端技術の活用の説明の中でもありましたが、今後、学校現場や教育委員会においてもいろいろなデータの活用が求められていく中で、自治体が研究者と一緒になってデータの利活用を進めていけるような方策を、コンソーシアムを形成する中で国としても何か支援できることがないか、考えていきたいと思っております。
 下の緑色の部分を御覧いただければと思いますが、この部分が基盤形成に関する取組となっておりまして、文科省内でも省内の関係課長会議を開催したり、研修を実施したり、国立教育政策研究所との連携体制をより強化するといった体制をとっております。そのほか、文部科学省が実施する調査におけるコードの統一だとかデータ構造の見直しといったことを進め、文科省としても政策立案の際にデータをより活用していこうということを進めております。
 このような形で、まだまだ取組はこれからであって、いろいろな課題があると思っていますが、総合的に取組を進めていければと考えております。以上です。
【杉村委員長】   岡田課長補佐、ありがとうございました。
 それでは、議題2の最後の御報告になりますが、資料2-4-1、2-4-2を御覧いただきながら、外国人の受入れ・共生のための教育推進検討チーム報告を大臣官房国際課の宮本国際協力企画室長の方からお願いいたします。よろしくお願いいたします。
【宮本国際協力企画室長】   資料2-4-1は少し細かい資料になりますが、こちらに基づいて御説明させていただきたいと思います。この検討チームに先立つ経緯としましては、昨今の我が国全体での人手不足も踏まえまして、新たな在留資格、特定技能創設、これを旨とする入管法の改正が昨年の12月に行われております。これで、今後更なる外国人の増加が予想されるに当たって、政府全体として総合的対応策というものを、これも12月に策定して公表されております。この中で文部科学省では約13.5億円に上る外国人受け入れのための政策パッケージというものを公表しております。この後、1月になりまして、このような政策パッケージを既に出しておるのですが、外国人を受け入れるに当たっての課題の深掘り、あるいは充実していくための方策を更に検討していくべく、浮島文部科学副大臣を座長としまして、外国人の受入れ・共生のための教育推進検討チームというものを設置しております。その後、1月から6月まで8回にわたって会合を重ねて、外国人の子供の教育、それから大人に対する日本語教育の充実、そして留学生の国内就職等の支援と、こういった3本柱について報告を取りまとめております。
 内容ですけれども、まずこの3本柱の1つ目で、外国人児童生徒等への教育の充実。背景といたしましては、今後、外国人が増えるというようなお話をしましたが、実は既に日本国内における外国人児童生徒の数は相当な勢いで倍増しております。平成18年で2.6万人だったものが28年の調査では4.4万人ということで、これだけでも10年間で1.7倍に増えているというような状況があります。
 ここでは7つの柱を立てておりますが、左側が主に学校における教育の充実ということで、緑色の囲いの中の1つ目ですけれども、学校における教員・支援員等の充実ということで、現状でも外国人の集住地域において日本語指導や母語支援員の配置の補助、これを文部科学省としてもやっておりますが、これを更に充実していくということ。それとともに、さらに、子供たちが散在しているような地域における対応、それから、多国籍化が進んできていますので、全ての言語に対応するような人員を配置できないというような事情がありますので、こういったものに対してはICTを活用した多言語化への対応というものも進めていくべきだということを示しております。
 2番目としては、教員の資質能力向上ということで、外国人児童生徒を教育していくためには、日本語指導など特別な能力が必要になるので、このための研修機会を確保する等の取組をしてまいります。
 3番目の進学・キャリア支援の充実というところでは、外国人児童生徒は学校に行っても学習内容についていけなかったり、進学の段階でドロップアウトしてしまうような状況があるということがあります。あと、就職もままならないというような状況がありますので、今まで高校生に向けたキャリア支援というものをやっていましたが、中学生まで支援を拡充させていくと。それから、高校入試においても、例えば漢字にルビを振るだとか、あるいは帰国日本人や外国人のための特別枠の設定をすると、こういったような取組を進めてまいります。
 4番目、今回これは新しい視点なのですが、障害のある外国人の児童生徒への支援を充実させていくべきであると。こういった子供たちは、障害だけでなくて、日本語でも二重のハンディキャップを負っているという状況がありますので、そのために、今までもやっておりますが、日本語指導補助者、母語支援員等、特別支援学校においても配置ができることを明確化して、更に充実させていくということ。それから、教員においてもそれぞれに必要なスペシャリティーを磨いていくための研修機会の充実を進めていくということにしております。
 右側に移りまして、教育機会の確保関係ということでは、今、外国人の子供については憲法上、就学義務が掛かっておりません。ですので、報道等でも一部出ておりますが、義務教育の段階でも、外国人学校にも通わず、日本の公立学校にも通っていないというような子供たちがいるというような状況が報道されております。この実態把握について、全国的な調査を今実施しているところです。この結果がまとまりましたらば、更にこれを就学を促進していくための対応ということで、例えば多言語化での就学案内を徹底する、あるいは学校教育に入る前提として幼稚園の段階もありますので、幼稚園への就園ガイドというものを作成するということを検討しております。
 その下、6番目は夜間中学。夜間中学、皆様御承知のとおり、もともと戦後に義務教育段階の教育を受けていなかった方のために用意されているような教育施設ですけれども、現状で8割が今、外国人の方が通っていらっしゃるという状況があります。ですので、この夜間中学、外国人教育の受け手となっていますので、もともと全ての都道府県に1校設置したいという目標を掲げておりました。現状で今33校まで設置されているのですが、全ての都道府県というわけではありません。更にこれを政令市まで設置目標として広げていくこと、それから、教育内容としても日本語指導等を含めて充実させていくということを方針を立てております。
 それから、7番目、これも新しい視点ですけれども、異文化理解、多文化共生の考え方に基づく教育というものが今後重要になっていくであろうと。母語・母文化、これらについても学ぶ教育機会を増やすということで、これについても新たな施策というものを考えております。
 左下に移りまして、大人に対する教育ですけれども、日本語教育の機会ということで、現状で約6割の自治体において日本語教育を行う日本語教室あるいは日本語学校みたいなところというものが整備されていないという状況があります。この6割の自治体に現状で日本全国の外国人の約18%が住んでいるという状況があります。ですので、こういった地方公共団体、地方における日本語教育の体制を整備するという事業、これを推進してまいります。それから、さらに、教室が開かれていないところでは、自ら学習ができる、自習できるためのICT教材というものを開発しておりますが、これを、日本語だけでは最初はなかなか入りにくいので、対象言語、もともとの母語で日本語を勉強していくための多言語対応というものを広げていくということをしております。
 それから、2番目のところでは、日本語教育の質の充実ということで、日本語教師の資格というものが今、国家的な資格がありませんので、この資格を創設するための制度設計というものを進めてまいります。
 それから、下の日本語教育機関の質の向上というところでは、現状で、留学の在留資格を取得することができる日本語教育機関というものが法務省の告示で定められているのですが、これは参入の際のチェックというものは働いていたのですが、参入した後にその質をチェックして、満たしていなければ退出すると、この退出するための基準というものが整理されていなかったので、それについての整理というものも法務省と協力して進めてまいります。
 右側は留学生関係ということで、留学生、国内就職を希望している方でもなかなか日本国内での就職が実現していないという状況がありますので、産業界、大学、地域によるコンソーシアム、これで就職促進が取り組まれたモデルというものを開発していて、これを全国展開していくなど、そういった支援をやってまいります。
 それから、一番下のところですけれども、留学生の在籍管理の問題というのが一部報道で出ておりましたが、在籍管理を徹底してまいります。それから、在籍管理がしっかりとなされていないような大学に対しては在留資格を厳格化していくというような措置、それから、それについては専門学校についても大学と同様の仕組みを入れていくということを掲げております。
 全体としては、このようなものになっています。以上です。
【杉村委員長】   宮本室長、ありがとうございました。
 これで御用意させていただいた議題2の国内の教育動向について御報告いただきましたが、ここで、議題3に移ります前に、これまでの議題1「ユネスコの最近の活動について」及び議題2「国内の教育改革の動向について」どなたからでも、また、どの話題からでも結構でございますので、もし御意見、御質問等ございましたらと思いますが、いかがでございましょうか。
 今日は就学前から高等教育まで大変多岐にわたる話題が出ております。振り返りますと、多様性の尊重や質保証、その他、ただいまのお話にもありましたような外国につながる子どもたち、あるいは就学者、留学生も含めて、インクルージョンといったテーマが挙がっていましたが、いずれも学修者主体の、大変アクティビティーな活動をどのように支えていったらいいかという御提言が続いていたように全体としてお見受けしております。何か御意見、御質問等ございましたらと思いますが、いかがでしょうか。
 ESD、SDGsでキーワードになっているものに多様性(ダイバーシティー)やインクルージョンといったような言葉が出てきます。それはESDが推し進めてきた概念でもあるかと思いますが、こうした概念に関わる全部の取組がこのユネスコの国内教育委員会で話し合っている内容ともいろいろなところで関連しているように思いました。
 もし御質問等、この場でないようでしたら、この後、議題3、2020-2021年のユネスコ活動に関する方針をめぐり、答申案をまとめるという議題がございます。そちらに移らせていただき、それをまた御審議いただく中で、ただいまの議題1、議題2での話題も含めながら御議論いただければと思いますが、よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 そういたしましたら、まず資料3-1から資料3-4までに基づきまして、事務局の方から、ユネスコ活動に関する方針、教育分野の答申案について御説明をお願いしたく思います。
【大杉国際戦略企画官】   それでは、まず資料3-1を御覧いただければと思いますが、大臣名の国内委員会への諮問でございます。それから、2枚めくっていただきますと、河野大臣名の柴山大臣への諮問ということで、いつもユネスコ総会に関する対処方針の諮問という形になってございますが、今回少し議論を整理させていただきまして、まずはユネスコ活動に関する方針、そしてその方針を踏まえた総会への対処方針というような形式に改めさせていただいております。
 今回御議論いただきたい答申案自体は資料3-2になってまいりますが、この前に、まず資料3-3を御覧いただければと思います。次回、秋のユネスコ総会における議題案ということでございまして、中心になってまいりますのは議題4.2、2020年から2021年事業・予算案の検討及び採択ということが中心になってまいります。その他、議題としては教育関係は御覧のようなものがございますけれども、まだドキュメントが整っていない状況でございますので、本日は2か年の事業案の点を中心に御議論いただければと思います。
 なお、資料3-3、めくっていただきますと、ユネスコ総会関連事業ということがございまして、教育大臣のハイレベル会合、今回、高等教育の規約ということの関連、それからユースフォーラム、それから国内委員会会議、それから、日本が出資しておりますESD賞ということも含めて議論予定でございます。
 それから、資料3-4はメインとなります2か年の事業・予算になってまいりますが、これにつきましては、また答申案の方で重要なところは触れさせていただきます。
 ちなみに、資料4を飛ばして、別添1と別添2に英語版の議題案、それから2か年の事業計画を御参考まで、原本を付けさせていただいているところでございます。
 お戻りいただきまして、資料3-2になりますけれども、資料3-2、2020-2021年のユネスコ活動に関する方針(答申案)ということでございます。教育分野のみ抜粋してということでございます。事前にお送りさせていただいておりますので、取組の現状等は飛ばしまして、特に重要になる2ページ目の3ポツでございますが、日本の強みを生かした国際貢献、先ほど各局から御報告させていただいたような日本の教育の取組ということを国内外の往還の中で、国内の取組も質を高め、そして国外の各国の教育の在り方にも貢献していく。この往還を作っていくための質の向上のための教育の支援の在り方ということでございます。
 それから、(2)の多文化共生の考え方に基づく我が国の教育機会の提供。長年、国内でユネスコ活動を展開されておりますけれども、地域のユネスコ活動ということが、先ほど宮本室長からもありましたような、ますます外国人児童や家族が増えていくというような社会の中で、新たな位置付けの中で、新しい価値の中で展開されていく必要があるのではないかというのが2点目でございます。
 それから、3点目がユネスコ活動の基盤強化ということでございまして、大学、学校はもちろんのこと、NPO、民間団体、様々な関係者がユネスコ活動に関わって、この取組を点ではなく面につなげていくためのプラットフォームというようなことをしっかり考えていくべきではないかということでございます。
 また、IIは総会に向けた対処方針ということでございまして、まず(1)はSDG4、それからESDに向けてということでございます。日本で9月にESDの新たな枠組み、ESD for 2030に向けたプレローンチイベントなども予定されておりますので、ESD提唱国としての国際的な議論のリード、また国内における様々な教育の充実、そして信託基金を通じた各国の教育の量的・質的向上への貢献ということをしっかり進めていくべきではないかということでございます。
 それから、ユネスコの方で「教育の未来」の議論が始まるということでございますので、これに関する日本としての貢献というものもしっかりしていきたいということ。
 それから、(3)として、高等教育の規約が秋に締結される予定でございますので、これに関して、ユネスコには政策形成支援、能力開発、国際協力の促進、ネットワーク強化ということを求めていきたいということでございます。
 それから、先端技術の活用や他分野との連携、AIということの進展の中で社会の在り方、教育の在り方も急激に進化していると。世界に目を向ければ、やはりAI先進国とそうではない国の格差が開いていくようなおそれも懸念されるという中で、日本が先ほどの先端技術を活用した教育の在り方というようなことも含めて国内外でしっかりと進めていけるところ、また、AIという科学と教育、あるいは社会科学、倫理面といった分野を超えた連携ということもユネスコに促していくべきではないかというところでございます。
 ということで、お時間許す限り、様々な御意見を頂ければ幸いです。よろしくお願いいたします。
【杉村委員長】   大杉企画官、ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明を受けまして、この答申案について是非活発な御議論をお願いできればと思います。特に答申案の不明点、更に加えるべき観点等ございましたら、委員の皆様におかれましては御意見を頂戴できればと思います。いかがでございましょうか。では、吉田先生、お願いいたします。
【吉田委員】   この件に直接関係するかどうか分からないのですけれども、私がニューヨークでのハイレベルの議論に参加していたときに非常に強く感じたのは、例えばヨーロッパの人たちは今、移民だとか人口移動がものすごく重要な問題になっていて、それに対してどういう対応をすることをSDGsが求めているような持続可能な社会というものに地域として対応することになるのだろうかということを、もう目の前の切実な問題として避けて通れない、だけども、将来を見据えて、しかも人権だとか平和だとか平等だとか、そういう普遍的な価値観を重視しながらどう臨んだらいいのかということを本気で検討しているのです。申し上げたいのは、地域地域によって、将来、持続可能な社会の在り方ということについての考え方、そして、そこに向けて目の前にある問題というのが大分違いがある。そう考えたときに、日本はどうなんだろうか。日本は恐らく、AIというようなのはもう世界共通の大きな問題でしょうけれども、少子高齢化に代表されるような、なかなか簡単に克服できないような問題があって、それに加えていろいろな問題が重層的に絡んでいる。そういう日本独自の問題を日本がどうやって克服していくのかということは国際社会が物すごく注目しているわけです。ですので、日本独自の問題が持っている国際的に通じるようなメッセージというのは何なのかということを考えた上で、それを教育としてどのように取り組むのか。それが日本から示されないと、結局、日本が言っていることに対しての説得力というのが余りなくなってくる。誰が聞いても普通に正しいと思われることを言っているだけではなかなか、それはそれでいいのですけれども、それ以上のところに行かない。日本が直面している問題というのは、いわば先進的な問題があるわけですので、それに加えてAIであったり、あるいは村が消滅していきつつある中での持続的な社会とはどういう意味なのかとか、そういう独自の問題に対して教育面からどういうふうに発信できるのか、そういうところが入っていてもいいのかなと。それは国内の教育施策についてもそうですし、それを踏まえたユネスコ等を通じた国際的な発信のメッセージにもなっていってもいいのかな。今日の議論、ここまでのところで、そういうところがちょっと余り私としては把握できていなかったような気がいたしました。
【杉村委員長】   ありがとうございました。まず吉田先生の方から冒頭、1つ大事な観点を示していただいたように思いますが、ほかの委員の先生方はいかがでいらっしゃいましょうか。萱島先生、お願いします。
【萱島委員】   大変網羅的な御説明、ありがとうございます。1点、外務省が担当している、若しくはJICAが実施しているようなODAによる国際貢献とのリンケージやそれに関する情報というのが余り入っていなくて、常々、文部科学省で進められているユネスコ関係の事業とODAによる2国間の教育協力がもう少しうまくリンクして相乗効果が持てるといいのにと実は常に思っておりまして、それぞれ組織間のデマケ等もあって、大幅に乗り合わせるとか、若しくは予算を大幅に拡大するのは非常に難しいと思うのですけれども、例えばここの最初にある、日本の強みを生かした国際貢献というようなことでも、大変多くの教育協力の事業がODAの中で行われておりますので、是非ユネスコの場を通じてのいろいろなアピールや発表のところでも、ODAで既に行われている様々な教育分野の協力事業についても例えば御紹介いただくとか、そういうものを使って日本として何をやってきて、どのような貢献をしているかというのは是非伝えていただけるようにしていただけると、もったいないなと常々思っておりまして、是非よろしくお願いしたいと思います。
【杉村委員長】   ありがとうございました。
 及川先生、お願いいたします。
【及川委員】   今のお二人の意見に関連するのですが、2ページの大きい3の(1)の日本の強みを生かした国際貢献とありますけれども、この強みとは一体何なんだろうかということ、これが非常に大きなポイントかなと思うわけです。ここに丸ポツが3つありまして、1つ目に信託基金等の拠出金の問題であるとか、それから、それを丸ポツ2つ目で現状分析、それを転換しなくてはいけないという文脈があって、そして丸ポツ3つ目で、この資金というか、予算というか、そういうバジェットの問題とプラスアルファで教育コンテンツであるとか指導法の工夫・改善だとか、ソフトの部分の貢献が多分必要だという文脈だと思うのです。そういう流れを捉えたときに、特にユネスコの観点と教育の観点、この2つを掛け合わせて、日本のユネスコ活動、あるいはESDをはじめとする教育的な世界に発信すべき強みというのは何だろうかと考えると、私は3つあると思っています。その一つはやはり、後半にもちょっと出てきますが、皆さん誰も否定しないとおり、ユネスコスクールが世界一まで増えたといいますか、進展して、積極的に活動が行われていること。つまり、公教育の中でユネスコ活動であるとかESDがきちっと推進されている。さらに、それが学習指導要領等にも前文及び総則に「持続可能な社会の創り手の育成」ということが盛り込まれ、ユネスコスクールに限らず、公教育全体でその理念なり必要性が共有されて、全国で今展開されつつあることです。そして、それに基づき具体的なカリキュラムもきちっと整備されて、先ほどエビデンスベースの話が出てきましたが、カリキュラムベースできちんとそういう取組が行われていることです。これは国際的に比較してみても、いろいろなユネスコの会議等で他国の取組を見ても、日本が一番この部分に関しては強い、強みがある部分であると思うのです。つまり、公教育の部分でのきちっとした組織的、体系的な取組が行われているということがまず1つ挙げられるのだろうと思います。これはもちろん文科省をはじめ日本ユネスコ国内委員会の、要は関係省庁からの、トップダウン的なメッセージ、学習指導要領なんかまさにそうですけれども、そういうところが1つアプローチとして効果があったのかなと思います。
 2つ目には、それと同時に、先ほどの吉田委員の発言にも関わるのですが、そういうトップダウンだけではなくて、今、実際、全国各地のESDなりユネスコ活動なりを見てみますと、地域の課題に即した形で地域からこのESD、ユネスコ活動を発信している自治体であったり教育委員会であったり、それが数多く見られること。つまり、地域の目の前の課題解決にどのように取り組んだらいいかということで、ESDあるいはSDGsを掲げて、それに取り組んでいるという自治体が数多くあるわけです。これはボトムアップの取組として、ある意味、一つの大きな日本の強みであろうと思うのです。
 その中間として、それをつなぐものとして、もう一つ、これはずっと日本が国連のESDの10年を始めて以来、私は世界をリードしていると思うのですが、それを進めるに際して、この委員会は教育分野の方が多いのですが、これにプラスアルファで、行政であったり企業であったりNPOであったり、あるいはもちろん様々な、ユネスコ協会含めて、多様なセクターといいますか、多様な主体が参画・協働して、ネットワークを組んだり連携しながら取り組んできたこと。まさしく、今まさにそれがどんどん広がってきているということがあろうかと思います。そういうふうな上からのアプローチと下からのアプローチと、それを地域あるいは全国で展開する際の横の多様な主体の参画・協働ということが、これが日本のこれまで国連の10年とプラスアルファのGAPの5年では世界的にも非常に大きな、それこそ成果として発信できるのではないかと思うのです。そういうふうな公的な教育的な部分であるとかネットワーク的な部分であるとか地域の課題解決的な部分、そういうところをきちんとここで示して、これが日本の強みであって、それを先進国でも途上国でも、汎用できるところ、参考にできるところは参考にしていただくという発信の仕方があろうかと思います。さらに、後半のⅡの大きい部分の今後の事業展開の部分においても、まだまだここの部分が強化しなくてはいけないとか、もっともっとそれを高めていかなくてはいけないというところを是非言及していくというか、そういうふうな形で示していくことが、先ほどあった多様性の問題であったり、インクルーシブの問題であったり、地域課題の解決であったり、子供たちの様々な教育的な課題であったり、そういうことに貢献していくのだというように、やはり戦略的なビジョンというか、筋を立てることが必要なのかなと思いました。
 以上です。
【杉村委員長】   ありがとうございました。大変包括的な御意見を頂いたかと思います。
 他にはいかがでございましょう。
【日比谷委員】   よろしいですか。
【杉村委員長】   日比谷先生、お願いします。
【日比谷委員】   先ほどちょっと名前も出ましたが、私はこの高等教育のグランドデザインの答申を作りました委員会の座長もしておりましたし、それから、今は教学マネジメント特別委員会の座長もしているところで、きょうは初等中等教育についても非常にたくさんの包括的な御報告があり、また高等教育についても御報告があったわけですけれども、例えば、御覧になっていただかなくてもいいのですけれども、2ページにグランドデザイン答申の概要というのが載っているのですが、2040年頃の社会変化というところで、Society5.0と並んで国連SDGs、全ての人が平和と豊かさを享受できる社会を目指してこういうものを作っていこうというような、非常にそこを意識して議論もしておりましたが、何となく、あっちの委員会に出ていると、このように申し上げるのは誠に気が引けるのですけれども、ここで話していることは全くもう全然別世界のような感じになっておりまして、実はユネスコスクールの取組であるとか、ほかにもきょういろいろなお話がありましたけれども、そこで議論していること、目指しているものというのは、まさにグランドデザイン答申が目指している将来像に直結するものだと思いますし、それから、例えば今の教学マネジメント特別委員会の中で学修成果の可視化と、それから情報の公開というところがあるのですが、後者ですね。情報の公開の話をしていると、日本の高校生にとって、この大学に行ったら何ができるようになるかというのを必ず公開していかなければいけないからという観点からすごく話が進むのですけれども、本当はそれはそれだけではなくて、今まさに様々な方がおっしゃったような、もうちょっと世界的なレベルで情報を公開していくということのためにやるべきことだと思うので、私も向こうに行ったらそういうふうにもう少し積極的に議論の方向付けをした方がいいのかなと今日思ったのですが、ほかの、例えばODA活動との連携がどうかというようなお話もありましたが、同じ省の中でやっていることの中でももっと連携できることがあるし、互いに、例えばちょっといらしていただいてお話をしていただくとかいうことを考えた方がいいのではないかなということを痛感いたしました。
【杉村委員長】   ありがとうございます。今日は本当に文科省の中のいろいろな局から御出席いただいて、多分ここ最近の委員会の中では一番多くの部局から御参加いただいた委員会かと思います。本当にたくさん御説明を頂きました。これだけいろいろな部局が横の連携もとりながら進めていただけるということは、大変有り難く、ユネスコ国内委員会教育小委員会としてもいろいろな情報を踏まえた上で議論させていただけているのはとてもいいことだと思います。その一方で、今の、日比谷先生の御指摘もあったとおり、より包括的な、しかももっと世界的な視野だとかグローバルな視点を考えることも大変大事なことかなと思います。
 いかがでございましょう。ほかに何か御意見ございましたら。秋永先生、どうぞ。
【秋永委員】   本日はたくさんの御説明、ありがとうございました。先ほど安西先生からも宿題のような形で、先端技術活用においても押すべきボタンを間違えてはいけないというお話があったと思うのですが、答申案のところでもそこに関する条項が1個あったと思います。資料3-2の4ページにもあったと思うので、ちょっとここについて意見を申し上げたいと思います。ちょうど私が研究とか技術、最先端技術に触れることが多いので、いろいろ考えたのですけれども、例えば今日実際、タブレットの会議に初めて参加しまして、使用されて、皆さん、いかがでしたか。どうですか。私は初めてでもあるのですけれども、正直、紙の方がインプットできるなというのは個人的にはあります。もちろん自分ではモバイルも使いますし、パソコンは常にデータとかメッセンジャーとか常に24時間触れている生活はしているのですけれども、プロダクティブな会議においては、個人的には紙で見たり、人の目を見て見聞きしたり、聞きながら、いつも鉛筆を配っていただいていると思うのですが、手で書いて考えるというのは人間ではないとできないことだなと、今日たくさんのインプットを受けながら感じていました。例えばAIの活用とか幾つか条項があったのですけれども、やはり学校現場も同じで、タブレットとか設備を配ったからといって、学生の、児童の学習能力とか思考能力が上がるとは思わないと私も思っています。この条項の中で、例えばAIは多分中国とかの方が技術としては強いと思うのです。ただ、世界における日本の教育の強みは何なのかと考えたときに、それはそうした最先端の技術をどう使うか、どのように活用する人材を育てていくかという、もっと人物像とか社会の在り方、人間中心のAI社会原則、では、それはどんな社会なんだろうというところを言語化できるのが多分日本の強みになるのではないかなと思いました。最近ちょっと読んだ本でデュアルスタンダードという言葉を学んだのですけれども、日本人は、日本語の在り方を考えたときに、もともとは文字がなかったところに中国から文化が入ってきて、漢字も音読みと訓読みがあって、今となってはアルファベットと片仮名も全部入り交じったものになっていると。そこから考えられるのは、複数の物差しを同時に扱うことのできる思考能力だったりとか、そういった多様性を受け入れて融合できるという力がきっと古来からあるはずで、そこから多分、AI時代が来ても、AIは結局、選択肢しか示さないのですよね。私も使ったことあるのですけれども、たくさんのオプションをコンピューターで計算して示してはくれるが、結局、意思決定は人間がしなければいけないので、その曖昧さの中から人間ならではの意思決定をするとか、どういう社会が生まれるかという未来をやはり言語化したり作っていくのが、AI社会における次世代というか、人間の在り方なのではないかなと思います。そういったところを例えば4ページの(4)の先端技術の活用とか、そういったところでもう少し表現をよりディープなものにしていただけるといいかなと思います。
 この前提で、資料2-1-1の、全体でいうと2ページに、学校現場におけるいろいろな技術の活用の写真があったのですけれども、たまたまその中で2つ、私もちょうど近しく知っているものがありまして、1つは左側にコミュニケーションロボットが置いてある写真が見えますか。OriHimeというもので、そこのベンチャーの支援もしているのですが、ここは、御存じの方もいると思うのですけれども、もともとは病院とか寝たきりの方でも社会に参加できる、学校に行けるといったロボットを開発していまして、やはりこういった技術はただのオンライン会話ではなくて、これまで働くことすらできなかった寝たきりの方がロボットを操作してカフェで接客ができるとか、そういった時代が今来つつありますし、右の方にある、卵が会議の中心に置いてある写真はHylableというものですけれども、これまでは声の大きい人とか発言量の大きい人が議会でリーダーシップを持っていると言われていた。けれども、この技術によって、意外とAさんとBさんの間の会議中のディスカッションのリーダーシップであったり、音声だけでは分からない、多様なコミュニティーの中のリーダーシップとかマネジメント力というのも可視化できるようになってきているので、結局、冒頭に申し上げたような、多様な人材が社会に参加してくる中で技術をうまく使って、どういった人材を日本は育てていきたいのかというところをもっとディープに記述して、そして世界に発信していただけたら幸いです。
 以上です。
【杉村委員長】   秋永先生、ありがとうございました。今の御発言は、AIが入ってきてそれをどう使うか、コンテンツベース、内容があってこそという御発言の内容であったように思います。どうぞ御発言をお願いいたします。
【大杉国際戦略企画官】   ありがとうございます。記述の方はそういった形でちょっと深めさせていただきます。
 1点、この会議の運営についてなのですけれども、また様々な御意見を頂きながら改善していきたいと思います。ただ、ペーパーレス化というのは、大変いろいろ見にくいとかいうのはあると思うのですけれども、これはもう進めさせていただきます。
【東川委員】   ただ、一言だけこれに関して言いますと、ほかの会議体ですとか中教審の方でも出させていただく中で、毎回毎回こんな分厚いファイルを用意していただく方が大変だろうなといつも隣の先生方とお話をしていて、ほとんど見ないこともあったりとか、大変申し訳なかったり、これがあることによって附箋紙も当然ながら要らないとか、いろいろなメリットがあるので、私は大賛成かなと思っております。
 先ほど初中局の方から柴山大臣の諮問の御案内があって、これは中教審の総会の中でも私も当然聞いているのですけれども、ああいう非常に多岐にわたる中においてSDG4を達成していくということになりますと、様々な課題、難題といいましょうか、現場、特に学校の現場なんかに行きますと非常に多くて、特別な配慮を必要とするというような児童生徒さんもたくさんいる中において、大体クラスに6%ぐらいというような数字はよく言われていますけれども、実態としては、現場の先生方の話を聞くと、いや、もっといると、見れば大体分かるのだというような、こんなお話の中から、本当に特別な配慮といいますか、相当な配慮をしないと授業そのものが成り立っていかないとかというところにおいて、まだそこまで、働き方改革と相反するところがあるというところから、いろいろな施策も考えなきゃいけないのでしょうけれども、今回の答申案を見ていて、いろいろな人たちが複合的な責任を分け合う中での関わり方という形でいいますと、地域という言葉であったり、例えば家庭という言葉であったり、その辺が少し薄いかなという印象がありましたので、どこというわけではないのですけれども、全体的に包含されているのかなという感じもしますが、字句として入っていてもいいのではないかなという感じがしましたので、一つの意見として申し上げます。
【杉村委員長】   ありがとうございました。
 本当にいろいろな御意見をありがとうございます。委員長の立場で意見を申すのもどうかと思いますが、たまたま今、委員の先生から御議論が出なかったところとして、高等教育の資格認証の規約のところがございます。ここだけ少し言及させていただくと、日本がイニシアチブをとって東京規約等々発効でき、間もなく秋にはNICもスタートするということとなり、大変大きな一歩と思います。先ほどから初等中等教育、高等教育と、いろいろな改革の流れをみてきましたが、国際化への対応という点では、初等中等教育と高等教育とでは少しニュアンスが違う部分もあるかと考えます。高等教育については、今日、様々な国際連携ネットワークがつくられており、その中で国際水準、基準をどう日本の高等教育にも反映させるかが、大きな課題になっていますので、今回のこの東京規約はその意味で大変意義深い一歩だと思います。
 また、先ほど、AIを使ったOriHimeさんでしたでしょうか、ロボットの話が秋永先生から出ましたけれども、今、高等教育でオンラインの普及が急速に進み始めていることも関連があるように思います。本日の報告の中にも出ておりますけれども、ネットワークの強化だとか、国際協力の推進というところにも関連する大きな課題になってくると思います。例えばこれはブリティッシュ・カウンシルの報告に出ているのですが、イギリスの高等教育機関では、登録している留学生の半数以上がイギリスの国内ではなく、国外からサテライトキャンパスやオンライン・プログラムといったトランスナショナル・プログラムを通じて学んでいるということです。恐らく近い将来、日本の大学でもそうしたオンラインでネットワークが作られていくことがあるように思います。今日展開されている大学の世界展開力強化事業では、ちょうど去年、日米間のオンラインを活発化するCOILというのが始まっていますけれども、大事なことは、従来のMOOCとは違って、双方向で発信やネットワークを作ろうという新しい取組です。こうしたことが展開していきますと、先ほど話に出た地域格差と教育の問題、例えば余り外国籍の人たちがいない地域でも、そうしたオンラインを使った多文化共生を考える教育が始まるといったことにもつながっていくのかなと思います。オンライン教育にはもちろん制約もありますけれども、逆にうまく利用できるところ、そうした新しい教育形態としてつないでいくことも今後必要になってくるのかなと思いました。高等教育のところの言及がありませんでしたので、1点付け加えさせていただきました。
 ほかにも御意見があれば。萱島様、どうぞお願いします。
【萱島委員】   すみません。この大変分厚い資料を繰りながら見せていただいて、非常に網羅的な資料で感動しているのですが、1点、今回の最終的に議論すべき内容は今回事前にお送りいただいた答申案というものだと理解しているのですけれども、その後半部分がユネスコ総会における2020から2021事業・予算案に関する方針ということで、この基になる方針というのが資料3-4に入っている資料だと理解するのですけれども、それがまとめのようなものですが、ちょっとこれをぱらぱらと拝見していて、例えば吉田先生が言われたような難民に関するような、留学生というよりはもう少し難民的な人たちの人の移動に対して世界の教育としてどう考えていくかというような観点ですとか、あと女子の教育のことも随分書かれている印象を持っていまして、実際、女子の教育は今年のG7でも一つの大変大きな話題でもあります。安倍政権にとっても大変女性の活躍というのは大きなイシューでもあるので。ちょっと私の印象として、今日のいろいろな御発表も比較的国内教育行政についての御説明が非常にずっと長くて、それと、もちろん日本には日本独特の課題がありますから、日本国内向けの行政というのがあると思うのですが、世界で議論されていることと必ずしも全てが100%合っているわけではなく、それはそれでいいと思うのですが、こういうユネスコに対して日本がどのように発信していくかとか、どう貢献していくかというのは、やはりその両方を上手に見てうまくつなぎ合わせていかないと、日本の国内行政のことをメインに発信しても、なかなか、少しすれ違うというか、十分にかみ合わないところもあるのかなと思いまして、例えば女子の教育をどのように考えて、日本としてはどのように主張し、日本もどのように取り組んでいくかということが例えばもう少し方針として出ないんだろうかとか、若しくは難民の教育についても、日本が今後考えていく外国人籍の労働者の方たちの視点の話、その話は日本国内の話で随分出たと思うのです。それとどうつなぎ合わせていくというようなところが若干弱いかなというような印象を実はちょっと持ったところで、さらに、ちょっと具体的なことで申しますと、今回答申案を事前に頂いたのですが、これを頂けるのであれば、資料3のように、ユネスコでの審議される予定のもの、しかも非常に簡潔な日本語のレジュメも作ってくださってありますので、これを本日の長い資料の中から見ると、非常にもったいないというか、埋もれてしまって、こういう審議がされるのについてこういう答申というお話だと思いますので、この資料3を見せていただいて、世界の議論と日本国内の議論とをどうつなぎ合わせるかというふうな議論ができるとよいのかな。そういう観点で、可能であればもう少し付け加えられるような要素もあるかなと。具体的には女子の教育の問題ですとか、外国籍の児童、子供と難民の受容というような人のモビリティーの問題と教育の問題というようなところもつなぐ部分かなというような感じはちょっといたしました。
【杉村委員長】   ありがとうございます。
 及川先生、お願いします。
【及川委員】   事務局にちょっと確認したいのですが、今議論している答申案は、日本政府に対して出す答申案ですね。
【大杉国際戦略企画官】   そうです。
【及川委員】   パリのユネスコに対して出す答申案ではないですよね。
【大杉国際戦略企画官】   はい。我々が対外的に対応していくときに、この方針に従ってということになります。
【及川委員】   この方針に従ってということで、政府に対して出す。
【大杉国際戦略企画官】   はい。
【及川委員】   それで国内的な部分がどうしても多くなったということですね。
【大杉国際戦略企画官】   そうですね。もちろん国内的な部分のみならず、日本が対外的にどんなことを貢献していくのか、あるいはリードしていくのかということも含めて書かせていただいております。
【杉村委員長】   ありがとうございます。答申の(2)に「教育の未来」プロジェクトへの貢献というのが出てまいりまして、これは世界的なものだと思いますが、多分、この「教育の未来」プロジェクトの具体像を日本がどう考えるかというときに、今お話に出た視点を加味できるといいのかなと思いました。もっと広く「人の国際移動」みたいな言葉で捉えられれば、留学生や外国人労働者、それから、実は難民もそこに入りますが、そのほか、国際結婚で移動している人も入ってきますし、先ほど冒頭の吉田先生の御発言にあったような、ヨーロッパが直面しているような、国境を接するところから入ってくるいろいろな人々の問題というのも含まれてきます。そうしたことを全部含めてSDGsの教育の4の中には、インクルージョンといった概念や、今日は余り議論が出ませんでしたけれども、エクイティーという概念が含まれています。特にSDGターゲット4.7には、公正性と平等の違いや、その中でグローバルシチズンシップをどう育てるかというのが、本当に端的に書き込まれていると思います。そうした目標に対して、日本が培ってきたESDの経験と実績をアピールできるような何かを打ち出し、世界的な課題へとつなげることができればよいのではないかと、本日、先生方のお話を聞いていて思いました。
 私の仕切りが余り良くなくて恐縮でした。吉田先生、お願いします。
【吉田委員】   SDGの4.7というのは、教育がSDGs全体の中の原動力となっている中の更に中核になっていると、そういうふうに私どもは考えていると思うのです。その中でも、なぜ4.7がそこまで重視されるのかというと、やはり全体の方向性を示しているというときに、価値観であったり、どういう意味でのトランスフォーマティブなのかというところが一番分かりやすく、難しいのですけれども、いろいろな言葉を並べながら一番分かりやすく指し示している。そうすると、価値観だとか行動変容というのはやはり文脈によって、目の前にある問題が何かによって意味するものが変わってくるわけですよね。そういう地理的な要素も入るのと同時に、時代的な要素も入ってくると。だからこそ、これまでずっと主要なレファレンスとされていたドロール・レポートのようなものがあるにもかかわらず、もう一回見直す必要が出てきているというのは、それぐらいに文脈が与える影響というのが物すごく強くなってきていると。そうすることが、今まで我々が大事だと思っていたものをもう一回見つめ直す、そしてもう一回検討しなければいけない、何か追加、変更するようなものがあるのだろうというところからの発想だと思うのです。それをどういうふうに捉えるのかというときに、我々、繰り返しになって恐縮ですけれども、日本にいるとどう見える、それだけでなくて、それを世界の外からもう一回見てみるとどう見える。それが、地域的な特有性がどういうものなのかをほかの地域との比較においても理解でき、その上で議論にインプットしていく。そういうことがこれから求められていくのであろうし、それが日本の教育にもまた振り返ってくる、そのような今位置付けになっているのかなと思います。
【杉村委員長】   本当にありがとうございます。上手にまとめていただきました。先生方、闊達な御意見をありがとうございました。この答申案につきましては、今回の御議論を踏まえて、大変恐縮でございますが、事務局の方で加筆修正等をお願いしたいと思います。次に9月12日木曜日に日本ユネスコ国内委員会総会が予定されておりますが、そちらでも報告を予定させていただきたいと思いますので、御理解いただければと思います。ありがとうございました。
 それでは、議題4のその他の方へ移らせていただきます。その他につきまして、事務局の方から、ユネスコ、それから教育関連会議・事業等の今後の予定について御説明をお願いできればと思います。
【植村国際統括官補佐】   資料4でございます。今後のユネスコの関係の会議等の予定でございますが、9月12日、国内委員会総会がございます。それとあと、9月中下旬の方で国連総会ほか、気候変動サミット、SDGサミットと、関連の会議並びにサイドイベントが予定されております。また、秋には、10月9日からユネスコ執行委員会、それと11月にユネスコ総会といった大きな会議が予定されております。さらに、年明け、国内委員会、また1月から3月の間で教育小委員会並びに第146回の日本ユネスコ国内委員会総会を予定しております。
 以上でございます。
【杉村委員長】   ありがとうございました。
 そのほか、特に報告や審議すべき案件はございますでしょうか。
 それでは、本日は本当にありがとうございました。最後に事務局より今後の予定についてお知らせいたします。
【植村国際統括官補佐】   本日はお忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございました。今後の予定ですが、既に御一報させていただいておりますとおり、令和元年9月12日木曜日の午後3時から第145回の日本ユネスコ国内委員会総会を開催いたします。場所はホテルルポール麹町、会議室ロイヤルクリスタルですので、御出席いただく方におかれましては、こちらの方までお越しくださいますようお願いいたします。
【杉村委員長】   ありがとうございました。傍聴いただいた皆様もありがとうございました。
 それでは、これで本日の会合を閉会いたします。御多忙の中、皆様御出席いただきまして、本当にありがとうございました。これで閉会いたします。

―― 了 ――

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