日本ユネスコ国内委員会 第138回教育小委員会 議事録

1. 日時

平成31年2月5日(火曜日)14時00分~16時00分

2. 場所

文部科学省国際課応接室(12階)

3. 出席者

(委員)
秋永名美、及川幸彦、翁百合、萱島信子、古賀信行、杉村美紀、東川勝哉、日比谷潤子、山口しのぶ、吉田和浩〔敬称略〕
(事務局)
大山真未日本ユネスコ国内委員会事務総長(文部科学省国際統括官)、
池原充洋日本ユネスコ国内委員会副事務総長(文部科学省文部科学戦略官)、
小林洋介日本ユネスコ国内委員会事務次長(文部科学省国際統括官付国際戦略企画官)、
その他関係官

4. 議事

【杉村委員長】  それでは、日本ユネスコ国内委員会第138回教育小委員会を開会させていただきます。本日は御多忙のところお集まりいただきまして、ありがとうございます。事務局の方から、まず定足数の確認をお願いいたします。
【徳留専門官】  本日出席の委員ですが、教育小委員会委員10名の御出席をいただいております。委員の過半数8名以上ですので、定足数を満たしているところです。
【杉村委員長】  ありがとうございます。それでは、改めましてただいまより、第138回教育小委員会を開催いたします。本日の議事進行をさせていただきます、委員長の杉村でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 最初に、事務局に人事異動がございましたので、事務局から御紹介をお願いいたします。
【徳留専門官】  平成30年10月に文部科学省国際統括官及び日本ユネスコ国内委員会事務総長として大山真未が着任しております。
【大山国際統括官】  大山でございます。よろしくお願いいたします。
【杉村委員長】  ありがとうございます。引き続き、委員の配属について御報告いたします。配付資料の参考1を御覧ください。昨年12月1日付で新たに国内委員として東川勝哉委員、山口しのぶ委員の2名が任命され、本委員会に配属されることとなりました。ありがとうございます。ここで、東川委員及び山口委員から、それぞれ御挨拶をいただければと思います。それでは、東川委員、お願いします。
【東川委員】  皆さん、こんにちは。この度、日本ユネスコ国内委員会の教育小委員会委員として参加させていだくことになりました、公益社団法人日本PTA全国協議会会長を仰せつかっております、東川と申します。私どもの団体は、全国の公立の小・中学校のPTAでできている公益法人で、主に社会教育、家庭教育を通じて子どもたちの教育・育成と成人教育に関する活動をしている団体でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【杉村委員長】  ありがとうございました。続きまして、山口しのぶ委員、お願いいたします。
【山口委員】  はじめまして。東京工業大学学術国際情報センターの山口しのぶと申します。私は、実は90年代にユネスコ教育局の本部でEFAの活動に従事した経験がございまして、その後、ユネスコ北京事務所でモンゴル、中国、北朝鮮を担当しておりました。現在は東京工業大学で、特に情報技術を教育または文化遺産にどう生かすかということに取り組んでおります。これから日本ユネスコ国内委員会委員として、いろいろ学ばせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【杉村委員長】  ありがとうございました。それでは、大山国際統括官から一言、御挨拶を頂戴できればと思います。
【大山国際統括官】  本日、大変お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。教育小委員会開催に当たりまして、一言、御挨拶申し上げたいと存じます。委員の方におかれましては、日頃よりユネスコの教育分野の活動に関しまして、御協力、御指導を賜り、心より感謝申し上げたいと存じます。
 本日の会議の中でいろいろと最近の動きについて話があるかと思いますが、私から簡単に御紹介をさせていただきます。まずユネスコスクールの関連では、2018年10月の時点で、全国で1,116校という、非常に多い数になっております。また、記念すべき第10回ユネスコスクール全国大会では、昨年12月8日に横浜市で開催をされ、地元の先生方、それから児童・生徒の皆様方等、約800人もの多くの方々にお集まりいただき、大変盛会のうちに実施されました。
 特に注目を集めたものの一つに、ユネスコスクール卒業生の子どもたちのセッションというものがございまして、それを私が拝見していても、主体的に問題意識を持ち、自分の身の回りの問題の解決に向けて考えていこうという姿勢が非常に身に付いている子どもたちが、更に世界の課題解決にもつなげていこうとしており、これまでESDというものにしっかりと取り組まれ、それが本当にいい形で根付き、広がっていることを実感できる場でした。こちらのイベントでは一部の委員の方にも御協力いただきました。本当に心より御礼申し上げたいと思います。
 SDGsに目を向けますと、SDGsの達成に向けて、産学官や国のみならず地方も含めて、様々なステークホルダーがしっかり取り組んでいこうという機運が高まっているところです。特に非常に重要であるSDGsの教育目標の達成に関して、昨年12月にブリュッセルでグローバル教育2030会合が開催されました。本日、吉田委員から御紹介があるかと思いますが、ここではSDGsのフォローアップのための2019年国連ハイレベル政治フォーラムへのキーメッセージというものがまとめられ、その中で教育、特にESDがSDGsの達成に重要であるということもインプットできました。
 ESDは、国連総会決議でも全てのSDGs達成の鍵であるということも言われており、それがグローバル教育2030会合で改めて確認されたと強く認識をしております。この2019年国連ハイレベル政治フォーラムでは、ユネスコと数か国でESDのサイドイベントを共同開催予定で、このサイドイベントでは、ESDのSDGsへのこれまでの貢献について、参加者の皆様と情報共有する予定です。
 この持続可能な開発のための教育(ESD)に関しては、ユネスコでグローバル・アクション・プログラム(GAP)の後継枠組の策定準備が進んでおりまして、今年4月のユネスコ執行委員会、更には今秋の第40回ユネスコ総会、第74回国連総会でもGAP後継枠組が採択予定で、更なるESDの展開の時期を迎えております。
 今後、私どもといたしましても、国内でのユネスコ活動の推進に取り組みますと同時に、我が国の先進的な取組を国際的にも積極的に発信して、更に進めていければとも考えておりますので、是非とも委員の方々におかれましてはますますの御支援、それから本日を含めて様々な忌憚のない御意見を頂戴できましたら大変ありがたいと考えております。本日もどうぞ、よろしくお願い申し上げます。
【杉村委員長】  大山国際統括官、ありがとうございました。それでは、会議の本体に入っていきたいと思います。事務局から、本日の会議の配付資料について、御説明をお願いいたします。
【徳留専門官】  本日お配りの配付資料ですが、議事次第に書かれております資料1-1から1-4、資料2、資料3-1、3-2、資料4、また参考1から4をお配りしています。また、冊子「ユネスコスクールで目指すSDGs 持続可能な開発のための教育」を配付しています。
【杉村委員長】  ありがとうございました。続きまして、議題1、ユネスコの教育関係事業について(報告)に移らせていただきます。事務局から報告をお願いいたします。
【徳留専門官】  それでは、資料の1-1から1-4まで、御説明します。
 まず、資料1-1についてですが、先ほど大山から紹介ありましたとおり、前回の小委員会委員でも御議論いただきましたGAP後継枠組のポジションペーパーについて、現在の状況を御説明いたします。
 前回お配りした情報から大きく内容等の変化はございませんが、このタイトルについて、裏のページ4の実施枠組において、SDGs支援の中で新しいGAPプログラムを「2030年のための持続可能な開発のための教育:SDGs達成に向けて(ESD for 2030)」と名付けると書かれております。英語で言うと「Education for Sustainable Development: Towards achieving the SDGs (ESD for 2030)」となっております。これが以前の案ではGAP2030で、GAPの名前が残っていたのですが、現在の案ではGAPの名前はなく、ESD for 2030となった点が大きな変化です。
 同裏ページの構造、加盟国の役割、ユネスコに求められる取組の提言案については、基本的に大きな変化はありません。先ほど大山から申し上げましたとおり、本ポジションペーパー案は今度のユネスコ執行委員会で採択され、最終的には本年11月のユネスコ総会及び国連総会で採択予定となっているところです。
 続きまして資料1-2を御覧ください。こちらは、ユネスコ/日本ESD賞についてですが、こちらにつきましては、ESDの取組に向けた動機付けとして、日本政府の財政支援により2014年にユネスコに創設され、毎年3件が表彰されております。内容としては、ESDに取り組んでいる団体、学校、個人が実施している事業について表彰しており、1件当たり5万米ドルの奨励金を授与しているところです。各ユネスコ加盟国、あるいはユネスコ公式のNGOの推薦に基づいて、世界5地域から選ばれた国際審査員による審査会を経て、最終的にはユネスコ事務局長が受賞者を決定します。
 今回、2019年は第5回となりますが、先日1月29日に国内公募を開始し、2月28日正午に締切予定です。その後、日本から推薦する団体を最大3件決め、最終的には4月30日までにユネスコに提出し、ユネスコの国際審査を経て最終的に3団体を決定予定です。ちなみに前回の第4回には、ナミビア、インドネシア、エストニアの団体が受賞しており、日本の受賞団体には、2016年に岡山のESDプロジェクトがあります。
 続いて資料1-3を御覧ください。こちらは第5回ESD日本ユース・コンファレンス及びその後のESD日本ユースの活動についての報告です。第5回ESD日本ユース・コンファレンスにつきましては、昨年10月13日から14日に文部科学省の委託事業として、公益財団法人五井平和財団の主催で行われました。目的としては、全国各地でESDに取り組んでいる多様な立場の若手リーダーたちがつながり、学び合い、これからの日本のESDをけん引するリーダーとしてビジョンを描き、共同プロジェクトの企画に取り組むということで、全国各地からユース約50名が参加したところです。
 内容につきましては、2日間を通して、ESDに関する若手の議論を深め、最終的に8つの共同プロジェクトを進めることになりました。次回、平成31年2月17日に様々なESDの関係者を集い、共同プロジェクトの報告、情報交換等を行うESDユース・プラットフォーム会合が開催される予定です。
 最後に、資料1-4の第10回ユネスコスクール全国大会です。これは、昨年12月4日に横浜市のみなとみらい本町小学校で開催されました。参加者数が約800名で、ユネスコスクールの教員をはじめ、教育関係者、NPO企業、児童・生徒、学生等が参加しました。浮島文科副大臣の挨拶の他、ユネスコのESDの担当のチェ・スヒャン部長からユネスコスクールの交流・協働の促進の期待についての挨拶がありました。
 また、特別対談では、安西日本ユネスコ国内委員会会長、また杉村教育小委員会委員長にも登壇いただき対談が行われた他、パネルディスカッションでは、全国から6名のユネスコスクールの卒業生がESDの実践を通じて学んだこと、今後の抱負等を語っていただきました。午後からはテーマ別の分科会で有識者によるワークショップや学校の先生方の事例発表等を行ったところでございます。
 なお、今回は第10回ということで、今まで長年ユネスコスクールの推進に携わってきた方を表彰する機会があり、及川委員や、昨年まで当教育小委員会委員長でした見上先生等がユネスコスクールESD推進功労賞を受賞されました。また、ユネスコ本部、ユネスコ北京事務所、ユネスコバンコク事務所、韓国、中国、モンゴルのユネスコ国内委員会のユネスコスクール担当者を招へいしましたので、国際的な意見交換もできる機会となりました。
【杉村委員長】  ありがとうございました。ただいまの事務局からの御報告を受け、何か御意見、御質問等、ございますでしょうか。及川委員、お願いいたします。
【及川委員】  資料1-1でGAP後継枠組が具体化してきたということで、タイトルも含め、4.の実施枠組については、パリの本部に提言したこと、あるいは進めようとしていることが概ね国際的に進んでいることを大変うれしく思い、これから新たなESDのフェーズが始まるのだなと力強く感じているところです。
 その未来的な志向の部分を踏まえての話ですが、GAPが今年で終わり、一応一区切りになるわけですが、国内的な部分について、GAP採択時に国内でもグローバル・アクション・プログラム国内実施計画、通称ESD国内実施計画がESDの円卓会議で内容を検討し、関係省庁連絡会議が採択されて、5年間進んできました。その国内実施計画には、2019年に国内各ステークホルダーのGAPの取組についてレビューを行う必要があると明記されております。
 それから国内実施計画の中には優先行動分野の1番目の政策的支援から優先行動分野の5番目の地域コミュニティの課題に資するというところまで、いろいろな施策がきちんと明示されています。未来に向けるためにはこの5年間の総括といいますか、どういう成果があって、あるいはどういうまた課題があって、それを次に向けていくのかということをきちんと踏まえるべきだと思うのです。
 日本ユネスコ国内委員会として数多く施策の中に携わっている部分があると思いますので、国内委員会としてこれまで取り組んできたことのレビューと、国内委員会のみならず、文部科学省、環境省が事務局を務める関係省庁連絡会議や円卓会議で、どの部分が世界に発信すべきすばらしい取組の成果であり、どの部分が今後国内として課題で重点的に取り組まなければいけないのかということを、きちんと議論していかなければいけない。スケジュール感を持ち、それについて具体的に文部科学省国際統括官付、環境省等と連絡を取りながら、詰めていただければと思います。今、私がお願いした点については国内委員会の部分とそれを越える部分もあります。その辺につきましては国際統括官付の皆様にいろいろと御尽力いただきながら調整いただき、今のプロセスをきちんと行うことが次につながります。何よりも私が期待しているのは、GAPの5年間が次のESD for 2030の10年間で日本からの提案の部分あるいは貢献の部分として資するものであってほしいと思います。
【杉村委員長】  及川委員、ありがとうございました。
 ただいまの及川委員の未来志向の貴重な御提言をしっかり受け止めつつ、次の議題2にも直結していると思いますので、移らせていただきます。
 議題2はSDG-教育2030について(報告)です。本年1月より2年間の任期でジャンニーニ・ユネスコ教育担当事務局長補とともにSDG-教育2030ステアリング・コミッティー共同議長を務められることになりました、吉田委員から御説明をお願いします。
【吉田委員】  今、委員長から御紹介いただきましたとおり、このたびSDG-教育2030ステアリング・コミティーの共同議長を拝命しまして、今年から2年間ということで、また皆様からの御支援、御教示いただきながら、この重要な役割を務めていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 私の発表は、このグローバル教育2030会合が12月に開催されたところ、SDG4の全般的な動きについて、ごく簡単ですけれども、皆様と共有させていただきたいと思います。資料2を御覧ください。
 まず、グローバル教育2030会合(GEM)ですけれども、これはそれまでのEFA行動枠組に取って代わるものとして2015年に採択されました仁川宣言及び教育2030行動枠組で設置が決められたもので、SDG4の進捗確認と成果共有のための会合です。これと同様のものが2015年の形になる前は、2014年にマスカット(オマーン)で開かれ、マスカット合意が採択されました。それを基に、今日あるSDG4の枠組につながる議論が展開された訳です。今回は、2015年以降初めてのGEMとなります。
 今般、昨年12月3日から5日にわたってブリュッセルで開催されましたが、閣僚級20か国を含む340名が出席、日本からは文部科学省の芦立文部科学審議官、外務省、そしてステアリング・コミティー委員としての私が参加いたしました。特に目的としましては、2019年7月及び9月に開催されます国連でのSDGsの進捗レビューに向けてSDG4からどのようなインプットをするのかについて合意することです。
 会合は、前半1.5日間のハイレベル技術会合、後半1.5日の閣僚級会合の二部構成で行われ、それに引き続き、SDG-2030ステアリング・コミティー臨時会が開催されました。まず、ハイレベル技術会合では、ユネスコ特別大使のローレンティン・オランダ王女の講演から始まりました。そしてSDG4のグローバルレベルの進捗報告、そして各地域からの報告がありました。アジア太平洋地域の活動報告では、東南アジア教育大臣機構(SEAMEO)から活動が報告されました。
 そして、12のテーマについて、様々なワークショップが開かれ、日本はSDG13に当たる気候変動とESDを1つにまとめたワークショップで取組を発表いたしました。その他には教員、女子教育、今年のグローバルエデュケーションモニタリングレポート(GEMR)のテーマにもなっています避難と移住、就学前教育、TVET、高等教育、教育財政等についての議論が展開されました。
 引き続いて4日の午後から、閣僚級会合が開催されました。開催地はベルギーですので、その代表として、マチルド王妃、そしてドゥモット・ベルギー仏語圏共同体首相、ジャンニーニ・ユネスコ教育担当事務局長補、ECOSOC議長の挨拶を頂きました。非常に重要な方々の参加が特徴付けられていたと思います。
 続いて4つのパネル「人々のエンパワーメント:包摂性とジェンダー平等」「移住、強制避難と教育」「変化の下での教員と教育」「生活と仕事のための技術習得と再訓練」について、各国の代表がスピーチされました。日本からは芦立文部科学審議官が高齢化の日本における再教育等について御説明いただきました。
 続いて、閣僚級ラウンドテーブルでは、ここでも日本よりSDGs及びESDの取組について報告いたしました。
 そして、最終的にはブリュッセル宣言として成果文書が採択され、その中では、包摂的で良質な教育、「誰一人取り残さない」教育の法制化・政策、そしてジェンダー、ESD、グローバルシチズンシップ教育、スキル教員、資金動員などについて言及されました。この全文については、配付資料の最後にリンク先を示してございますので、詳細について御関心のある方はそちらを御覧ください。
 その次のページに写真が付いていますが、左上がベルギー王妃、右上がオランダ王女、真ん中に四角で囲まれているのが本会場の様子です。真ん中が表、ひな壇的なところになります。そして、左下に芦立文部科学審議官、右下にブリュッセル宣言の採択の瞬間、真ん中で笑っているのがジャンニーニ・ユネスコ教育担当事務局長補です。
 そして、真ん中の下にあるのは、非常に珍しく、ジャンニーニ・ユネスコ教育担当事務局長補の呼び掛けのもとに教育財政について議論する会合が、どちらかというとひっそりと、余り皆さんには宣伝されない中で開催されました。ちょうどそれに前後してゴードン・ブラウンさんをヘッドとしてエデュケーションコミッションが議論をしていた新しい教育財政枠組が立ち上がるかどうかという状況だったのですが、既存の二国間援助機関や国際的な開発金融機関がこれから教育、特にSDG4を達成するのに向けてどういうふうに資金をモビライズしていくのかということは極めて重要なテーマになっているにも関わらず、これまでユネスコでは掛け声を掛けるものの、具体的な話には関与してきませんでした。しかし今回、少しかじ取りを変えようという動きが見られたという意味では、象徴的でひそやかな会合が行われたということを皆様にも御報告したいと思います。
 次のページですが、SDG-教育2030ステアリング・コミティーの臨時会が開催されました。これは、先ほどのGEMの閣僚級会合でステアリング・コミティーの委員の枠を、これまでの各地域3か国3名から4か国4名に増員するということが決定されたのですが、それに伴いアジア太平洋地域の代表は日本、中国、韓国に加えてフィリピンが参加するという形になりました。また、今年の1月から2年の任期で、共同議長に日本が選出されました。
 今後の主な関連予定ということで、3月にSDG-教育2030ステアリング・コミティー、6月にG20大阪サミットがあり、特にG20大阪サミットでは教育関連のサイドイベントも開催されると聞き及んでおります。そして、2019年7月にはECOSOC主催の、9月には国連総会主催のSDGsのレビュー会合があり、SDG4(教育)、SDG8(労働)、SDG10(平等)、SDG13(気候変動)、SDG16(平和・公正)、SDG17(パートナーシップ)の6つのゴールについて集中的にレビューされます。教育分野ではSDG4の進捗を議論するだけではなくて、SDG4が他のSDGs全体にどのように貢献していくのかということも含めて議論する予定です。
 最後に、事務局で用意いただきました、今後のSDG-教育2030アジェンダのためのロードマップと、それに対応してどのような取組をしていくのかということがExcel表にまとめてありますので、御参照ください。
【杉村委員長】  吉田委員、ありがとうございました。共同議長に御就任になられたということで、大変喜ばしいとともに、是非今後とも日本を代表して御活躍いただければと思います。
 ただいまの吉田委員からの御説明は、まさに次の議題3の「Education for SDGsユネスコ関連施策パッケージ(案)について」の議論にも直結していく部分かと思いますので、移らせていただきます。
 まずは、Education for SDGsユネスコ関連施策パッケージ(案)及び国内外におけるユネスコ活動の推進について、事務局より御説明をお願いしたいと思います。
【小林国際戦略企画官】  それでは、資料3-1を御覧ください。Education for SDGsユネスコ関連施策パッケージ(案)という資料です。このパッケージそのものはこの資料3の裏面に掲載されておりますが、先に表面の経緯について説明いたします。
 このパッケージ案はEFAから来る流れと、ESDから来る流れを踏まえて作成したものでございます。EFAの流れは経緯の(1)ですけれども、これは1990年9月のタイ、ジョムティエンの万人のための教育世界会議でEFAを世界共通目標とすることが決定され、2000年4月の世界教育フォーラム、ダカールで6つの国際指標ができ、2000年9月の国連ミレニアムサミットでミレニアム開発目標のうち、2つのEFAダカール目標が盛り込まれました。
 その後、2015年に国連持続可能な開発サミットが開催され、持続可能な開発目標を採択し、教育分野がSDGsの目標4に明記されました。そして2015年11月に教育2030行動枠組に係るハイレベル会合が開催され、SDG4を着実に実施するため、ユネスコを主導する機関に指名するとともに、教育2030行動枠組が採択されました。先ほど吉田委員からも御紹介がありましたように、ユネスコ主催で2018年12月にGEMがございました。2019年夏には、2019年国連ハイレベル政治フォーラムがありまして、フォローアップを実施予定です。
 一方、ESDの流れでは、2002年9月のヨハネスブルクサミットで、我が国の提案によりESDの10年に関する記載が盛り込まれたことから始まり、2005年から始まる国連ESDの10年が2002年12月の国連総会に採択され、2014年11月には持続可能な開発のための教育に関するユネスコ世界会議が愛知県名古屋市及び岡山市で開催されました。2015年9月には国連持続可能な開発サミットの中でESDがSDGsの目標4の中のターゲット4.7に記載されたところです。現在、2015年から2019年までのグローバル・アクション・プログラムを実施中で、今年の秋の第40回ユネスコ総会にはこのグローバル・アクション・プログラムの後継枠組を採択予定です。
 このように、EFAとESDの流れが今まで来ている中で、このEFAの流れでは2019年国連ハイレベル政治フォーラムでSDG4がレビューが実施予定ということ、それからESDの流れでは今年の秋に第40回ユネスコ総会でGAP後継枠組の審議ということが行われるという、非常に大きなターニングポイントに差し掛かっており、このターニングポイントにおいて2030年のSDGs達成に向けた次のステップが求められているところです。これは、資料2の最後にありますロードマップにおいて、2019年にこのハイレベル首脳レビューがあり、ESDの流れではGAP後継枠組が決まり、そこからこの2030年までの流れがスタートするという点からも、今年は非常に大きなターニングポイントであると思います。
 こういったことを意識しまして、今後、分野横断的な連携により、多様なSDGsの課題解決に取り組むために、今まで実施してきましたユネスコ関連施策について、資料3-1の裏面のとおり、「SDGsターゲット4.7のESDの推進関連」、「ユネスコの教育、科学、文化等の活動との連携を通じたSDGs全体に係る施策」、「SDGsの目標17(パートナーシップによる施策)、「地域における地球規模課題を解決するため、学校、企業、自治体等が連携した施策」の4つの観点から整理いたしました。
 少しパッケージの中身について御説明しますと、1つ目の「SDGsターゲット4.7に係る施策」は、例えば、SDGs達成の担い手育成のためのESDとして、小・中・高・大学をはじめ、国内の教育現場におけるSDGs達成の担い手を育む多様な教育活動を支援し、担い手に必要な資質・能力の向上を図るために、SDGs達成の視点を組み込んだカリキュラム、教材、地域プロジェクトなどの開発や教育実践を支援し、SDGs達成の中核的の担い手となる教師の資質・能力の向上を行うものです。また、ESD/SDGコンソーシアムは多様なESD/SDGs関係団体が協力してその地域一体で取り組むESD活動を支援するもので、全国各地で作ってきたこのコンソーシアムの事業を継続的に発展させていくというものです。
 2つ目の「ユネスコの教育、科学、文化等の活動との連携を通じたSDGs全体に係る施策」は、例えば、ユネスコへの信託基金などを活用して、GAP後継枠組の周知のための国際会議開催、ユネスコ/日本ESD賞の実施、アジア太平洋地域におけるSDG-教育2030の進捗状況を議論するアジア太平洋教育2030会合(APMED2030)の継続的開催、教育を通じた暴力的過激主義の防止などのSDGsに関係するワークショップのアジア太平洋地域での実施のための支援が含まれます。また、日本/ユネスコパートナーシップ事業は、ユネスコ活動に関係ある日本国内の機関に、ユネスコ活動に関する様々な普及・振興を行っていただいているものです。例えば、SDGsの達成のためのユース世代の活動の推進や、ユネスコスクールへの継続的な推進を含みます。さらに、大学などの研究機関、あるいはNPO法人の民間団体にユネスコ活動に協力し、SDGsの17のゴール達成を通じたユネスコの理念を実現する事業を今後とも実施していく、SDGs推進に貢献するユネスコ活動の助成もあります。
 3つ目の「SDGsの目標17(パートナーシップによる目標達成)に係る施策」には、SDGsステークホルダーとの連携が含まれ、これは例えば、ユニツインやユネスコチェアによるSDGsに関する研究推進、ESDの地域連携組織のRCE、ESD活動支援センター、ユネスコスクールを支援するASPUnivNet、国連大学、企業、ESD学会等との連携を行っていくというものです。
 最後に、4つ目の「SDGsの達成を担う次世代の教育支援のための学校、企業、自治体等が連携した施策」では、SDGsについて、実際の教育支援のために地域の若手人材を学校、企業、自治体等が連携して育てていくという観点から、地域における若手人材の育成・輩出を目的として学校、企業などの地域のプレーヤーとの連携によるProject Based Learning、その地域の課題を解決するという課題解決学習を通じて、SDGs人材を育てていくということを試験的に実施していくことを検討中です。また、高校生を対象として、総合的な探求の時間というのが新学習指導要領において新たに設けられていますが、この中で実践的なSDGsが学習できるように、官民連携プロジェクトを通じての教材開発も検討中です。
 こういったユネスコに関連したSDGsに係る施策をパッケージとして実施し、ユネスコ活動によるSDGs達成への取組を通じて平和で持続可能な社会を構築していければと考えております。
 なお、このパッケージ案につきましては、今後、外務省と連携しつつ、皆様からの御意見を頂きながら、2020年度の概算要求に盛り込む内容を詰めていきたいと考えております。まだまだ足りない視点等、あると思いますので、委員の先生方からこういう観点も付け加えてはいいのではないかというような御意見を頂ければと思います。なお、資料3-2に2019年度に予算化されている事業や構想についてまとめておりますが、こちらの説明は省略いたします。
【杉村委員長】  ありがとうございました。
 ただいまのパッケージ案ですが、会議冒頭で及川委員から、今後、ポストGAPの動きについて、是非これまでのESDの蓄積を生かしつつ、しかしながら課題も明確にしながら、次の10年、20年、続けていければという未来志向の御発言がありましたが、まさにそれを具体化していくためのパッケージ案でもあるかと思いますので、委員の先生におかれましては御忌憚のない御議論を、御意見を頂戴できればと思います。 吉田委員、お願いいたします。
【吉田委員】  どうもありがとうございます。今御説明いただいたEducation for SDGsユネスコ関連施策パッケージ案ですが、非常に包括的に取組が計画されていて、是非これが実施されていけばいいなと強く期待しているところではあります。
 また、その前に御説明いただいたESD for 2030、こちらについては今年のいろいろなプロセスを経て、国際的に採択されるとのこと。そういう中で日本がこれまで世界の中でも中心的に進めてきたESDというものをずっと推進していく一方で、教育がSDGs全体の達成に向けて重要な役割を果たすという趣旨から構成されているパッケージが一般国民から見て、ばらばらといろいろなことが起こっているというふうな印象を持たれてしまうと、非常にもったいないと思います。あるいはまた何か新しいことをやり始めるのかなというふうに見られてしまうと、またそれも必要のない混乱を招いてしまうと思います。そういうことではなくて、このパッケージ全体が、日本がこれまで推進してきたESDというものをしっかり受け止めて、どのように国民に向けて発信、説明していくかというところについても、十分注意を払っていく必要があるのではないかと感じた次第です。
 ESDを中心としたSDG4に向けた取組というものが、より広いプレーヤーの参画を得て達成されていくという方向で、文部科学省が推進する際にも学校教育を通じてという取組にとどまらず、いろいろな地方自治体、大学、研究機関、民間あるいは市民団体、そういう人たちが、全体が一致団結して取り組んでいくという、そういうメッセージもあるといいのかなと思います。
 具体的な日々の行いと、SDGs全体に向けた日々の取組と教育とのつながりというものが分かり易く説明できると、特に次世代を担っていく子どもたちにとって、こういういいことを私たちはやっていくのだという気持ちが強くなっていくのかなと思いました。特にこの10年間でどれだけ子ども、若者がこの生き方のトランスフォーメーションを本当に身に付けていくのか、あるいは世界の模範になっていくのかというところが、その後の世界に対しての影響が大きくなり得るところの中心になるものだと思いますので、PRの仕方においても教育ラインを通じた広報というものにも是非、力を入れていただきたいと思います。
【杉村委員長】  吉田委員、ありがとうございました。 及川委員、お願いいたします。
【及川委員】  パッケージ案を見せていただいて、これからどんどんブラッシュアップしていくと思うので、あえて率直な意見、印象等をお話したいと思います。まず1点目の印象として、パッケージ案の(1)から(4)を見させていただいて、この表面にあるEFAとESD両方からの流れをくむということの趣旨はよく分かるのですけれども、はっきり申し上げて、このESDというメッセージが弱いのではないかと思います。
 多分、これを見たら、今まで十数年、15年ですかね、国連の10年とGAPの5年、ESDに一生懸命取り組まれてこられた、特に教育界の人、ユネスコスクールであり教育委員会であり大学でありですね、そういう方々はこのESDというものが日本からの発信で、プライドと誇りを持ってずっと推進をしてきたという自負があるわけです。彼らがこれを見て、何かESDがSDGターゲット4.7に矮小化された感があるような気がするのです。
 特に(1)の部分です。「(ESDの推進関連)」と書いてありますが、こちらが表に出るべきものであろうかと思います。つまり、ESDというのはSDGsの17のゴール全てに貢献する鍵であるというメッセージは、これは今、現在ESDに一生懸命に取り組まれている方にとってはすとんと落ち、ESDあるいは教育でSDGsの貢献にがんばろうという雰囲気が醸成されてきているわけです。その中でこれが出たときに、我々がやってきたESDは一体、どういう位置付けになるのかという記述の部分が弱いと感じます。このところをもう少し親切に、丁寧に、きちんと分かり易く出していただければなというのがあります。
 2点目として、一つ一つ項目的に分かり易く整理しようという観点は十分に理解できるのですけれども、例えば(1)のSDGs達成の担い手の育成(ESD)推進事業とESD/SDGsコンソーシアムについてですが、コンソーシアムに関しては、最近毎週成果発表会が毎週ありまして、ほとんどのコンソーシアムはただネットワークを組むだけではなくて、この上のSDGs達成の担い手の育成の推進事業というものを実際に実践されています。つまり枠組、システムの問題だけではなく、中身が一体となって取り組まれてこそコンソーシアムです。そのため、こういうふうに項目的に分かれるときに一体、どういうふうな違和感を持つのだろうかと思います。また、ターゲット4.7にもう一度戻りますが、このコンソーシアムでは、実際に子どもがいろいろ探求をしたりESDを深めたりしながら地域課題、あるいは高校生であったらグローバルな課題に向き合いながら学びを進めています。そのテーマは、先ほど言った17のゴールを課題として取り組んでいるわけです。まさしくESD for SDGsを実践していると言えます。
 そういうことで考えたときに、このタイトルとこのカテゴライズと内容の部分の整理が、果たしてこれでいいのか疑問ですし、(3)にステークホルダーとの連携にユニツインとかユネスコチェアとかありますが、先ほど言ったコンソーシアムなどというのも、まさしくこのパートナーシップのところの地域あるいは地域を越えて、コンソーシアム同士が連携して国全体で今、つながって実施していますので、そういう意味ではナショナルワイドなマルチステークホルダーを実現しているわけです。その辺のところをもう少し精査や整理が必要なのではないかと思いました。
【杉村委員長】  ありがとうございました。今、御意見が出ましたけれども、いかがでしょう。
【池原文部科学戦略官】  今回初めてパッケージ案を考えてみましたが、吉田委員や及川委員からもお話があるように、まだ非常にいろいろ検討していかなければいけないことはあると考えております。
 資料2の一番後ろに、SDG-教育2030アジェンダのためのロードマップがあり、ESDの目標というものを掲げておりますが、今回、グローバル教育2030会合(GEM)などでは教育2030はSDG4全体を議論されていますし、また今度の国連ハイレベル政治フォーラムでも全体で議論予定です。先ほどGEMの会議の中でも御紹介ありましたようにESDと気候変動というワークショップや、それ以外に難民の問題ですとか高齢者の問題とか、それからAIなどの新しい技術に対して技能をもう少しリカレント教育のような形でやっていくとか、いろいろな課題が会議の中でも出されおります。実際にSDG4だけでもいろいろなターゲットがあるという中で、もちろん日本ユネスコ国内委員会としてはこれまでESDを中心に進めてまいりましたが、文部科学省のSDGsの窓口も担当しており、文部科学省のSDGsの窓口としてはSDG4全体を、もちろんやるのは国際統括官付でやれるわけはないので、総合教育政策局、初等中等教育局、高等教育局、また他の文化庁やスポーツ庁でやっていただく施策にどういうふうに反映していくかというようなことに問題意識を持ちつつ、パッケージ案の構想を作り上げようとしているところですが、実際のところこの裏面にあるのは国際統括官付でこれまでやってきているものしか書いておりませんので、そういう意味では今までと何が違うのかというようなこともありますし、また今までやってきたことが十分整合性が取れていないのではないかというようなこともあろうかと思います。
 一つ、例えば(1)のESD推進事業とコンソーシアムの話がございましたが、これはもちろん一体的にやっていく必要がありますが、今回、資料の3-2で新しい予算として打ち出しておりますのは、上のESD推進事業でございます。これはGAPの5年間の評価の中で、一番弱い部分が学校教育でのESDのカリキュラム、それから教員の指導力、学習評価、そういったものが各国とも非常に弱いというアンケート調査などを踏まえて、日本が特にそういう面で先導的にいろいろな実績を積んで、それを世界にも広めていこうとするものです。2020年以降のことも念頭に置きながら、新しい事業にしていこうと考えております。
 これまでのGAPの中での事業は、どちらかというと学校だけでなく、地域でいろいろな連携及びネットワーキングを図っていくというコンソーシアムの取組を中心にやってきました。コンソーシアムは及川委員も東北とかいろいろなところで働き掛けをしていただいているところもあって、全国にかなり自立してやっていける部分も出てきていますので、文部科学省としても更に協力していくことはあると思っており、両方の面を推進していきたいと考えております。
 あと、(3)のステークホルダーについては、ここに全部書ききれておりませんので、御指摘も踏まえながら、いろいろな連携及びネットワーキングの在り方について方向性を打ち出せればと考えております。
【杉村委員長】  池原文部科学戦略官、ありがとうございました。ただいま御指摘がありましたとおり、資料3-2にも今度の新規の事業等の詳しい説明を載せていただいていますが、まさにSDGs達成の担い手育成、ESD推進事業として本当に学校教育に特化したところ、カリキュラム開発・実践、教師教育の推進、学習評価・発信といった辺り、2ページ目にも詳しい内容がポンチ絵になって示していただいていますけれども、この辺りについても併せて御検討、御議論、御意見、頂ければと思いますが、いかがでございましょうか。古賀委員、お願いします。
【古賀委員】  予算の話をすると、大した額ではないと矮小化されてしまう印象がありますので、余りその部分を強調しない方が良いのではないでしょうか。むしろ、国民目線でユネスコ活動の在り方を考えますと、もう少し活動状況を「見える化」する必要があると考えております。せっかく2030年まで時間がありますので、掲げた目標と、その進捗状況、そして今どこに課題があるのか等、分かり易く示すことはできないものでしょうか。
 ただ、定性的にこれからの取組を羅列しますと、みんなで努力しているという姿勢を見せるだけの自己満足で終わってしまう。「我が国が知見を有するESD」と言うのであれば、どういう測り方をするのが良いか分かりませんが、ある程度定量化した形で示すという努力をしないと、同じ目標や取組内容を繰り返し唱えているうちに、時間だけがどんどん経過していくという状況に陥ることを、危惧しております。
【杉村委員長】  ありがとうございます。山口委員、お願いします。
【山口委員】  日本ユネスコ国内委員会への初めての出席なので、外の目から2点ほどよろしいでしょうか。
 まず、パッケージ案の(1)のSDGターゲット4.7は重要であると理解します。実はアジア太平洋教育2030会合(APMED2030)にユネスコバンコクが開催しているERI-Netというアジア太平洋地域の研究者コンソーシアムを代表して、SDGターゲット4.7がテーマの第3回ADMED2030と、SDGターゲット4.3、4.4がテーマの第4回APMED2030に吉田委員と一緒に参加させていただきましたが、アジアにおける日本の4.7をターゲットとした活動はかなり進んでいると思います。
 それは、ESDに関わってきた経験が10年以上あるからだと思います。古賀委員もおっしゃったように、それをきちんと定量化していない上、宣伝が十分でないと感じます。日本が今までやってきたものをもう少し形にし、それをSDGターゲット4.7に直結させる説明がうまくできていないと感じました。全国的に多様な取組が進んでいるので、それをうまく、もう少し大きなピクチャーにして説明することができるのではないかという印象を得たところです。
 また、パッケージ案の(3)のパートナーシップの部分ですが、GAPの中間評価にもあるように、ネットワークのメカニズムが大変弱いというのは、MDGsの頃からずっと言われていきました。横断的な取組が奨励されていても分野が違うとうまく情報共有ができていないという部分があります。いろいろなステークホルダーとの連携という枠組では、研究機関、国連などや、企業、ESD、学会との連携など多様なものがあります。現在、日本学術会議の第3部会の理工学系では積極的にSDGsが話し合われています。
 第3部会の枠組では、フューチャーアースを環境学の観点から推進する部会と、そこの下に人材育成小委員会というものがあって、そこで環境学と教育がつながっています。日本学術会議の中でもすごく横断的な取組を推進しながらも、どうしても分野で分かれてしまっているため、そこをつなげることができるのが重要かと思います。例えば、学術界の中でも縦割りになっているというところと、学術界と政府と企業と、それから日本国内で行われてきていることをうまくつなげることができる場、プラットフォームが必要であると強く感じています。
 日本学術会議でフューチャーアースという切り口から、教育の先生方と環境の先生方と海洋学の先生方が集まったことによって、いろいろな意見交換ができています。実際、環境学を通じたESDやSDGのコンソーシアムの事例が、たくさん挙がってきています。それを見ても日本はとても進んでいると思うので、今やっていることをうまく掘り起こし、大きなピクチャーで整理する必要あると感じているところです。
【杉村委員長】  ありがとうございます。萱島委員、よろしくお願いします。
【萱島委員】  私はスーパーグローバルハイスクールの委員もしているのですが、常々感じるところですが、例えば、大学も国際化のたくさんの施策がされていて、高校についてもそういうグローバルな子どもたちの能力を高めようという施策が文部科学省の中で行われている。それではどういうふうにつながっているのか、もう少しつなげられないのだろうかと思うことが、実は非常に多くあります。多分、教育現場からすればユネスコスクールのような話も、SDGにしても、JICAがやっているような開発教育のようなものにしても、狙いは非常に似ていたり、関心を持っている人たちも非常に近かったりするのではないかと思います。それぞれが非常にがんばり、いろいろなところでも切磋琢磨しているのかもしれないですが、同じ文部科学省の中でもう少し連携が取れてもよいのではと常々感じるところです。
 それから、グローバルハイスクールの話をしていても、例えばスーパーグローバルハイスクールに関してはJICAもユネスコもESDも比較的均等に扱われているような感じを持っておりまして、一つの文部科学行政の中ではもう少しリンクしてもいいのではないかということが私の印象です。
【杉村委員長】  ありがとうございます。日比谷委員、お願いします。
【日比谷委員】  大変申し訳ない言い方ですが、潤沢な予算があるとは言い難いと言わざるを得ない中でどのように配分して、何にフォーカスするのかということについては、戦略が必要だと思うのですが、なかなか余り予算が取れていない中で、どこに予算を付けることが最も効果的かというような戦略はお持ちなのでしょうか。
【池原文部科学戦略官】  例えば全国において非常に進んでいるところ、ユネスコスクールですとESDの取組に熱心な大牟田や気仙沼のようなところでまず取組を進めていただいて、そのグッドプラクティスを全国に広げていく。ただ、まだ宣伝については非常に弱く、そこはもう少し力を入れてやっていかないといけないということもありまして、それについても戦略的なものを出していかなければと考えております。
 これからの話については、私どもの予算だけではなく、文部科学省や、先ほど説明いたしましたような外務省、SDGSsに関しては外務省、総務省、内閣府、地域創生、それから外務省ではいろいろな民間の企業を巻き込んだプラットフォームなども作られておりますので、潤沢な予算がある程度付いているところと連携しながら、学校、PBL、SDGsの未来都市の話をしましたが、そのようなところで非常にNPOとか民間の企業の方とか自治体の方が、新しいプロジェクトに取り組まれていたり、ある程度お金を付けて取り組まれたりしている。
 そういうところに地元の高校とか中学校とかそういうところに働きかけをして、そういう子どもたちがまずは自分の学校で、PBLでSDGはどんな地域課題が自分たちの地域の中にあるのかということをまず学んだ上で、その地域課題を解決していくために未来都市の中で民間企業の方とかNPOの方とか自治体が取り組んでいる中に、高校生や中学生も入っていってもらい、そこで実体験をしたものをまた学校に戻って学校で総合的な学習の時間、環境の時間を使って見付けていただいて、それがまた将来的にはSDGsの人材として、卒業した後もその地域、あるいは都会に出てもそういう取組を引き続きやってもらえるようになっていけば、徐々に広がりが出ていくと思います。
 そういう意味では、先ほどからいろいろ出ておりますが、ネットワーキングのようなものや、いろいろな同じ目的を持った施策の間をどうつなげていくかというようなことを、もっと視野を持って働きかけをしていかなければ、今の我々の予算ではとてもそんなに大きなことはできないと自覚をしております。
【杉村委員長】  ありがとうございます。ネットワーク、それから類似の、他省庁を含めた施策との連携性といったことも非常に重要であると考えられる中で、ESDや日本の蓄積をいかに打ち出していくかということは、本当に大きなポイントになるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 翁委員、お願いします。
【翁委員】  まとまったお話はできないのですが、私も古賀委員がおっしゃったように見える化やもう少し発信していくということで、教育と社会のつながり、特に教育の現場にいらっしゃる方々がより一層意識して、社会に広く発信できていくような施策をもう少し真剣に考える必要があるということと、いろいろな事業がどういうふうにリンクして最終的な目標につながっていくのかということが分かりにくいと思っております。
 そして、例えば私の金融などでは金融教育などもSDGsに関してどう結び付いていくということを検討すべきかというようなことをやっているのですけれども、全部断片的に、いろいろなところでいろいろな議論が行われているという感じがしますし、また大学、私も東京大学の経営委員会でSDGsの統合報告書とかいろいろなものを見せていただき、東京大学だけではなくいろいろな大学や、小・中・高、全部ユネスコ関連のいろいろな取組がなされているのですが、むしろそういった様々ないろいろな動きが一覧で見えるように、こんなに進んでいるのだというようなことがもう少し見えてくるような仕掛けやネットワーク、有機的な関係・発信といったことをもう少し気を付けてやっていけばどうかと思います。
【杉村委員長】  ありがとうございます。東川委員、お願いいたします。
【東川委員】  印象をいいますと、このパッケージ案の(1)で小・中・高・大学をはじめ国内の教育現場におけると書いてあるのですが、こういう小・中・高・大学を接続するような取組みたいなものが実際あるのかないのかといったところが分かりません。そういうようなことが見えることがとても重要だと思います。
 それから、先般、学校における教職員の働き方改革が、答申が出回り、そういう動きになっています。先生方の学校での質、教育に対する時間も含めて様々な質が変わっていく中において、どの辺りまで現場の先生方を含め、浸透してくのかと少し思っています。
 それから、保護者も含めてPTAの皆さんがこのSDGsの認識を、お勤めになっている、あるいは所属している企業や団体にいらっしゃる方は多分、よく存じ上げていると思うのですけれども、そうではない方たちはまだまだ認識がない方が圧倒的に多いなという印象から、これを進めていくにはその辺の周知を含めたところが必要だろうと思いました。
【杉村委員長】  ありがとうございます。秋永委員、お願いいたします。
【秋永委員】  まず、全体的な感想としましては、他の方もおっしゃったように、パッケージ案とおっしゃるからには包括された、若しくは網羅されたものを是非作り上げていただきたいと思っております。そこに当たっては、これまでの施策の中の課題感を踏まえて、よかったところをどう引き継ぐか、そしてその課題をどう乗り越えるか、だからこの新しい施策を打ちますというような、これまでの取組との違いであったりステップが見えるとより理解できるかなと感じております。
 次に、裏のパッケージ案で2つ、とてもいいなと思う部分がありまして、そこに対する具体的な案ですけれども、まず(3)のパートナーシップのところ、ここはステークホルダーがかなり多様ですので、具体的な施策を考えていくのは、本当にいろいろな考え方があると思うのですが、日本は日本に学びに来る留学生がたくさんいる。そこを文部科学省さんが国費留学生の支援等もされているという背景があると思います。先日、昨年11月になると思うのですが、マハティール首相がマレーシアから来日されまして、日マ経済協議会の中でもおっしゃっていた印象的な言葉があるのですが、Look East again、ルックイースト政策を再び、日本の科学技術であったり教育の在り方からしっかり学んでいきたいということを、また強くおっしゃっていました。
 それを踏まえると、私の大学院時代の経験になるのですが、日本に学びに来る方々は必ず自分の国の課題を解決するために日本に学びに来ているというところにすごくある意味チャンスがたくさんあると思っていまして、そこで、学びに来ている学生から世界の課題、つまりSDGsの何かしらの課題を学ぶといった仕組みがもっと作れるとこのパートナーシップのところも具現化できるのかと思います。例えば、国費留学生と地域の学生が交流するような仕組みの更なる支援ですとか、そういうことが(3)で思ったところです。
 (2)の3番目の「SDGs推進に貢献するユネスコ活動の助成」のところでは、大学等の研究機関にも是非、厚くしていただきたいと思っています。近年いろいろな大学の研究者の先生方や、若しくはそこの企業家の方々と話していますと、日本だけではなくて地球規模の課題を解決するために研究をしているとのこと。例えば小型の聴診器であったり、超音波の医療器具を作ってアフリカで実証試験をしていたり、次世代の風力発電を開発してフィリピンで実証試験をしたりと、意思を強く持った先生方が増えてきているので、そういった方々を支援する研究費というものもここの部分でうまくやっていただけたらと思っております。
【杉村委員長】  ありがとうございました。及川委員、お願いいたします。
【及川委員】  今までの委員の皆様の御議論を聞きながら思ったことですけれども、予算の話、広報の話、いろいろなタグ付け、ネットワーキングの話といろいろ出ましたが、私はSDGsはまだまだ普及していないと言いながらもESDよりはかなり市民権を得ていると思います。古賀委員さんもバッジを付けているほど、企業、自治体を含めてかなりSDGsを、進めていますし、政府も推進本部を設置の上、推進していますが、一方、ESDはまだ市民権を得ていないのではという感じるわけです。
 そういう中でユネスコあるいは教育小委員会としてESDをずっと取り組んでこられて、文部科学省も大変苦労しながら予算確保をされたということですが、手持ちの予算だけではなく関連的な取組とリンクすることでより大きなファンド・レイジングになるということを考えたときに、「SDGsを達成するには人材育成が大事なのだよ」というキーワードやメッセージをかなり強烈に企業や自治体等に出さなければいけないと思います。
 単に地域興し、イベントをやるということではなく、未来の担い手を作る。その理念や思いは委員の皆様も共有されていることだと思うのですが、その人材育成を担ってきたのが即ちESDの部分です。ですから、例えばSDGsの未来都市の話も出ましたが、あの未来都市の自治体がどれだけESDに対する理解があったり、ESDを進めていらっしゃったりしているのかというと、ほぼほぼ余り意識していないという実情があるわけです。即ちここにSDGsとESDの分断が実は今、起きているわけです。
 だから、そこをつなぐことで具体的な高校生のアクティビティなど、様々な可能性が広がってくるわけです。ユネスコの活動がいろいろある中で分断されているという話もありますが、それよりも大きな流れとしてSDGsとESDで、何かつながっていなければならない。それをつなげるのが、私は教育小委員会であり日本ユネスコ国内委員会であり、あるいはユネスコそのもの最大のミッションだと思うわけです。
 つなぐためには2つのアプローチがあり、行政とか企業に人材育成が大事ですよというメッセージを出すアプローチ。これは大事だと思います。逆に教育にとっても、学習指導要領に「持続可能な社会の創り手の育成と記載されたわけですから、そういう創り手を育てるような教育が必要なのだということを、例えば国だけではなくて、自治体にも教育振興基本計画や教育大綱というものもありますので、そういうところにきちんと位置付けてもらうというアプローチも大事だと思います。先ほど言った施策的に縦割りになっているスーパーグローバルハイスクールやスーパーサイエンスハイスクール等いろいろある中で、SDGs、ESDをきちんと学校現場のレベルでは意識しているものの、施策のレベルではなかなかまだつながっていないという部分も踏まえた連携、融合というものを、人材育成という観点で行うことが重要だと思います。
 そういう意味で、これが具体的に施策になるとすれば、個別的な項目としてはそれはそれでいいのですが、これが全体的にどういう絵を描いて、何を目指すのかというものが一つないと、多分実践する皆さんは自分の関係のあるところは一生懸命気に掛けて読んだり見たりするのでしょうけれども、全体像がなかなか見えてこないし、今言った連携とか融合とか、そういう部分がなかなか進まないのではないかと思った次第です。ESDとSDGsがGAP後継枠組のタイトルに付きましたので、ESDとSDGsを地域でも国内でも是非融合的に広めるような施策をお願いしたいと思います。
【杉村委員長】  ありがとうございます。ちょうど皆さんの議論をまとめていただいたような御発言だったと思いますけれども、いかがでしょうか。吉田委員、お願いいたします。
【吉田委員】  全体として、これが個別のこれまでの取組のリパッケージというふうに見えるのでは余りにももったいないと思います。何を達成しようとしているのかが一目瞭然に分かるような、大きな戦略的なメッセージというものがまず必要です。それは持続可能な社会を達成するのに中心的な役割を果たせるような人材を育成することというメッセージでいいと思います。そこに向けて学校教育は小・中・高それから大学に至るまで、どういう人材を育成していくのかが、誰が見ても分かるように、例えばキー・コンピテンシーはどういうものであって、それがどの段階でどのようにコグニティブ、ノンコグニティブを含めて育成されるのか。それを受けて社会人になった人たちもまた引き続き、どのようにそれらを更に維持・発展させていくのか、そこに向けたそれぞれの役割は何なのかということが分かれば、それだけで全体像は描けると思います。その中で、それが大きな全体像とした上でのユネスコ関連施策として、特にここでは文部科学省さんが中心とされることについてはとりあえずパッケージ化する一方で、その上の日本全体としてどのように取り組んでいくかという整合性もまた分かるようになれば、予算要求したときに、否決されようがないぐらい説得力のある重要なメッセージになっていくと思います。
 したがって、その既存の重要な取組が横でどのようにつながっていて、更に上ともどのようにつながっているのかということが分かると、一連の問題が改善されると思います。ただ、それを上から新しく押し付けるような形にするとまた弊害が起こるので、これまでの地道な取組についてもしっかり評価をして、その継続性の意義というのもその全体像の中でしっかり位置付けることが必要になるかと思います。
 予算はこの小さなところで全部するということではないと思いますし、私を含め皆さん一人一人が取り組むべきものかと思いますので、そこの大きな方向付けをしていき、そういった中で文部科学省がユネスコ活動としてどういうことをしていくのかが打ち出されていればここではいいし、そこが求められているのかと思います。
【杉村委員長】  吉田委員からもまた、違った観点からですが、良いまとめを頂いたかと思います。
 委員長の立場で意見を申し上げるのもどうかと思いますが、本日も、皆様からの御議論をいろいろ示唆深くお伺いしました。まず、SDG-教育2030ステアリング・コミッティーで共同議長として日本の代表である吉田委員が入っていただいたこと、また、ESDというものがポストGAPのポジションペーパーや国連総会決議といった国際社会の場でも含まれたということは、すごく意義深いことだと思います。これらを生かすためにも、まさに日本ユネスコ国内委員会教育小委員会として、あるいは日本ユネスコ国内委員会として、ESDとSDGsの関係性をどうするのかという施策については、今世界が動こうとしているSDGsの実現とポストGAPの方向性、ならびに日本が培ってきたESDの取組実績を結集して、一つのモデルを示すという自負を持って取り組んでいくことも、本日の御議論を聞いていてすごく大事なのではないかと思いました。先ほど吉田委員の中からは小・中・高そして大学、学んだ人々が今度、社会人になってどんな活躍をするかというところまで見据えるべきだという御発言にもありましたが、地域コミュニティのつながりを生かして展開されるESDも大変大事だと思います。
 東川委員には今回から御参加いただきましたが、先ほどPTA代表の立場から御指摘いただいた、例えば保護者がどう思っているかという視点は、子どもたちとも結び付くとても重要な点であるかと思います。また、地域コミュニティの方々とのつながりも大事な点だと思いました。
 本日の議論は、明後日7日に開かれます日本ユネスコ国内委員会総会においても、教育小委員会の報告をさせていただきたいと思っておりますが、何か、更に是非これを付け加えておいてほしいといったことがありますでしょうか。
【池原文部科学戦略官】  本日はいろいろと貴重な御意見を頂戴いたしました。先ほど申しましたように、このパッケージ案というものは議論のスタートということでお出ししたものでございますが、まだまだブラッシュアップの必要性の御指摘がいろいろありました。本日頂いた御提案を更に事務局で整理をさせていただき、国際統括官付で取り組んでいる施策は施策として別に整理はさせていただくと同時に、ビッグピクチャー、例えば一つは何を目的にして取り組むのか、何をどうするのか、それからまたこれまでやってきたことをどういうふうに整理をして、それを次につなげていくのか。これらについては事務も少し時間を頂く必要があると思いますが、それから小・中・高・大という文部科学省が所管している部分でちゃんと縦割りではなくく、いろいろな所と連携をしなければならないということと同時に、それ以外の自治体、民間企業、NPO、保護者など、もっと広いところでやられていることとどのようにつなげていくのか、それについてはESD円卓会議や関係省庁連絡会議、またSDGsの方にも円卓会議がありますので、そういうところに問題も投げ掛けながら連携を取り、2030年に向けて検討していく必要があると思います。本日いろいろな御指摘があったということを明記させていただいた上で、それ自体の具体的なところは少し時間を頂きながら、次の教育小委員会にでも御提案をさせていただければと思っております。
【大山国際統括官】  大変貴重で本質的な御意見を承ったと思っております。まことにありがとうございました。我々としてもどういう人材育成をすべきかや何を目指すか等、その辺の大きな、包括的な全体像をうまく描いて、それを見える化していくことを狙っていきたいと思いますので、引き続き御意見を頂ければと思います。
【古賀委員】  私は教育関係者ではございませんので、率直な感想と疑問をお伝えします。日本におけるESDは、千百幾つのユネスコスクールが推進拠点となり、活動が行われていると認識しております。ユネスコスクールは、世界中で1万1千程度ですから、日本には全世界の約10%が存在していることになります。それはそれで良いと思います。一方、ユネスコスクールを通して教育を一定のレベルに引き上げていくことを想定しているのであれば、日本にある小学校、中学校等の数を鑑みますと、ユネスコスクールが1,100校という現状では、その効果は限定的だと考えます。また、ユネスコスクールの地域分布にも、随分偏りがあると感じました。
 この現状に対する、文部科学省の見解を御教示いただけますか。もっと広げていきたいとか、これはもう自発的な取組で良いと捉えている等、今後の方針も含めて御説明いただきたい。「ESDは日本が誇る」と言っているだけですと、自己満足的のようにも見えてしまいます。日本におけるユネスコスクール加盟校の推移を見ますと、10年前だと100校弱でしたが、急激に8倍まで伸び、現在では1,100強となっています。これだけ急速に伸びたのであれば、教育水準がまだ十分ではない拠点もあるはずであり、必然的に質の面での課題も出てくると思います。ユネスコスクールは、他の取組に比べて見える化がされているので、数値化された現状を眺めて考えたことです。この点について、文部科学省がどのようにお考えなのか、一端でもお伺いできれば幸いです。
【池原文部科学戦略官】  及川委員がいらっしゃいますので、私から先に説明させていただきます。まず、まさに御指摘のとおりでございまして、全体で3万校とか4万校あるうちの1,116校に過ぎず、地域的にも非常にアンバランスです。もちろん地域的なバランスの面だけでなく、質の面をそろそろ考えていかなければと思っております。この点はユネスコ事務局からも言われております。
 そちらのレビューもしていかないといけません。そこで、先ほど申しましたESD推進事業などを通じて、奈良教育大学などで学校の中での指導教員力向上に一生懸命取り組んでいただいています。また、カリキュラムとかコンテンツとかがまだまだ不足しておりますので、それらについても取り組む予定です。学校教育ではどうしても評価をちゃんとしないと結局認められないので、そういう意味では学習評価をどういう形でやっていくかというようなことも、これから進めていきたいと思います。
 そういったことができれば、ユネスコスクールだけではなくて、スーパーグローバルハイスクールですとか、普通の一般の学校などにも広げていき、小・中・高、大学を通じて、教育の中にSDGsを取り込んでいただく方向に転換を図っていく必要があるという問題意識は持っておりますが、なかなかまだそこまで手が回っていない状況です。
【及川委員】  古賀委員がおっしゃることももっともな部分がありますが、その一つの数値をどのように捉えるかということは、見方によって結構その評価は変わってくると思います。例えば、私が文部科学省国際統括官付からユネスコスクールの発展に協力してほしい、ユネスコスクールをESD推進拠点にしたいというふうにお声掛けを頂いた時代には、ユネスコスクールというのは日本に十幾つしかありませんでした。しかも活動も非常に停滞していた時代です。
 ここ十年足らずでその十幾つが1,100。2桁違うわけです。その急激な伸びしろというか進展は、国内的にも世界的にも一つのエビデンスとして説得力があるのかなと思います。それから今言った1,100は保有国として世界一位です。だから、ユネスコと世界のESD関係者の中では日本のこの1,100まで来たユネスコスクールは、ある意味非常に目を見張るものがあり、評価すべきものであるというふうには捉えられていることは、ポジティブな面での評価です。
 逆に、日本全体で見たらどうなのだという話になれば、まだ割合としては低いのだと言われればそのとおりだと思います。この部分に関して大事なことは、これからユネスコスクールは増えていくでしょうけれども、日本の学校全てがユネスコスクールになるのかというと、それはなかなか難しいものがあり、何よりもパリの本部が事務処理しきれないという話になるので、そこは現実的にないだろうと思います。とすれば、ユネスコスクールは先ほど言った、ESDの推進拠点であり、モデルであり、けん引役であるというふうな位置で捉えることがまずあり、けん引役なのでそこだけがやればいいという話ではなくて、日本全国の小・中・高が、そして今話題となっていますが、幼稚園も今一生懸命ユネスコスクールをやっていますので、幼・小・中・高・大学、あるいは生涯教育を含めた部分でESD、あるいはユネスコスクール的な活動を進めていくという必要があります。
 大事なポイントは、日本全国の学校が順守しなければならないものは学習指導要領です。その学習指導要領の前文並びに総則に、「持続可能な社会の創り手の育成」という文言が掲げられ、日本ユネスコ国内委員会としては、新学習指導要領はESDを基盤として改訂されてきているというメッセージを各学校へ、ユネスコスクール加盟の有無に関係なく発信しています。これによりユネスコスクールは自分がやってきてきたことが確かだというエンカレッジになり、ますますモチベーションが高まるでしょうし、今ユネスコスクールではなくてもESDをやりたいという教員にとっては、非常にこれは力強いメッセージでありますし、あるいはユネスコスクールとかESDを知らない教員にとってもこれからの教育はそういう方向性でいかなければならないと意識するようになるなど、ふもとからユネスコスクールの裾野がどんどん広がってきているという状況だと思います。そのような形で広げていくということが大事であり、ユネスコスクールだけで全てが評価されるものでもない。かといってユネスコスクールの今までの役割やこれまでの拡大は、世界一の進展と発展ですので、これについては大手を振って世界に発信してよいのではないかと思います。
【古賀委員】  私が申し上げたかったのも、世界に冠たるESDと言うのであれば、ユネスコスクールの成長過程で生まれた成果物があるだろうということです。Education for Sustainable Developmentと言っているのですから、その観点から、ある種の教育方針やメソッド、参考事例が生み出されているはずです。ESDがユネスコスクールで行われている教育だけでなく、その中で育まれた新しい教育の在り方であるとしたら、文部科学省は、そのノウハウをあらゆる学校へ援用できないかということを当然考えるべきだと思います。この点をどう考えなのか、これからどうするつもりなのかということがお伺いしたかった点です。是非、御検討ください。
【及川委員】  そういう意味で、先ほど言ったこのパッケージ案の(1)の1つ目のESD推進事業の中で、①カリキュラムの部分、②教師教育の部分、③評価・発信の部分を、今、きちんと外に出していかなければいけないということで、多分そういう施策をされたのだと思いますが、私としては現場を回っていると、10年以上やって、1,100校もやっているわけですから、そういうエビデンス、すばらしいメソッド、成果というものは実はたくさん出ています。
 ただ、それをなかなかまとめきれていないというか、可視化できていない部分が大きいのかなと思います。ユネスコスクールやSDGsの達成に資するような教育に、非常に汎用できるすばらしいと断言できる実践例はありますので、それをもっともっと、皆で共有するということが今後、必要になってくるのだろうと思います。
【杉村委員長】  ありがとうございます。今、古賀委員の最後の御指摘からもう一つ大変大事な点が付け加わったように思います。つまり、日本がどう発信するかということもありますが、ユネスコスクール=ESDではなく、そこにはいろいろな裾野があってよいし、広がっていくべきだと思います。実際に、日本の教育モデルをいかに国際社会に発信するかという点は、また別の文脈で本日、議論されているところです。それは決して日本のモデルを相手方に押し付けるということではありません。日本が取り組んできた教育実践の現場には、海外からいろいろな先生方が見に来られており、例えば本当に細かな例ですけれども、日本の先生の黒板の板書の仕方が世界に冠たる実践技術であり、海外の先生が来て勉強になると言われることや、日本の「特別活動」が今日エジプトで評価されていたりしています。多分その内容は、先ほどから出ている児童の学びを中心とした今回のカリキュラム改革につながっている部分だと思います。宣伝が下手だというところは確かにありますが、決して押し付けではなく、日本の教育が培ってきたモデルというものを、いい意味で発信できればよいのではないかと思います。そういう意味では、何らかの成果物を「見える化」して出していくことを是非、心掛けられればと思います。
 学力と言うと狭い意味に受け取られがちですが、ESDが求めている子どもたちの学力やスキルは、今日、21世紀型スキルとかグローバル・コンピテンシーと呼ばれて世界で議論されており、OECDのCERIも、小・中・高校レベルでなされてきた議論や評価を基に、高等教育でも評価事業の取組を始めようとしていることも聞いております。今回の新規事業の中で、お金の話がありましたけれども、カリキュラム、教員養成、学習評価を含めた新規事業が出されるというのは、そういう意味では金額の多寡に関わらず、私は大変大事な点であると思います。
【日比谷委員】  私も金額だけを問題にしているわけではなくて、内容もそうですが、こういうことにはお金も付いた方がいいかなと思います。
【杉村委員長】  今後このテーマは是非、次回の教育小委員会でも継続審議したいと思います。委員の方々におかれましては本日の議論を踏まえていただいて、このようなアイデアもあっていいのではないかということがありましたら是非、次回以降も付け加えていただければと思います。今後ともどうぞ、よろしくお願いいたします。本当にありがとうございました。
 明後日2月7日(木曜日)の日本ユネスコ国内委員会総会で、事務局で取りまとめていただいた本日の御議論を報告させていただく予定ですので、併せて申し添えさせていただきます。議題3につきましては、本当に大変いい御議論を頂き、ありがとうございました。
 それでは議題4、その他でございます。ユネスコ教育関連会議、事業等の今後の予定について、御説明を事務局からお願いいたします。
【徳留専門官】  資料4を御覧ください。まず、今後の予定といたしまして、明後日の2月7日に第144回日本ユネスコ国内委員会総会がございます。また、国際的な動きといたしましては、3月11日から吉田委員が御出席予定のSDG-教育2030のステアリング・コミッティー、4月からユネスコ執行委員会でGAP後継枠組について採択予定です。また、11月には第40回のユネスコ総会が開催予定です。その他、日程が未定でありますが、ESDに関する国際会議が6月から7月頃に開催される他、9月にはまた、SDG-教育2030ステアリング・コミッティーや、アジア太平洋地域教育2030会合が開催予定です。また、国内の関係でいきますと、12月にESD推進ネットワーク、これはESD活動支援センターが中心になったネットワークですが、その全国フォーラムが行われる他、また第11回ユネスコスクール全国大会も12月頃に開催予定です。
 次にユネスコ教育関連の広報等の予定ですが、ユネスコ/日本ESD賞につきましては、既に公募が開始され、2月28日正午が締切となっております。また、大学のネットワークでありますユニツイン、ユネスコチェア事業については、3月10日が国内登録の今年の締切となっており、また、ユネスコの学習都市、グローバルネットワーク、これは生涯教育を特に力を入れている都市間のネットワークでございまして、国内ですと岡山市と佐賀県の多久市が登録されているところでございますが、この登録事業につきましても2月8日に申請の締切予定となっております。
【杉村委員長】  ありがとうございました。 閉会の前に、最後に事務局より今後の予定についてお知らせいただきます。
【徳留専門官】  明後日の日本ユネスコ国内委員会総会ですが、2月7日15時から開催予定です。場所がKKRホテル東京の孔雀の間で開催する予定でございますので、御出席いただける方におかれましては、お間違いのないようお願いいたします。
【杉村委員長】  ありがとうございました。
 それでは、本日の議事、用意していたものはこれで全部終わりましたので、閉会にいたしたいと思います。本日は御多忙の中御出席いただき、まことにありがとうございました。

―― 了 ――

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