日本ユネスコ国内委員会 第136回教育小委員会 議事録

1. 日時

平成30年1月29日(月曜日)10時00分~12時00分

2. 場所

文部科学省国際課応接室(12階)

3. 出席者

(委員)
及川幸彦、翁百合、萱島信子、古賀信行、杉村美紀、道傳愛子、日比谷潤子、吉田和浩〔敬称略〕

(ユネスコ・バンコク事務所)
林川眞紀ユネスコ・バンコク事務所所長代理、諸橋淳ユネスコ・バンコク事務所所長室長

(説明者)
堀尾多香文部科学省高等教育局高等教育企画課国際企画室室長補佐

(事務局)
川端和明日本ユネスコ国内委員会事務総長(文部科学省国際統括官)、池原充洋日本ユネスコ国内委員会副事務総長(文部科学省文部科学戦略官)、小林洋介日本ユネスコ国内委員会事務次長(文部科学省国際統括官付国際戦略企画官)、その他関係官

4. 議事


 本委員会の冒頭は人事案件の審議となるため、日本ユネスコ国内委員会の会議の公開手続第1項に基づき、非公開とした。

(以下、規定により非公開)

【杉村委員長】
 それでは、人事案件が終了いたしましたので、ここからは傍聴の方にもお入りいただき、審議の方に入らせていただきたく思います。では、改めまして、本日はお忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。最初に、川端国際統括官の方から一言御挨拶を頂戴できれば幸いでございます。川端統括官、どうぞよろしくお願いいたします。

【川端国際統括官】
 おはようございます。国際統括官の川端です。この136回を迎えます小委員会の開催に際しまして、御挨拶を申し上げます。
 皆様方、新任の方も含めまして、日頃御協力を頂きまして感謝しております。本日は、御多忙の中、また、非常に寒い中、御参集いただきまして、ありがとうございます。最近のユネスコ関係の動きとしましては、昨年11月に2年に1度開催されますユネスコ総会がございまして、林文部科学大臣と一緒に、私も随行で出席してまいりました。
 総会では、大臣から一般政策演説を行いました。アズレー氏というフランスの方が、新しい事務局長に就任されましたので、ボコバ前事務局長、アズレー新事務局長、その他関係の幹部等々と会談をしてまいりました。
 その際、ユネスコは様々な政治的な課題を今抱えているところですが、それとは別にSDGsを積極的に推進していきましょうと、そのために、アズレー新体制を日本政府としてもしっかり支えていくということで、会談が行われたところです。
 それから、こちらに関係の深いESDですが、これもSDGs全体の達成に貢献するものとして、私どもとしても引き続き最大限努力をしてまいります。SDGsについては、安倍政権も非常に熱心に、積極的に取り組んでおりまして、ジャパンSDGsアワードというのが昨年設けられ、第1回の表彰がございました。その中でも文部科学省の関係では、校長先生が非常に熱心な八名川小学校、それから岡山大学、北九州市などの団体が特別賞でありますSDGsパートナーシップ賞を授与され、官邸で表彰式がございました。こういったことも、今後の励みになると思います。
 本日は、ユネスコのバンコク事務所から、林川所長代理と、諸橋所長室長にお越しいただいております。御案内のとおり、バンコク事務所というのは、アジア太平洋地域の教育関係事業の統括部署です。文部科学省としても、長年教育に関する信託基金を拠出しまして、識字教育や公民館を活用した教育、SDGsの普及の支援を実施しました。
 今回、SDGsというのは非常に重要な流れになっていますので、来年度の予算要求につきましても、このSDGsを達成するという観点からの教育分野の予算要求を重点的に行ったところです。
 本日は、これまでの信託基金の実績や、アズレー新事務局長の就任など、ユネスコをめぐる新たな動向を総合的に踏まえて、この日本の信託基金を通じて、特にアジア太平洋地域の教育の質の向上をどうやって実現していくかということについて、先生方の忌たんのない御意見を頂戴できればと思っております。
 今年も、我々も鋭意取り組んでまいる所存ですので、委員の方々におかれましても、一層の御支援と御協力を賜りたいと思っております。本年もよろしくお願い申し上げます。

【杉村委員長】
 川端統括官、ありがとうございました。
 ただいま、統括官からも御案内がございましたとおり、本日は議題の2の方に関連いたしまして、ユネスコ・バンコク事務所より、林川所長代理と諸橋所長室長に御遠路、御出席を頂いております。ありがとうございます。お二人には、後ほど、ユネスコ・バンコク事務所についての御発表を頂けると伺っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、続きまして、本日の会議の配付資料につきまして、事務局より説明をお願いいたします。

【鈴木国際統括官補佐】
 配付資料、議事次第のとおりとなってございます。一つ一つ確認はいたしませんが、もしも議題のときに落丁等あるようでしたら、事務局にお知らせください。以上です。

【杉村委員長】
 ありがとうございます。
 それでは、議題1、ユネスコの教育関係事業について(報告)の方に移らせていただきます。まず、ESD・ユネスコスクールについて、事務局から報告をお願い申し上げます。

【鈴木国際統括官補佐】
 資料1-1の方から順番に御説明をさせてください。まず、資料1-1に、29年度、今年度に文部科学省がESD関連で実施いたしました事業を一覧にしてございます。ですが、まず何よりも、前回の教育小委員会で御議論いただいて、御意見を頂きました、ESDを推進している実践者の皆様向けのメッセージをまとめたところでございます。教育小委員会メッセージとして9月8日に開催されましたユネスコ国内委員会総会に御報告をさせていただき、その後、ホームページで公開をしており、以後様々な機会に、ESDの実践者の方に向けて、御説明する際の資料となってございます。
 資料1-1、1枚目をおめくりいただいて、ユネスコスクールの全国大会についてでございます。今年度の全国大会は、12月2日に大牟田市で開催いたしました。通常の開催の中ではこれまでで最も多い人数の912名の参加を得て、実施いたしました。こちらにつきましては後ほど、また説明を申し上げます。
 それから、1枚めくっていただきまして、ESD日本ユース・コンファレンスにつきまして、今年度も9月23日から24日に開催いたしました。ユースという、所属が多様であり、グループづくりが難しい皆様のESD活動に関するネットワーキングというものを図ろうというコンファレンスでございます。ネットワーキングを図り、ユースの皆様が自主的な活動につながるようにということで、実施をしております。このユース・コンファレンスも、この会議だけを実施しておしまいではなく、フォローアップ活動なども踏まえて、年度を通じて活動していただいているところでございます。
 それから、資料の次のページになりますけれども、ユネスコ/日本ESD賞につきましては、これはユネスコに置かれておりますESDに関する賞でございます。加盟国からは最大で3件の推薦ができますが、前回会議で御報告をいたしましたように、日本からはアートマイル、北九州市の2件を推薦いたしました。一昨年には岡山市が受賞しております。今回は、受賞団体がこちらの資料の5番にありますとおり確定いたしまして、6番にありますとおり、ユネスコ総会中にサイドイベントといたしまして授賞式が行われました。
 今回の受賞者の中には、ヨルダンは民間の会社での取組ジンバブエは小学校の取組が受賞しております。イギリスの取組、これは個人のアーティストが受賞するような形になりました。多様性が増していると言われております。
 駆け足で恐縮ですが、次のページ、ユネスコスクールの現状と今後の取組についての現状をまとめた資料でございます。ユネスコスクールは、前回の会議以降に新たな加盟承認はございませんが、統廃合等がありまして、1,034校が現在登録されております。これは、引き続き世界の1万1,000校の中で最も多い数となっております。
 ユネスコスクールでは、ユネスコの理念を実現するための活動を進めていただいておりますが、最近の動きといたしましては、2の(1)にございますとおり、ユネスコ側で活動指針案、いわゆるガイドラインのようなものを策定中だと承知をしております。2番目にありますとおり、質の保証、より質の高い活動をユネスコスクールにしていただこうという観点から、これまでに加えて加盟、あるいは加盟後の活動に関する要件を少し絞っていこうというものでございます。
 我が国に関しましては、質の高い活動をしていただくためのいろいろな仕掛けを2年ほど前からやっておりますので、この新しいガイドラインが策定されましても十分に対応ができるかと思っております。
 それから、もう一枚めくっていただきましたところに、来年度のESDの関連予算案が記されております。
 それから、資料1-3を御覧いただければと思います。これは、事前に先生方にもメールでお送りさせていただいております。「ESD推進の手引」という冊子でございますけれども、こちらを平成28年度に作成しておりました。ESDに関する研修を企画したり、実施をしたりする教育委員会の担当の指導主事の皆様、あるいは学校の管理職の皆様を対象としたESD推進の手引でございました。
 内容は一般的なESDの説明に加えて、グッドプラクティスですとか、ESDに関する研修プログラムのモデルなどをQ&Aや、いろいろな用語集などを交えて紹介したものでございました。今回、平成28年度に作ったものをマイナーチェンジのような形で改訂をすることを考えておりまして、御相談いたしたものでございます。
 改訂の趣旨というところを御覧くださいませ。主な点は1番と2番。何よりもSDGsがこの後に策定されまして、それとESDの関係、そして、2番に新しい学習指導要領の詳細が公開されましたので、これとESDの関係という、教育の担当者が非常に関心を持っているところについて新たに追記をしようとしている点が大きな改訂点でございます。この内容につきましては、先ほどもお話しさせていただきました、夏の委員会でおまとめいただきました小委員会メッセージの内容を踏まえたものとなっております。
 そのほか、3のユネスコスクールについてのアップデート、これはルールの改正に基づくもの。そして、4の、より実際のプロセスに近い形で順番を入れ換えるような作業をしております。大幅改訂というよりは、より良いものにしようという、現状に合った形でのマイナーチェンジをするという改訂を考えております。
 この「推進の手引」につきましては、教育小委員会の名前として出版するものではありませんけれども、幅広い御意見を頂戴できましたらと思いましたので、今回配付をさせていただきました。もしもお時間がありましたら、お持ち帰りいただいて、御覧いただいて、お気付きの点などがありましたら、こちらの今後の予定にありますとおり、2月23日目途で事務局に連絡を頂戴できましたら、反映してまいりたいと思っております。
 また、そのほかのESDに関する会議等にもお諮りしようと思っております。作りましたときに有識者委員会を開催して実施しておりますので、そちらにもお諮りする予定です。3月の初旬には最終版を完成いたしまして、4月には使っていただけるように配付をしたいと考えております。
 詳しい資料があるESDの状況は以上でございますけれども、資料1-①に戻っていただきまして、今年度の事業といたしまして、ESD推進のためのコンソーシアム、これは教育委員会や大学等が中心となって地域でESDを実施するコンソーシアムを進めていただいている事業ですが、今年度は8のコンソーシアムを補助いたしました。ちょうど金曜日に全国ESDコンソーシアム活動報告会ということで、これは初めてオープンフォーラムの形でコンソーシアムの活動を発表いただく事業を実施していたところでございます。
 その他のところにございますとおり、グローバル・アクション・プログラム、ESDに関する信託基金の拠出のほか、広報資料、ユネスコスクールのリーフレット、ユネスコスクールとESDのパンフレット等の改善等も今年度実施してきているところでございます。
 駆け足で大変恐縮ですけれども、ESDとユネスコスクールに関する今年度の事業について、御説明は以上でございます。

【杉村委員長】
 鈴木補佐、ありがとうございました。
 それでは、続きまして、もう一つ、池原戦略官の方から、全国大会についての御紹介等を頂戴できれば大変有り難く存じますが、いかがでございましょうか。

【池原文部科学戦略官】
 資料1-1の2ページ目に、昨年の12月2日に行われましたユネスコスクール全国大会の概要というのがございます。これは、第9回になるものでございますが、場所は福岡県の大牟田市の方で開催いたしました。大牟田市は「ユネスコスクールのまち大牟田」を掲げまして、平成24年からユネスコスクールについて市内の全ての小学校、中学校、特別支援学校でユネスコスクールに加盟していただいて、市長をはじめ市を挙げて、取組をしていただいているところでございます。
 1つは、この大会、先ほどもありましたけれども、900名を超える参加者に集まっていただきました。これは、世界大会が2014年に行われたときを除いて、最大の参加者が集まった全国大会になりました。また、ユネスコ国内委員会の方からは安西会長、それから、本日御出席の及川先生、それから見上前委員長に御出席いただいております。また、文部科学省の方からは、宮川文部科学大臣政務官にも御出席を頂きました。
 今回は大会の前日の金曜日に、初めてESDについての公開授業というのを行いまして、こちらについても全国から500名の参加者がございました。学校、それから学校に隣接する公民館などで、ユネスコスクールである各学校行われている取組の展示や報告会が行われ、参加者からも非常に積極的に発言がありました。大会の前にこういうふうに研究授業を行うというのは非常に成果が上がるということを、改めて認識をしたところでございます。
 また、今回の大会で、私の印象に残ったこととしては、1つは、ユネスコ本部から、今回ユネスコスクールを担当されるザビーネ課長に来日していただきまして、特別講演を行っていただきました。ユネスコ本部では、ユネスコスクールについての質の向上、それから、世界中のユネスコスクールのネットワークを構築していくということを、今目標とされておりまして、そういうようなことについて非常に将来を見据えた講演をしていただきまして、会場からもいろいろな質問が上がって意見交換ができたと考えております。
 2つ目は、大牟田市の方で、及川先生の監修で大牟田市のユネスコスクールの様々な活動とSDGsがどのように関連するかということで、こういう冊子を作られています。この中には、各学校の取組がこの17の目標にどう関連するかということも書かれています。及川先生のお話ですと、こういうユネスコスクールとSDGsの関係を詳細にまとめたものは初めての試みではないかということで、こういうことが更に全国のユネスコスクールに広がっていけば良いと思いました。これについても、また及川先生の方から御紹介いただければと思います。
 最後に、大牟田市の小学校の子供たちが、今回、非常に積極的に参加をしていただいたことが印象に残りました。前日には、参加者向けの世界遺産、明治近代遺産の炭鉱の跡地などの見学会があったんですが、そこで子供たちが日本語と英語でそれぞれ説明のプレゼンテーションを行ったり、あと全国大会が始まる最初の演目として、大牟田の方言でESDの歌というのを紹介されまして、宮川大臣政務官も極めて好印象を持たれたということがございました。私の方からは以上でございます。

【杉村委員長】
 池原戦略官、どうもありがとうございました。大変有意義な大きな大会であり、しかも子供たちも参加して公開授業も行われたすばらしい会だった様子がよく分かりました。ありがとうございます。
 それでは、ここまでの一連の御報告を受けまして、委員の先生方から御意見、御質問等ございましたら、承れればと思いますが、いかがでございましょうか。
 及川先生、お願いいたします。

【及川委員】
 意見というよりは、先ほどの池原戦略官の大牟田のユネスコスクール全国大会についての御説明に対する補足といいますか、感想です。まさしく今、御説明にあったとおりで、今回で9回目なんですけれども、全国大会が教育実践と非常にリンクして結び付いて実施された、そういう意味では画期的な大会だったと思います。
 つまり、ESDの授業実践を全国大会の中に初めて盛り込んだという、教育実践と一体となった大会というのが、1つ言えるでしょう。それから、大牟田が地域を挙げてESD、ユネスコスクールを推進しているということで、ただ単に会場を大牟田で実施したということではなくて、その地域に根差した取組をベースに、この全国大会が構築されているという、地域に根差した大会が2つ目にあると思います。
 それから、昨日も大牟田の教育長とお話ししたのですが、この全国大会を契機に地域のESDないしは教育がより活性化されたということです。全国大会が地域の教育の活性化に非常に貢献したという成果がありまして、1月の末には、「ESD・ユネスコスクール宣言」というのを大牟田で初めて、市長が読み上げる形の宣言文を作りまして、市民に、あるいは全国に公開したということがあるかと思います。
 最後に、大牟田版SDGsに関してです。これは、大牟田のこれまでの取組をベースにして、一般的なものではなくて、大牟田に特化した形で地域の取組をSDGsの観点から見つめ直して、大牟田版のSDGsを構築するということで、これは、むしろ地域に特化すればするほど、他地域にとってはとても参考になるものであるということです。国連が作るジェネラルなものはジェネラルなものとして、それを理解するのに役立ちますが、実際推進するという観点で言えば、絶対それは地域にカスタマイズしなければいけない。あるいは、地域の重点を絞らなければいけない。そういう意味では、非常に参考になるのかと思います。Education for SDGsのようなまとめ方をしていますので、是非委員の方々に御参照いただきまして、広めていただければと思います。よろしくお願いします。

【杉村委員長】
 及川先生、コメントをありがとうございます。及川先生も大変強く関わられ貢献されてきた活動であったかと思います。
 他に、御意見、あるいはコメントや御質問はいかがでございましょうか。

【川端国際統括官】
 次のページの方に、ユネスコ/日本ESD賞というのが載っています。私も大臣と一緒に出たので感想です。この右下に写真があって、右端は林大臣で、真ん中が受賞者で、左側が事務局長です。
 これは副賞として5万ドルを授与する、そういったイベントのものではありますけれども、行って見て思ったのは、これは大きなホールに大勢の人が集まっていました。この写真だとわかりづらいですが、壇上にあって、受賞者が出るごとに歓声が飛ぶなど、非常に盛り上がっているものなんです。また、受賞団体、本当にいろいろな国から応募があって、ESDの現場の取組が非常によく分かるものであったと思います。そういう意味では、費用対効果というのが非常に高い行事だという印象を持ちました。
 日本のプレゼンスを高めるという意味でも、SDGsに日本が取り組んでいるということが非常に知れ渡るというイベントであります。行く前は、簡単な表彰式をすると思っておりましたら、そうではなく、大変な行事になっているという印象を持ちました。それほど大きな予算ではないのに効果を上げている良い取組だという印象を持って、帰りました。以上です。

【杉村委員長】
 統括官、ありがとうございました。ユネスコ/日本ESD賞の表彰式についてその場の雰囲気をよくお伝えいただきまして有り難く思います。
 その他、いかがでございましょうか、御意見等ございましたらお願いいたします。

【吉田委員】
 1つ。

【杉村委員長】
 是非、吉田先生、お願いします。

【吉田委員】
 先ほど御紹介いただいたESD推進の手引につきまして、細かいところについてコメントするというよりは、事前に頂きましたので、ざっと見させていただきました。どうもありがとうございます。ESD、もう既に皆さん御存じのとおり、2014年に愛知、名古屋の国際会議でグローバル・アクション・プログラムが採択されて、その後、SDGsの採択ということで、ESDが置かれている場が大分変わってきていること。ただ、今まで実践してきたことの重要性は変わらないこと。そういうのが一目見たときに非常によく分かるようにまとめられていて、良いと思いました。
 また、SDGsの中の特にゴール4が、ほかのゴールと密接につながって相互関係を持っているというメッセージも出てきています。これは、これからのSDGsの中におけるESDの在り方として、非常に重要なメッセージが出てきているという感じもいたしました。
 今日の御説明の中で、ユネスコが今ユネスコスクールのガイドを作成中ですということがございました。別に答えに合わせて手引を変える必要はないかとは思うのですが、ユネスコがユネスコスクールとして標ぼうしようとしているものを示すガイドに、この手引がどの程度のっとる形で作られているのかどうか、あるいは、多少のすり合わせが必要なのかどうか、その辺について、もし情報がございましたら、教えていただければと思います。

【杉村委員長】
 鈴木国際統括官補佐、お願いします。

【鈴木国際統括官補佐】
 ユネスコスクールとこちらの手引につきましては、まずユネスコスクールにどうやって加盟するのかとか、どのような活動をしていくのかといったことについて、技術的な参考資料ということでのマッチングはしております。
 それから、日本では、ユネスコスクールをESDの推進拠点と位置付けて、特にESDを実施してくださいとお願いしておりますが、それは日本独特のルールでございます。それも含めて、新しいガイドラインの方では、ユネスコスクールの活動テーマとしてESD、それからグローバル・シティズンシップ教育(GCED:Global Citizenship Education)、そしてインターカルチュラルラーニングを3本柱として、活動くださいということが、新しいガイドラインには盛り込まれていく方向です。ですので、ESDの部分については、その点も合致しているという格好でございます。

【杉村委員長】
 ありがとうございます。ユネスコスクールとESDをめぐる動向を伝えていただきまして、よく分かりました。

【吉田委員】
 非常に大切な点かと思います。それと、自己矛盾するような発言で本当に恐縮ですけれども、ユネスコ/日本ESD賞を受賞された団体を見ますと、非常に多様なところから採択されていて、これもまたすばらしいと思うんです。
 教育の現場でESDというのが着実に根付いて、それが広まっているということは、先ほど及川委員からのお話の中にもありました実地とつながっているというところが一番大事だと思うんですけれども、ESDは学校教育の場での活動という限定的な捉え方が日本の中でだけ特異的に広まっているとすると、それもちょっともったいない気もしました。
 企業の活動であったり、また音楽も含めて、いろいろな文化の場もESDを促進する上で非常に重要な場となっていることが、こういうESD賞の形ではアプリシエートされている、こういうところと併せて、より広い、しかも実践につながっている、そういうところが手引の中でということではございませんけれども、国内の中でより広がっていけばすばらしいなと感じた次第です。

【杉村委員長】
 本当に大切な御視点をまた付け加えていただいたように思います。学校や地域、社会において日本で築かれてきたESDの実績を、もう少し幅広くSDGsの中で捉え直すことの重要性が、大きな期待を持って語られていると思いました。
 それでは、まだほかに御意見はあるかと思うのですが、次の議事の方に進めさせていただき、また後半の方で、ユネスコ・バンコク事務所の活動などの報告も受けながら、今後の日本の取組というのも是非適宜補足していただければと思います。
 それでは次に、高等教育関係事業について御説明いただければと思います。高等教育の資格の承認に関するアジア太平洋地域条約等についてということでございます。本件は、日本がちょうど昨年12月にこれを締結したところでございます。今日は、堀尾多香 高等教育局高等教育企画課国際企画室室長補佐においでいただいておりますので、冒頭御説明いただき、その後、また皆様のお話を伺えればと思います。
 堀尾様、どうぞよろしくお願いいたします。

【堀尾国際企画室室長補佐】
 ありがとうございます。高等教育企画課の堀尾と申します。資料2-1を御覧ください。高等教育の資格の承認に関するアジア太平洋地域規約というものでございます。高等教育における学生の流動性の高まりを受けて、ユネスコにおいて、質の保証や資格の相互承認というものが議論されてきました。それらについては各地域でかなり特性があるということで、地域規約という形で、各地域でこういった規約が作られています。
 アジア太平洋地域につきましては、1983年に、前身の規約ができたのですけれども、そこには職業資格を含む相互承認というところがございましたので、日本としては締結しておりませんでした。そこを、2011年に、ちょうどユネスコの方でもこういった規約の改正という動きがございましたので、東京において国際会議を開き、こちらの新しい改定版という形で、今度は高等教育の資格の承認に関するアジア太平洋地域規約、通称東京規約と呼ばれておりますが、こちらの方が採択されました。
 こちらは、資料に書いてありますとおり、締約国間で高等教育の資格の相互承認を行うことにより、学生及び学者の移動を容易にし、アジア太平洋地域における高等教育の質を改善するということが目的となっております。
 主な内容としましては、2点目にございますとおり、高等教育課程を受講するための要件、入学資格、日本で言うと受験の申込みがあったら、受験票を発行するというところや、部分的な就学、つまり単位等のこと、また、高等教育の資格(学位等)で、例えば日本で取った学士が、今度オーストラリアの大学院に行きたいときに、日本の学士をきちんと認めてもらうと。また、逆のパターンもございます。そういったことをきちんと、ルールを決めて締約国間で相互承認を促進していきましょうというものでございます。
 そのほか、国内情報センターを設立し、特に国内の高等教育に関する情報をきちんと発信していくということが盛り込まれてございます。
 こちらの方につきまして、日本も少し時間がかかったんですけれども、国内での関係省庁等や関係機関との調整も終わりまして、昨年の12月6日にユネスコ本部の方に加入書を寄託いたしまして、正式に日本もこの締約国に入りました。この規約は5か国が締結したら発効ということになっております。日本が入った後に、韓国も昨年12月19日に入りまして、オーストラリア、中国、ニュージーランド、そして日本、韓国の5か国がそろいましたので、今年の2月1日にこの規約が発効する予定になってございます。
 こちらの規約が発効しましたら、通知を出すとともに、これを実際に各高等教育機関、大学、高専、短大や専門学校等の方がどうやって実施していけばいいかということのガイドラインを、今作っておりますので、そのガイドラインができましたら、改めて各機関に通知を出させていただく予定になっております。以上でございます。

【杉村委員長】
 堀尾様、ありがとうございました。御参加いただき、御説明いただき、大変ありがとうございました。まさにアジア太平洋の高等教育のモビリティーを進める上では、大変大きな一歩であると思います。
 オーストラリア、ニュージーランド、中国が入っていたのは知っていたのですが、日本が入り、発効に向けあともう一か国と思っていましたら、今般韓国も入り、締約国がそろったということで、とても大事な時に、こうして本日、御説明いただきましたことを大変有り難く思います。ありがとうございます。
 先ほどまでのESD関連とまた少し違った視点ではございますが、ユネスコが進めてきた高等教育の資格の認証に関する条約には、世界6地域で同じような地域条約というのがございます。その中の1つが整ったということになると思います。ありがとうございました。
 これについても御意見があるかと思いますが、今日はもう一つ議題を用意させていただいています、ユニツイン・ユネスコチェア事業、これも高等教育に関係いたしますので、これにつきまして、まず鈴木様の方から御説明いただき、その後でまた皆様の御意見、御質問を受けたいと思います。

【鈴木国際統括官補佐】
 資料2-2でございます。ユニツインとユネスコチェアの現状について、簡単に御報告申し上げます。ユニツイン/ユネスコチェアは高等教育分野でのユネスコのプログラムでございます。ユネスコの関係の深い分野での活動に、講座でしたらユネスコチェアという名前、そして国際協働プログラムでしたらユニツインという名前を付けて活動いただけるものになってございます。ユネスコの名前は使えるが、ユネスコからの財政支援は行われないものですが、非常にビジビリティを高めるということで、喜ばれております。
 めくっていただいたところに、我が国のユニツインは2つのチーム、そしてユネスコチェアは4つの大学で取り組まれていたのですが、29年度に新しく4つの大学がユネスコチェアに申請をしておりました。神戸大学、京都大学、島根大学、この3つは全て防災の関係でございます。それぞれジェンダーですとか、地滑りですとか、特色のあるプログラムで申請をしておりました。それから、長岡技術科学大学が長岡技大が推進する工学を技学と呼んでいるんですが、これとSDGsの関連ということでプログラムを申請しておりました。
 これが4つともユネスコの方で認められておりまして、現在、設置の手続をしているところでございます。ユネスコチェア、ユニツインの状況は以上でございます。

【杉村委員長】
 ありがとうございました。これにつきましても、また日本の高等教育機関の方でいろいろと取組をしていただいているかと思います。
 それでは、高等教育関係事業について、ただいまお話のありました地域条約、並びにユニツイン/ユネスコチェアのことにつきまして、皆様の方から御意見や、何かコメントを頂ければと思いますが、いかがでございましょうか。

【古賀委員】
 質問いたしてもよろしいでしょうか。

【杉村委員長】
 是非、古賀先生、お願いいたします。

【古賀委員】
 高等教育の資格承認に関する規約は、世界の6つの地域ごとに採択されているのでしょうか。

【堀尾国際企画室室長補佐】
 そうですね、ヨーロッパ、アフリカと、あと地中海、南米、アラブ、アジア太平洋と、6つで作られています。

【古賀委員】
 例えばヨーロッパとアジアなど、異なる地域間でどのように相互承認されているのでしょうか。

【堀尾国際企画室室長補佐】
 こちらのアジア太平洋地域規約の方に、ヨーロッパの国が入ることも可能ですし、また、逆に、この規約がないからといってできないわけではなく、日本の大学も個々の大学同士では当然やっております。また、これまでも、日本として、外国人だから日本人と差別をするということはしておらず、海外からの留学生の受入れに対して法制度を整えてきております。
 そういった意味では、現在対応していることと何か大きく変わるというわけではないのですが、日本の学生又は日本に来た留学生が海外に行ったときに不利益を受けないようにというような意味からも、こういった国際規約にきちんと入り、また日本としてもこういった国際的な枠組みでの質保証や、学生の流動性をきちんと高めていくという動きに積極的に入ったということでございます。

【古賀委員】
 今、お伺いした本規約の採択の趣旨を踏まえれば、将来的には世界の様々な国や地域と相互承認を行う可能性があるということですね。

【堀尾国際企画室室長補佐】
 そうですね。

【古賀委員】
 世界的に同一の規約の下、相互承認を行うことが理想なのでしょうか。

【堀尾国際企画室室長補佐】
 理想です。ただ、やはり、規約という形になると、国際約束なので余りきつく縛ると柔軟性がなくなってしまうので、大学の方で最終的にきちんと質を見た上で、良い学生が入れるように、また、基準に達していない学生をきちんと断れるような、そういった柔軟性も保つことが必要なので、そのあたりのバランスをとりながらといったところです。
 一方で、ユネスコ本部では、世界規約という動きもございますので、そちらの方も引き続き注視をしながら対応しているところです。

【杉村委員長】
 ありがとうございます。ユネスコには、国境を越える高等教育の質保証に関するガイドラインというのが、別にございます。

【堀尾国際企画室室長補佐】
 そうですね。

【杉村委員長】
 そうしたいろいろなスキームができて、皆さんが共通の参照指標として、縛られないけれども参照できるものができていくというのは、高等教育の国際化を進める上でも目安が立っていくように思います。

【堀尾国際企画室室長補佐】
 先生が言われたように、地域だけではとどまらない、地域を超えた交流がかなり活発になってきているということも、そういった世界規約の議論が出てきた背景にあるかと思っております。

【古賀委員】
「地域」というカテゴリーで区切って相互承認の規約を発効しようとすると、なかなか合意形成できないということもあるように思いますが、いかがでしょうか。

【堀尾国際企画室室長補佐】
 そうですね。とはいえ、それが世界になると、世界規約がどこまで拘束性を持つかというところが、やっぱり議論になってくるのかと思いますので、やはり余りきつい拘束のあるものだと、地域でさえもなかなか合意がとれないものが、世界になると更に合意がとれなくなったり、あと実際に機能しないと意味がないので、そこが我が国の高等教育機関にとって不利にならないように、きちんと良い学生、ちゃんと質を伴った学生交流が推進されるような形での枠組み作りができるように、今後もこういった議論には参加していきたいと思っているところです。

【杉村委員長】
 ありがとうございます。一方、このユネスコチェア/ユニツインの方にも日本の大学が積極的に今、手を挙げてくださっていますので、いい活動につながっていくと思います。
 こちらから振って大変恐縮ですが、吉田先生が所属しておられる広島大学はこのユニツインに随分関わってくださっています。先生、コメント等ございましたら、いかがでございましょうか。

【吉田委員】
 先ほどの御説明にもありましたように、ユニツイン/ユネスコチェアになれば、お金が出るわけではないと。私どもの大学の場合は、広島大学が事務局的には中心になっていますけれども、こちらのユニツインに参画している各大学が非常に自主性、自立心を持って活動に取り組むということをずっと標ぼうして、活動を続けてきております。
 それは、実態がそのとおりには必ずしもならない初期段階から、ずっと長い間活動を続けてきている、そのことによって、それがだんだんと実現化してきています。アジア、アフリカが途上国で、日本が先進国だから日本におんぶに抱っこという関係ではなくて、各地域の中から、各大学の中からイニシアチブをとる。そして、予算がない中でも、それぞれ予算獲得に向けてプロポーザル作りをする、あるいは研究成果を発表していく力をつけるような、相互の勉強会もするとか。
 そういうような活動をさせていただく上で、やはりユネスコにも認められているというのは、心情的には非常にサポートになっているというところはございます。それから、それがまた発信力を強くしていく上でも有効になっていきます。自分たちのモチベーションを高めながら対外的な発信の機会を作りやすくなる、あるいはまた、資金獲得の際にもアピールしやすくなる。そういう意味では、お金に直結しないまでも、非常にサポートしてくれる、そういういい仕組みだと思っております。

【杉村委員長】
 ありがとうございました。当事者の立場からの御意見も添えていただきました。他にはご意見等いかがでございましょう。

【日比谷委員】
 杉村先生、よろしいでしょうか。

【杉村委員長】
 日比谷先生、お願いします。

【日比谷委員】
 質問をしたいんですが、先ほどの御説明で、設置手続中の4校については全部設置のお見通しというお話だったんですが、これは、どのぐらいの競争率なのですか。

【鈴木国際統括官補佐】
 幾つか定まった数があるところに応募するというものではなく、その是非で、善しあしで設置できるかをユネスコの方が決める、というふうになっております。
 それで、基本的にはユネスコ活動との関係というところで、その善しあしは見られているようでございます。今回、4つ申請をして、幸い4つともよく検討されているということで通ったのですが、これまでの経緯では意外と落ちています。

【日比谷委員】
 補足でよろしいですか。財政支援がないということで、予算規模が決まっている、いろいろな競争的なプロジェクトの資金というのはありますけれども、それはない袖は振れないということで、やっぱりこれは惜しいんだけれどもということで一定のところで切りますが、今の御説明だと、内容がよければたくさん大丈夫というふうに理解していいですか。

【鈴木国際統括官補佐】
 はい、私たちはこれをそういう事業だと捉えております。

【杉村委員長】
 ありがとうございます。

【吉田委員】
 追加でよろしいですか。

【杉村委員長】
 吉田先生、お願いします。

【吉田委員】
 せっかくすばらしい活動をされている内容を、例えばユネスコのバンコク事務所であったり、またパリ本部であったり、そういう関連する部署と情報共有する機会を増やすことによって、こういうユネスコチェア/ユニツインとしての可能性としての認識というのも上がってくるかと思いますので、そういう日頃からのコンタクトの仕方というのも大事だと思います。

【杉村委員長】
 ありがとうございます。そういう意味で言えば、ちょうど吉田先生の御発言の中にも、そうした活動を、ユネスコ・バンコク事務所と連結してというお話が出ましたところで、本日は、バンコクから先ほど御紹介させていただいたとおり御出席を頂いておりますので、議題2の方に移らせていただきます。
 ユネスコ・バンコク事務所のお話を伺いました後で、本日の前半の話にもつながる部分が出てくるかと思いますので、御意見、御質問を伺えればと思います。
 林川様、諸橋様、本日はありがとうございます。我が国の信託基金を通じたユネスコ・バンコク事務所における事業についてということで、議題2の方に移らせていただきます。まずは、事務局から、経緯等の御説明を鈴木様からお願いしました後に、林川様たちの方から御発表いただければと思います。
 鈴木様、よろしいでしょうか。

【鈴木国際統括官補佐】
 資料の3でございますが、まず1枚めくっていただいたところにございます、横のカラーの表を御覧いただければと思います。平成30年度、来年度の予算要求におきまして、私ども、全てのユネスコ活動がSDGsの達成に資するという観点からの要求をいたしました。
 具体的には、一番左の赤いところはユネスコを通じた活動ということで、ユネスコの信託基金、真ん中は、国内の大学等が開発協力の形で実施するユネスコ活動、一番右側が国内でのESDの実施、教育を通じてSDGsを達成する人々を育てようという事業でございます。今日テーマにさせていただきますのは、一番左、ユネスコへの信託基金を通じた事業というところで、特に上にあります、開発途上国への教育協力事業に関するところでございます。
 資料3の方にお戻りいただければと思います。そもそもこの信託基金はユネスコを通じた国際的な教育協力を担ってきた枠組みでございます。信託基金は、ユネスコへの義務的な分担金とは別に、各国がユネスコを通じて行いたい事業を実施するための経費です。ユネスコ・バンコク事務所への日本の信託基金は、昭和45年から長い期間にわたり実施されてきております。これまで万人のための教育、主に識字教育ですとか、初等中等教育の改善といったようなことに、この信託基金を通じた事業が実施されておりまして、日本の協力でアジア太平洋地域の教育の質の向上、アクセスの向上といったところに貢献していく事業でございました。
 平成30年度、来年度につきましては、SDGsの策定を受けて、それに資する事業、教育協力を更に進めていきましょうということで、具体的な額を申し上げますと、これまで長い間3,000万円という枠だったものを、6,000万円に増額して拠出をできる予定となってございます。
 そして、せっかく増額されますので、今日、是非、教育小委員会の委員の先生方からも、今後の活用について御意見を頂戴できればということで、バンコク事務所からもお越しいただきまして議題の設定をさせていただきました。具体的には、この資料3の、おめくりいただいて4番のところにあるのが、今回の議論の中心となろうかと思います。
 現在もユネスコ・バンコク事務所とは、この信託基金の活用につきましていろいろと検討しております。基本的な柱としては、1つは、やっぱりSDGsの教育の目標をアジア太平洋地域で達成することへ貢献する事業、そして、もう一つが、いろいろな事業があると思いますけれども、全ての事業に持続可能な社会づくりの担い手育成という観点を導入してやっていただきたいということを、お話しさせていただいておりました。
 これに加えて、ESDですとか、公民館を通じた事業などの日本の知見を生かして、現在進めている重点的な分野に加えて、新しい事務局長が所信表明演説等で、多様性の重要性などを大変強調されておられますけれども、そういった事務局長の着任も踏まえて、日本のイニシアチブで、日本の得意分野を生かして、更に貢献していくべき分野を、是非こちらでの議論なども踏まえて特定していきたいという趣旨での議題設定でございます。
 例として、PVE(Preventing Violent Extremism through Education)を挙げさせていただきました。これは、教育を通じて暴力的過激主義を防ごうという取組でございますが、そういうものが1つの例になるかなと、事務局等では考えて、こちらに例示をさせていただきました。今日は、バンコク事務所からの御発表と先生方の御意見を伺って、また引き続き相談してまいれればと思っております。
 これが議題設定の意図でございます。

【杉村委員長】
 鈴木様、どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、本日、本信託基金の拠出先であるユネスコ・バンコク事務所から林川様と諸橋様、来ていただいておりますので、お二人から、バンコク事務所の概要と教育関係事業、そしてユネスコ及びバンコク事務所における優先事項等々、ニーズについて御説明いただきます。
 それを受けて、委員の先生方から、信託基金はこのように進めていったらよいのではないかという御意見や御質問を伺えればと思います。
 では、どうぞよろしくお願い申し上げます。

【林川所長代理】
 皆様、おはようございます。ユネスコ・バンコク事務所で、今は所長代理をしております、林川眞紀と申します。初めまして。このたびは、教育小委員会にお招きいただき、ありがとうございます。
 今日は、諸橋淳、所長室の室長と一緒に来ております。私自身のユネスコ勤務は25年ぐらいになりますが、小委員会に参加させていただくのは今回が実は初めてで、非常に良い機会だと思っております。ありがとうございます。
 今回は、ユネスコ・バンコク事務所の仕事、特に信託基金の下で行わせていただいています事業の御報告と、それから、今後の地域事務所としての動向を御紹介させていただければと思います。発表はパワーポイントで簡単にまとめております。もう一つ資料が入っていたと思うんですけれども、諸橋と2人で分けて御報告させていただきます。
 ユネスコ・バンコク事務所の概要について、初めての方もいらっしゃるかもしれないと思いましたので、ざっとお話しして、その次に教育プログラム、バンコク事務所としての優先分野、またビジビリティ、それに特に信託基金を通してのパートナーシップについてお話しします。
 ユネスコ・バンコク事務所というのは、実は非常に歴史は長く、多分一番古い地域事務所ではないかと思います。1961年からバンコクの現在の所在地にありまして、アジア太平洋地域教育事務所としてそもそも設立されました。現在は、全てのユネスコのプログラム分野をカバーしていますが、やはり教育局として立ち上がったので、教育のプログラムが一番大きいです。
 アジア太平洋地域事務所として、一番西はイランから、一番東は太平洋の小さな島まで全部で46の加盟国・2準加盟地域(マカオ、トケラウ)をカバーしております。バンコク事務所としては、その後いろいろと組織変遷などあり、タイの近隣諸国をカバーしたクラスターオフィスという役割もありまして、カンボジア、ラオス、ミャンマー、シンガポール、そしてタイ、ベトナムの統括拠点ともなっております。
 ただし、カンボジアとベトナムには国の事務所もありますので、バンコク事務所から国レベルの事業を行うために、直接出掛けていくことは余りありません。地域事務所、クラスターオフィスという2つの役割を基に、この6か国を含む48か国とともに事業を展開しております。
 現在、バンコク事務所の職員は80名ほどで、約80~100名を行ったり来たりしております。この幅はコンサルタントやインターンの方等の出入りがあるためです。バンコク事務所は、日本からの大学院生を含む方たちのインターンシップやボランティアを定期的に受け入れておりまして、非常に活発なオフィスです。80名のうち、私たち2人を含め、現在8名が日本人職員です。主に邦人職員がカバーしている分野としては、私が所長代理兼インクルーシブエデュケーションというセクションの課長、諸橋が所長室の室長、他に情報コミュニケーション、ノンフォーマルエデュケーション、ESD担当、広報室、信託基金担当官等がおります。
 バンコク事務所は昔から日本人職員が、常に5、6人はいました。今も、8名というのは決して多い方ではなくて、一時は10名以上いたときもあり、インターンや、コンサルタント、臨時の方を入れると、比較的多く日本人職員がいる事務所の1つです。
 次に教育についてのお話にフォーカスさせていただきます。バンコク事務所は、先ほど申し上げましたように、もともと地域教育局という形で設置されたので、やはり教育の事業が一番大きいです。そして、同じアジア地域に位置するということもあり、日本との関係は非常に密で、一番長い協力関係を持っていると思います。
 現在、プログラム新年度に入りましたので、この2年間からはかなりSDGsに沿ったプログラム作りをしており、教育セクターは全ての分野をカバーしております。ユネスコは、SDG4のリードエージェンシーという形で、ほかの国連の機関と協働体制をとっており、地域においてもユネスコ・バンコク事務所がリードエージェンシーとして、アジア太平洋地域のコーディネーションを統括しております。
 分野としては、基礎教育、幼児教育、多言語教育、インクルーシブエデュケーション、それからジェンダー、女子教育、教育計画と政策、教育行政、教育財政も少々、といった様々な分野をカバーしています。また、教育の質と評価に関しても、教育評価の方にかなり力を入れております。アジア太平洋地域事務所としては、学習考査・評価に関するネットワークを持っていまして、各国地域と協力して、いかに国の中での学習評価の体制を作るかですとか、結果、評価の使い方について取り組んでいます。
 アジア太平洋は、特に東南アジアはOECDなどがやっているPISAといった、国際的な考査、プロジェクトに非常に関心が高まっていますが、そればかりではなく、もっときちんとした評価ができる活動をしていきましょうということを推進しています。そのほか、高等教育に関しては、先ほどの東京規約が実施されることになりまして、非常に喜んでおります。ありがとうございました。
 他には、教員教育、教員開発にも力を入れています。教員というのは、全ての分野に関わりますので、幼児教育から高等教育まで、全てのレベルにおいて教員の教育・開発に関する仕事をしております。また、ICT教育に関しては、ユネスコ・バンコク事務所の旗艦事業の一つで、ICTを1つの媒体として、どうやって教育の質の向上・拡充をしていくかということに集中しております。
 識字と生涯学習の分野は一番歴史が長く、この分野が恐らく文部科学省の信託基金と一番つながりも深いところです。最初にできた、当時の文部省の信託基金で支援していただいたのが識字の分野で、ノンフォーマル教育、そして公民館活動などに広く携わってきました。
 ESDとGCEDに関しては、今後かなり大きくなっていく分野かと思います。ご承知のように、ESDの方が歴史が長く、バンコク事務所もESDが採択された頃から事業を実施しております。
 TVET、職業訓練。これは、昔は強かったのですが、ここ数年少し落ち目になっています。しかし、近年の動向からして、非常にニーズが高まっております。今後この分野も非常に期待されるのではないかと思っております。
 また、もう一つ、バンコク事務所でホストしているのが、UNESCO Institute for Statistics (UIS)・ユネスコ統計局です。本部はカナダのモントリオールにあります。バンコク事務所のほかに、太平洋、サモアの地域事務所と、インドのデリーにありまして、この2か所にもユネスコ統計局の担当官がおります。この3拠点を使ってアジア太平洋地域の教育統計に関するサポートをしております。
 この次のスライドで、ざっと今の39C/5、ユネスコの2か年の予算について記載しています。ユネスコのプログラムは御存じのとおり、2年ごとに活動指針が出まして、今年度はもちろんSDGsに沿った予算計画やプログラム作りをしております。こちらのExpected Results (ER)1からER10が、要するに、結果をどのように出していくかという分野です。この分野とSDGsのターゲットがどのようにリンクしているかという、少々複雑な図なんですが、御覧になっていただければと思います。ユネスコのプログラムはなるべく今年度中に全てのターゲットをしっかりカバーしようとしております。
 この女性が、新しい事務局長になりましたオードレ・アズレー氏です。フランス人で、元フランスの文化相でして、まだ大変若い方です。実は、私たちもまだ直接会ったことはなく、おそらく地域事務所にも拠点視察に回ってくると思いますので、そのうち会えることを期待しております。
 次は、ユネスコ・バンコク事務所のこれまでの信託基金との関わりです。長い歴史がありまして、1970年に開始しました。事務所が61年に開設されていますので、約10年ほどで日本との協力が始まりました。一番古いのが識字教育信託基金です。これは依然、APPEAL(UNESCO's Asia-Pacific Programme of Education for All)というプログラムがありまして、アジア太平洋万人のための教育プログラム、これが2013年ぐらいまでずっと続いております。内部の組織編成のため、現在APPEALという表現は使用していません。
 私、実はバンコク事務所に今のポジションには2年前に着任しましたが、その前にも6年ほどおりまして、そのときにはまだAPPEALというセクションがありました。APPEALセクションとAPEID(Asia-Pacific Programme of Educational Innovation for Development)セクション。APEIDも非常に日本になじみのあるプログラムだったと思います。そのころは、信託基金はほとんどがAPPEALのプログラムにフォーカスされていました。私自身も、女子教育や農村地域の女性の識字プロジェクト等を担当しておりました。これが、信託基金としては2001年ぐらいまででした。
 また当時の文部省の方々といろいろと協議した上で、新しい信託基金の名称ができるのですが、その時々の潮流やニーズに対応するかたちで信託基金を拠出いただいており、CLC識字センター教育基金や、APEID、巡回講師団信託基金(MTT:Mobile Training Team Program)、また、ICT教育信託基金が2004年ぐらいから始まり、エイズ教育信託基金がその後追加されました。このエイズ関連事業は、現在は、UNAIDS(国連合同エイズ計画)等の協力でグローバルファンドの下、バンコク事務所でもプログラム活動を続けております。近年、エイズに関するエピデミックがアジア地域では非常に減少していて、功績が上がっているので、最近はエイズ教育というよりは、保健教育に力を入れております。
 万人のための教育(EFA)信託基金に関しては、APPEALがだんだん拡大していって、ほかの教育信託基金と統合しながらしばらく続いておりました。その後、もう少し柔軟に対象範囲を拡大しようと、現在の「アジア太平洋地域教育協力信託基金」という名称になったという変遷があります。しかし、フォーカスとしては、長く続いているCLC、公民館運営、識字教育といったノンフォーマルエデュケーション、インクルーシブエデュケーション、女子教育、教員、ICT等を中心に事業を実施してきています。
 その後、世界の教育潮流等も反映しながら、新たな実施案件がここ数年の間に広まってきました。ここから、諸橋にかわります。

【諸橋所長室長】
 ありがとうございます。初めまして、諸橋淳と申します。私も、ユネスコにJPO(Junior Professional Officer)として着任したのが、もう18年前ですが、ユネスコ・バンコクオフィスには1年3か月前から赴任しました。その前はカリブ海のハイチに2年おりまして、その前は15年ほどずっと本部に勤めておりました。本部のやり方、そしてナショナルオフィスのやり方、今は新しくこの地域事務所という、また違ったスタンスのお仕事をさせていただいております。
 発表に戻らせていただきます。現在実施中の事業について、及び今後の展望について発表いたします。現在、JFITの支援の下で実際に走らせているプロジェクトが2件ございます。1点目が先ほど林川さんからも説明がありましたICTに関するもので、教育の中でICTをどのように活用していくのかということを、まずポリシーの観点から見るという作業がまだまだ必要です。そのサポートを主に南アジアで行う事業に、JFITから御支援を頂いてます。
 もう一つが、これは林川さんが直接担当しております、SDG4のアジア太平洋地域調整で、EFAの地域調整事業も日本から長くサポートしていただいていまして、新しくSDG4という枠組みに変わった中でも引き続きサポートを頂いております。
 このSDG4の枠組みの下で、地域レベルで、アジア太平洋地域のプラットフォームを作っています。46の加盟国・2準加盟地域があります中で、主に教育省が参加し、SDG4をどのように進めていくかということを、バンコク事務所としてサポートしていくプラットフォーム作りと、そのフォローアップ事業です。
 2番、3番、4番は、事業開始に向け現在協議中の新規案件です。数週間以内にはファイナライズされることを期待している3案件で、主にESDをアジア太平洋地域でも、もっとよく見える形でいろいろなレベルでやっていきましょうという協議の中で生まれてきたのが、この2、3、4のプロジェクトです。
 2番に関しては、識字教育、生涯教育に関するもので、今オンラインでMOOCs、それを使った手法というものがアジアでも大きくなっておりまして、そこにどういうふうにESD的なものを組み込めるのかという観点で計画している案件です。これは、日本、タイ等で蓄積された既存の専門性を活用しつつ実施し、アジア太平洋全域に利益が戻るように考えております。
 3番は、先ほどお話があった、地域にカスタマイズした形のESDというモデルを、日本ではいろいろな面白いケースがあり、私たちもいろいろ勉強させていただいているところなんですが、こうした取組を主にラオス、カンボジアでもやってみようかということで、計画しております。
 最後が、Happy Schools Projectというものです。ユネスコの仕事の中で、政策レベルでカリキュラムの話をしたり、教職員の教育の中の話をしたりということはありますが、実際に学びの場や環境が、子供たちにとってどういうふうに受けとめられていて、それが学びにどういうふうにインパクトを与えているのかということが、実は余りきちんと捉えられていないことも多いです。それを、バンコク事務所でリサーチし、いろいろな指針が出てきています。いじめがなかったり、子供たちが自分のやりたいことをどういう形で自分の、学習者を中心にしたような教授法等、いろいろなアイテムがありますが、そうしたものを実際に、学校の先生たちにホールスクールアプローチとして具体的にやってもらいたいという方向性の新案件です。この案件の対象国を議論中ですが、カンボジア、タイ、ラオスも我々のクラスターオフィスとして担当している国なので、そのあたりを考えております。
 これからの優先分野の提案ということですが、これは去年の夏にJFITの年次会合でもお話をさせていただきましたが、林川の方からも御説明を申し上げた、今までのJFITで支援いただいてきた分野で、識字、生涯学習、基礎教育、教員に関する分野であったり、幼児教育も非常に大事な分野で、これまでサポートを頂いていまして、ICTもここに入ってきます。これらも、広く分野として押さえつつ、中身のテーマの話をさせていただくと、ユネスコのソフトパワービジョンといって、これは前事務局長がよく使っていた表現ですが、世の中を変えていくためにハードパワーという、お金、兵力、軍事といったものではなくて、価値観や文化といったものを使って、人間の考え方とか、在り方というものを変えようというのが、ユネスコの使命です。こうしたものを中心に、上の2つに挙げたようなところにも入れていけないか。そんなことを、中でいろいろと今ディスカッションをしているところです。
 もちろん、SDG4の地域調整は当然続けていきますが、そのソフトパワーの中でちょっとお話しさせていただきたいのが、SDG4の中で7番目のターゲットというものがあります。これが、まさにユネスコの言っているソフトパワービジョンを反映しているもので、そこに文化の多様性、日本が力を入れているESD、またGCED、インクルーシブ教育、防災、いろいろなもの、本当に幅広いテーマが入ってきます。我々から見ますと、日本が実践していらっしゃる日本式のESDというものは、SDG 4.7を非常に包括した形で実践しておられて、我々としても非常に面白いケースで、ほかの加盟国にも共有いただけたらなと思っています。
 もう一つ付け加えさせていただくと、4.7というのは何なのかと。教育というものは、今まで認知的な知識の部分にすごく重点が置かれていました。しかし、ユネスコは今3本柱で、認知に加え、社会、情動といった分野、また具体的に態度とか行動で示せるという分野、3本のスキル作りを包括的に実践するということを進めております。日本でやっておられる取組は、まさにそういったものを、先ほども申しましたように、非常にグローバルに、インクルーシブに捉えていらっしゃるので、我々としても、この日本の御経験をこれからどんどん外に発信されていかれれば、大変心強いと感じております。
 次に、ビジビリティです。ユネスコ自体もそうですが、バンコク事務所としましても、いろいろなことをやってそうだけれども、実は何をやっているかよく分からない、あるいは日本ですと、やはり世界遺産といった、ユネスコの一部の事業が非常に認知度が高い現状があります。SDGsの複雑な絡みに対して、教育があり、文化があり、科学があり、コミュニケーションもありという、マルチステークホルダーの要素が重要である仕事を、もっと分かりやすい形で伝えていかなければならないのではないかという反省を踏まえ、ビジビリティ向上の取組を進めています。
 JFITに関しても、今後、バンコク事務所が主催します会議、ワークショップ、セミナー等に文部科学省の方々、また日本の専門家の方々に御出席いただければ、そこでまたディスカッションのできる場になるかなと期待しております。
 吉田先生は特にいろいろな会議に御参加いただくだけではなく、積極的にガイダンスもしてくださって、非常に有り難いサポートを頂いております。そうした日本の大学教育研究機関等との連携というものを、我々が実際にプロジェクトとして動いていく中で深めていければ幸いです。
 3点目も同じようなラインですが、実際にプロジェクトで協力するということがベストかもしれません。資金の問題などもありますが、先ほど申しましたように、日本の培われたいろいろな専門性を、ユネスコの行っている事業にできる限り参加していただくことで、いろいろ御助言を頂くということも期待しております。
 最後に、日本のコンテクストの中では、これが一番ビジビリティが上がるのではないかと我々は考えておりますが、日本国内でユネスコ事業に関連するいろいろな分野の会議を開催・共催する中で、日本の学校関係の方であるとかに参加いただければと思っています。パリ本部とは共催等されていると思いますが、バンコク事務所との会議共催等も御検討いただければと考えております。
 次に、パートナーシップに関してです。現在、ユネスコ本体の通常予算が、年々規模が小さくなっていっているという実態があります。それを踏まえて、もっと資金を自分たちで活発に探していかなければということで、各地域事務所が戦略づくりを行っています。
 語弊があるかもしれませんが、いろいろな形のパートナーシップでユネスコというものをどんどん使っていただく、資金面の支援だけではなくて、協働できることが具体的に作っていければ、それも、ある意味のResource mobilizationであると考えております。そこには、財政貢献、それから人的資源が一番大事だと思いますが、そうした意味でも、日本にありますいろいろな大学、研究組織、また企業であったり、いろいろなネットワークとのパートナーシップ作りをこれから進めていければ幸いです。
 これは、2018年、今年どういった会議を私どものオフィスが予定として立てているかということの一覧表です。訳が資料の中に添付されてあります。訳していただいて、ありがとうございます。1点、ESDのGAP(Global Action Programme on ESD)の第1フェーズがもうすぐ終わるということで、そのフォローアップを専門家の方、加えて、すごく大事なのは、こうしたテーマ的のものが教育政策の中にどんどん入っていかないと、サステナビリティーにつながらないだろうという1つの大きな反省がありまして、アジア太平洋だけではなく、グローバルに全ての地域、その教育省の代表の方々をお呼びして、テクニカルコンサルテーションをバンコクで7月にやろうという話をパリ本部とともに進めております。
 その際に、先ほども申し上げました、APMED、アジア太平洋におけるSDG4のフォローアップのプラットフォーム、これが今回、テーマがターゲット4.3高等教育と、4.4職業訓練、スキルです。このESDとAPMEDの2つの会議を同じ週に計画しており、どちらも日本政府にサポートを頂いています。GAPのESD会議を前半に行い、そこからいろいろな方向性が見えてくると思いますので、後半のAPMED第4回にもリンクをしていけたらいいなと考えております。
 こうしたものに日本の皆様が御参加されたいということがあれば、お知らせくだされば、私どもの方でサポートさせていただきます。
 以上になります。御清聴ありがとうございました。

【杉村委員長】
 とてもよく分かりました。ありがとうございました。
 それでは、ただいま御説明いただきました、我が国及びユネスコ・バンコク事務所の状況を踏まえながら、資料3にありますこの信託基金の活用について、皆様から御意見や御質問等あれば、承りたく思いますが、いかがでございましょうか。

【翁委員】
 全体の質問とか、コメントでもいいですか。

【杉村委員長】
 是非お願いいたします。

【翁委員】
 このJFITの事業、大変すばらしい取組をされているということが分かりまして、非常に勉強させていただいたんですが。こちらの事務所の方では、評価にも力を入れておられるということで、こういったJFITの事業の基金で取り組んで、どういう結果が出ているのか、どういうふうに効果を評価するのかということについては、非常に重要なんじゃないかと思っているんですけれども、それをどういうふうに取り組もうとされているのかということが、1つ質問です。
 それから、もう一つ、特にICTの教育信託基金ということをお話しいただいたんですが、これ非常に重要だなと。全て重要なんですけれども、特にインクルーシブなことを考えますと、ICTをどうやって活用していくかというのは、今後、非常に重要になってきているというふうに思いますので、これ、是非進めていただくといいかなと思いました。
 それから、もう一つ質問なんですが、最後にいろいろなリソースでパートナーシップを強化していきたいというお話を頂きました。大学研究機関というのは、多分いろいろとやりやすいと思うんですけれども、私企業というところでは、これからどういうふうな形でネットワークを構築されようというお考えなのか。このあたりについて、3つほどコメントと質問を織り交ぜてですが。

【林川所長代理】
 ありがとうございます。評価に関しての最初の御質問、JFITのプログラム、プロジェクトの評価の話でしょうか、それとも教育評価の方ですか。

【翁委員】
 JFITのプログラムが基金を出して、基金が結果的にどういうふうに効果が出ているのかという。

【林川所長代理】
 プロジェクトのインパクトですね。

【翁委員】
 それを、どういうふうに定期的にとか、どういうふうに取り組んでおられるのか、ちょっとお伺いしたいなと。

【林川所長代理】
 そうですか。このJFITのプロジェクトのインパクト評価というのが、実は多少弱くて、前回、文部科学省とJFITに関する評価、戦略書を創案しまして、その中で必ずJFITプロジェクトの、事後評価をするべきだということを入れて取り組んでいこうとしています。
 ただ、プロジェクト個々においては既に進めているところがあります。例えば、最近支援を頂いた幼児教育のプロジェクトでは、それは東南アジア教育大臣機構と一緒に実施したプロジェクトですが、そのときに幼児教育のためのガイドラインを作りまして、それがいかに各国で使われてきて評価されているかというのを、事後評価を出しました。
 東南アジア教育大臣機構の事務局を通して一緒に評価をしています。そこで、いろいろとどのように使われているかということが、今、結果がちょうど入ってきたところで、それをまとめたものを、もうじき発表できると思います。
 その他、CLCも事後評価をしています。ほとんどの場合、サーベイ形式です。アンケート調査程度しかできなくて、予算的に、現場に行って、実際にインタビューして、どのようにプロジェクトのインパクトがあったかということも、今後、もともとのプロジェクトの草案にきちんと組み込めていけたらなと思います。
 プロジェクト評価というのは、ユネスコの外部資金で頂いたプロジェクトは必ず入れなくてはいけないのですが、これは事後評価というよりは、本当にプロジェクト終了時の評価で、例えば半年後とか1年後に、いかにそのプロジェクトがインパクトがあったかということは、これからの課題になっています。
 その1つの理由としては、一つ一つの案件の期間が非常に短い点が挙げられます。1年や2年の小さなプロジェクトですので、その2年間のプロジェクトを1年後に評価しても、実はそのときには次のフェーズが始まっていたりなどして、なかなか本当の意味の終わりが見えてきません。プロジェクト全体の体制というか、形式に多少よるところもあると思いますが、その辺は、我々の中でも内部でも非常に議論されているところです。

【翁委員】
 そうですか。

【林川所長代理】
 ICTと教育の2点目の御質問ですが、非常にこれは力を入れております。1つの大きな目的としては、やはり教育が全ての人々にきちんと行き渡る1つの媒体としてのICT、ICT教育というのは、別にICTの教育をするわけではなくて、ICTを1つの媒体として使っていますので、教室に行ってどのように技術を使えばいいというよりは、教員がどういう技術を持ったら、より効率的に教えられるかとか、より多くの学習者に教育内容が届けられるかどうかというものです。特に、バンコク事務所は、教員の研修に非常に力を入れています。もう一つ必要なのは、マイノリティーの人たちや遠隔地にいかに教育を届けるか。
 また、ユネスコ全体で進めている大きなプロジェクトとしては、ICTを使って、いかに障害者への教育を広めていくか。バンコク事務所としての規模はまだ大きくありませんが、ユネスコ全体としてはかなり大きなプロジェクト、ICT、そのアクセシビリティの問題に取り組んでいます。
 リソースに関しては、諸橋の方から。

【諸橋所長室長】
 1点だけ、ICTに絡めてですが、先ほどPVEのお話が出たかと思います。ユネスコ・バンコク事務所で、今デジタルシチズンシップといいまして、GCEDの枠組みの中で出てきている話で、今の若い人というのは、オフラインの生活だけではなく、かなりオンラインで時間を過ごしていて、そこがまた学びの空間にもなっているし、いいことも学べば、悪いことも身についてしまうというリスクもあります。そんな中で、PVEに絡めて、そうしたICT、ソーシャルメディア等を含めて、教育の場でそれに対してどう対応していくのかということを具体的に取り組めないかということが、本部の方からも出ています。
 我々としても、ちょうど私が来る前に、アジア地域レベルでの大きな会合がありまして、そこでもかなり熱く議論されたところなので、今年そうしたものもICTの中に含めていくかと思います。
 リソースの話についてですが、確かに私企業とどういうふうに関係性を築いていくかというところで、個々のいろいろな試みはあります。例えば識字の分野で、具体的に企業からサポートを頂いている事業もありますが、単発的なものではなく、もう少し組織的にアプローチできないものかと考えています。いろいろな企業でCSRなど取り組んでいらっしゃる中で、SDGsに関する取組の1つの場を、ユネスコとして提供させていただき、ユネスコもこんなことをやっているけれども、どこか一緒にできることはありませんかという、そうした対話を行っていきたいと思っています。幾つかのパイロットの国を選ぶことになると思いますが、その中に是非日本にも御参加いただければ非常に有り難いです。タイや韓国など、幾つかの国とはその協議を少しずつ始めている段階です。

【翁委員】
 個別の企業のレベルでは随分こういう意識が上がってきているので、何か、古賀さんが一番適任かもしれませんけれども、いろいろと取り組むことができるのではないかなと思います。

【林川所長代理】
 1つ付け加えさせていただくと、やはり民間企業との協力は、やはりIT分野が一番活発です。やはり、ビジビリティも高いためだと思います。また、文化も人気があります。特に世界遺産関係では、やはり民間企業は一番入っていますが、いわゆる、もっと根本的な教育事業、教育政策や計画、ESDやGCEDといった分野では、非常に難しい感じはあります。何かつかみどころがないと、民間企業の方たちは、そこになぜ投資しなければいけないのかという感じになる。長期的な視野で見ていただければ有り難いですが、御支援を得るのはなかなか難しいというところはあります。

【杉村委員長】
 ありがとうございました。
 吉田先生、お願いします。

【吉田委員】
 SDG4の世界レベルでのステアリング・コミッティーの、アジア太平洋地域の委員を仰せつかって、ここしばらくさせていただいております。そのグローバルな議論の中で、特に出てくるのは、言うまでもないことですけれども、SDGsの実施段階に入って一番重要なのは、各国のそれぞれの取組です。それを、国際的に調和化しつつ、調整するというのはとてもできないことです。
 それでも、どういうところで各国が問題を抱えていて、それをどのように対処していくのかを、お互いに学びながら解決していく、一緒に学びながら成長していく。その際、各地域、ここで言えば、具体的にはユネスコ・バンコク事務所がされているような、地域レベルでの相互の学びの機会というのは極めて重要であると、日頃から言われております。
 そういう意味では、今回、このユネスコ・バンコク事務所の活動を支援する形として、日本からの予算も増やしていただいたというのは、本当にそういう立場の私としても、有り難いことだと思っております。
 その上で、グローバルに見て、地域から上がってきたいろいろな懸案についての対処策としての提案が出てきています。そういうものが、また地域にフィードバックされて、そして、また地域では、更にその現場に近いところからいろいろな要請、あるいは学びというものが出てくるわけです。そういうところのすり合わせを、このバンコク事務所において、より強化していただきたい。やり方は非常にたくさんあるんでしょうけれども、予算は非常に限られている。そういう中で、また日本ならではのメッセージというのも出していきたい。そういう、ちょっと複雑といいますか、大変なお立場にいらっしゃるというのも理解しています。
 そこで、例えばGCEDというのは、お隣の韓国が力を入れて、予算も、韓国の中から発信する予算にも、また、ユネスコの活動においても、相当規模を付けていると理解しております。ESDとGCEDというのは敵対するものでは全くなくて、相互補完的に伸びていくことによってこそ、SDG4-4.7という目標が達成し得るところだと思いますので。
 実際、GCEDの会議にも何回か参加させていただくと、ESDという言葉も必ず入ってきます。ESDの方が活動取組として長いわけですから、そちらから学ぼうというところも、韓国としても、またGCEDそのものとしても非常に多いわけです。日本のメッセージとして、中核として持っているものというのは相当しっかりしたものがあるんですけれども、それをユネスコアジェンダの中でレベレッジ的に使えるような、そういう場をユネスコ・バンコクにも設けていただく。APMEDとESDのような会合を、バック・トゥー・バックでされるというのは、そういう意味では非常に有効な捉え方にもつながると思いますし。
 だからといって、ESDのことについてだけ議論するということでは、また収縮してしまうというところにつながりかねませんので、そういうところでのアジェンダの設定の仕方とか、是非工夫を凝らしていただければと思います。

【杉村委員長】
 ありがとうございます。
 萱島様、お願いいたします。

【萱島委員】
 ありがとうございます。1つ質問、1つコメントをさせていただければと。ユネスコの理念やESDの考えに沿った、非常に良い仕事をされておられて、頭が下がります。1つ質問ですが、たくさんの国をカバーしておられて、例えば対象国の選定だとかをどういうふうにされているのか。1点目は、地域の中での国についての戦略ですとか、若しくは協力対象国の選定方法について、教えていただきたい。
 2点目のコメントは、日本の事業との連携です。先ほど、吉田委員の方からも、やはり現地の戦略や方針やメカニズムの中にきちんと落とし込んでやっていくことが重要というお話がありました。教育開発は国ごとに、例えばドナーコーディネーションがあり、パートナー機関と先方政府との間のコーディネーションのメカニズムがある。そこで定期的にミーティングをしながら教育開発事業は進んでいると思いますので、そこにどのように入っていくかというのが重要だと思います。ユネスコ・バンコク事務所の場合は、これだけたくさんの国を抱えておられて、限られた人員と予算の中で対応していくのは非常に難しいところがあると思うんです。そういう意味では、やや手前みそになってしまうんですが、JICAですとか、若しくはJICAに限らず、外務省が独自にやっている事業もありますので、そういった日本のODAを使ったような現地の活動とユネスコの事業をどうつなげていくのか、日本のODAをどのように活用していくのかという視点も是非持っていただけるとよいのではと思います。林川さんも実はJICAに出向しておられたこともあるので、JICAの仕組みもよく御存じですし、JICAの教育関係のスタッフとも深い付き合いをお持ちなので。例えば、青年海外協力隊が僻地まで派遣されている国やJICAの教育協力プロジェクトをやっている国もありますので、それらと連携してやることによって、ユネスコの高い専門的な知見と、フィールドで日本の財源を使って行われている開発事業がつながることによって相乗効果が生まれるのではないかと思いますし、日本の事業を活用することが現地のコーディネーションの中に入り込んでいくための1つの方法ともなり得るのかなとも思います。そのためにJICAも努力したいと思いますし、ユネスコ・バンコク事務所としても是非お考えいただけると有り難いと思います。

【杉村委員長】
 力強い、いろいろなアドバイスを頂きました。
 道傳様、お願いします。

【道傳委員】
 NHK解説委員の道傳愛子でございます。バンコクにも駐在しておりましたので、皆様には大変にお世話様になりまして、ありがとうございます。
 バンコクにおりましたころから、MDGs、SDGs、取材しておりましたので、域内の、言ってみれば課題の山積している国々の取材をしてまいりました。その後はマララさんの書いた本の翻訳やインタビューなどをする機会もありました。
 また、インドのニューデリーのユネスコ事務所と、Mahatma Gandhi Institute of Education for Peace and Sustainable Developmentのシンポジウムなどにもお招きを頂いたことがあります。
 質問が2つございます。1つは、皆様の御活動の中で、アジア太平洋は、とりわけ今、発表にもありました文化の多様性ですとかインクルーシブネスといったときに、日々よりたくさんの課題を抱えていらっしゃるのではないかなと思っております。そういった中での、例えばデリーのシンポジウムでは、パネリストがシリアからの難民とか、アフガニスタンでNGOを立ち上げておられて、ちょっと身の危険を感じて、ときどき国外へお出になるというような方たちが、リアリティーを持った話をされました。
 会場のインドの学生たちも、自分の国の中でも、暴力、排他的な傾向というのが強まっている中で生活をしているので、リアリティーを持って受けとめて、質問して、発言をすると。アジア太平洋地域に出かけていくと、そういったことをとても説得力を持って感じます。ですから、そういった中で、ユネスコの憲章に掲げられているような精神というのはより一層大事な意味を持つと思うんです。だからこそ、どんな難しさを日頃感じて活動しておられるのかということを、教えていただければと思います。
 それと、日本のESDの浸透、理解が大きく深まったというようなことは、どのようにその成果を測っておられるのか。
 例えば、ミャンマーですと、JICAの取組でも、教科書の改訂を通してアクティブラーニングについての目に見える変化、それは子供たちのものの考え方にすぐインパクトが出ることではないでしょうけれども、例えば教員への何かしらのいいインパクトがあったりすると、そういったことは映像取材をしてもよく見えてきたりするんです。
 日本は、そういった意味での課題がないだけに、ESDについて学校現場や子供たち、教師の皆さんたちに働き掛けをしていくときに、どうやってその成果を測って、そして、それを発信していかれるのかなと。その2点を伺いたいと思います。

【杉村委員長】
 時間も押してまいりましたけれども、是非日頃のお仕事を通じてお考えのことを、お願いできればと思います。

【林川所長代理】
 萱島委員からの御質問について、1つ目が、ターゲット、その対象国をどのように選定するのかということです。それは、案件や分野によって様々で、もちろん、48か国・地域全部カバーすることはまずありません。特に、48か国の中には、いわゆるOECD加盟国、先進国もありますので、そういう国々は、例えば私たちから直接支援をするという形では余り入ってこない。協力的なパートナーとして入ってくださることは多いです。
 主に、やはりプログラムやプロジェクトの対象国は、予算の制約はありますが、その国においての課題の優先順位をきちんと見極めて選定されます。バンコク事務所としてもどの国で何がプライオリティーになっているのか、教育政策上ある程度見当がついています。
 もちろん、アジア太平洋地域のユネスコ国事務所にも問い合わせたり、ユネスコ国内委員会等とも協議して、この課題で今度プロジェクトを実施予定ですが関心はありますか等とお勧めしたりして、参加の意思を示してきた場合のみ、その国を対象とします。ユネスコ側から、ある国で実施したいと思っても、その国にやる気がなかったり、受入れの態勢がない場合は、案件を実施しても全く効果がないので、必ず協議した上で選びます。
 もちろん、加盟国側から、やりたい、やりたいと来る国もあるので、その辺はちょっとバランスをとっています。いつも同じ国ばかりでも困りますので。
 もう一つは、国レベルとの調整や、他機関との協力体制です。ユネスコは、アジア太平洋地域では、バンコクの地域事務所と、14の国事務所を持っています。まず、地域事務所としては、国レベルの事務所との連携が重要です。国レベルの事務所が基本的に担当国の教育の調整、ドナーグループに入っていまして、その中でユネスコとしてもできる限りのことはして、協力していきます。また、ほかのパートナー機関との協力体制がありますが、やはりユニセフ等、他の組織に比べるとビジビリティが弱いところもあります。特に、物理的に私たちが事務所を構えていない国では弱くなりがちです。国によっては、非常に活発なユネスコ国内委員会もありまして、国内委員会を通じていろいろと国レベルの情報収集や、調整を図ったりします。また、ユニセフとユネスコは協力関係が強いですので、ユニセフの協力を得て、いろいろと国レベルの調整をしたりします。
 JICAとは、いろいろな機会でお会いして、今回も実はラオスに先週行っていたのですが、そこでも、専門員の方とお会いしました。ユネスコはラオスで教員開発のプロジェクトを実施していますが、そこでユニセフとオーストラリアとの協力体制に、是非JICAも入っていただこうということで、来月、出張に行くときに協議をしようということになりましたので、よろしくお願いいたします。
 もう一つ頂いた、道傳委員からの御質問ですが、どういう難しさに直面しているかについて、いろいろあります。多分、一番大きな、現場で事業をするときに、ユネスコとして難しい立場にあるのは、政府とのつながりが近いということが挙げられます。これは、ユネスコの比較優位でもありますが、ユネスコの大きな利点は、各国の教育省と非常に深い結び付きがあることです。お金がない割にはいろいろと話を聞いてくれるというのも、また1つ大きな利点です。ほかの組織がときどき驚くくらい、教育省はユネスコの話を聞いてくれるという話になったことがあります。国レベルではユニセフなどは大きな資金を持っていますが、ユネスコを通さないと話を聞かないというケースもしばしばありまして、その辺は私たちも自信を持っていいのかなと思っています。
 一方で、非常に難しい立場に置かれた際も、基本的に政府の方の意向を優先にしなければいけないところがあります。例えば、ユネスコは国連の専門機関ですので、教育の現場の動向で、こちらの方向に行った方がきっとより大きく活動を展開できるだろうとか、この課題が今は本当はとても大事なのに、もう少し国で焦点を当ててほしいと思うときに、政府がそれはプライオリティーがないと判断した際に、どうやって調整していくのかというのは難しいところです。
 例えば、民間団体やNGO、市民団体がユネスコの提唱している価値観と同じような会話をしているときに、政府は同意しない場合、どうやってギャップを埋めていくのか。提案する案件を政府が気に入らないと実施はできないので、どんなにユネスコや市民社会がいいと思っても、政府の方で受け入れ体制がないと進まないというジレンマもあります。
 例えば、GCEDもそういった例の一つと言えます。またPVEも、市民団体レベルではユネスコに賛同いただけるし、ユネスコとしてもそういう団体とは一生懸命働きたいんですけれども、もし、カウンターパートの教育省でそれをやりたくないと言われてしまうと、我々はそこにはずうずうしく入っていけない。その場合は、結局周りのほかの国や、ほかのパートナーの方から固めていくというやり方をして、少しずつ意識を変えていくというプロセスを経ることもあります。

【諸橋所長室長】
 その関係で、私のバックグラウンドが平和と人権教育をずっとやってきていまして、こういうユネスコの崇高なマンデートを具体的に国レベルで実施していくときに、それを受けとめられる国と、受けとめられない国があります。残念なことに、アジア太平洋の中にはまだ受けとめられない国も非常に多いです。
 そこで、政策者レベルの方々にも、そうした気付きという場を設けなければいけないということも、本当に口酸っぱく市民団体の方から言われています。そこで、ユネスコとしてできることとできないことのギャップがあります。余りに崇高なマンデート「人々の心に平和のとりでを築く」というのは、すごくすばらしいのですが、資金的な課題や政治的な問題もある中で、どのように進めていくのかという、この長期的なスタンスを、なかなかパートナーの方々に御理解いただけない。ですので、こういった点を本当に何倍にも努力していかなければならないというのが、日頃私が感じているチャレンジです。

【杉村委員長】
 ありがとうございました。本当に、現場の声をたくさんお伺いすることができました。
 委員の先生方も本当に貴重な御発言、コメントありがとうございました。事務局の方から何かございますでしょうか。

【鈴木国際統括官補佐】
 では、道傳先生の方から御質問を頂いたESDの評価の点だけ、ちょっと簡単に。また、及川先生からも補足いただければと思うんですけれども。網羅的に評価をどうしようとシステマチックに測るすべというのを、私どもは持ってはいないんですけれども、様々な教育大学等で、特に子供の変容をアンケートの形で測るようなことをされています。私ども、これ、子供だけではなくて、地域、親御さんの変容というのも測ることができるようになればいいなと思っております。なかなかパネル調査のようなものが、日本では進んでいないところがあるんですけれども、そういうものが有効なのではないかと思っています。
 私どもが今何をやっているかというと、事例から拾ってくる。こんな事例がありましたということで、どういう成果があったかということを見ております。例えば、前回、皆様で御議論いただいて、おまとめいただいた教育小委員会からのメッセージなどにも含まれているんですけれども、ESDの実践が、やっぱり学校教育のカリキュラムとか、学習プログラムの教育課程の変遷に、また学習方法とかスタイルみたいな教育手法の変革に貢献している例のようなものを、事例から拾ってくるような形での評価を一生懸命やっているところでございます。
 是非、及川先生の方からも。

【及川委員】
 まず数値目標としてきちっとデータをとっていないんですが、出てきた数値としては、まずユネスコスクールが1,000校を超えている。これ、世界ナンバーワンです。このユネスコスクールの浸透度、この爆発的な増加度、それも1つ、大きな、誰もが納得する例でありましょう。それから、それが教育界の中でどのように浸透してきたかということに関しては、今度の新学習指導要領の前文、それから総則に、「ESDの持続可能な社会の創り手の育成」ということが明確に示されたと。つまり、今度の学習指導要領の改訂において、ESDの理念が基盤となっているというふうなことも言えるかと思います。
 それから、今おっしゃったように、いろいろな形で各学校、各地域、各教育委員会でアンケートをとって、それが学習手法の面、それから教育効果の面、つまり子供の変容ですね。あるいは、教員の変容、地域への波及、そういうところもデータとしてとってあります。ですが、それは全国的なある意味スタンダードな形でとられているかというのは、まだまだ不十分かと思います。文部科学省にも注文を出しているんですけれども、そういうものを、そろそろ10年たちますので実施する時期であろうということかと思います。
 そういう意味で、エビデンスはどんどん出てきていますので、それをいかに先ほどのビジビリティ、すなわち可視化していくかというところが重要なポイントかなと思います。
 最後に、JFITについて一言だけいいですか。一つ一つの事業、非常に本当にすばらしいことですし、私もかつてこのJFITのプログラムに幾つか参加させていただいた記憶もありますので、そういう意味で体験している身ですけれども。
 1つ、お願いしたいことは、これは単なる私の思いなのかもしれませんが、先ほど出た「ESD推進の手引」にも、それから教育小委員会のメッセージもありますけれども、この目標4Educationというのは、ただ単にその目標だけの問題ではなくて、SDGsの全てのゴールの達成に貢献するということ、それから、全てのゴールが教育に期待しているということがその文面の中に入っているんです。
 つまり、教育、人づくり、人材育成が、この持続可能な社会の到達にとって前提となるものだということを考えたときに、各事業、これに載っていますけれども、各パーツとしてはいろいろ取り組まれている。例えば、Education for Allであるとか、公民館、CLCであるとか、ICTとかをやられていると、エイズもやられているということは、それはそれですばらしいことだと思うんです。それらを教育として4.7にタグづける、それはそれでよろしいと思うんですが、その4.7と、その各パーツが持続可能な社会の構築という点でどういうふうにリンクするのか。
 つまり、教育を通じて、そのほかの17のゴールに貢献するような、視点を持って事業展開していただけると大変うれしいです。実際の事業なり、実施にそれが反映・影響すればかなりいいでしょうし、評価の部分にも関わるんだろうと思うんです。
 というのは、実は2つ理由があります。これは日本の都合かもしれませんが、日本はESDの10年を提唱した国であります。ESDを世界的にリードし、推進した国である。国連の10年が終わった後、現在GAPが実施されていますが、それも5年で終わりです。そうすると、ポストGAPのESDというのは一体どうあるべきかというのが、多分議論されると思うのです。
 実は昨年の3月のオタワでGAPのレビューフォーラムが開かれたとき、ユネスコ教育局のチョイ部長ともその辺についてのディスカッションをしたんです。そのときに、ポストGAPのESD、あるいは教育ということを考えた場合には、Education for SDGsという方向性が重要であるとの認識で一致しました。ESDのSDの部分を国際的にしたのがSDGsというふうに捉えたときに、ただ単にゴール4とかターゲット4.7というレベルではなくて、SDGs全体に教育がどういうふうに貢献していくのかという考え方、そういうフェーズでESDを展開していくということが多分必要になってくると思います。
 その先導を是非アジアで、バンコクでやっていただきたいと思うんです。それが、教育で出発したユネスコ・バンコク事務所のある意味、使命であろうし、JFITという日本の信託基金で実施することを考えたら、やはり日本が追求してきたそういう部分の文脈をきちっと酌んでほしいということです。よろしくお願いします。

【杉村委員長】
 分かりました。時間がない中、大変立派な、今日の全体のまとめのような御発言を頂きました。ありがとうございました。
 私の司会の不手際で予定の時間が5分ほど過ぎております。林川様、諸橋様、本当にありがとうございました。
 最後に議題3、事務連絡を含めた今後の予定を事務局の方からお話しいただき、閉めたいと思います。

【鈴木国際統括官補佐】
 時間もございませんので簡単に。資料4のところに今後の事業予定等、入っております。ESDに関するもの、SDGsに関するもの、また今バンコクの方からも御紹介がありました、バンコクで夏頃に開催される、ESDの将来に関する加盟国協議、これはGAP後の検討です。恐らく次回の教育小委員会には、そちらの内容等についてお諮りすることができようかなとも思ってございます。
 それから、最後に、一番後ろにJEF(Japan Education Forum)の案内を付けております。これはユネスコのものとは違うんですが、是非、吉田先生から御紹介いただければと思います。

【吉田委員】
 今、及川委員からもありました、Education for SDGsというものと全く気持ちとしては直結していることになりますけれども、第15回のジャパン・エデュケーション・フォーラム、JEF for SDGsということで、これは文部科学省、外務省、それから筑波大学、広島大学、4者の共催と、それからJICAの後援ということで、これまで実施しております。
 今年度につきましては、3月8日に、「SDGsが求める教育の質:教育政策の現状と課題」というタイトルで、以下のような、特にカンボジアからは教育大臣をお招きして基調講演を頂く内容となってございます。この場をおかりして、この会のスケジュールを、皆さんを通じて、また各方面に御紹介いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【杉村委員長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまのこの御発言をもちまして、閉会の方に進みたいと思います。本日は、本当にお忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございました。
 本日は、林川様、諸橋様、それから高等教育局の方からも堀尾様に来ていただきまして御説明いただき、大変ありがとうございました。既に御案内させていただいておりますとおり、来る2月9日、金曜日、15時から、第142回の日本ユネスコ国内委員会総会が開催されます。場所は、三田の共用会議所になりますので、是非御出席賜りますように。また、御出席いただける方におかれましては、場所を御留意いただければと存じます。
 初めて仰せつかった委員長で至らない点も多々ございまして、不手際もあったかと思います。お許しくださいませ。本日は、これで閉会にいたしたく思います。本日は御多忙の中、本当にありがとうございました。
 これにて、閉会とさせていただきます。ありがとうございました。

―― 了 ――


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国際統括官付