日本ユネスコ国内委員会における主な意見

平成25年8月28日
文部科学省国際統括官付

※運営小委員会懇談会(平成24年12月27日)、第487回運営小委員会(平成25年1月24日)とその後のメールによる意見照会、第132回総会(平成25年2月13日)とその後のメールによる意見照会、第488回運営小委員会(平成25年3月26日)とその後のメールによる意見照会及び第489回運営・第94回普及活動合同小委員会とその後のメールによる意見照会における主な意見を基に、事務局により編集。(なお、第489回運営・第94回普及活動合同小委員会とその後のメールによる意見照会での意見は、下線部。)

1 若者、企業の参加によるユネスコ活動の一層の促進 

1)民間のユネスコ活動の活性化を活動内容、構成員等の面でどう図っていくのか?

○ロータリークラブやライオンズクラブなどに参加している個人は社会意識が高いことから、これらの人々にユネスコ活動に理解をしていただいて、いろいろな形で支援していただくことが必要。
 そのためには、日本ユネスコ協会連盟(日ユ協)にも地域のユネスコ協会の活性化に一層の努力をいただいて、地域の民間ユネスコ協会がこれまでにも増して、より開かれた運営をされることを期待。
 地域のユネスコ協会が、それぞれの地域の活性化に一層貢献することが大事。日ユ協が、全国のユネスコスクール全体を活性化する努力は重要であるが、地域のユネスコ協会が、それぞれの地元のユネスコスクールを積極的に支援することに、これまで以上に御努力をお願いしたい。(見上委員)

○若者たちの自主的な活動を、資金や人材等の面で支援をすることで、ユネスコ協会の存在をアピール(まだ、ユニセフとユネスコの区別がつかない若者が多い)し、自分もユネスコ活動に関わりたいという気持ちを起こさせることが大事。(見上委員)

○各地のユネスコ協会の課題の一つは、高齢化。日ユ協では、二つのWGを立ち上げて検討しており、それぞれで会員の増加と若者の増加を検討している。特に、ユネスコ協会とユネスコスクールの連携強化を図り、将来的にユネスコ活動へ参加してもらうことを期待している。また、ロータリークラブではローターアクトで若者を養成している。(野口日ユ協理事長)

○ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)と日ユ協の連携を検討してはどうか。例えば、ACCUはユネスコスクールへの加盟を支援しているが、加盟後のフォローアップなどについて、日ユ協と協力するなどの案が考えられる。(田村委員長)

○全国各地にユネスコ協会があり、多くの参加会員が活動している。国内委員会としては、これらユネスコ協会との有機的な連携を進めるべき。(広瀬委員)

○日ユ協とACCUを統合した方が、活動をより効率的に行える。別組織になっているのにはそれなりの経緯と理由があるのだと思うが、是非活動を統一的に行うこと、できれば組織を合体することが、後記する資金集めを有利に行うためにも望ましい。(林原委員)

○若者たちを取り込む活動の工夫が必要である。昨夏、岩国でユネスコ子供キャンプを引き受け実施した狙いの一つに、人数も減少し、沈滞化している青年部の活性化を図ることがあった。 キャンプスタッフとして参加した若者たち(社会人、大学生)の中から、約10人が岩国ユネスコ協会青年部に新たに加入、再起動が始まったところである。活動を側面から支援しながら、活性化につなげていきたいと思っている。(岡崎委員)

2)ユネスコ協会活動の枠にとらわれていない若者たちの活動をユネスコ活動にどう関与させるか?

○東日本大震災という大災害を目の当たりにし、多くの若者たちが震災復興のために立ち上がり、素晴らしい活動をしている。また、復興活動に限らず震災を契機として、より良い社会・サステイナブルな未来を真剣に考え、社会起業やNPOなど様々な形での社会活動に参画する若者も増えてきている。彼らはユネスコとかESDという意識は持っていなくとも、彼らの活動の多くはESDの目指す方向性と同じ。このような活動の中から、ESDとの関連の強いものをマッピングしてESD教材等で広く紹介し、特に優れた活動に対しては、日本ユネスコ国内委員会からグッドプラクティスとして認定することも考えられる。そうした若者たちが、ESDの理念を意識して、ユネスコ精神を共有して活動してもらうことが、すなわちユネスコ活動に自然に関与していくことになる。(西園寺委員)

○ユネスコの所掌分野であるESC(教育、科学、文化)においては、他の機関も活動しているので、それらとの連携を検討すべき。例えば、ボーイスカウト/ガールスカウトがある。また、科学分野では、ユネスコ本部が時々ICSUと連携した活動を行っているが、国内でも日本学術会議と連携できるよう検討すべき。特にサステイナビリティ・サイエンスは重要。(金澤委員)

○若者たちの関心は多様で、興味が合えばいろいろな活動に参加している。ユネスコ活動にも参加・協力してくれるが、ユネスコだから参加したという意識はないように思う。これがユネスコだというもっと分かりやすいイメージが欲しい。(菅原委員)

○国内外の大学のユネスコクラブ等との交流を促進すべき。例えば、ユネスコクラブで行う海外スタディツアーの機会に行うと効率的。そのために、ユネスコ活動を行っている海外の大学とのマッチングを支援するスキームがあると良い。(西園寺委員、林原委員)

○大学のユネスコクラブ等において、ユネスコ活動に従事することにより卒業後もユネスコ活動に関与することのほか、ユネスコクラブの活動としてディスカッション等を行うことにより、問題解決のスキル、ディスカションの能力及びユネスコ活動に関する意識の向上が期待されるため、促進のための方策を検討すべき。(立原ICUユネスコクラブ部長)

○日ユ協の構成団体となっている大学のユネスコクラブは、現在玉川大学だけだが、他の大学のユネスコクラブにもぜひ参画いただきたい。(野口日ユ協理事長)

○大学のユネスコクラブは、ユネスコ協会やACCU等の長年の経験から学ぶところがあるし、逆にユネスコ協会は、若者との交流を通じて活性化を図ることができるため、相互交流の活性化を検討すべき。(立原ICUユネスコクラブ部長)

○より詳細を議論するためのプラットフォームを立ち上げるべき。ユネスコの趣旨に沿った明確なコンセプトの提示が必要。(広瀬委員長、井原委員、二瓶委員、林原委員、大久保部長)【詳細は、1.5)「ユネスコ活動の理念を分かりやすくイメージしてもらうために、どのような提案を行うべきか?」を参照】

○地域の若者は非常に熱心であるが、活動範囲が限定されている場合が多いため、途上国でのスタディーツアーや識字教育のモニタリング等、広く参加できる機会を積極的に提供していくことが大切。また、経験豊富な年配のポテンシャルもうまく活用すべき。(重委員)

○各地域ユネスコ協会・県ユネスコ協会連盟主催による大学生のスタディーツアーを企画し、「自ら考え、行動する」機会を提供するべき。これまでも、日本ユネスコ協会連盟主催のツアーに参加後、会員として活動に携わる青年は多い。未来への活力としての種まきと位置付け、有志による資金援助を募り学生の負担を少なくし、長い目で見守る配慮も必要。(宇佐美委員)

3)ユネスコ活動に企業の活力(CSR活動等)をどう取り込んでいくか?

○MUFJがユネスコ活動を支援するに至った経緯としては、マル1 まずは、企業としてのCSR活動の重点テーマ(次世代の担い手の教育、若手の育成)を設定(5年前)。その重点テーマに沿いパートナーを検討した結果、日ユ協を選定(4年前)。マル3 その後、ESD及びユネスコスクールがあることを知った。
 多くの企業では、社会の一員として、CSR活動を通じて社会貢献活動を行いたいと考えている。その中で、自社のイメージ向上、社員のCSR活動への参加を通じたモラル向上を期待。
 このような企業側の考え方を踏まえて企業にアプローチすることが肝要。具体的には、各企業のCSR活動レポートを見るなどして、各社のCSR活動の方針を踏まえた上で、具体的なプログラムを提示することが重要。なお、ESDや国内委員会は、分かりにくい概念であり、理解してもらいやすいよう工夫が必要。また、(ユネスコ活動の趣旨に沿う)次世代や若手の育成を、CSR活動の重要テーマとして取り組んでいる企業は多いと思う。(三木委員)

○企業がCSRとしてどの分野をどのように支援したいかについて把握し、ユネスコの理念と整合する部分について協力をお願いしてはどうか。(見上委員)

○日ユ協の震災募金には、大きな支援が集まっている。寺子屋のように、魅力あるテーマを具体的に提示する工夫があってもよいのではないか。(佐藤委員)

○震災の寄附に当たっては、各企業とも当初から、その後どうなったかフォローアップしたいと考えている。(三木委員)

○ACCUでは、震災支援として企業から受けた寄附は、預り金として扱いほぼ全額被災地へ届けており、事務的経費(人件費等)は自己財源で賄っている。また、銀行の御協力により、寄附口座への入金手数料は無料。さらに、支援先から心のこもった感謝状を多くいただいており、ACCUニュースやHP等でしっかりフィードバックしていくことにより、企業との信頼関係構築に努めている。(島津ACCU事務局長)

○企業からの寄附に対するアカウンタビリティは重要であり、寄附金をどのように使用したか、できる限り詳細に報告することにより、将来にわたってファンになってもらえるよう努めている。なお、企業からは、支援先からの感謝状は何よりうれしいという言葉も伺っている。また、アルマーニ、グッチ、ユニリーバ等、外資系企業からの寄附も多くある。(野口日ユ協理事長)

○世界遺産は一般の評価が高いが、無形遺産はこれから強化が必要。地域の意見としては、世界遺産に登録できる可能性のある物件を有する地域は極々限られているが、無形遺産はより多くの地域に可能性がある。無形遺産の推進方策としては、無形遺産条約第18条にグッドプラクティス登録の規定があり、我が国として、特に各国の取組の参考となるような事例を登録して、ビジビリティー向上を図るべき。また、無形遺産に関する活動は、地域の自助努力で維持されているのが現状であり、企業の財政支援を求めるための取組を検討すべき。ユネスコスクールとの連携も図るべき。(河野委員)

○企業・個人を対象とした「ユネスコ活動推進プラットフォーム(仮称)」をウェブ上で立ち上げ、クリック式の募金(crowd funding)を呼びかけてはどうか。(西園寺委員)

○特に教育や文化では、企業から資金が流れてこないような部分に対して、従来公が支援してきたが、今後は、企業が積極的に活動している部分にも政府が着手し、より活性化を図ってもよいのでは。(佐藤委員)

○大きく利益を上げている企業や社会起業家(ソーシャル・アントレプレナー)との、共同の資金提供も含めた連携を考えてはどうか。国による少額の支援がトリガーとなり、企業の関心を喚起することがある。例えば、三菱東京UFJ銀行が寄贈してくれているユネスコスクールのプレートは、国内委員会が公認していることが、大きなポイント。(田村委員長、西園寺委員、野口日ユ協理事長)

○企業の参加を促す方策として、寄附金に対する税制優遇制度があるが、CSR担当部門の人件費、旅費等の企業自身の活動に対する税制優遇制度はあるか。(安西委員)

○ユネスコ活動を企業のCSR活動により取り込むことは、大変効果がある。企業はあまりお金をかけないで取り組むことができるCSR活動には、積極的に参加するのではないか。その手段の一つとして、例えば経済同友会等で会長あるいは松浦前事務局長が御講演され、ユネスコ活動を企業のCSRに組み込むことをPRされてはどうか。(林原委員)

○ユネスコと対比されることが多いユニセフは、積極的な資金集めを行っており、そのことは広く一般に認知されている。ユネスコの名前に不足はないので、もっと積極的に資金集めを行えば資金は集まるのではないか。ただし、かつて盛んに行われた企業に寄付を求める「奉加帳方式」は、今やあまり有効ではないため、ユニセフが行っているような、何等かの活動に寄付を組み込んで、自動的に寄付が集まる方式を考える必要がある。
<具体的な方策案>(実行可能性は未検討)
 ・ユネスコ世界遺産シリーズというような切手を出し、例えば1切手につき1円の寄付を、日本郵政から頂く。
 ・全国の博物館・美術館の特別展収入から、入場料の1%を寄付してもらう。例えば東京国立博物館の特別展は通常大人一人1,500円だが、年間入場者は百万人を下ることはないので、少なくとも年間1,500万円以上の収入となる。
 ・クレジット・カード等のポイントに寄付を加える。
 ・広く消費者を相手にしている高収益企業と提携して、「ユネスコ協賛品」「ユネスコ協賛キャンペーン」等のキャッチフレーズを付した商品・サービスを提供し、一定歩合の寄付金を受ける。(林原委員)

○大手企業の場合、CSRを担当している部門があるので、そこに対して働きかけるか、企業のトップに働きかけることで効果がある。(井原委員)

○長野県の場合は「地域発元気作り支援金」という制度があり、過去に約1千万円以上補助金の交付を受け、かなりの活動ができた。足りないところはやはり自腹を切る覚悟が必要。また、昨年8月に被災地福島県の小中学生5名と付き添いの家族3名を招待して、木祖村「こだまの森」に4泊5日滞在していただき、のこぎりやのみなどの道具を使って、木曽産の木材を加工して楽器バンドーラを作り上げ、最終日に演奏の練習をして発表会を行うという実習会を実施した。交通費、宿泊費、材料費、講師謝礼などで約100万円の費用がかかったが、木祖村、木曽ユネスコ協会、共催の畑村創造工学研究所、及び複数の協力企業からお金を集めて充当した。活動の趣旨や内容が良ければ、協力者を募って補助金なしで実施することが可能。(井原委員)

○より詳細を議論するためのプラットフォームを立ち上げるべき。ユネスコの趣旨に沿った明確なコンセプトの提示が必要。(広瀬委員長、井原委員、二瓶委員、林原委員、大久保部長)【詳細は、1.5)「ユネスコ活動の理念を分かりやすくイメージしてもらうために、どのような提案を行うべきか?」を参照】

○近年は、企業に単なる寄附を募るのは難しいし、いわゆる友達を集める方式も継続した協力は得られないことを踏まえ、企業から率先して協力したくなるような仕組み作りが必要。(林原委員)

○会費や寄附という形での資金集めは非常に難しい状況であるが、企業と一緒に協力して行う形式は結構進展している。(野口理事長)

4)ユネスコ活動を推進していく上で地域振興とどのようにリンク、絡ませるか?

○地域について子どもたちが学び、自分の住む地域に誇りを持つことが大事であり、その子どもが地域を大事にする大人になると思う。そして地域を知る子がよき国際人になってくれる。そこで、地域の各ユネスコ協会がその地域に開かれた運営をして、地域の学校、特にユネスコスクールを支援していただきたい。そこで育った子どもは、大学でユネスコクラブの活動に親しみを覚え、参加し、社会に出たらユネスコ協会青年部で活躍、さらにユネスコ協会の運営にも関われる大人になる、といった循環、連鎖ができることが望ましい。(見上委員)

○綾町では、世界で認められたということが自信につながり、インセンティブが向上したと聞いているが、地域振興の推進に当たり、観光庁等の他省庁との連携を一層推進すべき。
ユネスコエコパーク等、地域振興に資するユネスコのプログラムについて、国内での認知度をもっと高める必要がある。そのためには、メディアで取り上げてもらえるよう、積極的に働きかけるべき。(金澤委員)

○ユネスコエコパークのアジア地域での会議への出席及びネットワークへの参画を通じて、認知度の向上を図るべき。(野口理事長)

○ユネスコエコパークの全国的な認知度を短期間に高めることは難しいかもしれないので、登録件数を増やすことにより、着実な定着を図っていくべき。(鈴木委員)

○木曽は香川県と同じくらいの広さの中に、森林面積が93.3%を占める自然に恵まれた地域であるが、この10年間で人口が5千人減少し、現在人口は約3万人。高齢化も進み65歳以上が35.9%を占め、人口減少と高齢化により活力が低下し、限界集落になる地区も出てくることが懸念される。さらに、代が変わり、県外居住者が所有する木曽地域の家屋、農地、森林の保存・維持ができるか懸念される。
 そこで、木曽地域の活性化と一体化を目的として「木曽丸ごと夢作り活動」と称して平成19年から様々な活動を行ってきた。現在は、このように衰退しつつある木曽地域を活性化させ、未来の子供たちのために、「未来の子供たちに残したい木曽」、「未来の子供たちが住みたくなる木曽」という目標を掲げて、活動をしている。
このような活動体験から、以下のことが言える。
 ・夢と物語性があれば人は協力してくれる
 ・最初の活動に全力を傾ければ、必ず成功する(成功神話)
 ・交渉力・忍耐力
 ・仕組み作り
 ・良い気を溢れさせる
 ・資金力=自己資金+助成金+自腹
 地域振興については、一般的な意見にするとありきたりのことだが、志と高い目標があり、「人、物、金」があれば実行することができる。(井原委員)

5)ユネスコ活動の理念を分かりやすくイメージしてもらうために、どのような提案を行うべきか?

○ユネスコ活動、ESDなどは一般には分かりにくいため、貫通しているものは何か、再整理し、イメージできる提案を行うべき。(田村委員長、青柳委員、佐藤委員)

○ユネスコスクールガイドラインにおいて、ユネスコスクールとESDとの関係などをうまく切り分けてまとめてあるので、活用すべき。(安西委員)

○MUFJでは、5つの団体を対象として毎月一口100円以上の寄附を全社員に呼びかけて、かつマッチングしているが、ユネスコが非常に多い。ユネスコは所掌分野も広く世界的に信頼できる機関として認識されている。(三木委員)

○簡潔にユネスコの使命・活動を表現するキャッチフレーズがあれば、ユネスコへの一般の理解が得られやすくなる。ユネスコ憲章の前文に「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和の砦を築かなければならない」とある。名文ではあるが、これだけでは抽象的で一般にはなかなかユネスコの使命は伝らない。例えば国連の役割と比較して、「世界平和の実現に向けて、国連が、政治や軍事などのハードパワーによるアプローチであるのに対し、ユネスコは、教育・科学・文化・(コミュニケーション)といったソフトパワーによるアプローチである」という説明はどうか。また映像や音楽を使った親しみやすいイメージビデオによる、ユネスコ/ESD活動理念の可視化や、公共広告機構の活用(国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などはすでに行っている)も考慮してはどうか。(西園寺委員)

○関心の低い人の関与を深めるにはプッシュ型も必要だが限界がある。ターゲットを絞って、プロポーザル(提案)してもらう(プル型)と関心を強く持ってもらえるのではないか。例えば、世界遺産で地域からの推薦制度を採用したところ、文化財保護に対する関心が高まった。(佐藤委員)

○世界遺産登録について多くの国民が認知している一つの理由は、マスメディアで大きく報道されるため。マスメディアにおける露出度を高めるためには、各メディアの文化担当記者や編集委員と日常的に接触し、ユネスコ活動に関する様々なニュースを常に発信し、ユネスコ活動に関する理解を深めてもらうと同時に、機会を捉えてユネスコのイベントを報道してもらうことが必要。
 現在の大使の方々は、皆様大変精力的に活動していただいていると思うが、マスメディアに頻繁に「ユネスコ○○大使」と紹介されるような知名度と露出度が高い文化人・芸術家等を更に加えてはどうか。(林原委員)

○ユネスコ総会、ESDとユネスコスクールの世界会議は、日本のビジビリティー向上を図る絶好の機会なので、それに合わせてシンポジウムやユネスコ展を開催して、我が国のユネスコ活動のPRをしてはどうか。(林原委員)

○ユネスコとその活動のイメージをわかりやすく伝えるために、持続発展教育(ESD)を強調して、ビジビリティーの向上を図るべき。(鈴木委員)

○サステイナビリティを軸として、様々な分野の叡智を結集すべき。ESD及びサステイナビリティ・サイエンスは我が国から提案したものであり、一層推進すべき。(西園寺委員)

○ユネスコの知名度の低さを打破するには、タテとヨコの立体的なつながりにより、ESD等の活動を繰り返し丁寧に説明し続けるとともに、海外へ発信していく必要がある。(青柳委員)

○より詳細を議論するためのプラットフォームを立ち上げるべき。その際、外部の意見を広く取り入れるためにフェイスブック等を活用するとともに、議論の過程を見せることにより、関心ある人をどんどん呼び集めていく仕組みを検討すべき。特に若者の参画を議論する際は、若者に議論に参画してもらうべき。(広瀬委員長、井原委員、二瓶委員、林原委員、大久保部長)

○ユネスコの趣旨に沿った明確なコンセプトの提示が必要。プラットフォームのコンセプト作成においては、ユネスコ憲章を基本に置き、ユネスコの特徴を明確にしつつ、社会一般にもっと浸透していく方策を検討すべき。(広瀬委員長、井原委員、二瓶委員、林原委員、大久保部長)

○ユネスコ活動を分かりやすく説明するための方策として、ユネスコスクール500校のような、明確な目標を設定すべき。(林原委員)

○ユネスコ協会のHPの更新頻度を上げて内容を見直したところ、反響が大きく、問合せや協力の申出等が目に見えて増加した。(金原委員)

○ユネスコ活動全体をふかんして、国内委員会、日本ユネスコ協会連盟、ユネスコ協会等、各ステークホルダーの役割を明確にすべき。(広瀬委員長、重委員)

2 学校教育・社会教育等を通じた持続発展教育(ESD)の一層の推進 

1)ユネスコスクールの枠組み以外に学校教育においてESDを推進する方策は何か?

○すでにほとんどの学校が、何らかの形でESDにつながる活動をしている。ESDという言葉がどうしても何か特別な、難しい概念を伴うものであるという先入観を拭い切れない現状がある。化石燃料の枯渇や自然エネルギー活用の難しさなどを考えるとき、今は誰もがこのままの社会では持続不可能であるという気持ちを持っているため、「持続可能な未来」のため、「持続可能性」という言葉(日本語なので理解しやすい)を広く浸透させることにより、ESDは進むと思われる。(見上委員)

○ユネスコスクールでESDを実践してこられた元教員の知識や経験を活用してはどうか。彼らを「ESDアドバイサー」として任命し、新しくユネスコスクールに加盟した学校や、ユネスコスクール以外の学校にも派遣し、ESDの説明や実践のアドバイスをしていただく。また、ユネスコ活動全般において、モノづくりなど様々な職業経験を持つシニアの活用も検討する価値がある。(西園寺委員)

○「全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)」において、グローバル人材育成の事例としてユネスコスクールが盛り込まれたので、学校に対するユネスコスクールの周知になっていると思う。(田村委員長)

○ESDの実践においては、クリティカル・シンキング、システム・シンキング、ホリスティック・シンキングが提唱されているが、平成25年4月からの第二期教育振興基本計画(案)でも明確に位置付けられており、文科省の関係施策においてしっかり推進されるべき。(安西委員、見上委員)

○文科省において、各県教委のESD担当者等を集めてのESD普及のための講習会・研修会等の実施を計画的に行う。それを受けて、各県等では講習を実施、あるいは教育センターなどでの研修講座開設、ESDのための学校用ガイドブックが作成されれば、更に参考になり普及される。(岡崎委員)

2)ユネスコスクールを取り巻く地方自治体(首長部局と教育委員会の連携を含む。)、ユネスコ協会、大学、国連大学、NGOの役割をどう高めるか?

○ユネスコスクールの普及・推進においては、教育委員会が重要な役割を担っており、現在検討されている教育委員会の見直しの方向性に関わらず、今後協力を得られるような推進体制を整備すべき。加えて、地方自治体首長(及び首長部局)との連携も必要。(田村委員長、安西委員、佐藤委員)

○ユネスコスクールの普及について、学校長の理解が進んでも、教育長の理解が得られないと、そこで止まってしまうため、教育委員会の理解・協力を同時に進めていく必要がある。他方、教育委員会がリーダーシップを発揮して、当該地域でユネスコスクールが広く普及している事例がある。(見上委員)

○教育委員会の中で、ユネスコ協会を担当する部門(生涯学習課等)とユネスコスクールを担当する部門(学校教育課)が異なっており、部門間の連携が必要。(西園寺委員)

○教育委員会には、コーディネート及びネットワーク形成の役割が期待されるため、国内委員会から文書等で要請すべき。(金澤委員)

○国連大学は、日本に本部が所在する主要な国連機関として重要な役割を担っており、RCEを拠点としたユネスコスクールの普及が期待できる。(田村委員長)

○教育委員会は、教育振興基本計画と学習指導要領、生きる力(特に考える力、行動する力)の育成の観点から、地球上の人類の課題であるだけでなく、これからの日本にとって喫緊の課題であるという正攻法で進めるのがよい。
 地域のユネスコ協会は、ESDについて必ずしも意識が高いとは言えず、何をすべきかよく分からないという現状がある。ユネスコ協会として、やるべき重要なミッションなのだということの浸透が急がれる。そのためには、ユネスコスクールとの結びつきが、両者の活動にとって有効である。
 大学におけるESDは、特に教育大学では徐々に広がりを見せている。ただ、ESDにコミットするリーダー的な人の力が強ければ強いほど、その人がその立場から去ると、急激に活力の低下が起こる。大学間のネットワーク、例えばHESD(高等教育機関における持続可能な開発のための教育)、ProSPER.Net、ASPUnivNetなど、一層の組織強化が望まれるが、予算的な面で各大学は苦労している。(見上委員)

○2014年のユネスコESD世界会議に向けて、ユネスコスクールにおけるESDの推進、質の向上について議論いただきたい。(安西委員)

○ユネスコスクール加盟校を増やしESDを普及させるには、教育委員会の前に、知事に働きかけることが重要。(井原委員)

○国内委員会から、各地域のユネスコ協会に、ユネスコスクールに関わる学校の活動等に理解と協力を要請する文書を何回か送付し周知を図るべき。(岡崎委員)

○ユネスコスクールの加盟申請は、必ずしも地域のユネスコ協会には知らされていない。ユネスコスクールの加盟申請段階から地域のユネスコス協会と協力し合える関係が作れれば、相互の連携強化につながる。そのためには、日ユ協とACCU、地域のユネスコ協会とが情報を共有する仕組みを構築する必要がある。
 地域のユネスコ協会は生涯学習課が担当しており、ユネスコスクールといっても学校教育課に関係すると捉えられていないケースが見受けられる。学校教育課への強力な働きかけが必要であると思う。
ASPUnivNet加盟大学のない地域の教育系大学ではESDについて関心が薄いように思う。もっと広くESD教育研究が促進されるように取組む必要がある。
 ユネスコスクール全国大会、地方大会に各ユネスコ協会も参加するようなプログラムを盛り込んだらどうか。(菅原委員)

○ユネスコスクール加盟校が増加の傾向にあることは喜ばしいが、地域により数の上で差が出てきている。数が増えない各教育委員会に対し「日本発・ESD」の重要性をより強く発信すべき。また、教育長にESDの最終年会合までに加盟する予定の学校数をアンケートとして取り、増えない理由などを伺うことも効果的。ユネスコ協会とユネスコスクールの連携強化を図ることは大切だが、会員の高齢化と財政難の中、民間ボランティアとして活動している各地ユネスコ協会の現状を把握する必要がある。(宇佐見委員)

3)国内外のユネスコスクール間の交流を、いかに推進していくか?

○ユネスコスクールはもともとネットワーキングをねらいとしたものであり、国内外のユネスコスクール間の交流を積極的に推進すべき。(見上委員)

○現在多くの学校が地域に開かれた学校にするための取組を行っている。しかし、学校間の交流、さらには海外の学校との交流については、あまり実施されていない。国際交流は、国際理解教育等の課題をテーマにしている学校で行われており、教育のグローバル化の中で国際理解教育を進め、コミュニケーション能力やICTリテラシー教育、子どもたちのグローバルな思考の力をつけるものにして、交流の活性化に結びつけるのがよい。
 外国の学校との交流を考えたとき、テレビ会議システムの活用などICTのノウハウが必要になること、それに交流する際には相手校との事前の打合せが必要になり、英語の堪能な教師か関係者が双方にいないと準備できない。そのような場合は、ASPUnivNetのような大学など高等教育機関の支援組織が大きな力を発揮できる。大学には、留学生を活用したり、将来教師を目指す英語の得意な学生を活用することが可能。
 また、交流には何か交流を深めることのできる共通のテーマが必要であり、現在、パイロットモデルとしてユネスコスクールで進めている「おこめ」(RICEプロジェクト)などは、よいテーマになる。(見上委員)

○海外のユネスコスクールとの交流を推進することにより、生きた国際理解教育が可能になり、ESDの充実を期待できる。メール交流からはじまり、スカイプ交流や訪問交流などを通じて、若い世代同士が互いに親近感をもち、互いの文化に関心を深め、「心の中に平和の砦を築く」ことができる。とりわけ、歴史的に日本とつながりの深い隣国である韓国との国際交流は大きな意味をもっている。しかし、現実には交流相手を見つけることは容易ではない。そこで、両国のユネスコスクールが交流しやすいように、ユネスコスクールリストを交換し、交流を希望するユネスコスクール間の情報を提供し合ってはどうだろうか。ミン韓国事務総長の発言によると、韓国でもユネスコスクール間の交流を進めているとのこと。日韓ユネスコの共同事業として展開できるのではないだろうか。(大津委員)

4)ESDの普及・推進に当たり、学校と地域の連携強化をどのように図るか?

○連携強化の障害は、縦割り行政から来る難しさもある。国連大学の進めるRCEの活動は学校と地域の連携強化に貢献すると思われるが、これは自治体のトップ以下が一定の認識を持てるからのように思われる。少なくとも、学校単位での努力でなく、教育委員会を巻き込んだ活動にすべきで、ESDは防災教育、地域文化遺産など地域に密着したテーマや内容を含んでいる。そのことによって、故郷を大切に思い、誇りに思い、そして参画しようとする子どもが育つことから、地域や自治体の理解を得やすい。(見上委員)

○学校の地域における活動も重要。中学生がお年寄りを支援する活動など、日頃から構築している地域と学校のネットワークは、震災時にも生きてくる(東日本大震災での経験)。(見上委員)

○世界遺産をめぐり各地で展開されている自治体や地域住民の方々の活動に接していると、登録の有無に関わらず、世界遺産そのものや、その周辺に広がる地域情報は、ESD推進の上で極めて有効な素材になる。(岡田委員)

5)ESDを活性化する上で、サステイナビリティ・サイエンスに基づく研究成果をどのように活用するか?

○日本ユネスコ国内委員会の「サステイナビリティ・サイエンス」に関するユネスコへの提言は、「持続可能な地球社会の構築」という共通の目標に向け、人文・社会・自然科学の各分野の知を統合した、科学的取組を推進することを目的としているが、その研究成果が、ESD教育メソッドや教材という形でまとめられ、ESDの教育現場で実際に活用できる、有効なツールとなることを強く期待。そうなれば、最先端科学の知の統合に裏打ちされたESDとして確立され、国際社会の新しい「常識」として、各国の学校教育の中でも必然的に取り入れられる道筋がつき、ESDの発展に大いに寄与する。(西園寺委員)

○環境問題を解決するために科学の力により調べ、解決しようとすることに子どもたちは熱心。持続可能な社会を実現するために科学を勉強する、自分が社会に役立つと考えられれば、科学を学ぶことへの意欲も増し、その結果、教科の学力も向上し、思考力も増す。(見上委員)

○大学での活動として、大学のESD教育・研究センター、RCE、EcoLeaDがあるが、ESDを横串としてESD関連活動の連携を図ることにより、ビジビリティーを一層高められるのではないか。(西園寺委員)

6)公民館、博物館等の社会教育活動や企業活動の中でどうESDを推進していくか?

○ESDは、生涯学習のテーマとしても大変に重要である。学校だけでなく、文部科学省生涯学習政策局などの協力も得て、社会教育活動の中でも扱い、高齢者が身につけている「もったいない」という精神なども、子どもたちとの交流を通じて、子どもたちに素直に伝わる。(見上委員)

○博物館等での活動においても、ESDの要素があるので、しっかりとESDを打ち出してもらえるよう調整すべき。(金澤委員、佐藤委員)

○社会教育活動において、あるいは企業のCSRとして、環境の分野からESDへの取組が進められ、実績を積んでいる。しかしユネスコとの関連は意識されていないため、国内委員会、文部科学省及び環境省間の連携を図る。(菅原委員)

○ESDが浸透してきている学区では、ESDを体験した子どもたちを次のステップへ導く方向性として、自治会や公民館活動にその広がりを求めてはどうか。そのためには、生涯学習・県民大学などで、ESDに関する講座を開設し、ESDアドバイザー又はサポーター(仮称)の育成を行う必要がある。特に教師やユネスコ会員、教育委員会を退職する方々にまず関わっていただき、受講修了者が地域の自治会へESD出前講座としてつないでいく。質の高い教育と持続可能な社会の実現を目指すには、加盟校の数を増やすと同時に地域での広い支援が必要。(宇佐見委員)

その他)

○ESDは概念として難しく、学校には普及しているが一般には普及していない。ESDの積極的な推進は大切なことであり、一般の人にも理解しやすい言葉でどのように一般へ普及していくか議論すべき。(二瓶委員)

○NGOを含めて横のつながりを持たせる場を具体化するための方策を検討すべき。(重委員)

(了)

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