我が国におけるユネスコ活動の活性化に関する審議報告(骨子案)

平成25年9月10日

1.若者、企業の参加によるユネスコ活動の一層の促進

1.総論

(1)これまで、各地のユネスコ運動の基盤となってきたユネスコ協会の会員が高齢化しており、ユネスコ活動への参加者の裾野を広げることが必要。このため、企業あるいは若者等が積極的に参加したくなるようなプラットホームの構築が必要であり、その具体的な形態等についてさらに検討すべき。プラットホームは、ユネスコ活動に積極的に参加する意欲のある人を中心に形成し、議論の過程をオープンにすることで、更に関心ある人を呼び集めることが可能となる。

(2)ユネスコというと世界遺産のイメージが強いが、世界遺産をきっかけとして他のユネスコ活動にも関心を持ってもらえるような仕組みを検討すべき。また、他の幅広い活動を含むユネスコ活動、ユネスコ国内委員会をイメージしやすくするよう工夫すべき。

(3)ユネスコ活動について伝えたいメッセージを明確にした上で、ホームページ、SNS等を活用するべき。メッセージは、過去のイベント等に関する記録ではなく、個人がユネスコ活動に関わることによって、いかに未来の形成につながるかを示すものであることが必要である。

(4)メディア等を通じたビジビリティの向上を図るため、積極的に記者への情報発信の場を設けるべき。

(5)ユネスコ活動には、世界遺産に限らず、記憶遺産、エコパーク等、地域振興に資するプログラムも数多くある。こうした観点からもメディア等を通じてこれらのプログラムの知名度を高め、地元企業等を含む広い層から積極的に関心を持ってもらうよう図るべき。

(6)幅広い層をユネスコ活動に巻き込むためには、教育委員会と知事部局の連携は不可欠であり、促進すべき。

2. 若者のユネスコ活動への参加について

(1)多くの若者がボランティア活動をはじめ、社会活動に参加する意欲があり、震災の際には積極的な参加が見られたが、ユネスコ活動は、こうした若者の関心をひきうるものであるにもかかわらず、認知度があまり高くない。ユネスコ関係団体と、ボーイスカウト、ガールスカウト、ローターアクト等、若者が参加する他の活動との連携を検討すべき。

(2)大学のユネスコクラブと国内委員会との連携、国内外のユネスコクラブ間の交流や、ユネスコクラブと若者のボランティア団体等との連携を促進すべき。

(3)ユネスコ活動表彰制度など、優れたユネスコ活動への取組を文部科学省あるいは日本ユネスコ国内委員会が顕彰する仕組みを設けるべき。

(4)若者がユネスコ活動に参加するきっかけが限られており、例えば関係団体等による途上国でのスタディツアー等、若者がユネスコ活動に参加する機会を積極的に提供すべき。

(5)世界遺産委員会のユースフォーラムのように、若者が一定期間一か所に集まり、一つのテーマについて議論する場を設けることは有意義であり、ユネスコが開催する各種ユースフォーラムに若者が参加しやすい環境を整備するとともに、類似のフォーラムを国内においても検討すべき。

3. 企業のユネスコ活動への参加について

(1)ユネスコ本部でも、近年、企業との連携が重視されており、また、ユネスコ活動を社会全体に浸透させるという観点からも、企業に積極的にユネスコ活動に参加してもらうことが必要であり、具体の方策について更に検討すべき。この際、企業に期待されるのは寄附等の資金の提供のみでなく、企業あるいはその社員がユネスコ活動に取り組むことも求められていることを明確にすべき。

(2)ユネスコ活動への参加が、企業にとってもメリットとなり、また、そのメリットが企業間で広まっていくような仕組みが必要であり、更に検討すべき。その際、各社のCSR活動の方針を十分に把握した上で取り組むべき。

(3)企業が率先して参加したり、寄附したりしたくなるような仕組みを作るべき。少額の公的資金が企業の積極的な参加・資金提供の呼び水となることも多いため、こうした観点から、国としての補助の在り方を検討すべき。

2.学校教育・社会教育等を通じた持続可能な開発のための教育(ESD)の一層の推進

1.ユネスコスクールについて

(1)ユネスコスクールは現在615校を数えるに至り、ユネスコスクールのない県の解消を目指しつつ、今後は質の確保に重点を置くべき。

(2)国内外のユネスコスクール間の交流を促進するため、ユネスコスクールウェブサイトの交流機能や活動内容の発信(日本語・英語)の充実を図るべき。また、交流に当たっては、共通のテーマ(例えば、お米、気候変動、防災・減災教育)を明確に設けることで、交流内容の質が高まる。交流事業は、ユネスコスクール活動の継続につながる。

2.ESDに関することやユネスコスクール以外の学校でのESDの推進について

(1)ESDの知名度を上げるために、一般の人にESDを分かりやすく伝えるようなツールを考案するべき。なお、ESDについて報道を通じてより一般の方々に伝わるよう工夫するべき。

(2)ESDが学校教育の内容にどのように寄与するかを明確にする等、教育委員会にユネスコスクールやESDの活動の理解を得ることが必須である。こうした観点から学校間や教育委員会間の交流を通じた優良事例の共有を進めるべき。

(3)初等中等教育におけるグローバル人材育成のために、ユネスコスクールやESDの活動を核として取り組むべき。

(4)地域の持続的発展に向けて、地域の国連大学RCE、JICAの地方支部、企業、ロータリークラブ等、多様なステークホルダーが一体となって取組を進めるべき。

(5)ユネスコスクール以外の学校におけるESDを推進することが重要であり、このためユネスコスクールのESD推進拠点としての役割を強化するべき。

(6)教育委員会や大学が中心となり、ユネスコスクールとともに、コンソーシアムを形成し、ユネスコスクール以外の学校へのESDの実践普及及び国内外のユネスコスクール内の交流を促進する仕組みを作るとともに、ESDコーディネーターを通じたESDに関する連携強化を促進する方策及びESDコーディネーター相互の交流を活発にする方策を検討するべき。

(7)地域の実情に応じ、ユネスコスクールは公民館や地域の資料センター等の社会教育施設との連携を図るべき。その際、我が国の公民館活動は、特にアジア諸国の関心が高いことから、国際連携も視野に入れて活動するべき。

(8)ESD活動に積極的に取り組む企業を顕彰する仕組みを検討するべき。

3.ESDの理論的裏付けについて

(1)ESDの教育効果について、評価指標を明確にし、客観的なデータで示すことが必要。ESDがどのように今後求められる資質・能力の向上に貢献しているかを理論的に明らかにするような調査研究を進めるべき。

(2)ESDは、我が国の教育に必須の概念であり、また「知識だけではなくスキルや態度」の育成を目標とする国際的な潮流においても重要な概念である。ESDの概念を理論的に強固なものとし、ESDが政策面でより的確に位置付けられるよう検討するべき。

(3)既に実施されているESD関連の研究を活用し、また、これまでのESDの実践について学習評価の観点から問い直すことで、ESDの概念を整理するべき。

(4)ESDの概念を深く追求することも重要だが、アウトリーチの観点から、世界遺産学習と観光等というように、ESD以外の分野との連携を図るべき。

4.「ESDに関するユネスコ世界会議」に向けて

(1)「ESDに関するユネスコ世界会議」においては、我が国の進めてきたESDについて効果的に発信するべき。また、会議の成果は、2015年以降のEFAの議論にもつなげるべき。

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