日本ユネスコ国内委員会総会(第156回)議事録

1.日時

令和7年3月11日(火曜日)15時30分~17時30分

2.場所

文部科学省旧庁舎6階第二講堂(対面・WEBのハイブリッド開催)

3.出席者(敬称略)

〔委員〕田代副会長、青柳委員、石橋委員、伊藤委員、井上法雄委員、井上公子委員、井上洋一委員、井本委員、大島委員、大谷委員、大矢委員、沖委員、奥下委員、押谷委員、岡本委員、小山田委員、川村委員、北村委員、木原委員、黒川委員、小浦委員、肥塚委員、児玉委員、小林委員、佐藤美樹委員、末吉委員、菅原委員、鈴木委員、添石委員、髙橋秀行委員、髙橋裕子委員、田中委員、中澤委員、成田委員、西野委員、野間委員、林委員、藤本委員、日比谷委員、細田委員、堀木委員、松田委員、溝内委員、道田委員、若林委員、和田委員、渡邉委員

〔外務省〕川瀨国際文化協力室長
〔文化庁〕木南文化遺産国際協力室室長補佐
〔文部科学省〕武部文部科学副大臣、藤原文部科学事務次官、北山大臣官房国際課長
 
〔事務局〕渡辺その子事務総長(文部科学省国際統括官)、匂坂副事務総長(同省国際統括官付国際交渉分析官)、本村事務局次長(同省国際統括官付国際戦略企画官)、小野事務総長補佐(同省国際統括官付国際統括官補佐)、生田目事務総長補佐(同省国際統括官付国際統括官補佐)、岡田事務総長補佐(同省国際統括官付ユネスコ協力官)、その他関係官

4.議事

【田代副会長】  皆様、本日は御多忙の中、御参加いただきまして、ありがとうございます。定刻となりましたので、事務局は定足数の御確認をお願いいたします。
【小野国際統括官補佐】  失礼いたします。本日は、会場で33名、オンラインで14名、計47名の委員に御出席いただいております。委員の過半数ですので、定足数を満たしております。
【田代副会長】  ありがとうございます。ただいま事務局から定足数が満たされているとの報告がございましたので、第156回日本ユネスコ国内委員会総会を開会いたします。
 本日の総会は対面とオンラインのハイブリッドで開催いたします。
 なお、本日の議事進行につきましては、ユネスコ活動に関する法律の規定に基づき、会長代理に代わりまして、副会長である私が務めさせていただきます。
 国内委員会の規定に基づき、傍聴を希望される方には、Zoomウェビナーを通じて公開いたします。御発言は、そのまま議事録に掲載され、ホームページ等で公開されます。
 それでは、議題1、日本ユネスコ国内委員会の人事に入ります。
 この議題では、国内委員会会長の互選を行います。国内委員会委員の人事に関する事項についての審議とするために、この会議の議事を非公開とします。
(中略)
 本日の会議には、武部新文部科学副大臣に御出席いただいております。はじめに、武部副大臣より御挨拶をいただきます。
 副大臣、よろしくお願いいたします。
【武部文部科学副大臣】  文部科学副大臣の武部新でございます。
 第156回日本ユネスコ国内委員会総会の開会に際しまして、御挨拶をさせていただきます。委員の皆様におかれましては、日頃より、日本ユネスコ国内委員会の取組に対しまして、御理解と御協力をいただき、誠にありがとうございます。
 世界は依然として、戦争や自然災害等の多くの課題に直面しており、国際情勢は不安定な状態が続いております。また、各国で首脳の交代や国内政治の混乱等が相次いでおり、国際政治が大きく転換しつつあります。このような変革の時期においてこそ、ユネスコはその理念を再確認し、グローバルな課題の解決に向けて、教育、科学、文化分野においてイニシアチブを発揮していくべきだと考えております。
 本年11月には、ウズベキスタンのサマルカンドで第43回ユネスコ総会が開催されます。アズレーユネスコ事務局長が2期8年の任期を満了し、新しい事務局長が選出される予定であり、ユネスコにとってもトップが交代する年になります。
 また、本日の総会では、来年のユネスコ創設80周年、日本の加盟75周年に関する議題もあると伺っております。これらの節目を迎える中で、周年事業の実施を通じて、国内のユネスコ活動に関わる皆様において、ユネスコ活動に関する連携強化やネットワークの拡大について、改めて考える機会になることを期待しております。
 昨年10月末から11月にかけて、ブラジルのフォルタレザで開催されましたユネスコ・グローバル教育会合に、あべ文部科学大臣が出席いたしました。会合では、科学技術イノベーションやデジタル革新の教育の推進、そのための人材育成の方法等について、世界各国の参加者との議論が行われました。本会合で採択されたフォルタレザ宣言は、マルチセクターの行動、SDG4達成に向けた取組の加速化、教育への投資の増大、そしてグローバルな協力のコミットメントに向けて必要な行動を提案し、我々が共に取り組むべき重要な課題を明確に示しています。教育はもちろんのこと、科学、文化を通じ、我々が取り組むべき重要な課題の解決に向けて、多様なユネスコ活動がより効果的に推進されるよう、日本ユネスコ国内委員会の多様な分野、領域を代表する委員の皆様におかれましては、引き続き、活発な御議論をいただけますと幸いです。
 最後になりましたが、新たに任命される会長のリーダーシップの下、今後、日本ユネスコ国内委員会において活発な議論が行われ、日本のユネスコ活動が更に発展していくことを祈念しております。
 本日の議論が有意義なものとなることを期待しまして、私からの御挨拶とさせていただきます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
【田代副会長】  ありがとうございました。武部副大臣はこの後、次の御予定がございますのでここで御退席されます。
 武部副大臣、ありがとうございました。
【武部文部科学副大臣】  ありがとうございます。よろしくお願いします。
【田代副会長】  次に、昨年9月6日に開催されました第155回日本ユネスコ国内委員会総会以降、委員の異動がございましたので、事務局から御紹介いたします。
【小野国際統括官補佐】  失礼いたします。前回の国内委員会総会の審議に基づき、昨年12月1日付けで新たに就任された委員の皆様を御紹介させていただきます。
 井上法雄委員。井上公子委員。井本佐智子委員。大矢彰子委員。岡本美津子委員。小山田隆委員。北村友人委員。児玉聡委員、オンラインで御出席でございます。新川浩嗣財務事務次官、本日、御欠席でございます。末吉里花委員。菅原久誠委員。添石幸伸委員。成田和憲委員。西野裕代委員。日比谷潤子委員。堀木卓也委員、オンラインで御出席でございます。松田陽委員、オンラインで御出席でございます。山内和也委員、本日、御欠席でございます。若林美和子委員。和田隆志委員。最後に、渡辺その子文部科学省国際統括官。
 次に、衆議院の推薦により昨年12月20日付けで御就任された委員を御紹介いたします。
 青柳陽一郎衆議院議員。奥下剛光衆議院議員。木原稔衆議院議員。小林茂樹衆議院議員。
 次に、参議院の推薦により、昨年12月24日付けで、佐藤正久参議院議員が御就任されております。本日、御欠席でございます。
 最後に、先月開催されました教育小委員会において、北村友人委員が、互選により委員長に御就任されておりますので御報告いたします。以上です。
【田代副会長】  ありがとうございました。
 新たに着任された皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
 続きまして、本日の会議の配付資料につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。
【小野国際統括官補佐】  失礼いたします。本日の会議資料は、会場の皆様におかれましてはお手元のタブレットで、それから、オンラインで御参加の皆様におかれましてはPDFファイルでお送りしております。全て1本のファイルとなっております。落丁等ございましたら事務局までお知らせください。
 配付資料の構成ですけれども、資料が1番から4番、附属資料が1番、参考資料が1番から5番という構成になってございます。以上です。
【田代副会長】  ありがとうございました。
 それでは、議題2、最近のユネスコ関係の動きに入ります。
 事務局及び外務省から報告いただきたいと思います。
 御意見、御質問等につきましては、全ての報告の後、まとめてお願いいたします。
 なお、これ以降の議題全てに共通いたしますが、1人でも多くの御意見、御質問いただきますように、お1人につき1分以内で御発言いただくようお願いいたします。
 それでは、まず、事務局から御報告をお願いします。
【本村国際戦略企画官】  それでは、お手元の資料1-1を御覧ください。第220回ユネスコ執行委員会につきまして御報告いたします。昨年10月9日から23日、ユネスコ本部、パリにおいて開催されました。この執行委員会は、選挙によって選ばれた58か国により構成されています。任期が4年間、我が国は、1952年以来、継続して執行委員国を務めております。原則、春と秋の2回、パリのユネスコ本部で開催されるものでございます。
 2ページおめくりいただきまして、今回の執行委員会の全ての議題でございます。行財政、教育、科学、文化、幅広い分野におきまして議論がなされております。
 1ページお戻りいただきまして、主な議題について簡単に御説明いたします。上から2番目でございますけれども、SDGsの17のゴールのうち、4番目のSDG4、教育の目標について、モニタリング、進捗状況の報告がございました。各国からは、持続可能な社会の創り手を育成するESDにつきまして、SDGsの全ての目標の実現に寄与するものということで多くの国が支持を表明いたしました。
 続きまして、その下のユネスコ事務局内部監査部門によるASPnet、我が国ではユネスコスクールと呼んでおりますけれども、これに関する評価でございます。内部監査の評価結果及び今後の対応方針につきまして報告があったところでございます。
 最後の、科学分野でございますけれども、災害リスク軽減のための仙台防災枠組みの実施は我が国から提案いたしました。ちょうど本日、3月11日でございますけれども、東日本大震災を受けて作られた仙台防災枠組みへの対応を強化することを求めるとともに、加盟国の積極的な参加を促す決議案を採択しております。
 執行委員会については、以上でございます。
 続きまして、資料1-2を御覧ください。令和6年度ユネスコウィークについて、結果報告でございます。
 昨年11月25日から12月1日にかけまして、国際シンポジウム、ユネスコスクール全国大会、ユースフォーラム等のイベントを開催いたしました。
 簡単ではございますけれども、報告は以上でございます。
【田代副会長】  ありがとうございました。
 続きまして、外務省から御報告お願いいたします。
【川瀨国際文化協力室長】  外務省大臣官房国際文化協力室長の川瀨でございます。本日は、最近のユネスコ情勢ということで3点ほど御説明申し上げます。
 1点目は予算の関係でございまして、前回の第155回日本ユネスコ国内委員会でも中間報告させていただきました。ユネスコ分担率は国連分担率に準拠して算出をされますところ、昨年末に国連の第5委員会において、今後3年間の国連分担金の改定がなされたことを受けまして、ユネスコの分担率も改定されました。
 その結果として、日本の分担率は、今後の3年につきましては、これまでの8.091%から6.984%に変更されることになっております。これにより、分担の順位は第1位が米国22%、第2位が中国20.16%、そして日本が第3位で6.984%という形になりました。そのあとはG7諸国が続きますが、第4位にドイツ、第5位にイギリス、そしてフランス、イタリア、カナダと続きまして、第9位に韓国、第10位がロシアという状況になっております。分担負担率につきましては、加盟国の経済力や国民所得、人口等を総合的に考慮されて算出されるものでございますので、分担率の上下が結果的に出てくるものでございますけれども、日本政府としましては、引き続き、第3位の負担国としてユネスコとの協力を進めてまいる考えでございます。
 第2点目としまして、昨今ニュース等でも報道されてございますが、米国によるユネスコに対するレビューについて簡単に申し上げます。現在、米国のトランプ政権下では、本年1月の大統領就任直後から、パリ協定からの離脱あるいはWHOからの脱退等々に関する大統領令の署名が矢継ぎ早に行われているなど、国際機関からの脱退に関する動向も注目されてございます。
 この点、ユネスコと米国の関係につきましては、直近ではトランプ第1次政権下の2018年にユネスコからの脱退が表明されまして、その後、バイデン政権の2023年に復帰に至ったわけでございますが、第2次トランプ政権においては、少なくとも、パリ協定やWHOのように即日脱退の表明という形にはなりませんでした。その一方で、2025年2月4日付の大統領令におきまして、90日以内、すなわちカレンダーで申し上げると、2025年5月3日までにユネスコにおける米国の加盟国としての地位をレビューするという決定がなされておりまして、現在、このプロセスが米国内で進んでいると理解をしております。特にこのレビューにおかれましては、ユネスコが米国の利益をどのように支援するのか、あるいはユネスコ内の反ユダヤ主義や反イスラエル感情に関する分析も含まれてございまして、今後こうした点も含めて、米国内でのレビューが出た上で何らかの判断がなされると考えておりまして、重視をしている状況でございます。
 第3点目に、冒頭に御紹介ございましたが、本年の11月には今後の数年間あるいは10年近くにわたって、ユネスコ事務局の体制に大きく関わる事務局長選挙が行われます。事務局長選挙は、時には十数名の混戦になることもあると承知しておりますが、今回の選挙は、少し状況が異なっております。というのも、現時点で立候補を対外的に表明しているのは、エジプトのエルアナーニー元観光・考古大臣のみとなってございまして、少し異例の事態という気もいたします。
 この背景として、例えばアジアであれば、本日御列席いただいておりますけれども、日本の松浦晃一郎氏がユネスコ事務局長を務められたことがございますけれども、エジプトはアフリカグループではなく中東グループに所属しておりまして、ここからは過去、事務局長を輩出したことはございません。また、エジプト自身、これまでも事務局長選挙には違う候補者が2回チャレンジしておりまして、今回3回目という流れになっており、随分前から選挙活動を精力込めてやっている状況もある中で、なかなか対抗馬が出にくいという分析もございます。ただ、選挙は選挙でございますので、3月の中旬には候補がまとめられて、誰が候補なのかということが対外的に、正式に明らかになりますけれども、場合によっては終盤でまた対抗馬が出てくるかもしれないということでございます。
 いずれにしましても政府としましては、本年末からの新しい事務局長体制においても、引き続き、これまでのユネスコとの協力関係を維持、強化していくべく、選挙関係の動向も含めて注視しながら適切に対応していきたいと考えております。
 以上でございます。
【田代副会長】  御報告ありがとうございました。
 それでは、ただいまの報告につきまして、御意見、御質問のある方は挙手をお願いいたします。なお、オンラインで御参加いただいている委員におかれましては、挙手ボタンをお使いいただければと思います。事務局にて確認し、私から御指名させていただきます。
 では、よろしくお願いいたします。
 松浦特別顧問、よろしくお願いいたします。
【松浦特別顧問】  今、外務省から言及がありました松浦です。
 私は1999年から10年間、ユネスコの事務局長を務めました。今の外務省の報告でこの次の10年というお話がございましたけれども、私の1期は6年だったのですが、その途中で憲章の改正があって1期4年になりましたものですから、私は6年、2期目は4年で、10年です。私の後任からは4年、4年で8年です。ですから、今、外務省から今後10年という話があったけれども、もちろん再選されればという前提ですが、今、ユネスコの事務局長の任期は4年になっているということを念のために申し上げます。
 以上です。
【田代副会長】  ありがとうございました。
 いかがでしょうか。
 それでは、よろしければ、次の議題に移らせていただきたいと思います。
 議題3、我が国におけるユネスコ活動の現状と今後の取組に入ります。
 議題3のうち、(1)令和7年度ユネスコ関係予算について、事務局から御報告お願いいたします。
【小野国際統括官補佐】  失礼いたします。資料2-1を御覧ください。令和7年度ユネスコ関係予算(案)の資料になります。現在、国会で御審議いただいているものでございますけれども、左半分がユネスコへ出している分担金と任意拠出金、右半分が国内でのユネスコ活動の推進の予算になってございます。主なポイントに絞って御説明させていただきます。単位は全て100万円単位となってございます。
 分担金は35億8,800万円です。先ほど御説明がありました分担率が左下の表に記載されております。こちらの減少に伴いまして、分担金は7%ほど下がっております。
 それから任意拠出金も、一番上の外務省は、3億4,200万円が対前年度で30%と、少し下がってございます。この任意拠出金全体で、一番下の数字になりますけれども、6億6,400万という形で、全体で20%ほど下がってございます。
 それから右の国内のプラットフォーム事業ですけれども、昨年度まで補助金も含めて3本実施しておりましたけれども、今回、ちょうど5年の実施期間を終えまして、新しく組み替えて、合計で1億4,800万円を予算計上させていただいております。これまでプラットフォームということで、ホームページをポータルサイトとして構築して、そこで世界遺産や、ユネスコスクール、ユネスコ世界ジオパーク等のプログラムの登録地域をマッピングしてポータルで示すほか、各種イベントの情報発信、ユースの活動の情報発信といったことを一元化して行ってございました。その事業を引き続き行います。それに加えて2番目のポツになりますけども、ユースによるユネスコ活動の活性化でしたり、ユネスコスクールのグローバルなネットワークを活用して国際的な交流を後押しする事業を特に重点的に計上させていただいています。この予算で、これまで以上にユネスコ活動を活性化していけると考えております。
 最後に、右下にこの予算を使ってユネスコに文科省、外務省、国交省の職員を派遣している派遣先を計6名分表示させていただいております。
 以上でございます。
【田代副会長】  ありがとうございました。
 それでは、ただいまの事務局からの御報告につきまして、御質問、御意見がありましたらよろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。
 では、御質問がないようなので、次の議題に移らせていただきます。
 続きまして、(2)専門小委員会からの報告について、教育、科学、文化・コミュニケーション小委員会の各委員長から御報告をお願いしたいと思います。
 それでは、まず、教育小委員会の北村委員長からよろしくお願いいたします。
【北村教育小委員会委員長】  ありがとうございます。
 先ほど、御紹介いただきました東京大学の北村と申します。このたび、委員を務めさせていただき、また、この委員長という役を務めさせていただきます。
 もう20年ほど前ですけど、松浦特別顧問が事務局長だったときにユネスコの本部で職員をしておりまして、それから国内の大学に移ったのですが、、非常にこのような素晴らしい場に参加させていただけることをとても光栄に思っております。どうぞよろしくお願いします。
 それでは、教育小委員会、報告させていただきます。
 教育小委員会では4つの議題について議論を行いました。特に、最初はユネスコ関係の様々な会議について事務局から御紹介がありまして、それを踏まえSDGs、特にESDの推進について、皆様御承知のように日本が提唱した非常に国際的な大きな運動ですので、今後更に、日本としても積極的に関わっていくべきだという議論を交わしました。その中で、特に、学習指導要領でも規定されているような探究的・主体的に本質を学ぶような学びの在り方を、ESDを通してしっかりと実現していくことの重要性等が議論になった次第です。
 2つ目の議題としまして、「平和、人権、持続可能な開発のための教育に関する勧告」の国会報告がなされました。こちらは、昨年の秋にユネスコ総会で採択された勧告についてのものです。この勧告の基になりましたものが、1970年代に国際理解教育等の推進に関してされた勧告があったのですが、それがもうかなり時間がたった中で、昨今の時代状況に合わせた形で、特に平和、人権、そして、持続可能な開発に焦点を当てた勧告としてユネスコで新たに採択されたものとなります。こちらについて、一般の方々とか、特に学校関係者等まだまだ知られておりませんので、しっかりとそれを国内でも周知していくことが大事だということが議論に上がりました。
 3つ目の議題はユネスコスクールについてですけれども、ユネスコスクール、今、国内で1,000以上になりまして、量としては非常に増えてきているわけですけれども、ここから大事なのが質の向上であろうと考えております。量はある程度ここで実現してまいりましたが、それぞれのユネスコスクールにおいて、より充実した教育を行っていくための質の向上というのが大事だということが議論に上がりました。
 最後はユネスコチェア/ユニツイン事業ですけれども、こちらは大学におけるユネスコチェア、また、大学のネットワークであるユニツインについての公募を行いましたけれども、今年度は残念ながら申請がございませんでした。ただ、検討されている大学もおありということで、来年度、その申請が上がってくることを期待したいということを議論いたしました。
 最後に、必ずしも教育に限らないことですけれども、ユネスコ活動が国内では非常に大事なものとして行われておりますが、地域のユネスコ活動への若者たちの参画が非常に低調になってきているところがありますので、そちらについて、今後しっかりと考えていく必要があるということも議論になったことを申し述べさせていただきます。
 簡単ではございますが、教育小委員会からの御報告とさせていただきます。
【田代副会長】  ありがとうございました。
 続きまして、科学小委員会の沖委員長よろしくお願いいたします。
【沖科学小委員会委員長】  それでは、科学小委員会について御報告させていただきます。今年の2月25日に開催いたしました。主な議論としましては、まとめた資料、8枚目にございます通り、まず執行委員会の状況につきまして、先ほどのお話を共有いただきました上で、科学の3要素であります人間と生物圏、生物多様性のMABの分科会の委員の指名、それから、政府間海洋学委員会(IOC)につきましては、本日も御参加いただいておりますけれども、道田委員がIOCの議長を日本人として初めて務められておりますので、これを機会に日本全体としてサポートすべきであるといった議論を大分進めるようにいたしました。
 それから、水分野の政府間水文学計画(IHP)ということで、IHP50周年記念行事としまして、6月11日にGlobal Pivot Eventがパリのユネスコ本部で開催されます。それを受けて、全世界の各国のIHPの委員会で、ぜひ盛り上げるイベントをしてほしいという通達が本部から来ておりましたので、日本国内でもやろうということで皆様方と話合いをしまして、各省庁、各大学、各研究者、あるいは民間、そしてNGOの皆様方も交えて、3月26日に東京大学でイベントを行うことにいたしました。このIHPと申しますのは、1965年からの国際水文学の10年と、それに続く政府間水文学計画がほぼ5年から10年置きに実施されまして、ちょうど今年で50周年ということになっております。
 また、人間と生物圏(MAB)計画につきましては、本日も渡邉委員がいらっしゃいますけれども、策定について報告がございまして、「国連生態系回復の10年」と「国連海洋科学の10年」との連携の可能性について発言がおありでした。
 また、ユネスコ世界ジオパーク、さらにはニューロテクノロジーの倫理に関する勧告等の話、そして、地域ユネスコ協会における科学分野の取組ということで、科学小委員会全体といたしましては、科学の3つの分野、海と生物多様性と水がもっと連携できないか、あるいは地域ユネスコ委員会との連携を通じて、よりユネスコの理念が社会に伝わっていくようにしなければいけないのではないか、ユニセフと区別が付いてない方が多いことを何とかしたいとか、そういう議論を一生懸命いたしました。
 以上でございます。
【田代副会長】  ありがとうございました。
 最後に、文化・コミュニケーション小委員会の井上洋一委員長、よろしくお願いいたします。
【井上洋一文化・コミュニケーション小委員会委員長】  文化・コミュニケーション小委員会委員長の井上でございます。
 3月4日に開催されました第13回文化・コミュニケーション小委員会について御報告いたします。今回の小委員会は、世界文化遺産、無形文化遺産、世界の記憶、ユネスコ創造都市ネットワークについて議論いたしました。
 まず、ユネスコの条約に基づく事業として、世界文化遺産については1月にユネスコへ推薦書が提出されました「飛鳥・藤原の宮都」について、構成資産及び今後のスケジュールが説明されました。
 次に、無形文化遺産については、昨年12月に無形文化遺産代表一覧表へ登録決定された「伝統的酒造り」について評価結果が報告されました。
 続きまして、ユネスコの条約に基づかない事業として、「世界の記憶」について2月に実施された研修会の結果が報告されました。また、国内の登録申請の状況を踏まえ、良質な案件を積極的に発掘するため、暫定一覧表として案件を整備し、申請を後押しする仕組みを整える案が紹介されました。今後、2026年度をめどに作業を開始する予定とのことであります。
 続きまして、ユネスコ創造都市ネットワークについて、まず、昨年10月に公募が開始された2025年新規加盟申請について、国内審査の結果、越前市及び高松市がユネスコへ加盟申請したことが報告されました。また、初の取組として、1月に丹波篠山で同日開催されましたユネスコ創造都市ネットワーク国内ネットワーク会議・創造都市ネットワーク日本国際ネットワーク部会について概要が報告されました。
 最後に、あさひかわ創造都市推進協議会より、昨年10月に旭川で開催された「ユネスコ創造都市ネットワークデザイン都市旭川会議」について御説明いただきました。
 世界文化遺産及び無形遺産については、文化庁から補足説明をいただきたいと思っております。
 私からは以上でございます。
【田代副会長】  ありがとうございます。
 では、文化庁の御参加者様からよろしくお願いいたします。
【木南文化遺産国際協力室長補佐】  文化庁から世界文化遺産及び無形文化遺産について補足説明をさせていただきます。資料につきましては、附属資料1の27ページ、全体資料の59ページを御覧いただければと思います。
 まず、世界文化遺産についてですが、「飛鳥・藤原の宮都」につきましては、今年1月28日の閣議了解を経て、ユネスコに推薦をしております。来年夏頃に開催される条約の世界遺産委員会において、世界文化遺産登録の可否が審議、決定される予定となっております。
 次のページですが、無形文化遺産保護条約の関連でございます。昨年12月5日の無形文化遺産保護条約政府間委員会におきまして、「伝統的酒造り」のユネスコ無形文化遺産登録が決定されております。これによりまして、日本の無形文化遺産は、現在23件となっております。また、提案中の我が国の無形文化遺産についてですが、現在、新規案件として「書道」、拡張提案としまして3件、「和紙」「山・鉾・屋台行事」「伝統建築工匠の技」を提案中でございます。このうち3件の拡張提案につきましては、今年12月の条約の政府間委員会において、また「書道」につきましては、来年秋頃開催予定の政府間委員会において登録の可否が審議、決定される予定です。
 御報告、以上でございます。
【田代副会長】  ありがとうございました。
 それでは、ただいま御発表いただきました各専門小委員会につきまして、御質問、御意見ございましたら挙手をお願いいたします。
 では、私の目に入った順で申し訳ないですけれども、押谷委員、よろしくお願いいたします。
【押谷委員】  すみません、押谷でございます。
 地域のユネスコ協会から派遣されておりまして、北海道の江別ユネスコ協会に所属しております。先ほど、教育小委員会、それから文化・コミュニケーション委員会からもお話があったんですけれども、私自身は科学小委員会に所属しております。この場でお話しさせていただいてよろしいのかどうか疑問でございますけれども、先日の科学小委員会でも機会を頂きまして、地域のユネスコ協会が取り組んでいる科学の取組等を紹介させていただきました。地域のユネスコ協会では、市民、それから子供たちに向けて、科学分野に対する関心を高めるということが大事だと思っておりまして、様々な活動を行っております。
 以前の総会でも発言させていただきましたけれども、私たち地域のユネスコ協会の活動というのは、ユネスコ本部、それから日本の各専門家の方々の国際的あるいは地域的な課題について、取組を分かりやすく伝えるインタープリテーション、インタプリターの役割ではないかと考えているのですが、そのためには、この間の小委員会でも、道田委員から、地域のユネスコ協会から要望があれば、ぜひ話をさせていただくというお話をいただいております。
 もちろん当然、皆さんもそういう形でいただいていると思いますけれども、私たち自身のユネスコの活動に対する知識というのはなかなか受けていないというところもございますものですから、活動の平易な概要、今日も非常に、タイトルは教えていただくのですが、なかなか概要までは伝え切れないところもございます。そういう中で、ぜひともこの教育小委員会、科学小委員会、文化・コミュニケーション小委員会を通した中で、何かプラットフォーム的に私たち地域のユネスコ協会を支えていただくようなものができないだろうかと思っております。とりわけ科学分野、それから教育、文化、それぞれが大きな役割を持っているということを理解しておりますので、現行の3つの小委員会、これらは独立しておりますけれども、それらを束ねるようなプラットフォームみたいなものがあってもよろしいのではないかと思います。
 僭越でございますけども、御意見をさせていただきました。以上でございます。
【田代副会長】  ありがとうございます。ただいま大勢の皆様から御挙手をいただいたんですけれども、時間の関係上、右と左と1人ずつということで、左から日比谷委員、よろしくお願いいたします。
【日比谷委員】  大変細かいことで恐縮ですが、教育小委員会の御報告につきまして、主な議論(1)の最後のところの「子供たちが」というところの後の「探求的」は、これは「求める」でよろしいんでしょうか。
【北村教育小委員会委員長】  どうもありがとうございます。気づくべきでした。どちらでもあるんですけれども、「究める」と「求める」と。より究める方が探究的な学習等には、ふさわしいと思いますので、こちらの文字は訂正した方がよいかなと思いました。
【日比谷委員】  御検討ください。
【北村教育小委員会委員長】  ありがとうございます。
【田代副会長】  ありがとうございます。
 それでは、次の議題に移らせていただきたいと思います。次に、(3)次世代ユネスコ国内委員会からの報告についてです。まずは事務局より御報告がありますので、よろしくお願いいたします。
【小野国際統括官補佐】  失礼いたします。資料2-3-1を御覧ください。令和7年度次世代ユネスコ国内委員会について御説明させていただきます。
 令和6年度末をもちまして、委嘱期間の満了に伴い、新たに公募を行いました。表の真ん中、令和7年度の列を御覧ください。募集人数10名程度で募集をかけまして、応募が102名、審査をした結果、新規に11名を採用予定で、継続の委員を含めまして、23名となる予定でございます。
 前年は8名の応募でしたが、大幅に募集が増えておりまして、その結果を下の方に少し箇条書きにさせていただいています。この後御報告があると思いますが、昨年12月にユースフォーラムを開催しました。その結果、それをきっかけとして今回応募されたという声が非常に多かったため、活動の成果が上がりつつあると事務局としては考えております。以上です。
【田代副会長】  ありがとうございます。
 続きまして、次世代ユネスコ国内委員会の小林委員長と佐藤委員から活動の報告をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【小林次世代ユネスコ国内委員会委員長】  御紹介いただき、ありがとうございます。次世代ユネスコ国内委員会委員長の小林真緒子と申します。本日はオンラインでの参加となり大変恐縮でございます。私からは、次世代ユネスコ国内委員会の活動方針と今年度の活動概要を御紹介させていただきまして、その後、会場にいる佐藤委員から詳細と今後の活動方針について御説明させていただきます。
 それでは、次のページに行っていただきまして、まずは委員会の活動方針についてです。私たち委員会は、組織された2021年にユネスコ活動の活性化に向けた提言をさせていただきまして、これまではその提言に基づいた活動を進めてまいりました。ユース参画のロードマップの中期に当たる今年度は、既にユネスコ活動に取り組んでいるユースとの連携に特に注力をいたしました。
 次のページをお願いいたします。今年度は「未来をつくる多様な施策にユースの声が反映されたサステナブルな社会」を目指して、丸1番と丸2番に記載させていただいております、現在活動しているユースによるユネスコ活動の認知度向上や活性化、そしてユネスコ活動に参画するユースの裾野の拡大に努めてまいりました。これらを達成するために、こちらの事業構成にあるとおり、多様な活動に取り組んでまいりました。本日は、今年度重点的に取り組んだユネスコ活動への参画層、そして取組意向層との連携に関わる4つの活動を佐藤委員から説明いただきます。それでは佐藤委員、よろしくお願いいたします。
【佐藤次世代ユネスコ国内委員会委員】  ありがとうございます。次世代ユネスコ国内委員会委員の佐藤と申します。各ワーキンググループの実績と成果について御説明させていただきます。
 教育ワーキンググループでは、「ローカルSDGsユースネットワーク拡大作戦」といった企画の下、地域でSDGsに取り組む学生のための仲間作りを実施いたしました。きんき環境館主催のイベントにて、奈良教育大学ユネスコクラブ等と協力を行い、関西のローカルSDGsやESDに取り組む団体の取組紹介を行った後、参加者交流を行いました。成果としましては、合計42人の参加が得られ、関西で活動を行うユースとのつながりを作ることができました。令和7年度のイベントでは、このイベントでつながったユースとの企画検討を進めていきたいと考えております。
 他活動の実績として、ユネスコスクール関東ブロック大会にて分科会の運営、また、防災をテーマにしたユネスコ若者プロジェクトをユネスコクラブと共催いたしました。
 次のページになります。文化ワーキンググループでは、糸魚川ユネスコ世界ジオパーク×長岡技術科学大学との連携を行い、当委員会と長岡技術科学大学が糸魚川市で調査及び体験活動を実施いたしました。成果として、糸魚川ユネスコ世界ジオパークをPRするためのVR教材の開発等があります。
 他活動の実績といたしましては、日本ジオパーク大会、全国ジオパーク大会におけるユースセッションの運営サポート、また、金沢大学JU-MAB連携大学SDGs世代間学習プログラムへの参加を行いました。
 文化ワーキンググループでは、ユネスコ食文化創造都市臼杵ガストロノミーツアーを実施いたしました。当委員会委員が食文化について関心を有する大学生を対象にツアーを開催し、臼杵市の御協力の下、大学生9名が参加する4泊5日のツアーを実施いたしました。今後は、3月末に臼杵市長への報告を行い、新たな学習型ガストロノミーツアーの企画提案を検討していきたいと考えております。
 他活動の実績としまして、CCNJ国際ネットワーク部会、UCCN国内ネットワーク会議への参加、またユネスコ本部UCCN事務局日本人インターン生にインタビューを実施いたしました。
 ユースフォーラムについてです。「今から、ここから、わたしから~ユースが集い、創るユネスコ活動の未来~」と題して、ユースによるユネスコ活動の活性化を図ることを主な目的としたユースフォーラムを実施いたしました。全体会やテーマごとの分科会、ブース出展等を通して、参加者同士で交流し、学びや知見を共有できる機会の創出を行いました。昨年度はユースの参加者が極めて少なかったのですが、今年度は合計127名の参加が得られ、そのうちユースの参加者数が47名といった結果になりました。
 今年度の取組の成果と課題、今後の方針についてです。取組の成果と課題は2つありまして、1つ目が、既存のユースによるユネスコ活動の認知向上や活性化、2つ目がユネスコ活動に参画するユースの裾野の拡大があります。
 1の活動方針につきまして、連携が実現している団体は限定的であるといった課題があり、今後はユネスコ関連団体と広く連携するための仕組みを検討していきたいと考えております。
 2つ目の活動方針につきまして、ユースの参加者数は個人での参加は増加しているものの、まだまだ団体としての参加が少ないといった現状、課題があり、今後は、目的や具体的な活動内容の認知の促進や、ユネスコに関連している活動団体との連携を促進していきたいと考えております。
 各ワーキンググループにおける次年度の方針について説明させていただきます。
 教育ワーキンググループでは、「地域・社会の持続可能性について、学び合いによる教育の在り方の模索」とし、地域の課題に取り組む学生や大学ユネスコクラブ等の学生団体と連携して、ユースが主体となった教育の在り方を模索していきたいと考えております。
 科学では、「世代と立場にとらわれない地域資源を活かした地域社会の持続可能性の模索」として、糸魚川ユネスコ世界ジオパークと白山ユネスコエコパークの活動を主体とし、地域社会の課題抽出と地域資源を活かした課題解決の方法を検討していきたいと考えております。
 文化ワーキンググループでは、「地域が有する独自の価値を生かした社会創造の模索」、創造都市ネットワークを中心に活動を継続し、文化と価値の保護・発展・継承に関するユースの理解醸成と主体的参画を促進していきたいと考えております。
 最後になりまして、委員会活動の認知を広げていくために、どうしても委員会のみではリーチの幅に限度があると考えていますので、連携の可能性がある団体等がありましたら、御協力いただけたらと考えております。以上になります。
【田代副会長】  御発表ありがとうございました。次世代ユネスコ国内委員の皆様の御活動は将来に向けて非常に大切なものだと思いますので、来年度も引き続き、取組を期待したいと思います。日本ユネスコ国内委員会の、こちらにいらっしゃる皆様におかれましても、ぜひ御助言、サポートをよろしくお願いしたいと思いますので、ただいまの報告につきまして、御質問、御意見がございましたら、ぜひ御参考にいただけると思いますので、挙手をお願いいたします。渡邉委員、よろしくお願いいたします。
【渡邉委員】  ありがとうございます。活動の報告ありがとうございました。ユネスコ世界ジオパークやユネスコエコパークに対しても積極的に活動を進めていただけているということで、大変嬉しくお聞きしました。私はユネスコエコパーク関係のMAB計画分科会に所属しているんですけれども、ユネスコエコパークは、今年は大きな動きが一つありまして、10年に一度、ユネスコエコパークの世界会議というのが開かれます。それが今年の9月に中国の広州で開かれることになっています。10年に一度、会議をして、このユネスコエコパークの新しい10年の戦略、行動計画を決めていくという会議ですけれども、ユースの参画というのが大変重要なテーマになっています。
 世界のユースのネットワーク作りというのも大事なテーマとして議論される予定になっていまして、この世界会議の情報を皆さんにも共有していきたいと思いますので、うまくすれば世界のユースとこのテーマでつながれる大変良い機会になる可能性もあるので、その辺、参加について情報を注視しつつ検討してもらえたら良いなと思いました。よろしくお願いいたします。以上です。
【田代副会長】  渡邉委員、アドバイスありがとうございました。末吉委員、よろしくお願いいたします。
【末吉委員】  御報告どうもありがとうございます。一般社団法人エシカル協会で代表を務めております末吉里花と申します。私は日頃サステナビリティやエシカルについて子供たちや大人に向けても普及啓発活動を行っているんですけれども、ユースの皆様がこれほどまでに取組を積極的に行ってくださっていることを非常に心強く感じました。ありがとうございます。
 昨年はユースフォーラムでも私もお世話になったんですけれども、連携をどのように増やしていくのかというところが課題であるとおっしゃっていたのをよく覚えております。
 そこで、ユースの活動を私たち大人がより応援していくためのヒントを得るために、二つ質問をさせていただきたいと思います。まず一つが、地域に根差したユネスコ関連団体との連携がうまくいっているところというのは何が鍵なのでしょうか。連携がうまくいっている理由が、もし何かあればぜひ教えていただきたいと思います。
 それから二つ目ですが、今後の方針で、ユネスコ関連団体と広く連携するための仕組みを検討しますということをおっしゃっていましたが、もし現段階で何かお考えのことがあればお聞かせください。よろしくお願いいたします。
【田代副会長】  御質問ありがとうございます。こちらにつきましては小林委員長からの御回答でよろしいでしょうか。
【小林次世代ユネスコ国内委員会委員長】  末吉委員、二点質問いただきありがとうございます。まず、一点目の連携がうまくいっているところは何がキーなのかというところについてですけれども、まず、最初の出会いというか、については、これまで委員の皆様方ですとか、これまでこういう発表させていただいたときに、例えば関東のユネスコ活動のブロック大会ですとか、ジオパーク全国大会ですとか、そういう既存のそういった大会等に呼んでいただいて、そこで実際にユースとのつながりができて、企画に入っていくというところが、今、最初のきっかけになっておりまして。
 連携がうまくいっているところというのは、そこで実際につながりができて、1回イベントをやるとか、大きな、一緒に何かを作るということを、一緒に、濃い連携と言いますか、そういうことをできているところは継続的につながりができているなという形があるんですけれども。
 一方で、一つ一つの団体とかなり濃い連携をさせていただいている分、私たちのキャパシティーもありまして、全ての団体とそういったつながりを作るのはなかなか難しいのではないかというところで、課題感として、2点目の広く連携するための仕組み、その濃い連携ももちろん必要ですけれども、何かネットワーク的な形でつながれるような仕組みを作っていきたいなと思っているというのが最後の課題として挙げさせていただいたところになります。
 2点目の連携のための仕組みというところは、私たちも今、課題感として持っていて、本当にこれから検討していくという形にはなるんですけれども、例えば、これまで話が出ていたものですと、スラックでしたりとか、LINEでも良いんですけれども、そういったコミュニケーションツールを使って、オンラインでの、メーリス等だと少し会話がなかなか盛り上がらないかなという、ユースの中ではそういう感覚があるので、チャットツール等を使って気軽に、例えばユース間で情報を共有することができたりですとか、次世代委員と、どこか別のユネスコ関係の団体ではなくて、そういったグループの中で、私たち以外のユネスコ団体同士がつながって何か交流ができたりとか、新たなイベントが生まれるような、そういうプラットフォーム的なものを作っていけたら良いのかなと今は構想しております。御質問いただきありがとうございました。
【田代副会長】  御回答ありがとうございます。ほかには御質問。中澤委員、よろしくお願いいたします。
【中澤委員】  奈良教育大学の中澤です。今、佐藤委員から、本学のユネスコクラブのことが出ました。私が顧問をしておりますので、今の御質問に関して、本学のユネスコクラブについてご紹介させていただきます。奈良教育大学のユネスコクラブでは、奈良ユネスコ協会青年部と連携をしておりまして、年2回の合同キャンプや地域の親子を対象とした合同企画イベントを実施しています。年に2回の合同キャンプ、それから合同企画イベント等をやっております。また、奈良教育大学のユネスコクラブのメンバーには、奈良ユネスコ協会青年部にも入るようにと勧めておりまして、両方入っている学生が中心になって様々連携を進めてくれております。
 3月27日に国連大学でSDG-UP公開シンポジウムがあります。そこで、ユネスコクラブメンバーが3人、ウ・タントホールに行かせていただいて、彼ら自身の口から日頃の活動を紹介させていただきます。これはハイブリッドで開催されるようですので、ぜひ御覧になっていただけたらと思います。以上です。
【田代副会長】  中澤委員、アドバイスありがとうございました。
 そろそろお時間になりますので、次の議題に進めさせていただきたいと思います。
 続きまして、(3)ユネスコ研修プログラム修了生からの報告となります。まずは事務局からユネスコ研修プログラムについて御説明をお願いいたします。
【小野国際統括官補佐】  失礼いたします。資料2-4-1を御覧ください。
 ユネスコ研修プログラムですけれども、令和5年11月に文部科学省とユネスコとの間で覚書を締結しました。それに基づきまして本年度から開始してございます。
 事業の概要ですけれども、下半分になります。まず1つ目、対象ですけれども、右側に黄色のボックスがあると思います。その中のユニツインとユネスコチェアに登録されている大学を対象として、大学院生をユネスコの本部、それから地域事務所に派遣するというプログラムで、長さは原則6か月以上で最長12か月という事業でございます。それから経費の支援として、公益財団法人日本国際教育支援協会様から、留学のための奨学金を支給していただいてございます。
 実績ですけれども、左下のボックスになります。令和6年度で、本年度は第1期と2期の、2回募集しました。それぞれ4名ずつ派遣中で、お一人、この後、御発表いただきますけれども、ニューデリーに行かれた方が修了されてございます。その他の本部、地域事務所は、記載のとおりでございます。また、来年度に向けて、第3期として8名の選考が終わり、現在、最後のユネスコとの調整を行っているところでございます。また、第4期として現在、公募をかけているところでございます。以上です。
【田代副会長】  ありがとうございます。それでは、ユネスコ研修プログラムの修了生からの御報告をお願いしたいと思います。
 これから御発表いただくのは、ユネスコニューデリー事務所で研修をされていた大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程2年の宮村侑樹さんです。宮村さんは研修終了後、一度御帰国なされましたが、今日は再び渡られたインドから御発表いただきます。それでは宮村さん、御発表よろしくお願いいたします。
【宮村氏】  御紹介ありがとうございます。大阪大学大学院の博士後期課程2年、宮村侑樹と申します。本日は、ユネスコニューデリー事務所にてユネスコ研修プログラムに参加してきましたので、その内容をこの場をお借りして御報告させていただきたいと思います。
 早速ですが、研修の内容について御説明いたします。研修期間は6月10日から12月10日までの6か月間になります。研修受入機関は、インド共和国のユネスコニューデリー事務所です。。私自身、博士課程でインドの教育について研究していることもあって、このニューデリー事務所を希望いたしました。所属といたしましては、教育セクターと人文社会科学セクターに所属しながら、主に教育セクターのプロジェクトに関わらせていただきました。勤務形態といたしましては、8時半から5時までで、昼休憩が1時間という形で、週に5日間、オフィスにて勤務いたしました。こちらの左側の写真が、ユネスコニューデリー事務所のオフィス前で撮った写真になります。
 具体的な研修の内容について説明させていただきます。研修では様々なプロジェクトに関わらせていただきましたが、主にこのSTATE OF EDUCATION REPORT FOR INDIA 2024、SOER2024というプロジェクトに従事いたしました。このSOERのプロジェクトは、インドの教育に関して、毎年特定のテーマについて、現状・課題を調査・分析して、最終的に政策提言をすることを目的とした報告書になります。私の関わったときのテーマが「Culture and Arts Education」ということで、このテーマに基づいてレポートを作成いたしました。
 私たちの仕事は、このレポートを執筆することではなく、コーディネートすることでした。このプロジェクトは、私を含め主に3人で担当していたということもあって、私自身いろいろなお仕事に携わることができました。例えば、この編集委員会の運営でしたり、印刷だったり、デザイン会社の入札、現地のフィールド調査から、各省庁への書簡だったり、レポートの謝辞等のドラフト作成等の業務を行わせていただきました。こちらの左側の写真が完成したレポートの表紙になります。
 。そのいろいろな業務の中でも、フィールド調査について少しだけ御紹介いたします。インドは広大な土地と人口を有するため、地域により文化の多様性がかなり高い国になります。フィールド調査では、その多様な文化を捉えるために、北東州のアッサム州と南部の州のカルナータカ州へ出張に行きました。そこで分かる「Culture and Arts Education」に関する各地域の実践を取材するために、学校やNGOを訪問しながら調査を行いました。
 今紹介いたしましたプロジェクト以外にも様々なイベントに参加する機会も頂くことができました。特に昨年、2024年に開かれた世界遺産委員会では、日本からも佐渡島の金山が世界文化遺産に登録されたかと思いますが、その会議に私も参加することができました。そして、国際会議を間近で見たりですとか、開会式だったり若者向けのサイドイベントに参加することができました。
 最後になりますが、ユネスコ研修プログラムで様々なプロジェクトに従事し、上司や同僚と関わることができたことで、ユネスコ職員に必要なスキルとは何かということを体感することができました。また、少人数でプロジェクトに従事することで、プロジェクトの一員として貢献するという貴重な経験をすることができました。私自身、インドの教育を研究する一学生として、ユネスコという視点を通してインドの教育政策を垣間見ることができたことや、インド国内に幅広いつながりができたことは、今後の研究にとっても大変貴重な経験だったと感じております。今後の展望といたしまして、国際機関や大学以外の研究機関という幅広い選択肢ができたということが、すごく私の人生にとっても貴重なことだったと感じております。
 次お願いいたします。最後になりますが、こちらが、私が関わったレポートの御紹介になります。御清聴ありがとうございました。
【田代副会長】  研修のリアルな体験談を御共有していただきまして、ありがとうございます。これからもその研修の経験が将来生かされることを期待したいと思います。
 それでは、ただいまの報告につきまして、皆様から御質問、御意見がございましたら、挙手をお願いいたします。北村委員、よろしくお願いいたします。
【北村委員】  御報告どうもありがとうございます。とても素晴らしい経験をしたということがよく伝わってきましたが、今、大学院生、特に博士課程の学生が、なかなかアカデミックなキャリアを築いていくというのが難しい状況の中で、実はこの国際機関での勤務というのは非常に有力なキャリアの一つだと思っております。ぜひ、今御報告いただいた宮村さんもそうですが、それだけでなく、幅広く高い専門性を持った博士課程の学生たち、修士も含めてにはなりますが、特に博士課程の学生たちに、国際機関も一つのキャリアパスだということを、今後も国内でぜひ積極的に周知していき、また、それを応援していくような仕組みを作れると良いなと思いましたので、今回のこういった研修は本当にその一つだと思いますが、こういったものをより幅広く何か作り上げて、多くの学生たちを応援できれば良いなということを感じました。コメントになります。あと宮村さん、頑張ってください。
【田代副会長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 宮村さん、どうもありがとうございました。元気で頑張ってください。
 それでは、議題4に移らせていただきたいと思います。ユネスコ創設80周年・日本の加盟75周年に向けて、に入ります。事務局から御説明をお願いいたします。
【本村国際戦略企画官】  それでは29ページ、お手元の資料3を御覧ください。ユネスコ創設80周年、それから日本のユネスコ加盟75周年に向けまして、記念事業等の案をお示しさせていただいております。上から順に説明いたします。
 丸1といたしまして、日本ユネスコ国内委員会の会長賞の実施、こちらは前会長の濵口会長時代に議論いただきまして、濵口会長からも、ぜひ実現に向けて検討してほしいという提案がございました。それを踏まえまして事務局で検討いたしまして、ユネスコ活動を行う団体を広く公募の上、顕彰し、その結果、国内のユネスコ活動の活性化、あるいはユース、若者の参画を促していきたいと考えております。これが1番目でございます。
 2番目といたしまして主催イベントの開催、記念フォーラム的なものを開催したいと考えております。
 丸3といたしまして記念パネル、これまでのユネスコと日本の歩みをまとめたものを文部科学省のエントランス等におきまして展示をさせていただきたいと考えております。
 4番目といたしまして、文部科学省、国だけではなく、民間の活動も本80周年・75周年の記念イベントとして登録を募りまして、幅広く国内のユネスコ活動関連イベントを本記念イベントとして登録して公開してまいりたいと考えております。
 最後、5番目でございますけども、記念ロゴマークを公募の上、作成いたしまして、これを広く関係の事業に使っていただきたいと考えております。
 その下に今後の予定スケジュールを書いておりますけれども、来年度からしっかり事務局で準備をいたしまして、2026年、令和8年度に向けて準備を進めてまいりたいと考えております。
 事務局からは以上でございます。
【田代副会長】  ありがとうございました。それでは、ただいまの事務局からの御説明につきまして、御質問、御意見がございましたら挙手をお願いいたします。松浦特別顧問、お願いいたします。
【松浦特別顧問】  今の日本のユネスコ加盟75周年でいろいろ御説明ありがとうございました。私自身も、ユネスコ加盟の50周年がちょうど私が事務局長時代の2001年のたしか7月だったと思うんですが、盛大な式典が行われて参加したのを覚えていますが、今回いろいろまたプログラムを組んでいらっしゃるんで、よろしくお願いします。
 他方、ここでユネスコ創設80周年とお使いになるのは、申し訳ないけど、ミスリーディングなことがあるので、コメントを申し上げます。ユネスコは、実はユネスコ憲章は、1945年の11月16日、ロンドンで開かれたユネスコ総会で採択された日が出発点ということになっておりまして、ユネスコ本体が常に11月16日ですから、私のときは2005年11月16日、それから私の後任のイリーナ・ボコヴァ事務局長のときは、2015年の11月で、今年がちょうど2025年の11月16日に本来は開かれるべきだと思うんですが、どうもユネスコ事務局長選挙がちょうどその直前に行われることもあって、もっと早く開かれそうな気配です。
 私が実はユネスコ事務局長に就任したのが、ちょうどもちろんそういう記念日とぶつかっていませんけれども、1999年の11月15日だったので、今年はもうちょっと早いタイミングでユネスコ総会が開かれますからちょっと前になると思うんですが、本来であれば、11月16日に新ユネスコ事務局長の下で開かれるべきだと私は理論的に思うんですけども、恐らく現在の事務局長が自分の時代に開きたいということで、恐らくいろいろ繰り上げるかと思います。
 いずれにしても私が申し上げたいのは、ここでユネスコ創設80周年ということを2026年に使うのは、ミスリーディングなんで、これは避けていただきたい。というのは、繰り返しますけど、ユネスコの出発点はあくまでもユネスコ憲章が採択された1945年の11月16日ですから、今年が80周年です。発足したのはまさにその1年後ではありますけども、それはユネスコとしてはそこを出発点としておりませんので、来年行われるとき、そこは省いて、むしろ日本のユネスコ加盟75周年ということでやっていただいた方がいいと思いますので、コメント申し上げます。以上です。
【田代副会長】  では、事務局から御回答をお願いします。
【本村国際戦略企画官】  松浦特別顧問、ありがとうございます。貴重なコメントを頂きました。日本国内におきましては、今おっしゃられたとおり、日本のユネスコ加盟75周年ということは2026年で間違いないと思いますので、かつ、ユネスコ本体で、現時点でどのような形で記念イベントを開催するかというのは、我々の方に、加盟国の方にまだ伝わってきておりませんので、その辺の状況も踏まえながら、一応、国内のイベントとしては、2026年ということで進めさせていただければと思っております。
【田代副会長】  御回答ありがとうございます。ほかに御質問はございますでしょうか。オンラインで御参加の委員からも御質問がないようですので、次の議題の準備を今確認しておりますので、しばしお待ちいただけますでしょうか。
 お待たせいたしました。それでは、議題5、ユネスコ日本政府代表部大使からの報告に入ります。本件は、パリにいらっしゃいますユネスコ日本政府代表部の加納大使から御報告をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【加納ユネスコ日本政府代表部特命全権大使】  ユネスコの今、大使をやっております加納でございます。よろしくお願いいたします。
 ユネスコ国内委員会の先生方、日頃からユネスコ、それからユネスコにおける日本の外交に対する御支援、御理解を賜りまして、誠にありがとうございます。オンラインではございますけれども、私から、ユネスコ、パリの現場でのいろいろ思うところをこの機会に御報告させていただきたいと思います。
 お手元に一枚紙を用意しておりますが、これはあくまでも参考という形で御覧いただきながら、30分ほどお時間を頂戴して、私からお話をさせていただきます。
 先ほどちょうど委員の中での議論を途中から拝聴しておりましたけれども、今年まさに戦後80年ということで、日本でもそうですけども、ヨーロッパでも80周年の記念の節目というのが、ヨーロッパでの終戦記念日、5月にありますけども、をはじめ、だんだんそういった関連の報道も出てきているようになっております。また、ユネスコ憲章、先ほど松浦特別顧問からもありましたように、1945年11月がユネスコ憲章採択ということで、80周年、具体的なイベントといった話はまだ聞こえておりませんけれども、そういう言の葉に上るようになってきております。
 その中で今の国際情勢を見回しますと、なかなかこのユネスコ憲章の前文にある理念のようなところからはかなり厳しい状況になっていく、その中で、どういった形で日本外交を進めていくかということは我々も日々考えているところでございます。
 少しユネスコから遡った話は、委員の先生方のいろんなバックグラウンドをお持ちの方もいらっしゃいますので、少しだけ経緯、系譜というものを御紹介させていただきたいと思います。
 ユネスコが発足したのは、御案内のとおり第二次世界大戦の後ですけれども、実はそれに似たような取組は、第一次世界大戦の終結後からありまして、第一次世界大戦の後、国際連盟という組織の本部がジュネーブに発足したんですけども、その諮問機関として、国際知的協力委員会と、世界のいろんな分野での知性の有識者に集まってもらって提言をしてもらう、戦争が起きたということは各国の相互理解、文化交流も含めた相互理解が十分じゃなかったんじゃないかと、そういう反省に立って、国際知的協力委員会というのが発足しました。
 当時、国際連盟の事務局に新渡戸稲造博士が事務局次長としてこれに関わっておられましたし、具体的な有識者としてアルベルト・アインシュタイン博士や、マリー・キュリー、アンリ・ベルグソン、トーマス・マン、そういった世界の知性に集まってもらって提言をするという委員会がございました。その委員会の下に、いろんな具体的な事業、国際知的協力機関、International Institute of Intellectual Cooperationというんですけれども、これをフランスが誘致しまして、今のパレ・ロワイヤルのところに造るということで、これを、フランスの申出を受け入れたのが1924年の国際連盟で決定したということで、国際知的協力機関というのが戦間期に活動していたという経緯がございます。
 これは、ドイツの第二次世界大戦の勃発と、それからドイツのパリ占領によって中断をしてしまったんですけれども、戦争終了後に一時再開をして、その後すぐユネスコが発足しましたので、そこに一連のいろんな資料とか文書なんかは引き継がれていって、これはユネスコの地下のアーカイブが残っているという話がございます。ですので、言わば国際知的協力機関のDNAを引き継いでユネスコは発足したと言えるかと思います。
 ユネスコ憲章ですけども、御案内のとおり1945年の11月にロンドンで採択されて、それで有名なこの「戦争は人の心の中に生まれるものであるから、人の心の中に平和の砦を築かなくてはならない」という有名な文章がありますけれども、これはその採択をする会議のときに当時のイギリスのアトリー首相の演説の中の一説を少し取り入れたという話もございます。
 それで、このユネスコ憲章で1946年に発足した後、日本は独立を回復する前に加盟を申請いたしまして、これは1950年12月ですけれども、加盟いたしまして、それからサンフランシスコ平和条約に先立つユネスコ総会におきまして正式加盟をしたと。1951年ということでございます。ということで、日本が戦後に、国連加盟に先立って加盟した最初の国際機関ということで、非常に日本の各層においてユネスコに対する理解・支援というのは根強いと私も受け止めております。
 その後ユネスコはいろんな紆余曲折がございまして、冷戦下での東西対立ですとか、南北問題といった中で、なかなかユネスコの歴史も紆余曲折があったわけでございますが、その中でも幾つかの活動としては、紛争の終わった後の文化財の保護、アンコールワットなんかはその代表例だと思いますが、というのもございましたし、また、日本との関係では、歴史戦の舞台にもならざるを得なかったという事情もございます。もっと最近の話になりますと、アメリカの脱退等を招いたパレスチナの加盟、あるいはこの二、三年ですとウクライナ関係といったものが、ユネスコの中では非常に焦点を集めた問題でございました。
 それで、ユネスコの特徴としまして、私もいろんな国際機関にこれまでも関わってきておりまして、非常になかなかユニークな国際機関だなと思っております。特にユネスコというのは、もともと先ほど申し上げた国際知的協力機関の経緯を引き継いでいるということもあって、国の代表というよりは個人の資格で参加をしているというのは、これは実際、制度的にもユネスコが発足して、かなり長い期間は、国の代表ではなくて個人の資格で参加をするというのが制度的にもなっていたわけですけど、これではなかなか国際機関としてうまくいかないだろうということで、日本の提案もあって、国の代表として、今、普通の国際機関になっております。
 さはさりながら、何となくこの国の代表というよりは個人の資格で、割と自由闊達に発言をされている方もいらっしゃるというのがございます。これは良い面と悪い面の両方あると思いますけれども、そういった文化があると。その中でまたコンセンサスというのは、これは多くの国際機関ももちろんあるんですけども、ニューヨークの安全保障理事会のように、投票にかけて白黒つけて、非常に難しい問題になると拒否権が発動されてというのとはちょっと違う、コンセンサス重視の文化が強いなという感じがいたします。
 あとは、それからユネスコの特徴と、特に現代の社会における特徴として私が感じますのは、ここは非常に一つのソフト・パワーの競争の場だろうと。これは中国、アメリカ、ヨーロッパ、アジア、アラブ、いろんな国が自国のいろんな魅力というのを競っているという場。それから、あとグローバル・サウスの国にとっては非常によりどころとして、かなり親近感を持っている国際機関だと思います。
 これはユネスコの幹部の人たちというのは、いろんな国際機関から移ってきている人もいるんですけども、例えばOECDから移ってきた幹部によると、OECDに比べるとユネスコというのは、グローバル・サウス諸国に対する受けが良いと。なぜならば、OECDから来るとなると、何となく上から目線で説教をするというような印象をグローバル・サウスの国には持たれるけれども、ユネスコから来たとなると、これは要するに自分たちの国際機関だという感じで非常に好意的に受け止めてくれるという話を聞いたことがございます。
 それから、あとはUNDPという、これは国連の開発計画というODAをやっている関係者に非常になじみのある国際機関ですけども、ここから移ってきた人によると、UNDPのほうが圧倒的に予算はユネスコに比べると多いけれども、一般的な知名度というとユネスコにはかなわないと。先ほどのユネスコ憲章の前文というのは、我々日本人にとってもそうですけど、非常に普通の一般の国民にもなじみのある国際機関であることに対して、国連UNDPというのは、どちらかというとODAのプロ向けの国際機関ということで、そうやって予算の額とは違ってネームバリューという意味でユネスコというのは独自の意義があるんだなという話を聞いたことがございます。私もそうだと思います。
 それで、下線を引いたところでございますけれども、「政治・安全保障」「経済・開発」ではない「知的協力」と。これを担う非常に重要な国際機関として受け止めております。ハード・パワーvsソフト・パワーとありますけど、ここで言えばソフト・パワー、「政治・安全保障」がハード・パワーだとすれば、「知的協力」はソフト・パワー。それから「経済・開発」が「衣食足りて礼節を知る」といった発想でそういったものが満たせれば、いずれは平和につながっていくという、日本はかなりこの発想でやってきたと思うんですけども、よくも悪くも人はなかなかパンだけでは生きていかないという、これがマイナスの方に行くこともあればプラスに行く方もあるということで、この辺りの課題を取り上げる場として、知的協力の国際平和の場として非常にユネスコというのは重要じゃないかなと思います。
 特にこの思いを強くしますのは、今「ポスト冷戦」と書いておりますけれども、冷戦が終わったのは、よく言われるのは1989年、ベルリンの壁の崩壊、それからマルタ会談が一つの節目と思いますが、ポスト冷戦はいつ終わったのかというと、あまりこれははっきりしないんですけれども、少なくとも、2年前、グテーレス国連事務総長が、昨年の未来サミットに向けた文書で、もうポスト冷戦は終わったと書いております。多くの国が、ポスト冷戦はもう終わったと、もう新しいフェーズに入っているんだという思いを共有していると思います。これがいつから始まったか、なったかというのははっきりしないと思います。少なくとも2022年のロシアのウクライナ全面侵攻、侵略といったのは、かなり決定的な節目と言えなくもないかなと思っております。
 その中で、ポスト冷戦という時代が、ルールに基づいていろんな紛争を解決していくという前提に立って、環境にしても貿易にしても、それからあるいは核不拡散とか、地域・国際協力、EUとかASEANといったものが作られてきた、特に1990年代に作られてきて、それを発展させてきた、そういったマルチラテラリズムの枠組みというのは、非常にこの10年ぐらいの間にかなりぐらついてきているという状況で。
 どうしてこうなったんだろうと。要するに、ポスト冷戦の直後では、中国にしても、ロシアにしても、その他の国にしても、経済が発展していけば、いずれは西側のような自由民主主義、市場経済主義というのが均てん化していくだろうという、全くそういった楽観論に基づいていろんな制度が作られてきたわけですけども、必ずしもそうではなくなってきていると。それは、西側じゃない国だけじゃなくて西側の中でもそういうふうになっているという、そういったポスト冷戦の後の非常になかなか先が見通せない状況になっているのかなと思っておりまして。
 その中で、こういった問題に取り組むためには、まさにこの知的協力といったものが必要なのではないかなと思います。もちろんこれは、「政治・安全保障」や「経済・開発」への取組が要らないというわけではなくて、これは今日のテーマとは外れますので、立ち入りませんけれども、それにしましても、「政治・安全保障」や「経済・開発」といった切り口だけではない知的協力というのは重要だということを感じております。
 それで、昨年は1年間、非常にいろんなことがございました。世界遺産、無形文化遺産、日本の関係で言えば佐渡島の金山の世界遺産登録、それから無形文化遺産で言いますと「伝統的な酒造り」ということで、日本の報道でも取り上げていただいたと受け止めております。「佐渡島の金山」、詳細は申しませんけど、これもなかなか経緯のある話でございまして、特に隣国韓国との間でのなかなか微妙な交渉もあったわけですけども、結果的には、韓国も含めた世界遺産委員会のコンセンサスをもって佐渡島の金山の登録がなされたわけでございまして。長年この登録に向けて取り組んでいただいた地元の関係者の方を含めた多くの関係者の方に改めて敬意を申し上げたいと思います。
 それから伝統的な酒造り、これも登録の後、私も日本の報道を見て、非常に地方のメディアも含めて幅広く取り上げていただいたことに非常に驚きを持ちながら、かつ非常に嬉しく思いましたし、日本の国内だけではなくて、かなり国際メディアも多くキャリーをされていたという印象を持っております。これから、既にその登録後から今もやっておりますけれども、伝統的な酒造り、この登録を機会に、日本の食文化、既に伝統的な和食というのは2013年に登録されておりますけれども、それをキャッチアップするような形で酒、日本酒、焼酎、泡盛といった麹を使った「伝統的な酒造り」というのを広くPRしていきたいと思っております。
 教育の観点で言いますと、日本は、持続可能な開発に関する教育、ESDというのを推進してまいりました。コンセプトとして、まだまだ浸透する余地はあるかと思いますが、むしろここにおいて思いますのは、このESDが進んでいくと、どのような具体的なメリットがあるのかという、タンジブルなベネフィットと言いますか、成果というのを、パートナー国に感じてもらう必要があるのかなと思っております。
 昨年の秋には、日本が具体的に関わっているプロジェクトをしているパートナー国であるセントキッツ・ネイビスと、それからカーボベルデ、この2か国と連携をして、執行委員会の期間中にサイドイベントを開催しました。教育政策とか教育カリキュラムといったものの策定を支援ということをこれまでやってきたわけですけれども、この後の教員養成みたいなことまでできないかということを今、議論しているところでございます。
 それから、伝統的にエデュケーション4という初等教育・基礎教育というのはかなりユネスコが力を入れて、これは松浦事務局長時代から特にそうだったと思いますけども、最近ですと、それに加えて高等教育のところも非常に力を入れていると。これは西側、アジアだけではなくて、アフリカなんかでもそういった取組があると私も感じております。これも一つの日本の高等教育機関、大学の国際化の取っかかりというか、それに対しても非常に可能性があるんじゃないかなと思っております。
 それから科学技術、これは実は一番教育や文化に比べると、必ずしもまだ十分に認知されていないというか、むしろ十分認知されるべきではないかなと思っております。一例だけここに書いておりますけども、防災教育ということで、これは日本の邦人職員もこの担当部局の非常に責任あるポジションにおられるということもありますし、日本といえば防災ということは非常に各国に浸透しておりますので、今年が仙台の行動枠組の10周年ということも踏まえまして、さらにこの防災協力をユネスコにおいて進めていく、これを後押しするための執行委員会決議というものを昨年の秋の執行委員会で採択いたしました。これに基づいて更に実施していきたいなと思っております。
 それから、いろんな分野に関わるんですけれども、特に思いましたのはユネスコというのは非常に近年、紛争下において活動をやろうとしている。必ずしもユネスコというのはそういったところに企画意義があったわけではなくて、人道支援機関、UNCRとかユニセフといった人道支援機関とは違う、どちらかというと教育・科学・文化といったところで、ノームセッティングと言いますか、規範を設定するのが伝統的なユネスコの役割だったと思うんですけども、それに限らず、そういった分野の範囲の中で、紛争下においてもできる、可能なことをやっていこうというのが特にウクライナですとか、ガザといったところで見られています。これを日本としても後押しをしております。
 最近、中東のところはもう、一昨年の10月以来非常に状況が日々変わっておりまして、ガザではなくて、昨年にとどまらず、レバノンといったところに飛び火をしたりして、この瞬間はだんだん落ち着きつつ、特に今年に入ってからは大分落ち着きつつありまして、これに基づいていろんな文化の文化財の方ですとか、それから教育ですとメンタル面での教員、子供たちへの支援といったことをユネスコはプロジェクトを作っているわけですけども、これを後押ししようとしております。ウクライナも同様でございます。
 それから、アフガニスタンというのは、最近のウクライナ中東の影に隠れてしまった感じです。2021年のカブール陥落の後の状況で、状況はむしろかなり厳しくなっていくということで、たまたま先週、アフガニスタンにおける女子教育の問題を取り上げた国際会議が開かれましたけれども、ここも忘れてはいけないだろうと思います。アフガニスタン、これは女子教育の分野を中心に、かなりこれは、日本は取り組んでいましたし、日本も今のタリバン政権との関係の一定のコンタクトもあります。そういったものを生かしながら、教育だけじゃなくて文化もそうですけども、進めていくと。こういった、なかなか難しい地域でユネスコが積極的に動こうとしている。これを投資していっております。
 それで、最後に今年、今年ももう2月、3月に入ってしまいましたけれども、展望や注目点を幾つか御紹介させていただきたいと思います。
 先ほど冒頭も申し上げましたように、今年がユネスコ憲章採択、正式発足は来年で80年ということですが、日本の場合ですと、冒頭申し上げましたように、1950年の12月に加盟を申請し、1951年に正式に加盟をしたということで、今こちらでは、非公式という形ではありますけど、2025年、今年とそれから来年が日本のユネスコ加盟75周年だったといって、いろんな形でのイベントや、プログラム等を進めたいと思っています。また、ぜひ個別にいろんな御相談ができればと思っております。
 それから、目下の最大の注目点というのが、アメリカの新政権のトランプ政権の動向でございます。トランプ政権の動きはもう日々報道でも出ておりますので、これは申し上げるまでもありませんけども、ユネスコフロントで申しますと、御承知かと思いますが、ユネスコにはアメリカは過去2回脱退しております。1回目は1980年代、これはいろんな南北問題、あるいはガバナンスの問題を理由にアメリカ、それからあとイギリス、シンガポールが脱退しておりますが、松浦事務局長のときに復帰をしております。
 他方で、2011年にパレスチナがユネスコに加盟をしました。これを受けて、アメリカは国内法で、パレスチナが加盟した国際機関には拠出はできないという国内法もございまして、それで拠出がストップいたしました。正式に脱退をしたのは第一次トランプ政権のときであります。
 それで、バイデン政権になって、おととしですけど、2023年にいろんな経緯、それから条件を踏まえた形で復帰をしたと。昨年、ようやく正式な議会承認を受けた大使がこちらに着任したんですけども、昨年の大統領選挙を受けて、今年の1月に退任し、今は臨時代理で動いているということでございます。現在は、2月にアメリカ大統領令が出されて、90日間のレビューをするという形になっております。
 これをどのように、それを、レビューの結果を踏まえて正式な判断をするということですけれども、これに対しては楽観論と、それから悲観論が交錯しております。楽観論、一番楽観的な見方は、一部の国際機関、それからWHOですとか、それからUNRWA、パレスチナ難民支援機関ですとか、即時に脱退をする、したケースに比べると、ある種90日間の猶予が与えられた、かつ、これはトランプのトップダウンというよりは、国務長官、それから国連大使によって進められる、どちらかというとボトムアップのレビュープロセスだと。その過程の中でいろんなインプットをしていって、妥当な結論に導くこともできなくはないのではないかというのが楽観論であります。
 悲観論は、実はもう結論はある程度決まっていて、もう脱退。あとはタイミングの問題で、今のアズレー事務局長、彼女の下でアメリカのユネスコ復帰が実現したわけですけれども、彼女の任期中にはまた脱退するというのはなかなかだから、あとはタイミングを見計らって出るという、要するに結論は決まっているし、あとはいろんな執行委員会とか、ユネスコの会議の場で、恐らく中東の問題、ユネスコのウクライナをめぐる問題等で、また投票行動を迫られる局面があると思いますけど、その過程の中で、アメリカがニューヨークの安全保障理事会のときのように、これまでとは投票行動を変えたりとか、あるいは中東のところで、どちらかというと投票で負けるような形になって、いかにユネスコというのが、なかなかイスラエルとの関係で厳しい、難しい国際機関だということを知らしめた上で、それを理由にまた改めて3度目の脱退をするという、そういうのが何となくもう決まっているんだという、これも極端だと思いますけども、こういった悲観論と楽観論が交錯している状況であります。
 日本としては、これは、いろんな機会を捉えて、まさに日本、多くの国がこれは共有すると思いますけども、アメリカにとっても、それから我々にとっても、ユネスコにアメリカが留まるということは非常に望ましいんだということをインプットしてきておりますし。ただ、その踏まえた上で最終的に意思決定をするのはアメリカ自体ですので、それを踏まえて、いかなる形でも対応できるようにしていくと。ユネスコに対する日本のコミットメントは変わらないという形で受ける状況でございます。
 それから、ユネスコの事務局長選挙でございます。これは今のアズレー事務局長は今年で任期満了ということでございまして、今、事務局長の立候補の受付がありまして、締切りが実はあと4日、3月15日の深夜までということですので、あと4日ですけども、今、現時点で正式に立候補を表明しているのはエジプトだけでございます。ほかにも幾つかの国や、内部の幹部、ユネスコの今の幹部の名前も取り沙汰されておりますが、今日に至るまでまだ正式な立候補はなされておりません。もちろん最後の最後まで見てみないと分かりませんけれども。
 かなり過去の選挙と違って特徴的なのは、エジプトの候補、これはハーリド・エルアナーニーという、エジプトの元観光・考古大臣で、日本との関係も非常に深くて、カイロの大エジプト博物館、これは日本が円借款で支援をしておりますけども、その担当大臣でしたし、今の陛下の即位の礼にはエジプト政府を代表して参列をされたということで、私も何回かお会いして、かなり関係も築いておりますけれども、彼に対する公の支持というのがヨーロッパ、アフリカ、それからアラブ連盟、こういったところでかなり支持を固めていると。通常国際機関というのは、最後の候補者が全部出そろった上で、かつ、判断はしてもそれを必ずしも外には出さないというのが通常ですが、今回はかなり一部のヨーロッパの国、それこそフランスですとかスペインとかといった国も含めて、公に支持を表明しているというのはかなり異例なところだと思います。
 手続としましては、3月15日に、出そろった候補者、この候補者とそれから執行委員会との間で質疑応答が来月の春の執行委員会でなされます。それを受けた後、秋の執行委員会で投票をして、58か国の過半数を取るということがルールですけども、それで1人の候補者が選ばれれば、最終的にはユネスコ総会で確定するという流れになっています。日本といたしましては、誰が事務局長になっても、日本との関係をきちんとマネージできるような人をしっかり選んで、もちろんあと、ユネスコの憲章の目的にのっとって貢献できる人材を見極めた上で判断をしていくということだろうと思います。
 あとはユネスコ総会、今年はこれが40年ぶりにパリの外で行われ、ウズベキスタンのサマルカンド開催と、ロジスティック面では非常にかなりチャレンジングと言わざるを得ないと思いますけれども、前回パリの外で開催されたのは1985年のブルガリア以来ということですので、非常に特別な会合だなと思います。その中で事務局長の選挙ですとか、あるいはその頃、アメリカの動向はどうなっているかということで、ロジ面だけでなくて、中身的にも非常にチャレンジングな総会と言えるかなと思っております。
 あとは地域情勢、これはウクライナ、中東、少し先ほど触れましたけれども、ここ二、三年間は、かなりユネスコの場においても注目を浴びた議題ですけれども、特に今のアメリカの新政権になってから、かなり状況が変わってきております。ウクライナに対しては、伝統的にはロシアの全面侵攻非難をし、というウクライナに対する支援というのが多かったわけですけども、この3年たって、特にガザの情勢がその後、来た後、一部のグローバル・サウスの国はかなり冷ややかな形になってきていると。去年2回ほど執行委員会でもこれは議論されましたけれども、大体58か国で半分ぐらいがウクライナを支持、半分弱が棄権といった非常に国際社会が割れているということをある種インプレスするような形で、投票リクエストをロシアの意を受けた中国なんかがするという状況が続いていますし、これがアメリカの新政権になって、ユネスコでも、このウクライナをめぐる議事進行がどう変わるのかというのは、来月の執行委員会の注目点です。
 それから中東、特にガザですけども、一昨年のハマスの攻撃の直後にアメリカが戻って初めてのユネスコ総会があったわけで、これは、私は着任前ですが、相当荒れたわけです。当時はまだ非常に、イスラエルとガザの両方に対する思いが交錯しているところもあって、かなり割れたんですけれども、その後だんだんイスラエルに対する同情というよりはガザの人道状況に対する同情の方が強くなって、昨年の執行委員会ではむしろ、アメリカは投票を求めるというよりは、コンセンサスをブロックしない、ただし自分たちはコンセンサスには入らないということをまた記録に残すという、できるだけロープロファイルでのハンドリングをしてきたわけです。
 これがそういう形でやるよりは、むしろ白黒はっきりつけて、自分たちが負けるんだったらその国際機関が問題あるんだという、どちらかというとハードランディングというか、クラッシュシナリオに行く可能性もあるかなと思っております。これも要注目かなと思っております。
 最後一言だけ。TICAD、これはアフリカ関係では、今年は9回目のアフリカ開発会議を日本で開催いたしますけれども、ぜひユネスコにもしっかり関与してもらいたいなと思っております。私も昔、TICAD4回目のときに当時の松浦事務局長においでいただいて、当時はMDGと言っていましたけれども、そのMDGでのアフリカでの教育分野での議論をリードしていただいたということもありますので、今年、どのような切り口が適当かはまだ今調整中ですけども、ぜひ日本での外交機会を捉えて、ユネスコとの関係をしっかり強めていきたいと思っています。
 長くなりましたが、これで私からは一旦終わりにしたいと思います。ぜひいろいろな関連情報は、末尾につけましたユネスコの特に代表部のホームページで、いろんな形で情報はアップデートさせていただいておりますし、それからXアカウントでも発信しておりますので、ぜひ御関心のある委員の皆様方におかれましては、御覧いただければと思います。
 本日はどうもこのような機会を頂きまして、ありがとうございました。御清聴、感謝申し上げます。
【田代副会長】  加納大使、短い間に誕生から足元の動向まで御説明いただきまして、ありがとうございます。もう少し時間がございますので、もしよろしければ、せっかくの機会ですので、大使に御質問がございましたら挙手をお願いいたします。沖委員、よろしくお願いいたします。
【沖委員】  加納大使、東大の沖でございます。大変コンプリヘンシブな御説明をありがとうございます。先ほど科学技術に関して、UNDRRがあるにもかかわらず、防災協力について日本の存在感があるというお話がございましたけれども、文化、教育、科学といったユネスコに関わる活動の中で、日本の存在感が比較的ある分野が、どのようなのが挙げられて、今後もう少し注力した方がいい、日本からも積極的に関与した方がいいと思われるような分野にはどのようなものがあるか、どうお考えか、可能な範囲でお聞かせいただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。
【加納ユネスコ日本政府代表部特命全権大使】  沖先生、ありがとうございます。私は恐らく、あらゆる分野で日本の存在感は既にあると思いますし、更に深掘りできると思っております。例えば文化ですと、今年、時間の限りで御紹介していませんでしたけれども、日本の案件以外に、特にアフリカ等世界遺産の登録が必ずしもアンダーリプレゼントのところがあります。これは、日本は登録のキャパビルなんかを支援してきたと思いますけれども、今年はそれに加えて、その基準自体をもう少し柔軟なものにもできないかという。
 具体的に何かと申しますと、30年前に奈良文書という世界遺産の中では非常に重要な文書、これは日本が指導して、石造建築だけではなくて木造建築の正当性、オーセンティシティを認めるための基準を作った文書があるわけですけども、それにある種、触発されたような形で、アフリカから、そういった、よりこのオーセンティシティを柔軟に考えるようなことができないかということで、今年の5月にケニアのナイロビで国際会議がございます。これは日本が資金面、それから人材面でも支援をしております。こういった形でのルール作りというか、ルールのセッティングの中での協力というのは文化でもやってきております。これは日本のかなり存在感が示される分野だと思います。
 それから科学技術、これはもう沖先生の水の分野のみならず、IOC、海洋科学、これは道田先生、今議長をしていただいておりますけれども、それからあとDRR、防災、いずれも日本人の中の職員の方ですとか、あと外部の有識者の先生方が実際に活躍されている分野ですので。ただむしろ、そういった分野自体で日本の方が活躍中とは知られているわけですけども、ユネスコがこういった水とか防災とか海洋というのに関わっているというのは、どうしても文化、教育の印象が、イメージが強いものですから、科学の分野でユネスコがしっかり関わっているんだといったところは、もう少し努力を我々もしていきたいなと思っております。
 あと教育は、全体的にグローバル・サウスの国を中心に非常に関心が高い分野ですし、これは、日本は二国間のODAなんかでもやってきておりますけども、ユネスコを通じた形で、先ほど申し上げたESDもそうですけども。あとは日本の存在価値というのは、むしろ日本の高等教育機関が外に出ていく一つのチャネルとして、ぜひユネスコを活用していただいてはどうかなと思っております。
【沖委員】  ありがとうございます。
【田代副会長】  大使、ありがとうございました。残念ながらお時間となってしまいましたので、加納大使におかれましては、本日は御参加をいただき、ありがとうございました。
 それでは、次に進めさせていただきたいと思います。
 議題6、そのほかに入ります。まず、佐藤委員からお知らせがあると事前に伺っておりますので、佐藤委員、よろしくお願いいたします。
【佐藤委員】  ありがとうございます。日本ユネスコ協会連盟から情報提供をさせていただきたいと思います。
 現在、公益社団法人の日本ユネスコ協会連盟と、それから公益財団法人のユネスコ・アジア文化センター、通称ACCUと呼んでおりますけれども、この2つの民間のユネスコ団体は、その合併に向けて鋭意検討作業を進めております。
 その目的でありますけれども、日本ユネスコ協会連盟は全国に272のユネスコ協会、クラブで、構成されたネットワークを持って、地域社会と密接なつながりを持ちながら、約1万3,000名の会員によってユネスコの理念に基づく活動を展開しております。一方、ACCUは、主に文科省の委託を受けて、ユネスコスクール事業のネットワークをはじめ、教員の国際交流事業を展開するなど、アジア地域で特に若い世代、働く世代と深くつながる事業を展開しております。こうした特性を持つ2つの団体が一緒になって、お互いの強みを生かして相互に補うことができれば、若い世代をはじめとして全世代の人々を巻き込んで、日本における民間ユネスコ活動の普及に一層貢献できると考えております。これが合併の意義であります。
 私ども日本ユネスコ協会連盟は、これまでどおり民間団体の独立性を維持しつつ、両者の合併を実現できるように努力してまいります。日本ユネスコ国内委員会及び事務局の皆様にも、民間ユネスコ活動の今後の展開に御理解と御協力をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
【田代副会長】  佐藤委員、ありがとうございました。本件は、公益社団法人日本ユネスコ協会連盟と公益財団法人ユネスコ・アジア文化センターの間での調整があると思いますので、日本ユネスコ国内委員会総会での議論はいたしませんが、今後進捗につきましては、適宜、情報提供をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 これまでの議題以外に特に報告、審議すべき案件はございますでしょうか。佐藤委員、よろしくお願いいたします。
【佐藤委員】  続いて申し訳ないですけれども、先ほど小委員会の報告のところで準備していたんですけども、時間がないということでチャンスがなかったんで、ちょっとだけかいつまんでお話ししたいと思います。
 先ほどの新しい教育勧告に関してですけれども、これの普及に間についてであります。先ほど大使からもありましたとおり、アメリカの大統領というのは、経済や外交面に限らず、環境問題や人権問題、様々な問題、多方面において、ユネスコの精神と逆の方針を打ち出されております。それで、とりわけ子供の教育というのは、これからの国民の民意を形成する上での大切な価値観を作るものであります。そういう意味で、この教育勧告の重要性は増していると考えております。
 私たち民間ユネスコ協会も、教育勧告の普及に力を入れておりまして、都内が中心でありますけれども、大学の教授による講演会や、ユネスコクラブ、ユネスコ協会の青年部の研修会、高校生を含んだパネルディスカッション等、これらに努めております。それから、私たちが進めている世界寺子屋運動のガイドラインにもこれを織り込んでおります。
 昨年の文科省の教育小委員会では、国会報告が終わったら国内の普及の取組を進めるという説明をいただいております。それから、来年度中には新たな学習指導要領の策定もあると聞いております。我々民間ユネスコ活動も、これら協力をして、普及を推進していきたいと考えておりますので、ぜひ連携のほど、よろしくお願いしたいと思います。以上です。
【田代副会長】  ありがとうございました。ほかにございますでしょうか。
 ありがとうございます。本日準備いたしました次第は以上でございます。
 本日は御多忙の中、長時間にわたりまして御出席いただきまして、ありがとうございました。それでは、これで閉会とさせていただきます。
 
―― 了 ――

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