日本ユネスコ国内委員会総会(第151回)議事録

1.日時

令和4年9月8日(木曜日)15時00分~17時30分

2.場所

文部科学省3階第一講堂(対面とオンラインのハイブリッド形式での開催)

3.出席者(敬称略)

〔委員〕
濵口会長、大枝副会長、日比谷副会長、井上委員、漆委員、大谷委員、大濵委員、翁委員、加治佐委員、河野委員、小浦委員、肥塚委員、小長谷委員、西藤委員、坂本委員、佐藤委員、佐野委員、杉村委員、鈴木郁香委員、鈴木昌徳委員、角南委員、髙橋秀行委員、髙橋裕子委員、田代委員、谷川委員、道傳委員、野間委員、芳賀委員、蓮生委員、羽田委員、林委員、藤田委員、細谷委員、松本委員、丸尾委員、丸川委員、見上委員、三木委員、道田委員、山口委員、吉田和浩委員、吉田達哉委員、渡邉委員

〔外務省〕
中島国際文化協力室長

〔文部科学省〕
永岡文部科学大臣、柳事務次官、村上大臣官房国際課長

〔文化庁〕
守山文化資源活用課文化遺産国際協力室室長補佐

〔事務局〕
岡村事務総長(文部科学省国際統括官)、加藤副事務総長(同省国際交渉分析官)、白井事務局次長(同省国際統括官付国際戦略企画官)、堀尾事務総長補佐(同省国際統括官付国際統括官補佐)、原事務総長補佐(同省国際統括官付国際統括官補佐)、新免事務総長補佐(同省国際統括官付ユネスコ協力官)、その他関係官

4.議事

【濵口会長】  それでは、会議を開催させていただきます。
 本日は、御多忙の中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 定刻になりましたので、まず事務局に定足数の確認をお願いしたいと思います。
【堀尾国際統括官補佐】  本日は、会場から11名、オンラインで現在のところ27名、合計38名の委員に御出席いただいており、また、後ほどオンラインでの御出席もいただける連絡を頂いております。よって、過半数を満たしておりますので、定足数を満たしております。
【濵口会長】  ありがとうございます。それでは、ただいま事務局から定足数が満たされているとの報告がございましたので、第151回日本ユネスコ国内委員会を開催いたします。
 本日の総会は、前回同様にオンラインと対面のハイブリッド方式での開催となります。傍聴を希望の方に対してはユーチューブを通じて公開しております。また、本日の御発言は、非公開の議事を除き、そのまま議事録に掲載され、ホームページ等で公開されますので、よろしくお願いいたします。
 本日の会議には、永岡桂子文部科学大臣に御出席を賜っております。また、議題1の冒頭で、パリのユネスコ日本政府代表部の尾池大使から、ユネスコの最近の動きについて御報告を頂く予定です。
 それでは、初めに、永岡大臣より御挨拶を賜りたいと存じます。
 大臣、よろしくお願いいたします。
【永岡文部科学大臣】  皆様、改めましてこんにちは。このたび文部科学大臣を拝命いたしました永岡桂子でございます。本日は、第151回の日本ユネスコ国内委員会総会の開会に当たりまして、御挨拶をさせていただきたいと思います。
 御挨拶と申しましても、まず一番初めに、このユネスコの国内委員会の委員であったということが、実は私の経験でも大変貴重な経験になっております。皆様方、なかなか存じ上げないかと思うのですけれども、この国内委員会の衆議院議員、選ばれますが、そのときに、本会議場で、実は大きな声で委員長が呼出しをしていただくんですね。何かと思って、名指しされた議員は、立ち上がりまして御挨拶させていただくんですけれども、そのぐらい、やはりこの国内委員会の委員というのは大変重きを置かれている委員でございまして、私も大変名誉なことだと思いました。そして、その後、文部科学大臣の方から証書を渡されまして、委嘱状ですね。それが今でも私の額に飾ってありまして、大変私もうれしい、そして、懐かしい委員会だなというふうには感じているところでございます。皆様方には、本当に頑張ってお仕事していただきたいなと思っております。
 現在、世界は気候変動や経済格差、そして、収束の見えない新型コロナウイルス感染症等の地球規模の課題に直面しております。また、ロシアによるウクライナ侵略は、国際社会の秩序の根幹を揺るがす事態でございまして、教育、科学、文化の分野を含め、社会経済の分断をより深刻なものとしております。このような状況だからこそ、相互の理解を深め、平和を希求するユネスコの理念を実現していくことが、改めて必要でございます。そのため、本日の委員会では、これからの時代におけるユネスコ活動の推進について御議論いただきます。現下の情勢を踏まえまして、改めてユネスコの掲げる理念を実現するために、どのような活動が求められているかについて御議論いただきたいと考えております。
 また、来週末には、国連におきまして、ユネスコなどの関係機関との連携の下、国連教育変革サミットが開催されます。このサミットでは、コロナ禍による教育の危機からの回復と、質の高い教育をみんなにという、SDGsの目標の一つを実現することを目指しております。日本といたしましても、こうした様々な機会を捉え、国際的な議論に積極的に貢献してまいりたいと考えております。
 最後になりますが、委員の皆様の御協力、御支援に感謝申し上げるとともに、本日、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を頂きますようお願いし、私からの御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
【濵口会長】  ありがとうございます。
 永岡大臣は、この後の御予定がございますので、ここで退席されます。永岡大臣、ありがとうございました。
(永岡文部科学大臣退席)
【濵口会長】  それでは、続きまして、前回の総会以降、事務局に異動がございましたので、報告をお願いいたします。
【堀尾国際統括官補佐】  本年9月1日に、柳孝文部科学事務次官が着任しております。
【柳文部科学事務次官】  柳でございます。よろしくお願いいたします。
【堀尾国際統括官補佐】  また、本年4月1日付で、岡村直子文部科学省国際統括官・日本ユネスコ国内委員会事務総長。
【岡村国際統括官】  岡村でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【堀尾国際統括官補佐】  また、村上尚久文部科学省大臣官房国際課長。
【村上国際課長】  村上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【堀尾国際統括官補佐】  白井俊文部科学省国際統括官付国際戦略企画官。
【白井国際戦略企画官】  白井でございます。よろしくお願いいたします。
【堀尾国際統括官補佐】  また、5月1日付で、加藤敬文部科学省国際統括官付国際交渉分析官。
【加藤国際交渉分析官】  加藤でございます。よろしくお願いいたします。
【堀尾国際統括官補佐】  以上5名が着任しております。
 以上でございます。
【濵口会長】  ありがとうございました。
 報道関係の皆様におかれては、写真撮影はここまでとさせていただきますので、御了承願います。
 それでは、議題1に入りたいと存じます。議題1では、最近のユネスコ関係の動きについて、事務局及び関係機関から報告を頂きたいと思います。御意見、御質問等については、報告の後、まとめてお願いさせていただくこととさせていただきます。
 それでは、まず4月に開催されたユネスコ執行委員会の結果をはじめ、ユネスコにおける動きについて、ユネスコ日本政府代表部の尾池大使から御報告をお願いいたします。
【尾池大使】  皆様、こんにちは。御紹介いただきましたユネスコ日本政府代表部大使の尾池でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 今日は、時間の関係もありますので、幾つかのポイントに絞って、簡単に現状を御報告させていただきたいと思います。
 まず第1に、今、濵口会長からもお話のありました、第214回執行委員会ということですけれども、ここのポイントは2つございます。
 1つは、アズレー事務局長が第2期目を迎えて初めての執行委員会でありました。この中で、アズレー事務局長から、今後4年間にわたる大きな方針についていろいろお話がありまして、その中身としては、やはり彼女は非常にアフリカを重視していますので、アフリカ重視ということが1つ出ました。
 もう一つは、教育・文化遺産の分野での長期的な取組をしなければ駄目だということを非常に強く強調されました。これは、やはりコロナの結果として、教育や文化の面で非常に大きな影響が出ていると。これは国際的にそういう意識は非常に高まっていまして、先ほど御紹介のありました9月の国連教育変革サミット、このプレサミットが6月にパリで行われています。もう一つは、MONDIACULTという大きな文化大臣の集まりが、9月にメキシコで予定されております。
 この教育ですけれども、今、ウクライナの話が非常に出ていますから、ややかすんでいる面はあると思いますが、割と最近にユネスコとユニセフと世界銀行などが共同でリサーチをしまして、そのリサーチの結果として、発展途上国においては、基本的な読み書きができない子供がコロナの結果、約10%以上増えた。これに伴って生ずる生涯賃金のロスというのが21兆ドルに達すると。21兆ドルというのはすごい額で、なかなか想像がつかないんですけれども、日本のGDP全体の4~5年分に当たります。これぐらいのロスがあったと。これは主に教育、特に学校の閉鎖に伴う教育機会の喪失ということがあります。
 あわせて、文化の面でも、やはりコロナの時期に相当文化財の保護、あるいは、文化財の維持に大きな影響が出たということで、これを何とかしようというための会合がこのように行われるということであります。したがって、これはユネスコもそうですけれども、国際的にこういう意識が高まっているということだと思います。
 これがアズレー事務局長、2期目の大きな活動の方針ということであります。
 他方で、やはり御案内のように、この執行委員会では、ウクライナの問題が非常に大きな位置を占めました。この214回は通常会期ですが、これに先立って、3月に特別会合というものがありました。これは執行委員会の特別会合ということで、ウクライナだけに絞ってロシア非難決議が出て、それに関するディベートが行われたということです。
 資料の方にもありますけれども、このときの投票は、執行委員会の全58か国中、その中でこの非難決議に賛成をした国が33、反対が1、もちろんこれはロシアですけれども、棄権が20、欠席が4だったということです。
 この時点でも、この状況にもかかわらず、相当多数の棄権があったということは事実です。その後、第214回の執行委員会の中で、これはロシア語の日の制定という議題がありました。この議題はウクライナ侵攻の前からあった議題で、本来であれば別に議論を呼ぶような議題ではなかったのですけれども、やはりウクライナのロシア占領地域でロシア語の強制が行われている中で、ロシア語の日を祝うのかということで、ものすごく反対が起こって、ヨーロッパ諸国を中心として、ロシア語の日の制定の議論は、今は無期延期にすべきだという動議が出されました。この動議に対する賛成が21、反対が6、棄権が27、欠席が4ということだったんですね。
 この数字を見てお分かりいただけると思いますが、賛成が僅か1か月でかなり減っていると。反対の国が出ている。それから、さらに棄権も増えている。この欠席というのは意図的に来なかった人たちですけれども、これが依然として4か国あったということなんですね。これをどう見るかというのは、非常に大きな話題であります。
 ちなみに、ニューヨークでも同じような現象が起こっています。これはどうしてかというと、やはり途上国の中に、2つ大きな反対論の根拠というのが出てきているんです。
 1つは、例えば、中東やアフリカの国々の中には、これはちょっと言葉は悪いんですが、ある大使が言った言葉を引用すると、これはヨーロッパの中における民族紛争でしょうと。民族紛争は中東でもアフリカでもたくさんある、ウクライナだけが特別なわけではない、こういう議論が1つあるんですね。
 もう一つは、こういう安全保障の問題というのは、ニューヨークで議論すべきだと。ユネスコは専門機関なので、こういう政治的な議論を行うよりは、教育や文化や科学、こういった本来の業務にちゃんと取り組むべきだというような議論がありました。
 こうした議論の結果として、賛成票が減っている、反対票が増えている、棄権も増えていると、こういう現状があります。ただ、投票ですから、棄権というのは関係ないので、結局、決議は通ります。ただ、国際社会全体の流れとして、ややウクライナ問題について強い立場を取る国の数が減っているという現実は、ここに見て取れると思います。
 そのことが、実は第45回の世界遺産委員会にも影響しています。これは、ウクライナ侵攻よりもっと前から決まっていたことですけれども、去年の世界遺産委員会で、今年6月にロシアの保養地であるカザンで第45回世界遺産委員会が開催されることになっていました。ただ、ロシアのウクライナ侵攻の結果として、ロシアを議長にカザンでやるなんかとんでもないという議論が出てきて、4月に一旦延期になっています。
 これをどうやって立ち上げるかということなんですが、正直言って、現在開催の目途は立っておりません。そこに委員会の構成国が書いてあると思いますけれども、このうちヨーロッパ3か国と東欧2か国は、ロシアのウクライナ侵攻に対して非常に強い反発をしている立場であります。もちろん、アジア・太平洋の中で、日本もそうです。しかし、これは6か国なんですね。それに対して、やはり多くの国、ロシアは議長ですから、ロシアは別として、それ以外の多くの国は割と中立的な立場を取る傾向があります。
 これは、もちろんウクライナ侵攻というのは、誰もウクライナ侵攻がいいと思っている人はいませんけれども、ただ、世界遺産委員会は世界遺産委員会で、それはそれとしてやらなければいけないのではないかと。たまたまロシアが議長だったのだから、ロシアでやるということはないにしても、ロシアの議長のままやってもいいのではないかという議論が結構あるんですね。
 ただ、後でまた申し上げますけれども、ロシアがウクライナで文化財を破壊しまくっている状況の中で、どうして世界遺産委員会の議長をロシアが務められるのかと、やはりそういう強い議論、我々もこれを支持しているわけですけれども、非常に強い議論もあって、これは正直言って、これからどうなるか分からない現状になってしまっています。
 これは御質問があれば、なぜ立ち上げられないのか、もう少し詳しく申し上げますが、今は時間の関係もあり、ほかあと数点、申し上げたいと思います。
 それから、その次にあります無形遺産ですけれども、これは無形遺産というのは、もともと日本が一所懸命旗を振って立ち上げた制度であります。したがって、その改革の努力についても日本が長年取り組んできましたし、改革を主導してきたと。これは去年、改革のための作業部会が行われまして、去年から今年までずっとあったんですけれども、日本がリーダーシップを取っている話ですから、私がこの作業部会の議長をさせていただきまして、何とか一連の改革をまとめることができました。これはちょっと地味かもしれませんけれども、これまでルールが明確になっていなかったことについて、いろいろなルールを確立したということであります。こうした成果もありました。
 それ以外のことについて数点申し上げますと、科学分野についても、そこにありますように、国連海洋科学、これは国連で海に取り組もうという10年に今なっているものですから、国連海洋科学、あるいは、AI、特にユネスコでやっているのは、AIの倫理なんですけれども、こういう取組、さらには、オープンサイエンス、こうした話について、いろいろな計画ですとか勧告が策定されていますし、我が国は、こうした活動に対して知的にも財政的にも貢献をしているということであります。
 時間の関係がありますから、次のページのウクライナの話について、もう少しだけ申し上げます。
 これは、ここに出ているいろいろな写真からも明らかなように、ロシアのウクライナ侵攻の結果として、186か所で文化財が損傷しています。一番多いのはやはり教会ですけれども、これ以外にも、博物館、美術館、あるいは、歴史的建造物などが非常に大きな被害を受けています。そこにありますように、いろいろな場所でかなり大きな被害を受けているのは、写真からも分かると思います。
 ただ、現時点では、この中には世界遺産は入っていません。入っていませんけれども、今後の展開によっては、世界遺産の破壊ということもある。ロシアは文化財だからといって攻撃しないというようなことにはこれまでなっていないので、やはり全体として非常に大きな被害を受けているというのが見て取れると思います。
 この文化財がどうなっているかというモニタリングですけれども、これはユネスコで割と早い段階から取り組み始めまして、これも我が国は、恐らくほかの国に先駆けてその支援を表明いたしました。こういうこともあって、4月の執行委員会では、アズレー事務局長から日本のイニシアティブについての高い評価が議場では表明されたりしています。
 いずれにしても、ウクライナについていろいろな決議を出すことも重要ですけれども、現場で支援をするということも重要ですので、ウクライナにおける教育、文化、あるいは、科学、こうした分野におけるユネスコの活動を、我々としても是非支援していきたいと考えております。
 少し長くなりましたが、以上でございます。どうもありがとうございました。
【濵口会長】  ありがとうございました。
 続きまして、外務省から、ユネスコにおけるウクライナ支援について報告をお願いいたします。
【中島文化室長】  外務省で国際文化協力室長をしています中島と申します。よろしくお願いいたします。座って失礼いたします。
 我が国のウクライナ支援につきまして、先ほど代表部の尾池大使からもお話ありましたけれども、補足をさせていただきます。
 日本政府として、まずウクライナの文化財の遠隔モニタリングということでございまして、こちらには日本政府として50万ドルをこれまで支援しております。
 これに加えまして、ユネスコはジャーナリストの安全確保のための支援というのも様々やっておりまして、これはロシアのウクライナ侵略直後でございますけれども、本年の3月にユネスコから、ジャーナリストの安全に関して緊急支援パッケージというのを計画したという連絡を受けました。この要請を受けまして、日本政府としまして、65万ドル以上というこの支援パッケージのうちの10万ドルを支援いたしまして、具体的には、ジャーナリストの安全確保に需要の高い、例えば、ヘルメット、防弾チョッキ等の安全物品の緊急供与ですとか、あるいは、ウクライナジャーナリスト協会の事務所があるんですが、これのより安全なところに移転するための経費の支援、こういったものに充てていただいているところでございます。
 私からは以上でございます。
【濵口会長】  ありがとうございました。
 続きまして、事務局から、国連教育変革サミットに向けた国際的な動きと、ユネスコ「高等教育の資格の承認に関する世界規約」について報告をお願いいたします。
【白井国際戦略企画官】  文部科学省の白井でございます。座って失礼いたします。
 資料1-1に基づきまして、簡単に御説明申し上げます。
 先ほど永岡大臣も御挨拶で申し上げましたが、来週9月16日から19日にかけまして、国連教育変革サミットというものがニューヨークの国連本部で開催予定となってございます。こちらにつきましては、グテーレス国連事務総長の御発案によりまして、コロナ禍において、特に途上国を中心に、十分な教育を受けることができなかった子供たちがたくさんいるといった現状を踏まえまして、各国の教育に対するコミットメントをここで共有して、相互に刺激し合うということが目的のサミットとなってございます。
 サミット自体は9月中旬に行われるものでございますが、資料1-1の2を見ていただきますと、少し遡りまして、今年の6月には、アジア・太平洋地域における教育大臣会合がユネスコの主導で開かれてございますし、また、6月の下旬には、国連教育変革サミットのプレ会合というものが、こちら、パリのユネスコ本部で開かれているという形でありまして、国連、ユネスコとしても、サミットに向け議論を積み重ねて、この9月に臨んでいるということになります。
 具体的なテーマにつきましては、2ページ目に大きく5つのテーマがございます。誰も取り残さない安全・安心な学校、デジタルラーニング、教育投資の確保といったようなテーマを中心に御議論いただくということになってございます。
 日本としても、重要な機会と捉えて、積極的にこの議論に貢献をしていくということで準備を進めているところでございます。
 もう1点、御説明いたします。資料通し番号6ページ、資料1-2、ユネスコ「高等教育の資格の承認に関する世界規約」についてという資料でございます。
 こちらにつきましては、9月6日にこの規約について受諾することを閣議決定したところでございます。この規約自体は、2019年11月に第40回ユネスコ総会で採択されたものということになりますけれども、高等教育の資格を相互承認するという世界的な枠組みを作り、高等教育におけるモビリティを高めて、国際教育を促進するということを目的とした規約ということになります。
 この規約を締結することによりまして、世界の各地域から日本に対する留学生の受入れ、あるいは、日本から海外留学を進めていくという送り出し、両方に貢献することが期待できるということとともに、日本としても、高等教育を国際化していくんだという積極的な姿勢を内外にお示しできるということが期待されるところでございます。
 この規約の発効には20か国の締結が必要ということでございます。今後、日本としても、早期にこれが発効されることを期待しているところでございます。
 文部科学省からは以上でございます。
【濵口会長】  ありがとうございました。
 続きまして、文化庁から、世界文化遺産・無形文化遺産について報告をお願いいたします。
【守山室長補佐】  ありがとうございます。文化庁文化資源活用課の守山でございます。
 先ほどユネスコ代表部・尾池大使、また、外務省・中島室長の方からユネスコ全体の動きにつきましてお話をいただきましたので、文化庁の方からは、特に世界遺産・無形文化遺産について、日本からの推薦の状況について御報告をさせていただきたいと思います。
 まず世界遺産につきましては、佐渡の金山の推薦書を今年の2月、ユネスコの方に提出いたしました。しかしながら、その後、ユネスコ事務局から、審査の結果といたしまして、推薦書の一部に十分でない点があるという判断が示されております。
 これに関しまして、日本としては、ユネスコの方と議論を続けてまいりましたが、今現在、審査が前に進まない状況にあるということを受けまして、世界遺産登録に向けた審査を早期に進めるために、推薦書を改めて提出することといたしております。
 現在、文化庁におきまして、地元新潟県佐渡市、また、外務省を含め、関係省庁とも連携をしまして、鋭意推薦書の改訂に取り組んでいるところでございます。今後、また新たに推薦書を提出いたしまして、登録実現を目指してまいりたいと考えております。
 続きまして、無形文化遺産につきましては、2年に1件の審査というペースに今現在なっております。本年11月の終わりから、次回無形文化遺産委員会が開催されることとなっております。今年の委員会では、日本から昨年提出いたしました「風流踊」という民俗芸能が審査されることになっております。
 これは日本全国代表的なもので言いますと、盆踊りがあるんですけれども、そういったいろいろな民俗芸能で、いわゆる風流踊というものに分類されますものを一括して提案しているものでございます。
 委員会が始まりますのは11月の終わりなんですけれども、その4週間前までには、審査を行いました評価機関の勧告が示されることになっております。勧告に基づいての委員会の審議が行われるということで、これも登録を目指して取り組んでまいりたいと思っております。
 なお、「風流踊」の次の提案としましては、今年の3月に「伝統的酒造り」、これは日本の伝統的な麹菌を使った日本酒、焼酎、泡盛などを造る技術、いわゆる杜氏さんの技術というものをその次の候補として提案を行っているところでございます。
 以上、簡単ではございますが、御報告をさせていただきました。ありがとうございました。
【濵口会長】  ありがとうございます。
 続きまして、日本ユネスコ協会連盟から、同連盟におけるウクライナへの支援活動について、報告をお願いいたします。
【尼子事務局長】  ありがとうございます。このたびは、貴重な総会の場でお時間を頂戴し、誠にありがとうございます。
 前回の総会で、ロシアの軍事侵攻によるウクライナの人々の人道支援のための募金の開始を御報告させていただきました。今回は支援内容の御報告となります。
 本来、世界寺子屋運動など、識字教育支援活動を主に行っております当連盟でございますが、緊急の支援、そのために募金を集めるということはこれまであまり行っておりませんでしたが、こうした平和を脅かす緊急事態に、避難したウクライナの人々の支援をする方法は何かないかと考え、このたび募金を開始させていただきました。
 今回、5月末までに募金を募り、8,000万円を超える募金を頂戴いたしました。これは各地ユネスコ協会の精力的な活動と、当連盟に日頃より御協力いただいている企業等の御支援によるものです。今回のウクライナ侵攻に対する日本国民の関心の高さ、平和への思いがこの額に表れているように感じます。
 今回の募金による支援内容は、ウクライナ避難民の滞在所の開設及び生活物資等の提供です。これからも頂戴した募金で支援を継続してまいります。
 私どもは、今回の支援に当たり、ユネスコが持つネットワークを利用して支援を行うことを模索してきました。その結果、ルーマニア、スロバキア、ウクライナのユネスコ団体と連携し、支援を実施しています。その支援内容について紹介します。
 今回の支援対象は、スロバキア国境地域、ルーマニア国境地域、ルーマニア国内、この3か所となっております。
 スロバキア国境地域では、スロバキア国内委員会から紹介を受けたNGO「ピープルインニード・スロバキア」が運営する避難所へ、食料・衛生用品・子供用品・医薬品などを配布しました。対象となる避難民が多く、今、最大の支援策となっております。
 ウクライナ・ルーマニア国境地域では、ここにある3つの民間ユネスコ関係団体を通して、支援物資をお送りしております。
 ルーマニア国内では、ルーマニア国内の民間ユネスコ団体が行う避難者の語学学習、食糧支援等を行っています。ここの写真にありますルーマニアユネスコ協会クラブ連盟副会長で、アルムニクラブの会長のダニエラ・ポペスクさんでございますが、この方は、私どもが民間ユネスコ運動70周年を記念して行った2017年の仙台の全国大会でも来日されておりまして、今回の支援に感謝の意を寄せられていらっしゃいます。
 各地のユネスコ協会は、今回の当連盟からの募金呼びかけに対し、多くの協会が共感し、募金活動など多くの活動を行っていただきました。街頭募金に立った協会からは、市民の反応がいつもより大きく、多くの募金が集まったという声が聞かれております。
 今回のこうした各地のユネスコ協会の活動は、市民やマスコミからの反響も大きく、多くのメディアで取り扱われました。また、こうした取組が、結果的に私たちのユネスコ活動を知ってもらう機会にもなったと感じている次第でございます。いわゆる支援疲れが言われている中で、私たちに何ができるか、民間ユネスコ活動として何ができるかを改めて考えていかなければならないと決意をした次第でございます。
 以上、簡単でございますが、御報告させていただきます。ありがとうございました。
【濵口会長】  ありがとうございました。
 それでは、ただいまの報告事項について、御意見、御質問のある方は、挙手をお願いいたします。なお、オンラインで御参加いただいている委員におかれましては、できる限り挙手ボタンにてお知らせいただければ幸いです。事務局で確認の後、私から指名させていただきます。どうぞよろしくお願いします。
 御意見、御質問ございますでしょうか。
 どうぞ、お願いします。
【芳賀委員】  東北大学の芳賀です。急いで2つ。
 1つは、困難な状況にあるウクライナだけでなく、アフガニスタンの、特に女性を日本の大学に留学生として受け入れて学士号を修得してもらう、そういった教育と文化の分野で日本のプレゼンスを高めることをもっと進めていただきたいと思います。
 2つ目、国連教育変革サミットに関しては、外務省も非常に進めていらして、国連で大菅さんもきちんと発表していらっしゃいました。ただし、もっと日本文化を前面に押し出して、日本のプレゼンスを高めることはできないでしょうか。いつも思うんですけれども、誰一人取り残さないというのは、歴史的に悪人正機説で見るように、仏教の考え方です。もう我々はとっくに昔から言っていることです。世界の方が遅い。そして、悪人というのは、もちろん犯罪人でなくて、衆生凡夫、我々全員であるときに、例えば、仏教文化の国でもある日本の特徴を前面に押し出して、日本は長年そういった考えでやって、国を続けてきているなどということをもっと強調して、ここにもいらっしゃいますが、井上さんなどは奈良国立博物館の館長です。そういった方々も巻き込んで、日本文化をもっと前面に押し出していただきたいと思います。
 以上です。ありがとうございました。
【濵口会長】  ありがとうございます。
 ただいまの御意見にお答えいただく方はございますか。いかがですか。
 では、白井さん、お願いします。
【白井国際戦略企画官】  文部科学省でございます。
 国連教育変革サミットについて御指摘ありがとうございました。ここについては、文部科学省、また、政府全体としましても、できる限りハイレベルでしっかりと日本のプレゼンスを示すという方向で今調整を進めているところでございます。
 誰一人取り残さないという点でございますが、一例だけ挙げさせていただきますと、GIGAスクール構想、各小中学校全てにきちんとパソコンやタブレットを配置して、そして、例えば、不登校の子供を含めて授業が受けられるようにするといったような取組をしてございます。こういったグッドプラクティスについても、しっかりとプレゼンをしてまいりたいと考えております。
【濵口会長】  よろしいでしょうか。
 どうぞ、お願いいたします。
【吉田(和)委員】  ありがとうございます。吉田です。
 感想になります。ここまで現状について御報告いただいた中で、本当に胸が痛くなるような出来事が続いているんですけれども、それに対して、ユネスコを中心とした国際社会の対応というのが、当然と言えば当然ですけれども、どうしても対処療法的になっていると。それに対して、SDGsになって以降、特に日本が率先して力説しているものの一つがESDだと思いますが、特にその中でも、ソシオエモーショナルといいますか、情操に関わる教育の中でも、より表に出てくる活動を、中から人間としてどのような考え方を持って行動に結びつけていくか、そういうところの情操の部分について非常に重視しているこれまでの経緯もあると思っておりますので、これから、後ほどの議題にも関わることかとは思いますけれども、そういった部分、表面化する前の問題についての対処力というものを、ユネスコ活動の中でより強力に支援していくことが必要だと痛感いたしました。
 以上です。
【濵口会長】  ありがとうございます。
 それでは、次に、尾池大使、お願いいたします。
【尾池大使】  今御質問のあった点、2点だけ申し上げますと、1つはアフガニスタンなんですが、おっしゃるとおり、日本は長年にわたって、バーミヤンの仏像もそうですし、女子教育の話も含めて、様々な支援をアフガニスタンでやってまいりました。私が申し上げたのはユネスコ関連だけですけれども、ユネスコ以外にも、様々な形で二国間の支援をやってきています。
 これについて、現在どうするかということは、ユネスコでも非常に問題になっていまして、ユネスコの支部がアフガニスタンにもありますから、タリバン政権といろいろ折衝はするのですが、正直言って、なかなか進んでいないという現状があります。
 それで、この件は、次期執行委員会、215回の執行委員会でも話題になることになっていまして、どうやってアフガニスタンの話を進めていくかというのは、議論をし、決議を出すことになっています。
 ただ、やはりここは御案内のとおり、一番難しいのは、結局、そうすると、誰も承認していないタリバン政権と協力しないと物事が進まないという現実があるものですから、国際社会として、この点がまだ乗り越えられていないというようなことはあります。
 もう一つ、お話のあった、ESDを含めて、国際機関の対応が対処療法的ではないかということなんですけれども、それはまさにおっしゃるとおりの面はあります。例えば、我々がウクライナでやっていることも、対処療法と言えばそうなんですが、これはやはり2つあると思いまして、こういう危機的状況が起こったときの対処療法的支援、今で言えば、例えば、パキスタンの大洪水ですね。ああいうのがあったときの対処療法支援というのは、国際機関としてはどうしてもやらなければいけないことだと思うんですね。
 ただ、同時に、今御指摘ありましたように、より長期的な話をどうするかということも併せて重要なわけですから、そのために、今回、御説明のあった国連教育変革サミットとか、あるいは、MONDIACULTと、こういうところでの議論を通じて、より長期的な取組の方向性を出そうと。やはり国際機関は、通常、こういう二段構えで事態に対応するということだと思います。
 以上です。
【濵口会長】  ありがとうございました。
 ほか、御意見ございますでしょうか。
 この件に関しては、やはり国内委員会としても、しっかりした議論が必要ではないかという認識を持っております。それで、方向性としては、各小委員会でもう少し深い議論を皆様にどんどん出していただいて、意見をまとめていただいて、次回の総会にまた議題にさせていただくという方向はいかがかなと考えておりますが、いかがでしょうか。
 緊急声明を出すとか、すぐ何か文書を出すというよりも、やはり全体の委員の方々のしっかりした御意見を出していただいて、まとめ上げる作業ができればと存じます。よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。それでは、その方向で図らせていただきたいと思います。
 引き続き、御意見等ございますか。どうぞ、お願いいたします。
【中島国際文化協力室長】  すみません。外務省でございます。
 芳賀先生からいただいたアフガニスタン支援の件、先ほど尾池大使からもありましたが、ユネスコの場でもしっかり議論させていただこうと思っておりますし、あと、日本は、バーミヤンの大仏遺跡の復旧というか、そういったこともユネスコを通じて支援をしてきております。今、治安の問題もあって、少しストップしておるんですけれども、しっかりそういうことも続けていきたいと思いますので、引き続きやっていきたいと思います。
 よろしくお願いいたします。ありがとうございます。
【濵口会長】  ありがとうございます。
【髙橋(裕)委員】  津田塾大学の髙橋でございます。よろしいでしょうか。
【濵口会長】  どうぞ。
【髙橋(裕)委員】  アフガニスタンの女子教育支援につきましては、日本の5つの女子大学、お茶の水女子大学、奈良女子大学、東京女子大学、日本女子大学、津田塾大学が、カブールにも、私自身も2002年のちょうど9月の初旬に参りまして、女子教育の状況を視察し、そして、女性教員をお招きするというプログラムを、政府の支援を得て何年か展開しましたけれども、その後、政府からの支援がストップしておりますので、是非アフガニスタンの女子教育支援を何とか継続できるようにと願っております。
 芳賀先生の冒頭での御発言を私自身も強く思っておりますので、意見を述べさせていただきました。
 以上です。
【濵口会長】  ありがとうございます。
 なかなか現地、リスクの高い状態が続いておるとは思いますが、何らかの形で支援ができればと存じます。
 ほか、御意見ございますか。よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。もし御意見なければ、次の議題に移らせていただきたいと思います。
 議題2は、我が国におけるユネスコ活動の現状についてでございます。
 まずは、項目(1)専門小委員会からの報告について、教育、科学、文化・コミュニケーションの順で、各専門小委員長から報告をお願いしたいと思います。
 なお、この後、議題3において、これからの時代におけるユネスコ活動の推進について御議論いただきますが、先日開催された科学小委員会及び文化・コミュニケーション小委員会では、これに係る議論も行われたと聞いておりますので、この議論の結果も含め御報告いただければ幸いです。
 それでは、杉村委員長からお願いいたします。よろしくお願いいたします。
【杉村委員】  それでは、教育小委員会から報告させていただきます。座ったままで失礼いたします。
 4月18日に持ち回りにて開催された第147回教育小委員会及び5月26日に開催された第148回教育小委員会について御報告いたします。
 初めに、第147回教育小委員会では、知の交流と共有を通じた高等教育機関の能力向上と、高等教育機関の国際的な連携・協働を促進することを目的としてユネスコが実施しているユニツイン/ユネスコチェア事業について審議を行いました。
 新たにユネスコチェアの経験を踏まえ、ユニツインとして申請のあった長岡技術科学大学及びユネスコチェアとして申請のあった金沢大学の提案について、委員の皆様にお諮りし、審議の結果、両申請をユネスコに推薦いたしました。
 次に、議題1において白井企画官より御報告いただきましたとおり、本年は新型コロナウイルス感染症拡大により生じた世界的な教育の危機を克服し、SDGsの4番目の目標である「質の高い教育をみんなに」を達成するため、国連事務総長の主催により各国の首脳等が出席する国連教育変革サミットが、9月16日から19日にニューヨークの国連本部で開催されます。
 本サミットにおいては、各国からSDG4達成に向けたステートメントの提出を求められておりました。そのため、教育小委員会では、5月26日に第148回教育小委員会を開催し、当該ステートメントについて、どういった要素を盛り込むことが考えられるか御議論いただき、学習面だけではなく、様々な役割を果たす学校の重要性や、実社会の課題と結びついた学習の意義等について御意見をいただきました。
 なお、教育変革サミット開催後には、再度教育小委員会を開催し、サミットの結果についての御報告を頂くとともに、今後のユネスコの教育分野の活動に大きな影響を与える国際理解、国際協力及び国際平和のための教育並びに人権及び基本的自由についての教育に関する1974年勧告の改訂や、本日この後に議論がされます、これからの時代におけるユネスコ活動の推進につきまして御議論いただくことを予定しております。
 教育小委員会からの報告は以上でございます。ありがとうございました。
【濵口会長】  ありがとうございました。
 それでは、続きまして、科学小委員会、日比谷委員長より報告をお願いいたします。
【日比谷委員】  科学小委員会委員長の日比谷でございます。
 私どもは、先週ですが、今月1日に第6回科学小委員会をオンラインで開催いたしました。
 まず、昨今のユネスコ科学分野に係る動きとしましては、昨年の第41回ユネスコ総会で、日本が「人間と生物圏」計画国際調整理事会の理事国に復帰しましたので、今年は科学小委員会の下に分科会が設置されている政府間海洋学委員会、政府間水文学計画、MAB計画の3つの事業について、ユネスコ本部で開催されたそれぞれの政府間会合に、各分科会主査を中心に対応いただいた旨、その内容についても、それぞれの主査から御報告がございました。
 各理事会での議論の詳細は、時間の関係もありまして割愛いたしますけれども、IOC政府間理事会及びMAB国際調整理事会においては、先ほどから何回も話題になっておりますけれども、ロシアのウクライナ侵攻によって生じている生態系及び海洋への影響について懸念が示されたこと、また、IHP政府間理事会においては、来年3月に46年ぶりに開催される国連水会議に向けて、ユネスコからどのようなインプットができるかを意識した活動が行われていることなどが紹介されました。
 その後、本日の議題4での議論にもつながりますが、これからの時代におけるユネスコ科学分野の推進について、各委員から非常にたくさんの事例や提案が出されました。
 まず、日本からユネスコに対してどのような付加価値を提供することができるかという観点からは、日本が過去にユネスコに対してサステナビリティサイエンスについての提言を出したことなど、これまでのユネスコ科学分野での日本の成果を想起しつつ、日本が世界に発信できる強みとして、地域の伝統的な経験や知恵を科学研究に還元する文化、例えば、海洋の調査研究に当たって、漁業に従事していらっしゃる方々の実際の経験が課題解決に貢献するといったケースですね。あるいは、環境に関心を持っている企業が世界でも非常に多いということ、また、世界一の加盟数を有するユネスコスクールや、各地域に展開しているユネスコ協会という基盤を活用した科学授業との更なる連携の可能性などについて提案が出されました。
 また、海はつながっているので、国際連携なしでは海の平和的利用はあり得ないということ、ユネスコ科学事業と学術界とのさらなる連携や「生態系回復の10年」など、関係省庁が取り組んでいる国際的な動きとの連携の可能性についての提案、また、国際的な課題と現場の取組をどのように結びつけていくか、その必要についての指摘がございました。
 それから、国内のユネスコ活動の在り方につきましては、地域のユネスコ活動における科学的な活動について、地域ユネスコ協会の方々から様々な御紹介をいただきました。コロナ禍を経て、改めて実際の体験から得られる科学的知識習得の機会の重要性や、将来にわたる科学分野の発展に貢献するために、市民レベルでの科学的探求心を醸成していくことが必要であること、ユース世代が交流できるコミュニティ構築の重要性などについての意見がございました。
 そのほかに、国連全体で目指している世界に、科学や教育がいかに貢献しているかを取りまとめて発信していくことが必要ではないか。それぞれの地域では当たり前のことでも、海外に発信するとすばらしいと評価されることもあり、そういうこともどんどん発信していくこと、また、その発信の場に若者が出ていって経験を積める、そういう機会をどんどん提供することが重要である。また、科学事業間の連携促進ですとか、科学分野における女性活躍の在り方、地域における科学的な活動やエビデンスを文書にして蓄積していく重要性などについて、専門の意見はもちろんですけれども、地域のユネスコ活動の経験も含めた多様な視点から活発な意見交換が行われました。
 今回の議論については、各委員がそれぞれ持ち帰って、それぞれのフィールドで生かしてまいりたいと思います。
 以上でございます。
【濵口会長】  ありがとうございました。
 それでは、続きまして、文化・コミュニケーション小委員会、羽田委員長から報告をお願いいたします。
【羽田委員】  文化・コミュニケーション小委員会委員長の羽田です。
 8月30日に第6回の文化・コミュニケーション小委員会を開催いたしました。議題のうち重要だと思われる3点について御報告をいたします。
 1点目は、「世界の記憶」についてです。国内向けの研修事業とユネスコ開催のフォーラム、これは日本との共催で、日本からの信託基金を活用して開催するものですが、この2点について事務局から報告がございました。
 また、「世界の記憶」の知名度が低いこと、あるいは、申請数が限られていることという問題点について、委員の方からは、知名度が高い記録物の登録推進が有効である、地域が一体となった形での申請が大切であるといった、もっともな御意見を頂きました。
 本小委員会は、選定そのものには関わりませんけれども、引き続き、様々な手段によって、「世界の記憶」事業の普及・啓発に努めたいと考えております。
 2点目は、ユネスコのプロジェクトの一つである創造都市ネットワークの推進についてです。これは今期の本小委員会が重点的に取り組んできた課題でありますけれども、前回の小委員会での議論を踏まえまして、文部科学省、文化庁から、この間に実施された関連する施策について御説明いただき、この創造都市ネットワークの一つである名古屋市から、今年7月に開催された世界会合の様子を含めた様々な取組を御紹介いただき、さらに、佐藤委員長代理から、ユネスコ創造都市に選定されている都市にあるユネスコ協会を対象に行ったアンケートの結果を御紹介いただきました。
 これらを受けて、委員からは、地域における各機関同士の信頼関係が重要であって、地域の民間団体や地元の企業、市民が取組に参加しやすくなるための環境整備が大切であること、あるいは、複数の自治体がまとまって共同申請ができるように、そういうことを認めるべきであるといったような御意見が出ました。
 ユネスコ創造都市の活性化とネットワークの強化・推進につきましては、引き続き取組を進めてまいります。
 3点目は、先ほど既にお話がありましたけれども、これからの時代におけるユネスコ文化・コミュニケーション分野の推進についての意見交換についてであります。
 こちらは本日の総会での議論につながるものですけれども、ユネスコ憲章の理念を実現していくために、文化・コミュニケーション分野ではどのような考えに基づき取組を推進していくとよいのかという点から意見交換を行いました。
 委員からは、文化による平和の実現という理念は重要であるけれども、急速に変化する時代の中で、これまでの平和に関する文化のプログラムというもののレガシーを見直してみることも一案ではないかという御提案や、ユネスコの理念を推進していくためには、具体的なトピック、例えば、現在本委員会で重点的に扱っている創造都市はその例でありますけれども、こういったものを基に議論を進めていくことが大切である。さらに、テーマとして、都市ではなく、非都市からの平和ということも考えるべきである。さらに、人材育成、特に若い人たちの育成が大事であって、その意味で、学校教育とか様々な連携が必要であるといった御意見など、様々な観点から幅広い御提案や意見を頂きました。
 本小委員会は、引き続き進めますユネスコ登録事業を活用しながら、種々の取組を着実に進めるとともに、大所高所からの議論を通じてユネスコの理念の実現を図っていきたいと考えております。
 こちらの方からの御報告は以上です。
【濵口会長】  ありがとうございました。
 御報告いただきました委員長の皆様、本当にありがとうございます。
 それでは、ただいまの御報告に対して、御質問、御意見がある方は挙手をお願いいたします。いかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 林先生、お願いいたします。
【林委員】  ありがとうございます。旭川ユネスコ協会の林です。
 ユネスコの担当部署でのユネスコ創造都市ネットワーク(以下「UCCN」と言う。)の新規申請並びに4年に一度のUCCN加盟都市が出すレポートの評価の透明性をより高めていただくよう希望します。
 理由は、UCCNの発展には、特にユースの人材育成、文化の多様性の尊重、人権や包摂性などの点で、ユネスコの理念に基づいた上での偏りのない官民一体となった運営と、各都市でのユネスコ活動の積み重ねが必要だと考えるからです。
 私の住む北海道旭川市は、2019年にUCCNデザイン部門で加盟認定されました。デザイン部門での加盟認定だったため、デザイン関係の方々が中心となり、旭川創造都市推進協議会を設立し、運営してきました。しかしながら、UCCNは、ユネスコが2004年に始めた独自事業であり、国連のアジェンダにコミットするなど、ユネスコの理念に基づいた運営が求められることから、旭川ユネスコ協会も推進協議会のメンバーとなりました。
 市の担当部局は産業振興課ですが、旭川市の取組は、役所内での情報共有が進み、まちなかキャンパスという市内小中高生のSDGsイベントの案内などを通じて、教育委員会との連携も生まれています。7月には、今津市長が、先ほど御紹介があったブラジル・サントス市で開催されたUCCN年次総会でスピーチをしました。まさに旭川市は、市全体で誰も取り残さないまちづくり、人づくりをしようと考えております。
 日本ユネスコ協会連盟による先ほどのウクライナ支援のように、民間・ユネスコのネットワークによる国境を挟んだ二都市でのユネスコ協会クラブとの難民支援の報告もありました。
 世界には、民間ユネスコ協会、クラブ、ユネスコスクールがありますので、どのような分野であっても、人と人のつながりは可能です。そこで、ユネスコ活動のさらなる推進のために、文科省には、UCCN担当者に必要な助言をお願いいたします。
 国内のUCCN都市担当者や国内委員会の皆様には、日本ユネスコ協会連盟をはじめ、ユネスコスクール、ESD活動支援センター等、様々な民間ユネスコ活動団体等に関心を持っていただき、地域でのユネスコ活動に対して、それらの団体で協働できないかについて御検討いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 以上です。
【濵口会長】  ありがとうございます。
【羽田委員】  羽田ですけれども、御意見ありがとうございました。頂いた御意見は、担当の省庁と共有させていただきます。
 旭川市が創造都市として理想的な体制を構築して、活発に活動されているということは、先ほど御紹介しましたアンケートの結果からもよく承知しておりまして、このような試みをほかの都市にも見習っていただいて、さらにネットワークを強化していくように努力していきたいと思っております。どうもありがとうございました。
【濵口会長】  羽田委員長、ありがとうございます。
 それでは、続きまして、道田先生、お願いします。
【道田委員】  ありがとうございます。東京大学大気海洋研究所の道田でございます。科学小委員会の下の政府間海洋学委員会(IOC)の分科会の主査を仰せつかっております。
 先ほど日比谷科学小委員長から御報告があったことについて、一言補足を申し上げたく思います。
 尾池大使の御発言にもありましたが、2021年から「国連海洋科学の10年」というのが始まっていますし、同じ年から「生態系回復の10年」というのも始まっているところです。
 それらの相互の連携ということが当初から言われておりましたけれども、それらの10年、まだ始まったばっかりでしたので、なかなかここまで具体化しておりませんでしたが、先日の科学小委員会での議論も踏まえて、IOC、あるいはMAB、さらにはIHPも加えた科学の分野でまとまって、せっかくある「国連海洋科学の10年」及び「生態系回復の10年」のこの機に、我々が直面するいろいろな環境問題、生態系、水環境、海洋環境、それぞれのことに、相互に一緒になって、両方連携して取り組むことによって解決する課題があるというふうな認識に至っておりますので、我が国の中での議論をまずした上で、それぞれの国際的な理事会、あるいは、ユネスコの場に、日本からの提案として、そういったものをIOC、あるいはMAB、あるいはIHPとの連携でもって取り組む課題というものを提案していったらいいのではないかと思っております。
 特に、先ほどの芳賀委員からの御発言にも通じるところがあるかもしれませんが、「国連海洋科学の10年」等では、特に強調される最近のキーワードの中に、indigenous knowledge、あるいは、local knowledge、伝統知、あるいは、地域知といったものをいかに科学に取り込むのか、それでもって課題解決を図るのかということがうたわれておりますので、そういったことについて、十分に現状では日本の国内は組織化されているとは言えませんけれども、実は、その辺りは日本が強いのかもしれないんですね。ですので、そういったことの議論を進めた上で、先ほど申し上げているような科学の分野での連携でもって社会課題の解決に取り組むということを、我が国から発信していくということが必要なのではないかと思っています。
 IOCを担当しております私としては、IOCの分野についてはしっかりやっていきたいと思っております。
 以上です。
【濵口会長】  ありがとうございます。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、続きまして、丸川委員、お願いいたします。
【丸川委員】  恐縮に存じます。丸川でございます。初めて参加させていただきますので、もし過去に議論がございましたら大変恐縮です。
 文化・コミュニケーション小委員会の「世界の記憶」事業について、質問と意見でございます。あまり知っている人が少ない、盛り上がらないというお話でございましたけれども、世界遺産のように、どういう都市とかどういう団体が手を挙げて、こういうものをアプライしたいと思っているというような情報が、例えば、一元的に集められているのか、あるいは、選考はこういう条件でやっていて、こういうふうな評価の軸があってというようなことが公開されているのかという質問でして。こういうものが明らかになっていると、みんな競い合って、自分のところはこういう評価を受けて当然だとか、こういう価値のあるものだということをもっとアピールするやり方が見えるのではないかと思うのですが。過去にも確かそういう議論があったように仄聞したものですから、今、選定に関わらないということではありますけれども、どのような状況になっているのか、教えていただければと思います。
【濵口会長】  御意見ありがとうございます。
 それでは、羽田委員長、御意見ございますでしょうか。
【羽田委員】  御質問にしっかりと答えられないんですけれども、文化・コミュニケーション小委員会自体は選考には全く関わっておりませんで、文化庁の方がやっていますので、そういう点では、私たちは、先生と同じように、分からないとしか言いようがないんですけれども。
 過去二、三年の間に、かなり選考の方法はユネスコ全体で変わっておりまして、世界全体でやるものと、アジア・太平洋地域でやるものと、2つカテゴリーができました。以前は、とにかく地方自治体とか、そういう単位ではなくて、個人的に出すような形だったのが、少し変わったなと思っていますけれど、ここのところは私自身はよく理解していないんですけれども。
 問題なのは、特にアジア・太平洋地域という、この地域での提出される案件が全くない。ほかの国は出してくるのに、日本の方はなかなか出してこないというところが問題だというふうに文化庁の方はおっしゃっておりました。
 この件に関しては、文化庁の方が詳しく御存じですので、文化庁の方、もしここに担当の方がいらっしゃったら、答えていただく方がよろしいのではないかなと思います。
【濵口会長】  この件、事務局の方から補足意見を伺わせていただきたいと思います。白井さん、お願いします。
【白井国際戦略企画官】  文部科学省でございます。
 先ほど羽田委員長の方からもお話をいただきましたけれども、おっしゃるとおり、今、「世界の記憶」という制度につきましては、国際登録と地域登録という2つの制度が併存してございます。
 国際登録につきましては、実は、国内でもそれなりの数の申請がございまして、むしろその中から選ばなければならないという状況で、審査委員会の方で御審議をいただいている状況です。
 ただ、一方で、地域登録、日本の場合にはアジア・太平洋地域での地域登録ということになるんですけれども、こちらにつきましては、どうしても申請者の方からすると、やはり国際登録の方を選びたいというお気持ちが強いようなところがあるようでございまして、地域登録よりも国際登録の方に集中しているというのが現状でございます。
 ただ、この地域登録につきましては、アジア・太平洋地域における地域的な重要性があるような文書類であるとか、そういったものを登録していくということになりますので、私どもとしては、そういった趣旨をしっかりとこれから申請者、所有者の方々にもお伝えをしていきたいと考えてございまして、実は今年度も、申請をどうやっていくのかということについて、所有者の方々を対象とした研修制度なんかも設けておりますし、また、広報・啓発で、「世界の記憶」自体をまだ御存じでない方もいらっしゃると思いますので、広報・啓発についても努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
【濵口会長】  ありがとうございます。
 丸川先生、よろしいでしょうか。
【丸川委員】  ありがとうございます。
【濵口会長】  芳賀先生、お願いいたします。
【芳賀委員】  東北大学の芳賀と申します。国内選考の委員を務めております。
 「世界の記憶」は、今の御説明にもありましたように、世界レベルのものがあって、そこでは日本国が非常に貢献をして、このたび制度改善を済ませたところであります。ですから、そこでは日本の良いプレゼンスが大変上がりました。
 それから、地域がありますが、日本が関わるのは、もちろんアジア・太平洋地域でございます。私はそこのビューローの副委員長をしております。そこでも、外務省、文科省、皆様のお力を添えていただいて、日本がいろいろと貢献しているところでございます。
 議員、どうも御指摘ありがとうございました。
 以上です。
【濵口会長】  芳賀委員、ありがとうございました。
 ほか、御質問、御意見ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
 なければ、次の議題に移りたいと思います。
 それでは、議題2のうち、(2)次世代ユネスコ国内委員会についてに移りたいと思います。
 先ほどの日比谷委員長からのお話でも、若者の意見をよく聞くようにと御指摘ありましたが、まずは次世代ユネスコ国内委員会の長澤さん、長谷川さん、小林さん、渡邊さんに、昨年度の提言を踏まえたアクションの進捗等について報告をお願いいたします。
【長澤さん】  皆様、こんにちは。ただいま御紹介にあずかりました、次世代ユネスコ国内委員会の全体の取りまとめを行っております慶應義塾大学総合政策学部3年の長澤パティ明寿と……。
【小林さん】  小林真緒子と申します。
【長澤さん】  どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は、まず発言の機会を頂戴いたしましたことに感謝申し上げます。また、国内委員会の先生方、それから、事務局の皆様におかれましては、日頃より様々な形で我々次世代委員会の活動への御支援、御協力を頂戴しておりますこと、深く感謝申し上げます。
 本日は、次世代ユネスコ国内委員会が令和4年3月に発表した提言、「ユネスコ活動の活性化に向けて」に関し、そのアクションプランの実践の中間報告をさせていただきます。資料2-1を御参照いただけますと幸いです。
 まず、次世代委員会の組織について若干紹介をさせていただきます。
 次世代ユネスコ国内委員会は、日本のユネスコ加盟70周年に際し、今後のユネスコ活動の活性化のために国内外の次世代が主体的・継続的に関わることのできるユネスコ活動について提言をまとめることを目的として、日本ユネスコ国内委員会事務局の公募により、令和3年11月より活動を開始しております。
 本年3月に行われた日本ユネスコ国内委員会運営小委員会において、任期が令和4年度末まで延長されたことを踏まえて、現在、「ユネスコ活動の活性化に向けて」という提言、このアクションプランの実行を目的に、活動を展開しているところであります。
 構成員としましては、30歳以下のユース18名でありまして、詳細は資料のとおりでございます。
 また、今年度は、委員会の中に「教育」、「科学」、「文化」、「プラットフォーム」の4つのワーキンググループを設置いたしまして、活動を行っております。
 では、これより、各ワーキンググループの進捗報告に移らせていただきます。
【長谷川さん】  教育班リーダーを務めさせていただいておりますハイデルベルク大学大学院文化越境専攻の長谷川綾子と申します。私の方から、教育班の現状に関して、簡単に御報告させていただきます。
 私たち教育班は、3月の提言発表後に再編成されまして、委員会の中でも一番多い10名で事業の企画を現在進めております。
 私たちの本年度の活動計画としては、大きく2つに分けられまして、1点目が、大学生を対象とした対話型ワークショップのコンテンツ・資料の開発、2点目が、ワークショップの2回にわたる実施、この2点になります。
 提言案を考える際に根底にあった裾野の広い対話授業の実施の必要性、また、日本の教育現場での企業との対話の機会の欠如という大きな2つの問題意識にアプローチするため、現在は第1回目のワークショップの企画を進めております。
 平和学、平和教育を長らく牽引して、現在はSDGsコンソーシアムや市と連携した持続可能なまちづくりを進めている広島大学との連携を調整・検討しております。
 テーマは、東広島市における移民社会と多文化共生と設定しまして、手法としては、紛争解決ワークショップ、また、演劇、中でもロールプレイを採用してワークショップを実施したいと考えております。
 事業を通して、少しでも多くの大学生世代のユースに、他者との対話を通して答えのない問いを考えることの面白さであったり、身近さであったり、あとは、地域の具体的な課題や多様性に気づき、自分たちの文脈で考えるというきっかけを提供したいと考えております。
 また、このようにネットワークをしっかりと構築することで、次年度以降の事業の円滑な運営体制を整えたいと考えております。
 私の方からは以上になります。ありがとうございます。
【小林さん】  では、次に、科学グループの進捗報告をさせていただきます。
 科学グループでは、ユース世代におけるユネスコエコパークやジオパークの認知度が低いこと、また、それによって活動の活性化が難しいことを課題として認識し、各登録地域でのユースアンバサダーの任命や、また、ユースの学術研究、フィールドワークの推進を提言させていただいていました。
 そして、これまでには、その提言を踏まえまして、文部科学省の皆様や、大野委員をはじめとしたジオパーク・エコパークの関係者の皆様と打合せをさせていただいた結果、まずは提言させていただいたアクションプランを推進するのではなく、まず私たち、次世代ユネスコ国内委員会自身が、現場で取り組まれている活動や、また、ユース世代の活動のニーズについて把握することが必要であると判断いたしました。
 今後取り組むことといたしましては、ユネスコエコパークやジオパークにZoom等でヒアリング調査をさせていただき、また、年内には実際にエコパーク・ジオパーク、一地域ずつフィールドワークをさせていただきまして、現場の調査をさせていただきたいと思っております。
 直近の活動といたしましては、10月末あたりに開催されます日本ジオパーク全国大会に出席させていただきまして、ジオパーク関係者の皆様へのヒアリング調査の結果を発表させていただきたいと思っております。
 科学グループの進捗報告は、これで終わります。
【長澤さん】  では、続きまして、文化ワーキンググループの報告につきまして、私からさせていただきます。
 文化ワーキンググループにおきましては、先ほどありました、特に創造都市ネットワーク事業に関連する活動を行っております。ユネスコ創造都市ネットワーク、現在国内に10の加盟都市がありまして、我々、ユース世代といたしましても、UCCNは、加盟都市において、地域の文化、芸術活動の持続的発展を後押しするだけでなく、国際交流、異文化交流、異文化間対話を深める役割も果たしていると認識をしているところでございます。
 他方で、事業の認知度の低さ、それから、ほかのユネスコ事業との連携の希薄さ、国内における加盟都市間ネットワーク不足、現在幾つかの国内加盟都市において、ユース世代が主体的・積極的に関わる創造都市が展開されている一方で、その共有が行われていないということを課題として認識しております。
 その課題を克服するために、この創造都市事業とほかのユネスコ事業、特にユネスコスクールとの連携促進、また、ユース世代を対象としたユネスコ創造都市ユースサミットの開催という2つのアクションプランを掲げております。
 この半年間におきましては、アクションプランを実行する上で欠かせないユネスコ創造都市ネットワーク国内加盟都市における事業の現状や、ユース世代の参画に関する情報収集を行うとともに、ネットワークを広げるべく、先ほど林先生からも御紹介がありましたけれども、旭川市のあさひかわデザインウィークをはじめ、創造都市訪問や関係者との意見交換を重ねてまいりました。
 今後、各都市におけるアンケート調査、インタビュー調査というところを積極的に行っていくことを実施し、創造都市と、それから、ユースの関わりについて、さらに可視化を図り、発信をしてまいりたいと思っているところでございます。
 また、サミットにつきましては、我々として、対面での開催を模索しておりまして、予算面、それから、参加者の安全性など、様々検討しなければいけない課題があると認識しています。現時点におきましては、国内に10ある創造都市のうち、いずれかの国内加盟都市と共催をするという形が望ましいのではないかという議論が行われています。
 この後で議論がなされると伺っておりますけれども、来年度以降の次世代ユネスコ国内委員会の位置づけですとか、存続期間等に応じて、アクションプラン実現の具体的ロードマップを作成し、そのプレイベントを今年度行うことができないかという視点で、これからさらに議論を深めてまいりたいと思っています。
 最後に、プラットフォーム事業に関してです。プラットフォームにつきましては、次世代ユネスコ国内委員会として、ユース世代においてユネスコ活動の具体的な内容や活動への関心が低いこと、そして、ユネスコ活動に関心を持つユースにとって、ユネスコ関連組織とつながる機会を見つけることが難しいことを課題と認識をし、ユースによるユネスコ関連組織とユースからコンタクトを歓迎する団体リストの作成と周知、ユネスコ未来共創プラットフォーム上にユース専用ページ、ユースページを設置すること、そして、次世代ユネスコユースフォーラムを開催することといったアクションプランを掲げております。
 現在、資料23ページにイメージの図がありますけれども、ACCU((公財)ユネスコ・アジア文化センター)さんが事務局を務めるユネスコ活動プラットフォーム共創ワーキンググループに参画をし、実現へ向けた議論を行っているところでございます。引き続き、ACCUさんはじめ、関係の方々と協力・協働し、実現を目指してまいります。
 以上がアクションプランの進捗状況になります。
 最後に、前回の総会の際に告知をさせていただき、令和4年3月15日に開催いたしましたYouth Conference for UNESCO-Act for the future-の開催報告をさせていただきます。
 本イベントにおきましては、各国の若者とオンラインでつなぎ、ウィズ/アフターコロナ禍において、ユース主導で展開されるユネスコ活動というものをテーマに議論を行いました。この会議には、次世代ユネスコ国内委員会に加えて、オマーン、韓国、タイ、中国、ドイツ、ベトナムの6か国の若者にも参加していただき、我々からユネスコ活動を活性化するためのアクションプランを発表した後に、各国の若者と活発に意見交換を行った次第です。
 その様子につきましてまとめた動画がありますので、最後に御覧いただければと思います。
(動画視聴)
【長澤さん】  以上で、御報告を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
【濵口会長】  ありがとうございました。次世代委員会の皆様が本当にすばらしい活動をやっている一端をちょっと拝見させていただきました。
 それでは、ただいまの報告に対して御質問、御意見がある方は、挙手をお願いいたします。いかがでしょうか。
 山口委員、お願いいたします。
【山口委員】  どうもありがとうございます。
 大変エナージェティックな御発言をありがとうございました。
 前述で御報告があったアジア・太平洋教育大臣会議では、次世代ユネスコ国内委員会のメンバーの方々も参加して、私も現地でお会いさせていただいて、ほかの国のユースの方々と対話を進めることができたことが大変有用であったかなと感じております。
 私はその教育大臣会議のバンコク宣言のドラフティングコミッティの一員として参加しておりましたが、その参加者の一人に、実はインドネシアのユース団体の代表の方がおられました。ですので、今後も日本の次世代ユネスコ国内委員会のメンバーの方が、そのようなネットワークを活用して、是非ユース代表としてのビジビリティを高めていっていただけたらなと思っております。
 また、同時に、冒頭で紹介された国連事務局長とユネスコ主催の国連教育変革サミットのプレミーティングがパリで6月の末に、丸一日ユースデーとして費やされて、そこに200名以上の若い世代が集まりました。
 ですので、皆様が世界の舞台で活躍できるいろいろな機会が今後とも随分増えていくと思いますので、是非そのような会合にも参加していただきたいなと考えております。
 来週からニューヨークで始まる国連教育変革サミットでも、9月16日がユースデーということで、丸一日、国連の本部でそのような会合が開催されますので、是非、そういうところのネットワークも活用して、皆様のすばらしい意見をどんどん情報共有していただけたらなと考えております。何かお手伝いできることがありましたら、私の方でも、そのようなネットワークをモービライズしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 意見として述べさせていただきました。
【濵口会長】  御意見ありがとうございます。
 それでは、続きまして、渡邉委員、お願いいたします。
【渡邉委員】  ありがとうございます。
 御発表、大変ありがとうございました。エコパークの議論をしていますMAB計画分科会の主査をしている渡邉です。よろしくお願いいたします。
 科学グループの方で、ユネスコ事業のエコパーク・ジオパークというのを取り上げていただいて、ユースとしてどういう提案ができるか、それをさらに現場にも、現場のニーズとか実情もつかみながら効果的な提案をしていこうということで、大変有り難く伺っていました。
 エコパークの方ですけれども、6月にMAB計画国際調整理事会、世界のMABを議論する会議がありました。その中でも、ユースの参画というのは大変重要なテーマになっていて、いろいろな国、いろいろな地域でユースのネットワークがあるんですけれども、さらにグローバルなユースのネットワークを設立することに向けて、どんな進め方をしようかというグループが設置されました。世界レベルでもユースのネットワーク活動が大変重要なテーマになっているということが1つです。
 それから、国内のエコパークの方の動きなんですけれども、金沢大学が中心となって、6つの大学が参加して、エコパークの大学間ネットワークというのが7月にキックオフになりました。これはエコパークの地域の研究を教育フィールドとして使っている大学が中心になって、大学と地域が連携をしていこうということですけれども、そこの大学の学生の皆さんもフィールドの調査をしたり、研究をしたりという形で、学生も関わって活動しているということで、大学間の学生の方たちがフィールドでお互いに交流するような機会が生まれつつあって、こういった立場のユースの人たちも、自発的な形で全国のネットワークがうまく形成していけないかという動きが始まっています。次世代委員会の皆さんも、こういった大学間ネットワークのユースの皆さんと接点を持つことができたらよりいいように思いました。
 皆さんの発表の中にもありましたように、現場に行って、現場のニーズをつかみながら提案をしていくということで、是非エコパーク・ジオパークの現場に足を運んで、地域の関係者と語り合っていただきながら皆さんの提案を考えていってほしいし、エコパーク・ジオパークの側もユースの皆さんと語り合うことで、ユースの活動をさらに活発化させていくか考えていく。お互いに語り合いながら、一緒に考えていくということがとても大事なことと思いました。
 最後に、先ほど道田委員から御提案がありました、海洋と水と生態系、生物多様性、そういう分野間の連携が大事だし、「国連海洋科学の10年」や「国連生態系回復の10年」の連携が大事だと。私もとてもこれは大事なテーマだと思います。そういった分野間連携の場にユースの皆さんが何らかの形で関わっていく、こういうこともこれから重要になっていくのではないかなというふうに感じたところです。
 以上です。ありがとうございました。
【濵口会長】  御意見ありがとうございます。
 それでは、続きまして、芳賀委員、お願いいたします。
【芳賀委員】  芳賀です。度々すみません。委員構成について2つだけ。
 1つは、さらにすばらしい委員会とするために、是非第一次産業の若者を入れてほしく思います。農家の若者、漁師、林業の3人は、次世代を考えるためには、日本国としてもそれが大事だという態度を示すためにも、是非入れてほしいと思います。
 2つ目は、もっと無理難題ですけれど、まだ生まれていない人を本来は委員に入れてほしいと思います。それは、民主主義は未来世代と利益相反するかもしれないからです。現代の多数決による民主的な決定は、我々だけの正義と公正を未来世代に問答無用で拡張して、負担してしまうかもしれない。そうならないように、本来のステークホルダーはいまだ生まれていない人だということを、ですから、もちろん無理ですけど、本来は委員の中にまだ生まれていない人がいるということを想定して、あくまで未来世代を起点として現在の意思決定をしていただきたいと思います。
 これは、アメリカのネイティブアメリカンの人たちが7世代先を考えて会議を開くという話を聞きまして、野家先生の世代間倫理という哲学にのっとってお話ししました。
 以上です。ありがとうございました。
【濵口会長】  御意見ありがとうございます。
 この件、白井さん、何か言うことはありますか。お願いします。
【白井国際戦略企画官】  この後の資料の方で御審議をいただこうと思っておりまして、後ほどでよろしゅうございますでしょうか。
【濵口会長】  では、続けて御議論させていただきます。
 ほか、よろしいでしょうか。御意見ある方ございますか。よろしいでしょうか。
 次世代ユネスコ委員会の皆さん、本当にありがとうございます。拝見していて、とても元気づけられました。引き続き、よろしくお願いします。
 それでは、次に、事務局から、次世代ユネスコ国内委員会の設置について説明をお願いします。
【白井国際戦略企画官】  失礼いたします。資料2-2と2-3に基づきまして、御審議をお願いしたいと存じます。
 本日プレゼンテーションしていただきました次世代ユネスコ国内委員会の皆さんですけれども、実は、この委員会につきましては、国内委員会との位置づけと関連性ということについては、明確なところはございませんでした。今回、この機会に、次世代ユネスコ国内委員会について、正式な形で設置をするということで、御審議をいただければと考えてございます。
 ただ、現状の日本ユネスコ国内委員会運営規則につきましては、原則として、この総会、約60人の委員の皆様方に御審議をいただいて決定するという仕組みになってございます。
 この次世代ユネスコ国内委員会につきましては、まだこれから新しく始まる制度ということもございまして、今後の運営の過程において、一定の修正であるとか見直しが必要になってくる可能性もございます。そうしたときに、機動的に対応できるような形で、できましたら、運営小委員会において、この次世代ユネスコ国内委員会の設置に関することについて御決定をいただくということにできないかということでございます。
 運営規則上は、この総会で「特に指定された事項」につきましては、運営小委員会の方に議決権を委任することができるということになってございますので、この点についての御審議をお願いできればと考えてございます。
 資料2-3の方でございますけれども、次世代ユネスコ国内委員会のイメージというものを掲載させていただきました。
 設置の目的、特にユースの巻き込み、参画が重視される中で、日本としてもプレゼンスを発揮していくためには、ユースの声を十分に聞いていくことがこれからは求められている。
 また、活動内容についても、SDGsの達成であるとか、国内外におけるユネスコ活動の推進、さらに、いろいろな事業への参画ということも考えられます。
 組織の構成でございますけれども、ユネスコの方では、今のところ、原則18歳以上30歳未満の方を、特にユネスコの中ではユースと呼んでいるということがございますので、それに対応して、およそ20名以内の方を募集したいと考えてございます。
 先ほど芳賀委員からも御指摘ございましたけれども、できる限り広く多様な方々を募集したいと考えてございますが、特に、例えば、ユネスコ活動を行っている団体等の中から候補者の推薦を募って選考するというような形ではどうかと考えてございます。
 また、現状では、委嘱期間についても基本的に1年間で、それを更新していくという形でございましたけれども、2年間ということで当面スタートしてはどうかと考えてございます。
 本日は御意見を賜りながら、また運営小委員会において最終的な御決定をお願いできればと考えてございます。
 こちらからは以上でございます。
【濵口会長】  ありがとうございました。
 先ほど芳賀委員から御提案のあった第一次産業の若い人たちをどう入れるかと。これは地域の委員会の方で積極的に推薦していただくと私どもも助かるかなと、今個人的には感じております。幅広く御推薦いただければなと思います。
 今報告がありました点に関しまして、御意見、御質問を賜ればと存じます。多分、たくさんあるかもしれません。いかがでしょうか。
 よろしいですか。ありがとうございます。御了承いただいたことにさせていただきたいと思います。
 それでは、次の議題に移らせていただきます。
 議題3、これからの時代におけるユネスコ活動の推進についてに移ります。まず、事務局から説明をお願いいたします。
【白井国際戦略企画官】  失礼いたします。それでは、資料3、これからの時代におけるユネスコ活動の推進についてという点について御議論いただければと存じます。
 冒頭永岡大臣の御挨拶でも申し上げましたけれども、現在、新型コロナウイルス感染症であるとか、ロシアのウクライナ侵略といったような様々な大きな課題が生じてきてございます。また、先ほど来議論に出ておりますように、ユースの重要性というのが特に近年重視されているということがございます。
 そうした中で、特にこの2点について御審議をいただきたいと考えてございます。
 1点目が、現在の諸情勢を踏まえた上で、従来のように、拠出金を日本から出していったり、あるいは、人的貢献をしていくということももちろん大事でございますけれども、例えば、新しい理念や考え方、ルール、技術、実践事例などを通じてユネスコにおける国際的な議論をリードしていく、そのためにはどのような活動が考えられるのかという、国際的な視点が1点目でございます。この視点につきましては、令和元年度に出されました建議においても御提案をいただいているところかと存じます。
 また、2点目でございます。現在の諸情勢を踏まえた上で、ユネスコが行う各種の事業を、特に国内において、どのような形で持続可能な活動にしていったらいいかという点でございます。もちろん、様々な事業について登録をしていくということも大事ですけれども、同時に、ユネスコの理念とどのように折り合いをつけ、両方を追求していくのか、持続可能な活動にしていくのかといった点、こちらはどちらかと言いますと国内的な視点。
 1番と2番、もちろん両者連動しているものだと思いますけれども、それぞれについてぜひ御審議をいただければと考えてございます。
 こちらかは以上でございます。
【濵口会長】  ありがとうございます。
 それでは、ただいまの説明に対して、御意見、御質問のある方は、挙手をお願いいたします。いかがでしょうか。
 細谷委員、お願いいたします。
【細谷委員】  どうもありがとうございます。
 この2点の論点というのは、非常に適切に集約されているかと思います。それで、私なりに考えましたことを、なるべく大きいことに絞って、それぞれについて1点ずつお話ししたいと思います。
 まず国際的な視点の方、これ、おっしゃるとおりで、ユネスコでは本来的な事業もいろいろあるんですけれども、特にルールづくり、規範づくり、これが長い目で見ると、ある意味一番重要ではないかと感じてきております。
 そういう中で、日本として、今どういう問題について、何をリードするのが一番、まず日本の国益にかなうかということなんですけれども、それが同時にユネスコの存在意義をさらに高めて、私は、今のウクライナ紛争とか国際関係の文脈の中では、さらに大きく、それが世界の自由主義陣営の利益にいかにかなうかという視点で、是非考えていただけたらと思います。
 つまり、これはかなり外交戦略の問題だと思うわけです。今、ユネスコは、もう御存じのとおりで、アメリカが抜けちゃっていますので、他方で、中国が一番の拠出国になっているという状況があります。日本が2番目ですけど。ですから、実は、これは日本にとって大変熾烈な外交問題だと私は受け止めています。
 具体的に何かと申し上げると、かつて、振り返りますと、そういった観点から、例えばですけれども、フランスは外交戦略として、2005年の文化多様性条約というのを、あれはアメリカに対抗してユネスコに取り上げたわけですね。
 それから、日本自身も、かつて無形文化遺産条約というのを、松浦事務局長とともに推進して成立させたと。これは文化そのもののためでもあったんですけれども、同時に、開発途上国の支持をさらに強化させると。外交戦略だったわけです。
 じゃ、今、何かそういうことが出ているかというのは、私は確たる答えは持ち合わせておりませんけれども、これはいろいろ御議論あると思います。
 私なりに感ずるのは、1つ挙げるとすれば、AI倫理に関わるガイドラインは去年の総会でできたんですけれども、あれは恐らく私の印象としては、まだ各論併記で暫定的な形のものになっていますし、何も拘束力はないものです。これは、この世界って本当に日進月歩で、今後あれをさらに発展させるということがいずれ出てくるとすれば、そこでこそ、日本が何かリードを取って、新しいルールを作っていく。
 それは、そのプロセスとして、私はアメリカと協議したらいいと思います。アメリカは脱退しましたが、ユネスコにオブザーバーの代表って置いていると思いますので、いろいろ非公式に、これはアメリカと戦略的に協議いただいたらいいのではないかと思います。1点目は以上です。
 それから、2点目、これは国内の方ですね。かいつまんで申し上げますが、これは一言で言うと、ユネスコの活動が日本自身にどういうメリットがあり得るのか。ユネスコに対する分担金は、従来、恐らくODA60%、非ODA40%というバランスになっているんですが、開発支援の面が多い国際機関ではあるんですが、同時に、先進国である日本自身の利益にどうつながるのか、それが恐らく国内で予算を取る上でも大事な声だと思いますし、その視点から、私は、これについては、1つ具体的な御提案がございまして、先ほど来の次世代ユネスコ国内委員会の延長にもなるようなことではないかと思うんですが。
 要は、日本にもっとプロフェッショナルなグローバル人材を育成するために、これは常々叫ばれていることなんですが、ユネスコをどう活用できるかという視点があっていいと思うんですね。
 簡単に言うと、ユネスコというプロフェッショナルな国際機関で働く経験を日本人にもっと積ませると。もちろん、正規に幹部を含めて日本人を派遣するということもやってきているわけですけれども、ある意味で、もっと若い人、次世代ユネスコ国内委員会の参加者なんかは、その次にこういうステップを考えられたらいいと思うんですけれども、制度があるわけですね。ユネスコ事務局でトレーニーないしインターンとして働くと。これは実は個別にも応募できることなんですけれども、実は、幾つかの大学において大学院レベルでやっております。福井大学でも実はやっておるんですけれども、日本の大学は単発に終わっています。
 実は、ユネスコの人事部に確認しますと、中国はものすごく国を挙げて制度的にやっている。全国の大学を取りまとめて、予算をつけて制度化して、毎年30人くらいのインターンをユネスコ事務局に送っているようです。ユネスコの人事部にしてみれば、人手が非常に不足している国際機関ですから、手弁当で来てくれる働き手というのは、向こうも非常に歓迎なわけです。これ、非常にウィンウィンな事業でしてね。日本にも、是非もっと組織的にやってほしいと言っておりました。たまたま今、人事部長が日本人の方だということもあるんですけれども。
 私は、これは是非事務局とも協議いただいて、政府として御検討いただいてはどうかということを思います。
 私からは以上でございます。
【濵口会長】  ありがとうございます。
 ただいまの御指摘、大変重要な感じがいたします。事務局で少し検討させていただきたいと思います。よろしくお願いします。
 それでは、続きまして、佐藤委員、お願いいたします。
【佐藤委員】  どうもありがとうございます。日本ユネスコ協会連盟の佐藤でございます。
 今日は、冒頭で日本ユネスコ協会連盟が現時点でできることであるウクライナの緊急支援について報告させていただきました。
 そして、今のテーマの課題認識についても、全く賛同させていただきたいと思います。
 そこで、提案ですが、ユネスコ日本政府代表部大使の冒頭の話もありましたけれども、各論ではなくて、大きなテーマでありますけれども、ウクライナ戦争を受けたユネスコ憲章の在り方の検討であります。
 その理由でありますけれども、ウクライナ戦争によって、ユネスコの根幹の理念であります、人々が文化や生活を相互理解すれば平和が実現できるという信念が揺らいでいると考えます。ユネスコ憲章は、第二次大戦のナチスの行為の反省に立って宣言されました。しかし、今回、プーチンは、偏った民族観、愛国心教育、それから、反体制力の弾圧とか殺害、そして、報道規制等を行って、独裁体制を作り上げてきました。しかし、これらはみんなユネスコの平和のための教育、科学、文化の分野のテーマであります。この問題は、政治問題と片づけられないと思います。ユネスコの理念と現実は真逆となって、ユネスコの危機と言ってもよいと思います。
 ユネスコ憲章の何が問題だったのか、何が不足していたのか、見直す必要はないのかという視点から分析と解決策の検討が必要だと思います。
 次に、検討体制でありますけれども、プロジェクトチームを編成して、ユースの方々の研究機関や学術研究に携わっている方、それから、国内委員の学者や専門家の方、それから、一般の市民の委員の方、さらに、必要に応じて外部の有識者に参加してもらうと、議論していくことは可能だと考えます。
 そして、国内委員会としての成案ができましたら、ユネスコ本部に提言することを目標にします。
 戦争はまだまだ続いておりまして、答えがすぐに見つかるわけではないことは承知しております。しかし、日本において、ユネスコに何ができるのか、何をすべきなのかという議論をする機関は、この国内委員会以外にはありません。国内委員の皆さんの英知を集めて、内外に発信できればと思います。検討をよろしくお願いしたいと思います。
【濵口会長】  御意見ありがとうございます。
 それでは、蓮生委員、お願いいたします。
【蓮生委員】  御指名いただきまして、ありがとうございます。蓮生と申します。
 先ほど細谷委員のおっしゃった、新しい規範の形成にリーダーシップを取っていくという御提案に非常に感銘を受けました。
 特に細谷委員も御指摘いただきましたAIの分野の規範形成についてですが、倫理観の対立から、アメリカとヨーロッパは何かと分断が生まれがちでございますが、その分断を日本が橋渡しをするような形で、リーダーシップを取っていく活路を見いだしていくことができるのではないかと考えております。
 新しい規範の形成に日本がグローバルなリーダーシップを取っていくという時代がもう一度戻ってくるということがあれば、非常にすばらしいと思いますので、この御提案、是非推していただけたらと思います。
 次に、第2の点ですが、これは文化・コミュニケーション小委員会の事業にもございましたが、日本のユネスコ活動は、多様なアクターを巻き込んでいくということに関しては、今回、特にユースの活動の巻き込みということについて、かなりの成果を上げているのではないかと思います。
 一方で、地方の人材育成の分野では、いまだに各地域のユネスコ協会連盟にその活動のかなりの部分を依存してしまっている側面があり、これはもちろん助けていただいているというのは非常に積極的な面でもあるんですけれども。例えば、文化・コミュニケーション小委員会における創造都市ネットワークの活性化に関する議論でも出てきたことですが、地方自治体にもう少し主体性を持って取り組んでいただくにはどうしたらいいのかということが議論されました。そこにおいては、地方の文教セクターにおける人材育成というものも非常に重要になってくると思います。そのために、具体的に2つ御提案があります。
 1つは、先ほど細谷委員がおっしゃいましたが、インターンシップの活用です。地方から世界へ、地方公務員、地方公共団体から国際機関へというような、1つの道筋をつくってあげる。地方公務員の方の国際機関での研修の機会の創出、これは特にユースの方を対象にするということも可能だと思いますし、こういったインターンシップの機会を含む研修の機会を創出するということ。
 もう一つが、これは国連の研修機関であるユニタールと連携していくということ。ユネスコだけで全て賄うのは非常に難しいということもあると思いますので、ユネスコとユニタールがうまく連携して、地方の人材の育成に取り組めないかということを考えています。
 特に国連の研修機関であるユニタールには、地方の人材育成の専門のセンターであるユニタールシファール、インターナショナルトレーニングセンターで、オーソリティでリーダーという機関があるわけですけれども、こういったものの日本への誘致なども是非真剣に御検討いただけたらと考えています。
 そして、ユネスコとのプログラム、ユネスコ以外のほかの国連機関もそうですけれども、そういった連携というものを通じて、地方の人材の育成というものに焦点が当たっていくことはできないか、そういうことを是非御提案したいと思います。
 ユースと同時に、地方の人材の育成にも、ぜひこれから次の課題として焦点を当てていただけたら非常にありがたく思います。
 以上です。
【濵口会長】  御意見ありがとうございました。
 いろいろ御意見いただきましたが、事務局の方から何か対応等、御発言ありますか。白井さん、いかがですか。よろしいですか。
【岡村国際統括官】  文科省でございます。
 先生方から建設的な御意見、ありがとうございました。
 この後どう進めるかということにつきまして、先生方に御相談させていただきたいということでございますが、二段階で我々は考えていくのはどうかなと思います。
 といいますのは、現委員の先生方の御任期が11月30日となります。そして、来年が委員の改選のない年ということになりますので、落ち着いた議論がまたできます。ただし、今ここで大変いい議論がスタートしておりますので、今のメンバーの方々のお考え、お思い、アイデア、こういうものをきちんと一定程度のまとめを現委員の間にさせていただくということを、事務局は一案として今会長に御相談をさせていただいているところでございますので、そういうことも含めて、短期と長期にわたった御議論を是非させていただくことができれば有り難いなと思っております。
 以上です。
【濵口会長】  ありがとうございます。
 特に繰り返し御指摘いただきましたインターンシップの件、これ、本当に貴重な経験になると思います。問題は、どういうふうにして財源をつくるか、どうやって選ぶのか、どういうサポートが要るのか、パリで生活することは、現実的に結構コストもかかると思います。
 先ほどの御指摘では、地方自治体からの推薦という御指摘もありました。これ、地方自治体にとっては、ひょっとする魅力的なお話かもしれません。そういう道をどうやって開くか。いろいろ議論させていただきたいなと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 ほか、御意見ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、本件については、本日いただいた御意見も含め、各小委員長とも御相談しながら、現体制で、今後、11月末までに運営小委員会において一定の論点整理を行い、12月以降、新しい委員にもお入りいただいて、さらに議論を進めたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、議題4に移りたいと思います。その他という議題でございますが、全般にわたりまして、何か御指摘、御意見いただくことはございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。御意見なければ、では、非公開の議題に移りますので、委員及び事務局……。
【堀尾国際統括官補佐】  鈴木委員がオンラインで手を挙げていらっしゃいます。
【濵口会長】  鈴木委員、それでは、お願いいたします。
【鈴木(昌)委員】  申し訳ありません。ありがとうございます。
 私が申し上げたいのは、先ほど国際的なユネスコの提言かなと思ったものですから、国内のことについてちょっと申し上げたいと思います。
 私は教育小委員会に属しておりまして、ユネスコスクールの活動の質の担保と活性化について、今後の成果を期待しているところなんですが、その中で、私が提言したいことは、ユネスコスクールの活動に、地域のユネスコに関わる人材を招き入れて、いわゆる地域の横断的な活動を展開していければ、もっと広くユネスコがどんなものかというふうなことも広がっていくのではないかと思っています。非常にしょうもないことなんですが、ユニセフとユネスコの違いというのも一般社会ではあまり知られていません。
 今度は具体的な話を申し上げますと、ユネスコスクールは、学校を中心とした活動で現在種々しているわけでございますが、これを地域の民間ユネスコ協会と連携していけば、幅広い知識と経験を重ねているユネスコ協会員から、別の視点から活動へのヒントや意欲をユネスコスクールの児童生徒たちに与えられるのではないかと私は考えています。
 例えば、私の所属するユネスコ協会は、地域のユネスコスクールと連携しまして、地域住民の抱える課題を取り上げて、地域の課題解決に向けて取り組んでおります。500年の歴史を持つお寺の文化財の修復を、高校ユネスコ部員、お寺の総代の人たち、そして、ユネスコ協会の三者が一体となって取り組んでおります。参加している高校生は、この活動を通して、ユネスコに対する見方、考え方に変化が生まれて、やる気も生まれてきております。
 したがって、私からの提言は、非常に小さなことでございますが、文科省から全国の各ユネスコスクールに、地域ユネスコ協会との連携も密に取り組んでみてはどうだろうかといったような案内文だとか、そういった提言文なんかも送っていただけると、またユネスコのいろいろ新しく取り組んでいることもさらに発展していくのではないかと考えております。ユネスコスクールの話でございました。
 長くなりました。以上でございます。
【濵口会長】  御意見ありがとうございます。引き続き、検討させていただきたいと思います。非常に貴重な御意見です。
 それから、地域の活性化とか、若い世代の育成をリアルにつなげられるようなアイデアだと思いますので、検討させていただきたいと思います。
【鈴木(昌)委員】  ありがとうございます。
【濵口会長】  それでは、もしこれ以上御意見なければ、非公開の議題に移りたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 それでは、移らせていただきます。
 委員及び事務局関係者以外の方々には、御退席をお願いいたします。
 また、傍聴の方々並びに報道関係者の皆様には、恐縮ですが、ここでユーチューブを通じたオンライン配信を終了しますので、御了承ください。
 
―― 了 ――
 

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