日本ユネスコ国内委員会総会(第147回)議事録

1.日時

令和2年9月2日(水曜日)13時30分~16時00分

2.場所

ホテル ルポール麹町 2階「ロイヤルクリスタル」
対面とオンラインのハイブリット形式での開催

3.出席者(敬称略)

〔委員〕
秋永委員、石井委員、礒田委員、市丸委員、伊東委員、井上委員、漆委員、大枝委員、大串委員、大島委員、大野委員、翁委員、越智委員、加治佐委員、片山委員、萱島委員、河野委員、木間委員、肥塚委員、古賀委員、小長谷委員、小林委員、西藤委員、斎藤委員、佐藤委員、佐野委員、杉村委員、鈴木委員、角南委員、髙木委員、髙橋委員、立川委員、道傳委員、西尾委員、野村委員、芳賀委員、蓮生委員、羽田委員、濵口委員、林委員、東川委員、日比谷委員、藤田委員、細谷委員、見上委員、箕浦委員、山口委員、吉田委員

〔特別顧問〕
松浦顧問

〔外務省〕
志野国際文化交流審議官、松田国際文化協力室長

〔文部科学省〕
萩生田大臣、藤原事務次官、氷見谷大臣官房国際課長

〔文化庁〕
石橋文化資源活用課文化遺産国際協力室長、鈴木文化経済・国際課国際文化交流室長

〔事務局〕
田口事務総長(文部科学省国際統括官)、亀岡副事務総長(同省文部科学戦略官)
石田事務局次長(同省国際統括官付国際戦略企画官)、堀尾事務総長補佐(同省国際統括官付国際統括官補佐)、植村事務総長補佐(同省国際統括官付国際統括官補佐)、その他関係官

4.議事

【濵口会長】 お時間になりましたので,開始させていただきたいと思います。本日は,御多忙の中をお集まりいただきまして,ありがとうございます。
定刻になりましたので,まず事務局から定足数の確認をお願いいたします。
【堀尾国際統括官補佐】 本日は,出席の委員が49名で,委員58名の過半数を満たしておりますので,定足数を満たしております。
【濵口会長】 ありがとうございます。ただいま事務局から,定足数が満たされているとの報告がありましたので,第147回日本ユネスコ国内委員会を開催いたします。
本日の総会は,一部の議題を除いて,傍聴の希望者に対し,YouTubeを通じてオンライン公開しております。また,御発言は,非公開部分を除き,そのまま議事録に掲載され,ホームページ等で公開されております。
本日の会議には,萩生田光一文部科学大臣に御出席を賜っております。
また,本日は,ウェブ会議システムと対面式のハイブリッド,言わばSociety5.0方式で開催いたします。オンライン開催のメリットを生かしてパリとつなぎ,議題6「その他」の部分において,ユネスコ日本政府代表部の尾池大使からユネスコの最近の動きについて後ほど御報告いただく予定でございます。
それでは,萩生田文部科学大臣より御挨拶を賜りたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【萩生田文部科学大臣】 皆様,こんにちは。文部科学大臣の萩生田光一です。今お話がありましたように,今日はリモートで参加されている方もいらっしゃいますので,私が立ち上がって挨拶しますとまたカメラの設定が大変なものですから,座って御挨拶をお許しいただきたいと思います。
第147回日本ユネスコ国内委員会の開会に当たり,一言御挨拶を申し上げます。現在私たちは,コロナ禍という未曾有の困難に直面しております。人と人との交流が難しくなる現下の状況において,教育,科学,文化を含め社会経済の分断が危惧され,ユネスコでもハイレベル会合の開催など危機の克服に向けた取組を進めています。
ポストコロナの新しい社会においては,コロナ禍で分断された人々のつながりを再構築することが重要な課題となります。人の心の中に平和のとりでを築くというユネスコのミッションの実現が今ほど求められているときはないのではないでしょうか。
我が国といたしましても,責任ある加盟国として,困難な時代においてユネスコが果たすべき役割を見極め,それがしっかり遂行されるよう引き続き求めていくことが重要であると考えます。
また,来年は,我が国のユネスコ加盟70周年の節目の年に当たります。いま一度,人と人,国と国を結ぶユネスコの精神に立ち返り,ユネスコ活動を一層活性化する方策とともに,これを機に我が国が国内外にいかなるメッセージを発していくのか,本日は活発な御議論を頂けますと幸いです。
最後になりましたが,本日の会合が有意義な意見交換の場となることを祈念いたしまして,私からの御挨拶とさせていただきます。ありがとうございます。
【濵口会長】 ありがとうございました。
萩生田大臣は,この後の御予定がございますので,ここで御退席されます。本日はどうも御臨席ありがとうございます。
                          (萩生田文部科学大臣退室)
【濵口会長】 それでは,審議に入りますが,審議の前に,本日のオンライン及びペーパーレスでの会議における機器の操作等について,事務局よりまず説明をお願いします。
【堀尾国際統括官補佐】 事務局から説明させていただきます。
本会議におきましては,資料のペーパーレス化を進めております。既にこれまでの国内委員会会議においてもペーパーレス化を実施しているところですが,本日会場で御参加いただいている先生方には,議事次第とリーフレットのような配付資料を除き,全ての会議資料はお手元のタブレット端末で御覧いただく形になっておりますので,よろしくお願いいたします。
また,本日は,会場とオンラインとのハイブリッド形式で実施しております。会場から御参加いただいている委員の方々は,お手元のマイクで御発言をお願いいたします。なお,オンラインで御参加いただいている委員の方で,スピーカービューをしている方は,会場の委員はスピーカービューにはなりませんので,御了承いただければと思います。
また,オンラインで御参加いただいている方々につきまして,御意見,御質問を頂く際には,できる限り挙手ボタンを押していただきますようお願いいたします。挙手ボタンの方法が分からない方は,チャットで御連絡を頂くか,もしくは事務局の携帯まで御連絡いただければと思います。また,御発言いただく以外のときは,マイクをミュートにしていただくようお願いいたします。
そのほか,御不明な点やトラブル等ございましたら,会場の近くの事務局職員,もしくはオンラインの方は,本日のWebex会議情報を送付した際に記載しております緊急連絡先に御連絡いただければ幸いです。
不慣れな点が多く御迷惑をおかけすることもあるかと思いますが,どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。
【濵口会長】 ありがとうございます。それでは続きまして,本年2月21日に開催されました前回の国内委員会総会以降,事務局に異動がございますので,事務局から報告をお願いします。
【堀尾国際統括官補佐】 事務局のほうから,本年8月1日付で田口康国際統括官/日本ユネスコ国内委員会事務総長が着任しております。
【田口国際統括官】 田口でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
【堀尾国際統括官補佐】 本年4月1日付で亀岡雄文部科学戦略官/日本ユネスコ国内委員会副事務総長が着任しております。
【亀岡文部科学戦略官】 亀岡でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【堀尾国際統括官補佐】 また,同じく本年4月1日付で氷見谷直紀大臣官房国際課長が着任しております。
【氷見谷国際課長】 氷見谷でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【堀尾国際統括官補佐】 本年7月28日付で,石田善顕国際統括官付国際戦略企画官/日本ユネスコ国内委員会事務局次長が着任しております。
【石田国際戦略企画官】 石田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【堀尾国際統括官補佐】 以上でございます。
【濵口会長】 ありがとうございます。それでは,議題に移りたいと思います。初めに,前回の国内委員会総会以降の最近のユネスコ活動の状況についてお諮りします。
項目(1)新型コロナウイルスの流行に係るユネスコの動きから(3)建議のフォローアップと今後の取組の在り方についてまで,通して事務局から御報告を頂き,その後,建議のフォローアップや新型コロナウイルスへの対応に関する有識者及び関係団体からのヒアリングとして,実際にユネスコの会議やユネスコの活動に参画されている先生方から最新の動向や取組の様子について御発表いただきたいと思います。御意見,御質問等につきましては,報告と発表の後,まとめてお願いさせていただくこととします。
それではまず,事務局からの報告をお願いいたします。
【石田国際戦略企画官】 石田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。それでは,議題1につきまして,まず資料1-1に基づきまして,新型コロナウイルスの流行に係るユネスコの動きについて,御説明をさせていただきます。
まず,資料の1ページを御覧いただければと思います。新型コロナウイルスの影響によりまして,第209回ユネスコ執行委員会が延期となったほか,IHP政府間理事会,それから,ESDに関するユネスコ世界会議,IOC執行理事会,世界遺産委員会等各種会合が延期になっております。
また,下段以降でございますが,ユネスコの新型コロナウイルスへの対応等について記載してございます。ユネスコでは,3月より世界各国の休校措置に係る状況をホームページに公表しております。最大時には192か国が全国的な休校措置を講じておりまして,約10億7,000万人の児童生徒等が影響を受けたと言われております。
これを受けましてユネスコでは,各国における経験や課題を共有するために,教育,科学技術,文化に関するハイレベル会合を開催しました。教育の分野では,調査や会合の結果として,「学校再開ガイドライン」をユニセフ,世界銀行,国際連合世界食糧計画とともに策定するほか,民間企業等と連携を図るための国際教育連合を設立しております。
次に,SDGs-教育2030ステアリング・コミッティにおいては,提言が取りまとめられました。これについては,おって,吉田委員より御説明を頂くこととしております。
次,3ページになります。2つ目の丸にありますように,「教育の未来」国際委員会が特別バーチャル会合を開催したほか,コロナ禍での助言となり得る9つの考えをまとめております。これらにつきましては,補足資料として添付しておりますので,御参照ください。
次に,科学についてでございます。先ほど申し上げたハイレベル会合においてオープンサイエンスが議題となりましたが,そのほか,アジア太平洋地域レベルでも会合が開催され,立川委員に御出席を頂きました。これにつきましても,後ほど立川委員より御発表いただければと思っております。
その後,5ページ以降には国内の取組について記載しております。文部科学省,文化庁,また,民間においても,ACCUや日本ユネスコ協会連盟などで様々な活動を実施いただいております。大変多岐にわたっており,時間の関係もございますので詳細については入りませんが,その中で本日は,日本ユネスコ協会連盟における取組について後ほど御発表いただければと考えております。
それでは続いて,資料1-2を御覧いただければと思います。第209回ユネスコ執行委員会の結果についての御報告でございます。執行委員会につきましては,6月29日から7月10日にパリのユネスコ本部で開催されまして,現地でユネスコ日本政府代表部が対応いたしました。
主な議題として3点ほど御紹介させていただきます。1点目は,未来の教育イニシアティブに関して,先ほどお伝えしたような議論の状況報告が行われました。日本からは,未来に向けた教育イノベーションのプロジェクトの実施に50万ドルの財政支援を行う用意があるというようなことも発言しております。
次に2点目でございます。ステアリング・コミッティやアジア太平洋教育2030会合の開催等SDG4の実現に向けた国際的,地域的メカニズムの中のユネスコの役割について,取組の状況報告が行われました。
3点目に,「世界の記憶」についてでございます。「世界の記憶」事業の制度改善に関する参加制限型のワーキンググループは,本年6月でマンデートが終了したところ,新型コロナウイルスの影響によって同グループにおける議論を実施していないため,同グループのマンデートが2021年3月まで延長される決議が採択されたところでございます。
以上,執行委員会の結果についてでございます。
3点目に,建議のフォローアップと今後の在り方について御説明いたします。資料1-3-1で添付しております,昨年10月に国内委員会より提出いただきました「ユネスコ活動の活性化について(建議)」に関しまして,フォローアップ状況を説明させていただきます。資料1-3-2を御覧いただけますでしょうか。こちらでフォローアップの状況を整理させていただいております。先ほどの新型コロナウイルスの流行に係るユネスコの動きとも重複する部分がございますので,適宜抜粋して御説明をさせていただきます。
まずSDG4及びESDに関する国際動向についてでございます。ESD for 2030については,昨年ユネスコ及び国連で決議が採択されているところでございますけれども,それを踏まえ,今後の大きな予定としては,キックオフ会合が来年の5月にドイツで予定されているところでございます。また,コロナ禍の状況でございますので,その下にあります国連本部におけるESDにおけるサイドイベントについては,これはちょっと難しいという状況になっております。
それから,その下,国内の動きに関してでございます。次期ESD国内実施計画の策定に向けた検討を環境省とともに進めているところでございます。また,「ESD推進の手引」についても改訂を進める予定でおります。
それから,次のページでございます。2番目の柱でございます国連海洋科学の10年に向けては,各種ウェビナー会合等が開催されておりまして,活発な議論がなされております。この分野については,この後,道田主査から御説明いただく予定です。
3番目でございますけれども,ユネスコ改革への貢献に関しましては,先ほども触れました「教育の未来」プロジェクトに日本の信託基金を効果的に活用すべく検討を進めています。そのほか,「AIの倫理」やオープンサイエンスに関しても専門家会合等が進められております。
「世界の記憶」につきましては,先ほど執行委員会の報告の中で御説明させていただいたとおりですが,日本の信託基金により実施しているグローバル・ポリシー・フォーラムについて,これは日本の強みを生かした防災と記録物の保護について行うこととなっておりましたが,第2回が新型コロナウイルスの影響で延期されております。
4番目のユネスコ活動を活用した取組については,ユネスコの登録事業等の状況について資料にまとめておりますが,今後,その活用についても引き続き取組を進めてまいります。
最後,5番目の戦略的プラットフォームの構築につきましては,ユネスコ未来共創プラットフォーム事業の事業者として,一般社団法人SDGsプラットフォームを採択いたしました。その中で,全国及び地域ネットワークの構築及び連携強化,ポータルサイトの構築・運用を通じた国内外へ情報発信及びセミナー等の開催を実施予定でございます。
事務局からは以上でございます。
【濵口会長】 ありがとうございます。それでは続けて,ヒアリングに移らせていただきます。今回の発表は4名の方々にお願いしております。1番目は,ユネスコが主催するSDG-教育2030ステアリング・コミッティに共同議長として御参画いただいております吉田委員にお願いします。2番目に,2021年からの持続可能な開発のための「国連海洋科学の10年」に関連して,日本ユネスコ国内委員会自然科学小委員会・政府間海洋学委員会(IOC)分科会の道田主査にお願いいたします。3番目として,自然科学小委員会・政府間水文学計画(IHP)分科会主査であり,コロナ禍を受けての科学に関するアジア太平洋地域会合に国内委員会を代表して出席しておられる立川委員にお願いします。4番目として,民間ユネスコ活動で活動いただいている日本ユネスコ協会連盟から,コロナ禍においてどのようなユネスコ活動が各地域で展開されてきたかという点について佐藤委員から,それぞれ発表をお願いいたします。
それではまず,吉田委員から,SDG-教育2030ステアリング・コミッティとCOVID-19の最近の動きについて御報告を頂きます。吉田委員,よろしくお願いいたします。
【吉田委員】 よろしくお願いいたします。それでは,配付資料の中に含まれております私の資料を御覧ください。SDG-教育2030ステアリング・コミッティとCOVID-19の最近の動きということで,このステアリング・コミッティの共同議長をさせていただいております,吉田と申します。
ごく簡単ですけれども,次のスライドで,このCOVID-19が世界に蔓延し始めて非常に早い段階の3月で,ユネスコの動きとなりますけれども,Global Education Coalitionというものを立ち上げました。これはユネスコが中心となって,国連の関連機関,専門機関のみならず,最新ではマイクロソフトとかグーグルとかイギリスのBBC放送とか,非常に多くの,しかも分野横断的な組織の参画を頂いているところです。ここを通じてCOVID-19への対応が様々な形で議論され,また協力関係が構築されているというものがございます。
以下,4月,6月,7月といろいろな動きがございました。次のページでもう少し詳しく説明させていただきます。
まず4月にステアリング・コミッティの会合が開かれました。こういう状況下ですので,オンラインで全て行われております。そして,この4月の会合では,Recommendations for COVID-19 Education Responseということで文書を採択しております。これについては,この資料にも含まれていると理解しております。特に包摂性,そして,公正性を基本としてCOVID-19に対処すべきであるという点を強調しております。そして,教員の役割を認識して,教員に対する支援を行うこと,そして,求められるのは,政治的なコミットメントと,COVID-19から回復する際の教育への投資が確保されることということです。この背景には,どうしても命を守るということで保健衛生分野には関心は行く中で,教育への投資が後回しにされるという危惧が強調されております。
6月に改めてステアリング・コミッティの会合が開かれました。特に,この前の会合からも触れられていたのですが,教育に関わる投資をどのように確保するか,これをテーマに議論いたしました。そこではまず,ゴードン・ブラウン――元イギリスの首相ですが,国連グローバル教育特使によるスピーチを頂きました。そして,COVID-19の余波によって経済危機下で国内教育財政が逼迫されるということを防ぐためにどのようなことを議論すべきか,さらには,コロナ危機が一通り最も危機的な状況を過ぎた後,国際協力の水準を教育に対してどのように維持できるか,こういうことについて議論をいたしました。
次のページに行きます。7月には,国連のハイレベルポリティカルフォーラムでサイドイベントが行われました。ここでも,右に出ております,非常に広範な,しかも重要なステークホルダーズの方が参画いただいて議論がなされました。スライドに出されておりますリンクに行くと,その模様が全てYouTubeで見ることができる形になっています。
そして,同じく7月には,Futures of Educationの国際委員会に対して,ステアリング・コミッティとしての分析結果を提出いたしました。この提出文書の作成に当たっては,Futures of Educationについてのステアリング・コミッティのワーキンググループを設置いたしまして,そこには杉村委員,そして,私が日本からは参画しております。特に,議論でありがちな短期的な対応にとらわれず,中長期的な対応と分けて議論する必要性を指摘しています。また,イノベーション,ICTなどの役割は包摂性と質を考慮すべき。どうしてもオンライン教育等で既に相当脆弱な状況にいる弱い人たちがますます被害が大きくなってきてギャップが大きくなってくる,こういうことを避けつつ,教育の質を確保する点が必要になってくる,こういうことを盛り込んだ提言を出したところです。
これらの資料,今回の総会資料についているものもございますし,また,以下のリンクで御覧になることもできます。
以上です。
【濵口会長】 ありがとうございました。それでは続けて,道田主査から,持続可能な開発のための「国連海洋科学の10年」について,御報告を頂きます。道田主査,よろしくお願いいたします。
【道田委員】 御紹介ありがとうございます。東京大学,道田でございます。「国連海洋科学の10年」というのが間もなく開始されます。その現状につきまして,皆様に情報共有ということで御報告申し上げたく思います。資料は1-4-2,全体のページ番号でいいますと65ページになります。横置きの1枚紙になっております。これを御参照になりつつ聞いていただければと思います。
「国連海洋科学の10年」,2021年から2030年の10年間を海に関わるいろいろなことを進めることによって,SDGの推進に資する活動にしようと,こういうことでございますが,とりわけSDGの14番,海の豊かさを守ろうというものがございますけれども,これにつきまして10年間力を入れて国連全体で取り組もうと,こういうものでございまして,2017年12月の国連総会において採択・宣言されたものでございます。
その後,実行計画につきましては,ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)が主導して実施計画をまとめるということになりまして,現在その準備が進んでいるところということでございます。間もなく開始されますので,今年度,幾つか重要な会議が予定されておりましたが,現下のコロナ禍の状況を踏まえて,多くはオンラインで,あるいはウェビナーで議論が進められてまいっておりまして,現在,実施計画の第2版が議論の俎上に載っていると,そういう段階まで来ております。
これについて我が国の対応でございますけれども,2018年5月に出された第3期の海洋基本計画の中に,この問題にしっかり日本として取り組むのだということが明記されておりますし,その後,昨年,先ほど御紹介がありましたけれども,当委員会,ユネスコ国内委員会からの建議として,3つの柱のうちの一つにこの「国連海洋科学の10年」の推進が盛り込まれたところでございます。さらに,今年に入りまして,2020年6月の末に,総合海洋政策本部の参与会議から安倍総理に意見書が出されておりますが,その中に,「国連海洋科学の10年」に我が国としてしっかり取り組むのだということが盛り込まれております。
このように進めてまいるわけでございますけれども,資料の左半分の真ん中辺りに,社会的成果と書いてございますポツが7つございます。これ,ちょっと前までは6つだったのですが,最初の5つは従来と同じでございますけれども,6番目と7番目は,もともと6番だったものが2つに分かれました。すなわち,万人が利用できる海,Accessible Oceanについては,みんなに開かれた,かつ皆が利用できるような海にしよう,それから,7つ目が,ここでは和訳が心揺さぶる魅力的な海となっておりますけれども,一般市民も含めて広く地球市民に魅力的な海にしていこうと,こういったことが社会的目標でうたわれております。
5つ目までのところは詳しく申し上げませんけれども,見ていただきましてお分かりになりますように,きれいな海,例えばつい先日起こりましたモーリシャスの座礁事故というようなことについてどう対応するのかということも含めて,「国連海洋科学の10年」でそういった問題にもしっかり取り組んでいくということになろうかと思います。
お気づきのとおり,7つの社会的目標ですので,「国連海洋科学の10年」と科学とうたっておりますけれども,社会的目標の達成のためには自然科学だけで進む話ではございませんので,基より学際的な取組をする必要がありますし,さらには,多くのステークホルダー,これには研究者のみならず,政策決定者,さらには一般市民の方々も巻き込んで大きな動きにしていって,かけがえのない海洋を守っていこうと,こういうことでございます。
こうやって準備を進めているわけでございますけれども,お気づきのとおり,ユネスコの活動といたしましては,教育セクターとの連携といったことも重要なことになってまいりますので,関係の方々と議論を進めていって,日本として的確に対応してまいりたいと思います。
最後にもう一言申し上げたいことがございます。こういう国内体制を整えるため,つい一昨日8月31日に,「国連海洋科学の10年」に関する研究会のキックオフを行いました。ここには,猪口先生あるいは関係省庁の幹部の方々にも御参加いただいて,日本の取組を全体としてうまく発信していく,日本のプレゼンスをしっかり見せるためにどう取り組んでいくかということについて議論が始まったところでございます。先生方におかれましても,それぞれの関連するところで「国連海洋科学の10年」についての御協力,御支援をお願いできればと思います。
以上でございます。ありがとうございました。
【濵口会長】 ありがとうございました。それでは次に,立川委員から,政府間水文学計画及び科学に関するアジア太平洋地域会合について,御報告いただきます。立川先生,よろしくお願いします。
【立川委員】 どうもありがとうございます。京都大学の立川でございます。資料1-4-3,ページ数でいきますと,66ページになります。
まず,ユネスコ政府間水文学計画(IHP)というのが一体何をやっているのかということをごく簡単に御説明申し上げて,このコロナウイルス禍でどうやって活動を継続しているかということについて御報告申し上げたいと思います。
ページ数でいきますと67ページになりますが,これはごく簡単に,ユネスコ政府間水文学計画(IHP)の歴史を書いたものです。この水文学というのは何なのかといいますと,ごく簡単に狭い意味でいいますと,水の循環を扱う科学です。例えば似たような感じですと天文学が星の運行を扱うように,水文学といいますのは,雨が降って,それがどのように地表に到達して,どのように地面を流れて,あるいは地下水となって海あるいは川に流れて,あるいは最終的にそれが地面あるいは森林を通して蒸発して大気に帰っていくという,こういう自然の循環を繰り返しているわけですが,我々はその自然の循環の中で水を利用してきております。そういった科学,それから,それをどうやって利用していくのか,管理していくのか,そういったことの教育,科学を進めていくということがこのIHPでございます。
IHPに日本が特に最初に主体的に関わってきたのが,1965年のIHDという国際水文学の10年というもので,この中で1975年にIHDの成功を受けましてIHPが設立されました。以降,活発な活動を繰り広げておりますが,中でも1993年に日本の主導の下に,アジア太平洋域の地域運営委員会を立ち上げております。これは日本政府の信託基金(JFIT)からサポートしていただいて,毎年ジャカルタ事務所と協力して,水に関する様々なことをこのアジアの国々の代表の方々と議論を重ねているところでございます。
その後,2006年に,これは松浦様がユネスコ事務局長をしておられたときに,日本国内で水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)が設立されまして,非常に活発な活動を繰り広げています。世界的にも,水災害をどうやって防止・軽減していくかということで非常に良い活動をしている模範的なユネスコカテゴリー2センターとして活動を繰り広げております。その後で,IHD-IHPの50周年記念を2015年に開催し,2018年には京都大学に水・エネルギー・災害教育研究ユネスコチェアであるWENDIが設置されたところでございます。
次,これはページ数でいきますと68ページになります。IHPというのは,ユネスコの自然科学事業の一つでして,今申し上げましたように,水に関する政府間の科学協力プログラムとして,特に防災・減災,それから,生物多様性,エンジニアリング,科学教育,気候変動,持続可能な発展などに関する取組を実施しておりまして,8年ごとに中期目標を策定して,活動計画を立案し,社会に実装するということでやっております。国際協力,科学と政策,教育と能力開発といったことがキーワードになると思います。
この中で我が国の貢献としましては,先ほど申し上げましたアジア太平洋地域運営委員会の運営,ICHARMの活動,それから,ユネスコチェア,WENDIの活動,それから,ユネスコトレーニングコースを大学で京大あるいは名大が主催しておりまして,1年に1回あるいは2回こういったトレーニングコースを実施しているところでございます。
その次の資料が,約30年近くにわたって実施しておりますアジア太平洋地域運営委員会の活動であります。これは1993年に設立しまして,毎年アジア太平洋域の国々で運営委員会を開催して,この地域の水文科学に関する活動計画の立案,情報共有といったことを,研究者,行政,あるいは行政の中にある研究所の方々と議論しているところです。毎年やっているのですが,今年は10月にハノイで予定をしておりましたが,困難ということで,オンライン開催を予定しております。
日本の活動の中で主体的に今やっておりますのが,JFITのサポートも受けて,Catalogue of Hydrologic Analysis,CHAという活動をしております。これは水に関する科学技術,経験,知恵を共有しようというもので,ワークショップ,それから,ワークショップの内容を文書に取りまとめて図書として出版して,この地域の水に関する取組に貢献していこうというものでございます。
第1巻を昨年の10月にユネスコの正式な出版物として発刊することができました。水害ハザードマップ,これは日本でも最近,どういった地域で水深がどのぐらいになるのだろうかという水害ハザードマップが多くの方々に利用されるようになってきておりますが,これは日本だけじゃなくて,各国で水害ハザードマップが作られております。ただ,この作り方はいろいろです。日本,韓国はかなり似た,洪水あるいは氾濫のシミュレーションを基にしたような水害ハザードマップが作られていますが,それ以外にもいろいろな現場の知識を入れた,経験を入れたような作り方があって,それを共有してこのアジア地域あるいは世界で共有しようという目的でやっておりまして,水害ハザードマップ,CHA,これはJFITの協力の下でうまくいきました。これは2年に1回,アジア地域の皆さんと協力しながらこういった取りまとめをしていくものでございます。
こういったことを進めていく上では,やはりFace to faceでコミュニケーションを取っていくということが非常に大事で,その上で,残念ながら昨今はそういうことができないので,ウェビナー,これはJFITのサポートの下でジャカルタ事務所が企画をしたものですが,この5月にウェビナーが開催されました。私も参加者の1人として参加いたしましたが,ここでは,IHPあるいはMAB,ジオパークなどの様々な科学分野が一緒になって,コロナウイルス禍,何ができるかということの意見を出し合った場でした。
IHPジャパンとしましては,先ほど申し上げましたCHAの取組をもっと積極的にこのアジア地域でやっていきますということを申し上げるとともに,ICHARMの小池センター長からは,コロナ禍で特に日本では水害時の避難においてどうやって感染拡大を防ぐかといったことの話題提供を行いました。IHP,IOC,それから,MABなどの科学の各分野を超えた連携だけじゃなくて,教育,文化,コミュニケーション分野との連携が重要というような意見も出されて,非常に有意義なウェビナーでした。
次が最後です。その後,この5月のウェビナーを受けまして,7月の末にアジア太平洋域のウォーターファミリーを対象に,特に私は先ほどのCHAをしっかりやっていきましょうということを主張しまして,こういった皆さんが集まって,この水分野で,コロナ禍で何ができるかということを話し合っているということをやっております。これを受けまして,残念ながら10月にハノイで対面ではできませんので,ウェビナーでインターネットを通じた運営協議会の開催を予定しております。
以上でございます。どうもありがとうございます。
【濵口会長】 ありがとうございました。
それでは,最後に,佐藤委員から,コロナ禍における各地ユネスコ協会・クラブの活動について御報告を頂きます。佐藤委員,よろしくお願いいたします。
【佐藤委員】 73ページございます。私ども日本ユネスコ協会連盟の276の組織の新型コロナウイルス感染症拡大の中の取組を報告させていただきます。
まず感染症の拡大を受けまして,私ども協会連盟が70年以上にわたり継続しておりました全国大会,宇部で開催しておりますけれども,今年については残念ながら中止といたしました。一方で,途上国における世界寺子屋運動の支援地であるカンボジア,ネパールそのほかの国々で,新たに新型コロナウイルス対策支援プログラムを開始しております。また,国内では,会員の研修や広報を目的にネットによる動画配信をスタートしております。
次,74ページです。各地のユネスコ協会の取組でありますけれども,2月中旬から3月以降,ボランティアで活動を展開している各地の多くの組織では,会合が開けないなど非常に厳しい状況に追い込まれました。しかしながら,このような状況下にあっても,創意工夫をしながら活動を行っております。
まず(A)でありますけれども,感染症の拡大防止に向けた支援活動の事例を御報告いたします。次のページをお願いします。まず仙台ユネスコ協会では,5月に会員の手作りマスクと企業により寄託されましたマスクを仙台市に寄贈し,小中学校,そして,障害のある方に向けた活動を行っている団体に配布されました。また,目黒ユネスコ協会では,青年会員の企画によりまして,医療従事者のためのチャリティーを目的とした演奏会「めぐろルン2LIVE」という名前ですけれども,これを無観客で実施しまして,6月下旬からYouTubeで配信しております。
次のページ,そのほかにも,医療関係機関への寄附等を行っているユネスコ協会があります。また,協会連盟では,地域の協会が行う新型コロナ感染症の対策事業への助成金制度をスタートさせております。
次のページ,(B)のウィズコロナの取組であります。沖縄県ユネスコ協会は,毎年,「平和の鐘を鳴らそう」というイベントとともに,高校生を対象とした平和学習会を行っております。今年はオンラインで実施したこともあり,離島から初めて参加した高校生もおりました。長野ユネスコ協会では,青年部が「りもっぷる」という名前のオンラインの勉強会を始めました。県外からの参加者も加わり,今後の活動に生かしていきたいと考えております。
次に,東京都ユネスコ連絡協議会では,世界遺産登録を目指す国立代々木競技場についての勉強会をオンラインで開催しております。都内の25のユネスコ協会会員だけではなくて,他県からも参加しております。そして,宮城県の富谷ユネスコ協会は,5月に新たに当連盟に加盟したばかりでありますが,コロナ対策を十分行って,7月,設立総会と勉強会の開催にこぎ着けました。富谷市の全ての小・中・高等学校がユネスコスクールであり,今後の活躍が期待されております。
様々な困難を乗り越えてウィズコロナで実施している活動がありまして,79ページ,今後,私たちには新たなアプローチでユネスコ活動を実践することが求められております。国内委員の皆様方にも,私たち草の根の活動に御理解と御協力を賜りますよう,よろしくお願いしたいと思います。
本日はどうもありがとうございました。
【濵口会長】 ありがとうございます。報告者の皆様,本当にありがとうございました。
それでは,ただいまの御報告に対して,御質問,御意見がある委員の方は,挙手をお願いいたします。この次の議題2においても,今後のユネスコ活動についての意見交換の時間を設けておりますので,こちらでは主にただいまの御発表に対する御質問について優先させていただければ幸いでございます。
なお,御発言いただく場合には,オンラインで御参加いただいている委員におかれましては,できるだけ挙手ボタンを押していただいてお知らせいただければ幸いです。事務局にて確認し,こちらから指名をさせていただきます。それでは,いかがでしょうか。どうぞ御自由に御発言いただければと思います。
はい,どうぞ,お願いします。
【松浦顧問】 ユネスコの諸活動に関しまして,こういう時期にもかかわらず,いろいろな活動をやっていらっしゃるのを御報告いただき,大変ありがとうございました。中でも,民間のユネスコ協会の活動も大変うれしく伺いました。
一つ質問は,後に出てくるのであれば申し訳ないのですが,こういう時代なので,例えば中国の福州で企画され,予定されていた世界遺産委員会が延期になり,さらには,無形文化遺産委員会がどうなるかがちょっと気になるのですが,日本として非常に関心のあるこの2分野の委員会が今後見通しとしてどうなのか教えていただければ有り難いです。
以上です。
【濵口会長】 分かりました。それでは,事務局どうぞ。
【志野国際文化交流審議官】 外務省の国際文化交流審議官の志野でございます。1点,御質問に答える前に,うちのほうも人事異動がありましたので,1人紹介させていただきたいのですが,新しくユネスコを担当する国際文化協力室長として森に代わりまして、松田が着任しております。どうぞよろしくお願いいたします。
世界遺産委員会について,中国で6月末から7月にかけて開催予定だったのですが,これは御案内のとおり延期されておりますが,中国はまだ開催したいと考えておりまして,その日程調整にまだ手間取っております。中国のほうとしては自分たちは開催できるとは言っているのですが,皆さんからの参加ができるかどうかということを参加国との関係で調整中というふうに伺っておりまして,いまだに時期未定ということでございます。
あと,無形文化遺産のほうでございますけれども,これはパリで会合を,定例会議を行いますので, 12月に予定どおり行われる予定となっております。詳細について、松田のほうから説明します。
【松田国際文化協力室長】 無形文化遺産については,締約国会議と政府間委員会がございまして,締約国会議については今月予定どおり開催します。これは小規模な会議でございます。政府間委員会については,12月にきちんとしたものがパリで予定されているという現状でございます。
【志野国際文化交流審議官】 パリのほうは通常どおり会議を今はやっておりますので,そちらで行われる分には普通に代表部の大使とかが出席してできるのではないかというふうに思っております。本国からの出席を必要とするような,かつパリ以外のところでやるものについては今,未定ということでございます。
【濵口会長】 よろしいでしょうか。
【松浦顧問】 ありがとうございました。御承知のようにいずれも日本の好案件がかかっているわけで,世界遺産のほうは沖縄を中心とした南西諸島,それから,無形のほうは伝統的な修復技術ということで,関係団体は非常に関心を持っていますので,是非関係団体のほうにも状況を連絡しておいていただけたらうれしいと思います。以上です。
【志野国際文化交流審議官】 ありがとうございます。
【濵口会長】 よろしくお願いします。
ほかいかがでしょうか。よろしいでしょうか。ネットの方,よろしいですか。御質問ないでしょうか。
それでは,御質問ないようですので,議題2に移らせていただきたいと思います。議題2は,今後のユネスコ活動の充実についてであります。コロナ禍という困難な時代において国際機関の在り方が問われる中,私たちがユネスコに期待する役割・機能は何か,また,国内におけるユネスコ活動はどうあるべきか,未曾有の状況に置かれている現在こそ,国内委員会として積極的にメッセージを発する必要がある。そのような問題意識から本議題を設けさせていただきました。
それでは,メッセージ案について,事務局から説明をお願いします。
【石田国際戦略企画官】 事務局でございます。それでは,資料2を御覧ください。通し番号でいうと82ページからでございます。今,会長のほうからお話しいただきましたけれども,日本のユネスコ加盟70周年と,それから,今,コロナ禍の最中という,ユネスコ活動と社会全体に関わる動きの中で,この時期に総会を開催するという意味を考えたときに,ユネスコに対して例えば会長メッセージというような形で今後の期待をお示しするということもあるのではないかということから,会長とも御相談いたしまして準備し,素案を事前に各委員会にもお送りしたものでございます。
内容につきましては,大きく2つに分かれております。一つは,コロナ禍の時代におけるユネスコの役割と期待ということです。現在,コロナ禍という未曾有の事態によりまして,昨年まで想像もできなかったような社会経済的変化が起こっております。この変化には,デジタルトランスフォーメーションの加速といったようなこと,あるいはICT技術が社会的に実装されているというようなポジティブと捉えられる側面とともに,分断がもたらす,コロナがもたらした場合,あるいはコロナによりそもそもあった分断が顕在化されたといった両面あろうと思いますけれども,こういった分断をもたらすおそれもあるということでございます。
そうした中,人々が連帯,協調するという意識を持ち続け,人の心の中に平和のとりでを築くというユネスコのミッションは,より重要な意識を持つ状況になっております。議題1でも紹介いたしましたけれども,現時点でユネスコとしてはかなり活発にコロナ禍での活動を行っており,そうした動きを一定程度支持するとともに,そういった動きができるような改革を進めてもらいたいという,ユネスコへの期待を込めたメッセージを書かせていただいたのが,最初のパートでございます。
それから,もう一つのポイント,83ページ,資料2の2ページ目のほうになります。こちらにつきましては,ユネスコ加盟から70周年までの歩みとさらなる一歩ということで,国内に目を向けたパートとなっております。来年2021年でございますけれども,これは日本にとってユネスコ加盟70周年という節目の年になります。国連の加盟に先駆けてユネスコに加盟したという我が国にとって,ユネスコや,あるいはユネスコ活動の重要性というのは論をまたないところでございますけれども,その歩みを振り返る機会であろうということでございます。
また,加盟70周年以外でも,科学分野であれば,先ほどお話がありました「国連海洋科学の10年」のスタートの年でございます。あるいは,教育の分野では,日本が提唱してきたESDについて,新たな計画であるESD for 2030のキックオフ会合が来年予定されているということで,ユネスコ活動の各分野においても節目の年でありますので,うまくこうした機会を捉えて,昨年10月の建議でいただいたような多様なステークホルダーを巻き込むような,積極的に働きかける契機とするといった内容を盛り込んでおります。
本日はまだまだ粗削りな部分もあろうかと存じますので,各委員の方々には,改めて大所高所から御意見を頂き,また,こうした未曾有の事態でございますので,こうした事態に対して見るべき視点あるいは観点をお示しいただくなどして,更にブラッシュアップをさせていただければと考えておりますので,何卒よろしくお願いいたします。
最後に,資料の扱いでございますけれども,今,案の段階でございますので,本日の資料は委員限りとさせていただいております。今後,本日の御議論を受けて最終的に成案ができた際には,改めて公表する扱いといたしたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
事務局からは以上でございます。
【濵口会長】 ありがとうございました。それでは,ただいまの御説明を踏まえて,意見交換の時間といたします。御質問,御意見等ある委員の方は,挙手をお願いしたいと思います。
この声明文ですけれども,歴史を振り返ってみますと,ユネスコを含め国際連携等の大きな流れというのは,実は第二次世界大戦中の最も厳しい時代に各国のリーダーが準備した組織が戦後スタートしているわけですね。その中で日本も参加をすることによって,国際的なプラットフォームに加わるようになったという歴史があります。ちょうど今の状況は,教育に関しては各国が孤立化し,分断化されている状況へ入りつつある。これをどう越えていくかという問題であります。
ネットの細谷先生から御発言ございますようです。お願いいたします。
【細谷委員】 ありがとうございます。御説明がありましたように,これ,正に今,未曾有の時代に大変大きな問題について非常に適時適切なメッセージを出されるということで大変重要だと思います。既に大変立派な案文になっていると思います。その上で,2点だけコメントさせていただければと思います。
1点目は内容に関わることですが,前半の3パラ目の最後のほうのところですけれども,「ユネスコには,教育,科学,文化などの分野における活動を通して国際社会における繋がりの在り方を再構築する役割が求められている」と。これ,大変立派な所見だと思います。これができたら,「国際社会における繋がりの在り方を再構築」というのは,これは本当にできたらすばらしいこと思うのですが,ユネスコがそれをどこまでできるかということは他方で現実的に考える必要もあろうかと思います。
もう委員の方も御承知のとおりで,ユネスコという国際機関の特色はいろいろあるわけでして,こういった大きな時代の変化の中で具体的にどこまでの力があるか。それは恐らくいわゆる資金的な力とか,ほかの国際機関と比べてそういう面での限界がもともとあるわけですね。ユネスコの役割というのは,昔から規範づくりであり,触媒,カタリストとしての役割ということはよく言われますけれども,こういったときには自らの活動で再構築する力というよりは,今後のあるべき方向性を指し示すということではないかと思うのですね。
ですので,その観点からもう少し具体的に修文させていただくとしたら,一案なのですけれども,その前文は「確認すべきである。」と一旦切っていただいて,例えばですが,その中で,ユネスコには,教育,科学,文化,それから,もう一つ,情報コミュニケーションもやはり書いておいたほうがいいと思いますが,情報コミュニケーションの各分野の視点から,この新しい時代の国際社会におけるつながりの在り方を構想して提示する役割が求められるといったほうが正確ではないかなと思います。それが内容についての1点目,コメントでございます。
2点目は,せっかくこういった大事なメッセージを会長から出されるということですので,これをどうやって発信して,かつ伝達するか,その仕方についてです。ユネスコにどう伝達するかは政府にお任せすべきことで,あまり申し上げるべきことでもないとは思うのですが,かつて代表部とか事務局の官房長もしておりました経験からちょっと僭越ですけれども申し上げますと,これはやはり何といっても,事務局長自身に是非これを読んでもらうようにお願いしたいと思います。そのためには,代表部がいらっしゃるわけですので,これは御判断ですが,大使自らアズレー事務局長に手交していただいて,メッセージの大事な部分を説明していただくということが,ほかの発信の中でもそこが一番大事じゃないかと思います。僭越ですけれども,1点具体的に申し上げました。
以上でございます。
【濵口会長】 ありがとうございます。大変重要な指摘を頂きました。事務局でしっかりサポートさせていただきたいと思います。
それでは続きまして,西尾先生,お願いいたします。
【西尾委員】 大阪大学の西尾です。まず、この時点においてこういうメッセージを出していくことは非常に重要なことだと思います。,また,記載いただきました内容も,本当に重要なことが多々盛り込まれていることについて,大変有り難く思っております。
その上で,83ページの下から8行目辺りに書かれている「新しい時代のユネスコ活動へさらなる一歩を踏み出すために」というところにおいて,もう一段ブレークダウンした記述が,この後に「例えば」というような記述で続くとよいのでは,と私は思っております。すなわち,日本が具体的にどういうことについてリーダーシップを発揮していくのか,さらに日本の強みがどういうところにあるから、それを活かしてリーダーシップをどのように発揮していくのか、というような記述です。
その一例として,日本はサステイナブルサイエンスの実績があるので,今後,新型コロナウイルス感染症以外の感染症をはじめとして、まだ見ぬ課題に的確・迅速に対応するため,国内外の様々な分野の英知を結集していく必要があるというような,もう一段具体的な記述がなされると,より今後の活動につながっていくのではないかと思いました。
以上です。
【濵口会長】 ありがとうございます。大変重要な指摘を頂きました。検討させていただきたいと思います。
それでは続きまして,河野先生,お願いします。
【河野委員】 海洋研究開発機構の河野でございます。ありがとうございました。
まず一つ申し上げたかったことは,西尾先生がおっしゃったことと同じで,何か具体的なアクションが書いてあるほうが,インパクトが強いのだろうなというふうに思いました。
もう1点なのですが,このメッセージが会長からだということは明らかなのですが,誰に対するものなのかというのがちょっと,文章の最後の部分を読むと,ちょっと分からないところがあって,第1節の最初の「コロナ禍の時代におけるユネスコの役割と期待」ということは,我々がこう認識しているということが書かれていると思うのですが,「ユネスコ加盟から70周年までの歩みとさらなる一歩」というところを拝見すると,最初に現状認識があった後,第4パラグラフ目ですか,「新しい時代のユネスコ活動へさらなる一歩を踏み出すために」というところの最後,「貢献すべきである」というふうに書いてあって,これは私たちが貢献すべきだと考えているのか,関係者あるいは政府に対して貢献すべきだと言っているのかというのがちょっと判然としないのかなというふうに思います。
それから,その次の「期待される」ですが,これは我々が期待されていると認識しているのか,それとも会長あるいは日本ユネスコ国内委員会自身が各関係機関に対して期待しているということを言いたいのかということがちょっとよく分からないということなので,誰から誰に対するメッセージかを強く意識されると,我々がするアクション,あるいは周りにしてほしいことということの区別が付いて,少し分かりやすくなるのかなというふうに思いました。
以上です。
【濵口会長】 ありがとうございます。この2点,主語をはっきりさせていただきます。後で事務局とじっくり相談させていただきたいと思いますので,お時間頂ければと思います。
それでは続きまして,吉田先生,お願いします。
【吉田委員】 先ほどの河野先生とほぼ重なります。私も一読改めてした際に,前半のユネスコに期待することを幾つか現状認識を踏まえて書かれています。それから70周年を踏まえて,日本として,あるいは日本ユネスコ国内委員会としてどのような貢献をするのか,これは一つの文章ですので,理想的には前段でユネスコに期待するものと,それから後半で日本としてどういうふうにそれらについて対処していくのかということのつながりがあったほうが分かりやすい一つの文章になるのかなとは感じましたが,少なくとも私も読んだときに,前半についてはユネスコに現下の状況で期待するもの,そして,70周年を迎え以降は,それはそれとして日本はこうしていくという,日本としての貢献がどのような問題に向かってのことなのかというところが,前段とつながりがもう少しスムーズなほうが分かりやすい文章になるのではないかと感じました。
以上です。
【濵口会長】 ありがとうございます。検討させていただきたいと思います。後半と前半が少し乖離しているというところが少しありますね。
それでは,鈴木さん,お願いいたします。
【鈴木委員】 日本ユネスコ協会連盟で理事をしております鈴木と申します。よろしくお願いいたします。非常に重要なメッセージを作成していただいてありがとうございました。
第3段落のところになるのですが,「人の心の中に平和のとりでを築く」というユネスコ憲章の前文の文言を取り上げていただいていますけれども,ユネスコ憲章の前文のところに無知や偏見というのは過去に大戦争も引き起こしたという文章がございます。2月に萩生田文部科学大臣が,コロナによって偏見であるとかいじめとかが起きるのは絶対にいけないというメッセージを発信されておりますところとユネスコ理念というのは非常に密接に結びついているものと思いますので,第3パラグラフのところを,無知や偏見によっていじめ等が起きることがないようにというところをつなげてメッセージを発信することが非常に重要であるというふうに思います。
これからコロナによって,いじめであるとか偏見であるとか,そういったところがどんどん広がってくる可能性がありますので,相互理解のところの重要性というところをこの第3段落で訴えることができればいいのかなと思いました。
以上です。
【濵口会長】 ありがとうございます。「このような」のところをもう少し膨らませて,相互理解というキーワードを入れたいと思います。
ほか,いかがでしょうか。会場の方,よろしいでしょうか。どうぞお願いします。
【秋永委員】 秋永と申します。このたびはステートメントの取りまとめ,誠にありがとうございます。これまで諸先生方がおっしゃったことにも非常に賛同するのですが,第3段落のところで一つ御提案があります。
既にしっかりと書いていただいているところではあるのですが,コロナを前提とした文章になっていると思うのですけれども,コロナ禍に限定し過ぎずに,これからの時代の在り方というのを表現できると,なおよいのではないかと考えた次第です。
というのも,コロナはもちろん現在我々が直面しているものなのですが,それはどういうものかというと,不確実な時代であったり,もしくは地球規模課題の一つであるというふうに考えております。たしか2015年の前回の会長ステートメントを今拝見しても色あせないといいますか,この2020年においても,はっとさせられるようなことが書いてありまして,今回出していただくものも,そのように5年先であっても訴えかけるようなものでありたいと思う次第です。
ということで,コロナは前提でありつつも,例えば,第3段落の「ポストコロナの世界を生きるうえで」のところを,表現としては,例えば,「感染症であるとか自然災害,経済恐慌等のまだ見ぬ地球規模課題にこれからも直面し,乗り越えていく,そういった不確実な時代である」,例えば,そういった表現に変えていただくと,なおよいのではないかと思った次第です。
後半の段落に関しては,先ほど西尾先生のほうからも発言がありましたように,日本の強みについてより深く言及されるというところは大賛成でありますし,どこまで具体的に書くかはお任せしたいのですけれども,来年に限っては,日本は東日本大震災からちょうど10年を迎えるところですので,そのような大規模な自然災害を乗り越えてきたというところも日本の強みの一つとして言及してよいのではないかと思った次第です。
以上になります。僣越ながらコメントとなります。よろしくお願いいたします。
【濵口会長】 ありがとうございます。重要な御指摘を頂きました。最初のほう,確かにいろんな識者の方が言っておられるのですけど,今回のコロナのレッスン,今後起こり得るであろういろんな天災・人災の解決の道を示すものであると,しっかりこれを考えるということ,御指摘のとおりですね。そこのところを少し入れたほうがいいかなと思います。
それから,東日本大震災のときに,実はJSTでも実感していたのですけど,科学技術の在り方が今問われているのではないかなと。宇宙とは何かとか,人間とは何かという絶対的な真理を追う姿と,もう一つは,日常生活にいかに科学が寄り添うかというような部分があって,そこが今回も試されているのかなと。
恐らくこれ,かなり厳しい局面がまだ続くと思うのですね,ワクチンが効果的なものができて,それが全ての方に届くようになるには相当時間かかるだろうと。全ての方というのは決して日本だけではなくて,アジア,アフリカの貧困層にどう届くのかという問題もあります。
そのときに,日本は実は犠牲者がヨーロッパ,アメリカの100分の1ぐらいなんですね。そのメカニズムはよく分かっていないのですが,一一つはやはり国民皆保険であったのと,もう一つは,教育によって一人一人が判断する判断力が高くなっているのではないかというようなところがあるのですけど,そこを踏み込んで書くと,下手すると上目線になってしまうなというところもあるので,どういう表現にするかというところ,ちょっと事務局と相談させていただきたいと思います。
それでは,山口先生,お願いします。
【山口委員】 ありがとうございます。ユネスコ加盟70周年を迎えるに当たって,それから今後10年の取組ということで,実は教育小委員会とあとコミュニケーション文化合同小委員会のほうで,どちらでも出た重要な案というのが,ユースをどういうふうに動員/盛り込んで(モビライズ)していくかという点が出ていたと思いますので,今後,やはり日本が強みとして持っているユネスコスクールですとか,そのほかのユースを中心として組織をどういうふうに活性化して貢献していくかという点は,この70周年を迎えて,それから,その後の10年というところで日本が取り組んでいける部分かなと思います。
実は先日,国連海洋科学の10年の話し合いのほうに有識者として出席したときも,海洋リテラシーの向上というのが今後重要になっていくであろうと。そのときに学校又は学校外を含めた若い世代にどういうふうに海洋リテラシーを拡大していくかという点が議論されましたので,そこにおきましてもユースの重要性というのは明言しておいたほうがよろしいのではないかと思いました。
昨年の第40回ユネスコの総会のほうに私出席しておりましたが,そのときもやはりユースを中心として,ユースが組織した会議というのがプレナリーのほうで行われておりましたので,ユネスコ全体としても,今後の若い世代への育成と貢献というのは中心課題になっているのではないかなと思います。
以上です。
【濵口会長】 ありがとうございます。ユースをしっかり盛り込むということですね。
それでは,オンラインの野村委員,それから会場の石井委員,連続してお願いします。野村委員からまずお願いします。
【野村委員】 野村です。まず,今回のこのメッセージ,大変このタイミングで意義あるものだと思いまして,今,委員の先生方が出られた意見にうなずいております。
私からは一つだけ加えて,発信する上でのちょっとテクニカルな点ですが,ユネスコがコロナ禍でどういうことをやったかということの予備知識がない人がこれを読むと,分からないところが多々出てくるのではないかなと思いました。
というのが,例えば1ページの一番下の段落で「各国の政策や好事例の情報共有」って,どういう事例がどのように情報共有されたのだろうかとか,学校再開のガイドラインとか,あと国際教育連合って何だろうとか,あと後ろのほうに出てきます信託基金,これは何だろうとか,これを読んだだけで,もしこれが一人歩きしたとしたら,これだけでは完結してちょっと分からないというような箇所が出てくるのではないかと思います。
ということで,もしこれが何かプレスリリースのような形で発信されるとしたら,今申し上げたようなちょっと補足説明するようなことを添付資料で添える,もしくはホームページを見れば詳細分かるというような,そういう情報の出し方をしたほうがよいのではないかと思います。
それが最後のページにあります様々なステークホルダーに発信し,参加を得るための好機につなげるためにも,そうしたちょっと丁寧な情報発信というのが必要になるのではないかと思います。
以上です。
【濵口会長】 ありがとうございます。それでは,補足説明を作らせていただきたいと思いますので,よろしくお願いします。
それでは,続きまして,どうぞ。
【石井委員】 ありがとうございます。神奈川県の厚木ユネスコ協会の石井と申します。メッセージは本当にすばらしいものであると思います。
82ページの下から12行目のメッセージと絡めてなのですが,下から12行目というのは,「このような「withコロナ」,あるいはポストコロナの世界を生きるうえでは,人々が物理的な隔たりを乗り越えて連帯,協調する意識を持ち続けることが重要である。そのため,「人の心の中に平和のとりで」を築き,人類の共通の福祉を促進し,持続可能な社会の構築を実現するというユネスコのミッションを改めて確認するべきであり,ユネスコには,教育,科学,文化等の分野における活動を通して国際社会における繋がりの在り方を再構築する役割が求められる」というところ,特にそのことと関連させて,先ほど各地の活動紹介があった中で,日本ユネスコ協会連盟の佐藤会長からの報告があった事例の長野の青年の活動をちょっと絡めて,このコロナのこととお話しさせていただきたいんですね,補足させていただきたいと思います。
ページで言いますと,資料1-4-4,77ページに「りもっぷる」という長野ユネスコ協会青年部の紹介があったのですが,これは長野の青年が2014年からやっていることなんですね。最近というか,今年はコロナで学習会ができない,実際に会えないということで,リモートでやるので,本当は名前は「つなっぷる」なんですが,「りもっぷる」という名前にしたんですね。最近は長野の青年のみならず,名古屋,奈良の青年も加わっています。そして千葉の青年も加わりました。そして,私の所属する神奈川の厚木ユネスコ協会の青年部もつい先日参加しました。これからも参加していきたい,とても楽しかったということなんですね。このように少しずつ輪が大きくなっていっています。
これは日本全国に広がっていくかもしれませんし,そのうち,もしかしたら海外にもなんて考えたりするのですが,そういうふうになっていったら本当にすばらしいなと思うんですね。この長野の青年の活動が青年たちを動かす台風の目のようになっていったらいいんじゃないかななんて勝手に思っているんですけど,大人の私たちもなかなかリモートでやるということができていないんですね。だから,教えてもらって,このリモート学習会に大人も参加していきたいと思っています。大人と青年が交流をしながら,ユネスコの学習をしていきたいと思っているんですね。ユネスコの活動のあるべき姿を考えていきたい。
この「りもっぷる」の学習会では,各地の青年,今何してるのと近況報告をしたり,世界寺子屋運動,世界遺産,ユネスコと人生,SDGsとESDなどのテーマを用意して語り合っています。それぞれいいテーマだと思います。
その中で,特にユネスコをやっててよかったということを話し合っているんですね。これはそこに持っていこうということで,これは青年に限らず,ユネスコに関わる私たちもこのことを念頭に置いて常に活動していきたいなと思うんですね。この青年たちの活動に期待したいと思っております。
以上です。
【濵口会長】 ありがとうございます。本当すばらしい活動ですね,これ。
それでは続きまして,オンラインで道傳さん,お願いします。
【道傳委員】 道傳でございます。御発表ありがとうございました。
日本人の私たちがこの声明文を拝見すると,本当に心を打たれるものがあって,大変に勉強になることがあると思いながら拝読させていただきました。
私のコメントは1点のみでございまして,最初の段落の中の最後のところ,教育の機会が制約を受けることで「社会的・経済的分断がもたらされ,重大な影響が危惧される事態となっている」というところに,当然,その意味は込められているのだと思っておりますけれども,国内格差のことも言っているというような意味が分かるようなニュアンスを加えていただければと思いました。
その次の段落では「先進国と途上国間の格差」という表現があって,国際間の格差については既に言及されておられるわけですけれども,国際社会に対しての発信も想定されるのであれば,先ほどの吉田先生の御発表にありましたような,脆弱な人たちが一層脆弱な状況に置かれるという意味で,教育の機会がないことによって取り残されるされる人たちがあるというようなこと。例えば,具体的には「社会的・経済的分断がもたらされ,貧困あるいは能力強化の機会が失われるなど,重大な影響が危惧される事態となっている」といったようなニュアンスを込めていただければ,国際社会に対してのメッセージとしてもより魅力的になるのではないかと思いました。
以上でございます。
【濵口会長】 ありがとうございます。事務局で検討させていただきたいと思います。
ほか,いかがでしょうか。杉村委員,お願いします。
【杉村委員】 ありがとうございます。ただいまの道傳委員の発言に触発されまして1点だけ。人間の安全保障という,これも日本政府も取り組んでこられた概念があるかと思いますけれども,いわゆる包摂性とか公正性とか,今日の吉田委員の発表にあったとおり,世界に共通の大きな規範の一つとして,個々人の安心・安全をうたっていく,これはSDGsにもつながる一つの概念かと思いますが,今日,いろんな委員がおっしゃっていた御意見の根本にあるものの一つとして,「人間の安全保障」という言葉を一つどこかに加えると,それが響くのかなというふうにすごく強く今思いました。
ありがとうございます。以上でございます。
【濵口会長】 事務局と相談させていただきます。
それでは,ネットの西藤委員,お願いします。
【西藤委員】 橿原考古学研究所の西藤です。
すばらしいこの文章に少し付け加えていただいたら有り難いかなと思っているのが,SDGs。そのSDGsの言葉はやはり入れていただく,SDGsの普及,強化というようなことを入れていただけると有り難いのかなと。
私は文化財関係なのですが,文化遺産の保護の中でSDGsをいかに今使って,それを活動していくかというようなこともやっているのですが,なかなか難しいところがあって,まだまだSDGsというのが普遍化されていない。その中で今後の歩みの中でSDGsというのを少しこの文章の中に入れていただけると有り難いかなというふうに思います。
以上です。
【濵口会長】 本当に重要な御指摘です。SDGsのキーワードをどこかに入れさせていただきます。貧困の問題もこのSDGsの中の重要な課題ですし,教育と貧困がリンクしているというのも日本国内でも結構問題になっています。子供食堂の問題なんか胸が痛いことが多いですが,何とかそこら辺はしっかり書かせていただきたいなと思います。
ほかいかがでしょうか。御発言よろしいでしょうか。
それでは,大変たくさんの御意見いただきましたので,ただいま頂きました御意見を基に事務局で修正を図っていただき,再度委員の皆様に修正版を送付して,それに対する御意見を頂いた後,最終的には会長の私に一任いただいてもよろしいでしょうか。
                            (「異議なし」の声あり)
【濵口会長】 ありがとうございます。まず,修正版をお送りして,御意見を頂いてから,しっかりとしたものにして,最終版を確定させていただきたいと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
それでは,本件につきましては最終案が完成次第,国内外に向け発信を行ってまいりたいと思いますし,ユネスコ事務局長にも是非目に触れていただくように図りたいと思いますので,よろしくお願いします。
それでは,議題の3に移らせていただきます。議題の3は,ユネスコスクールのさらなる活性化についてであります。先ほども御指摘いただいた点でもございます。
本件については,教育小委員会について御審議いただいておりますところ,まずはその途中経過を杉村教育小委員会委員長から御報告を頂き,その後,ユネスコスクールの活動調査結果について,ユネスコスクール事務局を担当されているユネスコ・アジア文化センターの大安教育協力部長から,御報告いただきたいと思います。御質問等についてはその後まとめてお願いします。
それでは,杉村委員長,よろしくお願いいたします。
【杉村委員】 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。資料の3-1を御覧くださいませ。ページではちょうど85ページでございます。
ユネスコスクールにつきましては,我が国におきまして,ESDの推進に関する国内委員会の提言やESDに関するユネスコ世界会議の開催などをきっかけに,2006年以前はわずか15校だったのが現在は1,120校と,世界でトップレベルの登録数に達するなど,その取組は年々発展してきております。
一方,数もさることながら,質の確保が強く求められる段階になってきていること,さらにはESDを取り巻く環境の変化などがありまして,ユネスコスクールのさらなる活性化について,去る6月18日及び8月21日に開催されました第141回及び第142回教育小委員会におきまして議論を行いました。引き続き,現在まだ審議をしていく段階のため,本日は途中経過報告という形ではございますが,御報告させていただきます。
今,見ていただいている資料の後に,別添1としまして86ページのところから論点整理をしたものを挙げさせていただいておりますほか,その後に続きまして状況と課題についても,別添2として94ページまで資料を挙げさせていただいておりますが,それらをかいつまみまして,主な論点と委員から出た御意見を紹介させていただきます。
まず,主な論点としましては,ユネスコスクールの意義や期待される役割についていろんな御意見が出ました。また,ユネスコスクールの活動を活性化するための仕組み作りとして,関係機関の役割の整理も含むといった形で幅広い議論が行われております。
委員の皆様から出ました御意見をちょっと御紹介させていただきますと,ユネスコスクールの意義や期待される役割につきましては,まずESD,持続可能な開発のための教育については,ESD for 2030において,SDGs時代のESDという文脈に再設定されているということを踏まえまして,今後どのように推進していくのかということが挙げられました。
また,新学習指導要領の下では,総則や前文にこのESDを全ての学校が推進していくということがうたわれているわけですけれども,それと今度はユネスコスクールとそのほかのいろんな学校でのESDの取組がどういうふうに違っているのか,あるいはみんなで推進していくのをどのようにしていくのかといった点が議論されます。
さらに,ユネスコの考え方に基づくユネスコスクールを日本でどのように進めていくのか。日本におけるユネスコスクールの役割を分かりやすく説明できるメッセージを出していくことも必要なのではないかといった意見や,さらに,世界最大のユネスコスクールのネットワークとして,ベストプラクティスを提供できるようなモデル国としてあり続けるための国内外への発信,あるいはそうした意思をもっと明確に示すべきという御意見も頂いております。
ユネスコスクール,先ほども申し上げましたとおり,1,000校を超えている大変活発な活動ですが,正直言いますと,御意見の中には,関係者以外にあまり活動が十分に知られていない側面もあるのではないかといった意見や,そのためにユネスコスクールの良い事例を紹介して,ノウハウを共有することを例えばオンライン上で進めるのがいいのではないかといった意見や,その一方で,ユネスコスクールでそうした実践を担当しておられる先生方に負荷がかかっていて,属人的になってしまうと,どうしても広がりにくいのではないかといった課題も指摘されています。
また,ユネスコスクールにつきましては,登録の地域差が大きいことも大変特徴的なところでして,熱心に活動してくださっている先生方,あるいは教育委員会の関係者の方々の存在はとても大事で,感謝申し上げているところですが,その一方で,ESDあるいはSDGsについて学習指導要領で今般,全ての学校がESDに取り組むというふうになったときに,先生方がどのような認識を持って活動を展開するかといったことが大事なのではないかといった御意見も出ております。
先ほども申し上げましたとおり,日本にはたくさんの良い実践がございまして,ベストプラクティスを提供していくという大きな意義があるかと思いますが,一方,そうした情報をどうやって定量的なデータをエビデンスデータとして出していくことができるかといったことも御指摘いただいています。
さらに,現在ユネスコスクールは,ユネスコに申請をして,登録が認められると加盟が認められるという形になりますけども,どうしても申請から登録までに時間がかかっている状況が出ておりますので,申請校のモメンタムが失われないように工夫が必要ではないかという御指摘も頂いております。
以上,かいつまんで主な御意見をまとめて報告させていただきましたが,多くの御意見を頂いていまして,大変活発な議論が教育小委員会では行われております。今後も引き続きユネスコスクールの役割や推進の方向性について,教育小委員会におきまして議論を行い,活性化に向けた方向性を早急に示せるようにしていきたいと思っておりますので,是非委員の先生方からの忌憚のない御意見や御質問等を頂ければと思います。
教育小委員会からは以上でございます。ありがとうございました。
【濵口会長】 ありがとうございました。
それでは,続けて大安部長,よろしくお願いいたします。
【大安部長】 ユネスコ・アジア文化センターの大安と申します。2019年度のユネスコスクールの活動調査の結果について御報告します。
まず初めに,その調査の背景として,この調査は当初文部科学省のほうで実施されておりましたが,2015年からACCUがユネスコスクールの事務局として委託事業の中で行っております。そして,2019年度の調査は,昨年の12月から今年1月にかけてウェブサイトにより実施されました。
その調査の前に文部科学省とACCUによってワーキンググループ会合を開き,調査内容を作成しました。そこには大学関係者,ESD学会の研究者と学校教員の方にも入っていただいて,行いました。
時間の関係で,調査結果の報告は,資料3-2,2ページの調査結果の概要に沿って説明させていただきます。詳細は,その後に続く横長の調査結果がございますが,かいつまんで概要を報告させていただきます。
まず1番目,調査結果から見る主な成果として,2つの項目,丸1,丸2はSDGs,特に目標4,教育の目標4のターゲット4.7,ESDに関することですが,これの認知度が8割,それから,ESDがSDGsの目標達成に関わっていると答えた教員の方が約9割ということで,かなりこのSDGsというのが浸透しているということが分かります。
その中でも,17の目標のうち,どういった内容,目標を教育活動に取り入れているかということで,上位から言いますと,自分たちの生活に近い目標11の持続可能な都市,それから保健,教育,平和といった順番で続いております。
次の2つの項目は,児童生徒の変化ということで,丸3がユネスコスクールの活動を通じて,児童生徒の資質,これは新学習指導要領で育みたい3本柱の中で最も変化が見られたこと,それは学びに向かう力,それから人間性というのが一番多いという回答を得ました。
それから丸4は,国立教育政策研究所のほうで示された持続可能な社会作りを構成する6つの視点のうち,児童生徒の変化,ここによく見られたかというところの回答は,相互性,多様性,連続性の各分野でした。
それから,次の2つ,教員と学校の変化,ユネスコスクールに加盟して,教員の変化というのはまず一つ目としては,教科横断型のカリキュラムマネジメントという工夫が行われるようになった。
それから,次のページで持続可能性という価値観を取り入れて授業を工夫するようになったということです。
それから,学校運営の変化としては,地域の方々との交流をするようになった。それから,学校全体でESDに取り組むという形になって,そういうことで活動が継続されるようになったというふうな報告がありました。
それから,こうした成果に対して,調査結果から見る課題としては,丸1,一つ目が,ICTの環境が十分でない。これはコロナのときにも課題としてユネスコスクールだけでなく,全国的に言われましたが,そういうICTの環境がやはり整っていないというところがあります。
それから,それもあって,国内外の交流があまり十分行われていない。先ほど杉村先生からの話もありましたが,属人化しているというところもあって,教員が異動すると継続されていないというようなことがあるのではないかというふうに考えております。
最後に,ESDの推進拠点という位置付けなのですが,必ずしも拠点としての発信が弱いという,そういう課題として浮かび上がってきました。
以上が調査の結果なのですが,私は4年前に日本に帰国するまで約20年間,ユネスコのバンコクとダッカ事務所で勤務しておりました。それで2年前からACCUで事務局を担当することになって,日本のユネスコスクールの特徴として,ESDとかSDGs,どちらかといえば理念とか抽象的な議論が学校の具体的なカリキュラムマネジメントとか学校運営に生かされているというのは,これは国際的に見ても非常に先進的で,日本からの好事例,先ほどのノウハウの共有とかベストプラクティスとして発信できる可能性が十分あるのではないかというふうに考えます。
それから一方で,地元でESD,特に環境をやっていればユネスコスクールであるという理解がまだまだ多いので,調査でも示されていますが,もっと国内外の交流が進む必要があるのではないかと考えます。
そのためには,ICTの環境とか語学の壁というのはありますが,ユネスコの本部,バンコク事務所ともにオンライン交流とか,それから,ユネスコスクールを通じたESD推進事業も始まっておりますので,事務局としても文部科学省と一緒にこうした機会を活用して交流を増やしていく必要があるというふうに考えております。
以上です。
【濵口会長】 ありがとうございます。それでは,ただいまのお二人の御報告を踏まえて,意見交換の時間といたします。御質問,御意見ある委員の方,挙手をお願いいたします。いかがでしょうか。お願いします。
【松浦顧問】 今,お二人の御説明を伺って,日本でユネスコスクールの活動が非常に活発になって,数の上でも世界一ですけども,実質的な活動でも世界ナンバー1になっているのは非常にうれしく思います。
そういう点から,先ほど御説明のあったユネスコ協会を中心とする民間活動は,私のユネスコ時代,数の上ではインドが上なのですが,実質的には日本が一番活発だと思っていましたけれども,ユネスコスクールについて言えば,私の記憶だと,最初にできたのが1954年だったかと思いますけど,いずれにしても日本の加盟直後ですが,日本は4校がすぐ参加したのですが,少しずつ増えましたけども,あまり増えず,活動も活発でなくて,私のユネスコ時代の前半は非常に残念に思ったのを覚えていますが,後半,2006年以降,非常に数も増え,活発になったのは非常にうれしく思っています。
そういう意味では,先ほど来御説明ございましたように,社会人のユネスコ活動と,ユネスコスクールの若い人たちの活動が連携されて活発になっているのは非常にうれしく思います。
その点からちょっと私が何箇所かで感じたことで一つだけ追加したいのは,ユネスコスクールは御承知のように高校までですけれども,大学で,どこかに触れてありますけれども,ASP UnivNetというのが,これは日本のイニシアティブで,正に日本で生まれたシステムで,私も,何年前か記憶が曖昧ですけれども,3,4年前,京都でユネスコスクールの高校6つと大学と,京都のセイシン女子大でしたけども,提携して,大学とユネスコスクールの提携が進んで,これは全国的にもいろんなところで進んでいると思うので,是非これは,この資料にちょっと触れてありますけれども,もっと注目してもいいのではないか。
ですから,繰り返しになりますけれども,ユネスコスクールとユネスコ協会との社会人の活動を活発にするのは非常に結構ですけども,同時にユネスコスクールは大学までですから,大学とユネスコスクール,特に高校と大学の提携は,これは日本独特のシステムで,非常に私はいい着眼点と思っていますので,是非強化していただければと思います。
以上です。
【濵口会長】 ありがとうございます。杉村先生,よろしくお願いいたします。
【杉村委員】 とても大事な御指摘を頂きました。ありがとうございました。是非委員会に持ち帰って,皆さんで協議したいと思います。ありがとうございます。
【濵口会長】 ほか御意見ございませんか。どうぞ。
【古賀副会長】 日本国内のユネスコスクール加盟校数の飛躍的増加は,先ほど松浦顧問がご発言されたように,過去と比べても非常に画期的なことだとは思います。ただ,この急激な増加を理想としていたのか,そもそも目指していたのかと問われれば,それは違うのではないかと感じています。日本のユネスコスクールの実態を精査すると,すばらしい活動をしている学校もあれば、そうではない学校もある。その寒暖差が生まれていること自体が、日本のユネスコスクールの本質的な課題だと考えています。
また、ユネスコスクールに限らず,ユネスコそのものに対する認識が,一般的な日本人とユネスコ関係者で少し乖離しているのではないかとも感じます。ユネスコというのは本来,資料1-3-1や資料2の記述の通り,「人の心の中に平和のとりでを築く」という目的の下に設立され,活動を継続してきたはずです。しかし一般の人の目線では、恐らく「ユネスコ=世界遺産」と捉えられている。これが実情ではないかと思います。この状況を踏まえ,ユネスコ加盟70周年を機に,ユネスコ活動全般に対する理解を促す取組みを始めても良いのではないでしょうか。
一般的な認識との乖離という意味では,ユネスコスクールに関する議論がその典型だと思います。世間でこれだけSDGsが提唱される時代, ESDを実践するべきなのはユネスコスクールに限らず,学校教育全般であるはずです。ユネスコ関係者がユネスコスクールだけに着目して議論を続ければ、内輪の議論に留まり,せっかくの良い取組みでも広く社会には浸透しなくなってしまう可能性もあります。これまでユネスコ活動に関わりを持ってこなかった一般の方の目線や日本の学校教育全体の視点から,現在のユネスコスクールがどう映っているのかを検証し、その長所と短所が何かを正確に捉えることが,ユネスコスクールの今後を議論するあたり,必要な動作だと考えます。
【濵口会長】 本当重要な御指摘だと思いますけど,相当実は腹をくくってやらないといけない状況にはあるなと,アメリカの状況を見ても,米中の対立を見ても,この数十年間では見たことのない状況へどんどん今入り始めている。それで,本当に心の中に平和のとりでをどう作るのかというのをもう少しプラクティカルにも考えつつ,動きをしていかなきゃいけない時代なのかもしれませんですね。
杉村さん,すいません,大きなことばかり言いますが,よろしくお願いします。
それでは,どうぞ。
【齋藤委員】 齋藤でございます。質問の機会を頂きましてありがとうございます。ちょっと事務的なことも含めて質問させていただきたいと思います。
ユネスコスクールの教育的意義とか,学校運営上への好影響とかは本当に疑うところがないところではありますけれども,今日頂いた資料の中で,チャレンジ期間を終了した学校についての申請の手続がなかなか,手続をしても登録に至らない状況があって,そのことについて,頂いた資料の中で2つの視点が指摘をされています。
一つは,世界のユネスコスクールの1割を既に日本が占めている現状の中で,本部における新規登録の手続がスムーズに進められにくい,このことの意味が理解できないので,御説明いただきたいということと,もう一つは88ページになると思いますけれども,登録システムの不具合による申請手続ができていないという,こういう理由も述べられているのですが,ここのところ,もう少し分かりやすくお知らせいただきたいということと,こういう活動というのは,学校における活動というのは継続性が重要だと思っていて,例えば,2年前に登録をしたものが,今まだ申請をしたものが登録をされていないという状況ですと,当時の中心を担った子供たちはもう卒業していたり,そんなことでモチベーションがどうしても下がってしまう状況にあると思いますが,具体的にどのように改善を目指していくべきなのか,御示唆を頂けると有り難いと思います。
【濵口会長】 事務局,何か分かることありますか。
【石田国際戦略企画官】 事務局でございます。今,御質問いただきましてありがとうございます。
資料にありますような1割を占めていると,数では非常に増えているということが,ユネスコでの登録部分に少し影響を与えているのではないかというような,これは指摘としてはあるのですが,実際に確かめてそうなっているということは確認されたわけではないのですが,全世界で日本のユネスコスクールが1割を占めているということを考えると,世界における日本のユネスコスクールの多さということを事務局としても考えることがあるのではないかというようなことで,どうしても新規の登録ということに影響が出るのではないかというような話があるというような趣旨で書かせていただいております。
それで,今のお話のチャレンジ期間が終了しても登録が進まないというような現状についての御指摘もございました。正にこの点につきましては教育小委員会でも議論いただいているところでございまして,今申し上げたように,チャレンジ期間がどうしても長くなってしまうということになりますと,実際にユネスコスクールに申請したいというようなお気持ちを持たれている学校があっても,なかなか前に進まないということで,モメンタムが下がってくるといったようなこともございますので,そういった実際にユネスコの登録が進みにくいということを前提に,どういった対策が取れるのかというようなことを御議論いただいているということでございます。
あとは,登録システムの不具合ということについての御指摘でございましたけれども,担当のほうからこれは答えさせていただいてよろしいでしょうか。
【堀尾国際統括官補佐】 システムについて,以前は書類上での登録作業という形でしていたのですけれども,ユネスコのほうがオンラインでのシステムの登録に切り替えまして,そのシステムを通じて申請をするようにという連絡が来たのですけれども,そのシステムのほうにアクセスして登録しようとしてもなかなかうまくいかないというような,正に技術的なトラブルが続いていて,なかなか手続が進まないといったところでちょっと止まっているというような状況でございます。
【濵口会長】 よろしいでしょうか。
それでは続きまして,オンラインで大島まりさん。
【大島委員】 東京大学の大島です。よろしくお願いします。質問が一つと,あと,重なる点もあります,コメントを2つさせていただければと思います。
質問一つは,先ほどの話ですと,ネットワーク環境の関係とかでなかなか,今,特にウィズコロナの時代で参画がしにくいというお話でしたが,今,GIGAスクールで1人1台のコンピューターというので,かなりそういうICTの環境というのが改善しつつあると思いますので,その点について,おっしゃっていたような部分はかなり改善されると思いますので,その上で,今後,ユネスコスクールの取組というのは更に広がっていくのかというのは,どういうふうに考えるのかなということを伺いたいと思います。
あと,コメントなのですけれども,先ほどホームページを見させていただきました。非常にいろいろな取組をやっていって,きっとグッドプラクティスというお話も出ていたと思うのですけれども,そういうグッドプラクティスなどをホームページを通してきちんと公開されると,より,どういうことをやっているかというのが分かるのではないかなというふうに思いました。
取組として4つ,環境も含めて行っているということが書いてございましたので,一部の方はある程度ユネスコスクールでどういうことをやっているかというのは分かっている方はいらっしゃると思うんですけれども,多分これあまねく皆さんが,学校の先生も含めて知っているかというと,なかなか知られていないんじゃないか。特に地域のばらつきがあるということだったので,地域で参加している学校が少ない場合は,広がりというのも限界があるかと思うので,是非ホームページを通して,グッドプラクティスを含めて,理念などを充実させると,更によくなるのではないかなというふうに思っています。
あともう1点は,SDGsは非常に活発に取り組んでいらっしゃるということで,一方で,お話にもありましたが,今,学習指導要領が新しく2020年度から小学校,中学校,高校で順次導入されるということで,最近,総合的な学習を含めて,横断的な教育,よく言われているのはSTEAM教育です。サイエンス,テクノロジー,エンジニアリング,アート,マスマティクスということで,そういう教育も新しい環境に入りつつあり,ユネスコスクールの取組とは非常に親和性が高いと思います。したがって,是非,そういう今の新しい学習指導要領を含めて,いろんな取組を積極的にされるといいのではないかと思いました。
以上です。
【濵口会長】 ありがとうございます。ユネスコ国内委員会の活動の今,大きな課題は,実はデジタルトランスフォーメーションではないかと思っておりまして,事務局ともそういう御相談をさせていただいてはいるのですが,交代してまだ間がないので,しばらくお時間を頂きたいなと。しっかりしたサイトを作ったり,ネットワークを作ったりすることをもう少しできないかなというふうに思っております。
今の御意見に杉村先生,何か。
【杉村委員】 それでは一言。貴重な御意見をたくさん頂きましてありがとうございました。
特に,今,大島委員のほうから頂きましたSDGsや学習指導要領との関係ですけど,ちょうど学習指導要領で日本の全ての学校がESDを推進していくということが高らかにうたわれます。その意味では,今,これまで日本が,あるいは日本のユネスコスクールが作り上げてきた実践の積み重ねも大事にしつつ,先ほどいろんな委員から御指摘あるとおり,決してユネスコスクールだけで閉じられたESDにするのではなくて,広くいろんな学校が参画でき,しかしながら,一方で,ユネスコスクールはせっかく1,000校実績がありますので,こちらについては粛々とその意義をきちんと高めていって,そのときに多分,ちょっと委員会でも出ているのですが,先ほど松浦顧問にもおっしゃっていただきましたとおり,ユネスコスクールと大学との連携,あるいは各地のユネスコ協会との連携等々を通して,国内外に実践をつなげて発信していくという部分が,ネットワークの拠点になるというところが非常にポイントになるのかなと思いますので,ESDを推進するということとユネスコスクールの学校の活性化を両輪のようにして,全体で高めていければいいのかなと,今,伺っていて思いました。
ありがとうございます。引き続きどうぞいろんな御意見,御指導を賜れればと思います。
【濵口会長】 ありがとうございます。
それでは,日比谷委員,お願いします。
【日比谷副会長】 委員会で地域によるばらつきが非常に大きいということを,表も見まして,地図ですね,そうだなと思ったのですが,今回,総会に備えてまた改めて資料をよく見まして,この地域差はもう看過できないというか,ちょっと異常だという気持ちを持つに至りました。
特に,何でこんなに愛知県が多いのだろうというのも本当に純粋な疑問で,それは悪いわけではないのですけれども,一方,地図を,92ページを見ますと,本当にすかすかしている県が少なからずある。これと,先ほどICT環境が整っていないところが問題であるというふうな,別のところに調査結果で書いてありましたけど,それとの連動とか,少ないところが何でこんなに少ないのかということはもう少し真剣に分析をしたほうがいいのではないかと思っております。
もう一つは,量より質の時代に入ったということは本当にそのとおりだと思うのですけれども,これは委員会でも申しましたけれども,報告書が未提出であるというようなことについては,きちんと出すようにという姿勢で臨むことが重要と思いますし,場合によっては,あまり活動が活発でないところを少し減らすというようなことをしても,大変に少ないところはいろいろな支援をしてもう少し増やしていくということをしないと,なかなか全国展開につながらないのではないかと思っている次第です。
以上でございます。
【濵口会長】 ありがとうございます。杉村先生,何か御意見は。
【杉村委員】 この点も本当に大事な御指摘だと思います。一方,ICT環境とともに,多分実践に携わる先生とかステークホルダーの方たちの位置付けというのもものすごく大事で,その意味でも,先ほどUnivNet,大学との連携とか,あるいは各地のユネスコ協会との連携とか,そういった辺りも今後議論の対象に是非考えて,ICTもですけれども,人のつながりと学校のつながりを意識してやっていくべきなのかなというふうに思いました。ありがとうございます。
【濵口会長】 それでは,オンラインで片山委員,お願いします。
【片山委員】 ありがとうございます。長浜ユネスコ協会の片山と申します。
8年前に現職を終えまして,小中の公立の教員をしておりまして,10年以上前からユネスコスクールの認証が盛んだった頃に積極的に熱意を持ってユネスコスクールの基礎を作っていた一人としまして,今も現場の先生方と意見交換をする中で,2点,今後こんなことを国内委員会で考えていってほしいという点を,常々思っていることを述べさせていただきたいと思います。
今ほど来から様々な論点整理や,課題等について調査結果が出ております。正にそのとおりではないかと思うのですが,今や1,000校を超えてしまったユネスコスクールへのフォローアップはどの程度できるのかという問題です。どこがするのかということも含めまして,これは新たな,大きな検討課題ではないかと思っております。時には,やはり国内委員会のメッセージとして,ユネスコスクールでもう少しこういう点を努力いただきたいというようなことを具体的に申されたほうが親切かなと,私は現場の教員をしておりまして思っておりました。
2点目ですけれども,様々なステークホルダーや学校を支援する団体,今,初中局のほうではコミュニティ・スクールやGIGAスクールの推進を図っておられますので,こういった文部科学省を挙げての,一般PTAの皆さんも理解できるようなユネスコスクールへとしていくことが今後は大事かと思います。
ユネスコスクールが学校で問題になるのは,先ほど来,出ておりますように教員の異動であります。教員が異動しても,その学校で持続可能な教育課程と位置づけられるようなユネスコスクールのベースを作るためには,やはりコミュニティ・スクールと同時に,特徴を捉えたユネスコスクールの申請をしてもらうことが重要かと思います。これは,やはり地域を巻き込んだ,ネットワークのしやすいユネスコスクールになっていくと思っておりますし,ユネスコ協会としてもそういった提案をさせてもらっております。ともかく現場を待たさないであげてほしい,何らかの暫定的な措置を期待しております。
長くなりました。申し訳ありません。以上です。
【濵口会長】 了解しました。検討させていただきます。
それでは,オンラインで,見上委員,お願いします。
【見上委員】 見上でございます。
杉村委員,ありがとうございました。今,教育小委員会に所属しておりまして,小委員会の中では非常に活発な議論がされまして,ユネスコスクールのさらなる活性化をすごく期待しているところです。
それで,1点だけ,今の片山委員の御意見とも重ねるのですが,既に2年も待たされている学校が何十校もある,1年は同じぐらいあるというようなことで,かなりの方が待っている。ところが,学校の校長先生の任期は,多くの場合,3年ぐらいです。そうすると,申請された校長先生が交代してしまってから,引き続きそれを議論しなければいけない。学校としては非常に難しいところがあって,今,片山委員もおっしゃいましたように,何とかこれを国内委員会で審査していただいて,同じレベルであると承認いただければ,取りあえずパリからの正式な許可が下りるまで同じような活動ができる,そんなうまい工夫はないのか。事務局も,制度的なものがあるものですから,非常に御苦労されていると思うのですが,こういう全体の場なものですから,何かうまい知恵があったらいいなということで,一言意見させていただきました。よろしくお願いいたします。
【濵口会長】 ありがとうございます。相談させていただきたいと思いますので,よろしくお願いします。
お時間,ちょっと押しておりますので,もう一人とさせていただきます。細谷委員,オンラインでお願いします。
【細谷委員】 恐縮です。私は,教育は専門分野ではありませんが,ちょっとユネスコ全体を見てきました立場から,1点だけ簡単に申し上げます。
実は,ユネスコスクールという制度は,ユネスコの関連制度の中でも割とほかの制度と類似しているところがあって,全体に数が非常に増えていて,先ほど来,言われている地域差が非常に大きい。あるいは,できている中でも実際の活動の落差が大きい。この種のことは,この制度全体の構造に関わる問題が一つあると思うのです。つまり,一旦できたら,よほどのことがない限り終わらない,無期限である,そこのところに実は問題の根幹があると思います。どうして地域差が出るかというと,一番大きな要因は,やはりたまたま大変熱意のある推進者がいたところは明らかに増えますし,そういう方がいらっしゃらないところは増えません。他方で,増えたところも何年かたつと,その方がいらっしゃらなくなったら不活発になる。
実は,ユネスコにはほかにもそういう制度があります。世界遺産自体がそうですし,親善大使という制度もありますが,これは一旦なられたら,なかなかお辞めいただくのが難しいという下方硬直性が強い制度です。もちろん,一旦なったのを辞めるというのは大変な抵抗があります。しかし,そこに何らかの仕掛けを新たに加える,サンセット条項を加えるとか,一定の年限で,更新する際には活動の実態的な報告をしなければいけないとか,いろいろなやり方がありますが,何かそういう根本の制度を見直す必要があるのではないか。これは,日本に限らず,グローバルな制度として思います。
以上です。
【濵口会長】 ありがとうございます。非常に重要な御指摘だと思います。検討させていただきたいと思います。
すみません,お時間,押しておりますので,貴重な御意見いただきましたこと,しっかり参考にさせていただき,引き続き教育小委員会のほうで御議論いただきたいと思います。杉村委員,どうぞよろしくお願いします。
それでは,続きまして議題4.に入らせていただきます。議題4.は,日本ユネスコ国内委員会小委員会の機動的・効果的な運営についてお諮りします。事務局から,資料について説明をお願いいたします。
【石田国際戦略企画官】 事務局でございます。それでは,資料4,全体資料の122ページ,123ページを御覧ください。
この議題につきましては,国内委員会小委員会の機動的・効果的な運営ということで,1に書いてありますように,総会で御指摘を頂いたところでございます。
そこで,各小委員会等で御議論いただきまして,課題を整理したところ,2にございますように,教育,科学,文化,コミュニケーションと普及の議論が別々の場でなされているということから,各分野の専門的な知見と,ユネスコ活動の普及に関する知見の往還がされにくいということ。あるいは,AIの倫理といった学際的な議論が求められる分野が増えていることに対応できないのではないかということ。実際上の運営としても,自然科学小委員会と人文・社会科学小委員会,あるいは文化活動小委員会とコミュニケーション小委員会については共通する議題が多いということで,合同開催が続いているといった点が浮かび上がってまいりました。
そのため,3にありますように,自然科学と人文・社会科学小委員会については「科学小委員会」として一体化する。文化活動とコミュニケーションの両小委員会については,「文化・コミュニケーション小委員会」として一体化する。その上で,普及活動小委員会の役割は,教育,科学,文化・コミュニケーション全ての小委員会が担うということで,全ての小委員会に地域的なユネスコ活動の領域を代表する委員を含めて組織するという見直しを行うということで,2ページ目にございますように,分野別では都合6ある小委員会を,3つの小委員会に再編成するという所要の規程改正を考えております。
また,その下に運営についても記載ございますけれども,少人数で議論しやすい状況を作る,議論の場を柔軟に運用する,運営小委員会に地域的なユネスコ活動の領域を代表する委員を必ず含む,といった改善を行ってまいります。
こういった方針について,御承認を頂ければと思っております。
事務局からは以上でございます。
【濵口会長】 ありがとうございます。
それでは,ただいまの御説明を踏まえて意見交換の時間といたします。御意見ある方,御質問ある方は挙手をお願いします。御意見は簡潔にお願いしたいと思います。
どうぞ,木間委員。
【木間委員】 朝日生命ユネスコクラブの木間と申します。
これまで普及活動小委員会で活動してまいりましたが,このたびの組織再編により,全ての専門小委員会に地域のユネスコ活動に関わる委員が加わって,議論と実践を結びつけていくということはとても意義のあることだと思っています。ただ,普及活動小委員会がなくなるとだけ聞きますと,国内委員会の中で普及活動の重要度が低くなっていると誤解されそうですけれども,そうではなくて,逆に普及活動を推進するための再編だと御説明いただいています。地域で活動する会員にも,この趣旨をしっかり伝えていきたいと考えていますので,国内委員会のパンフレットやホームページなどの改定に当たっても,普及活動の重要性が伝わるようにしていただきたいと思います。
実際の運営に当たっては,「各専門分野の議論にユネスコ精神をしっかり吹き込む」,「議論を実践に移せるような議論をする」,「これまでの普及活動の成果を今後の活動に結びつける」という期待された役割を果たせるように,皆様と一緒に努めてまいりたいと思いますので,よろしくお願いいたします。これを実現するに当たって,小委員会の運営につきましても議題設定や運営等を工夫していただくよう,お願いいたします。
それから,再編に当たって,これまでの普及活動小委員会の総括と引継ぎも国内委員会の事務局にお願いしております。普及活動小委員会では,広報,普及についても提案しておりましたが,今後,ポータルサイト等の構築はユネスコ未来共創プラットフォームが担っていくと伺っています。このプラットフォームの活動と,国内委員会の普及活動,各地域の民間ユネスコ活動が,しっかりと連携していくような仕組みを作っていくことが重要だと思っています。ユネスコ未来共創プラットフォームについて,本日,もう少しお話を伺えると思っておりました。会員もみんな,どんな形になるのかとても気にしているところですので,お時間ありましたら,決まっている範囲でお話しいただければ,と思います。
最後に,国内委員会の皆様に普及活動について御理解いただくためにも,是非地域のユネスコ活動を実際に御覧いただきたいと思います。コロナ禍における各地のユネスコ活動として,本日,ユネスコ協会連盟から報告がありましたように,世界遺産のZoom勉強会とか,YouTubeによるチャリティーライブ配信など,現在,国内委員の皆様も,御自宅からでもお気軽にオンラインなどで地域のユネスコ活動をのぞいたり,参加いただける環境になっております。是非,この機会に御覧いただいて,普及活動について理解を深めていただければと思います。
以上,よろしくお願いいたします。
【濵口会長】 ありがとうございます。貴重な御意見,幾つか頂きました。総括に関してはお時間を頂いて,準備できますでしょうか。事務局。
【石田国際戦略企画官】 御質問としてはプラットフォーム事業についてかと思うのですけれども,今,御指摘いただいたプラットフォーム事業は,本年度の新規の事業として進めておりまして,ちょうど先月,8月に,一般社団法人SDGsプラットフォームというところと契約する運びになりまして,その中で全国,あるいは地域のネットワークの構築とか,連携強化,今,御指摘のあったポータルサイトを作ったり,それをうまく結ぶということで,しっかり地域のユネスコ活動,ユネスコスクールもそうですけれども,そういったものを広報していくというようなことを,かなり専門性がある組織でございますので,いろいろアイデアを頂きながら進めていこうと思っております。また,そういった状況報告については,機会を捉えてさせていただければと思っております。
【濵口会長】 この会議でも,そういうプラットフォームの活動の一部とか,YouTubeの実際の映像の一部とかが少し出ると確かにいいですね。堅苦しさが少し解けると思いますし,ちょっとそういう相談をさせていただきたいと思います。
ほか,御意見なければ。オンラインで,佐藤委員から御意見があると思います。
【佐藤委員】 先ほど木間委員からもありましたけれども,今回,廃止される普及活動小委員会のメンバーが多く所属する日本ユネスコ協会連盟としての考え方をちょっと整理いたしましたので,よろしくお願いしたいと思います。
先ほどの会長メッセージのとおり,現在,世界は非常に分断の危機にさらされておりまして,コロナ禍もありまして,人と人とのコミュニケーションが非常に困難な状況になっております。その中で,ユネスコのミッションの実現に向けて,人々が様々な隔たりを乗り換えて連帯や協調する意識を持ち続けるためには,一つはオンラインの活用ということもありますけれども,やはり人に感動を与えて,多くの人の参加を推進する,人による啓発,普及活動が重要と考えております。
今回の改組につきまして求められているものは,各分野の専門家の先生方の専門的な知見と,ユネスコ活動の普及を担う委員との,レベルは違いますけれども,相互補完と,よりよいシナジーを生むことだと考えております。普及を担う委員は,ユネスコ本部のビジョンや動向,各専門家の考え方をお聞きすることによって,日本におけるユネスコ活動の活性化のための新しい活動にチャレンジする可能性が広がると考えます。
また,各小委員会では,現場の実態を踏まえた普及に関する意見を表明することが可能となると思います。すなわち,専門家の議論と,それから実践を切り離して議論するのではなくて,人々に訴えかけて,発信して,動かすという具体的な活動に落とし込んでこそ,ユネスコの理念の浸透が図れると考えております。車の両輪であります理論と実践を,委員全員で議論していくことが重要であると思いますので,是非御理解をよろしくお願いしたいと思います。
【濵口会長】 ありがとうございます。御理解を賜れば,木間委員もよろしくお願いします。いろいろな形で議論が深まるチャンスにもなると思いますので,よろしくお願いします。
もう一人,オンラインで,芳賀委員,お願いいたします。
【芳賀委員】 端的に一つ。見直し後の名称の話ですが,「科学小委員会」とあります。この科学は学問一般を意味させているというのは分かりますが,やはりこれだけ見ると普通のハードサイエンスに見えるので,「自然・人文・社会科学小委員会」とはできないでしょうか。
以上です。
【濵口会長】 事務局で相談させていただくことでよろしいですか。
【芳賀委員】 はい,分かりました。
【石田国際戦略企画官】 御提案いただいたので,検討させていただければと思います。
【濵口会長】 少しお時間を頂きたいと思います。
ほか,ございますでしょうか。少しお時間,押しておりますので,よろしいでしょうか。貴重な意見,いろいろ頂きました。部分的に検討事項はございますが,事務局にお任せいただくこととして,この改正案について御承認いただけますでしょうか。よろしいでしょうか。
                            (「異議なし」の声あり)
【濵口会長】 ありがとうございます。それでは,本件につきましては,実施に向けて事務局と進めさせていただくことといたします。
それでは,続きまして議題5.に移ります。議題5.は,日本ユネスコ国内委員会委員の選考サイクルの在り方についてであります。まず,説明をお願いいたします。
【石田国際戦略企画官】 事務局でございます。資料5,全体の資料の124ページを御覧ください。
議題5.につきましても,議題4.と同様に総会において,国内委員会の体制について再検討すべきとの御指摘がございました。
選考サイクルとしては,2にございますけれども,現在,13名から19名,全体の3分の1程度の委員の入替えを毎年,行っているところですけれども,こうした場合の課題として,やはり長期的な視野で議論すべき課題も増える中で,実質的な議論の時間を確保しにくいということがあります。あるいは,毎年,新たな候補を選出することが次第に難しくなってきているというような御指摘がございまして,選考小委員会において選考,任命サイクルを見直すことが提案されたところでございます。
具体的には,3にございますけれども,3年に一度は議論の安定期として委員の候補選びは行わない年が確保できるように,選考サイクルの見直しを行うというものでございます。
次,125ページに少し図を用意させていただいておりますけれども,こちらを御覧いただければと思います。これまで委員の選考につきましては,今,申し上げましたように,一番左に書いてありますような,丸1のa,b,c,丸2のa,b,c,丸3のa,b,cといった3つの大きな枠ごとに,例年,改選を行ってきたところでございます。本年,任期満了を迎え,新規に替わられることになる丸1のa,cの方々については,特例的に調査委員という形で,来年,もう1年議論に加わっていただき,来年度の改選期に丸2の方と併せて改選をするということになります。そうすることによりまして,オレンジの枠で,真ん中辺りから囲んでいるところがございますけれども,例えば令和5年の11月までの1年間と,令和6年の11月末まで1年間,合わせて2年間は同じメンバーで,じっくり腰を落ち着けた御議論ができる形となっていきます。
若干,技術的な説明となり,恐縮でございますけれども,こういったことを意図して選考サイクルの改正を御提案するところでございます。
事務局からは以上でございます。
【濵口会長】 ありがとうございます。結構,任命が長くなったりして,お仕事が増える方も見えるかと思うのですけれども,ユネスコ活動の進化のために個人的な要望は控えていただいて,御理解いただけるようにお願いしたいと思いますが,御異論ある方は手短にお願いします。ございますか。よろしいでしょうか。御異論なければ,このまま承認していただきたいと思いますが,いかがでしょうか。
御意見,お一人ありました。片山委員,どうぞ。
【片山委員】 異論はございません。趣旨は大変理解しております。
あえてこの場で,事務局の今後のお仕事がタイトになって申し訳ないのですが,一つ事務局へのお願いということで発言をお許しいただきたいと思います。3年もしくは2期で委員が交代する時期に,是非とも,我々,そうしたように,これまでの各御助力に加えて,できましたら,簡単で結構でございますので,レクチャーをしていただける機会を考えていただけると,今後,有り難いと思います。もちろん,我々,個人としても,組織としても,今後,引継ぎは十分やらせていただきたいということを申し添えておきたいと思います。
以上です。ありがとうございました。
【濵口会長】 了解しました。事務局,よろしくお願いします。
それでは,この選考サイクルの見直しについて,御了解いただけますでしょうか。よろしいでしょうか。
                            (「異議なし」の声あり)
【濵口会長】 ありがとうございます。それでは,この形で進めさせていただきたいと思います。
議題6.に移ります。その他でございます。大変長くお待たせしているのですが,ここで,本日,オンライン開催のメリットを活用し,パリのユネスコ日本政府代表部から尾池大使に御出席いただいております。せっかくの機会ですので,最近のユネスコに関する状況について御報告を頂きたいと思います。
尾池大使,よろしくお願いいたします。
【尾池大使】 どうも,ユネスコ代表部大使の尾池でございます。
今日は,こうした機会をお与えいただきまして,誠にありがとうございます。現場からの報告ということで,ごく簡単に,今,何が起こっているかについてお話をしたいと思います。
まず,お手元に簡単なレジュメを御用意させていただいていると思いますけれども,第1点として申し上げたいことは,今日,国内委員会の場におきましても,吉田委員,立川委員,道田主査,御発言を頂いたところでありますけれども,こうした個々の分野での日本の専門家の方々の貢献というものがユネスコにおいては大変に大事でございます。ユネスコのマンデートの中には,日本が得意としている分野が相当たくさんございますので,是非今後とも先生方の御活躍をお願いしたいと思いますし,もし実際,パリに来られることがあれば,是非懇談の機会を設けさせていただきたいと思います。これが第1点でございます。
2点目ということで,ユネスコにおける選挙,実はこれは来年3件ございます。
まず,一つ目が執行委員会の選挙,日本はずっと執行委員会のメンバーとしてやってきたわけですけれども,現在の4年の任期が来年終わりまして,それに伴って再選のための選挙に出る必要があるということでございます。我々の地域でありますアジア太平洋地域には,来年は6議席,割当てがございますが,現在,立候補している,あるいは立候補することが予想される国というのは10か国ありまして,10か国の中から6か国という感じになります。この中には,中国,インド,オーストラリア,インドネシア,ベトナム,マレーシア,イランなど有力な国々がたくさんおりますので,なかなか厳しい選挙になると思います。
2番目の選挙は,世界遺産委員会の選挙でございます。今のところ,アジア太平洋には2議席,割り当てられていて,インドと日本しか立候補していないので,このままいけば選挙なしに当選をするわけですけれども,ここはまだ締切りがいつになるかもはっきり分からないところなので,ほかの国が出てくる可能性はございます。これは,全加盟国193のうち21か国だけが委員をやっていますので,しかも1回委員をやると,終わった後6年間,待っていなければいけないというルールもありますので,なかなか厳しい状況ですけれども,これも来年,必ず当選する必要があるということかと思います。
選挙の3つ目は,オドレー・アズレー事務局長の再選ということであります。これは再選ですから,ひょっとしたら選挙なしに認められる可能性もありますけれども,対立候補が出てくる可能性もございます。日本とユネスコの関係は,御案内のように2015年,2016年辺りは大変厳しいものがございました。ただ,アズレーさんが事務局長になって以来,もうかれこれ2年余りになりますけれども,この間,日本とユネスコの関係は大きく改善してございます。そういうことからも,我々としてはアズレー事務局長に是非再選してほしいという気持ちを持っておりまして,これにもしっかり取り組んでいく必要があるということだと思います。
第3番目は,世界遺産及び無形遺産ということですけれども,世界遺産に関しては,既に御案内のように,本来であれば奄美・沖縄の4つの島の案件が,今年の世界遺産委員会で登録されることを我々は大変に期待していたわけですけれども,世界遺産委員会の日程がまだ決まっていないものですから,あるいは今年はないかもしれないということなものですから,これは来年に回ってしまう可能性がございます。これをしっかり登録に結びつけていくということが大きな課題でございます。この後は,北東北及び北海道の縄文遺跡の話がございますけれども,これもしっかり取り組んでいくということだと思います。
無形遺産のほうでは,宮大工の匠の技というものが今年の無形遺産委員会にかかるということになってございます。多分,今年あると思いますけれども,これもはっきりしたことはまだ決まっておりません。この宮大工の後には,風流踊ということで既に申請をしていますので,これらのものについてしっかり取り組んでいくということが必要だと思います。
世界遺産の関係で,これも報道等で御案内のとおりでございますけれども,明治の産業遺産に関して,韓国が,この遺産が登録された際の世界遺産委員会の決議を日本は履行していないと言ってクレームをつけているという状況がございます。これに関しましては,今,世界遺産委員会の委員国に対して日本の立場を説明しております。これまでの感じからしますと,これらの国々は説明は理解していただいていると思います。ただ,彼らは,できれば韓国とちゃんと話をつけてほしいということなので,引き続き強力に働きかけていく必要があると思っております。
4番目の話として,最近のトピックということでございますけれども,時間の関係で1点だけに絞らせていただきたいと思うのですが,中国ということでございます。中国は,アメリカがいないということもあって,ユネスコを活用していきたいという姿勢を,最近,強く持っているところでございます。これがユネスコにおいて非常に大きな影響力を持つ欧州諸国を刺激している面があって,対立につながるというような現象が生じております。
この系統の話で,一つ大きな,日本にとっても重要な話として,AI,人工知能の倫理という話がございます。これは,去年,G20におきましても,日本が取り組んで宣言,文章をまとめたところですが,その後,OECDにおきましても随分議論をされた点でございます。ただ,これがユネスコに来ますと,たくさんの途上国がいる場での議論ということになります。したがって,先進国が考えていることとは違った発想がいろいろ出てくるということはあると思いますし,現に欧米諸国と中国との考え方の差がかなりございます。また,欧米諸国の中でも,アメリカとヨーロッパの考え方はかなり違うというような現状があります。
この中で,日本としてどういう取組をしていくのか。このプロセスは,既に会合の資金的な面を支援したり,あるいは,いろいろ知恵も出したりして,専門家の方にも参加していただいていますし,今後とも日本としての役割は大きいし,日本が置かれている地位の関係から,事務局の日本に対する期待も大変に強いということでございます。
もう一つは,これはもうごく簡単に申し上げますけれども,ユネスコの国際教育局,あるいは国際教育研究所みたいなものがジュネーブにございます。これについて,スイスがずっと支えてきたわけですけれども,もうこれ以上,支えるのは難しいということで,何年か前に売りに出たことがございます。結果,幾つかの国が手を挙げたのですけれども,その中で中国も手を挙げたということがございます。現在,何が問題になっているかというと,この研究所の一部を中国に持っていくか,具体的には上海に持っていくかどうかということが話題になっていまして,現在,これがユネスコにおける最もホットなイシューになりつつあります。
実は,私はユネスコの行財政委員会の議長というのをやっているのですけれども,先般の執行委員会ではこのトピックがものすごく大きな問題になりました。壇上で,中国を支持する国,ヨーロッパを支持する国を勘定したのですけれども,ほぼ半々というような状況であります。現在,このトピックに関する作業部会が作られていますけれども,日本はこれには入っておりません。意識的に入らないようにいたしました。というのは,この作業部会がもしうまくいかない場合,また私が議長をしているところに戻ってくるんです。議長としての中立性という観点から参加をしていませんけれども,この問題に関してもやはり日本は両方から非常に強い働きかけを受けていまして,何とか解決策を見つけるべく努力していく必要があるという状況でございます。
最後に,ちょっと長くなって大変恐縮ですが,5番目のGlobal Education Coalitionについて一言だけ触れさせていただきたいと思います。これは資料がございまして,資料のほうに移っていただけますでしょうか。2ページ目です。ありがとうございます。
これは,今年の3月末に設置されたものでございまして,コロナ危機の下でどうやって各国で学習を続けていくか,これは主に遠隔教育の話題です。それから,コロナ後にどうやって教育を再開していくか,あるいは未来に向けた教育環境の強化ということで,これは官民の共同パートナーシップという形で作られています。
協力内容は,もう千差万別でして,それぞれの企業の方々,あるいは団体の方々が,プラットフォーマーであればオンラインアカウントを付与したり,タブレットを提供したり,オンラインコンテンツを提供したり,IT技術だと派遣ですとか食料の提供,あるいはデータ分析支援,これはたしかKPMGがやっていたと思いますけれども,相手国のコロナの状況を調査,分析するとかいうことも含めて,様々な協力の形があります。
ユネスコがやっているのはマッチングということで,企業の方々,あるいは団体,機関の方々がどんな支援ができるということを言っていただきますと,別途,途上国のほうから来る支援の要望とマッチングを図るということでございます。次のページに行っていただきますと,ここにありますように国連の諸機関,民間企業,シビルソサエティー,放送関係,マスコミ,ネットワーク機関,様々な機関が参加をしているのですが,実はこの中に日本の企業,団体が一つもないということでございます。
実は,このGlobal Coalitionというのは非常に新しい取組で,それぞれの組織が得意な形,つまりそれぞれの組織が最もやりやすい形で協力をすることができるというメリットがございます。是非,このグローバル教育連合に関しましても,企業の皆様方,あるいはシビルソサエティーの皆様方が参加を御検討いただけると,私としては大変に有り難いと思います。
2枚目の右下のところに,文部科学省の国際統括官付の方々が連絡先ということで受けていただいておりますので,もしお問合せ等ありましたら,こちらのほうによろしくお願いいたします。
大変長くなりまして恐縮ですが,以上でございます。どうもありがとうございました。
【濵口会長】 尾池大使,どうもありがとうございます。ふだんは全く聞けないような貴重なお話,たくさん伺いました。それから,国際関係,厳しいこともひしひしと感じます。もう時間超過しているのですけれども,どうしても聞きたいという方,1人だけお受けします。貴重な機会ですので,尾池大使に質問ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
大使,どうもありがとうございました。引き続き,どうぞよろしくお願いいたします。今日は,ありがとうございます。
【尾池大使】 よろしくお願いします。ありがとうございました。
【濵口会長】 尾池大使になられてから,本当にこういうお話が入るようになって,ちょっと目が覚めるような気がいたします。
それでは,時間が超えておりますが,議題7.をお諮りします。国内委員会委員の人事に関する事項について審議するため,会議の諸事を非公開とします。

傍聴の方々,並びに報道関係者の皆様,委員及び事務局関係者以外の方はオンライン発信を終了するので御了承ください。

―― 了 ――

 

お問合せ先

国際統括官付