日本ユネスコ国内委員会総会(第142回)議事録

1.日時

平成30年2月9日(金曜日)15時00分~17時00分

2.場所

三田共用会議所 第4特別会議室

3.出席者(敬称略)

〔委員〕
安西祐一郎(会長)、古賀信行(副会長)
安達久美子、安達仁美、有里泰徳、石井尚子、礒田博子、井手明子、猪口邦子、宇佐美誠、大枝宏之、相賀昌宏、大西英男、大野希一、岡崎環、岡田保良、加藤淳子、萱島信子、河野健、小林真理、今みどり、杉村美紀、鈴木淳司、高尾初江、髙木錬太郎、立川康人、寺本充、道傳愛子、中西正人、那谷屋正義、野村浩子、野本祥子、蓮生郁代、羽田正、日比谷潤子、平野英治、細谷龍平、松代隆子、山田卓郎、吉田和浩

〔欠席・委任〕
濵口道成(副会長)、秋永名美、伊東信一郎、及川幸彦、翁百合、黒田玲子、小長谷有紀、小林栄三、島谷弘幸、永岡桂子、西尾章治郎、平松直巳、福岡資麿

〔外務省〕
中川弘一 外務省首席事務官

〔文部科学省〕
林芳正 文部科学大臣、戸谷一夫 文部科学事務次官、里見朋香 文部科学省国際課長

〔内閣官房〕
今村敬 内閣官房 産業遺産の世界遺産登録推進室 企画官

〔文化庁〕
渡辺栄二 文化庁 記念物課世界遺産室長、濱田泰栄 文化庁 伝統文化課文化財国際協力室長補佐

〔UNESCO MGIEP〕
ダライアッパ MGIEP所長

〔事務局〕
松浦晃一郎 日本ユネスコ国内委員会特別顧問(前ユネスコ事務局長)、川端和明 日本ユネスコ国内委員会事務総長(文部科学省国際統括官)、池原充洋(文部科学省国際戦略官)、小林洋介 (文部科学省国際統括官付国際戦略企画官)、その他関係官

4.議事


【安西会長】
御多忙のところをお集まりいただきましてまことにありがとうございます。定刻でございますので始めさせていただきます。まず,事務局に定足数の確認をお願いいたします。
【鈴木国際統括官補佐】
本日は出席の委員の皆様,34名でございますので,委員の過半数を満たしており,定足数を満たしていますのでお願いいたします。
【安西会長】
ありがとうございました。定足数が満たされているという報告でございますので,第142回日本ユネスコ国内委員会を開催させていただきます。
国内委員会の規定に基づきまして,今日の総会は傍聴の希望者に対して公開させていただきます。また,御発言につきましては,そのまま議事録に掲載され,ホームページ等で公開されますので御了解くださいますようお願いいたします。
本日の会議には,大変御多忙の中を丹羽文部科学副大臣に御出席いただいております。後ほど御挨拶を頂ければと存じます。
また,インド・ニューデリーにある教育関係のユネスコ直属の外部機関でありますマハトマ・ガンジー平和と持続可能な開発のための教育研究所(MGIEP)のダライアッパ所長に御出席いただいております。(拍手)
ダライアッパ所長にも後ほど御挨拶を頂く予定でございます。
また,本日は関係省庁の担当官にも出席を求めております。また後ほど,松浦日本ユネスコ国内委員会特別顧問にも御出席いただく予定でございます。
今日の配付資料につきましては不足等ありましたら,会議の途中でも構いませんので挙手にて事務局にお知らせいただきますようお願いいたします。
審議の前に,昨年9月12日に開催されました前回の国内委員会総会以降,委員の異動がありましたので事務局から報告をお願いいたします。
【鈴木国際統括官補佐】
昨年11月28日付で衆議院の指名に基づきまして3名の委員の皆様が就任されておられます。
鈴木淳司委員でいらっしゃいます。
髙木錬太郎委員でいらっしゃいます。
【髙木委員】
よろしくお願いします。(拍手)
【鈴木国際統括官補佐】
本日御欠席でいらっしゃいますが,永岡桂子委員が御就任になっておられます。
昨年12月1日発令でほかに13名の委員の方が就任されておられます。
石井尚子委員。
【石井委員】
よろしくお願いします。(拍手)
【鈴木国際統括官補佐】
大枝宏之委員。
【大枝委員】
よろしくお願いします。(拍手)
【鈴木国際統括官補佐】
大野希一委員。
【大野委員】
よろしくお願いいたします。(拍手)
【鈴木国際統括官補佐】
岡崎環委員。
【岡崎委員】
よろしくお願いします。(拍手)
【鈴木国際統括官補佐】
萱島信子委員。遅れて御出席の予定でございます。
河野健委員。
【河野委員】
よろしくお願いいたします。(拍手)
【鈴木国際統括官補佐】
川端和明委員。
【川端国際統括官】
よろしくお願いします。(拍手)
【鈴木国際統括官補佐】
道傳愛子委員。
【道傳委員】
よろしくお願い申し上げます。(拍手)
【鈴木国際統括官補佐】
本日欠席でございますが戸谷一夫委員が就任されておられます。
野本祥子委員。
【野本委員】
よろしくお願いします。(拍手)
【鈴木国際統括官補佐】
蓮生郁代委員。
【蓮生委員】
よろしくお願いいたします。(拍手)
【鈴木国際統括官補佐】
本日御欠席でいらっしゃいますが,福田淳一委員が就任されておられます。
吉田和浩委員。
【吉田委員】
よろしくお願いします。(拍手)
【鈴木国際統括官補佐】
以上でございます。
【安西会長】
ありがとうございました。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
それでは,丹羽文部科学副大臣より御挨拶を頂ければと存じます。丹羽副大臣,どうぞよろしくお願いいたします。
【丹羽文部科学副大臣】
それでは,皆様改めましてこんにちは。御紹介いただきました文部科学副大臣の丹羽秀樹でございます。ここからは座って御挨拶を申し上げさせていただきます。
第142回日本ユネスコ国内委員会の開催に当たり御挨拶を申し上げます。安西会長,古賀副会長,並びに委員の皆様方におかれましては,御多忙のところお集まりいただきまして心から感謝申し上げます。日頃から我が国のユネスコ活動に関して御助言,御協力を頂いておりますこと,重ねて厚くお礼申し上げます。また,本日はインドから来日されておられますダライアッパ所長にもお越しいただいております。本当にありがとうございます。ユネスコ活動の一層の充実に向け,御発表を踏まえ,本日の議論が有意義になることを心から期待いたしております。
さて,私も以前,日本ユネスコの国内委員を務めておりました。また,2014年に開催されました持続可能な開発のための教育,ESDに関するユネスコ世界会議の折には,当時,文部科学副大臣として参加するなど,様々な形でユネスコ活動に携わってまいりました。世界会議で創設されましたユネスコ/日本ESD賞が高い評価を受けており,昨年は林文部科学大臣がパリでの授賞式に参加したことは私としても大変感慨深いものでありました。
現在,ユネスコはアズレー新事務局長の体制が発足し,大きな変化の中にあります。こうした中,我が国が責任ある加盟国としてユネスコに貢献していくことが重要であります。このためには財政的支援や人的支援とともに,ユネスコ活動を実践面から支えていただくことが不可欠であります。我が国はこれまで教育,科学技術,文化,また各分野で国際的に優れた活動を行っており,ESDのような世界を主導する取組も行ってまいりました。今後,それらの活動で得た知見を更に発展させ,世界全体の平和に貢献していく必要があります。これはすなわち,この場におられます国内委員会委員の皆様の日々の実践に大いに期待が寄せられることを意味しております。
本日は次期ユネスコ中期戦略区の策定に向けた議論も開始されるとお伺いいたしております。ユネスコの戦略策定に当たっても,是非皆様のこれまでの御経験や御知見を踏まえ,貢献してまいりたいと考えておりますので,是非活発な御議論をお願いいたします。
最後に,SDGsに向け新たな取組やSociety5.0の到来等,世界全体が大きな変化を迎えつつある中,先進国,途上国を問わず195の加盟国が集い,教育,科学技術,文化,各分野の連携や融合による学術的,学際的な取組を進めるユネスコの果たす役割は今まで以上に大きなものとなってきております。この時代の転換期の中で皆様のユネスコ活動の実践から学び,今後の方向性に向けた有意義な議論につなげていきたいと考えておりますので,是非本会議におかれましても御忌憚のない御意見を賜れれば大変幸いでございます。
以上,私からの御挨拶と代えさせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
【安西会長】
丹羽副大臣,ありがとうございました。
丹羽副大臣は,今ありましたようにユネスコ活動に精通しておられまして,教育問題等,大変いろいろ活発に御指導いただいております。今後ともよろしくお願い申し上げます。
丹羽副大臣はこの後,次の御予定がありますので御退席になります。どうもありがとうございました。
(丹羽文部科学副大臣退席)
【安西会長】
それでは,引き続きましてマハトマ・ガンジー平和と持続可能な開発のための教育研究所(MGIEP)のダライアッパ所長より,本日の国内委員会総会開催に当たりまして御挨拶を頂ければと存じます。
MGIEPは,ユネスコ直属の外部機関でございまして,加盟国が各国の教育実践の中で平和,持続可能な開発,グローバル市民の理念を強化,導入することを支援することを目的にいたしまして2012年にインド・ニューデリーに設置されました。ダライアッパ所長は,国連の環境計画,国連大学での勤務を経て,2014年にこの研究所の初代の所長として着任されました。
それでは,ダライアッパ所長,よろしくお願いいたします。
【ダライアッパMGIEP所長】
まずは,本日はお招きいただきましてまことにありがとうございます。ここからは着席してお話しさせていただきます。
本日は安西会長,古賀副会長,そして松浦特別顧問,特にMGIEPでは理事もしていただいております。そして,川端事務総長,本日は本当にお招きいただきましてありがとうございます。本日,10分でのプレゼンということでございます。通訳が付いておりますので,10分ですけれどもよろしくお願いいたします。
安西会長の方からもお話がありましたように,こちらのMGIEPは2012年に開所いたしました。当時はインドの首相,そしてボコバ前事務局長の協力を得まして創立することができました。このMGIEPでございますけれども,特に4つの柱を掲げております。教育,平和,そして持続可能な開発,そして4つ目はマハトマ・ガンジー。マハトマ・ガンジーということがこの機関を創立した理由でもございます。
そして,こちらを見ていただくと分かりますように,我々の機関のモットーは学習者が中心ということになっております。つまり学生であります。そして,この学生を中心にいたしまして,また,若者を中心に活動を行っております。特に若者に関しましては,過去3年間,非常に成功しております。
もう一つ,我々が焦点を絞っておりますのが,デジタルペタゴジーでございます。私はデジタル技術とは申し上げません。デジタル技術というのはただのプラットフォームでありますので,我々はデジタルペタゴジーと呼んでおりまして,学生,先生を中心と考えております。
そして,我々が特に重要だと考えておりますのが,SDGの4.7になります。こちらで掲げておりますのは,教育に関しましてグローバルな視点を持つこと,持続可能な開発のための教育,そして人権,男女平等,地球市民であることが大事だということを掲げておりまして,ここに掲げておりますように,我々は知識,技能の習得というところによりまして平和で安定した社会,持続可能な社会を実現することを掲げております。
そして,我々の機関でやることを考えたときに,同じ分野でたくさんの機関が既に活動しております。ですから,そういうほかの機関をまず見直して,同じこと,同じ価値を生み出すのでは意味がないと考えました。そして,私たち独自の価値を生み出すこと,ニッチな市場を考えて,我々の活動を考えました。ここ15年から20年で教育の科学というものが非常に改善しております。我々は神経科学ということに焦点を絞りまして,そこに焦点を絞ることによりまして,算数又は科学の教育が改善できます。
そして,我々はこれを知的な知能と呼んでおります。認知的知能と呼ぶ,認知の知能と呼ぶ方が多いと思うのですけれども,全ては脳で認知されますので,我々はあえて知的知能と呼んでおります。これは情報をベースにいたしまして,そこからESDは何なのか,世界市民というものはどういうものなのかということを教えてくれる,これは脳の前頭葉の部分でございます。
そしてもう一つが,我々が知的知能を拡大してもう一つの心の知能というのがございます。この心の知能と申しますのは,持続可能な開発に実際に影響を与えるようなものでございまして,例えば社会情動的教育というものを改善することによって算数,科学などの教育も改善することができます。これは実際にデータ又はエビデンスで証明されているものでございます。我々はこの社会情動的教育に力を入れておりまして,ほかの機関は知的知能の方に力を入れていますので,それによってほかの機関と協力することによって両方を高めていきたいと考えております。
そして,こちらは心の知能の方でございますけれども,こちらは脳の扁桃体の方でございます。この扁桃体という部分は自然に反応してしまうような,例えばけんか,逃げる,又は固まってしまうというような,そういう反応をするところが扁桃体でございまして,現代は環境の問題,又は家族がグローバル化でばらばらになってしまうというような現状がございますので,実際に学校ではこの扁桃体をうまく使って心の知能の方を高めていく教育をする必要があると考えております。
そして,この心の知能ですけれども,我々はここにあります3つを開発いたしました。1つ目がLibreですけれども,こちらは自由という意味を表しています。2つ目は,デジタルな会話を異文化の人とも持とうということが2つ目。そして3つ目は学習のためにゲームを使っていくということなのですが,こちらのゲームに関しましてはかなりの投資をしてまいりました。そして,子供というのはやはりゲームになりますと非常に反応がいいものです。そして,ゲームの中には非常にバイオレントなものもありますけれども,特にそういうものについては数は多くしていきたくないと思っていますが,ワールドレスキューというゲームがございまして,こちらは教育上非常に成功しております。
こちら,いろいろと書いてございますけれども,今回説明は割愛させていただきます。これを見ていただきまして,皆様の方から今後,是非御質問を頂きたいという意図でお見せしております。このようにいろいろなパーツがありますけれども,これが1つにつながることによりまして,子供の見方,態度,行動が変わってくるものでございます。
そして,ここにあります主なものですけれども,マインドフルネス,気付き又は注意深さ,そして共感,思いやりというものが出ておりますけれども,実際にこれはデータで証明されているものなのですけれども,この中には瞑想などの要素も取り入れられていまして,こちらを使った学校を実際に比較いたしますと,こういうことを取り入れていない学校に比べまして,学術だけではなく,社会的な能力も高まったという結果が出ております。
先ほど御紹介いたしました2つ目,デジタルな異文化交流ですけれども,これはパイロットの段階となっておりまして,1回目はデリーで10校選んでパイロットいたしました。次には5か国でパイロットを行いまして,そのときのトピックがマイグレーション,移動ということでございまして,実際にこれは最近非常に繊細な問題でありますので,子供の目から見てそういうことはどう捉えられているかということでパイロットいたしました。
そして実際にトレーニングの前と後の結果も比較しているのですけれども,確かに数字は変わっておりますけれども,このグラフを見ていただきますと分かるように,左側はマインドフルネス,気付き,そして右側は共感のグラフになっておりまして,このように一つがよくてももう一つも必ずしもよくない,どこかに得意なものが国ごとにあるということがお分かりいただけると思います。それによりまして3つ全て重点的に行わなければいけないということが分かりました。
次はゲームですけれども,ゲームというのは本当に効果があるものでございます。ゲームというのは没入型でありますし,経験型,そして相互に作用できるインタラクティブなものでございますので,非常に効果があります。我々は2つのゲームを導入いたしました。左上にある,まず,ワールドレスキュー。こちらはSDGの内容となっております。その下にキャンターズワールドとございますけれども,こちらは政治家の方が実際にポリシー,政策を作るのにどれぐらい複雑なものかということを学ぶ内容になっております。左上のワールドレスキューにつきましては,これをアップロードいたしまして最初の1週間で1万4,000のダウンロードを記録いたしました。こちらはアンドロイド,アップルストアでも御利用いただくことが可能でして,無償でお使いいただくことができますし,ワールドレスキューのカリキュラムというのがございまして,学校の先生方にも御利用いただくことが可能です。
そして,右上ですけれども,このTECH2018というのがございまして,前回は去年の12月にTECH2017というものがございました。これはやはりデジタルに関するデジタルペタゴジーの会議となっておりまして,展示会ではございません。そして,ここには企業も多く参加しております。マイクロソフト,UBISOFTなども参加しておりまして,実際700人の参加者を想定しておりましたところ,会議に1,700人の方が参加してくださいました。そして,こちらのTECHですけれども,日本の方からももっと多くの参加を是非お願いしたいと思っております。そして,この結果,インキュベーター的な制度も導入するべきだということになりまして,政府も絡みましてこれをやっておりますので,政府の資金の下でやっていることで学校の参加も可能となりました。
最後にこのガンジーのニューロン,神経細胞を是非皆様にどんどんこちらから発信していきたいということを考えております。先ほど申しましたように,前頭葉と扁桃体が両方とも接続されることによって人間の行動を変えることができるということは既に証拠がありまして,エビデンスがございます。これは若者だけではなく,どの世代に対しても通用する行動の変革が起こせると思っております。これによりまして我々が掲げておりますSDGを是非達成していきたいと思っております。
ありがとうございました。(拍手)
【安西会長】
ありがとうございました。
ダライアッパ所長が御挨拶の中で述べられましたMGIEPの活動というのは持続可能な開発目標の達成に向けまして,特に所長が言われましたけれども,教育に関わるSDG4,特に4.7の達成に寄与する大変重要なものでございます。中でも我が国が主導してまいりましたESDにつきまして,大変意味のある研究をダライアッパ所長のところでやっておられます。今後とも日本ユネスコ国内委員会といたしましてはMGIEPのようなユネスコの研究機関との連携を綿密に行っていきたいと考えております。改めてダライアッパ所長,誠にありがとうございました。(拍手)
報道関係者の皆様におかれましては,写真撮影はここまでとさせていただきますので,御了承をお願いいたします。
それでは,議題1に入らせていただきます。議題1は昨年11月にパリのユネスコ本部で開催されました第39回ユネスコ総会の結果等についての御報告でございます。ユネスコ総会は2年に一度開催されますユネスコの最高意思決定機関でございまして,ユネスコに加盟するのは195か国,これらが一堂に会するものでございます。今回のユネスコ総会には林文部科学大臣が出席されまして,一般政策演説を行われました。また,ユネスコ事務局長の新任が承認されました。今後のユネスコ運営の方向性が示されました大変重要な機会でございました。
それでは,事務局から第39回ユネスコ総会につきまして御報告をお願いいたします。
【小林国際戦略企画官】
それでは,モニターの画面にこの議題につきまして御説明するスライドを御用意いたしましたので,それをごらんいただければと思います。なお,詳細の資料につきましては,資料1に紙の資料がございますので,そちらも御参照いただければと思います。
ユネスコ総会につきましてですけれども,昨年11月に開催されました第39回ユネスコ総会になります。ユネスコ総会は2年に一度開催されるユネスコの最高意思決定機関でございまして,195のユネスコ加盟国の政府代表が一堂に会す唯一の機会でございます。各国の元首級が参加するリーダーズ・フォーラム,195か国の政府代表が演説を行う一般政策演説に加え,分野ごとに開催される事業委員会から構成されております。また,今回に関しましてはユネスコ事務局長の改選時期となったため,昨年秋のユネスコ執行委員会で事務局長候補となったアズレー氏の事務局長就任の承認も行われました。
今次ユネスコ総会は10月30日から11月14日の間,フランス・パリのユネスコ本部で開催され,我が国からは林文部科学大臣が出席し,前回の馳文部科学大臣に引き続き,2回連続して大臣の出席となりました。ユネスコ総会は,ユネスコの今後の事業運営について議論を行う極めて重要な機会となっております。
続いて,一般政策演説について御報告いたします。こちらが林文部科学大臣の行った一般政策演説の会場でございます。各加盟国はそれぞれの重点分野についての表明を6分間の一般政策演説を通じて行います。まず,林大臣の演説の様子を動画でごらんいただければと思います。
(映像上映)
【小林国際戦略企画官】
林大臣は,昨年9月の日本ユネスコ国内委員会総会での御議論を経て策定された第39回ユネスコ総会に関する答申も踏まえまして,政府代表として一般政策演説を行いました。演説では,持続可能な開発目標,SDGsの達成に向け,我が国では全省を挙げて取り組んでいること,ESDを更に推進していくこと,科学分野で事業間連携を進めることについてその重要性を強調いたしました。また,「世界の記憶」事業に関して,その包括的に見直しを求めたユネスコ執行委員会決議を歓迎するとともに,加盟国間の友好と相互理解に向け,新事務局長の下で積極的に貢献することを表明いたしました。
最後に,我が国で世界初の民間ユネスコ団体が発足したことを紹介し,政府と民間の活動が手を携えて貢献することについて述べました。
一般政策演説の全文はお手元の資料1にも掲載されておりますので,後ほど御参照いただければと思います。
一般政策演説に引き続きまして,林文部科学大臣は本ユネスコ総会でのユネスコ事務局長への正式な承認を待つオドレー・アズレー前フランス文化・通信大臣と会談を行いました。ユネスコのトップである事務局長は任期4年で2期まで務めることができ,8年間の任期を終えるボコバ事務局長の後任として9名が立候補していました。これについて10月に開催されたユネスコ執行委員会中に,ユネスコの執行委員国による投票が行われ,最終的にアズレー氏がユネスコ事務局長に選出されておりました。アズレー氏との会談で,林文部科学大臣は,ユネスコの過度な政治化への懸念,ユネスコ全体の改革の必要性,それからSDGsの重要性について強調し,アズレー氏の理解を得ました。
また,これまで8年間ユネスコを率いたボコバ氏とも会談を行いました。会談では,任期中,ESDに関するユネスコ世界会議の開催などに関する尽力に感謝の意を述べました。
総会のサイドイベントとして3回目を迎えたユネスコ/日本ESD賞の授賞式が実施されました。まずはこの授賞式の様子をごらんいただければと思います。
(映像上映)
【小林国際戦略企画官】
ユネスコ/日本ESD賞は,世界中のESD実践者にとってよりよい取組に挑戦する動機付けと,優れた取組を世界中に広めることを目的として2015年に我が国の財政支援により創設されました。国際公募を経て毎年3件の優れた取組を表彰しておりまして,本年はヨルダン,ジンバブエ,イギリスの団体が受賞団体に選ばれました。本表彰式は今ではユネスコ総会の恒例行事となっておりまして,教育に関する議題を議論する委員会の会場で開催されました。林大臣のほか,ボコバ事務局長,ウォーブスユネスコ執行委員会議長,佐藤ユネスコ代表部大使に加え,教育事業委員会に出席していた各国の代表同席の下で盛大に開催されたところでございます。
また,ユネスコ本部内のレストランでは日本政府主催のレセプションも開催されました。
最後に,ユネスコ事務局内の様子も少し御紹介させていただきます。ユネスコ本部内には日系アメリカ人であるイサム・ノグチ氏の作による平和の庭園が設置されております。この庭園は日本政府の寄附により1958年に建設されたもので,総面積1,700平米の中に,当時日本から持ち込まれた樹木や庭石により,自然と人類の調和が表現されております。現在でも本庭園はユネスコ職員の間で,通称である日本庭園と呼ばれ,憩いの場となっております。庭園内には高さ40センチメートルの天使の像がありますが,これは長崎の浦上天主堂の正面にあったもので,1945年8月9日の長崎への原子爆弾への被害を奇跡的に免れたものでございます。1976年,ユネスコの30周年を記念して長崎市より寄贈されました。また,庭園横には安藤忠雄氏の作品である「瞑想空間」があり,これは日本の民間からの寄附金により1995年に建築されました。コンクリートの円筒状の建築物で,床に使用されている御影石は広島の原爆ドーム近くの橋のものでございます。
以上が一般政策演説を中心としたユネスコ総会報告でございますが,このほかユネスコ総会では事務局長の承認,執行委員国選挙,2018年から2019年事業予算の承認が行われるとともに,個別分野では教育2030アジェンダの実施におけるユネスコの役割に関する議論や国連海洋科学の10年の設立を求める決議の採択や,科学者の地位に関する勧告の改定などが行われました。主な議論の概要につきましては資料1にまとめておりますので御参照いただければと思います。
私からは以上でございます。
【川端国際統括官】
内容の説明は以上でございます。
私は大臣に随行させていただきましたので,個人的な印象を少し補足したいと思いますが,このユネスコの総会は大体,国会の会期中に当たることが多く,また,文化の日の11月3日が金曜だったということもあり,土曜の夜から日曜の夜にかけて1泊4日の強行日程で行っていただきました。ユネスコの正式の行事の合間にはアルゼンチンの教育大臣,ノルウエーの教育大臣,あるいはフランスの国民教育省に伺って,教育関係のいろいろな覚書の書面等々を行っていただきました。
一般政策演説は,先ほどごらんいただきましたような華やかな場で,非常に流暢な英語で演説していただいたということで,内容と相まって非常に高い評価があったというふうに思いました。
それから,日本の存在感や,日本がユネスコを重視しているということを示すという意味で,やはり大臣に出席していただくということが非常に重要だったと感じたところです。
これは気のせいかもしれませんが,大臣の演説の際,ひな壇に幹部が並んでいらっしゃって,ボコバ前事務局長もいらっしゃったわけですけれども,大臣の演説には非常に神妙な表情で聞き入っていらして,日本の演説が終わったらすぐに席を外していらっしゃいました。演説は次々続きますから,全てを聞かれるわけではないので,恐らく日本が何を言うかということについて微妙な時期,あるいはいろいろな懸案があるということもあったのだと思われますが,非常に関心を持ってボコバ前事務局長が聞いていたのではないかと拝察しました。
それから,ユネスコ/日本ESD賞の授賞式ですが,先ほども少し後ろの方で声が入っていましたけれども,私自身は現場を見たことがなく,もう少し淡々としたものであると思っていましたけれども,行ってみたら非常に大きな会場で,後ろの方からも声がわーっと出るような,非常に華やいだものでした。そういった意味では,日本がESDを主導してきたということを皆さんに一目で理解していただく,そういった効果的な事業であるという印象を持ちました。
各種のバイ会談も,通訳を大臣は介されないこともあって,非常に会話が弾むので,全体的にフレンドリーな感触で終わったと思います。アズレー新事務局長との会談も非常に友好的にもちろん行われましたけれども,政府として言うべきことはしっかり主張していただいたと思っております。
雑感としては以上でございます。
【安西会長】
ありがとうございました。
ただいまの事務局の御報告も踏まえまして,何か御質問,御意見があればと思いますけれども,いかがでしょうか。
よろしいでしょうか。後でも結構でございますが。もしよろしければ次の議題に移らせていただきます。それでは,次に参ります。総会につきましては以上でございます。
議題の2でございますけれども,我が国におけるユネスコ活動の状況についての報告であります。初めに前回の国内委員会総会以降の我が国におけるユネスコ活動の状況につきまして,関係委員の皆様,また事務局から報告をしていただきます。よろしくお願いいたします。
最初に,ユネスコにおける日本政府常駐代表の交替について御報告を申し上げます。昨年11月28日に持ち回りで開催いたしました第501回の運営小委員会で審議をいたしましたが,ユネスコ日本政府常駐代表の交替についてでございます。資料2をごらんいただければと思います。
ユネスコ活動に関する法律第6条におきまして,国内委員会はユネスコに対する常駐の政府代表の選考に関する事項について,関係各大臣の諮問に応じて調査,審議を行い,必要と認める事項を関係各大臣に建議するということになっております。これを受けまして,昨年11月21日,外務大臣から日本ユネスコ国内委員会会長に対しまして,ユネスコにおける日本政府常駐代表でありました佐藤地ユネスコ日本政府代表部特命全権大使がハンガリー国特命全権大使に任命され,その後任候補といたしまして山田滝雄前外務省国際協力局長を予定している旨,諮問がございました。これに対しまして可及的速やかに審議及び議決を行う必要がありますことから,運営小委員会におきまして本件について審議,議決を行うことといたしまして,この議決を国内委員会の議決とするということにさせていただきました。これを受けまして11月28日に第501回運営小委員会を持ち回りで開催をさせていただきまして,議決の結果,山田滝雄前外務省国際協力局長をユネスコ日本政府常駐代表として任命するということについては差し支えないということを国内委員会の会長から外務大臣に対して答申をさせていただきました。
この議決につきまして,日本ユネスコ国内委員会運営規則第16条第2項によりまして,次の国内委員会の会議において承認を得なければならないということとされておりますので,これで皆様の御承認を頂ければということでございます。
以上,御報告を兼ねて申し上げます。
何か御質問,御意見ありますでしょうか。
よろしゅうございますか。どうもありがとうございました。御承認いただいたということにさせていただきます。
それでは,続きまして1月29日に開催されました第136回教育小委員会につきまして,杉村教育小委員会委員長から御報告をお願いいたします。
【杉村委員】
ありがとうございます。それでは,去る1月29日に開催されました第136回教育小委員会につきまして御報告申し上げます。お手元資料の3の方に当日の議事次第を御用意いただいております。
会議の冒頭に当たりまして,今回,教育小委員会委員長の方に小職杉村の方を選出いただき,また,委員長代理に及川幸彦委員を指名させていただき,皆様から御承認いただきましたことを御報告申し上げます。
今回の会議では2つの議題がございました。1つ目の議題は,ユネスコの教育関係事業についての報告で,このうちESDの推進に関連して,今年度の実施事業の状況がまず共有されました。このうち,ユネスコスクール全国大会でございますが,これにつきましては資料3-1の方をごらんいただければと存じます。大牟田市教育委員会の全面的な協力もあり,全国から世界会議の際を除きますと,最大規模の900名以上の出席の下で開催され,大変盛況を博しました。日本ユネスコ国内委員会からは安西会長,文部科学省から宮川文部科学大臣政務官が出席されましたほか,ユネスコ本部からもユネスコスクール担当課長のザビーネ・デツェル氏が出席されまして特別講演を行ったことなどが紹介されました。また,大牟田市教育委員会が作例されました大牟田版SDGsが紹介されまして,地域課題とSDGsをESDと組み合わせて取り組んでいる大変興味深い実践例が紹介されたと伺っております。このほか,ユネスコスクールの公開授業も大変好評を博したという御報告でございました。
次に,第4回ESD日本ユースカンファレンス,また,今年度教育小委員会として発出しましたESD実践者向けのメッセージに基づきまして,現在行っているESD推進の手引きの改訂作業についても報告がございました。
一方,高等教育関連でございますが,今年度はユネスコチェアに申請しておられた京都大学,神戸大学,島根大学,長岡科学技術大学の提案が承認されまして,現在,ユネスコチェアの設置手続を行っています。
また,資料3-2にございますけれども,高等教育の資格の承認に関するアジア太平洋地域規約について,我が国が規約を締結した旨も報告いただきました。この規約はユネスコの枠組みの下で採択された地域規約で,契約国間の高等教育の相互認証等を行うことで学生及び学者の移動を容易にし,アジア太平洋地域における高等教育の質を改善することを目的としたものです。発効要件であります5つのユネスコ加盟国,オーストラリア,中国,ニュージーランド,日本,韓国がそろいましたことで,これで要件を満たしましたことから,本規約は本年2月1日に発効いたしました。併せて御報告申し上げます。
一方,続きまして議題2の方では,資料3-3にございますとおり,我が国の信託基金を通じたユネスコ・バンコク事務所における事業について,ユネスコ・バンコク事務所から林川所長代理,諸橋所長室長がバンコクからおいでくださいまして,アジア太平洋地域の教育事業を統括している当事務所の概要,並びにこれまでの日本からの信託基金による実施事業などについて御紹介を頂きました。これに基づきまして委員からは,今後,この当該信託基金の今後の活用方法について御意見,それから提案を頂きました。主な提案を御紹介させていただきますと,インクルーシブの観点からのICTの活用の重要性,ODA事業との連携,平和や非暴力,文化,多様性の尊重とユネスコの理念の重要性を含めて,日本のESDの取組をアジア太平洋地域におけるユネスコ事業にいかに発信していくかといったことの必要性,更にSDGs全体に貢献するESDの推進といったことが挙げられました。このほか,信託基金事業の評価方法,企業とのパートナーシップ,ターゲット国の選定方法やユネスコの理念を実際の現場で実践していく際の課題等も話し合われまして,大変活発な議論が行われました。
今回の委員会ではESDをはじめとする,日本が以前から継続して強く推進している分野に加えまして,高等教育分野におけるユネスコ事業の進捗,更にバンコク事務所という地域事務所との今後の連携や教育事業に関する発展を,委員の皆様それぞれの分野の御高見に基づいて活発に議論が行われましたので御報告をさせていただきます。
以上,教育委員会から御報告申し上げました。ありがとうございました。
【安西会長】
ありがとうございました。
各小委員会の活動について,あと2つ御報告を頂きますので,その後で御質問,御意見を頂ければと思います。
次に,2月1日に開催されました第132回の自然科学小委員会,それから第117回人文・社会科学合同小委員会につきまして礒田自然科学小委員会委員長から御報告をお願いいたします。
【礒田委員】
第132回自然科学及び第117回人文・社会科学合同小委員会について御報告いたします。本委員会は,自然科学分野と人文・社会科学分野の協働が重要であるとの認識の下,従前より2つの小委員会を合同で開催しているものです。今回,自然科学委員会及び人文・社会科学委員会それぞれで新しく委員長が選出されております。自然科学小委員会は私,礒田が,人文・社会科学小委員会は日比谷委員が委員長に選出されましたので,この場をかりて御報告いたします。本日は私,礒田から合同小委員会の概要を報告させていただきます。
それでは,資料4として当日の議事次第をお配りしております。資料4をごらんください。まず議題1「日本ユネスコ国内委員会の活動等について」として,昨年の秋に開催されたユネスコ執行委員会及びユネスコ総会の結果について,事務局から科学分野を中心に報告がありました。また,自然科学小委員会の下に設置されている海洋科学,水科学に関する分科会やユネスコエコパーク,ユネスコ世界ジオパークといった活動ごとに御担当の委員からそれぞれの活発な御活動について報告がありました。これらの活動報告は資料13にもまとめられております。
続いて議題2として,日本ジオパーク委員会の構成について審議を行いました。日本ジオパーク委員会は,日本ユネスコ国内委員会の認証を受けて,日本からのユネスコ世界ジオパークへの登録推薦に関する審査機能を持つナショナルコミッティーという位置付けにあります。これまで日本ジオパーク委員会は地質学,地理学,火山学といった分野の有識者から構成されていました。この構成をユネスコが作成したユネスコ世界ジオパークに関する作業指針に示されるモデルに即して,地質学関係者だけでなく,文化財保護,また観光分野,更にジオパーク活動を行う地域関係者といった幅広いステークホルダーを含めた構成に見直すことが日本ジオパーク委員会において決定された旨の御説明がありました。小委員会では,この構成の見直しがユネスコ世界ジオパーク活動の質の向上に寄与するものとしてこれを承認いたしました。
最後に,議題3として,日本のユネスコ活動における今後の事業展開の方向性について審議いたしました。事業展開の方向性としては,丸1,持続可能な開発目標(SDGs)の貢献を意識したユネスコ活動の推進と,丸2としてサステイナビリティ・サイエンスに関連した活動の推進が挙げられました。委員からは,各自の取組においてその活動がどのSDGsに貢献するかを明確にすることで自分の活動と他分野あるいは他国の活動との間にどのようなリンケージがあるのか理解しやすくなる。2つ目として,2021年から始まる持続可能な開発のための海洋科学の10年に向けた活動を通じてSDGsに対する意識を高めることができるのではないか。3つ目として,ユネスコチェアの中で他分野の研究者や学生が集まるフィールドがあるので,ユネスコチェアを中心にSDGsに関連した取組を展開することが考えられる。4つ目として,サステイナビリティ・サイエンスについては長期的な視野に立った上でこの取組が人々の平等や健全な環境の実現を目指すというベクトルを見失わないようにすることが重要であるといった御意見を頂きました。
これらの御意見を踏まえ,今後の方針として,SDGsを意識した取組を更に進めること,また,サステイナビリティ・サイエンスの観点を含めた事業展開に取り組むことが確認されました。
私からは以上でございます。
【安西会長】
どうもありがとうございました。
それでは,普及活動小委員会の御報告になります。1月30日に第99回の小委員会が開催されました。中西普及活動小委員会委員長から御報告をお願いいたします。
【中西委員】
普及活動小委員会の中西でございます。1月30日に開催をされました第99回普及活動小委員会について御報告を申し上げます。
今回の小委員会でございますが,議事次第は資料5にございますけれども,最近のユネスコ活動といたしまして,第39回ユネスコ総会,それから第4回のESD日本ユースカンファレンス,第9回のユネスコスクール全国大会について,それぞれ御報告を頂きました。また,次期ユネスコ中期戦略の策定に向けたポイントにつきまして事務局の方から説明を頂戴いたしました。ただ,今回の小委員会のメインでございますが,各地のユネスコ活動の実践をされている5名の委員からそれぞれの実践,それと課題につきまして御報告を頂き,議論を行ったところです。委員からの報告とそれに続く議論では,それぞれの苦労話も含めて様々なご意見を頂戴いたしましたが,代表的なものを紹介いたしますと,全国多くのユネスコ協会が委員の高齢化などの問題を抱えている中で,若者により魅力を感じてもらえるような活動を考えながら,青少年,ユースと協力をして,このユネスコ活動を盛り立てていきたいというような意見。それから,ESDの普及につきまして,ユネスコスクールやユース・コンファレンスの成果もありまして,若い世代への広がりを見せている一方で,社会教育や生涯教育を通じたユース以外の層への拡大にはまだ課題があると。そういう中で,その課題解決に向けて民間のユネスコ活動が役割を果たしていけるのではないかと,そういう御意見。それから,SDGsとESDの関係につきましても,一般の方だけでなく民間ユネスコ活動に携わっておられる方の間でも十分に理解が進んでいるとは言えないというような状況の中で,一層の普及促進が求められるというような意見。そういうような御意見を頂戴いたしました。
会議全体を通じまして,各地のユネスコ協会が抱える課題とその解決に向けた方策,あるいは民間ユネスコ活動のユネスコ事業への貢献についての問題意識等を共有できたのではないかと思っております。それから,川端統括官を始め文科省事務局の皆さんとも認識を深め合うことができたのではないかというふうに思っておりまして,そういう意味では有意義な議論の場になったのではないかと思っております。
以上でございます。
【安西会長】
どうもありがとうございました。
それでは,小委員会に幾つか御報告いただきましたけれども,御質問,御意見があれば頂ければと思います。
【松浦特別顧問】
今のいろいろな小委員会の報告,興味深く拝見させていただきまして,最後に報告がございました民間ユネスコ運動との関係,特に若い人たちをどのようにしてユネスコ民間運動に引き付けるかという点は非常に重要な点だと思います。私もいろいろなところに招かれてユネスコ協会の方々との懇談や講演をしていますけれども,そのとき申し上げているのは,やはり若い人を引き付けるためには,若い人に魅力のあるプログラムを作る必要があります。一方で,どこかの議題にも上がっておりましたと思いますが,今,日本ではユネスコスクールが全国で1,000を超えました。一時期は500を目標にして,文科省が推奨した500をあっという間に達成して,次に1,000にしましたら,もう1,000も超えて,世界全体では1万を超えています。ですから,私がユネスコスクールをユネスコ時代に推進した理由の一つは,やっぱり若い頃ユネスコ活動に関心を持って参加してもらえれば,社会へ出てから今度はユネスコ民間運動に参加してもらえるということが狙いであったわけです。日本でも,今日も各地のユネスコ協会の代表の方がいらっしゃるから申し上げるのですが,是非それぞれの地域でユネスコスクールと提携されて,ユネスコスクールの関係者と協会の方が日頃から連携されると,ユネスコスクール出身の方が社会に出てやっぱりユネスコの民間運動の活動に参加してもらえると思いますので,是非その点を念頭に置いていただければうれしいと思います。
以上です。
【安西会長】
ありがとうございました。ほかにはいかがですか。立川委員,お願いいたします。
【立川委員】
ありがとうございます。新規ユネスコチェア事業について御紹介申し上げます。京都大学で開始いたしますユネスコチェアにつきまして,協定締結式のチラシを最後に資料として入れさせていただきました。来週ですが,ユネスコIHP政府間理事会議長のアンドラス・ソロジーナギ博士,ユネスコ水科学部長のブランカ・ヒメネス-シスネロス博士が来日されます。これに合わせまして,オドレー・アズレー事務局長のサインの入った協定書を持って京都大学に来てくださいますので,来週火曜日,2月13日ですが,山極京大総長にお参加いただき寶馨教授の進行により,京都ユネスコチェアの協定締結式を行う予定でございます。
以上,御報告を申し上げます。ありがとうございます。
【安西会長】
ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
今,松浦顧問から,若い方々をもっとということ,また,京都のユネスコチェアのことをお知らせいただきましてありがとうございます。若い人をどのようにこのユネスコ活動にもっと招き入れるかということは大変大きな課題でございまして,ずっと議論を続けております。また是非御意見があれば頂ければと思っております。
ほかにはよろしいでしょうか。ユネスコ協会,またユネスコスクール,それから大学,それから社会のいろいろなセクター,ユネスコにつきましてはいろいろな方々が関わっておられまして,この総会はそれの一番のまとめ役のところでございますので,是非いろいろ御意見を頂ければと思っております。
よろしければ次に行かせていただきます。どうもありがとうございました。
それでは,続きまして,百舌鳥・古市古墳群の世界文化遺産推薦につきまして,文化庁記念物課世界文化遺産室の渡辺室長から御説明をお願いしたいと思います。
【渡辺世界文化遺産室長】
文化庁記念物課世界文化遺産室長の渡辺でございます。私の方からは,百舌鳥・古市古墳群の世界文化遺産登録に向けた推薦につきまして御説明を申し上げます。資料6の1枚目をごらんいただけますでしょうか。
この百舌鳥・古市古墳群につきましては,この資料の左下の地図でございますとか,その下の古墳の分布図にございますように,仁徳天皇陵古墳をはじめとする大阪府内の百舌鳥エリアに,これは堺市でございますが,所在する23基及び右下の分布図にございますけれども,応神天皇陵古墳をはじめとする古市エリア,こちらは羽曳野市及び藤井寺市でございます。そこに所在する26基,全体で45件,49基の古墳から構成されてございます。
本資産につきましては,古墳時代の最盛期,4世紀後半から5世紀後半でございますが,大阪平野に築造されました世界でも非常に独特な,墳長500メートル近くに達する前方後円墳から20メートル台の墳墓まで,大きさと形に非常に多様性を示す古墳群でございます。この資産は,土で造られた建造物の類いまれな技術的到達点を表すものでございまして,墳墓によって権力を象徴した当時の人々の歴史を物語る貴重な証拠として推薦を行うものでございます。
なお,49基の古墳のうち,29基が陵墓となっております。陵墓につきましては宮内庁によりまして静安と尊厳の保持を図りつつ文化財保護法と同等の適切な保存管理が行われてございます。推薦に当たりましては,宮内庁とはしっかりと協議をさせていただいて,今後想定される世界遺産等に係る一連の作業を含め了解を頂いてございます。
2枚目をごらんいただけますでしょうか。これまでの経緯でございます。本資産につきましては,昨年の7月末に文化審議会の世界文化遺産部会におきまして,平成29年度に推薦を行う案件として選定されたものでございます。その後,本年1月16日に世界遺産条約関係省庁連絡会議におきまして提出につきまして了解いただき,更に1月19日にこの推薦書の提出について閣議了解を頂いた上で,今年の1月30日に推薦書をユネスコ世界遺産センターへ提出したところでございます。
今後につきましては,イコモスによる現地調査などの審査,それから勧告を経まして,最終的には平成31年夏の世界遺産委員会において登録の可否が決定される流れとなってございます。
以上でございます。
【安西会長】
ありがとうございました。
文化遺産のことはもう一つありますので,続けさせていただきます。ユネスコ世界無形文化遺産への提案候補の選定でございます。文化庁伝統文化課文化財国際協力室の濱田室長補佐から説明をお願いいたします。
【濱田伝統文化課室長補佐】
御説明させていただきます。資料7をごらんください。まず,ユネスコ無形文化遺産についてですけれども,資料が前後して申し訳ございませんが,資料の一番後ろのページをごらんください。開発等に伴って消失していく無形文化遺産を保護するため,無形文化遺産保護条約が2003年に採択され,2006年に発効しました。リスト化によって具体的な例を示し,無形文化遺産の認知を高め,保護のための意識の向上を図るため,代表一覧表を作成しております。これ以外に国際的な保護を図るための緊急保護一覧表などもありますが,我が国は代表一覧表へ様々な無形文化遺産が登録されるよう提案を続けてきております。
我が国の代表一覧表への登録の現状については,表にありますように,現在21件が登録されています。中国に次いで2番目に多い数です。左下をごらんいただきますと,登録までの流れという欄がございますけれども,毎年審査件数に上限があり,代表一覧表への登録については,登録のない国,少ない国が優先されますので,現在,中国に次いで登録件数が多い我が国は審査の優先順位が低く,2年に一度,1件の審査保障により枠が確保されているところです。そんな中,表の真ん中より下の方,提案中というところにあります「来訪神:仮面・仮装の神々」は,昨年3月末に二度目の提出を行い,その結果受領されましたので,今年11月末にモーリシャスで開催されます政府間委員会で審査を受けることになっております。
さて,それで1枚目の資料に戻らせていただきます。今週水曜日,2月7日にこのような報道発表を行いました。文化審議会で今年度提案する案件を御審議いただいた結果,「伝統建築工匠の技:木族建造物を受け継ぐための伝統技術」が選定されたという内容です。この伝統建築工匠の技がどのような経緯で選定されたかにつきましては,2枚目の選定理由のところにありますように,文化審議会ではユネスコに提案したものの未審査のままの案件5件について優先的に提案することとしておりました。そして,この5件について審議を重ねたところ,登録基準の5つの要件を満たし,かつ,現時点で最も準備が整っているものとして建造物修理・木工を中心にグルーピングした伝統建築工匠の技が選ばれたということでございます。
この提案概要の3枚目に,提案概要をお示ししております。少しかいつまんで内容を御説明しますと,伝統建築工匠の技は,社寺や城郭等,我が国の伝統的な木造建造物を維持していく上で不可欠な木工・屋根葺・左官・装飾・畳製作などの高度な技術,技能で国の選定保存技術に選定されている14件を一括して提案するものです。具体的に申しますと,4枚目,別紙2に一覧表示されている保存団体によって技術継承が図られている選定保存技術14件ということになります。選定保存技術とは,文化財の保存のために欠くことのできない伝統的な技術又は技能として文化財保護法に位置付けられているもので,文化財を支える技術として国が保護措置を図っております。今回提案するこのような技術は,これまでなかなか目に見えづらいところで,しかしながらしっかりと継承が図られてきました。無形文化遺産ですので,動画があれば理解がしやすいところなのですけれども,今回御用意できておりませんで申し訳ありませんが,なるべく分かりやすく申しますと,世界文化遺産にも登録されているような法隆寺や姫路城などの木造建造物等が伝え続けられるために不可欠の技術と申しますと少しイメージがつきやすいでしょうか。有形の文化遺産の形ある部分に目が行きがちですけれども,有形を支える無形の技というところに光を当てていきたいところです。
今後の予定ですけれども,1枚目の資料の下の方に記載してございますとおり,今後,関係省庁連絡会議の議を経て,3月末までにユネスコ事務局に提案書を提出することになります。さきに申しましたように,今年,来訪神が審査に掛かりますので,伝統建築工匠の技は2019年の審査を受けることは恐らくできないだろうということで,スケジュールとしては2020年の審査を受けることを見込んでおります。
ユネスコ無形文化遺産の最近の状況ということで,以上,御報告申し上げます。ありがとうございました。
【安西会長】
ありがとうございました。
ただいま,世界文化遺産の推薦と無形文化遺産への提案候補の選定,2つ御報告いただきました。何か御質問,御意見ありますでしょうか。
【松浦特別顧問】
恐縮ですけれども,もう一度発言させていただきたいと思います。今,御報告を非常に興味深く伺いました。いずれもいい案件が選ばれてうれしく思っていますけれども,世界遺産に関しまして是非文化庁にお願いしたいことがございます。私も帰ってきて8年間,いろいろな地方に,先ほども申し上げたようなことで招かれて,世界遺産候補あるいは無形文化遺産候補についていろいろ助言したり意見を求められたりしていますが,世界遺産条約が1972年にできて,日本が参加したのは20年後の92年です。ですから,世界全体ではもう1,000を超えて,そろそろユネスコとしても,あるいは専門家としても抑えなければいけないといい,したがって,審査も厳しくなっていますけれども,日本について言えば,まだまだ有力な案件が各地方にあると私は思っています。
それで,御承知のように最初の頃は文化庁,それから当時の環境庁主導で選んだのですが,2000年代に入って,地方からの意見を聞こうということで,地方から案を出して,専門家が議論して,暫定リストに載せるもの,それに載せないもの,2つのカテゴリーに分けましたけれども,それがもう10年前に終わっています。ですから,今,暫定リストに残っている,当時,つまり10年前に選んだものは,非常に数少なくなっておりますが,載っていないもので今残っているものよりもはるかにいいものが幾つも私はあると思っています。
ですから,地方の方々が非常に主張しておられますけれども,早く次の暫定リスト作成,つまり追加作成,これは是非地方から案件を出してもらって,専門家ベースで議論して決めてユネスコに登録するという手続を進めていただくようにお願いしたいと思います。
以上です。
【安西会長】
ありがとうございました。ほかにはよろしいでしょうか。
文化遺産のことはいろいろ話題にもなりますけれども,是非いい方向にたくさん出るといいと思います。よろしくお願い申し上げます。
それでは,最後の報告でありますけれども,事務局からサステイナビリティ・サイエンスに関するガイドライン,SDGsの最近の動き,平成30年度ユネスコ関係予算(案)について説明をお願いいたします。
【小林国際戦略企画官】
それでは,資料8-1と8-2をご覧いただければと思います。サステイナビリティ・サイエンスに関するガイドラインがユネスコによって作成されました。御承知のとおり,サステイナビリティ・サイエンスは世界的規模あるいは地域的な課題に対して自然科学,社会科学,人文科学,あるいは芸術といった分野が相互に協力して,よりよい解決策を見いだすために協力するための研究活動や教育活動を指しております。日本ユネスコ国内委員会で,このサステイナビリティ・サイエンスというのを近年推進してまいりまして,平成23年にユネスコに対しての提言を行って以降,各地でシンポジウムなどを行ってきたところでございます。
このたび,日本の財政支援も受けながら,ユネスコにおいてサステイナビリティ・サイエンスに関するガイドラインが作成されまして,資料8-1はこれを紹介するリーフレットでございまして,資料8-2でサステイナビリティ・サイエンスに関するガイドライン本文がございます。これを基にさらなるサステイナビリティ・サイエンスの世界への普及が図られることとなっておりますので,御報告をさせていただきます。
続きまして,SDGsに関する最近の動きといたしまして,資料9-1をご覧いただきますと,SDGsに関するアクションプラン2018という資料がございます。1枚おめくりいただきますと,SDGsの実施に関しましては,一昨年の12月にSDGsの実施指針が策定されたところでございますが,昨年12月のSDGs推進本部,これは安倍総理大臣が本部長を務めているものでございますけれども,こちらにおきましてSDGsアクションプラン2018というのが公表されました。これは2018年においてSDGsに関して進めていく国内の具体的な施策に関するものでございまして,1枚おめくりいただきますと,SDGs実施指針の概要ということで,これが一昨年のSDGs推進本部において決定されたことでございます。8つの優先課題と具体的施策というのがございますけれども,その丸1であらゆる人々の活躍の推進ということで,その中に教育の充実ということも含められておりますし,また,科学技術イノベーションなども他の項目で含まれているところでございます。
更に1枚おめくりいただきまして,このSDGsの推進を通じて企業・地方・社会を変革し,経済成長を実現するとともに世界を展開すると。これ以降がこの2018アクションプランの具体的内容でございまして,SDGsと連動するSociety5.0の推進,それからSDGsを原動力とした地方創生,強靱かつ環境に優しい魅力的なまちづくり,SDGsの担い手として次世代・女性のエンパワーメントが掲げられております。その中でも特に3つ目の次世代・女性のエンパワーメント,この辺りが教育にも関係してくるところでございます。
1枚おめくりいただきますと,あらゆる人々の活躍推進という優先課題1に関する主な取組がここに掲げられておりまして,下の方に次世代の教育振興が掲げられていますけれども,この一番右のSDGsの達成に資する人材育成の強化ということでアジア太平洋地域におけるユネスコの教育及び科学分野の信託基金やESDの推進及びユネスコ活動に係る国内事業者への補助等の取組を通じてSDGs達成のための人材育成を強化していくということがここに掲げられています。
続きまして,資料9-2をご覧いただければと思いますけれども,先ほどのSDGsアクションプラン2018が決定されたSDGs推進本部会合が開催されました昨年12月26日のこの会合の後に,第1回ジャパンSDGsアワード授賞式というのが官邸で執り行われました。このジャパンSDGsアワードを受賞された団体がそこの1枚目に掲げられておりますが,その中でSDGs推進副本部長賞が金沢工業大学に,また,SDGsパートナーシップ賞が国立大学法人岡山大学,江東区立八名川小学校に授与されたところでございます。各受賞団体の取組内容につきましては,その後のページにございますので御参照いただければと思いますけれども,特に江東区立八名川小学校につきましては,ユネスコスクールの一つでございまして,ESDの教育理念を共有し,具体的な指導方法を共に開発,実践していったことが評価されております。
続きまして,資料10をご覧ください。こちらで平成30年度の国内外のユネスコ活動の充実に関する来年度の予算(案)について掲げておりますので,これについて御説明させていただきます。
御承知のとおり,ユネスコにおきましてはSDGsの採択を受けまして,ユネスコの次期事業予算(案)におきましてSDGsの貢献を意識した構成とするなど,その達成に向けてあらゆる分野で積極的な取組を行っているところでございます。これを踏まえまして文部科学省では,これまで行ってきたユネスコ関係事業のうち,ユネスコへの信託基金,左の赤い部分でございます。それから,真ん中の紫の政府開発援助ユネスコ活動費補助金,それから右側のグローバル人材の育成に向けたESDの推進事業の3事業をSDGsへの貢献という観点から整理,拡充いたしまして,平成30年度の概算要求を行ったところでございます。これら3つの事業につきましては,昨年12月22日に閣議決定されました政府予算案におきまして,右上にございますとおり,平成29年度と比較して5,000万円の拡充ということで閣議決定されております。
個別に御説明しますと,まず左の赤い部分のユネスコへの信託基金につきましては,地域事務所において実績のある教育科学の個別分野の事業に加えまして,それらの事業の成果をSDGs達成に向けて体系的に行う事業や,分野間の連携を通じてSDGs達成に寄与する事業を実施するために,信託基金の拡充を図ったところでございます。
また,真ん中の部分でございますけれども,大学等の研究機関やNPO法人等の民間団体が開発途上国との交流,協力により行うユネスコ関係事業を対象としてきた政府間開発援助,ユネスコ活動費補助金という形で従来やってきたわけでございますけれども,これをSDGsのゴール達成に資する事業を新たに対象とするとともに,SDGsの理念を踏まえまして開発途上国のみならず先進国を含む全ての国,地域との連携を対象にするということで拡充を図っているところでございます。
さらに,一番右のオレンジの部分でございますけれども,地域におけるコンソーシアム形成を通じまして,ESDの実践,普及及び国内外におけるユネスコスクール間の交流を促進してきましたESDコンソーシアム事業につきまして,ESDの更なる深化を図り,持続可能な地域づくりの担い手を育成することで地域におけるSDGs達成を教育の面から支えることを目的として事業の拡充を図ったところでございます。
このように文部科学省においても国内外のユネスコ活動への支援を通じて,SDGsの17のゴールの達成に積極的に貢献していきたいと考えております。
説明は以上でございます。
【安西会長】
ありがとうございました。何か御質問,御意見ありますでしょうか。よろしゅうございますか。
それでは,議題の3に移らせていただきます。議題3は,次期ユネスコ中期戦略に向けての議論ということでございます。次期のユネスコ中期戦略の策定につきまして,これから議論がされていくわけでありますけれども,そのための情報提供ということになりますが,事務局から説明をお願いいたします。
【小林国際戦略企画官】
それでは,資料11をごらんいただければと思います。
ユネスコでは,2年に一度のユネスコ総会の際に議論される2か年の事業予算(案),これはC5と言っておりますけれども,これのほかにユネスコの活動に関する戦略的見通しや事業の枠組みを定めた8か年の戦略を策定いたします。これはユネスコの事業運営の基本となる文書でありまして,事業予算案の策定や方針に当たっても参考とされる文書でございます。また,この中期戦略は総会で議題となる際に付される議題番号からC4というふうに呼ばれております。現在の中期戦略は2014年から2021年までの8か年のものが動いておりまして,内容としては「平和」と「持続可能な開発」と,この2つが大きな柱である包括目標となっておりまして,その実現のために9つの戦略目標が設定される内容となっております。
1枚おめくりいただきますと,現行の中期戦略の構造が示されております。例えば,我が国が推進するESDは戦略目標2の「学習者の創造性及びグローバル・シチズンとしての責任の強化」の中に含まれておりまして,それからサステイナビリティ・サイエンスにつきましては,戦略目標5の「平和,持続可能性及び社会的包摂のための国際科学協力の強化」というところに記載されております。また,昨年9月の国内委員会総会でも話題となりました,アフリカとジェンダーがグローバルプライオリティーとなっているところでございます。
現行の中期戦略は,戦略の開始される2回前のユネスコ総会で最初の議論が行われておりまして,これに従うと,2019年に開催される次のユネスコ総会では次期中期戦略策定に向けての加盟国協議が開始されることとなっております。これを踏まえまして,本ユネスコ国内委員会におきましては,今後1年程度にわたりましてユネスコの事業の方向性を決める中期戦略C4に日本としてどういった事項を盛り込んでいくべきかの議論を行いたいというふうに考えております。その際の参考といたしまして,議論する際の論点例というのを1枚目に示しております。そこに論点例といたしまして,例えば2030年を期限とする持続可能な開発目標,SDGsの達成に向けたユネスコの事業体制について,それからSDGsの達成に向けて我が国が貢献するイニシアチブの提案について,ESDの一層の推進,科学事業間の連携の促進,それからユネスコ活動の一層の普及,推進のための民間のユネスコ活動のさらなる活性化について,こういった例を挙げさせていただいております。
御意見を頂ければ幸いに存じます。以上でございます。
【安西会長】
ありがとうございました。何か御質問,御意見ありますでしょうか。細谷委員,お願いいたします。
【細谷委員】
ありがとうございます。
次期C4の策定は非常に息の長いプロセスです。今の時点で基本的に留意した方がいいと思う点を幾つかと,各論はまだこれからですけれども,総論的なレベルでの方向性について,何点か簡単に意見を申し上げたいと思います。
1つ目は,アズレー新事務局長はまだ4年近くは前の事務局長時代に作ったC4を引き継いでいく必要があり,次期C4が自らのビジョンを盛り込める初めてのC4になります。また,今や一番の拠出国になっている日本が,新事務局長と連携しながら日本のビジョンを盛り込んでいくという意味でも非常に重要です。
2番目は,現行のC4は策定され始めたのが今からもう8年前ですので,それ以来,言うまでもなく世界は激変しております。国連システムにとっては,今はSDGsが走っているということが一番の大きな変化です。次期C4は2029年までですので,アジェンダ2030とほぼ時期が重なります。それを当然まず踏まえる必要があります。また,ユネスコは最近,財政的,政治的に非常に厳しい状況になっていますので,それもやはり踏まえる必要があろうと思います。会長がおっしゃいましたように,今これから長い議論のプロセスが始まるところです。ユネスコ事務局におりました経験から申し上げると,プロセスが徐々に進めば進むほど事務的な案が出来上がってきて,意見を出しても次第に反映されにくくなるという現実があります。一番初めの時点でこそ,各論も必要ですけれども,総論的な大きなレベルで日本国内委員会としての意見を出すことが大事だと思います。鉄は熱いうちにたたけということです。
そのような前提でとりあえずの方向性としては,まず世界の激変を踏まえてユネスコ自身がどう新しいレゾンデートルを見いだしていくか,どう生まれ変わるかということを真剣に考えなければいけないと言っても大げさではない状況だと思います。
3番目は,常に言われるように,更にフォーカスをしていかなければいけないということです。選択と集中です。ただ,これはC4になると単純にどの事業はどう切り込んでいくか,どれを選択するかというレベルの問題ではなくて,まさに戦略的なレベルでのフォーカスをし直さなければならないと考えます。
4番目は非常に現実的な問題で,当面アメリカはもう戻ってこないという現実を前提にどう考えるかということです。しかし,長いスパンで考えると,これは目標と手段を入れ替えるような議論にはなりますが,やはりアメリカにはゆくゆく戻ってもらわなければいけない,そのためにはどうすれば良いかということだと思います。アメリカといっても非常に重層的な社会ですので,どの層をターゲットにするかということは当然ありますけれども,アメリカ自身がユネスコに戻ることが自らの国益だと感ずるような環境をどう作り出していくか。これは容易ではありませんが,それがC4を考える際に必要なもう一つの視点だと思います。
非常に総論的なことですが,この機会に申し上げさせていただきました。
【安西会長】
ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
今,細谷委員が言われたとおり,ある程度の時間をかけてユネスコ本部でももちろん議論をしていくわけでありますが,できれば日本としては早めに方向性をユネスコ本部へぶつけるということは必要だと思いますので,特にこの国内委員会におきまして議論を集約していくことはとても役に立つことだと思っております。
ほかにいかがでしょうか。この議論は今日だけではございませんので,今後も続けて行うことになるかと思います。よろしいでしょうか。
それでは,ユネスコ地域戦略の策定につきましては,今後ともここでも議論を深めていくことになりますので,よろしくお願い申し上げます。
こちらで用意しました議題は以上であります。特に報告,指示すべき案件はほかによろしいですか。皆様の方から何かありますでしょうか。まだ時間が多少ございますので,何か全体的なことでも結構ですけれども,御意見,御質問があれば。総会は何回も開かれませんので何かあればと思いますが,よろしゅうございますか。岡田委員,お願いいたします。
【岡田委員】
ありがとうございます。岡田でございます。
先ほどの中期戦略にも関係することかもしれませんが,アメリカの脱退の影響といいますか,それが実際にユネスコの最近,あるいは当面の事業に対してどんなふうな具体的な影響が出ているのか。財政の問題あるいは事業の制限の問題等あるかと思いますけれども,その辺,川端統括官かどなたかから最近の状況についてもう少し具体的なお話を伺えれば有り難いと思います。
【川端国際統括官】
アメリカの脱退については,脱退するということを書面で出して,それが正式なものとなっているわけですけれども,脱退そのものはもう少し先,今年1年は脱退せずに加盟国でいるということとなります。それから,アメリカは以前からもう分担金は出していないので,そういった意味では分担金を止めた段階から財政面では非常に苦しい状況にユネスコ全体が追い込まれているということがございます。細谷委員がおっしゃっているように選択と集中,それから選択されたものについても予算の縮減,あるいは管理面,人件費,職員の雇用,そういったところまで影響が既に及んでいるということに加えて,来年からは本当に脱退することになって,総会での投票権はなくなっていくということですから,財源だけ考えれば今と変わらないわけですけれども,やはりユネスコという世界の平和を標榜する組織にあって,世界最大ともいえる国がいなくなるというのは国際機関としては非常なダメージがあるというふうに認識されていると思っております。
そういった意味で,日本あるいは必然的にほかの経済大国の影響力も出てくるでしょうし,日本はそういう意味では更に貢献をしていかなければいけない立場に立った,リードしていかなければいけない立場に立ったというふうに考えております。
【松浦特別顧問】
少し一言付け加えさせていただきます。
まさに私が1999年の11月にユネスコの事務局長に当選したとき,幾つか具体的な目標を掲げました。その1つがアメリカのユネスコ復帰です。御承知のように1984年にレーガン大統領,共和党の大統領のときに脱退しました。一番大きな理由はユネスコの政治化ですけれども,今回も同じ理由なので,他にも付随的な理由もありますけれども,やはり今言われたように,長期目標としてやっぱりアメリカに復帰してもらうというのは絶対掲げておくべきだと思いますが,短期的にはそれは非常に難しい。しかしながら,やはりアメリカの社会でまだまだユネスコに対する関心を持っている組織,団体,個人がいますから,そういう人たちとユネスコは何らかの形で提携していく。私がやったのは裏返しで,そういう人たちと提携して,アメリカの世論を盛り上げ,そして議会に働き掛けて,議員にも働き掛けて,そして最終的に行政府に決定をしてもらったというプロセスをとったのですけれども,それは私が当時考えたよりも早く,4年で達成できました。いずれにしましても,まだまだ私が見ると,今のトランプ政権の外交政策全体は不確定要素が多いですけれども,今回のユネスコ脱退決定に対しての批判もかなりあると聞いています。ですから,まだまだユネスコに関心を持っている組織や団体,個人とユネスコの提携,それは更に言えば今のメンバー国,日本を含めて,そういうユネスコの新事務局長の努力を支援していく。ただ,財政的にはいずれにせよ厳しい状況が続きますから,やっぱりユネスコのような重要なグローバルな課題をマネジメントしている組織にアメリカが入っていないというのは大変な損失です。ですから,長期目標としては掲げられると思います。そして,とりあえずはそういういろいろなレベルに提携ということしか,少なくともトランプ政権が続く限りは残念ながらそれしかないんじゃないかと,私も従来の経験を踏まえてそう感じています。
【安西会長】
ありがとうございました。
この件は後ろへ戻ることはできないので,やはり特にこれから日本がどういう役割を,どういうふうに果たしてリードしていくのかということは大事なのではないかと思います。これは国内委員会だけではございませんけれども,日本政府も含めて是非やはり,ある意味戦略的に動いていただければと思っております。
どうもありがとうございます。ほかにはよろしいでしょうか。
それでは,議題は以上でございますけれども,一方,退任される委員の方がいらっしゃいます。中西委員でいらっしゃいますが,一言御挨拶を頂ければと思います。日本ユネスコ国内委員会委員の皆様は,普通は12月1日の発令なのでありますけれども,中西委員におかれましては,今年の5月31日で退任ということになっております。中西委員,よろしいでしょうか。御挨拶をお願いいたします。
【中西委員】
中西でございます。昨年,普及活動小委員会の委員長を仰せつかりまして,ほとんどお役に立てないまま非常に申し訳なく思っております。ただ,私個人としましては,非常に貴重な経験をさせていただいたなと思っていまして,もともとローカルな地方の人間ですので,こういう会議の場に参加させていただくこと自体,非常に得難い経験をさせていただいたなと思っています。
最近,日本の気象条件が本当に変わってきたなということを痛感いたしておりますが,台風やら大雨やら大雪やら,本当に地震に加えていろいろな自然災害が起こっておりますけれども,そういう状況の中で,この国内委員会とユネスコ活動の発展をお祈り申し上げます。
本当にお世話になりました。ありがとうございました。(拍手)
【安西会長】
中西委員,どうもありがとうございました。今後ともいろいろ御指導いただければと思います。
これで終了でございますけれども,一言,新しい方もおられるので申し上げておければと思いますが,今日ありましたようにユネスコ国内委員会は本当に多岐にわたるテーマに関わっておりまして,委員の皆様も本当にいろいろなセクターからおいでになっておられます。また,総会も毎月やるというわけにはなかなかいかない状況もございます。そういう中で,特にいろいろなことがありますので,報告をなるべく詳しくやっていただいております。その結果として,回数のこともありまして,細かく議論をするということはなかなかこの総会ではできにくいところがございます。
つきましては,是非,この場でなくても結構でありますので,事務局の方へ気がつかれたこと,また,こうした方がいいよということがございましたら遠慮なくおっしゃっていただければと思いますので,そのことを特にお願いをさせていただきます。これで報告が少ないと,これはまた何をやっているのか分からないということになりますので,なるべく詳しく説明はしていただくようにしております。また,こういう運営の仕方も含めまして,御意見がございましたら,どうぞ御遠慮なく事務局の方へお寄せいただければと思います。そのことをお願い申し上げておきたいと思います。
それでは,最後に事務局から事務連絡をお願いします。
【鈴木国際統括官補佐】
失礼いたします。委員の皆様の中で,本日配付いたしました資料の郵送を御希望の方がいらっしゃいましたら事務局から郵送させていただきますので,お手元の郵送希望の1枚紙に必要事項を御記入の上,資料を机の上に置いてお帰りいただければと思います。
以上です。
【安西会長】
それでは,これで閉会とさせていただきます。どうも御多忙のところを貴重な御意見を頂きましてありがとうございました。

── 了 ──

 

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