日本ユネスコ国内委員会総会(第139回)議事録

1.日時

平成28年7月29日(金曜日)14時00分~16時00分

2.場所

東海大学校友会館 阿蘇・朝日の間

3.出席者(敬称略)

〔委員〕
 安西祐一郎(会長)、古賀信行(副会長)
秋永名美、安達久美子、安達仁美、阿部宏史、有里泰徳、礒田博子、井手明子、稲葉カヨ、猪口邦子、宇佐美誠、榎田好一、及川幸彦、岡田元子、岡田保良、長有紀枝、加藤淳子、川井郁子、河内順子、黒田一雄、郡和子、今みどり、西園寺裕夫、重政子、島谷弘幸、高尾初江、中西正人、西尾章治郎、二瓶和敏、早川信夫、見上一幸、観山正見、横山恵里子、吉見俊哉

〔欠席・委任〕
 青野由利、伊東信一郎、植松光夫、内永ゆか子、内山田竹志、相賀昌宏、小此木八郎、黒田玲子、小林真理、妹島和世、立川康人、寺本充、那谷屋正義、丹羽秀樹、野村道朗、濵口道成、林梓、平野英治、松野博一

〔外務省〕
下川眞樹太 国際文化交流審議官

〔文部科学省〕
義家弘介 文部科学副大臣、匂坂克久 大臣官房国際課長

〔事務局〕
松浦晃一郎 日本ユネスコ国内委員会特別顧問(前ユネスコ事務局長)、森本浩一 日本ユネスコ国内委員会事務総長(文部科学省国際統括官)、福田和樹 日本ユネスコ国内委員会事務次長(文部科学省国際統括官付国際戦略企画官)、その他関係官

4.議事

【安西会長】  それでは、第139回日本ユネスコ国内委員会総会を始めさせていただきます。御多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
まず事務局から定足数の確認をお願いします。
【野田補佐】  本日は、出席の委員が現時点で32名でございます。委員の過半数が30名以上でございますので、定足数を満たしております。以上です。
【安西会長】  それでは、定足数が満たされているという報告がありましたので、開会とさせていただきます。
国内委員会の規程に基づきまして、本日の総会は、一部の議題を除いて、傍聴の希望者に対して公開をさせていただきます。また、御発言につきましては、非公開部分を除いて、そのまま議事録に掲載されて、ホームページ等で公開されることになります。よろしくお願いいたします。
また、本日の会議には、大変御多忙の中を、義家文部科学副大臣に御出席いただいております。外務省の関係官にも出席を求めさせていただいております。そして、松浦日本ユネスコ国内委員会特別顧問にお越しいただいております。
それでは、まず、義家文部科学副大臣から御挨拶を頂ければと存じます。よろしくお願いいたします。
【義家副大臣】  御紹介を賜りました文部科学副大臣の義家でございます。委員の皆様方におかれましては、日頃より我が国のユネスコ活動に関しての御助言・御協力を頂いておりますことに、厚く御礼を申し上げます。本日は、馳文部科学大臣が公務のため欠席しておりますので、私から一言、御挨拶を申し上げさせていただきます。
近年、ユネスコにつきましては、先頃、我が国の国立西洋美術館が新たに登録された世界遺産や無形文化遺産に加え、「世界の記憶」、持続可能な開発のための教育及び持続可能な開発目標の推進など、様々な課題に対応することが必要になっております。とりわけ「世界の記憶」については、対話を重んじ、公平性や透明性が確保された事業になるよう、現在、政府として懸命に取り組んでいるところでございます。また、持続可能な開発目標については、安倍総理を本部長とする持続可能な開発目標推進本部が今年5月に設置されまして、我が国として取り組むべき指針を年内に取りまとめることとしております。
本日は、このようなユネスコを巡る状況を踏まえ、今後のユネスコに対する我が国としての方針や、国のユネスコ活動の推進方策等について活発な御議論を頂くとともに、我が国の国際的なプレゼンスを高めることができるよう、積極的に御提言いただきますようお願いを申し上げまして、私の挨拶とさせていただきます。本日は、どうぞよろしくお願いいたします。
【安西会長】  ありがとうございました。義家副大臣には、大変御多忙の中、御挨拶いただきました。次の御予定がおありになりますので、ここで御退席になります。どうもありがとうございました。
(義家副大臣退席)
【安西会長】  それでは、続きまして、本日の配布資料について不足等ございましたら、会議の途中でも構いませんので、挙手で事務局までお知らせいただければと思います。資料の説明は、その都度にさせていただければと存じます。
また、審議の前に、今年の2月1日に開催されました前回の国内委員会総会以降、委員・事務局に異動がありましたので、事務局から報告をお願いします。
【野田補佐】  御報告申し上げます。国内委員・副会長でございました羽入佐和子委員が、5月31日付で退任されております。この4月に就任されました国立国会図書館長の業務との兼務が難しいという理由で、御本人から御退任の申し出があり、御退任されることになりました。
このほか、事務局としまして、文部科学事務次官前川喜平が6月21日付で就任しております。また、同じく事務局としまして、文部科学省国際統括官森本浩一、間もなく到着の予定でございますが、6月17日付で就任しております。また、外務省では、下川眞樹太国際文化交流審議官が2月2日付けで就任してございます。
以上でございます。
【安西会長】  ありがとうございました。新しい委員の方々にも、今後ともよろしくお願いを申し上げます。
それでは、議題に入らせていただきまして、まず議題の1、日本ユネスコ国内委員会の活動に関する報告についてということでございますが、最近の活動について、まず事務局から説明をお願いいたします。
【福田国際戦略企画官】  失礼いたします。資料の1から8を、それぞれ御説明させていただきたいと思います。
まず冒頭、資料1の1枚ものでございます。先日開催されました第498回運営小委員会の概要ということでございます。まず、ここ最近のユネスコの活動に関する御報告を事務局より差し上げ、そしてその後、様々な意見交換が行われたということでございます。この後、また同様の内容を説明いたしますので、割愛させていただきたいと思います。
そして、先ほど副大臣からの御挨拶にもありましたとおり、SDGs、持続可能な開発目標に関しまして、事務局より同じく御報告を差し上げ、そして議論を踏まえまして、一番最後の段落にございます運営小委員会の下に「持続可能な開発目標(SDGs)推進特別分科会」を設置することにつきまして、全会一致をもって承認を頂いたということでございます。このSDGsの詳細につきましても、また追って御説明、そして御審議を頂きたいと考えております。
引き続きまして、資料の2、第199回ユネスコ執行委員会の結果について御報告させていただきます。本年4月にパリのユネスコ本部で開催されました執行委員会に関する報告ということでございます。まず1枚目のところにございますけれども、各国の代表演説の中で、我が国の佐藤大使の方から以下のような発言を行ったというものでございます。詳細の方は割愛させていただきたいと思います。
次の2ページをお開きいただきたいと思います。2ページで「(2)総会採択事業」、すなわち、これまでに既に採択されている事業の実施に関する事務局の報告というものがユネスコから行われたということでございます。この中でも、真ん中の辺りにございますけれども、SDGsに呼応しユネスコの科学分野のビジビリティーを高めていくことが重要であるといったようなことを我が国からも発言したところでございます。また、その下のポツにございますけれども、SDGsの策定を踏まえ、これに対応した施策を実施していくことが重要であるとの見解が、他の国からも示されたということでございます。
もう1点、御紹介を差し上げたいと思いますのが、次の3ページの下の方を御覧いただきたいと思います。この中で「(7)「世界の記憶」事業の更なる改善」という議題がございました。先ほど副大臣からもございましたけれども、我が国からの働きかけなどを踏まえ、以下の内容に関する決議が全会一致で採択されたというものでございます。すなわち、専門家による本事業、この制度の見直し作業、これを執行委員会としても歓迎するということでございます。それから、ユネスコのトップである事務局長に対して、「世界の記憶」の登録を審査する専門家集団であります国際諮問委員会が行っている見直し作業の最終報告書を加盟国に配布することを要請しました。また、同じく事務局長に、この見直し作業を執行委員会に適切に共有するよう要請したというものでございます。こういったことが、執行委員会で行われたというものでございます。
次に、日本国内における取組状況について、いくつか御報告させていただきます。まず、資料3、我が国における「持続可能な開発のための教育(ESD)に関するグローバル・アクション・プログラム」実施計画、ESD国内実施計画というものでございます。ESDについては既に御承知かと思いますけれども、ユネスコにおいて策定されたグローバル・アクション・プログラムを国内でどのように実施していくかということに関しまして、関係省庁の合意の下、実施計画を定めたというものでございます。詳細については割愛させていただきたいと思います。
次に、資料4でございます。小さな紙の冊子になっているもので、「ESD推進の手引(初版)」というものでございます。ESDにつきましては、これまでも各委員の御審議を頂きながら、様々な取組を進めてきたわけでございます。これを学校教育において具体的にどのように進めていくかという、指導資料のようなものが、既に民間などでは様々なものが発行されておりますけれども、国においてそういったものを発行したことというのはございませんでした。今般、こうした状況を踏まえまして、また、昨年のESDに関する特別分科会の提言を踏まえて、国においてこういったものを策定したというものでございます。こちらも詳細については割愛させていただきたいと思います。
次に、資料5、表紙が英語になっておりますけれども、「Kurashiki Declaration」、倉敷宣言というものでございます。これは本年の5月14日及び15日に岡山県倉敷市において開催されたG7教育大臣会合の成果文書でございます。こちらも中身については非常に大部にわたるものでございますけれども、教育の果たすべき役割でありますとか、あるいは多様性の尊重でありますとか、そういった、これからのグローバルな社会において求められる教育の在り方について、G7としてどのように進めていくかということについてまとめられているというものでございます。先ほどのSDGsに関しても、様々な記載というものがございます。
次に、資料6でございます。これは、教育大臣会合が行われた直後に茨城県つくば市において5月15日から17日に開催されました科学技術大臣会合の成果文書である「つくばコミュニケ」の仮訳を配布させていただいております。こちらにおきましても、近年の科学技術を巡る状況などを踏まえて、G7として取り組むべき役割について、様々な形でまとめられているというものでございます。
なお、このG7の教育大臣会合、それから科学技術大臣会合は、その重要性というものに鑑みまして、来年はいずれも議長国であるイタリアにおいて開催するということも、併せて決定されているということでございます。
次に、資料の7でございます。資料7につきましては、「国内委員会文化活動小委員会ユネスコ記憶遺産選考委員会設置要綱の改正について」という表題での報道発表資料を配布させていただいております。経緯につきましては、先ほどありました「世界の記憶」でございますが、御承知のとおり、これまでは「記憶遺産」と称していたものでございますけれども,資料7の四角囲みの下のところに、「参考」と小さな字で記載されておりますけれども、その正式名称は、英語で「Memory of the World」とされているところでございます。この正式名称、「Memory of the World」というのを直訳すれば、「世界の記憶」ということになるわけでございますけれども、そういった訳の在り方ですとか、そういった事情に鑑みまして、このたび、「記憶遺産選考委員会」と称していた名称につきまして、「世界の記憶選考委員会」に改めることについて、この選考委員会を設置した文化活動小委員会の委員の方々の御了解を頂いて、設置要綱を改正したというものでございます。
このことを踏まえまして、文部科学省といたしましても、「ユネスコ記憶遺産」とこれまで称してまいりましたけれども、その日本語の名称について、今後、「世界の記憶」との名称を用いることといたしております。こちらが資料7でございます。
そして最後に、資料8でございますが、こちらは、その他に様々な取組が国内外において行われておりますけれども、これらの取組につきまして、定例でございますけれども、「我が国のユネスコ活動について」ということで、まとめさせていただいております。こちらも説明の方は割愛させていただきたいと思います。
以上でございます。
【安西会長】  ありがとうございました。今の御報告について、御質問、御意見あれば頂ければと思いますが、その前に、松浦特別顧問がいらしておられますので、ユネスコの事務局長として長くお務めになった松浦特別顧問に10分ほどお話を伺いまして、それから皆様から御質問、御意見を頂くようにしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【松浦特別顧問】  それでは、10分お時間頂きましたので、3点に絞って、ここ半年のユネスコの動き、更には日本とユネスコの関係の動きについて、私が感じたことを申し上げたいと思います。
第1点はユネスコ自体です。私は3月に他のことでパリに参ったとき、ボコバ事務局長と一対一で食事しながらいろいろお話をしましたし、さらに、先ほど御紹介あった5月のG7の教育大臣会議のときに彼女が参りましたので、その前に、国連大学の学長もおられましたけれども、ほぼ一対一でじっくりお話ししました。それから、6月にパリに行ったとき、ちょうど彼女が海外出張中で、ナンバー2以下の幹部といろいろお話ししました。
そこでまとめて申し上げたいのは、皆様重々御承知で、前々から私も申し上げていることですが、今、ユネスコ全体は、アメリカが分担金を22%止めている。それから更に言えば、余り大きく報道されていませんけれども、拠出金も私のとき大分増やしたんですが、止めているということで、他の先進国も拠出金を少し絞っているということもありまして、非常に財政的に難しい状況です。残念ながら、それがユネスコのスタッフの活動を、更にはモラルの方にも影響を与えて、しっかりやるべきことはやってはおりますけれども、かなり難しい状況にある。
それに加えて、今、皆さんも新聞で御覧のように、私の後任のボコバ事務局長が、国連の事務総長候補として立候補しています。もちろんこれは彼女はしっかり分けて対応しておりまして、ユネスコの事務局長としての仕事はしっかりやっていく、選挙運動するときは休暇を取ってしますという、はっきりそこは分けておりますものの、前者と選挙との絡み合いが出てきております。
その間、新聞で御覧のように、安保理で1回目の非公式投票がありましたけれども、彼女は有力候補の一人で、10月末までには結論が出ると思います。10月にはちょうど執行委員会が開かれますが、安保理で1名に絞って国連総会に提案して、国連総会で決めるということですが、結局、安保理が最終的な決定権を持っています。
もし彼女が選ばれれば、その可能性は今のところ全く分かりませんけれども、年末に辞めて、来年ニューヨークに移って、まだ彼女のユネスコの事務局長の任期は1年残っていますから、代行が決められる。しかし彼女が選ばれなければ、予定どおり、あと1年、来年の末までユネスコの事務局長としての任務を続ける。こういうことですが、全体としては、今、最初申し上げたような状況で、今、ユネスコが落ち着かない状況であります。
しかし私が強調したいのは、そういういろいろな問題を抱えながらも、ユネスコの幹部及びスタッフは、世界的に今、難しい時期です、こういうときこそ、ユネスコが本来やるべきことをしっかりやらなければいけないという意識を持ってしっかりやってくれているのを、私はうれしく思っています。それが第1点です。
2番目は、日本とユネスコの関係は、先ほどの副大臣、それから今の事務局との御説明で、全体の大きな流れはお分かりいただけたと思いますが、私が非常にうれしく思うのは、今申し上げたような状況にもかかわらず、日本とユネスコは、日本がユネスコに加盟したのが1951年ですから、もう65年になりますけれども、非常に大きなパイプが育っていて、それがどんどん更に大きくなってきているということです。
具体的には、先ほど副大臣からもお話ございましたけれども、世界遺産の分野では、今回、国立西洋美術館の「ル・コルビュジエの建築作品」が登録されました。「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」は、残念ながら今年は申請を取り下げましたけれども、「『神宿る島』宗像・沖ノ島関連遺産群」はこの次に登録されることを目指すということで、是非頑張っていただきたいと思います。そういうことで、毎年日本で世界遺産が誕生し、それがまた日本のプレステージを高め、更には日本の地方創生にもプラスになるということで、うれしく思っています。
それから、無形文化遺産について申し上げれば、本年11月の末にエチオピアのアジスアベバで無形文化遺産保護条約政府間委員会が開催され、待ちに待った地方のお祭り、「山・鉾・屋台行事」33件が審査される予定ですが、去年は残念ながら、既に多くの無形文化遺産が登録されている国は1年待てということで待たされましたものですから、結果的に2年に1回の審議ということになっています。しかしながら、今年、間違いなく多くの地方のお祭りが無形文化遺産になるということで、これは日本全体で非常に盛り上がるということを非常に私は期待しております。
3番目に申し上げたいのは、一番心配なのは、今、事務局からも御披露があった「世界の記憶」です。これが日本とユネスコの関係の、これは前にも何回か触れておりますので詳しく申し上げませんけれども、残念ながら非常に大きな懸案になっております。これが私の見るところ、3つの柱で動いているわけですね。
1つは次の候補案件、その中で日本が出しました群馬県の3つの石碑とか岐阜県の杉原千畝の関係の資料も、こういうのは非常にポジティブな動きですけれども、慰安婦関係が、韓国のNGO、日本のNGOも含めてですけれども、提案をしている。これをどう扱うかというのが、去年の南京事件の登録、あるいはそれ以上の重要度を持って、日本側が真剣に今、これは要するに外務省、文科省が、しっかり今、対応をしているところですけれども、その帰趨が、今後、一連の手続でどのように議論されていくか、一番懸念されているところです。
一番重要なのは、ガイドラインの改訂を、これは国際諮問委員会が中心になって行いますが、早急に進めて、各国の意見を聞いて、そして来年の冬までには最終的に決めて、春の執行委員会には報告する。もちろん執行委員会は報告であって、執行委員会でそれを決めるわけではありませんけれども、そういうスケジュールが決まったことです。
しっかりしたガイドラインを作るということが、今、非常に重要になって、これは馳大臣からもボコバ事務局長にも何度も申し上げて、私も一民間、彼女の前任者ということで、私なりの意見は彼女及び事務局には伝えておりますけれども、いずれにしろガイドラインは、最終的には国際諮問委員会という学者グループ(ただ、日本は入っていませんけれども)で決めるということになっております。
私、これらの動きの中で非常にうれしく思っていますのは、従来日本は、アーキビストと言われる、そういう古文書を扱う専門家が、残念ながら育っておりませんでした。これが最近、文科省がそのような専門家の育成に非常に力を入れております。そういう専門家が、ネットワークを作って常日頃から連絡を取り合うということが非常に重要で、それが今まで日本には欠けておりました。ですから、そういうことをしっかりやっていただくということが、これは短期的にもそうですけれども、長い目で見て非常に重要であると私は思っております。
以上で私の最近の感想を3つにまとめて申し上げさせていただきました。ありがとうございました。
【安西会長】  どうもありがとうございました。それでは、先ほどの事務局からの報告、また、松浦特別顧問から3つコメントを頂きましたけれども、皆様から御質問、御意見頂ければと思います。どなたでも結構です。
安達久美子委員、お願いいたします。
【安達(久)委員】  安達と申します。お示しいただきました冊子についてですけれども、これにつきましては、もう配布を始めているのでしょうか。それで、活用の仕方をどのように考えておられるのでしょうか。そこら辺をお伺いしたいんですが。
【安西会長】  事務局からお願いいたします。
【福田国際戦略企画官】  失礼いたします。配布につきましては、既に全国のユネスコスクールを中心に配布させていただいております。そして実際にそれを使っていただかなければならないということでございまして、私どもの予算で、この手引を活用した研修というものを開始しております。具体的にはいくつかの都道府県で県内の先生方にお集まりいただいて、この手引を用いてどのように授業を進めていくかということを学んでいただいて、そしてそれを現場で活用するということをやっております。
したがいまして、この手引自体も、中を御覧いただくと、やや指導的な要素が多いかと思いますが、これは学校で実際に授業を教える現場の先生というよりは、現場の先生を指導する指導主事という教員出身の公務員が、それぞれの市町村あるいは都道府県の教育委員会におられます。そういった指導主事の先生が、この手引を用いて現場の先生を指導するという立て付けで、まずは作成をしているというものでございます。
併せまして、本年度、ESD先進重点校と呼びますけれども、特にこれを一生懸命取り組んでいこうという学校を指定するという事業も始めております。そういった際にも、この手引を是非活用して、すばらしい実践をしていただきたいということで、現在、調整を進めているところでございます。
以上でございます。
【安西会長】  よろしいでしょうか。
【安達(久)委員】  はい、分かりました。
【安西会長】  河内委員、お願いいたします。
【河内委員】  民間ユネスコ協会の河内と申します。どうぞよろしくお願いいたします。手引についてでございますけれども、民間で、先ほどの御説明で、様々なものが出されているということがありましたけれども、これからは、このように国が初めて出された手引きを、私どもも多分、これを中心に、更に普及活動を進めていくと思います。
その中で、できましたら、手引の19ページのところを見ていただきたいのですけれども、私ども民間ユネスコ協会で具体的にどういう活動をしてきたかと申し上げますと、ユネスコスクールとして認定されますと、学校の方に出向きまして、学校長と御挨拶し、そしてプレートを贈呈しております。また、年の初めには、こういうパスポートを学校に提案いたしまして、ボランティアした実績がきちんと記録され、そしてまた、ボランティアの機会の場を提供するということもしておりますので、できましたら、この19ページのところに、そういう民間・地域のユネスコ活動をしている協会があるというところも、次回の版には書いていただければ、より学校と連携をとり、活動しやすくなると思っておりますので、どうぞ御検討をよろしくお願いいたします。
【福田国際戦略企画官】  失礼します。ありがとうございます。今、委員に御指摘頂いたとおり、この手引は初版ということでございます。したがいまして、またこれを改良して、いい形でまとめていきたいと思っておりますので、是非頂いた御意見も踏まえて検討させていただきたいと思います。ありがとうございました。
【安西会長】  ありがとうございました。他にはいかがでしょうか。
黒田委員、お願いいたします。
【黒田委員】  小委員会でも一度お話しさせていただいたんですが、大変すばらしい手引ができたと思いますし、これが初版ということで、これからもっと、これが良いものになっていくんだろうと考えます。日本語版だけではなくて、将来的には英語版を作成することを視野に入れて、つまり、日本の国内だけではなく海外でも参考にしていただけるようなものにしていくということも御検討いただければなと思っております。
それからもう1点、先ほど御説明いただきました倉敷宣言ですけれども、非常にいいものができていると思うんですね。中に、特にDiversity Educationということで、多様性と教育についてのところがあります。昨今の国際情勢の中で、こういった多様性が非常に重要だと。それも、そのクオリティーを高めるために重要だという書き方で書いていただいていること、非常に時宜を得た形になっておりまして、宣言だけではなくて、こういったものが何とかフォローアップされるような仕組みを考えていければと思います。
【福田国際戦略企画官】  失礼いたします。手引の英訳につきましても、是非検討させていただきたいと思っております。既にこういったものを作成した旨はユネスコの本部の方にも情報提供して、ユネスコ本部のホームページでも各国の方に紹介を頂いているところでございます。また、ユネスコにおきましても、これに呼応するような形で、いろいろな資料を今作っているということでございます。正にグローバル・アクション・プログラムの中間年に向けてということでございますので、そういった英語で発信するということを、是非ユネスコ本部と連携しながら進めていきたいと思っております。
また、倉敷宣言のフォローアップでございますけれども、委員から御指摘いただいたとおり、まさしく重要な点であると思っております。現在、これを文部科学省としてどのように進めていくか、そして、当然、フォローアップしていくためには、そのための様々な資源というものもの必要になってくるということでございまして、併せて検討を進めているところでございます。
【安西会長】  他にはいかがでしょうか。
猪口委員、お願いいたします。
【猪口委員】  ありがとうございます。この手引について、非常にハンディでいいものができたと思っておりますが、今、英語版の話もありましたが、この倉敷宣言を見ると、日本語と英語と一緒のところになっていて、ESDやユネスコスクール、そういうことに興味持つ若い世代は、英語での発信のときに使う語彙について、便利です。教える方も、もともとどういう国際法的な文章からこういう活動に発展しているのかということを伝えるきっかけにもなると思います。完全な英語版作るのも重要ですけれども、この日本語版の改訂のときに、英語の何か囲みとか、例えばもともとのESDの英語の文章から転用している文章については、その対訳というか、英語版の部分も文章の中にパラグラフで書き込むとか、何かそういう工夫をすると、英語で発信するという将来世代の課題について役立つと思います。
今後の課題のSDGsの中で、教育を重視するということに非常に賛成ですけれども、その場合、我が国の教育において、ESDやユネスコスクールとの関係で、英語での発信力を日本の子供たちが強化していくというきっかけを作る、そういうユネスコスクールやESDの活動の展開であってほしいと思います。
【安西会長】  ありがとうございました。これはよろしいですか。
【福田国際戦略企画官】  失礼します。ありがとうございます。是非委員の御指摘を踏まえて検討したいと思います。その上で、日本語を英訳に訳する際、当然、日本語の特有の表現、あるいは日本の学校文化に基づいた記載というのを、どのように英訳していけば伝わるかという点にも、是非意を配しながら進めていきたいと思っております。
例えば日本の場合、大学で学部という言われ方をいたしますけれども、この学部というのをどのように英訳するかという点でも、例えばそれが組織であるのか、あるいは学位プログラムとしての学部であるのか、そういった文脈によっても、その訳し方、工夫が必要になるということで、同じようなことがESDに関しても様々あるかと思いますので、その辺りも誤解のないように、是非検討していきたいと思っております。
【安西会長】  よろしいでしょうか。検討するということは、実施するということでよろしいでしょうか。
【猪口委員】  今、御指摘されましたことも大事ですけれども、私が申し上げたのは、この日本語の本そのものをベースに、日本の子供たちが、あるいは指導者が、英語だったらこれがどういう表現になるのかということが参考にできるような、そういう英語の囲みとかパラグラフが挿入されていれば役立つと思います。
ですから、倉敷宣言は、これは対訳がこうやって書いてあるんですけれども、ここまで完全なものではなくてもよいと思いますが、ユネスコに関する表現であるとか、あるいはSDGsに関する表現であるとか、元の国連側の表記があるはずなので、それがもっと組み込まれた方がいいのではないかという指摘でございます。
【安西会長】  ありがとうございました。他にはいかがでしょうか。
西園寺委員、お願いいたします。
【西園寺委員】  世界の記憶についてお伺いしたいと思います。今、英訳・日本語訳という話も出ましたけれども、もともと日本語では記憶遺産という名称でやっていたわけです。私の認識としては、3つのユネスコの遺産の1つということで思っていたんですが、あえて「世界の記憶」という名称に変えられたというのは、元の英語に忠実な訳にするという意味だけですか。私も選考委員に入っていますので、他の方から質問が来た時にこういう理由で変えたという説明をしなければなりませんし、実際に事務局にも質問が来ているんじゃないかと思うんですが。重さから言うと、記憶遺産の方が感覚的には重いように感じるわけですけれども、その辺はどのように考えたらよろしいですか。
【福田国際戦略企画官】  失礼いたします。まず1点は、先ほど申し上げたとおり、英語の名称がMemory of the World、つまり、英語で言うところのheritageというんでしょうか、遺産という言葉を用いているわけではないと。その意味では、訳は忠実にすべきであるという御指摘というものは、これまでも頂いていたところでございまして、このたび、そういったことを踏まえて改定をしたというのが1点ございます。
併せて、今、西園寺委員からも御指摘ございました、重みという点がございましたけれども、例えば世界遺産、無形文化遺産といった条約に基づく事業と、これまで称していた記憶遺産と言ったときに、同じ遺産という語を用いることによって、それが位置付けが全く同じようなものであるのかということを御質問、御意見いただくことがございます。
実際は、御承知のとおり、これまで記憶遺産と呼んでいた事業は、世界遺産や無形文化遺産とは異なり、条約に基づく取組ということではございませんで、ユネスコの一事業として取り組まれているというものでございます。そういった点につきましても誤解がないように、この際、名称を改めるべきではないかという御意見というのを多々頂いていたということがございまして、それを踏まえまして、このたび改定がなされたところでございます。大きくは、この2点が理由であるものと考えております。
【安西会長】  よろしいでしょうか。
【西園寺委員】  一応、それで私は納得はしましたけれども、実際に記憶遺産が既に登録されている方にとってみて、今までは記憶遺産ということでプロモートしていたのが、急に名称が「世界の記憶」に変更されたときに、落胆のようなものがあるのではと、正直言ってそんな感じは受けました。特にそれに対してお答えいただく必要はないんですけれども、私の個人的な感覚だけならいいのですが…。ありがとうございました。
【安西会長】  物としての遺産、これは個人的な見方でございますけれども、それと記憶の遺産というのは、遺産というと、みんなで共有できる、万人が共有できるということが含まれているように思いますけれども、記憶という、ある意味で物・形にならない、そういうものについて、万人が共有するということがなかなか難しいということが背景にあるのではないかと思います。私の個人的な見方で恐縮でありますけれども、それで記憶遺産という言葉を「世界の記憶」と、もともと英語では「世界の記憶」と、直訳すればそういうことなので、その直訳をかりてそのようにしたということなのではないかと個人的には見ておりますが。
よろしいでしょうか。なかなか難しいポイントだと認識はしております。他にはいかがでしょうか。
岡田委員、お願いいたします。
【岡田(保)委員】  岡田でございます。今、「世界の記憶」の話が出ましたので、私、世界遺産に関わっている者として伺いたいんですが、資料2の2ページのところに、これは佐藤大使の発言の要旨だと思うんですけれども、そこで文化のところで、世界遺産条約のところ、2行だけ触れていらっしゃるんですが、これだけを拝見すると、具体的にどういう意図を持って発言されたのか、分かりづらくて、何か世界遺産条約の現状について、具体的にどこに改善の余地があるのかということの指摘をされたのか、あるいはそういう意図を含んでいらっしゃったのか、もう少し具体的な内容を教えていただければ有り難いなと思うんですが。
【福田国際戦略企画官】  失礼いたします。先生の御質問は、文化の欄の1ポツの表現の趣旨ということでございますね。
【岡田(保)委員】  はい、そうです。
【福田国際戦略企画官】  担当課が不在でございまして、今、私どもの方で詳細を承知しておりませんので、恐縮でございますが、また追って御説明させていただければと思います。
【安西会長】  そういうことでよろしいでしょうか。
【岡田(保)委員】  はい、とりあえず。
【安西会長】  他にはよろしゅうございますか。
それでは、この件につきましてはここまでにさせていただきます。松浦特別顧問にも改めて御礼を申し上げます。ありがとうございました。
議題の2に移らせていただきまして、持続可能な開発目標への対応についてということでございます。まず、事務局から説明をお願いいたします。
【福田国際戦略企画官】  失礼いたします。資料9、それから資料10、そしてもう1つ、参考の資料の下の方にあるかと思うんですけれども、議題の2、「持続可能な開発目標(SDGs)への対応について」という席上配布資料があるかと思います。この3つの資料を用いて御説明させていただきたいと思います。 それでは、まず、資料9、SDGsの採択に至る経緯ということでございます。前回の総会でも簡単に状況について説明させていただきましたが、改めて御説明させていただきます。
持続可能な開発目標に関しましては、もともと、その前身となるミレニアム開発目標というものがございました。MDGsと称しておりますけれども、そのMDGsが2001年に国連で策定され、そして2015年にその期限が到来したということでございます。これも開発目標というものを定めて、その目標が達成されたかどうかということを世界全体でモニタリングしてきたというものでございます。
真ん中の柱にございますが、一定の成果を達成したものの、未達成の課題もあったと。また、15年間の間に新たな課題というものも浮上し,国際的な環境も大きく変化してきたということでございます。こういった状況を踏まえて、2015年の終期を待たず、次の開発目標の在り方について数年来議論が重ねられてきたところでございまして、それを踏まえ、昨年9月の国連サミット、これは各国首脳が参加するものでございますが、そこで全会一致で新たな持続可能な開発目標が策定されたという経緯でございます。
この2つ目のところに、やや色が掛かっておりますけれども、MDGsとSDGsの違いということで言えば、一言で申し上げれば、これまでの開発目標というのは、かなり開発、すなわち開発途上国がいかに発展していくかということに力点を置いていたものであったわけでございますけれども、それに加えて、世界全体で持続可能性というのを踏まえた発展・開発をしていかなければならないということで、ここにありますように、先進国を含む国際社会全体の開発目標という趣旨で定められたというものでございます。また、その目標の内容についても、より精緻で、かつ包括的な目標というものを設定すべきであるということでございまして、ここにある17の目標というものが設定されたというものでございます。
具体的な17の中身につきましては、次の2ページの方をお開きいただきたいと思います。ここに目標の1から目標の17までございます。ユネスコの関係で申し上げれば、例えば目標の4の教育でありますとか、あるいは目標の6の水に関しては、IHPという科学分野の取組がございます。同じく科学分野のIOC、海洋に関しては目標の14、こういった形で、多くの目標にユネスコとしても何らかの関わりがあるというものでございます。これを踏まえて、ユネスコのみならず、各関係する国際機関において取組が開始されているところでございます。
その詳細につきまして、次の3枚目の方をお開きいただきたいと思います。ユネスコにおけるSDGsの推進に向けた取組ということでございまして、先ほどのこちらからの報告でも申し上げましたが、既に本年4月の執行委員会においても、SDGsに沿った取組をユネスコとして進めていくべきであるということが決定されているところでございます。これを踏まえ、ユネスコが主導する分野としては、まず教育が挙げられますけれども、教育に関する目標、ゴール4、この推進方策をどのように進めていくかということに関しまして、ここに書かれているような取組、具体的には議論する枠組みというものが既に始まっているというものでございます。
そして、そういったものをどのように生かしていくかということで言いますれば、下の今後の予定というところがございますけれども、ユネスコの総会、これは昨年の秋にあったわけですが、2年に1回開催されておりますので、次の総会は来年の秋ということになります。そのユネスコの総会で、SDGsの達成、これを主要な事項の1つとする事業予算、これは4年間でございますけれども、そういったものを決定するということが見込まれているということでございます。そして当然、それを決定するに当たっての議論というのは、その前の年、すなわち今年からどんどん進められていくという道筋ということが示されているというものでございます。これを踏まえて、どのような形で国内委員会として対応していくべきであろうかということについて、御議論が必要と思っているところでございます。
次に、席上配布資料の方を御覧いただきたいと思います。席上配布資料の最初のページ、SDGsへの対応について、議論の視点という形で記載させていただいております。ここで考え方というものを、あくまで議論の視点ということでございますけれども、私どもの方で作成いたしましたので、こういった視点に沿って御議論を頂ければと思っているところでございます。
1ポツのところにございますけれども、これまでの経緯については、今、申し上げたとおりでございます。
そして2つ目の白丸でございますけれども、日本政府としてはということで、先ほど副大臣から挨拶の中で触れられたとおり、日本国内においても、内閣総理大臣を本部長、そして全ての国務大臣を本部員とする推進本部が内閣に設置され、そして年内に実施指針というものを策定し、そしてフォローアップを行っていくということでございます。
そしてSDGsというのは、今、17の目標と申し上げましたけれども、包括的なアプローチであると。そしてまた、政府あるいは国際機関だけが取り組めばよいというものではないと。様々なステークホルダーとともに、どのような相乗効果を生み出していくかということが必要であると考えております。
ユネスコにおきましても、これは最新の状況でございますけれども、教育分野のみならず、科学ですとか、それぞれのそういった関連する分野が連携して進めていくべきであるというタスクフォースというものが設置されたということでございます。そしてその中で、17のゴールの中でユネスコに関わるそういったものについて、どのように次の事業予算につなげていくかということを統一的に議論していこうということでございます。
こういったことを踏まえれば、この国内委員会としては、ユネスコの次の事業予算に反映すべき事項についての提言、そしてまたユネスコの所掌の観点から、日本国内においても日本政府が取り組むべき事項について提言をしていくというための御審議いただく体制というものを設置することとしてはどうかということでございます。
次に、2枚目の方をお開きいただきたいと思います。SDGsでございますけれども、アルファベットということですと、先ほども御議論いただいたESDというものがございます。いずれも非常に幅広い概念でございますけれども、そういったSDGsとESDですとか、あるいはユネスコ活動といったときに、それぞれがどのような概念として整理して、そして取り組んでいけばよいのかということが、これは政府においても、あるいはユネスコにおいても、そしてまた民間の活動においても、考え方というのを整理していくことが必要と思っております。
そのことにつきまして、例えばということでございますけれども、ユネスコスクールや全国のユネスコ協会においては、これまでも、ESDのみならず、様々なユネスコ活動というものが実施されているということでございます。そしてESDにつきましても、もちろんこれは教育ではございますけれども、持続可能性という本質をどのように捉えるか、これは各実施主体に委ねられると。すなわち、大きな意味での地球環境だけではなくて、様々な持続可能性に関わる問題というものが当然教育の対象になり得るという理解の下に、多様な取組が実施されてきたというものでございます。
そしてSDGsにおいては、その関係をどう捉えるかという際に、SDGsは、今申し上げた17の目標の下に、169もの非常に細かい目標というものが設定されております。この席上配布資料でも、後ろの方に、その169の目標について記載がありますので、後ほど御覧いただければと思うんですけれども、その目標の中で、教育がゴール4でございますが、4の7という目標がございます。
4の7、下に明朝体で書いておりますけれども、2030年までに、持続可能な開発のための教育、すなわちESDでございますが、それに加えまして、持続可能なライフスタイル、そして人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育、これを通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにするという目標が設定されたというものでございます。
ここでESDというのが当然明確に位置付けられたと考えることができますが、他方で、ESDだけを進めるというわけではない、他にも様々なことを進めていくということが、SDGsの中で規定されているということでございます。
したがいまして、3つ目の白丸のところに記載しておりますけれども、ESDは、これまでの取組、これを基盤としつつ、そしてグローバル・アクション・プログラムに基づく2019年までのフォローアップ、これはどちらかといえば国ごとに行われるものでございますけれども、それだけではなくて、貧困の撲滅あるいは平和の構築などを含む包括的な、そして世界全体で一体となって取り組んでいくべきSDGs全体のモニタリングの対象となるということでございます。したがって、SDGsは2030年が最終の目標でございますので、2030年までESDというのをその中で進めていくべきということに当然なるということでございます。
したがいまして、全体を俯瞰する大きな課題として、取組をグローバルに展開していくということとともに、そしてゴール4、すなわち教育だけの目標をESDが目指していくということではなくて、それ以外の先ほどあった17のゴールの達成に向けても、教育ですとか、あるいは人材育成、そういったことを進めていくといことが重要であると、このように整理ができるのではないかと考えております。
ただし、まだSDGsをどのように進めていくかというのは十分に整理されていない部分というのもございます。現在も様々な議論というものが関係する国際機関でも行われておりますので、そういった状況を見ながら、さらにこの整理については、より精緻な、また分かりやすいものにしていく必要があると考えている次第でございます。
併せてSDGsというものを分かりやすく一般にも広めていかなければならないと思われるところでございますけれども、次のページに別添1というものがございますけれども、カラー刷りの形で17の目標、これを子供にも分かりやすいような形の記載というものをしているものでありますとか、あるいはその次のページに別添の2でございますけれども、普及に関する取組例ということで、大学生を対象としたフォトコンテストの実施ですとか、あるいは小学校段階でSDGsについて考えようという授業の実施例というものを行っていたりということで、既に取組が開始されております。そういった成果というのも生かしつつ、この国内委員会としても、更に実施していくための方策、これを考えていくことが重要ではないかと考えている次第でございます。
特に一番下の、小学校の事例の写真がございますけれども、実際、SDGsの目標というものは、それぞれが相関関係という点で見れば、ある目標の達成のために取り組めば、その他の目標の達成にも資するというものもあれば、例えば経済成長ですとか、あるいは工業の開発だとか、そういったことを進めていけば、当然、自然環境の保全等に影響を及ぼし得るという、そういう調整をどのようにしていくかという、そういう関係にある目標というのもございます。そういったものを、この下の写真では、あることをやれば、こちらの方に弊害が生じてしまうということです。では、どのようにやっていけばいいんだろうというのを、子供たちがツリーを描くような形で考えているというものでございます。こういった取組を通じて、17の目標、あるいはその下にある169の小さな目標の相関関係ですとか、その中でどういった生き方、暮らし方をしていけばいいんだろうというものを考えていく、非常にいい契機になるのではないかと考えている次第でございます。
そして、一番最後でございますけれども、資料10の方を御覧いただきたいと思います。今申し上げたような点というのを踏まえまして、先日の運営小委員会におきまして冒頭御紹介いたしましたけれども、推進特別分科会というものを設置するということが、これは既に決定されているものでございます。これを踏まえ、現在、第1回に向けた調整というものを進めているところでございますけれども、本日は、この総会の場におきましても、こういったSDGsを巡る動きというものを踏まえまして、どのように今後の審議を進めていくべきかということにつきまして是非御議論を頂ければ、その状況というものを私どもの方でまた参考にさせていただき、特別分科会の審議を進めていきたいと思っております。
以上でございます。
【安西会長】  ありがとうございました。それでは、ただいまの御報告について、広くSDGs全般でも結構でございますけれども、御質問、御意見いただければと思います。SDGsの特別分科会の設置につきましては、運営小委員会で御承認を頂いたところでございます。この分科会につきましても、どう進めていけばいいのか、これからでございますので、御意見を頂ければ有り難いと思っております。どなたでも結構ですので、よろしくお願いいたします。
長委員、お願いいたします。
【長委員】  長と申します。今日はありがとうございます。意見の前に、まず質問をさせていただきたいと思います。各省庁で協力しつつということなのですが、御説明にありましたSDGsの17の中の、特にユネスコに関係するところが4、6、14と御説明いただいたかと思うのですが、各省庁で満遍なく分担が決まっているという感じなのでしょうか。それとも、それぞれの省庁で関係するところに手を挙げて、足らないところを調整するとか、そういうような状況なのでしょうか。
例えば16番の平和ですとか、もっとほかにもユネスコそのものに関係する部分が多々あるような気がいたしまして、何かすごく教育に、偏るって非常に変な言い方、失礼な言い方なのですが、そこに焦点が当たり過ぎたユネスコの守備範囲のような気がしたものですから、僭越ながら質問したいと思います。
【福田国際戦略企画官】  失礼いたします。私どもの説明で、もし誤解があれば大変恐縮でございますけれども、もちろん教育はユネスコの主要な分野ではございますけれども、今回の検討におきましても、決して教育だけを進めるというものではもちろんないと考えております。
それに関連して、個々の目標というものをどのように、例えば国内であれば関係省庁が進めていくか、あるいは国際的には関連する国際機関がどう進めていくかという点につきましては、そういったことが既に議論の蓄積があって、かなり明確になっている分野もあれば、必ずしもそうではないという分野も、まだ少なくないやに伺っております。その辺りの状況につきましては、私どもの方でも、外務省ですとか、あるいは様々な関係省庁とも相談・協議をしながら進めているというものでございます。
例えば先ほど目標14の海洋について申し上げましたけれども、この海洋という海に関する分野だけでも、関係省庁、非常に多うございます。様々な役所が何らかの形で海洋に関する取組というのを当然進めておりますので、その目標の捉え方、あるいはそれに関する課題の設定などによって、どういった省庁でやるかとか、あるいは省庁以外の様々な関連機関だとかが関わってくるかというものは、いろいろな形というのがあり得ると思っております。その辺り、まだ現在の時点では必ずしも明らかでない部分というのもありますので、そういったことをよく踏まえながら、今後検討を進めていきたいと考えております。
【安西会長】  よろしいでしょうか。この件、検討を進めるということはどこかで決まるということでしょうか。
【福田国際戦略企画官】  失礼いたします。日本政府としての進め方、あるいは先ほど申し上げた指針というのを決めるということに関しましては、これは内閣官房の方に事務局が設けられた推進本部の方で、いろいろな整理というものが今後なされると考えておりますが、現時点では、指針の策定ということについて、まずは各省庁と様々な調整というのを進めている段階でございまして、今後、会長から御指摘のあった点などについても整理が進んでいくと考えております。
【安西会長】  よろしいでしょうか。他にはいかがでしょうか。
二瓶委員、お願いいたします。
【二瓶委員】  二瓶と申します。今の御説明の中で、ユネスコに関係したものとして挙げられましたけれども、目標の16の平和というのがあると思うんですけれども、これについてはユネスコに関係したものという捉え方をされていると思うんですけれども、これはユネスコ憲章そのものが、平和というものが基本的な精神として考えられているわけですので、その辺のところは具体的にどのように目標として、どういうようなプロセスで、どのようにやっていくのかということについてのお考えがもしあれば、教えていただければと、このように思います。
【福田国際戦略企画官】  失礼いたします。御指摘ありがとうございます。平和というのをどのように進めていくかについて、まさしく委員のおっしゃるとおりだと思っております。例えば教育の分野であれば、急進主義、extremismというんでしょうか、そういったものに感化されないような教育の在り方というのを考えていくというものも、当然、1つの取組になり得ると思いますし、また、水問題ということで言えば、水問題というのを背景とする地域紛争というものも少なくないということがよく言われますけれども、そういった意味では、目標の4の教育、あるいは目標6の水というのが、目標16の平和と関連してくるという考え方ができるのではないかと思います。同様に、他の目標とも同じような考え方ができようかと思いますので、ユネスコの方でもそういった認識の下に、今、いろいろな、どのように進めていくかというのを整理していると伺っておりますので、その状況を見ながら、この国内委員会においても対応を考えていきたいと思っております。
【安西会長】  私の感触的な理解では、ユネスコの本部の方でも、この17のうちのどれを重点的にユネスコで取り上げていくかということについては、まだきちんと決めているわけではないと理解していますけれども、それでよろしいのでしょうか。
【福田国際戦略企画官】  はい、そのとおりでございます。主だった観点としては、17のうち9つほどの目標に、特に関わるのではないかとされております。ただ、それはすなわち、残りの8つの目標については全くユネスコが関わらないというものでもないということでして、全体としてどのように関わっていくか、これはユネスコ本部においても引き続き検討していると聞いております。
【松浦特別顧問】  先ほど来、SDGsについて、いろいろな委員の方から非常にいい御意見が出ているので、私、非常にうれしく思って聞いておりました。日本としてのSDGs実施指針を策定するという中で、日本が何をやるかということはもちろんしっかり決めていただきたいと思いますけれども、同時に、ユネスコがSDGsの関連で何に重点を置いてやるかということについても、日本としてしっかり意見を持って、もちろんユネスコ事務局が一時的にいろいろ検討すると思いますけれども、重要なのは、メンバー国間でそれをしっかり議論して方向性を出していくことです。
そういう意味で私は、先ほど申し上げたように、いろいろなユネスコの動きといろいろ絡んでくるんですけれども、10月の執行委員会というのは非常に重要で、日本として、10月、更には来年の4月の執行委員会もありますけれども、日本が何をやるかということは、もちろんしっかり考えなきゃいけませんけれども、ユネスコが、この17のうち目標のどこに重点を置いて、どのようにやっていくか。ユネスコの資源がいろいろな意味で限られていますから、その限られた資源の中で重点事項をどこにユネスコが置くべきかということを、日本としてもしっかり検討していく必要があって、それをユネスコの場で、必要があれば他の主要国とよく連携をして方向性を出していくということが、私は非常に重要だと思います。
くどいんですけれども、ユネスコは先ほど来御指摘のように、大げさに言えば17全てにいろいろな形で関係があると言ってもいいぐらいだと私は思っていますけれども、しかし、中でも重要なのは、目標の4の教育です。教育も非常に広くいろいろ入っているわけですね。その中にESDが入っているからうれしいんですけれども、一つ一つの目標の中でも、また、次のサブ目標というものがいろいろ入っていますから、重点事項をどうするかということは、本当に日本として、ユネスコが何をやっていくかをしっかり意見をまとめて、ユネスコで表明することをやっていただきたいと思います。
【安西会長】  ありがとうございました。
黒田委員、お願いいたします。
【黒田委員】  ありがとうございます。多分、国内の推進メカニズムがなかなか確定できないのは、国際社会においても、実はSDGsの推進メカニズムが完全に決まっているわけではないという状況があるからだと思います。例えば17の目標の細分化された百数十の目標のインジケーターといいますか、どのようにモニタリングをやっていくのかということすら、まだ現在では決まっておりませんで、これが今、国際社会の中で、非常にトピックとしては重要なことになっているわけですね。
ですので、そういう意味では、推進メカニズムを作っていくところに対して日本が貢献していかなくてはいけないという観点を持つべきではないかと思います。例えばMDGsのときにも、最初の数年は、どうしてもMDGs、非常に成功だったと思うんですけれども、推進メカニズムを作っていく段階ではかなり試行錯誤があったと記憶しておりますし、今回のSDGsについてはユニバーサル・ゴールということで、開発途上国だけではありませんので、新しいメカニズムを作っていく段階で、特に私はインジケーターが重要だと思っているんですが、それだけではなくて、例えば国際機関がどういう役割分担をしていくかということについて、例えばここの場では、ユネスコがやるべき分野として、当然教育は入るわけですけれども、ゴール16の平和を、この国内委員会としてもユネスコにやってほしいものなんだというメッセージを提供していくというか、そういう形で推進メカニズムを作っていくということを、国際社会に発信していくということが重要なのではないかと思います。
【安西会長】  ありがとうございました。
重委員、お願いいたします。
【重委員】  ESD-Jの重でございます。このSDGsは、国内実施計画という形をとって、各省庁が実際の実施の形を作っていかれるのだと思いますが、具体的なそれぞれの施策の中には、是非ESDの視点を持った人材育成というのを入れていただきたいと思います。
もう既にSDGsに関して、高校生たちもいろいろな活動で、自分たちで17の目標の一つ一つを具体的に広げて理解することから、活動を始めておりますけれども、先ほどおっしゃってくださったように、17の目標は、それぞれ、みんな包括的につながっているということを子供たち自身が気づいています。そのつながりに気づきくことこそ、はじめの1歩、で、そのつながりを俯瞰してみていくことから、自分たちにできること、国や世界がしなければならないこと、企業が責任を持つこと、などの整理を始めています。そして、それには、何が必要かというと、ESD的な視点、ESD的な意識を持った人材育成、ESD的な施行の仕方というのがとても大事だというところまで、彼ら自身が気付いておりますので、是非国の方でも17の項目を包括的にみてつながりを話し合いながら、それぞれの省庁における専門性を活かした国内実施計画をつくって頂きたいと思います。それがSDGsの目標達成につながるのではないでしょうか。
今、推進メカニズムというお話がございましたけれども、是非、ESDの人材育成という具体的なことを盛り込んでいただけるといいなと思います。よろしくお願いします。
【安西会長】  ありがとうございました。
西園寺委員、お願いいたします。
【西園寺委員】  今、二瓶委員からも黒田委員からもおっしゃられた16番目の平和というのは、正にユネスコの基本にあるものですし、特に安西委員長がこの間のユネスコ設立70周年のステートメントの中でも述べておられますので、この辺は日本から是非強調していっていただきたいと思います。
それから、教育に関してでございますけれども、ESDということと同時に、グローバル・シチズンシップというのが今度出ております。先月、GAPネットワークの第2回目の会議がパリで開催され、私の財団からも参加しました。そのときにユネスコのESDのセクションが、グローバル・シチズンシップとESDが一緒になった形のセクションに再編されたことを知りました。このことについては,ESDとグローバル・シチズンシップというものがどういう関係にあるのかということ、これはオーバーラップしているところが多々あると思いますが、新たにそういう概念を持ってきたということの意味をクリアに説明してあげないと、ESDを今までずっと一生懸命やってきた方が混乱を来す可能性があると思います。このため、その内容を明確にするとともに、ユネスコが何を考えていて、どういう形でESDとグローバル・シチズンシップを連携させながら進めていくのかについてお伺いできればと思います。
【福田国際戦略企画官】  失礼いたします。先ほど西園寺委員がおっしゃられたGAPの会議、7月の上旬に開かれたわけでございますけれども、おっしゃられるとおり、これまでESD課と呼ばれていた課が、ESG課ということで、グローバル・シチズンシップについても併せて実施をしていくということで、組織再編というのがなされました。これだけではなくて、他にもいくつか組織再編があった中で、そういった再編も行われたと伺っております。
そういった様々な課題というのが、いろいろな形で連関していると思っておりますので、そういった状況なども踏まえながら、かつ、ESDはESDで大変重要な概念でございますので、来年には、GAPの中間年のこれまでの取組を総括するような会議というのも開かれるわけでございます。そういった会議についても、他のGCED(グロ-バル・シティズンシップ教育)とかも含めたものとどのような形で連携していくのか、これは日本国内においても、また、ユネスコとしての発信においても、どういった形で進めていくのか、委員の御指摘も踏まえて、よくユネスコとも協議してまいりたいと思います。
【安西会長】  今のことでよろしいでしょうか。今の西園寺委員がおっしゃったこととほぼ同等のことを、事務局にはかなり私からも申し上げておりまして、グローバル・シチズンシップの考え方というのは、日本から出てきたものではなくて、他国から出てきたものだと理解しております。その中で、ESDについては、一応10年が終わって、次の5年のグローバル・アクション・プランを今実施中と、こういう状況の中で、その5年が終わった後どうするのかということについては何も語られておりません。その中で、このSDGsが国連全体の枠組みとして出てきておりまして、そういう非常に大きなグローバル・ポリティクスというとあれですけれども、そういう大きな流れの中で、ESDの活動というのが、特に日本の国内で、多くの方々が非常に努力をされてこられています。
こうしたグローバルな状況を、特にこの総会の委員の皆様におかれましては、私としては理解していただいた方がよろしいのではないかと思います。それは喧伝していただく必要はないと思いますけれども、ESDの取組をせっかくやってこられた多くの方々の努力が、これからそれこそサステーナブルに続いていっていただきたいと思っております。そういうことは、これは私からの個人的な見方も含めた御報告でありますけれども、できるだけ事務局におかれましては総会においてオープンに情報を出していただいて、総会の委員の皆様には十分御自分でお考えいただけるような、そういう素地を是非与えていただければと思っております。一応、付け加えさせていただければと思います。
今のグローバル・シチズンシップとESDが同じ担当でやられるようになるという、そういう状況というのは知っていていいことだと思っております。その中でESDをどうしていったらいいのか。長くなりますけれども、更にその中で、松浦特別顧問が言われたように、執行委員会目指して、一体このSDGsのこれからの取組、国連の取組に対して、日本側がどのように発信していけるかということも非常に重要でございまして、時間はそれほどないわけで、執行委員会の日本側は、おそらくユネスコ代表国大使、それから文部科学省や外務省のしかるべき方がお出になると思いますけれども、そういうことまで全部含めて大きな流れが作られつつあるといったらあれですけれども、そこの中で、この国内委員会の努力は一体どのようにすれば報われていくのかということについて、共通の考える素地といいましょうか、委員の方々が一緒に考える素地は、是非情報としては与えていただければ有り難いと思っております。
以上、一応、付け加えさせていただきます。感覚的にはお分かりいただけますでしょうか。
それでは、猪口委員、お願いいたします。
【猪口委員】  ありがとうございます。2回目ですので短めに。先ほど黒田先生のおっしゃったことは非常に重要で、推進体制、日本は非常に上手なことができたと思うんですね。SDGs推進本部、これを閣議決定して設置していて、こういうナショナル・マシーナリーを作ったということです。SDGsというのは、その国の首脳が本部長を務め推進する、そういう内容ですよね。全ての大臣が横串、横断的にそれぞれの所管で役割を果たすと。まさにナショナル・マシーナリーです。こういうことを世界に正に発信して、こういう推進体制を作らないと、なかなか国連が掲げる理想もローカルなところにつながらないよということを世界に発信する。
ですから、ナショナル・マシーナリー、これは男女共同参画のときにそういう言葉を使いまして、ナショナル・マシーナリー作ると。ある程度トップダウンということも重要ですね。で、グラスルーツで、またボトムアップというのもやる。その両方が交わるところで社会変革を起こすことができると思うので、是非国連総会での様々な演説においては、このことをお伝えしたらいいんじゃないかなと。クロスカッティングで全ての分野にということです。
それから、MDGsとSDGsを比べたときの1つの大きな手法の違いとして、SDGsというのは開発途上国のことだけではなくて、先進国も課題を負っているということがあります。ですから、そのことをはっきりと認識して、自らも変えなければならないということだと思います。それから、ESDの場合、Education for Sustainable Developmentだから、今後あらゆることで何々for Sustainable Developmentということをやったらいいわけで、Educationを最初に持ってきたのはすごく日本らしいです。だからこれは最初の一歩であるということで、例えば17のゴールズの中でもいくつかピックアップすることできると思います。例えばグローバル・ヘルス。Health for Sustainable Developmentとか、4番目がEducation for Sustainable Development、あとGender for Sustainable Developmentとか、Energy for Sustainable Developmentとか、あるいはEconomic growth for Sustainable Developmentとか、そのように、今後はあらゆることはSustainable Developmentに対してどうできるのかという観点からも考える。更にPeace for Sustainable Development、戦争は最大の破壊でありますから、そういう観点もと思いますが、こういう変革を通して、資本主義の在り方そのものを、21世紀、穏やかに変えていくということも可能でありますので、そういうためにはナショナル・マシーナリーがしっかりしていないと。主権国家中心の国際構造ですから、国連が掲げるこういうことも、そういうナショナル・マシーナリーがあってできるようになります。ですから、我が国としては模範的なことを素早くやったんじゃないですかね。まずこれを宣伝して、その上で更に実質を充実させたらと思います。
【安西会長】  どうもありがとうございました。今おっしゃられたことも含めて、10月に執行委員会が次は開かれるはずでありますので、そこへ向けて日本のむしろ推進本部まで含めてどのようにやっていただけるかというのは、かなり大きなことだと見ております。よろしくお願い申し上げます。他にはいかがでしょうか。
及川委員、お願いいたします。
【及川委員】  及川です。よろしくお願いします。先ほど議長からの力強いお言葉に、ESDを長くやってきた者としては非常に勇気を頂いたと思っております。先ほど事務局から、ESDとSDGsの相互関係について、席上の配布資料2ページですか、クリアに御説明いただきまして、非常に納得する部分が多かったんですが、SDGsのゴール4の、質の高い教育にESDが貢献するということは、世界会議等でも指摘され、成果として認められていますが、これはもちろんのことであって、それだけではなくて、この17の目標を俯瞰した形でESDをどう進めていくかということが、今後、第2ステージで重要なことだと思っております。
そこで、この2ページの資料の丸の2つ目に、持続可能性をどのように捉えるかについては各実施主体に委ねられるという理解の下、多様な取組が実施されてきたところ、これが日本のESDの非常にいいところであり、非常に多様性があり、それぞれがイニシアチブを持ってやってきたというところだと思うんです。例えばユネスコスクールをはじめとする学校での取組、あるいはプラス教育委員会、あるいは社会教育施設の図書館、それから博物館、あるいはNPO、企業等の、そういうフォーマル、インフォーマル、ノンフォーマルの各教育分野でそれぞれやってきたところがあって、それぞれの実績は、もうかなり日本では蓄積されていると思うんですね。
それが、この17の目標一つ一つにどう貢献するのか、しているのか、してきたのかというところを、もう一度実践者に戻してあげて、それぞれの実践者が、私の取組はSDGsの17の目標のここの部分に非常に貢献し効果を上げているんだというアプローチをきちっと自覚し整理することにSDGsを使うということを、1つ国内委員会あるいは文部科学省として、ESDの実践者にきちっと知らしめるということが重要であろうし、これをもって、今、現場の実践者が悩んでいるESDの評価という部分に、この17の目標の部分の達成度であるとか、それから様々な取組手法であるとか、そういう評価の1つの枠組みであるとか手法を提示してあげると、取組が非常に整理され、実践者の勇気が出るのかなと思います。
それからもう1つ、国際的な戦略として、日本がESDを一生懸命やってきて、それとグローバル・シチズンシップとの兼ね合いで話がありましたが、日本からの発信としては、この17の目標の一つ一つ、あるいは、この全体に対して日本のESDがこれだけの量と質の実践を積んできたんだということを、きちっとユネスコなり国連なりに出すことによって、日本のESDのエビデンスあるいは貢献度が十分に示され、ESDをやっている方々も、国内委員会としても、非常に良い発信になるのかなと思ったりしますので、その辺のところを御考慮いただければと思います。
【安西会長】  ありがとうございました。
【福田国際戦略企画官】  失礼いたします。ありがとうございます。今、委員御指摘のとおり、まさしくSDGs全体をどのように進めていくか、あるいはそれについて考え,学ぶこと自体がESDであるというのが、これからの切り口として求められるであろうと考えております。そういったことを通じて、単にゴール4の教育だけでないその他の分野の人材育成にもつながるでしょうし、また、一人一人の子供たちがどのようにそれを考えていけばいいかというのにもつながると思っております。
また、評価に関しましても、委員の御指摘のとおり、これまでESDの評価といったときに、学習指導要領に基づく、あるいは観点別評価、俗に規準と呼んでおりますけれども、そういった観点での評価であるのか、あるいは教育活動としてそれが成功したのかそうではないのかという、学校評価に近い形での評価であるのか、あるいはそれ以外にもいくつか切り口があるかもしれません。どうしてもその辺りが、どの観点で評価をしているのか、なかなか定まらない形で進んでいるところというのがございました。
それが今回、SDGsという、一個一個の目標がかなり精緻な形で定められておりますので、その関連付けるという新たな切り口、かつ、それが世界全体での共通の目標であるということで、世界に目を向けるいい材料にもなると考えておりますので、是非そういった方向で進めていきたいと考えております。ありがとうございます。
【及川委員】  ありがとうございました。ESDは、Education for Sustainable Developmentですけれども、ある意味、Education for Sustainable Development Goalsみたいな、そのようなSDGsのための教育という、さっき何のための教育とありましたけれども、そういう視点で、もう一度ESDを再チェックすることで、ESDをセカンドステージに向けて再検討、再構築していくということがあっていいのかなと思ったりしました。
【安西会長】  ありがとうございました。今おっしゃられたことも含め、先ほどからESDの努力と蓄積、これを将来に向けて、SDGsの活動の中も含めて生かしていただかないと困ると。困るというのか、これまでせっかくやってこられたということでありますが、これについては、文部科学省、外務省もそうでありますけれども、是非、心に留めていただきたいと思います。先ほど申し上げたように、ESDについては十何年か前に日本のイニシアチブでできて、これまで本当に多くの方々に御尽力いただいてきたことでありますけれども、この先の外交上のイニシアチブというのが本当にとれているのかと。そこのところになりますと、これはこれまでの蓄積をどう生かしていくかということに関わってまいりますので、そこのところが、私としてはかなり、危機感というとあれですけれども、そういう感覚を持っておりますので、これにつきましては、是非、各省庁におかれましては、心に留めていただければと思います。私の個人的な見方も含めてでございますので、申し訳ありませんが、よろしくお願い申し上げます。
多くの貴重な御意見を頂いてまいりましたけれども、他にはいかがでしょうか。
長委員、お願いいたします。
【長委員】  すみません、2回目ですが、具体的なお話を2点。私は難民を助ける会というNGOの理事長をしているのですが、これは開発目標であるので、難民問題が入ってこないのはある意味しようがないことなのかもしれませんが、今、世界の問題を見たときに、難民問題なしにこういった問題を語るというのも少々不十分な感じがしております。その中で、教育が全ての人に包括的かつ公正な質の高い教育ということで、日本政府が、この春にシリア難民の受入れ、非常に数は限られているのですが、教育の分野で、あるいは留学生のところでも打ち出しておられるので、難民支援の部分で教育と絡めたことで発信などできないかなというのが1つ目。2つ目が、私は本職はといいますか、立教大学の教員をしておりますが、その立場で先々週にオランダのハーグの国際刑事裁判所に出張していたのですが、そのときに私がユネスコに関わっているということを申し上げたら、日本に是非もっと文化遺産の破壊について御尽力いただけないかという担当官のお話がありました。そういう中で、どこに該当するんだろうというと、16番の平和の部分で、そういった文化遺産の破壊などの分野で、何か日本が積極的な立場をとれるということもあるのではないかという御提案でございます。
以上です。
【安西会長】  ありがとうございました。これもそういう意味では、SDGsの枠組みというのは、かなり我々の活動を広げられる、そういう枠組みだとも見えますので、これからだと思います。他にいかがでしょうか。
岡田委員、お願いいたします。
【岡田(元)委員】  ピンクの席上配布資料5ページの記載について質問ですが、この中に「教育」、「自然科学」、「人文社会科学」の記載はありますが、先ほどから言っている「平和」という文言がないんですが、これはそういうコメントがなかったんでしょうか、どうでしょうか。もしなければ、是非こういうのを入れてほしいというのを、ユネスコの方に言っていただけたらと思います。
【福田国際戦略企画官】  ユネスコの組織というものは、教育局ですとか、あるいは自然科学、それから人文社会科学局、そしてその後、文化局という、局、セクターというのがいくつかございます。実はこの下に、資料に記載はありませんが、もう1つ、コミュニケーション局というものがございます。こういった分野で、いかに平和を構築していくか、あるいは様々な他文化、そういったものに対する涵養というものを育んていくかという意見交換なども行われております。したがいまして、コミュニケーション局においては、様々なそういう平和に関する取組というものがあると思っております。
また、先ほど申し上げたとおり、教育であれ、あるいは科学であれ、その中でも平和の構築、それにつながる部分というのも当然あると思っておりますので、ユネスコとして決して平和を軽視しているということはないと思っております。
【安西会長】  よろしいでしょうか。ありがとうございました。
郡委員、お願いいたします。
【郡委員】  申し訳ありません、時間も迫っているのでしょうけれども、御発言させていただきたく思います。まず、委員の先生方が多くいらっしゃる中で、本当に皆様方それぞれいろいろな御意見をお持ちになっていらっしゃると思うんですが、発言の機会がなかなか回ってこないということで、一言も御意見を述べられずお帰りになられるようなことがないように、事務局の方に配慮していただきたいと思います。事前に行うべき説明も是非しっかりとなさっていただいた方が、この会が円滑に進むのではないかなということを、進め方についての意見を、まず述べさせていただきたいと思います。
それから、今日御発言いただいた中で、大変日本のESDの取組の評価というのが高く皆様方もお持ちになっていらっしゃるのを、心強く思ったところでございます。それから、SDGsとの関わりについても、非常にいい御意見が出されたと思っておりますけれども、私自身は、ESDの取組、今日は新たな読本も見せていただきまして、とてもよくできているなと関心をしたところではございますけれども、様々なESDの取組に関わってくる教科書の問題も含めて、いくつか疑念に思われる、そういう御意見も聞かせていただくところでもあり、この辺について、どのようにこの委員会として、まさかそれぞれの教育委員会で教科書検定を進めるわけですから、意見を差し挟むことは不可能なのでしょうけれども、ある程度のグローバル化の中で、日本がどういう立場になっていかなくちゃいけないのかも含めた議論というのも進めていただけないかということも思ったものですから、述べさせていただきます。
それと、せっかくユネスコスクールが増えている中で、それぞれのユネスコスクール同士の連携、国内外含めてですけれども、もっと活発にできるような工夫というのも、是非この委員会からも御意見を挙げていただけたらいいんじゃないのかなという、私の意見を述べさせていただきます。
以上です。
【安西会長】  ありがとうございました。今、郡委員が最初におっしゃった総会の在り方というのでしょうか、これについては私もかなり思うところがございまして、なかなか総会の回数も少なくて、それから御発言の機会も少ないというのは、おっしゃるとおりであります。できるだけそこは改善されるように、事務局にも相談させていただければ思います。ありがとうございます。
他のおっしゃられた御意見も、誠にそのとおりだと思いますけれども、他の皆様の頂いた御意見も全部含めて、事務局側でもう一度きちんと整理していただいて、きちんとそれが活かされていくようにしてもらいたいと思いますので、事務局にもよろしくお願い申し上げます。
それでは、この議題につきましては、ここまでにさせていただきます。特別委員会分科会については、これから発足をして進めていくことになると思いますので、今後とも特別分科会の進行につきましては、何か御意見があれば、また頂くようにできればと思います。どうもありがとうございました。
それでは、次の議題に移らせていただきます。国内委員会委員候補の推薦ということであります。国内委員会の人事に関する事項の審議でございますので、会議の議事は、ここからは非公開とさせていただきます。委員、また、事務局関係者以外の傍聴の皆様におかれましては、また、報道関係者の皆様におかれましては、恐縮でございますけれども、御退席くださいますようにお願いを申し上げます。

(以下、規定により非公開)

【安西会長】   それでは、その他に移らせていただきますが、他に皆様の方から何かございますか。
西園寺委員、お願いいたします。
【西園寺委員】  たびたびで恐縮ですけれども、是非議事録に残しておいていただきたいと思いますので、一言だけ。今回、松浦特別顧問からは特に御発言なかったので、例の文化多様性条約、これは日本がまだ批准していないわけで、今日は外務省の方もいらっしゃるので、是非これはしつこく粘り強くお願いしてまいりたいと思います。国内委員会から建議も出しているわけですし、日本が何か文化の多様性を余り尊重しないみたいなイメージは非常に良くないので、これは是非とも我々の悲願として批准をしていただきたいと。国内委員の皆さんの認識の共有もしていただきたいということもありますし、議事録に毎回の総会で残したいという思いもあって、あえて言わせていただきました。失礼しました。
【松浦特別顧問】  正に御指摘をたびたびもう、今、西園寺委員が言われたことを申し上げているので、今日は特別な議題がなかったことで申し上げませんでした。今、西園寺委員が言われたこと、私も全面的に賛成で、一言付け加えさせていただきますと、ユネスコは伝統的には過去の文化遺産を大事にするということ、これは非常に重要な視点で、その一番大事なのは世界遺産条約で、私のときに無形文化遺産条約等々追加しまして、同時に新しい文化を作っていくということが、人類の文化の多様性をしっかり保全、更には促進するために必要です。ですから、そういう新しい文化を作るという見地からいって、今、御指摘の2005年の文化的表現の多様性の保護及び条約は非常に重要ですね。
もちろんWTOの一連の条約との関係はありますけれども、それはもう2005年条約のときにも議論し尽くして、他の条約の義務にこれは優先するものではないということをはっきり明記してあります。更に言えば、日本もしたがってそこは踏み切って、ユネスコ総会で賛成投票しているわけですから、そこは是非、事務的な作業というのはもちろんありますけれども、私もできるだけ早い機会に批准してもらえれば有り難いと思います。
【安西会長】  ありがとうございました。大変重要な御指摘を頂きました。記録に留めるようになります。ありがとうございました。
それでは、他によろしければ、ここまでにさせていただきます。最後に、事務局から事務連絡があります。
【野田補佐】  事務局でございます。本日配布した資料でございますけれども、かなりボリュームが多くなってございます。もし御希望される方がいらっしゃいましたら、事務局から郵送させていただきたいと考えております。その際には、お手元に国内委員会資料郵送希望というものが1枚ございますので、必要事項を書いて、そのまま机の上に置いてお帰りいただければと考えております。よろしくお願いします。以上です。
【安西会長】  よろしゅうございますか。それでは、これで閉会とさせていただきます。大変貴重な御意見を頂きまして、改めて厚く御礼を申し上げます。
色の付いた紙の資料については、机上配布資料でございますので、残しておいていただければと存じます。
改めて、御多忙の中、御出席くださいまして、誠にありがとうございました。


―― 了 ――

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