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2020-2021年のユネスコ活動に関する方針(答申)

2年に一度開催されるユネスコ総会(第40回総会がユネスコ本部で開催)に向けて、我が国の基本的方針について、文部科学大臣及び外務大臣より日本ユネスコ国内委員会に対する諮問がありました(令和元年7月25日付及び7月22日付)。
<諮問内容>
 (1)2020-2021年ユネスコ事業に関する我が国の基本的方針
 (2)(1)の方針を踏まえた、第40回ユネスコ総会における2020-2021年事業・予算案(40/C5)等に関する我が国の対応方針について
 (3)第40回ユネスコ総会における政府代表
 日本ユネスコ国内委員会は、令和元年9月12日に開催された第145回日本ユネスコ国内委員会総会において答申案について審議し、下記のとおり答申しました。


 

2020-2021年のユネスコ活動に関する方針(答申)

令和元年10月18日
日本ユネスコ国内委員会

A.2020-2021年のユネスコ活動に関する我が国の基本的方針

(a)ユネスコにおける主な取組の現状と、我が国の主な活動状況

 

1.教育分野

(1)ユネスコにおける主な取組の現状
・ユネスコは、2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」のうち、SDG4(質の高い教育をみんなに)のリーディング・エージェンシーであり、その達成を主導的に推進している。2016年には「SDG-教育2030ステアリング・コミッティー」を設置し、加盟国等の目標達成を組織的にサポートしている。 
 「持続可能な開発のための教育(ESD)」は、SDGsの17全ての目標の達成に寄与するものとして位置付けられ、充実が図られている。本年4月の執行委員会において、2020年~2030年の期間における新たなプログラムである「持続可能な開発のための教育:SDGs達成に向けて(ESD for 2030)」が決議され、本年の国連総会に提案される予定である。
・教育政策全般に関しては、ユネスコは過去にも、生涯学習の流れを主導したフォール・レポートや、学習の方向及び内容についての共通理解を深めたドロール・レポートなどをまとめてきたが、新たに国連事務総長の要望を受け、複雑さを増し不確実性が高まる世界の中で教育の将来像を描く「教育の未来」プロジェクトが始動することとなった。今後、有識者による国際委員会を設置し、2021年までにグローバルレポートを作成する予定である。 
・高等教育に関しては、流動性が高まる中で学修経験が他国でも公平・公正に取り扱われるよう、高等教育の資格の承認に関する規範文書の作成が進められてきた。これまで6つの地域で地域規約の採択・発効が進んできたところであるが、グローバル化の更なる進展等を受け、地域規約と協調して相乗効果を発する「世界規約」の策定が進められており、本年11月の総会で採択予定である。 
 

(2)我が国の主な活動状況
・SDG4達成のためのメカニズムである「SDG-教育2030ステアリング・コミッティー」には、教育分野の有識者である日本ユネスコ国内委員会委員が共同議長として参加している。また、ESDについては、我が国は2005年からの「国連ESDの10年」の提唱国であり、SDGs採択後には17全ての目標の達成に寄与するものとしてその位置付けを更新しながら、ESD for 2030に向けた主導的な役割を果たしてきている。 
・また、ユネスコに対しては、「アジア太平洋地域教育協力信託基金」や「ESDグローバル・アクション・プログラム信託基金」といった任意拠出金を通じて、教育プロジェクトの支援を行い、国際的な合意形成や各国の教育の量的・質的向上に貢献している。 
・国内の教育については、新学習指導要領に「持続可能な社会の創り手」の育成が基盤となる理念として位置付けられ、育みたい資質・能力を軸に、カリキュラム編成、授業改善、評価の観点、教員養成等が一貫した仕組みとして整備されている。「知識・技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性」のバランスの取れた育成は、国際会議においても日本の教育の強みとして高く評価されているところである。 
・国内のユネスコ活動については、地域のユネスコ活動を担うユネスコ協会、ESDの実施拠点であるユネスコスクールのネットワーク、ユニツイン/ユネスコチェア事業やユネスコスクール支援大学間ネットワーク(ASPUnivNet)に参加している大学、地方自治体や各種の民間団体など、多様な組織や個人が関与している。長年の活動の中で、今後はユースの世代への魅力化を図り、これからの時代にふさわしいユネスコ活動の価値づけを改めて行い、更なる充実を図ることが期待されている。 

2.自然科学及び人文・社会科学分野

(1)ユネスコにおける主な取組の現状
【自然科学分野】
・ユネスコは、加盟国や多様なパートナーとの密接な協力を通じて、平和、持続可能な発展及び人間の安全保障・幸福に貢献するため、科学の推進を行っている。自然科学分野では、科学の活用と持続可能な開発のための能力の強化、自然資源、減災、気候変動に関する持続的マネジメントのための科学の進展、及び水の安全確保のための知識向上と能力強化に取り組んできている。主要事業として、淡水、海洋、生態学、地球科学、基礎科学の分野で、国際協力や能力開発等を実施している。
・ユネスコは、地球規模での課題については、国境、文化及び政策システムを超えて対応すべき課題として、科学の知見を基盤とした国際協力を推進している。2015年に国連で採択されたSDGsにおけるあらゆる目標に貢献すべく、加盟国とともに学際的かつ包摂的なアプローチをもって国際科学プログラムや政策的提言を通じた取組を推進している。
・また、国際水文学計画(IHP)や人間と生物圏(MAB)保存地域計画、国際地質計画(IGP)等の事業を通じて、経済発展と自然資源の持続可能な管理を調和させた取組を実施してきている。これらの事業では、事業セクター間の協力を促進しつつ、生物多様性や気候変動に関する国際的枠組みへの貢献を強化している。
・海洋科学分野では、政府間海洋学委員会(IOC)による海洋学に関する調査研究、観測システム、早期警報システム構築、データ交換及び能力開発に関する取組を進めてきており、SDG14(海の豊かさを守ろう)の達成に直接に貢献を果たす活動を推進している。2017年には、IOCの提唱により、国連で「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年(2021-2030)」(以下、「国連海洋科学の10年」)が採択された。IOCは、科学コミュニティのみならず政策立案者や多様なステークホルダーと連携して2021年以降の実施計画を策定中であり、本計画案は2020年の国連総会に提案される予定である。
・ユネスコは、科学と社会のインターフェース(接続)の強化に取り組んできている。2017年のユネスコ総会において「科学及び科学研究者に関する勧告」を採択、現在は、オープンサイエンスを推進する規範的文書の策定に向けて準備を進めている。ユネスコは科学技術イノベーションを推進し、加盟国における科学の知見を生かしたエビデンスベースの政策を推進している。

【人文・社会科学分野】
・人文・社会科学政策においては、科学技術の倫理が重視されている。特に、近年、技術の進展と国際的な関心の高まりが著しい遺伝子編集及び人工知能(AI)に関し、科学技術の進展が社会にもたらす影響を倫理的な側面からとらえる取組みが進められている。
・遺伝子編集については、国際生命倫理委員会(IBC)において、これまでに生命倫理に関する3つの世界宣言が起草され、ユネスコ総会において採択されている。これらを踏まえつつ、近年の技術の発達に伴う新たな課題に対応するため、ユネスコ科学的知識と技術の倫理に関する世界委員会(COMEST)、IBC等の専門家から意見を聴取しつつ、今後のユネスコにおける方向性を検討する予定である。
(参考)IBCにおいて起草された世界宣言:
 ・ヒトゲノムと人権に関する世界宣言(1997)
 ・ヒト遺伝情報に関する国際宣言(2003)
 ・生命倫理と人権に関する世界宣言(2005)
・AIの倫理については、2019年4月のユネスコ執行委員会において、ユネスコ事務局よりAIの倫理に関する規範的文書の策定が提案された。今後、第40回ユネスコ総会において、他の国際機関における検討状況等を踏まえ、改めてユネスコにおける規範的文書の策定につき議論される予定である。規範文書策定が承認された場合は、COMESTにおける議論や専門家パネルの立ち上げ等、部局横断的な議論が開始することが見込まれている。
・また、遺伝子編集とAIの課題に関する分野横断的な議論を涵養することを目的として、2018年9月から、「遺伝子編集及び人工知能(AI)に関するラウンドテーブル」を開催している。今後、2020年にかけて、同ラウンドテーブルをシリーズで開催する予定である。
・このほか、2030アジェンダ及びユース2030(Youth2030-UN Strategy on Youth)に基づきユース政策を推進しているほか、社会的包摂、極度の貧困の根絶、格差の是正等を推進することとしている。
・体育・スポーツ分野については、包摂的なスポーツ及び質の高い体育政策の立案を支援するとともに、特にスポーツにおけるドーピングの防止に関する国際規約を実行することによるドーピング防止活動を通してスポーツ・インテグリティを保護することとしている。
 

(2)我が国の主な活動状況
【自然科学分野】
・政府間理事会が設置されている「国際水文学計画(IHP)」、「人間と生物圏(MAB)計画」、「政府間海洋学委員会(IOC)」には、我が国は理事国として参加している。日本ユネスコ国内委員会自然科学小委員会の下に専門分科会を設置して、我が国の参加協力等について審議してきている。
・「国際水文学計画(IHP)」においては、第9期IHP戦略計画(2022-2029)の策定のために設置された専門家で構成されるタスクフォースに、我が国からIHP分科会委員が参加している。また、ユネスコに対する我が国の任意拠出金「ユネスコ地球規模の課題解決のための科学事業信託基金」を通じて、アジア太平洋地域運営委員会(RSC)の運営支援を行い、現在は、当該地域の主要河川データを基にした防災対策手法に関する調査プロジェクトを実施している。RSCには、我が国の研究者が事務局長として参画し、当該地域のネットワーク構築と能力強化において主導的な役割を果たしてきている。さらに、IHP分野のカテゴリー2センターである水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)による科学研究と国際協力活動は高く評価されている。
・「生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)」や「ユネスコ世界ジオパーク」については、自然と人間の共生を実現するモデル地域として我が国も登録数を増やしてきており、それぞれ約10地域となった。これらの事業では、我が国の登録地域における活動において、自然資源の持続可能な管理を行い、地域活性化にも貢献している。国際的なネットワークへの参画により、持続可能な自然資源の保全と利活用について学びあい、更に普及することを目指している。
・海洋分野の取組については、IOCに設置された地域的機関「西太平洋地域小委員会(WESTPAC)」に対する任意拠出金を通じて、我が国は海洋汚染・海の安全回復等に係る専門家育成に資するプロジェクト等の支援を行い、地域の課題に応じた能力開発において主導的な役割を果たしてきている。「国連海洋科学の10年」については、実施計画づくりのための助言機関に日本人専門家が参画しているほか、任意拠出金を通じてIOC事務局の準備活動や地域の実施計画策定ワークショップの東京開催(2019年7月末)等を支援し、我が国の海洋科学コミュニティの先進的知見を生かした貢献を行っている。

【人文科学分野】
・日本はIBCの活動を助言する立場にある政府間生命倫理委員会(IGBC)の委員国として議論に貢献している。また、生命倫理分野の有識者(後に日本ユネスコ国内委員会委員として就任)がユネスコ事務局長による指名を受けて、IBCの委員となっている。
・遺伝子編集及びAIの倫理に関し、日本はユネスコにおける検討初期から支援を表明。2018年9月に開催された第1回「遺伝子編集及び人工知能(AI)に関するラウンドテーブル」を文部科学省信託基金において支援したほか、日本人有識者がパネリストとして登壇しており、第2回以降のラウンドテーブルも文部科学省科学信託基金において支援する予定。また、2019年3月の「AIの倫理に関するハイレベル会合」を外務省信託基金において支援するとともに、外務大臣政務官及び日本人有識者が参加するなど、ユネスコにおけるイニシアティブを支持している。
・国内においては、生命倫理分野について、内閣府総合科学技術・イノベーション会議生命倫理専門調査会において、ヒトES細胞の樹立・分配・使用に関する指針や、特定胚、ヒト胚の取り扱いに関する指針などについての調査・検討を実施。現在、昨今の遺伝子編集技術の急激な進展を踏まえ、2001年に策定した「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」の見直しを進めているところである。
・また、AIについては、統合イノベーション戦略推進会議人間中心のAI社会原則会議において、AIが社会に受け入れられ適正に利用されるため、社会が考慮すべき倫理等に関する基本原則について検討し、2019年3月に、「人間中心のAI社会原則」がとりまとめられたところである。
・体育・スポーツ分野については、日本は、体育・スポーツ担当大臣等国際会議(MINEPS)に参加するとともに、MINEPSの政策決定の実行を担う体育・スポーツの政府間委員会(CICEPS)において副議長を務めるなど、積極的に議論や取組に貢献している。

3.文化分野

(1)ユネスコにおける主な取組の現状
・「文化遺産の保護、理解増進及び継承」と「創造性及び文化的表現の多様性の涵養」の二つの戦略目的の下、文化局が所管している7つの文化関係条約の効果的な履行を促進することで、加盟国の開発戦略等に文化的観点を組み込み、地域における文化遺産の保護・理解増進、創造産業の振興、文化多様性の確保に取り組んでいる。
(参考)文化関係条約
・武力紛争の際の文化財の保護のための条約(ハーグ条約)(1954)
・文化財の不法な輸入、輸出及び所有権譲渡の禁止及び防止の手段に関する条約(1970)
・改正万国著作権条約 (1971)
・世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約 (1972)
・水中文化遺産保護に関する条約 (2001)
・無形文化遺産の保護に関する条約 (2003)
・文化的表現の多様性の保護及び促進に関する条約 (2005)
・これらの文化政策は、文化的・創造的産業の振興による地域コミュニティの再生や多様な文化の保護と異文化交流の促進を通じた文化間における相互理解の促進にもつながるものであり、SDGsのうち、SDG11(住み続けられるまちづくりを)及びSDG16(平和と公正をすべての人に)の達成に貢献するものとして推進されている。また、SDGターゲット4.7における文化多様性の尊重に資するものとして世界遺産・無形文化遺産に関する遺産教育が進められている。

(2)我が国の主な活動状況
・日本は特に、世界遺産条約や無形文化遺産保護条約など文化関連条約の履行・運用に積極に参画している。こうした条約の運用に中心的役割を果たす世界遺産委員会の委員国を通算3期(1993年~1999年、2003年~2007年、2011年~2015年)、また、無形文化遺産保護条約政府間委員会の委員国を通算3期(2006年~2008年、2010年~2014年、2018年~現在)務め、国際的な文化遺産保護に向け、我が国の知見を生かしながら条約履行に寄与している。なお、日本国内の世界遺産は現在23件(うち文化遺産19件)、無形文化遺産(代表一覧表記載案件)は21件を数える。
・また、文化多様性の保護・促進の国際協力体制に参画し、同分野における日本の積極的な取組みの姿勢を改めて示すこと及び自国の文化産業を促進することが重要との認識の下、文化多様性条約の締結について検討を行っているところである。
・ユネスコ創造都市ネットワークについて、現在、神戸市、名古屋市、金沢市、札幌市、鶴岡市、浜松市、丹波篠山市、山形市が加盟都市となっている他、現在旭川市及び石垣市を我が国からユネスコに対して推薦中である。
・また、我が国はこれまで、外務省信託基金等を通じ、アンコールワット(カンボジア)、バーミヤン(アフガニスタン)など、海外の世界文化遺産の修復事業に貢献してきたところ。現在は、中央アジアにおけるシルクロード関連遺産の世界遺産推薦事業を支援している。

4.コミュニケーション・情報分野

(1)ユネスコにおける主な取組の現状
・ユネスコは、設置目的である国際平和と人類の共通の福祉という目的を促進するため、ユネスコ憲章に従い、「言語及び表象による思想の自由な交流」の旗振り役として、主に、表現の自由、メディア開発、情報と知識へのアクセスを促進してきている。これらは、SDGターゲット16.10に掲げられている、情報への公共アクセスと基本的表現の保護に貢献する取組である。
・情報と知識へのアクセスの促進においては、「国際コミュニケーション開発計画(IPDC)」や「全ての人のための情報計画(IFAP)」等を通じて、デジタル・ディバイドによる情報格差を縮小し、情報知識基盤型社会の構築に貢献している。ICTを通じた情報と知識への普遍的アクセスを推進するため、オープン教育リソース(OER)、及び科学情報へのオープンアクセス等の促進も行っている。さらに、オンラインでのヘイトスピーチや情報不足による誤った情報発信などをなくしていくため、表現の自由や人権擁護の普及とともに、メディア情報リテラシーの能力向上に取り組んでいる。
・また、ユネスコ「世界の記憶」事業は、世界の人々の記憶にとどめ後世に伝えるべき重要な記録物を登録することにより、そうした記録物に対する認識を高めるとともに、最適な技術による保全・保護及びアクセスの向上を促進することを目的としており、人類の表現の多様性とその普及・振興にも貢献しようとしている。
・「世界の記憶」事業については、制度改善の取組が進行中であり、新規申請は2017年12月以降凍結されている。第205回ユネスコ執行委員会において採択された制度の包括的見直しに係る行動計画に基づいて、現在、加盟国によるワーキンググループにおける検討が行われており、国際諮問委員会(IAC)を始めとする専門家による議論の結果も踏まえた上で、本年10月の第207回執行委員会に最終統合報告書が提出される予定である。
・現在、ユネスコは、AIが与える影響に関する課題提起とSDGs達成のためのAI活用の促進を、局横断的な取組として位置付けており、情報・コミュニケーション局がその調整窓口の役目を担っている。

(2)我が国の主な活動状況
・我が国では、第5期科学技術基本計画において、デジタル化が進んだ未来社会像としてSociety5.0を提唱し、モノのインターネット化(IoT)により全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報を共有し、新たな価値観を生み出して課題や困難を克服することを目指している。また、AIの活用や社会の変革(イノベーション)を通じて社会課題解決や新たな価値創造がもたらされる可能性を指摘し、経済発展と社会課題の解決を両立する社会の構築を推進している。具体的には、AIの適切で積極的な社会実装を推進するための「人間中心のAI社会原則」を決定したほか、AI時代に対応した人材育成方策を含む「AI戦略2019」を取りまとめた。また、先進技術を効果的に活用し、多様な背景を伴った子供たちを誰一人取り残すことのない、公正に個別最適化された学びの実現を目指している。また、様々な高等教育機関や研究機関を通じ、AI時代における未来の社会経済活動、雇用、社会保障のあり方等に関して積極的に情報発信を行なっている。
・我が国は、オープンサイエンスの基本的な方針に基づき、知識の開放によるイノベーション基盤構築に取り組んでいる。多くの大学等において、機関リポジトリが設けられているほか、科研費論文など公的な研究資金による研究成果については、誰でも無料で閲覧可能とすべきという観点から、オープンアクセス化が推奨されている。国立国会図書館などの公共機関においても多様なデジタル情報資源の利活用が推進されている。
・我が国は、「世界の記憶」事業への参画を通じて、国内の重要な記録物の保全・保護等に取り組んでおり、これまでに日本から申請(他国との共同申請を含む)し、登録された記録物は7件となっており、また、これとは別に「世界の記憶」アジア太平洋地域委員会(MOWCAP)が決定する地域登録に1件が登録されている。また、我が国として、より適切な事業運営の確保、及びそれを通じた世界的に重要な記録物の保全・保護等に貢献するため、2017年から「世界の記憶」協力事業信託基金を拠出している。この信託基金により、記録物の適切な保全・保護の担い手となる人材の育成に貢献するとともに、公文書館、博物館、図書館等の記録物関連機関や研究者の有する知識・技術を共有・伝達することを目的としたグローバル・ポリシー・フォーラムを開催している。加えて、制度の包括的見直しの面においても、加盟国ワーキンググループにおける議論に積極的に参画し、加盟国が申請・審査・決定プロセスの全てにおいて意思決定に関与する実効的な仕組みを構築するためにリーダーシップを発揮している。

5.普及分野

(1)ユネスコにおける主な取組の現状
・ユネスコ活動の普及に関しては、現在、事務局長のリーダーシップの下進められている「戦略的なユネスコ改革」の中で、1.コミュニケーション、2.民間セクターとの戦略的パートナーシップ、そして3.世界におけるユネスコのプレゼンス向上が重要なテーマとなっている。具体的には、
1.コミュニケーションについては、ユネスコのイメージ向上、多様なメディアやユネスコネットワークの活用など、
2.戦略的パートナーシップについては、パートナーシップのマネジメントプロセスの洗練化など、
3.ユネスコのプレゼンス向上については、戦略的目標への貢献や国連内の他機関との強化に向けた組織再編など
が目指されているところである。
・これらのテーマそれぞれについて、具体的改革案を検討するための作業部会が設置されている。現在報告されている各作業部会の進捗状況については、次のとおりである。
 1.コミュニケーションについては、ユネスコのコミュニケーションに関する新たな構造やフローの提案を含むレビューを行ったほか、新たなソーシャルメディアポリシーの策定に向けた調整が行われた。
 2.戦略的パートナーシップについては、現行の「包括的パートナーシップ戦略」の改訂に向けた予備的勧告が行われた。この勧告では、これまでの戦略で明示されてこなかったパートナーを含めることや、ユース、都市、民間セクターといった層との関係強化が提言された。なお、実際の改訂版については、第207回執行委員会において提出される予定である。
 3.ユネスコのプレゼンス向上については、フィールド組織の改善に資するよう、世界におけるユネスコのプレゼンスに関する新たな原理と基準を提案したほか、フィールド事務所を巻き込んだ意見交換を行った。
・また、ユースの参加拡大については、2014-2021ユネスコ・ユース事業戦略に基づき、若者が自らに関係する政策やプログラムに関与し、自分の国やコミュニティにおける平和構築や持続可能な発展を主導することを目指している。この戦略は、人文・社会科学局を中心に、ユース関係事業実施に当たっての重要な指針となってはいるものの、より分野横断的かつ部局横断的な定着を進めることが今後の課題として指摘されている。
・これらのテーマについては、今後更に検討が進められ、検討結果は今後の中期計画や事業計画・事業予算に反映される予定である。

(2)我が国の主な活動状況
・我が国におけるユネスコ活動の普及については、1947年に設立されたユネスコ協力会(後のユネスコ協会)による民間ユネスコ運動に端を発し、今年で30周年を迎える「世界寺子屋運動」やユネスコスクールを中心としたESDの実践、ユネスコエコパーク・ジオパーク等の地域横断的な取組による自然の利活用や科学の普及(海洋科学、水資源等)、そして世界遺産や無形文化遺産の保存活用等、様々な分野・レベルのネットワークを通じて実施されてきている。
・全国規模の普及活動としては、ユネスコ協会が毎年実施する民間ユネスコ運動を主体とした「日本ユネスコ運動全国大会」を始め、「ユネスコスクール全国大会」、「ESD日本ユース・コンファレンス」等におけるESDの普及促進や、ESD活動支援センターによる、ESDに関する各ステークホルダーの繋がりを構築・強化することを目的とした「ESD推進ネットワーク全国フォーラム」等が毎年開催されている。
・各地域においては、地域のユネスコ協会やユネスコスクール、ESDコンソーシアムESD活動支援センター等のネットワークを通じた普及活動、ユネスコの各種登録制度を生かした普及活動なども展開されている。
・また、近年では日本ユネスコ国内委員会をはじめ各主体がソーシャルメディアを用いた普及活動にも積極的に取り組んでいる他、2012年からは日本ユネスコ国内委員会において「広報大使」を任命し、学校への訪問や「子ども霞ヶ関見学デー」におけるユネスコ活動の広報等を実施している。
・ユネスコの理念を実現するために、それぞれの担い手が創意に基づくユネスコ活動の実践及び普及活動に努めているが、長年の担い手であるユネスコ協会においても、会員数減や高齢化、活動の地域差などが課題となっている。各地域においては、社会の変化への対応の観点から、ユネスコ活動が直面する課題の克服に向けて努力する例も見られるものの、現在ユネスコ活動の大きな柱となっているESDやSDGsに対する理解や認識の深まりが、必ずしも十分とは言えない状況である。
・一方で、SDGsに向けた取組全体に目を向ければ、従来のユネスコ活動の担い手に加えて、その他のNPOや民間企業など多様なステークホルダーによる取組の広がりがみられるところである。こうした取組とユネスコ活動は理念を共有していると考えられることから、SDGsの達成に資するESDの深化をはかるべく、多くの担い手がユネスコ精神を生かして連携・協働できるようなネットワークの構築が目指されている。

6.行財政分野

(1)ユネスコにおける主な取組の現状
・ユネスコは、2011年のパレスチナのユネスコ加盟により、最大財政貢献国であった米国が分担金支払を停止することとなった。その後、米国はそのまま加盟国として留まっていたが、ユネスコの政治化や改革の遅滞などを理由に、2018年末に正式に脱退、同時にイスラエルも脱退する等、厳しい財政状況が継続している。
・このような状況を踏まえ、2017年に就任して以降、アズレー事務局長は、「戦略的なユネスコ改革」に取り組んでおり、2030アジェンダ達成に向けた事業の実施促進及びユネスコ所掌分野の国連システム内での主導的役割の確保を目指し、1.構造改革、2.作業効率性の強化、3.2030年に向けての戦略の策定(事業改革)等を進めている。
・改革の成果については、第41回総会(2021年秋)において承認される8か年の中期戦略(2022年~2029年)及び2か年事業予算(2022年~2025年)に、反映させることを目標としている。

(2)我が国の主な活動状況
・日本政府は、アズレー事務局長の主導による「世界の記憶」事業の制度改善や「戦略的なユネスコ改革」の取組みを高く評価すると共に、改革の内容には加盟国の意見も反映されるべきであるとの立場から、本年7月に実施された各局ADG(事務局長補)と加盟国の会合に出席、積極的に意見交換を行った。加盟国として改革のプロセスに積極的に関与し、ユネスコが行政改革を実現し、行政及び財政の両面において更なる効率化が図られることを目指している。

(b) 2020-2021年のユネスコ事業に関する我が国の基本的方針

1.総論

・加盟国中第2位の分担金を担い、各分野に信託基金等の拠出を行う我が国には、日本の強みを生かしながら、ユネスコの中期戦略に基づいた各分野での目標達成に貢献していくとともに、ユネスコにおける議論を先導していく役割が期待される。
・我が国におけるユネスコ活動の推進においては、ユネスコの中期戦略における包括的目標のなかで、「平和(持続的な平和への貢献)」と「持続可能な開発(持続可能な開発と貧困撲滅への貢献)」の二つに重点が置かれていること、また我が国の近年の社会情勢を踏まえ取り組んでいくことが重要である。
・我が国の主な活動としては、日本が提唱国となっているESDの推進に関する新たな枠組みであるESD for 2030や、2021年から開始される「国連海洋科学の10年」等について、積極的に国際貢献を進める。我が国の事業展開において、ユネスコ活動を通じた、多文化共生の考え方に基づく教育や異文化理解の機会提供の促進を図ることとする。また、事業の企画に際しては、当該分野の関係者のみならず、地域コミュニティや多様なステークホルダーとのコミュニケーションを図りながら取り組むこととする。
・また、これらの活動がSDGs達成に貢献する取組となるよう、引き続き国内外で推進する。

2.教育分野

(1)日本の強みを生かした国際貢献 
・我が国は、ESDなどの重点分野におけるアジア太平洋を中心とした地域の取組を、任意拠出金を通じて支援してきている。こうした長年にわたる地道な支援は、各国の教育の量的・質的向上に貢献していることはもちろんのこと、様々な国際場裡において、日本の存在感を示す上でも間接的に効果を発揮していると考えられ、今後とも継続的に支援していくことが重要である。
・具体的な支援方法については、これまでは、会議等の開催経費や参加者の旅費等をパッケージで支援してきているが、近年は、アジア全体の資金力の増加に伴い、会議開催や専門家の出席に係る経費は地域機関や各国において支弁できるケースも増えており、従来の支援の在り方では、日本としての協力をアピールしにくくなってきている。
・今後、支援のビジビリティを高め我が国の存在感を維持するためには、従来の支援方法を見直し、これまで信託基金を通じて構築されてきた各国との関係を更に強化しつつ、教育分野における日本の強みとユネスコの専門性を生かした協力の在り方を更に追究していくことが重要である。
・日本の強みとしては、1.「持続可能な社会の創り手」を育成することが学習指導要領に位置づけられるなど、公教育の理念とユネスコの理念が合致していること、2.地方自治体や地域の関係団体がユネスコ活動を地域レベルで支えていること、3.企業やNPOなど多様なステークホルダーが持続可能な社会づくりに関心をもって活動していること、などが挙げられる。こうした中で蓄積されてきた日本の事例や知見を生かしつつ、教育コンテンツの共同研究・開発や、教育内容や指導法等の工夫・改善支援、対話・交流や人材育成等を活性化するためのネットワーク形成といった、日本の強みを生かした質的な支援にシフトしていくことが重要である。
・その際、日本がこれまで貢献してきたODAによる二国間の教育協力や日本型教育の海外展開推進事業(EDU-Portニッポン)等とも成果を共有しつつ、協力の相乗効果を図っていくことが期待される。

(2)多文化共生の考え方に基づく我が国の教育機会の提供
・近年、我が国に在留する外国人は増加しており、深刻な人手不足を踏まえ、入管法等改正により新たな在留資格「特定技能」が創設されたことなどを受け、今後も更なる増加が予想されるところである。一方、世界に目を向ければ、外国人受入れに伴って、望ましい形での共生が実現できずに生じた社会的な分断は大きな課題となっている。こうした諸外国の多文化社会における複雑な現実を十分に理解し、多文化共生を実現するために、日本社会と外国人コミュニティ双方の視点を考慮した対応を積極的に講じていくことが重要である。
・外国人の受入れ・共生は、我が国に豊かさをもたらすものであり、外国人が日本人とともに今後の日本社会を作り上げていく大切な社会の一員であることを認識し、日本人と外国人がともに尊重し合い、さまざまな課題に対して協働していくことのできる環境を構築することが重要である。
・我が国は、「人類の心の中に平和の砦を築く」というユネスコ憲章の理念のもと、国内外で多文化共生の考え方に基づく多様なユネスコ活動を展開してきている。こうした長年の実績を受け継ぎつつ、将来にわたって新たな時代における共生社会を実現するために必要な活動を展開していくことが求められる。

(3)ユネスコ活動の基盤強化 
・国内外のユネスコ活動には、長年地域のユネスコ活動を支えてきているユネスコ協会や、世界一の数を誇るユネスコスクールのネットワーク、ユネスコチェアとなっている大学等はもちろんのこと、GAPキーパートナーとなっている地方自治体やNPO、公益法人なども含め、多くの組織や個人が関わっている。
・今後、個々の活動の質を高めていくのみならず、多様なステークホルダー同士の連携を深め、オールジャパンでの戦略的な取組を推進し、我が国のユネスコ活動の未来を共創するプラットフォームの構築が望まれる。

3.自然科学及び人文・社会科学分野

【自然科学分野】
(1)日本の知見を生かした国際貢献
・我が国は、海洋、水、生物多様性分野などの重点分野におけるアジア太平洋を中心とした地域の取組を、任意拠出金を通じて支援してきている。こうした長年にわたる地道な支援は、ユネスコ事業における研究者・専門家の地域ネットワークの基盤づくりと各国の能力開発に貢献していることはもちろんのこと、様々な国際場裡において、日本の存在感を示すとともに諸外国と良好な関係を構築する上でも間接的に効果を発揮していると考えられ、今後とも継続的に支援していくことが重要である。 
・具体的な支援方法については、ユネスコの政策形成、プロジェクト企画・実施において我が国の科学的知見を活かせるよう日本人専門家とともに協力・支援してきており、こうした手法は我が国の国際協力に関する能力開発にも寄与するとともに、国内の大学等の国際化やユネスコ活動の発展にも貢献していると考えられ、重要である。
・「国連海洋科学の10年」の2021年開始に向けて、我が国は先進的知見を持って世界の議論への積極的な貢献が期待されている。安全で平和な海洋環境を築くため、WESTPACや北太平洋海洋科学機関(PICES)をはじめとした世界の海洋科学コミュニティとの連携・協働を進めることが望まれる。また、地域計画策定過程の議論を踏まえて、国内において、持続可能な海洋の保護と利活用における科学の重要性について幅広いステークホルダーに普及するとともに、必要な活動を日本ユネスコ国内委員会として推進していくことが求められる。

(2)地域活性化と学際的・包摂的なアプローチに基づく連携促進
・ユネスコ科学事業において、科学の知見を生かして地球規模での課題に取組み、自然資源の持続可能な保全と利活用や自然災害にも強い社会づくりとSDGsの達成に寄与していく上では、日本が提唱した「サステイナビリティ・サイエンス」の考えのもと、我が国における事業展開においても自然科学のみならず人文・社会学的視点をもって、地域コミュニティや多様なステークホルダーとのコミュニケーションを図りながら取り組むことが求められる。ユネスコ活動の担い手である個人の研究者のみならず、ユネスコカテゴリー2センターやユネスコチェアとなっている大学等機関においても、地域との連携を促進することが望まれる。
・特に、ユネスコエコパークやユネスコ世界ジオパークは、自然と人間の共生を実現するモデル地域における取組という性質から、SDG15(陸の豊かさも守ろう)のほかSDG8(働きがいも経済成長も)、11(住み続けられるまちづくりを)、12(つくる責任つかう責任)、13(気候変動に具体的な対策を)をはじめとした複数の目標に横断的に寄与する。このため、ユネスコにおいても事業間連携の促進が謳われている。地域でのSDGs達成を具現化する取組として我が国においてもビジビリティが高まりつつある中、事業の枠を超えて、地域活性化及びSDGs達成という共通目標の下、他のユネスコ登録事業等との連携を推進していくことが重要である。
・日本が提唱・主導するESD分野において2020年以降の新たな枠組みであるESD for 2030(2020年~2030年)が策定される予定であり、「国連海洋科学の10年(2021年~2030年)」をはじめ、あらゆる科学事業との相乗効果を得られるよう、積極的な仕掛けづくりが求められる。

【人文・社会科学分野】
(1)日本の知見を生かした国際貢献
・我が国は、AIをはじめとする先端技術を社会の課題解決に有効に利用するとともに、統合イノベーション戦略推進会議等において、倫理的側面についても検討を行ってきた。これまでの活動により蓄積された知見をもって、ユネスコの議論に貢献していくことが重要である。
・特に、「AIの倫理」に関する規範的文書の策定については、我が国の考え・価値観を国際ルールに反映する機会であり、草案検討段階から積極的に議論に参画することが必要である。
・また、我が国においては社会の変革の担い手であるユース世代によるSDGs達成に向けた自主的・独創的な国際交流活動が各地で展開されており、これらを更に推進するために能力向上、ネットワーク構築等の多様な支援を行うことが重要である。
・体育・スポーツ分野においては、引き続き、スポーツ分野における日本の国際的地位を高めていくため、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催国として、積極的に国際的なスポーツ政策づくりに貢献していくことが重要である。

(2)加盟国・ステークホルダー間の対話の機会の提供
・倫理や人権といった、前提となる価値観により課題に対する認識が大きく異なるトピックについては、異なる文化・立場から幅広く参画を得て議論を重ねていくことが重要である。ユネスコにおける分野横断的かつ多様なステークホルダーとの対話の充実に日本としても貢献する必要がある。
・特に、変化の担い手(agents of change)となる若者の参画を得ることが重要であり、我が国としても、ユネスコスクール等の協力を得つつ、国際的な議論への日本のユースの参加を積極的に支援する。

(3)人文・社会科学と自然科学・工学等との連携強化
・科学技術の進展のもたらす社会的な影響については、人文・社会科学及び自然科学や工学といった学際的な観点からの議論が重要である。我が国は、学際的な議論を推進する立場から、ユネスコにおいてサステイナビリティサイエンス・アプローチに関する議論を主導するとともに、文部科学省信託基金事業により、サステイナビリティ・サイエンスに関するガイドライン作成といったユネスコの取組みを支援した。これらの実績を踏まえ、今後も人文・社会科学と他分野の更なる連携を推進する。

4.文化分野

(1)日本の強みを生かした国際貢献
・我が国は、ユネスコを中心とした文化遺産保護の国際的な取組に先駆け、1950年に制定された文化財保護法に基づき国内の文化財保護に取り組んできており、国際的にも高い水準にある修復技術や知見を蓄積してきた。2006年には文化遺産国際協力推進法が制定され、国内で培った豊富な知見を海外の文化遺産保存修復にも活用していくため、文化遺産国際協力コンソーシアムが設立されるなど、国際協力をオールジャパンで推進していく体制が構築されている。世界各地で自然災害や紛争等による文化遺産への被害が後を絶たない現状において、各種プロジェクトへの邦人専門家等の派遣など、今後ますます我が国の高い専門性を生かした国際貢献を推進していくことが重要である。

(2)多文化共生の考え方に基づく異文化理解の機会提供
・異文化間の理解促進はユネスコの根幹的使命の一つである。文化関係条約の履行推進は、個別の文化遺産の保護にとどまらず、世界の文化の多様性を保持することにも貢献するものであり、異文化理解の契機となる。我が国の有形・無形の文化遺産の国際的な登録のみならず、登録後の世界への発信や、世界各地の様々な文化遺産を守り伝える主体との双方向の交流促進に努めることが望まれる。

(3)ユネスコ活動の基盤強化
・ユネスコの関連条約の中でも、特に世界遺産条約や無形文化遺産保護条約は国内でも認知度が高く、ユネスコのシンボルともなっている。これを踏まえ、今後国内において、ユネスコスクールや各地のユネスコ協会等の協力を得ながら、認知度の高い世界遺産等の保護・普及・継承を通じたユネスコ文化活動の発展が望まれる。また、文化遺産の保護・継承に次世代の存在は欠かせないものであり、上記活動を通じたユネスコ活動の次世代を担う人材の育成も望まれる。
 また、美術館・博物館・劇場等は、展示や演劇といった手法で、文化芸術の推進のみならずSDGsやESDの推進を含むユネスコ活動の普及啓発においてメディアのような役割を果たすことが可能であり、今後の地域における活動の主体として連携を進めることが望まれる。
・ユネスコカテゴリー2センターである国立文化財機構アジア太平洋無形文化遺産研究センターを通じ、アジア太平洋地域における無形文化遺産研究に貢献する。また、アジア太平洋地域における無形文化遺産保護のため、国内外の機関と連携しつつ、ユネスコのカテゴリー2センターにおける日中韓の協力を引き続き推進する。
・創造産業の振興を図る上で、ユネスコ創造都市ネットワークへ加盟している都市間の交流やその他地域との連携も重要である。

5.コミュニケーション・情報分野

(1)日本の知見を生かした国際貢献 
・我が国は、AIをはじめとする先端技術を社会の課題解決に有効に利用するとともに、統合イノベーション戦略推進会議等において、AIの倫理的側面についても検討を行ってきた。AIを含む先進的な科学技術の活用にあたっては、社会への影響力が大きいがゆえに、適切な開発と社会実装が求められる。今後は、社会のための科学技術、社会のなかの科学技術という観点に立って、科学技術と社会の関係の課題に取り組むことが不可欠である。先に述べたような、AI時代の到来を念頭に置いた様々な方針において、倫理的観点の重要性への言及がなされていることも踏まえつつ、これまでの活動により蓄積された知見をもって、ユネスコの議論に貢献していくことが重要である。
・特に、「AIの倫理」に関する規範的文書の策定については、我が国の考え・価値観を国際ルールに反映する機会であり、草案検討段階から積極的に議論に参画することが必要である。

(2)「世界の記憶」事業の包括的見直しを含む適切な事業運営のための支援
・「世界の記憶」事業の政治化を防ぎ、加盟国間の友好と相互理解の促進というユネスコ設立本来の趣旨・目的に一層貢献できるようにすることは、最優先の課題であり、制度の包括的見直しに引き続き総力を挙げて戦略的に取り組む必要がある。
・それとともに、「世界の記憶」協力事業信託基金を継続的に拠出し、文書の修復及びデジタルアーカイブ化の技術並びに東日本大震災等の経験を通じて得られた防災に関する知見といった我が国の強みを十分に活用しつつ、記録物の保全・保護等に係る戦略的・重点的な支援を進めることにより、制度改善後に我が国がより主導的な立場を確保できるようにすることが強く求められる。なお、当該支援を実施する上では、前記のグローバル・ポリシー・フォーラムの開催等を通じて把握された加盟国のニーズに配慮すること、及び各種プロジェクトへの邦人専門家の主体的な参画を推進することが必要である。
・また、「世界の記憶」アジア太平洋地域委員会(MOWCAP)についても、2018年5月に開催された第8回MOWCAP総会における決定に従い、国際登録の制度改善の結果と整合性・一貫性を持つよう、制度の見直しが議論される予定である。国際登録の制度の包括的見直しに取り組んだ経験を生かして、MOWCAPの制度の見直しにおいても積極的なリーダーシップを発揮することにより、地域登録も含めた枠組みである「世界の記憶」事業全体の適切な運営を促進することが極めて重要である。
・そして、アジア太平洋地域における記録物の保全・保護等に係る支援を進めていくにあたっては、当該地域の自然・社会環境の多様性を背景にして、媒体の形態や保存状態が異なる記録物が存在していることに鑑み、各国の実情に応じた記録物の保全・保護やアクセスの確保を含めた適切な管理のための支援を進める必要がある。また、ラテンアメリカ・カリブ海地域やアフリカ地域の「世界の記憶」地域委員会との連携も視野に入れ、より効果的な取組みを促進することも望まれるところである。

6.普及分野

(1)新たな地域課題を踏まえたユネスコ活動の活性化
・我が国の発展を支えてきた地方の活力を維持していくため、各地域がその特色を生かして活性化を図っていくことが喫緊の課題となっている。ユネスコが行う各種登録事業等は、地方の自然や文化を生かしたまちづくりのきっかけとなる枠組みでもあり、ESDの実践や地域版SDGsのような取組と連携した人材育成や地方創生に資する包括的なアプローチとして捉え直し、これを地域の特色あるユネスコ活動として活性化することが望まれる。
・また、近年、入管法等改正により新たな在留資格「特定技能」が創設されたことなどを受け、我が国に在留する外国人は増加しており、今後も更なる増加が予想されるところである。地域の国際化に対応して、各地域で在留外国人が共に生活できる環境づくり、異文化理解・多文化共生社会をめざしたユネスコ活動が期待される。

(2)世代を超えて持続可能なユネスコ活動
・地域のユネスコ活動を持続可能なものとしていくためには、ユースの参加が欠かせない。ユネスコの理念を継承する次世代の育成を図るためにも、子供やユース層を対象に展開するユネスコ活動の充実を図るとともに、大学のユネスコクラブにおける活動を発信するなど、若者に対しユネスコ活動が分かりやすく魅力的なものとなるような工夫が求められる。
・同時に、ユネスコ活動を更に強力に推進するためには、ユースにとどまらず、働く世代や退職後のシニア層にとっても魅力的なユネスコ活動の在り方を追求することも重要である。現在、民間企業でもSDGsが高い関心を集めており、この流れを捉えて、ユネスコ活動への共感と協力を得ていく必要がある。また、個々人が培ってきた経験や専門性、ネットワークを生かせる場として、ユネスコ活動の充実を図っていくことが期待される。

(3)多様な担い手が連携するプラットフォームづくり
・国内外のユネスコ活動には、長年地域のユネスコ活動を支えてきているユネスコ協会や、世界一の数を誇るユネスコスクールのネットワーク、ユネスコチェアとなっている大学等はもちろんのこと、地方自治体やNPO、公益法人、企業なども含め、多くの組織や個人が関わっている。今後、個々の活動の質を高めていくのみならず、多様なステークホルダー同士の連携を深め、オールジャパンでの戦略的な取組を推進し、我が国のユネスコ活動の未来を共創するプラットフォームの構築が望まれる。

7.行財政分野

・我が国は、ユネスコが、加盟国と協同しつつ国際的なプレゼンスを一層高め、SDGs達成への貢献を含め、その使命を引き続き果たすことが重要であると考えている。そのために、アズレー事務局長の「戦略的なユネスコ改革」による改革が重要であると高く評価し、改革によって、ユネスコがより効率的な組織運営と確実かつ効果的な事業の実施を実現、ユネスコの所掌分野において、国連システム内における主導的役割を確保できるよう、加盟国として、引き続き積極的に関与していく。

 

B.第40回ユネスコ総会における2020-2021年事業・予算案(40C/5)等に関する我が国の対応方針

1.総論

・今次総会の主要議題である40C/5案は、現中期戦略(37C/4:2014-2021)の後半期の2年間における事業の実施状況を踏まえ、中期戦略の達成に向けて終盤の2年間に重点的に行うべき課題が明確にされることが重要である。
・ユネスコの現中期戦略における包括的目標は「平和(持続的な平和への貢献)」と「持続可能な開発(持続可能な開発と貧困撲滅への貢献)」の二つに重点が置かれている。ユネスコにおいては、他の国連機関及び国際機関と調整・連携し、SDGs達成への貢献度を更に高めていくことを期待する。
・また、ユネスコにおける厳しい財政状況ならび国連をはじめとする国際機関における行財政改革の必要性が加盟国間で認識されているなか、ユネスコにおいては、引き続き事務局による事業の精選・重点化及び機構定員・管理運営の合理化・改善への取組が一層進められることを求める。
・ユネスコの事業の実施にあたり、我が国は教育、科学、文化、コミュニケーション・情報等分野において、効率かつ効果的な事業の実施の実現に協力するとともに、日本の強みを生かした国際貢献を行う。

2.教育分野

ユネスコ憲章や教育基本法にのっとり、人類の重要な権利の一つである教育を受ける権利を保障し、変化の激しい時代にあっても一人一人が「持続可能な社会の創り手」となれるようにすることが求められている。教育がよりよい人生やよりよい社会の実現にどのように貢献しているかを考え、人類共通の利益としての教育、知識の重要性を再認識し、ユネスコ活動の充実を図っていくことが重要である。

(1) SDG4(質の高い教育をみんなに)の実施に係る主導的役割と、SDGs達成に資するESDの更なる充実
・我が国が提唱したESDは、分野横断的に全てのSDGsの目標達成に貢献するものである。気候変動などの諸課題に直面する社会の中で、自ら解決策を見出すことのできる次世代の育成を目指すにあたって有効であり、ユネスコにとっても引き続き重要な取組である。
・9月の国連気候変動アクションサミットでは、気候変動とESDに関する日・ユネスコ共同イニシアティブへの貢献として、世界のユネスコスクールにおける取組を共有するサイドイベントが開催される予定である。
・また、ESD提唱国である我が国は、秋の総会で採択予定のESD for 2030の立ち上げ直前記念イベントとして、9月に東京でESD for 2030のオープンセッションを開催した。
・教育の国際協力に関する最近の動向としては、7月にユネスコ本部で開催されたG7教育・開発大臣合同会合において、女子教育や職業教育訓練の重要性に光を当てた大臣宣言が採択され、また、8月のTICAD7(第7回アフリカ開発会議)において、SDGsを達成する鍵となる推進力として、STEM(科学・技術・工学・数学)教育を含むあらゆる段階での教育へのコミットメントを再確認する横浜宣言が採択されたこと等が挙げられる。こうした国際的な合意とユネスコの取組とは同じ方向性を目指しており、SDGs実現に向けて協力していくことが望まれる。
・今後もユネスコと協力しつつ、誰一人取り残さない持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現を目指し、前述A (b)に掲げた基本的方針に基づき、SDGsの達成に向けた国際的な議論の活性化に貢献するとともに、信託基金を通じた各国の教育の量的・質的向上を支援するよう求める。

(2)「教育の未来」プロジェクトへの貢献
・国連機関の中で教育のリードエージェンシーであるユネスコが、教育の力で新たな社会を創造し、様々な課題を解決するためのものとして、先般の執行委員会で教育の未来プロジェクトを提案したことを歓迎する。我が国としても、議論のための国際委員会への参加も含めて積極的に関与することを求める。

(3)高等教育の資格の承認に関する規約
・高等教育の資格の相互承認を通じて地域及び世界における高等教育の質の向上・改善を図るため、地域規約については、締約国が増加することで規約がより普遍性を持ったものとなること、また、世界規約については、本年秋のユネスコ総会での採択を前提に、早期発効に向け、加盟国の締結が促進されるとともに地域間連携が進展することが必要である。そのために、ユネスコには、加盟国と協力しながら、政策形成支援、能力開発、国際協力促進、ネットワーク強化等、その役割を果たすことを求める。

(4)先端技術の活用や、他分野との連携
・AIの研究開発や社会実装が急速に進展する中で、AIに対する大きな期待と同時に、AIの発展に対してその利用のあり方に不安や恐れを抱く人もいる。こうした不安を解消しながら、国や地域を問わずAI導入の恩恵を一人一人が受けられるよう、人間中心の社会を作っていくことが必要である。
・我が国では本年3月に「人間中心のAI社会原則」を決定した。この原則は、人々がAIに過度に依存することなく、多様な人々の多様な幸せの追求のためにAIを活用する、持続可能な社会を目指すための7つの原則からなっており、国際的にも参考になりうる。また、全ての国民が数理・データサイエンス・AIの素養を習得できるよう、発達の段階に応じた体系的な養成方策をAI戦略として取りまとめた。こうした国内の議論の成果を、ユネスコにおける議論にも役立てていくことが重要である。
・さらに、先端技術を効果的に活用し、多様な背景を伴った子供たちを誰一人取り残すことのない、公正に個別最適化された学びの実現を目指しているところである。地理的条件に伴う教育格差を、先端技術で解決していく方策なども含め、引き続きユネスコや加盟国と知見を共有していく。
・また、AIについては教育への活用や、倫理面の課題なども検討していく必要がある。ユネスコが局の壁を越えて対応するよう促す。

3.自然科学及び人文・社会科学分野

【自然科学分野】
自然豊かな地球を守り、持続可能な未来を構築していく上で、科学が果たす役割は重要である。我々が直面する地球規模課題に対応していくためには、知識の創造のみならず、人間の安全保障と幸福に貢献する観点からも国際協力による科学の推進の重要性を再認識し、ユネスコの科学事業の発展を促していくことが求められる。

(1)持続可能な未来構築における科学の貢献-SDGs達成に資する横断的アプローチの更なる推進 
・ユネスコは「持続可能な未来構築のための科学」の推進を行ってきている。今次のユネスコ中期戦略(2014-2021)において、科学と社会のインターフェース(接続)を意識して、科学技術イノベーションと政策の強化を掲げている。このためには、人文・社会科学分野からの領域横断的なアプローチが鍵となる。
・ユネスコは自然科学と人文・社会科学の両方を所管する国際機関として、日本が提唱した「サステイナビリティ・サイエンス」の考えのもと、学際的で包摂的なアプローチが可能である。持続可能な地球社会の実現に貢献するためには多様な関係者との協働が重要であり、ユネスコにおいては、教育局を含む分野横断的な協力を積極的に進めるよう期待する。
・ユネスコは自然科学局において、生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)やユネスコ世界ジオパークといった登録事業により、自然と人間の共生に重点を置いたモデル地域における取組を推進している。これらの地域では、気候変動や生物多様性を尊重した、持続可能な発展のためのマネジメントを実践している。また、持続可能な発展のための学び・学びあいを推進している地域であり、SDGs達成を具現化する地域であるとともに、我が国が提唱してきたESDの活動拠点ともいえる。事業の枠を超えた連携をこれら登録地域間で促進し、SDGs達成に貢献することが重要である。
・気候変動の下で災害リスクが激甚化し、被害の増加は先進国、発展途上国両方にみられ深刻な状況を呈している。災害に関する学術的理解が深まってきても、科学技術や経済の成長・発展が必ずしも災害リスクの軽減につながっていない。ユネスコは、カテゴリー2センターやユネスコチェアと連携し、災害リスク軽減のため科学技術と社会の溝を埋めるファシリテータとなる人材育成に更に力を注ぐことが重要である。
・科学と社会のインターフェース(接続)の強化を進めるうえで、オープンサイエンスは世界的な潮流となってきている。ユネスコにおいても「科学と科学研究者に関する勧告(2017年)」や「科学的情報及び研究へのオープンアクセスに関するユネスコ戦略(2011年)」においてオープンサイエンスの推進に言及してきており、更に、オープンサイエンスに特化した規範的文書の策定を計画している。知識の開放によるイノベーション基盤構築は持続可能な開発のために重要であるが、知的財産権等(オープンアンドクローズ戦略を含む)に留意しながら推進していくことが必要である。

(2)持続可能な開発のための国連海洋科学の10年(2021-2030)の推進
・「国連海洋科学の10年」における実施計画づくりは、科学の知見を結集してSDG14(海を守ろう)の達成に貢献する上でも、極めて重要である。ユネスコIOCが主導して、現在、世界のあらゆる地域で実施計画策定に向けたコンサルテーションが開始されている。我が国はIOC-WESTPAC及びPICESと協力して、海洋研究者のみならず官民から幅広く参加を求め、北太平洋地域における会合を7月に東京で開催した。
・「国連海洋科学の10年」の開始までの2020-2021年の間に、海洋に関する重要課題についてテーマ別、地域別、グローバルレベルで特定し、10年の実施計画を策定するためには、可能な限り多様なステークホルダーとのコミュニケーションを図ることが重要である。我が国としても、海洋コミュニティとともに積極的に関与していきたい。

【人文・社会科学分野】
(1)科学技術の倫理(生命倫理、人工知能)に関する議論への貢献
・科学技術の倫理は、科学技術が急速に進展する中で早急に検討すべき重要な課題である。国際的な関心の高いこの課題に対し、ユネスコが対話の機会を提供するとともに、規範的文書の作成も視野に入れた検討を進めようとしていることを歓迎する。また、我が国として議論に貢献する。

(2)他分野との連携
・科学技術の進展のもたらす社会的な影響については、人文・社会科学及び自然科学や工学といった学際的な観点からの議論が重要である。ユネスコが局の壁を越えて対応することを期待している。

4.文化分野

(1)SDGs達成に資する活動を意識した文化政策の推進
・文化遺産の保護、文化的表現の多様性の確保、文化的・創造的産業の促進は、文化の持つ分断を乗り越える力によりあらゆるSDGsの達成に寄与することが可能である。ユネスコにおいて、SDGs達成を意識した文化政策の立案・実施を推進していることを歓迎する。我が国としてもユネスコ活動がSDGs達成の貢献に資するものであることを、積極的に発信すべきである。

(2)他分野との連携
・「世界の記憶」事業の主な目的である記録物の保全・保護や記録物へのアクセスの促進は、文化遺産の保護や博物館振興とも親和性が高く、文化政策と一体的な推進が有効である。また、自然科学局のユネスコエコパーク、ユネスコ世界ジオパーク事業も、自然環境や生態系の保全のみならず地域における文化の継承を目的の一つとしており、人間と自然との共生の上中で培われた文化といった観点から一体的な魅力発信が可能なる。より効果的・効率的な事業運営という観点からも文化局事業との相乗効果が見込まれるものであり、ユネスコが局の壁を超えて連携することを期待する。

5.コミュニケーション・情報分野

あらゆる方法を通じて情報・知識を世界に流通させ、言語・表象による思想の自由な交流を促進することは、国際平和と人類の共通の福祉への貢献といったユネスコの使命を果たしていく上で重要である。ユネスコにおいては、加盟国におけるICTを通じた情報等へのアクセスの確保を推進し、情報技術の有効活用に対する一層の支援の充実が期待される。また、人類の貴重な記録物の保存、アクセスの向上及び普及を推進し、国際平和に貢献することが期待される。

(1)SDGs達成に向けたAI等の技術革新への対応
・ユネスコは、AI等の技術革新がもたらす社会的・人権的影響について考慮し、デジタル時代における基本的権利を振興することが求められる。国際的な関心の高いこの課題に対し、ユネスコが教育や人文・社会科学等の分野における動向も十分に踏まえ、分野横断的な対話の機会を提供するとともに、規範的文書の作成も視野に入れた検討を進めようとしていることを歓迎する。我が国としても議論に貢献しコミュニケーション・情報分野にとどまることなく、教育、科学、文化などの分野における先進的な技術及び適正技術の導入を推進し、SDGs達成に向けたユネスコの施策に積極的に協力していくよう求める。

(2)「世界の記憶」事業の包括的見直し
・ユネスコは、「世界の記憶」事業を通じて、重要な記録物の保全・保護、アクセスの向上、及び普及・振興を推進することにより、社会的・技術的変化が一層加速する現代において、包摂的な知識社会を構築するという非常に重要な使命を担っている。このために、まずは現在進められている制度の包括的見直しを、国際登録、及び地域登録の双方において十全に実現し、ユネスコ自身が加盟国間の政治問題に巻き込まれることなく、「世界の記憶」事業の適切な運営をすることのできる環境を整備することが強く期待される。

(3)「デジタル形式を含む記録遺産の保護及びアクセスに関する勧告」の更なる実施促進
・「デジタル形式を含む記録遺産の保護及びアクセスに関する勧告」については、第38回ユネスコ総会(2015年)において採択され、今回初めて加盟国からの実施状況の報告書が取りまとめられたところである。当該勧告は、記録物の保全・保護、及びアクセスの向上を推進する上で、極めて重要な指針となるものである。ユネスコには、「世界の記憶」事業の適切な運営を確保するためにも、各加盟国における当該勧告の実施を着実に進めるよう推奨し、必要に応じた支援を行うことが期待される。我が国としても、「世界の記憶」協力事業信託基金による記録物の保全・保護等に係る支援を通じて貢献するよう求める。

6.普及分野

(1)「戦略的なユネスコ改革」と軌を一にした取組
・「戦略的なユネスコ改革」のテーマである1.コミュニケーション、2.民間セクターとの戦略的パートナーシップ、3.世界におけるユネスコのプレゼンス向上や、ユースの参加拡大は、我が国のユネスコ活動に関する課題とも共通するものである。ユネスコにおける戦略的な取組を支援するとともに、これらと軌を一にしながら、国内のユネスコ活動の活性化を図っていくことが重要である。

(2)国内の活動成果を世界に発信・共有する機会の拡大
・日頃のユネスコ活動の活動成果を海外に発信することは、国を越えた成果の共有につながるのみならず、今後の活動への活力にもつながるものである。国連主催の各種会議における関連イベントの開催など、我が国の信託基金も効果的に活用しながら、ユネスコ活動の担い手が参加し交流・発信できる場の拡大を引き続き求めていく。

7.行財政分野

・我が国を含む加盟国が、厳しい財政状況にあること及び国連をはじめとする国際機関における行財政改革の必要性が認識されていることに鑑み、ユネスコ通常予算については、引き続き事務局による事業の精選・重点化及び機構定員・管理運営の合理化・改善への取組が継続されることを求めているところ、2020-2021年事業予算(40C/5)に関する議論についても、最大財政貢献国のうちの一つとして最も効率的且つ効果的な予算策定を重視する。

 

C.第40回ユネスコ総会における政府代表

 今次ユネスコ総会については、文部科学大臣が出席するとともに、次に該当する者が政府代表又は政府代表に準ずる資格により出席することが適当であると考える。
1.日本ユネスコ国内委員会委員その他学識経験者であって、今次総会の議事に積極的に貢献できる者
2.日本ユネスコ国内委員会事務総長(文部科学省国際統括官)
3.ユネスコ日本政府代表部特命全権大使
4.その他日本政府代表団が今次総会に積極的に貢献するために必要と認められる者

お問合せ先

国際統括官付

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