ウクライナ情勢に関する日本ユネスコ国内委員会会長声明について

令和4年3月4日

 今般のウクライナ情勢を受け、日本ユネスコ国内委員会会長が声明を発表しましたのでお知らせします。

 

ウクライナ情勢に関する日本ユネスコ国内委員会会長声明

 日本ユネスコ国内委員会は、今次のウクライナ情勢に人道上の重大な懸念を持ち、UNESCO本部の声明(2022年2月24日、3月3日公表)を強く支持します。

 日本ユネスコ国内委員会は、各国のユネスコ国内委員会と連携し、ロシア連邦のウクライナ侵略を最も強い言葉で非難するとともに、ウクライナ国民と共にあることを表明します。また、この侵略に抗議する世界中の文化人、科学者、教育者及び学生・生徒を含む市民との連帯を表明します。

 日本ユネスコ国内委員会は、今次の事態を深く憂慮し、尊い命がこれ以上失われぬよう、対話と交渉による平和的解決が図られることを強く望みます。
 

2022年3月4日 日本ユネスコ国内委員会会長 濵口 道成

以上

 

【参考1】ウクライナ情勢に関するユネスコによる声明(2022年2月24日)(仮訳)

 UNESCOは、ウクライナで進行中の軍事行動と暴力の拡大を深く憂慮している。こうした行動は、国連事務総長が述べたように、ウクライナの領土保全と主権の侵害であり、国際連合憲章に反するものである。

 UNESCOは、あらゆる形態の文化遺産に対する損害の防止を確保するために、国際人道法、特に1954年の「武力紛争の際の文化財の保護に関する条約(ハーグ条約)」とその2つの議定書(1954年、1999年)を尊重するよう求める。

 これは、民主的な社会に不可欠な基盤の一つとして、また市民の保護に貢献する、自由で独立した公平な報道を促すための、紛争におけるジャーナリスト、メディア専門家及び関連要員の保護に関する「国連安全保障理事会決議2222号(2015年)」に基づく義務も含むものである。

 また、UNESCOは、子供や教師、教育関係者、学校に対する攻撃や危害の抑止及び教育を受ける権利が守られるよう求める。

【参考2】ウクライナ:国連決議採択を受けたユネスコ声明(2022年3月3日)(仮訳)

 国連総会におけるウクライナに対する侵略に関する決議採択とウクライナにおける暴力の壊滅的な拡大を踏まえ、UNESCOは、ウクライナの動向を深く憂慮し、UNESCOの活動分野(特に教育、文化、遺産、情報)における被害の把握と緊急支援活動を行う。

 国連総会決議は、国連憲章が最も重要であることを再確認するとともに、国際的に認められた領土内におけるウクライナの主権、独立、統一及び領土保全に対するコミットメントを再確認し、「ロシア連邦がウクライナに対する武力行使を直ちに停止すること」を求めている。

 オドレー・アズレー事務局長は、国連総会特別セッションにおいて国連事務総長が行った冒頭発言「子供を含む一般市民の死をもたらす、暴力の拡大は、全く受け入れることはできない」に強く同意する。

 また、アズレー事務局長は「ウクライナの豊かな歴史を証明するウクライナの文化遺産、特にリヴィウとキエフにある7つの世界遺産、ユネスコ創造都市ネットワークのメンバーであるオデッサとハルキウの都市、ユネスコ「世界の記憶」の登録物のいくつかを構成する公文書、ホロコーストの悲劇を記念する遺跡の保護」を求めている。

 我々は、この文化遺産を、過去の証としてだけではなく、未来の平和を指し示すものとして守らなければならない。国際社会は、将来の世代のために文化遺産を保護・保存する義務がある。また、教育機関を聖域とし、未来を守る義務がある。

 オドレー・アズレー事務局長は、UNESCOは、その果たすべき役割に従い、学校、大学、記念施設、文化・通信インフラ等の文民施設への攻撃を直ちに停止することを要求し、学生、教師、芸術家、科学者、ジャーナリストを含む民間人の犠牲が出ていることを憂慮している。これらの犠牲者には、紛争や強制退去によって不当な影響を受けた女性や子供、特に少女が含まれている。

 教育分野では、国連安全保障理事会が2021年に採択した決議第2601号において、国連加盟国は「学校に対する攻撃及び攻撃の脅威を防止し、武力紛争中及び紛争後の段階において、児童及び教師を含む学校及び学校に関連する民間人の保護を確保する」と規定している。3月2日の国連総会決議は、学校を含む民間施設への攻撃の報告に重大な懸念を表明している。これに関して、UNESCOは、3月2日のカラズィンハルキウ国立大学への攻撃を含め、ここ1週間の少なくとも7つの機関の被害と教育施設への攻撃を強く非難する。

 学校と教育施設の国内全域における閉鎖は、3歳から17歳までの6百万人の生徒と高等教育機関に在籍する150万人以上の学齢人口全体に影響を与えている。暴力の拡大は教育の保護的役割を妨げており、その影響は近隣諸国を含めて広範囲に及ぶ可能性がある。

 文化の分野では、UNESCOは、文化財への損害を抑止するために、1954年の「武力紛争の際の文化財の保護に関する条約(ハーグ条約)」とその2つの議定書(1954年、1999年)をはじめとする国際人道法の義務を強調するとともに、ウクライナにおけるあらゆる形態の文化財への攻撃と損害をすべて非難する。また、UNESCOは、国連安保理決議第2347号の完全な履行を求める。

 これに関して、UNESCOは、ユネスコ創造都市(音楽分野)のハルキウ市、ウクライナの世界遺産暫定リストにあるチェルニーヒウの歴史的中心地が被った損害を深刻に懸念している。UNESCOは、2009年にUNESCOがその記念日に関わった、ウクライナの著名な芸術家、マリア・プリマチェンコの作品が被害を受けたとの報告を深く遺憾に思っている。

 また、UNESCOは、第二次世界大戦中にユダヤ人の最大の銃撃があった場所の1つであるバビ・ヤールのホロコースト追悼施設に与えた攻撃を非難し、その教育と追悼の価値がかけがえのないものである史跡に対する敬意を求める。

 攻撃を抑止するため、UNESCOは、ウクライナ当局と緊密に連携し、ウクライナ全域の重要な歴史的建造物や遺跡に、武力紛争時の文化遺産保護のために国際的に認められた印である1954年ハーグ条約の特徴的なエンブレムを可能な限り速やかに付けるよう努めている。更に、UNESCOは、ウクライナ当局が、博物館の所蔵品や文化財の保護への緊急要請に対応し、支援するために、国内の博物館長との会議を開催することを目指して働きかけている。UNESCOは、UNITAR(国連訓練調査研究所)及びUNOSAT(国連衛星センター)と協力して、衛星画像分析を通じて文化施設の被害を監視する予定である。

 情報へのアクセスと表現の自由の分野では、UNESCOは、国連安全保障理事会決議第2222号における、メディア専門家と関連要員を保護する義務を強調する前回の声明(2月24日付)を想起する。さらに、同決議において、「メディア機器と設備は文民のものを構成し、これに関して、軍事目的でない限り、攻撃や報復の対象とはならない」と指摘する。



 これに関して、UNESCOは、少なくとも1人のメディア職員を含む複数の死者が報告された2022年3月1日のキエフ主要テレビ塔への砲撃を含むメディアインフラの標的化、及びジャーナリストに対する暴力事案並びにインターネットへのアクセス制限の動きについて深く懸念している。

 紛争状況では、民間人による命を守るための情報へのアクセスの確保及び偽情報やうわさの暴露のため、自由で独立したメディアが不可欠である。

 加盟国グループの要請により、ユネスコ執行委員会は、UNESCOの果たすべき役割に従い、あらゆる側面におけるウクライナの現状の影響と結果を調査するため、3月15日に特別会合を開催する。
 

 <担当>国際統括官付(日本ユネスコ国内委員会事務局)
      ユネスコ第一係
  電話: 03-5253-4111(内線2603、2558)
  FAX: 03-6734-3679
  E-mail: jpnatcom@mext.go.jp

 





 

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