アフガニスタンの復興に関する日本ユネスコ国内委員会からユネスコへの提言

  日本ユネスコ国内委員会では、アフガニスタンの復興支援においてユネスコが果たす役割の重要性に鑑み、平成14年2月28日に開催された第110回日本ユネスコ国内委員会において、ユネスコに対し提言を行うことを決定しました。
  提言は3月18日付けで採択され、外務省を通じてユネスコ事務局長あてに提出されました。




2002年3月18日
日本ユネスコ国内委員会

アフガニスタンの復興に関するユネスコへの提言

  アフガニスタンは20年来の戦乱から解放され、現在アフガニスタン自身による復興への努力が始まっている。国連を中心とした国際社会においても、復興への支援が積極的に進められており、去る1月には、我が国も共同議長国となったアフガニスタン復興支援国際会議が東京で開催された。
  ユネスコは、教育、科学及び文化を通じて諸国民の間の協力を促進することによって平和及び安全に貢献することを目的としており、その理念に基づく平和で豊かな国際社会の構築のため、アフガニスタンの復興支援に果たすべき役割は大きいと言える。
  日本ユネスコ国内委員会は、このような状況に鑑み、ユネスコ加盟国の一員であるアフガニスタンが、自らの手で平和で安定した市民社会を一刻も早く実現できるよう、ユネスコに対し以下の提言を行う。

  1. ユネスコは教育、科学、文化及びコミュニケーション分野における専門性を発揮した支援を行うべきであり、なかでもアフガニスタンの現状に鑑み、教育及び文化の復興について積極的な貢献を行う必要がある。

  2. 教育は、国が秩序を回復し、貧困から脱却し発展していくための基盤となるものであり、平和の構築に果たす役割は極めて大きい。アフガニスタン暫定政権も教育を重点分野の一つとして位置づけている。
      「万人のための教育」の推進を主導するユネスコは、ユニセフ等の国際機関、NGOとの連携を図りつつ、中長期的な観点から復興支援計画を立案し、これまで50余年にわたり蓄積された識字教育、教員教育、職業技術教育、女性の自立を促すための女子教育等の実績を活かした包括的な協力を行うべきである。

  3. 文化は、人々に感動や生きる喜びをもたらし、人生を豊かにする上で大きな力となるものであることから、文化を扱う唯一の国連機関であるユネスコは、教育とともに文化面での支援においても重要な役割を担っている。
      アフガニスタンはかつて文明の十字路と言われ、東西文化が融合し開花した地域であるが、国土の荒廃とともに彫像や美術品などの人類の貴重な遺産が滅失の危機にさらされていると言える。ユネスコは、アフガン文化財の現状を把握することに努めるとともに、加盟各国と協力し、カブール博物館の復興への支援や文化財保護のための人材育成を行うことなど、これら文化財保護のためのアフガニスタン政府の取組みへの適切な支援を積極的に行うべきである。

  4. このほか、コミュニケーション分野において、放送局や出版業の再建支援を行うことが情報通信手段の確保や教育の普及に資すると考えられるので、加盟国との協力のもと積極的な支援を行うべきである。
      また、ユネスコは、科学分野においてもこれまでに培ってきた水科学等に関する知見を十分に生かし、水供給の確保などの面でアフガニスタンにおける安定した生活の実現に貢献できると考える。

  5. 以上のことなどを通じて、アフガニスタンに教育が普及し、国民が自国の文化について理解を深め、誇りを持てるような平和な文化国家の建設が期待される。ユネスコは、そのためのアフガニスタン国民の努力に対し、積極的な支援を行う必要がある。