平成28年2月10日(水曜日)13時00分~14時09分
文部科学省旧庁舎 大臣官房文教施設企画部会議室
1.スポーツビジネスの情勢とスタジアムの利活用について
2.旧国立競技場の利用実績について
3.国内スタジアムの現状について
4.海外スタジアムの事例について
5.その他
文部科学省/冨岡文部科学副大臣(座長)
スポーツ庁/髙橋次長(事務局長)
内閣官房/中川総括審議官,芦立総括調整統括官
JSC/池田理事
東京都/岡﨑オリンピック・パラリンピック準備局次長
<議題1 スポーツビジネスの情勢とスタジアムの利活用について(早稲田大学・原田教授)>
1.スポーツビジネスの進化
○ アマチュアイズムからビジネスイズムへのパラダイムシフト
・ 自治体は,いち早く「教育としての体育」と「地域興しとしてのスポーツ」を分け,首長部局を設けてビジネスイズムへの転換を図っている
○ スポーツ産業の複合化とハイブリッド化が,スポーツのグローバルビジネス化を促進
・ スポーツは,今や「巨大な産業」という認識が世界共通のものとなっている
○ スポーツとCSR(社会貢献活動)からCSV(共有価値の共創)へ
・ スポーツビジネスにおいては,「企業が社会貢献する」よりも,「良いことをやる企業」の方が「親和性」が高い
2.コトづくりが先導するスポーツビジネス
○ イベントが興きないと物が売れない(「コトづくり」がキーワード)
・ マラソン等のスポーツイベントによりシューズ等のグッズは売れ,あるいは,ラン・ツーリズムを楽しむ
・ スポーツイベントで人を呼び込み地域を活性化
⇒ スポーツで人を動かす仕組みづくりに注目が集まっている
・ 国際スポーツイベントの開催は,経済効果はもとより,大きな社会的波及効果がある
⇒ スポーツMICE(Meeting,Incentives,Convention/Conference,Exhibition/Event)が活性化
○ スポーツを中心としたライフスタイルの定着と関連産業への波及
・ アクティブライフスタイルを採る都民が増えている
・ 多様なスポーツイベントを推進する「スポーツコミッション」がその役割を果たしている
3.スタジアムの利活用
○ ビルトインソフトウェア(ハードに合ったソフトウェア)
⇒ 新国立競技場の運営には専門部隊が不可欠
・ 外部運営の場合は,運営権の売却(事例:Vinci),又は,運営業務の委託
⇒ 世界のビックスタジアムはコンセッション方式が主流で,リスクは少ない。他方,委託は費用が高騰するリスク
・ 内部運営の場合は,スポーツコミッション的組織(事業体)を設立し,新しいパラダイムでの運営(事例:Arizona Sports & Tourism Authority)も一考
○ 新国立競技場の特殊性(アンカーテナントのないスタジアム運営)
⇒ 定期的なイベント収入が期待できない
・ 国立(公共性)vsビジネス(収益性)というアンビバレント(二律背反)な関係
・ 「必要とされるスタジアム」に進化させる思想を持つ
⇒ 大会後の改修によるスタジアム経営も一考
<議題2 旧国立競技場の利用実績(平成21~25年度)について(JSC)>
1.稼働
○ 年間の総入場者数(主催者,参加者及び観客)は100万人前後,稼働日数は,180日以上。利用内訳は,スポーツ利用が,陸上競技70日程度・約16万人,サッカーが50日程度・約54万人,ラグビーが5日程度・約10万人。スポーツ利用以外の一般利用は,コンサートは年間5日間の公演(設営・撤去を含めると7~10日)・約22万人
○ 運営は,大規模な競技大会(国際競技大会・全国大会)を優先し,コンサートはスポーツ利用に支障のない範囲でスケジュールを調整
2.収支
○ 収入は,年間7億円程度で,スポーツ大会やコンサート等の興業イベントによる施設使用料収入及び広告使用料収入(年間4億円程度)の外,フィットネス事業,物販・飲食事業等がある(平成25年度は運営最終年度で利用増であった)
○ 支出は,平成21~23年度まででは7~8億円程度で,人件費,清掃・警備・芝生管理等の委託費,修繕費,水道光熱費,租税公課等がある。(平成24年度以降は,管理運営委託費の見直しや,改築を見据えた修繕費の抑制をしている)
<議題3 国内スタジアムの現状について(スポーツ庁)>
○ 2002年サッカーW杯会場となったスタジアムは,基本的に所有者が自治体で,指定管理者制度により管理を委託し,施設使用料収入及び指定管理料により賄われている。また,管理はスタジアム単体ではなく,公園全体等,包括的に行われている
○ Jリーグのホームゲームが年間20試合程度行われているほか,プロ以外にも青少年や市民レベルでの大会が行われている。野球は札幌ドームのみ,コンサートは札幌ドーム・味の素では10日程度
<議題4 海外スタジアムの事例について(JSC)>
○ ロンドンは,五輪後,8万席から最終的に5.4万席にし,サッカーチームのホームとした。ロンドン・フランスはvinci社がコンセッションで運営
○ ANZ(シドニー)は,五輪後,11.5万席から8万席(可動席含む)にし,周辺の商業施設やホテル等も併せて開発。ソウルはスタンドの下に商業施設がある
<その他>
東京都から,大会後はレガシーとして,スポーツや観光の振興,周辺環境の向上,防災機能,都内の学校の利用等,都民の便益が反映されるよう,本WTでの検討を要望
スポーツ庁政策課