【対談】特別対談「スポーツ庁長官 室伏広治のアスリート近影」 川井梨紗子選手(レスリング)編《後編》

 

川井選手(レスリング)《後編》

 この動画は、令和3年3月に撮影したものです。
(※「YouTube」スポーツ庁動画チャンネルへリンク)

 

もくじ
日本の女子レスリングの強さの理由
コロナ禍の中でも、工夫してトレーニングを継続
コロナ禍で気付いたこと――何もかもが当たり前じゃない
皆が苦しい状況を乗り越えた先に、喜びがあると信じて

 


新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年はこれまでとは環境が大きく変わった1年になりました。その中において、トップアスリートたちは延期となった東京2020大会に向けた努力を重ねてきました。

東京2020大会での活躍が期待されるトップアスリートの言葉を通じて、競技やアスリート自身の魅力を再発見するとともに、スポーツがもたらす前向きな力を発信していくため、室伏スポーツ庁長官との対談動画をシリーズで公開します。

今回は、川井 梨紗子選手(レスリング)です(プロフィールはこちら)。

日本の女子レスリングの強さの理由

室伏
 女子レスリングは、日本、強いですよね。それこそ、吉田選手(吉田沙保里:2004年アテネ大会・2008年北京大会・2012年ロンドン大会 3大会連続金メダリスト)だったり、伊調選手(伊調馨:2004年アテネ大会・2008年北京大会・2012年ロンドン大会・2016年リオデジャネイロ大会 4大会連続金メダリスト)など、ずっと伝統的に強いですけども。その強みっていうのは、なんか秘密があるんですか。

川井
 そうですね。沙保里さん・馨さんが、ずっと世界のトップで戦ってきていて。レスリングっていうのは、個人競技じゃないですか。ですけど、練習ってなったときに、みんなで練習の空気を良くするっていうか、みんなで盛り上げるっていうか、チーム競技のような練習をしていて。その空気を作ってくださっていたのが、沙保里さんだったり、馨さんだったので。やっぱり、女子レスリングの強さっていうのは、そういう、個人競技だけど、みんなで頑張れるっていうところが強みになっているのかなと思います。

室伏
 これから有望な若手とかも出てきているんですか。

川井
 もう、たくさんいます。

室伏
 たくさん。

川井
  私も、今までは、ただ追いかける立場で上を見て走っていたものが、気づいたら私が上のほうになっていて、下から追いかけてくる子がたくさん出てきて、ってなって。勢いがすごいなって感じることはすごく増えました。

室伏
 なるほど。じゃあ、安心していられないですか。

川井
 本当にそう思いますね。オリンピックで結果を出すためにも、まだ、下の子には負けられないよっていう。下からの突き上げがすごく刺激になっています。

室伏
 それは素晴らしいですね。

川井
 はい。ちょっと苦しいですけど(笑)。

川井選手写真4

櫻木
 競技人口も増えているんですか、女性の。

川井
 少しずつではあるとは思うんですけど、増えてきてはいると思います。

櫻木
 やはり、憧れの選手たちが、川井さんもですけれども、活躍されているのを観て。

川井
 そうですね。はい、そうだとうれしいです。

コロナ禍の中でも、工夫してトレーニングを継続

櫻木
 東京大会が1年延期になってしまったっていうことで、決まったときはどのようにお感じでしたか。

川井
 オリンピックが延期ってなったのが去年の3月で、その前の2月に海外遠征に行っていて、帰ってきて、延期ってなって。ここからプラス365日、また練習ってなると「わあ、苦しいな」って思う反面、でも、まあ、こんな状況なら、延期でも仕方ないだろうなっていう、ちょっと冷静に見ている部分もあって、ちょっと複雑でしたね。

室伏
 少しは休養とか、ゆっくりしたりもしたんですか。

川井
 いや、でも、トレーニングは毎日していました、一応。

室伏
 接触がある競技なので。

川井
 そうですね。一番、密着…。密着というか。

室伏
 ねぇ。

川井
 最初の緊急事態宣言が出たときは、本当に、道場も開けないっていう感じで。マットで人と組み合うのも、まずできないので。でも、それこそ妹がいてよかったなって思ったのは、妹と2人で外に走りに行ったりとか、何かお互いにメニューを出し合って「これやろう、あれやろう」って言ってやったりしたのは、姉妹でよかった部分でもあり、1人じゃないからこそ、コロナの自粛期間を乗り越えられたなっていうのは思っています。

川井選手写真5

室伏
 実際にレスリングをするっていうこと以外のトレーニングも、かなり工夫されたんですか。内容とか。

川井
 そうですね。いつもは大学でトレーニングっていう感じだったんですけど、大学が閉まっちゃっていたので、家の周りで、何か良いトレーニングで使える場所はないかっていうのを2人で探して、ここだって見つけて、毎日そこに通ってやってという感じでした。

櫻木
 ナショナルトレーニングセンターでの、コロナ禍での練習環境っていかがでしょうか。

川井
 本当に、部屋と練習場と食堂の行き来なんですけど、どこに行っても、本当に、対策というか、人とソーシャルディスタンスとったり、消毒液が置かれていたり、検温したりっていう、本当細かいところまで対策されているので、安心して使うことができています。

室伏
 よかったですね。頑張っているアスリートが、安心してトレーニングができるように、我々も精一杯、今後もサポートしたいと思います。色々やっぱり大変ですか。

川井
 でも、本当に慣れというか、今ではもうそれが普通になってきたので、全然。もう、逆に集中できますよね、何にでも。

室伏
 動線も仕切って色々工夫して。とは言うものの、普段より気は遣うでしょうし、大変だと思います。

コロナ禍で気付いたこと――何もかもが当たり前じゃない

室伏
 コロナの中で、工夫しながらやらなきゃいけないっていうことを今前向きにされているものの、学んでいる、学んだことってありますか。もしくは、スポーツの、レスリングの素晴らしさを、改めて気づいたとか、ありますかね。

川井
 そうですね。今まで当たり前にしてきていたことが、全部当たり前じゃなくなって、練習もできなくなっちゃって、っていう状況になってからは、みんなで集まって練習できることも当たり前じゃないし、練習が終わって帰ってご飯が出ていることも当たり前じゃなくて、当たり前だったみんなと全く会えなくなって、って、何もかもが普通じゃなかったんだなって思って。練習は毎日やっていたんですけど、その毎日やっていたことが、色んな条件があって成り立っていたんだなっていうのをコロナで実感して。練習がきついから、苦しいなとは思うんですけど、その練習へのありがたさというか、なんか、久しぶりに練習したときはすごい、だから嬉しかったですね。

室伏
 じゃあ、1回の練習にかける気持ちが変わってきたということなんですかね。

川井
 そうですね。「明日あるからいいや」とか、そうじゃなくて、「明日またどう状況が変わるかもわからないから」っていう風に考えるようになって。一つ一つを大事にできるようになったと思います。

皆が苦しい状況を乗り越えた先に、喜びがあると信じて

室伏
 川井選手は、大変な中でされていますけどもね、何かこう、次世代のレスリングを目指す子供たちだったりとか、まさに今、みんな川井選手を目指していると思うんですけども、こういう大変なときにね、乗り越えるような力だったりとか、スポーツが色々教えてくれたこともありますよね、きっと。何かメッセージがあればお願いします。

川井
 はい。今、こういうコロナが拡大してて大変な状況ではあるんですけど、私が東京オリンピックの代表になるまでの道のりっていうのが、すごく自分のレスリング人生の中ですごく濃いもので、もう本当に苦しかった時期だったんですけど、それを乗り越えて代表になったときの嬉しさというかは、本当に、今までにないくらいの喜びだったので、今はコロナで大変な状況で、みんなが逆境で苦しい状況なんですけど、いつかは、この苦しい状況で我慢していることが、いつかきっと「あのときこういうことがあったけど、今はこうなったからよかったね」っていう風になると思うので、それを信じて、苦しい中でも前向きに頑張れたら良いなと思います。

室伏
 ありがとうございます。

櫻木
 苦しさは、ずっとは続かないですよね。

川井
 そうですね、はい。

櫻木
 最後にですね、新型コロナウイルス感染症が広がる中でも、国民の皆さんから、期待の声ですとか、応援の声、受けていらっしゃると思うんですが、動画をご覧になっている皆さんにですね、東京大会に向けた意気込みですとか、メッセージがあれば是非お願いします。

川井
 はい。このような状況の中で開催されるオリンピックっていうのに、色んな声があることも分かっているんですけど、ただ、やるからには私も一生懸命やりますし、金メダルを獲るために頑張りますし、こういう状況だからこそ、一人一人が頑張って、目標に向かって努力することの素晴らしさっていうのがスポーツにはあると思うので、そういった姿を、テレビを通してだったり観てもらって、明るいニュースを届けられたら良いなと思います。

櫻木
 ありがとうございます。楽しみですね。

室伏
 楽しみです。本当に前向きで、目指すところは全部達成されそうな気がしますね。是非、素晴らしいレスリングを皆さんに見せていただいて。きっと元気になるんじゃないですかね。

川井
 頑張ります。

櫻木
 今回は、女子レスリングの川井梨紗子選手にお越しいただきました。ありがとうございました。

川井
 ありがとうございました。

川井選手写真6


川井選手との対談 前編はこちら!


【プロフィール】
川井 梨紗子(かわい・りさこ)
小学校2年生の時からレスリングを始める。中学・高校とトップレベルで活躍し、至学館大学に進学後、シニアでも世界トップレベルの実力をつけ、2016年のリオデジャネイロ大会では63kg級で優勝。東京大会では57kg級で代表に内定しており、連覇に挑む。妹・友香子も、62kg級で東京大会代表に内定。JOCシンボルアスリート。 

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