既存校舎の長寿命化改修における教室の建具について
相談者
地方公共団体の教育委員会学校施設担当相談内容
現在、本市では既存校舎の長寿命化改修工事の設計を進めております。その中で、「教室と廊下の間の建具(間仕切り壁)」のあり方について、専門的な見地からご意見をいただきたく相談いたしました。対象となる校舎は、昭和50年代に建設された一般的なRC造の校舎です。平面計画はいわゆる「片廊下型」の配置となっており、今回の長寿命化改修において、教室と廊下を隔てる建具および壁面の更新を予定しております。既存の状態は、教室の前後に引き違い扉(小窓付き)があり、扉上部の欄間部分に引き違い窓が、それ以外の部分は壁となっている、築年数相応の閉鎖的な造りです。
今回の改修にて、現代の学習環境に合わせた開放性や機能性を持たせたいと考えておりますが、開口部の「空け方(見せ方)」のバランスに悩んでおります。想定される改修パターンとしては以下のようなものが考えられますが、それぞれ一長一短があり、決定打に欠けている状況です。
現在、本市では既存校舎の長寿命化改修工事の設計を進めております。その中で、「教室と廊下の間の建具(間仕切り壁)」のあり方について、専門的な見地からご意見をいただきたく相談いたしました。
対象となる校舎は、昭和50年代に建設された一般的なRC造の校舎です。平面計画はいわゆる「片廊下型」の配置となっており、今回の長寿命化改修において、教室と廊下を隔てる建具および壁面の更新を予定しております。既存の状態は、教室の前後に引き違い扉(小窓付き)があり、扉上部の欄間部分に引き違い窓が、それ以外の部分は壁となっている、築年数相応の閉鎖的な造りです。
今回の改修にて、現代の学習環境に合わせた開放性や機能性を持たせたいと考えておりますが、開口部の「空け方(見せ方)」のバランスに悩んでおります。想定される改修パターンとしては以下のようなものが考えられますが、それぞれ一長一短があり、決定打に欠けている状況です。
相談の要点
ポイント1 長寿命化改修に伴う建具の最適解を検討ポイント2 不登校生徒の居場所確保と機能性の両立
回答内容
上野先生
中学校既存校舎の長寿命化改修を計画しておられることに敬意を表させて頂きます。既存片廊下型校舎の改修の場合、確かに、教室と廊下の間の間仕切りのデザインは校舎全体の雰囲気を左右する重要な要素です。このことの重要性を認識しておられることに、賛同します。又、こうした認識を持っておられることに敬意を表させて頂きます。
(1)これまでの一般的な中学校の間仕切りの考え方……すなわち、教室と廊下の間の間仕切りをブラインドにして視線が通らないようにするデザイン……は、明るく和やかな学校環境を演出するという観点から賛成できません。又、校舎環境全体を閉鎖的にしてしまうと考えます。→添付した図①(掲載省略)はその典型例です。
(2)又、質問の中に記しておられるように、‘廊下に対してフルオープン’にする方法も、片廊下の校舎の場合、冷暖房区画、又、教室間の音の伝播、などを考慮すると、妥当な方法とは考えにくい、と思います。
(3)校舎内の学習・生活活動が相互になるべくわかりやすく認識しやすくする観点から、又、全体として明るく和やかな環境を演出するために、間仕切りを透明性の高いデザインとする方法は、一つの考え方と言えます。添付の図②(掲載省略)は、小生が計画参加したプロジェクトでの一例です。(質問者もお気づきのように)但し、例えば障害のある生徒(自閉傾向・多動性傷害など)にとって、透明性の高いデザインについての可否は、難しく、デリケートな課題と言えます。
(4)図③(掲載省略)は、軽快で明るく透明性のあるデザインを目指しながらも、教室内への視線の貫通を防ぐデザインを試みた事例です。
あくまでも、小生が経験した少ない事例の一つです。
様々な考え方がありうると考えます。ご参考になれば幸いです。

長島先生
校舎を使う側からの声として捉えていただければと思います。教室と廊下間の建具更新ということですが、その学校の「生活のきまり」でも開放的なものにするか、閉鎖的なものにするかが変わってくると思います。
例えば、登下校は制服で、体育の授業前後、部活動の前後等で更衣が必要な場合、更衣室が別に用意されていない場合には教室で更衣することになります。奇数クラスが男子、偶数クラスが女子といった形で複数クラスを組み合わせて更衣をします。このような想定がされる場合には、ある程度「見えない」ことも必要です。カーテンを引くことができれば、クリアできますが、仕切りを掲示板として活用するのは難しくなります。
また、防犯上、教室移動の際には、普通教室(クラスルーム)を施錠することになっている学校も多くあります。
開放型にするには、個人ロッカーや更衣室がある事が望ましく感じるところでもあります。
近年の厳しい夏の時期に開放的なものにした場合、空調が十分機能するかが心配になります。普通教室と廊下を仕切っていても屋根、壁が断熱されていない場合、最上階の教室は厳しい暑さになります。
一方で対話的な学びをするために教室空間を広げたいという学校であれば、これらの課題をクリアして、可動式の壁というのもアリかなと思います。ただ、その学校の教育課程編成上、そのような授業ばかりではないかと思います。先進的に環境を整えて学びを広げようと考える学校であれば、機能するかとも思いますが、保守的な学校であれば、使われないだろうなと思います。
本校でも、多くの発達障害のある生徒が普通教室で学んでいます。視覚からの刺激を少なくするために黒板周りの掲示物は極力減らすようにしています。そうなると、廊下との壁面は貴重な場所になります。教室の前方の扉近くにはホワイトボードやデジタルサイネージなどが設置されていると当日の予定などが記せていいなと思います。
窓を大きく開放的な教室にするのであれば、プロジェクターよりも電子黒板の方が輝度が高く、生徒からも評判がいいです。大型テレビで資料提示するより、電子黒板の方が映り込みも少なく、視野角も広いので生徒が見にくいということがありません。教室の授業をオンライン配信をすることを考えるとプロジェクタや大型テレビでは光ってしまって、オンラインで受講している生徒には見にくい見えないといったことが多くあります。電子黒板にはChrome内蔵のものもあるので画面共有も容易となります。建物ではありませんが日当たりがよい学校であれば検討していただければと思います。
不登校支援も検討ということであれば、ちょっとした改装で校内フリースクールとして使いやすくなります。
但し、登下校の時間を配慮したり、一般生徒と動線を変えるなどの配慮も必要となります。
校内フリースクールの改装は学校予算で対応なので、大きな工事をすることができず、消耗品を少し買うくらいです。
机も新入生が来ると購入して、生徒が組み立てます。
勉強をしたい時は自分の机でデジタルドリルに取り組んだり、教室の授業をオンラインで受けたりしています。
生徒は登校したら、支援員と今日の活動を相談して自分で決めます。

野中先生
>今回の設計対象となる中学校では、不登校生徒の割合が高く、そういったこどもたちも含めた全ての生徒たちが前向きに学校を楽しんでもらえるような、そんな改修にしたい。>見る/見られるの関係であったり、さまざまな特性をもつ生徒が通うということを考えると、闇雲に開口部を増やす(見える化する)のも違うのかな
まず、不登校生徒の割合が高い、 というのが気になりました。
不登校と言っても、様々だとは思いますが、例えば以下の事例からは、教室の横の壁に関する事例を私は見つけられませんでした。
教室に入りづらい子への配慮を優先するのであれば、外から教室の中の様子を見ることはできるけど教室の中の子どもたちから(一斉に)見られるような状況は、好ましくないように思いました。
それと、廊下の幅も広くないし、中学校で学級担任の学習集団を変えて、オープンスペースを活用する機会は限られそうですよね。
わかりにくいけど、一部、窓にするとか廊下部分に長椅子を置くなどするなどの工夫が考えられるのではないかと思いました。
横の壁を稼働型にするのであれば、ホワイトボードにする、というのもありかもしれません。

倉斗先生
教室と廊下の境界についてのご質問ですが、近年では長寿命化改修の際に4枚引きなどの引き戸にする例が多く見られます。また、質問者様の書かれているように引き戸の上部をアクリルなどの窓にして視覚的に開放的な教室にすることも考えられます。私は「教室が開かれていること」以上に、「教室以外にも居場所があること」を実現してあげることが、学校や教室にいづらい生徒さんが学校にいられるようにするには大事なことと考えます。
教室を開放的につくることは「教室に入る」という心理的なハードルを下げるためにも良いことだと思いますがそれ以上に教室を開いた結果、教室の雰囲気が感じられる様な少し離れた場所や少し囲まれた場所など、一人で過ごせる場所がつくれることが重要ではないかと思っています。
廊下に場所をつくるのは難しいかもしれませんが、廊下に窓向きのカウンター席等をつくってあげるだけでも、教室に入りづらい子にとっては、少し距離を取った居場所にできると思いますし、教室が開放的であれば教室の雰囲気を感じながらその場に居続けることも可能になるのではないかと思いました。
以上、とりとめもないですが、何かの参考になれば幸いです。

栗﨑先生
遅ればせながら、計画的なアドバイスは、先生方のアドバイスと重なりますので、少し意匠的な視点からお送りします。教室の入り口廻りは、中の空間の表れとなりますので、やはり温かみがあり、入りやすい雰囲気が大事だと思います。そういう意味で木質は有効です。
画像①(掲載省略)は良い雰囲気ですね。基本的に建具の高さと腰壁で構成されていて欄間が入り、他の壁の長押と連続しています。腰壁も連続しています。
画像②(掲載省略)のように杉などの比較的高価な材料が使えれば、素地に透明の保護剤が良いです。
今回の改修では難しいですが、思い切り「入り口らしさ」を強調した事例です画像③④(掲載省略)。
画像⑤(掲載省略)は建具と枠は木材、壁はペンキの事例です。予算がない場合ラワンのような安い木材もこのくらい濃くオイルステインを塗ると使えます。ペンキの色とも調和しています。
画像⑥(掲載省略)は、木材の素地仕上げと窓のペンキ仕上げのコンビネーションです。少しモダンな感じがします。
画像⑦(掲載省略)はすべてペンキ仕上げです。足元は縦格子となっており沖縄らしいです。
画像⑧(掲載省略)は、木材の素地を活かしながら透明・浸透系の塗装をしています。
この塗装は近年よく使われています。欄間が天井まで入り込んで天井がつながり教室とオープンスペースに連続感があります。
画像⑨(掲載省略)は、建具の小窓を〇型にしてクラス番号を入れています。前と後の建具の間には、ベンチがはめ込まれています。
特殊な事例ですが、さらに廊下と教室の間に空間をつくっています画像⑩(掲載省略)。
ベンチやたなが設えられています。足元には無双窓のような教室もありました。

伊藤先生
教室・廊下の間の関係ですが、廊下をどの程度学習・生活空間として活用するかにより異なると思います。(1) 廊下側にカウンター・スツールといった学習場所・居場所を設ける場合は、展開しやすいようにフルオープンで一体的にすることで充実します。逆に、廊下幅などの制約で純粋に動線となる場合、フルオープンとするメリットは多くないと思われます。
(2) しかし、不登校生徒が多いという別の観点があります。不登校の事情は様々ですが、体格が成長している中学生が教室に密度高くいる状況も人によっては一因になっていると思われます。フルオープンにすることで教室の閉塞感が緩和され、居心地がよくなる可能性はあります。また、廊下にも学習場所・居場所を設ける場合は、(1)と相反するようですが、ある程度守られた場所になるように視線を遮ることのできる仕掛けはあった方が良いと考えます。