キャストインタビュー

杉本哲太さん
杉本哲太さん
田村雅史 役
「今このときは一瞬しかありません。自分の進路は、ひらめきや勘ではなく、じっくりと考えた上で決めてほしいですね。」

これまでたくさんの作品に出演されてきて、いろいろなお仕事を役柄で演じられてきたと思います。今回は検事役でしたが、検事という仕事について事前に勉強されたことなどはありますか。

杉本 今回の「HERO」に関しては、検事という職業ではありますけれども、木村さんと北川さん以外の我々検事と事務官は本筋の事件とは違う役割が大きく、にぎやかし的なところもあります。もちろん、検事としての見せ場もあったのですが、法廷に立つこともなかったですから、検事の仕事というより、むしろ城西支部の独特の雰囲気をどのようにみんなと作っていくかということを考えていましたね。

検事というのは普段はおそらく一つの部屋でずっと仕事をするものだと思うのですが、城西支部ではフリースペースがあって、そこでのやりとりから、みんなが協力して事件を解決していく雰囲気になってそれぞれ役割を果たしていきますね。これはほかの仕事にも共通するし、働く側としてそのような仕事ができたらやりがいもあると思いますが、杉本さんは、城西支部の雰囲気についてどのように感じていらっしゃいますか。

杉本 城西支部のあの雰囲気は、もちろん台本にのっとってみんな芝居をしているわけですが、ただ台本に書かれたことを覚えて、じゃあ撮影しますからといって集まって、フリースペースでみんなでチームワーク良くできるかといったら、できないと思います。木村さんをはじめ、スタジオの前室で次の撮影を待っている間に、出演者みんなで、自然に集まって世間話をしたりバカ話をしたりしているんですね。木村さんは控室があってもほとんど戻られず、ずっと前室にいらっしゃって、自然とみんなも木村さんの周りに集まるんです。本来だったら「お疲れ様」と帰ってしまうところでも、みんなで御飯を食べに行ったり、前室でおしゃべりしたり、撮影以外にも互いにコミュニケーションをとる時間がかなりありました。それが結果として画にも表れたと思いますし、役を演じる上でもより円滑に撮影が進んだと思います。

本筋の話はもちろん素晴らしいのですが、あの独特の雰囲気は、今伺ってなるほどと思いました。前後に余韻があるような、撮影の前から話をしていたんじゃないかと感じる場面もありました。

インタビュー画像1

杉本 みなさん役者としてプロですから、撮影時間以外のコミュニケーションがなかったり、それぞれが楽屋に戻ったりしたとしても、やってくれと言われたらみんなやれると思うんですけど、そうしたコミュニケーションによってそれ以上の何かが画に映っていたと思います。そして何よりも現場がすごく楽しかったし、撮影も円滑に進んだと思いますね。

今伺った前後の人間関係も画面ににじみ出てきているので、チームプレイで互いに協力しながら仕事を進めていくっていいなと、より感じやすいのかなと感じました。

杉本 HEROは14年前のパート1から始まっていて、僕は中途からの参加だったんですけど、一方で八嶋さんや小日向さんはレギュラーでずっと出演されていらっしゃって、最初はやはりアウェイ感があったんですね。それがもう、一日で打ち解けてました(笑)。木村さんもウェルカムな方ですしね。城西支部のロケで、終わった日に誰からともなく飲みに行こうという話になって、八嶋さん、濱田さん、正名さんと僕で飲みに行ったのかな。最初からそういう風に和気あいあいとやれることは、普通はあまりないんです。次の日の撮影もあるし、そのための準備もありますしね。ドラマの収録が終わったら帰ってしまうところを、ちょっと一杯飲みに行くというような雰囲気がありましたね。

これまで役者としてたくさんの作品に出演されてきて、若い頃から目指してきた方や、演技を学びたい、盗みたいと思われた方はいらっしゃいますか。

杉本 そういった意味では、原田芳雄さんですね。プライベートでお付き合いもあり、よくお宅にお邪魔をさせていただきました。ただ、原田さんとは同じ作品に出たことはあるんですけど、現場でがっつりと共演したことがなかったので、一緒に仕事をしたいなと思っていました。残念ながら夢かなわずで終わってしまったんですけれど。芳雄さんの作品を見てもそうですし、プライベートで拝見していても、生き方というか、たたずまいが素敵な方だなと思っています。

これは体得できたとか、追いつけたと感じるところはありますか。

杉本 原田さんは寡黙で男臭いイメージがあると思うんですが、いろいろなことを知っていて教養もありますし、どんな質問をしても答えてくださって、人間としての器がすごく大きな方でしたね。何でも受け止めてくれるし、一方でバカ話もするし、お酒も好きで砕けた人でもあるんですけれど、それも含めて完璧というか、生き様が素敵な方でした。 原田さんのお宅は日本家屋で外に庭があって、人が入れるように改装されているんです。そこで毎年餅つきを年末にやられていて、150人ぐらい人が集まってくるんですけど、ガラガラって玄関を開けて、友人が「芳雄いる?」とか言って居酒屋のように入ってきたりするところだったんです。そうした姿を見て、人を受け入れる器の大きさを感じましたよね。芳雄さんのお宅に行くと大体お客さんがいて、ドラマの2次会を原田家でやることもあるくらい芳雄さんはみんなにとても慕われている方でした。あの人間の大きさは今でもすごいなって思い続けていますね。

杉本さんにとっての役者という仕事の意義ややりがいについて教えていただけますでしょうか。

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杉本 もともとは歌から芸能界に入って、18歳の頃から映画に出演するようになりました。単純に言えば、俳優は台本を頂いて、その役のセリフを言えばいいわけです。もちろん頂いた役をどう演じるかというのは自分の考えとかもありますけど、自分の言葉ではなく、役のセリフを自分なりに表現していく仕事というのは自分に合っていたんだなということは、歌から俳優に転向してすごく感じますね。もともと俳優になりたかったわけではないのですが、今の俳優という仕事は自分にとって天職だなと思います。

最後に、これから自らの進路について考えようとしている高校生たちにメッセージをお願いできますでしょうか。

杉本 今このときは一瞬しかないですから、ひらめきとか勘で決めずに、自分の進路について、進学するのか、就職するのか、あるいはどういう職種を選ぶのかといったことを、じっくりと考えた上で決めてほしいですね。