資料3-1 総合科学技術会議の審議状況
1 総合科学技術会議の概要
総合科学技術会議は、内閣総理大臣及び内閣を補佐する「知恵の場」として、我が国全体の科学技術を俯瞰(ふかん)し、一段高い立場から、総合的・基本的な科学技術政策の企画立案及び総合調整を行うことを目的とし、経済財政諮問会議などと並ぶ「重要政策に関する会議」として内閣府に設置されたもの。
2 総合科学技術会議の審議状況等
○ 第3期科学技術基本計画について
平成18年度からの5ヶ年を対象とした第3期基本計画を、平成18年3月28日に閣議決定。概要は参考1の「第3期科学技術基本計画(平成18~22年度)の概要」を参照。
○ 分野別推進戦略について
第3期科学技術基本計画に記述されている、政策課題対応型研究開発を対象として、政府研究開発投資の戦略及び研究開発の推進方策をとりまとめた、「分野別推進戦略」を、平成18年3月28日付けで決定。「重点推進4分野」及び「推進4分野」の中で選択と集中を徹底し、成果目標を明確にした273の重要な研究開発課題、62の「戦略重点科学技術」を選定。
○ イノベーション創出総合戦略について
人口減少・高齢化が次第に加速し、欧米・アジア諸国との競争が激化している中、わが国の一層の経済成長の実現と国際競争力の強化を図っていくことは重要な課題であり、第3期基本計画では、イノベーションの創出を重視し、日本が我が国独自のイノベーションにより世界をリードしていけるように、「イノベーター日本」という政策目標を掲げている。
総合科学技術会議では、この政策目標を実現していくため、6月14日の本会議において、「イノベーション創出総合戦略」を決定した。本戦略では、イノベーション創出に向けて、政府が取り組むべきこととして、以下の点を挙げている。(参考2)
- イノベーションの源の潤沢化
―イノベーションの源としての基礎研究の多様性と継続性の確保
―世界トップレベルの研究拠点の構築
- イノベーションを種から実へ育て上げる仕組みの強化
○産学官連携の本格化と加速
○地域イノベーションの強化
○切れ目ない資金供給、知の協働推進
○戦略重点科学技術についての施策の集中的推進
- イノベーションを結実させる政策の強化
○新技術の利用促進、国際標準化などの出口政策の強化
○ベンチャー企業によるイノベーションの抜本強化
○民間研究開発の強化
- イノベーション創出に向けた制度改革の推進
―成果の社会への還元を阻害する制度的要因の除去等
- イノベーションを担う人材育成の強化
―世界トップレベルを目指す小中高の理数教育の強化
―理数教科書の充実等、基盤となる知識教育の強化等
○ 公的研究費の不正使用等の防止に関する取組について
総合科学技術会議では、平成18年8月31日付けで「公的研究費の不正使用等の防止に関する取組について(共通的な指針)」を決定し、内閣総理大臣及び関係大臣に意見具申を行った。(参考3)
本指針は、研究活動を一層推進する観点から
- ルールの明確化や遵守
- 研究者のモラルの向上
- 研究者個人による不正を誘発しないような研究費の機関管理の徹底
- 研究費制度の改革 など
政府、配分機関、研究機関が連携し、研究機関・研究費制度の特性、不正使用の態様等に応じて取り組む基本的な事項を掲げている。
○ 基本政策推進専門調査会(下記組織図参照)
現在、総合科学技術会議において、第3期科学技術基本計画の実行に寄与すべく、「基本政策推進専門調査会(以下、専門調査会)」を設置して調査審議を行っている。今後の審議案件として
- 科学技術の諸制度の改革
- 競争的資金制度の改革
- 科学技術関係人材の育成・確保
- 分野別推進戦略の実施
- 科学技術への国民理解の増進
が予定されている。
- 諸制度の改革については専門調査会内の制度改革WGにおいて、第3期基本計画に掲げられている6つの課題についてヒアリングを実施し、平成18年7月26日の総合科学技術会議において、「科学技術の振興及び成果の社会への還元に向けた制度改革について(中間報告)」として報告。引き続き検討を深め、年内をメドに総合科学技術会議の意見具申として決定予定。
- 中間報告書の「研究費の公正で効率的な使用の実現」について検討を深めるとともに、競争的研究資金制度改革などについて、新たな研究資金WG(仮称)(座長:本庶議員)を設置し検討。
- 分野別推進戦略については、専門調査会の下に分野別推進戦略総合PT、さらにその下に各分野PTが設置される予定。

○ 知的財産戦略について
総合科学技術会議では、平成18年5月23日の本会議において、「知的財産戦略について」を決定。
科学技術の振興と発展の観点から、早急に取り組むべき課題として以下の4点を挙げている。
1 大学等の知的財産管理の充実
- 優れた知的財産の国際的な保護や我が国の国際競争力強化や技術流出防止のため、海外特許出願経費の支援を充実する 等
2 優れた知的財産創出のための特許情報等の整備
- 大学等の利用者が特許公報データに直接アクセスできるシステムの運用を開始するとともに、論文情報と特許情報とを統合した検索システムについて改善を図る 等
3 大学等の知的財産の活用の促進
- 大学発の基本発明を自らの判断で国際的に権利取得・活用するため、モデルとなる大学知的財産本部に対し、国際的に通用する知的財産専門人材の育成・確保などの国際機能の強化を図る。
- 大学知的財産本部とTLOの多様な連携の形態を踏まえ、両者の一本化や連携強化を含めた総合的かつ効果的な体制整備に向けて検討する。また、両者が自らに最適な技術移転体制の構築に向けて検討するよう促す。 等
4 知的財産関連人材の育成・確保
- 知的財産を活用して国際的な産学官連携や企業の事業展開を進めるため、科学技術に詳しく、海外での侵害訴訟や契約に精通し、国際的に通用する知的財産専門人材の育成、確保に取り組む。 等
○ 平成19年度資源配分の方針策定について
総合科学技術会議では、平成18年6月14日の本会議において、「平成19年度の科学技術に関する予算、人材等に関する資源配分の方針」を決定。平成19年度に向けた基本的考え方として、以下の点を挙げている。(参考4)
1 基本姿勢
- 平成18年度より第3期基本計画が始動
- 平成19年度予算で、第3期基本計画を本格実行
2 平成19年度の主な改革の方向性
- 世界最高水準の本格的研究拠点創り開始
- 国際競争を勝ち抜く人材立国の実現
- 国際的に通用する競争的で魅力ある研究環境の醸成
- 政策課題対応型研究開発(8分野)の戦略的重点化
- 国際競争力を高めるイノベーション創出能力の抜本強化
- 国民への説明責任の徹底
○ 国家基幹技術の評価について
総合科学技術会議では、第3期基本計画に基づく「分野別推進戦略」(平成18年3月28日総合科学技術会議決定)において国家基幹技術として精選した5課題のうち、平成17年度において大規模研究開発の事前評価を行った「次世代スーパーコンピュータ」及び「X線自由電子レーザー」を除く3課題、すなわち「高速増殖炉サイクル技術」、「宇宙輸送システム」及び「海洋地球観測探査システム」について、平成18年7月26日の本会議において評価が実施され、総合的には概ね妥当と判断されるとの評価を決定し、文部科学大臣等に意見具申した。
○ 小泉内閣の科学技術創造立国への歩みについて
総合科学技術会議では、平成18年9月22日の本会議において、「小泉内閣の科学技術創造立国への歩み」と題して、この5年5ヶ月の小泉内閣の成果を総括した(参考5)。最後に小泉内閣総理大臣は「環境保護と経済発展の両立を図る鍵を握るのは科学技術だと思ってきた。科学技術の重要性を多くの国民も識者も認識してきているので、世界最先端の科学技術立国を築くためにも、皆さんの御協力をいただきたい。環境保護と経済発展の両立だけでなく、科学技術は健康増進のためにも安全確保の面にも未来のためにも、きわめて重要であると思う」と述べ、会議を締めくくった。

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