参考3 公的研究費の不正使用等の防止に関する取組について(共通的な指針)
平成18年8月31日
総合科学技術会議
1.趣旨
研究者等による公的研究費の不正使用等は、科学技術及びこれに関わる者に対する国民の信頼を裏切るものである。また、無駄の徹底排除など研究費の効率的な執行も求められている。
不正事案が起きる原因・背景には、研究者等の意識の希薄さや研究費使用ルールの理解不足、研究機関や配分機関のチェック体制の不備などが指摘されている。
これまで、不正使用等に対しては、会計検査等に加え、研究費の配分機関や各研究機関等が、ルールづくりや監査の実施、研究費返還命令など、未然の防止策や不正使用等が起きた場合の対応策を講じてきたが、なお十分とは言えない面がある。
今後、研究活動を一層推進する観点から、ルールの明確化や遵守、研究者のモラルの向上を求めるとともに、研究者個人による不正を誘発しないような研究費の機関管理の徹底、研究費制度の改革など、研究機関・研究費制度の特性、不正使用の態様等に応じて、以下に掲げる事項を基本として取り組む。政府、配分機関、研究機関は連携し、競争的資金等の公募型研究費を中心に本指針に則った取組にできるだけ早期に着手し、遅くとも平成19年度には具体的に推進することとする。
2.関係府省・配分機関・研究機関において今後取り組むべき事項
(1)関係府省・配分機関
- ルールの整備・明確化(別紙参考1参照)と研究機関・研究者等への周知徹底を図る(ハンドブックの作成・配付、説明会の開催、相談窓口・不正告発窓口の設置等)。併せて、府省・制度間での可能な範囲でのルールの統一化に取り組む。
- 効率的・効果的な検査等の仕組みを整える(検査等の手順のマニュアル化、臨時の実地検査の実施等)。
- 研究費管理に関する研究機関の責任を一層明確化する(機関経理の徹底)。
- 競争的資金の不正使用等を行った研究者について、応募資格制限措置の徹底に加え、悪質な事案については、その概要を公表する。
- 競争的資金の交付に当たっては、(2)に掲げる研究機関におけるルールや管理・監査体制等の整備を求め、取組が不十分な場合は、必要な指導・助言等を行う。
- 研究機関における研究費の管理・監査体制等に著しい問題があり、かつ、具体的な指導等にかかわらず理由なく改善措置を講じない場合等研究機関に明確な責任がある場合、その研究機関に対して競争的資金の交付を一定期間停止する等の措置を導入する。その際、研究費の特性、研究者と研究機関の責任の峻別、研究活動への影響等を十分に踏まえることとする。
- プロジェクト研究も含めた研究費の不合理な重複・過度の集中の排除を徹底する(府省共通研究開発管理システムの早期整備・活用等)。
- 上記に掲げるほか、各研究機関における(2)の取組を促すとともに、情報提供等の必要な支援の充実に努める。
(2)研究機関
- 研究者本人が経費支出手続きに直接関わらない仕組みの徹底を含め、研究機関における研究費の使用等のルールの整備・明確化(別紙参考2参照)とその周知徹底、研究者等のモラルの向上を図る(研修会の開催等)。
- 研究費の管理・監査体制を整備する(責任者の明確化、チェックシステムの整備、積極的な内部監査・外部監査の実施、事務体制の強化等。なお、研究機関・研究費の特性・規模等に応じたものとする)。
- 不正事案の調査・報告・処理体制を整備する(内部通報窓口の設置、通報者の保護、調査体制の整備と迅速・公正な調査の実施、配分機関・関係府省への報告、刑事告発、不正事案の公表等。なお、研究上の不正への対応と可能な範囲での手続き面の共通化を図る)。
- 繰越明許費制度の活用を含め、ルールの範囲内での研究費の一層弾力的・効果的な運用や間接経費の有効な活用に努める。
(3)取組に際して留意すべき事項
- いたずらに研究活動の萎縮を招かないよう、単なる規制等の強化や煩雑な手続き等にならないよう留意すること。
- 研究機関や研究費制度の特性・規模や実態等も踏まえ、効率的かつ実効性の高いものとすること。
(4)総合科学技術会議のフォローアップ
上記に掲げる関係府省・配分機関等の取組状況(公募要領等の改定を含む)について、平成19年度のできるだけ早い時期に把握し、必要に応じ、本会議等に報告するとともに、不適切な場合には、改善を求める。
3.関連する事項
研究費の有効活用、不正使用の防止等に資するよう、引き続き、競争的資金制度改革に取り組む(研究費交付時期の早期化、繰越明許費制度の活用促進、間接経費の拡充、研究費制度間でのルールの共通化促進を含む)。
別紙
参考1:関係府省・配分機関におけるルールに盛り込むべき内容の例
以下を参考に、研究費制度の特性・規模や実態等を踏まえ、実効性の高いものとすること。
機関経理の確保等
- 配分機関から研究機関への機関経理の直接委任(研究課題の機関への委託契約を含む)
- 研究者が所属する研究機関が機関経理に相応しい仕組みを備えていることについて、公募要領・契約書等への明示と、交付・契約等に際しての確認
- 研究機関の管理・監査体制や機関経理の取組みが不十分な場合等の、指導・助言等の手続き
- 研究機関へのペナルティーを設ける場合は、明確な基準と公正で透明性の高い手続き
検査等の強化
- 検査等の体制の確保
- 効果的・効率的な検査等の手順のマニュアル化
- 研修によるマニュアルの習熟など検査担当者等の技術の向上
- 研究者本人が経費支出に直接関与していないことについての検査等の実施
不正事案への対応
- 補助金・委託費等の取消・返還命令等
- 応募資格の制限
- 研究機関に重大な責任がある場合における対応
- 不正告発窓口の設置、不正内容の概要の公表
- 関係府省・総合科学技術会議への報告
参考2:研究機関における研究費の使用等のルールに盛り込むべき内容の例
以下を参考に、研究機関の特性・規模や実態等を踏まえ、実効性の高いものとすること。
機関管理に相応しい仕組み
- 適切な経理管理が可能な会計規程及び事務体制の整備
- 契約担当者と支払担当者の分離、監査の独立など内部牽制が有効に働く仕組み
- 内部又は外部監査の実施
未然の防止策
- 研究者本人が経費支出に直接関与しない手続き
- 雇用研究者の適切な勤務・出張管理の手続き
- 研究者の意見を踏まえ、契約担当者がその名義と責任で調達先の選定や納品を確認する発注・納品管理の手続き
事案の把握方法
- 研究機関における委員会の設置
- 迅速な調査の実施、聴取手続き
- 内部通報窓口の設置、通報者の保護、不正内容等の公表等
- 配分機関・関係府省への報告の手続き