平成18年6月14日
総合科学技術会議
イノベーションは経済成長や社会進歩の原動力である。今、日本経済は新たな飛躍の時を迎えているが、人口減少下での生産性向上の必要性や激化する国際競争に鑑みれば、日本独自のイノベーションの流れをより速く、より太くしていくことが今ほど求められる時はない。
第3期科学技術基本計画(3月28日閣議決定)は、今後5年間の投資総額を約25兆円と掲げるとともに、「科学の発展と絶えざるイノベーションの創出」を大きな方向として明示しており、同計画に込められた国民の期待に応えていくため、官民両部門を俯瞰し、司令塔の役割を担う総合科学技術会議としてのイノベーション創出の総合戦略を以下の通りとりまとめた。今後これに基づいた政策の推進を図るべきである。
○イノベーションの源としての基礎研究の多様性と継続性の確保(科学研究費補助金を含む競争的資金の拡充と審査体制の強化等)
○世界トップレベルの研究拠点の構築
大学におけるシステム改革を進め、分野の特性を配慮し大学の自主的な取組を促しつつ、以下のようなイメージの下、革新的な拠点形成を図る。「21世紀COEプログラム」の後継施策等の関連施策の有効な組み合わせも含め実現。
研究開発独立行政法人等についても、大学に準じて検討するとともに、大学との融合を考える。
○基礎段階から産業と大学・研究開発独立行政法人(以下、独法)が腰を据えて連携する研究拠点形成(先端融合領域イノベーション創出拠点事業)の推進:科学に裏打ちされた新産業創造促進とイノベーション加速
○異分野の産学官の関係者に開かれた出会いの「場」の早急な構築
○産学官協働による大学院教育の国際水準への強化(カリキュラム作成、長期インターンシップ等)
○技術経営(MOT)教育や知的財産教育の強化
○サービス分野のイノベーションを促進するための研究の推進と人材の育成
○大学等の基本特許に支援を集中し、産業界での本格的活用を目指す戦略強化
○国境を越えた産学官連携の強化
○産学官の海外への情報発信機能の抜本的強化
○大学・独法の研究者が企業で一定期間活躍した後容易に復帰できる仕組みを整備し、企業のイノベーションを活性化
○産学官連携の成功事例の紹介・普及
○地域イノベーションの自立化を強力に推進。これまでの地域クラスター事業等の成果を検証しつつ、人、制度、業種間のネットワークを強化し、地域において研究開発の種を実へ育て上げる仕組みを強化。さらに、地域の知の拠点としての大学と地方公共団体や地方企業との連携を一層緊密化し、地域資源を最大限活用したイノベーションを促進。
○優れた研究成果を選りすぐり、長期的視点で育て上げてイノベーションにつなげるため、日本学術振興会、科学技術振興機構、NEDO等の主要資金配分機関のPDCAを強化し、それらの間で役割分担を明確にしつつ連携を緊密化し、切れ目ない資金配分を行う仕組みの整備など知の協働推進の枠組みを構築。
○分野別推進戦略の下で集中投資を図る戦略重点科学技術は、大きな社会的・経済的価値実現を目指すものであり、イノベーションを起こすべき中核的な領域。戦略重点科学技術について、イノベーションの源から結実まで一貫した研究開発の推進や科学技術連携施策群等の各種政策連携を総合科学技術会議が総合調整機能を発揮し責任を持って実施。
○以下のシステム構築による公的調達の新技術利用の促進
○SBIR制度の運用の強化(目標額の各省別設定と引き上げ、対象補助金の拡大とともに、その成果の公的部門における活用促進)
○競争入札の総合評価落札方式における新技術利用の重視
○グリーン購入法に基づく調達における新技術利用製品の拡大
○次世代ネットワーク技術やリサイクル技術等の戦略重点科学技術における国際標準化への官民の取り組み強化(人材の確保等)とそのフォローアップ
○ベンチャー企業の経営力強化
○ベンチャー企業への投資家からの資金供給の円滑化のため、先進国並を目指す諸制度の改革
○ベンチャー企業へのベンチャーキャピタルからの投資環境の整備
○ベンチャー企業の販路開拓への支援
○官民の適切な役割分担の上で連携を強化し、研究開発投資効果を一層高めイノベーション創出を加速
○官民両部門を通じた能力主義徹底や組織外の知的資産の積極的活用等の研究システム改革運動の推進
○独法等の最先端研究施設の共用による民間企業のイノベーションの加速
○公的機関が民間に移行する際の研究開発部門の研究開発水準の確保
○成果の社会への還元を阻害する制度的要因の除去(特に、優れた外国人研究者の獲得競争に勝ち抜く入国管理制度の実現、治験制度の総合的推進、出産・育児における女性研究者の勤務環境の改善など)
○イノベーションは社会制度の変革に誘引されて起こることも踏まえ、環境などの分野における人文・社会科学と自然科学の共働によるプロジェクト・人材育成を推進
○公的部門、産業界、大学など各セクターがイノベーション創出に向け連携する幅広い運動の推進
○イノベーション創出効果の測定・評価方法の構築による、政策の一層の強化・充実
1項、2項等における人材育成と平行して、
○世界トップレベルを目指す小中高の理数教育の強化
○理数教科書の充実等、基盤となる知識教育の強化
○大学院教育の抜本的強化
○バイオテクノロジー等新技術に対する国民理解の向上
○イノベーション創出を現場で支える技術者の育成・確保
総合科学技術会議は本戦略に掲げる施策についてフォローアップを行う。
(以上)
研究振興局振興企画課学術企画室
-- 登録:平成21年以前 --