平成18年6月14日
総合科学技術会議
科学技術は経済成長や社会進歩のための「明日への投資」である。現在、日本経済は新たな飛躍の時を迎えているが、人口減少下での生産性向上の必要性や激化する国際競争に鑑みれば、科学技術振興が今ほど求められる時はない。このような認識に立ち、本資源配分方針を取りまとめた。
平成18年度予算において、先端融合領域イノベーション創出拠点形成事業の開始等一部改革を進めているところであるが、平成19年度予算は、第3期科学技術基本計画(以下、「第3期基本計画」という)を本格実行していくための実質的な初年度予算である。
このため、本資源配分方針では、第3期基本計画を本格実行に移していくため、特に平成19年度予算において優先すべき重点課題を、「選択と集中」を徹底し厳選して明示するとともに、研究費配分における無駄の徹底排除等のための具体的な取組方策を示す。この方針に従い、関係府省が戦略的・重点的に概算要求を行い、その結果を総合科学技術会議が優先順位付け等でフォローアップしていく、計画-実行-評価-改善(PDCA)の政策サイクルを確立する。
イノベーションは経済成長や社会進歩の原動力であり、その礎は科学技術が担っている。総合科学技術会議では、イノベーションの源としての基礎研究の強化から、イノベーションを結実させる政策の強化まで体系的に俯瞰した「イノベーション創出総合戦略」(別添)を取りまとめた。本戦略は今後10年間の経済成長に貢献する施策をまとめる「経済成長戦略大綱」に位置付けられる予定である。この戦略を具体化していくことが、平成19年度の最重要課題であり、総合科学技術会議は関係府省の取組を主導するとともにフォローアップを行う。
科学技術の発展は、広く社会・国民に支持されて初めて可能となる。このため、第2期基本計画期間中の研究開発投資の成果を国民に向けて分かりやすく取りまとめるとともに、国民への説明責任・成果発信の強化、国民の安心・安全に資する科学技術への取組強化等を進める。
このような取組により、当初予定された成果が得られていないプロジェクトや国民への説明責任が不十分なプロジェクト等は大幅に見直すなど科学技術関係施策の質の向上、改革を更に進めながら、「明日への投資」である科学技術関係予算の拡充に向け、総合科学技術会議のイニシアティブの下、政府全体で取組を強化し、第3期基本計画で謳われた政府研究開発投資の総額の規模「25兆円」に込められた国民の期待に応えていく。
国の資源を活用して科学技術関係施策を推進している関係府省は、その施策の内容、目標、成果等を広く社会・国民に対して説明するとともに、投入する資源から最大限の成果を得るべく努める責任を負っている。
研究費配分の不合理な重複や個人の適切なエフォートを超えた過度の集中を避けるためのシステム改良・整備は緊急の課題である。このため、内閣府の現行の政府研究開発データベースを活用し、関係府省が協力して競争的資金に加えプロジェクト研究等も含めた府省横断的な重複等のチェックシステムの運用を本年8月を目途に開始する。更に、電子政府構築計画に基づく府省共通研究開発管理システムの整備を本年度より科学技術振興調整費を活用して進め、平成19年度中の運用開始を目指す。
第3期基本計画を踏まえて科学技術関係予算の更なる改革を着実に進めるため、関係府省は予算要求の検討の際に以下のような取組を行い、その結果を概算要求時に、内閣府に提出する(具体的な様式等については、7月に内閣府より関係府省に提示)。
○ 「選択と集中」を徹底し、関係府省ごとに優先事項を明確にして資源の重点化を図る。
○ 新規施策の要求に当たってはスクラップ・アンド・ビルドの考えを徹底するとともに、原則として開始後3年以上を経過した継続施策については成果の達成状況等をレビューし、必要に応じ整理・合理化・削減を行う。
○ 分野別推進戦略の中で厳選された戦略重点科学技術(国家基幹技術を含む)に重点投資を行う。
この推進を府省横断的に実現するため、62の戦略重点科学技術ごとに、関係府省が概算要求前から連携施策群等の枠組みも活用しつつ個々の施策の位置付けを明確化し、基礎段階から応用・産業化段階まで見通したそれぞれの全体俯瞰図の素案を作成する。
○ 円滑な科学技術活動やイノベーション創出の観点から、制度的隘路の解消など、制度改革を進める。
○ 関係府省における所管行政を効果的・効率的に進めるために科学技術を最大限活用(例えば、最新の科学技術を用いて、これまで科学技術政策に直接的に関係しないものとされていた既存事業の効率的実施やイノベーション創出に資する取組への積極的展開等)することにより、関係府省における科学技術関係予算要求の比重を高めていくよう努める。積極的かつ優れた取組については、優先順位付け等で配慮する。
「社会・国民に支持され、成果を還元する科学技術」を徹底するため、関係府省は以下のような取組を行う。
○ 国民への説明責任・成果発信の徹底を図るため、関係府省ごとに第2期基本計画中の研究開発投資成果について、失敗事例も含め、定量的指標も用いて国民に向けて分かりやすく取りまとめ、公表する。
○ 各施策ごとに具体的な研究開発目標、成果目標を設定し、フォローアップを行っていく。
○ 科学技術に対する国民の関心が低下している現状に危機感を持ち、その改善のための関係者一丸となった国民運動を展開するための取組を強化する。
○ 研究者等のアウトリーチ活動(国民と対話しながらニーズを共有する双方向コミュニケーション活動)を推進するとともに、各研究実施主体(関係府省、独立行政法人、大学等)における研究成果の発信強化を徹底する。
第3期基本計画を本格的に実行していく上で、平成19年度予算において優先すべき重点課題を以下に示す。関係府省は、これらに関する施策を積極的に具体化し、概算要求に反映する。独立行政法人等の運営費交付金による事業については、効率的な運営が基本であるが、重点課題に関しては重点的な資源配分を行うことが必要であり、この際、必要に応じ中期目標の見直しも含め検討し、独立行政法人等であるが故にその運営費交付金に対し直ちに予算上の制約が課されることのないようにする。
また、下記の重点課題に当たらない施策については、減額するものや増額が必要なものなどがあるが、精査して適切な予算を措置し、効果的・効率的に進める。
なお、(2)、(3)及び(4)については、「イノベーション創出総合戦略」に一部関連する記載があるが、「モノから人へ」を実践していく上で重要な課題を補完的に詳細に記載している。
関係府省は「イノベーション創出総合戦略」に基づいた施策を早急に具体化し、概算要求に反映する。総合科学技術会議は、本戦略に掲げる施策について、今後10年間の経済成長に貢献する施策をまとめる「経済成長戦略大綱」も踏まえ、フォローアップを行う。
○ 従来の横並び・平等主義を廃し、優れた研究を行う者が報われる取組の促進(任期制の広範な定着、競争的資金の研究促進のための人件費への活用等も含む)。
○ 小・中・高等学校等における理数教育について、学校外の専門的な人材の活用、教員の指導力の強化、国際科学オリンピックへの参加の促進等により、世界最高水準を目指し抜本的に充実。理数教科書の充実の検討等、基盤となる知識教育の強化。
○ 高度な科学技術関係人材の育成のため、基盤的資金と競争的資金を有効に組み合わせつつ、大学学部における国際的にも開かれた多様で質の高い教育の推進、大学院教育の抜本的強化と卓越した教育研究拠点形成に向けた競争的・重点的支援制度の充実。
○ 博士課程(後期)在学者の2割程度が生活費相当額程度を受給できることを目指し、経済的支援を計画的に充実。
○ 優れた若手研究者、女性研究者、外国人研究者の活躍を促進。
○ イノベーションの源となる多様な基礎研究等を推進するため、科学研究費補助金を含む競争的資金を拡充。科学研究費補助金は、若手研究者支援や間接経費を充実。また、本年度より開始した先端融合領域イノベーション創出、地域再生人材創出等のプログラムを充実。
その際、公正で透明性の高い研究課題の審査が行われるよう、世界的な知見を有する者の審査員への登用の拡大等審査体制を強化するとともに、制度に応じて英語による申請・審査を促進。併せて、研究環境改善等のため間接経費の30パーセント確保(平成19年度新規採択部分は優先的に拡大)、研究資金の早期交付、繰越明許費の適切な活用(本年4月の科学研究費補助金の事例を参考)を推進。さらに、優れた研究について、例えば終了1年前の評価を導入するなど研究費制度間の連携等により、研究期間終了後の研究継続の仕組みを構築。
○ 国立大学法人運営費交付金及び私立大学助成は、基礎研究の多様性と継続性に配慮しつつ、研究環境基盤も強化し、競争的な環境を醸成する視点に立った措置を拡充。
○ 大学等の施設整備については、老朽化の進展が極めて深刻な状況にあるとの認識の下、優れた人材の育成と確保にかかる優先度の高い公共的施設として、「第2次国立大学等施設緊急整備5か年計画」に示す整備面積の達成を図るべく強力に推進。また、大学等による自助努力や地方公共団体等との連携協力による施設整備も推進。
さらに、私立大学の研究機能の強化を図るため、施設・設備の整備に対する支援を充実。
○ 先端大型研究設備は、利用手続きの簡素化・適切な利用料の徴収等制度改革を進めつつ、産業界や海外も含め広く共用を促進。
○ 若手研究者の海外での活躍・研鑽機会の拡大。
○ 研究費の英語による公募やポストの国際公募の拡大、研究現場における英語の共通言語化の推進。優秀な外国人研究者への就業支援など定着の促進。
○ ハイレベルの政策対話等を踏まえた、アジア諸国との戦略的共同研究の実施。
○ 各大学・研究機関の成果やプレス発表を英文化しホームページに掲載するなど、英語での情報発信の抜本的強化。
総合科学技術会議は、関係府省の科学技術関係施策全体や改革への取組状況を十分に把握・俯瞰した上で、一層メリハリの効いた優先順位付け等の取組を強化する。
○ 関係府省の科学技術関係施策全体を広く把握した上で、上記3に掲げる重点課題を中心に基本計画との整合性等を詳細にチェックし、改善すべき事項等について見解を示すことに重点をおき、併せて特に優先すべき施策、大幅に見直すべき施策等を指定(具体的な改革案は、7月の総合科学技術会議に報告)。
○ 優先順位付けのヒアリングにおいては、関係府省の概算要求(税制改正要望も含む)にかかる基本方針(優先事項やシステム改革への取組方針等)及び選択と集中(整理・合理化への対応や戦略重点科学技術への対応等)の取組について聴取。
○ 独立行政法人、国立大学法人等の運営費交付金の科学技術関係部分の概算要求の全体像を主務府省から聴取。
○ 上記3に掲げる重点課題(小規模なもの等を除く)については、各施策ごとに資料の提出を求め、ヒアリング等により、詳細に内容のチェックを行い、改善すべき事項等について見解を示す。その上で、特に優先すべき課題や大幅に見直すべき課題等につき、昨年以上にメリハリの付いたランク付けを実施。
上記以外の施策のうち、運営費交付金で実施される業務を除いた一定規模以上のものも対象にする。
○ 戦略重点科学技術ごとの全体俯瞰図については、素案をもとに、関係府省からヒアリング等を行い完成させる。
○ 上記の優先順位付け基準の一層の明確化(研究開発目標の達成状況、費用対効果等)。
○ 科学技術基本計画のフォローアップを中心に、各法人の基本データを継続的に把握。必要に応じ、これまでの独法化の効果等テーマを設定し、深堀り調査を実施。
○ 必要な場合には関係府省に対して改善措置を求める。
○ 関係府省の縦割りによる弊害排除や連携強化のための科学技術連携施策群の取組を概算要求前から進め、11月を目途にこれまでの成果をとりまとめる。その評価も踏まえ、対象施策群の拡大等改革を推進。
○ 上記2のとおり、研究費配分の不合理な重複や個人の適切なエフォートを超えた過度の集中を避けるためのシステムを関係府省と協力して整備。
○ 国家基幹技術については、昨年度大規模新規研究開発として事前評価を実施したものを除き、概算要求までに評価を実施し、その結果を関係府省が概算要求に反映。
○ 「総合科学技術会議が実施する国家的に重要な研究開発の評価について」に基づき、大規模な研究開発(国費総額約300億円以上)その他の国家的に重要な研究開発の評価を実施。
○ 継続中の研究開発について、中間評価の実施状況を引き続き調査するとともに、新たに、終了した研究開発について事後評価の実施状況を調査。調査結果を踏まえ、必要に応じて関係府省に評価システムの改善を求めるとともに、優先順位付け等に活用。
研究振興局振興企画課学術企画室
-- 登録:平成21年以前 --