資料5 科学技術の国際活動の戦略的推進

科学技術・学術審議会
基本計画特別委員会(第9回)
平成17年2月25日

 社会経済のグローバル化が進展する中で、わが国は、人材、技術など「知」をめぐって世界各国と競争する一方で、地球環境に代表されるように他国と協力して解決すべき課題にも直面している。このように国際的な競争と協力が求められる中で、科学技術の果たすべき役割が増大している。

 こうした中、科学技術活動の単なる「国際化」から、さらに踏み込んで「戦略的に」国際活動を推進していくことが必要である。国際動向の十分な分析等に基づき、状況に応じて「競争と協調」「協力」「支援」といったアプローチを使い分けながら国際活動を戦略的に推進していくべき。

 従来の欧米先進国を対象とする科学技術分野の国際活動を継続発展させるとともに、特に、科学技術分野においても成長著しいアジア諸国との関係強化を図り、全体としてよりバランスのとれた国際活動を強力に推進することが必要。その際、欧州における地域連合の取組み等を踏まえ、ASEAN+3(アセアン プラス スリー)における「東アジア共同体」構築に関する動きを科学技術面から先導するべく、我が国として東アジア科学技術コミュニティの構築に向けたイニシアティブを発揮していくことが必要。

  1. 国際活動を担う人材層の充実(p.8~)(※下記参照)
     内外の優秀な研究者を我が国に惹き付けるとともに、国際的な研究人材ネットワークを構築するための取組みを推進。
  2. 国際プロジェクト等の重点的推進(p.12~)(※下記参照)
     科学技術国際動向の分析結果や分野別戦略等を踏まえて、我が国の積極的な関与の下、国際プロジェクト等を重点的に推進。
  3. アジアにおける科学技術コミュニティの構築(p.14~)(※下記参照)
     「東アジア科学技術コミュニティ」の構築に向けて、アジアにおけるパートナーシップの強化を図る。
  4. 国際活動基盤の強化(p.18~)(※下記参照)
     我が国の研究・生活環境を国際的に魅力あるものとするため、科学技術の国際活動基盤の強化を図る。

[注1]  ここでいう「国際活動」には、海外で行われる活動だけではなく、外国人研究者を我が国に惹き付けるための国内における活動等も含む。
[注2]  「東アジア」の範囲として、ASEAN+3(アセアン プラス スリー)会合や日中韓三ヵ国会合等の場においては、ASEAN+3(アセアン プラス スリー)(日中韓)の国々を指す場合が多く、本資料でもそうした用例を参考とする。但し、「東アジア」の範囲を固定的、硬直的に捉える必要はなく、対外的に開かれたものと位置づけていくべきもの。

■第2期基本計画のポイント

3.科学技術活動の国際化の推進

(1)主体的な国際協力活動の展開

  • 地球規模の問題の解決を目指した研究や国際的な取組みが必要となる基礎研究について、世界に向けて具体的な国際協力プロジェクトを提案・実施し、得られた成果を世界に還元する。
  • この際、特にアジア諸国とのパートナーシップ強化を念頭に置く。
  • 知的財産権保護、標準化の推進に関し、制度等の国際的な調和に向けて先導的な役割を果たす。
  • 積極的な国際活動を通じ、優れた人材を養成し、更にレベルの高い活動を展開する。

(2)国際的な情報発信力の強化

  • 研究成果、研究者、研究機関に関する情報の積極的な海外への発信が重要。
  • 研究成果の英語での発表を強化するための支援を行う。
  • 学協会とも連携しつつ、国際的水準の論文誌の刊行等、情報の組織的な発信を行うための環境を整備する。

(3)国内の研究環境の国際化

  • 公的研究機関では、日本で研究開発に従事し、成果をあげた若手の研究者を評価し能力に見合う処遇をするなど、優れた外国人研究者が我が国において研究を継続できるようにする。
  • 公的研究機関では、外国人研究者が定着するよう、処遇の改善、英語の使用、国際社会との交流の自由度の確保、滞在に係る支援等受け入れ体制・環境の整備充実を図る。
  • 日本で研究する外国人研究者の競争的研究資金への英語による応募を認める等外国人研究者に開かれた研究環境を整備する。
  • 筑波研究学園都市及び関西文化学術研究都市を内外に開かれた国際研究開発拠点として育成・整備する。
  • 日本人研究者が若い時期から海外の優れた研究機関で活躍できる機会を拡大するとともに、海外の一流の研究者と切磋琢磨できる交流の機会を拡大する。また、日本人研究者は国際的なネットワークを拡大するよう努める。

■第2期基本計画の進捗状況

3.科学技術活動の国際化の推進

(1)主体的な国際協力活動の展開

  • 国際協力体制の下で多数の研究プロジェクト等を提案、実施(例:ITER(イーター)計画、ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム(HFSP)、国際宇宙ステーション計画、アルマ計画、統合国際深海掘削計画(IODP))。
  • 我が国が主体的に国際協力を展開する制度を創設(科学技術振興調整費、科学技術振興機構)。
  • アジアを中心に拠点大学交流を展開(日本学術振興会)。
  • 国際研究交流における知的財産への注意を喚起。

(2)国際的な情報発信力の強化

  • 学会等が定期的に刊行する欧文誌等を助成(日本学術振興会)。また、有力学術雑誌の国際化や学術雑誌の海外流通を推進。
  • 科学技術振興機構のデータベース(ReaD)等を通じ海外へ情報発信。

(3)国内の研究環境の国際化

  • 大学における外国人教員は3年間で若干増加しているが、教員総数に占める割合は約3.5%と低く横ばい。
  • 国立大学の法人化に伴い、学長等への外国人の登用が可能に。
  • 大学の国際競争力強化のため、大学に国際担当部門等を設置(平成14年5大学、平成15年10大学(累計))。さらに、国立大学の法人化を契機に大学の組織的な国際化を推進するための大学国際戦略本部事業を平成17年度より開始予定。
  • 日本で研究する外国人研究者の競争的研究資金への英語による応募については、科研費、JST戦略的創造研究推進事業等において認めている。
  • 国内研究環境の国際化推進のため、外国人研究者の受入れ制度及び日本人研究者の海外派遣制度を実施。また、研究者の相互交流や国際研究集会を強化(日本学術振興会)。
  • 筑波研究学園都市及び関西学術文化研究都市では、外国人研究者数が増加。

■総合科学技術会議フォローアップ(平成16年5月)

【意見】

○ 国立大学等の研究機関における研究者に占める外国人研究者の割合が3.5%と低い状況であることを踏まえ、各機関において積極的な取組みを行うことが必要。

○ その際、実効をあげるため、各機関において数値目標の設定も含めた計画的な取組みを行うべきであり、また、それらの取組みが各研究機関の評価に直接反映される仕組みを導入すべき。

○ 優れた外国人研究者が我が国において活発に研究開発活動ができるように、成果を上げた研究者について能力に見合う処遇や住環境を含め生活環境の整備を図る等、各研究機関において積極的な取組みが必要。

○ 一国で対応できない諸問題への対処、我が国が強みとする分野や我が国にとって有意な分野等でのイニシアティブ確立のため、国益を見極めつつ、各国と緊密な「協調」を推進すべき。

○ フロントランナーとしてアジア地域の科学技術の発展に寄与し、アジア諸国とのパートナーシップを更に深めるため、政策対話、連携・協力を推進する必要。

○ 我が国において世界中の第一線の研究者が長期に亘り継続的に研究開発を行う環境構築が不十分。優秀な外国人研究者を積極的に受け入れる人事登用システムの構築が必要。また、研究機関の組織運営、特にサポート部門の英語化が必須。

■国際化推進委員会報告書(平成17年1月)のポイント

 科学技術の国際活動の戦略的推進方策として以下の4点を提言。

  1. 国際戦略に基づいた活動の重点的推進
     国際動向の調査・分析活動を充実しつつ、国際活動を戦略的に支援。
  2. アジアにおけるパートナーシップの構築
     研究者交流を推進し、科学技術コミュニティの構築に取り組む。また、地域共通課題への挑戦を通じ、アジア発の独創的な研究を創出し、国際競争力の強化、グローバルな問題の解決にも貢献。
  3. 国際的研究人材の養成・確保・ネットワークの構築
     内外の研究人材の「知の出会い」の場の充実、継続的ネットワークの構築、優れた外国人研究者の招へい、若手研究者の海外派遣等が重要。
  4. 国際活動基盤の強化
     大学における特色ある組織的な国際活動に向けた取組み等国際活動基盤の強化が重要。

■科学技術基本計画ヒアリングにおける主な意見

「外国人研究者」と「アジア」に関する言及が最も多い。

○ アジア(特に中国、韓国、台湾)において日本が科学技術で中心的役割を果たすための戦略と取組みが必要。

○ 優秀な外国人研究者を招へいして科学を活性化すべき。アジアの優秀な人材の獲得競争は益々激しくなるが、日本でもトップクラスの学生の受け入れ、優秀な留学生の日本への定着、帰国後のフォローアップ、優秀な若手を中心とした人材のネットワーク作りに取り組むべき。

○ 優秀な外国人の来日を促すためには、大学、研究所、企業において、外国人をもっと登用すべき。その際、能力に応じた処遇ができるよう、柔軟な昇進、処遇システムの構築が必要。

○ 外国人研究員・留学生が日本を研究の場としやすい環境整備も必須。ビザ、衣食住の問題など社会システムが来日の阻害要因。

○ 大学事務局の外国人対応能力の強化(人材の確保等)が課題。

○ 海外派遣された若手研究者は帰国後我が国に良い影響。若手研究者にインセンティブを与えることは必要。

○ 日本人研究者の海外流出(頭脳流出)を防ぐことは大きな課題。ハイレベルな研究者を確保する仕組みが必要。

○ 他国にも研究資金を投入し、知的財産をグリップする等、国家的視点からの積極的な国際戦略が必要。

○ 大学の国際交流の際には双方の国の企業も交えると良い。

  • 科学技術の国際活動の戦略的推進(PDF:25KB)(※下記参照)

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科学技術・学術政策局計画官付

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(科学技術・学術政策局計画官付)