3.アジアにおける科学技術コミュニティの構築

  • 国際社会においては、グローバル化の進展と同時に、EU拡大と欧州研究圏(ERA)構築など、地域連合形成の動きも進展。最近では、ASEAN+3(アセアン プラス スリー)(日中韓)首脳会談で、将来「東アジア共同体」を構築していくことが合意。・アジア諸国、特に中国、韓国やASEAN(アセアン)諸国の一部は、近年、経済とともに科学技術分野でも急速に成長しており、我が国としても、欧米諸国との間で築いてきたようなオープンで対等なパートナーシップをアジア諸国にも拡げ、地域の科学技術の発展を先導していくことが必要。
  • 特に地理的にも近接した東アジア諸国において、科学技術面でのパートナーシップを構築することは、地域共通の課題やアジア地域発の科学技術の創出とこれら分野を得意とする科学技術人材層の蓄積を通じて、アジア地域の優位性の確 保に貢献するもの。
  • こうした観点から、中長期的には、米、欧と並ぶ第3の科学技術の極を形成していくことも視野に入れつつ、「東アジア共同体」構想の一環としての、東アジア科学技術コミュニティの構築を指向すること、その第一歩として、先ず交流実績が厚い中国、韓国との間での連携を強化し、共同体構築を先導していくことなどが重要。
  • このため、以下の4つの取組みを推進する。

(1)研究者交流の推進

  1. 研究者流動性の向上
  2. アジアの研究者のネットワーク構築とアジアにおける「知の出会い」の推進

(2)地域共通課題への挑戦

(3)科学技術プラットフォームの構築

  1. 多層的科学技術コミュニティの形成
  2. 共通研究基盤の整備
  3. 科学技術に関するシステム、文化の共有

(4)  アジア諸国共同の枠組み作りへのイニシアティブの発揮

■第3期基本計画において採るべき主要な方策(案)

(1)研究者交流の推進

  • 人的なつながりは、科学技術におけるあらゆる国際活動の基礎となるものであり、アジアにおける科学技術コミュニティの構築の出発点。
  • したがって、研究者の交流を強力に推進するとともに、将来のアジアにおける科学技術コミュニティを担う人材を育成していくことが重要。
  • 地域連合の先行事例であるEUは、世界最高の研究圏としての欧州研究圏(ERA)構築を目標として、欧州域内の研究者交流を促進するための制度を整備。同様の取組みは北欧諸国間においても行われている。

1 研究者流動性の向上

1)域内研究者交流の充実
  • 日本学術振興会等における研究者交流制度の充実等を通じ、東アジア科学技術コミュニティを担う研究者層の蓄積、養成を図る。
2)研究者の流動性阻害要因の改善
  • 例えば、頻繁に国際会議に出席するなど密度の濃い研究交流を行う研究者や、特定の国からの研究者について、研究交流の一層円滑な推進を図るため、APEC(エイペック)ビジネストラベルカードのような先駆的取組みを参考としつつ、短期滞在査証取得手続を簡素化、迅速化するなどの措置について、関係府省において議論を深めることが重要。
  • 出入国管理及び難民認定法の見直し、運用改善について関係府省において議論を深めることが重要。【再掲】
  • APEC(エイペック)エンジニア等科学技術関連の資格の相互承認を引き続き推進する。

2 アジアの研究者のネットワーク構築と「知の出会い」の推進

  • 帰国後の日本学術振興会外国人特別研究員や、各大学の留学生など、知日派研究者のネットワーク化(同窓会活動等)を推進する。この際、例えば、科学技術振興機構の研究者データベースReaDの活用により効果的に推進する。
  • アジアにおける科学技術コミュニティの構築を支える、アジア諸国の科学技術動向に詳しい我が国の研究者について、ネットワーク化を推進する。
  • 日本国内のアジア研究者(大学院への留学生など)が我が国の科学技術システムの中でさらに力を発揮できるよう、こうした人材に関する求人情報、求職者情報の提供等を推進する。
  • さらに、アジアにおける若手のトップ研究者間の交流と知的触発を通じて東アジア科学技術コミュニティを支える将来の研究リーダー間のネットワーク構築に向けた取組みを展開する。

(2)地域共通課題への挑戦

  • 我が国と他のアジア諸国との間では、地理的な近接性に由来して、環境問題、自然災害の防止や被害の低減、新興・再興感染症対策等の課題を共有しており、これらの課題に機動的に対応すべき国際プロジェクトの重点的推進を図るためのファンディング制度の充実を図る。

(3)科学技術プラットフォームの構築

  • アジアにおいて科学技術コミュニティを形成し、その持続的に発展を実現するためには、各国が科学技術に関するシステム、文化、情報といったコミュニティの基盤を共有することが必要であることから、以下の取組みを推進する。

1.多層的科学技術コミュニティの形成

  • 科学技術コミュニティの取組みを中長期的展望の下で推進していくため、行政機関間、大学・研究機関間、ファンディング機関間、アカデミー間等の多層的な交流枠組みの整備を図る。
  • 科学技術・学術振興に携わる関係機関の能力を活用しながら、上記のような多層的な交流の取組みの間の連携を図り、我が国としての交流活動の最適化を図る。

2.共通研究基盤の整備

  • 共通研究基盤(研究情報流通基盤等)の整備を図る。(学協会誌の電子化支援など)
  • 大学・研究機関による主体的な研究成果情報の発信機能等を強化する。

3.科学技術に関するシステム、文化の共有

  • アジア発の独創的な科学技術に基づくイノベーションを地域で進める上で知的財産権の取扱い、大学・研究機関から産業界への技術移転、産学官連携、技術標準、研究者の能力の評価・登用など、科学技術に関するシステムや、文化といった科学技術基盤を共有するため、アジア地域における行政官、専門家の交流等を推進する。

(4)アジア諸国共同の枠組み作りへのイニシアティブの発揮

 研究者交流の推進、地域共通課題への挑戦、科学技術プラットフォームの構築等をアジア諸国共同で持続的に推進していくための枠組み、例えば東アジア科学技術コミュニティ構築プログラム(アジア版フレームワークプログラム)を創設することを目指し、アジアにおいて我が国がイニシアティブを発揮する。

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科学技術・学術政策局計画官付

(科学技術・学術政策局計画官付)