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検討課題例に「高等教育改革への支援と多元的できめ細やかなファンディング・システム」とあるが,これは国立大学の運営費交付金等の予算配分上のシステムのことを指しているのか。それとも,寄附講座等,高等教育全体の振興のための外部資金をも含めたものを指しているのか。
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我が国の高等教育に対する公財政支出は,欧米諸国の半分以下となっており,とりわけ私費負担が高いということからも,公財政支出の拡充を図る必要があると考えている。現在,公財政支出には,国立大学の運営費交付金や私学助成のような基盤的経費と,国公私立大学を通じた大学教育改革の支援のための補助金や科学研究費補助金等の競争的資金があるが,様々な視点からの資金調達を充実させる必要がある。また,国の厳しい財政事情に鑑み,外部資金の導入についても検討する必要がある。
一方,産業界からの資金が,国内大学に比べて海外の研究機関に約2.5倍も流れているというデータもある。外部資金等を含め,様々な観点から「きめ細やかなファンディング・システム」について検討する必要があると考えている。
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グローバル化時代の大学像と高等教育の質保証というテーマについて,産業界の視点で考えると,我が国の一番大きな問題は,個人の資質・素養というものが,外部から与えられた資格と必ずしも一致しないということではないか。例えば,企業は有力大学の学生を採用する際,成績を殆ど考慮しない。また,採用後のキャリアパスをみても,必ずしも採用時に成績の良かった者が企業内で業績が良いとは限らない。日本の企業の資金が海外の研究機関に流出している点も実質的な資質・能力と資格との不一致の問題との間に深い関係があるのではないか。
例えばアメリカでは,個人の能力と資格の間に比較的矛盾がなく,期待値が一定している。ところが,日本の場合は,それらがもともと直接連動していないという側面があるため,採用や投資の方法が常に形式的にならざるを得なかったという経緯がある。
高等教育の質保証のためには,どのように制度化をすれば外的標識と実力が一致するかについて議論する必要があるのではないか。
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高等教育の質保証について,検討課題例に挙げられている事項は,具体的な施策に結びついた内容であるものが多いが,例えば,産業界あるいは社会全体に対して大学卒業者がどのように貢献し得るのか,それに対して,高等教育はどのように質の保証ができるのかといった背景の部分の議論も必要ではないか。
また,現在,既設学部等の直近の平均入学定員超過率が1.3倍を超えた場合に新たな設置認可を認めないこととしているが,高等教育の質保証について長期的に考えた場合,定員割れが常態化しつつある点をどのように考えるか等,大学の定員の在り方についても議論する必要があるのではないか。
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今般の大学設置基準等の改正は,専任教員の位置付けの明確化等重要な内容が含まれており,来年度の設置認可申請を行う大学等に配慮するために今年度中に改正を行うということは理解できる。一方で,当部会においてさらに設置基準や設置審査における視点の明確化について議論するというのはどのような趣旨か。今回改正される大学設置基準の解釈や運用について議論するということか。
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長期的に見て,今回の改正点を含め,設置基準や設置審査の視点の明確化については,もう少し時間をかけて検討する必要があると考えており,そのため,検討課題例に挙げている。
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認証評価制度について,今後,どのように動いていくのか。制度を全体的にとらえ,制度上の問題点等を洗い出し,この場で議論することも必要ではないか。
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認証評価が平成16年度に制度化され,現在5つの機関が評価機関としての認証を受けている。約1,200の大学・短大が7年に一度評価を受けることとなっており,進行状況も含めて当部会に報告するとともに,必要に応じて議論していただくことを考えている。
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設置等の認可申請・届出に係る手続等に関する制度改正について,「大学院等の設置の弾力化」として,基礎となる学部等の設置から2年以上経過しなくても大学院の設置が認められるよう制度改正を行うとのことであるが,なぜこのような改正を行うのか。今回の改正により,大学院の教育の質が確保されるのか懸念があるが,どうか。
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確かに基礎となる学部等をまず設置し,その上で大学院を設置するというのが一般的な形であるが,昨今,大学院大学の設置が増えていることからも,学部があり,その積み上げとして大学院があるという姿が必ずしも適当かどうかについては議論がある。大学院教育の質の保証という意味では,現在,設置しようとする大学院の教育課程が大学院の教育課程として相応しいものかどうかに着目して審査している。そうしたことからも,大学院の設置について一律の規制をかける必然性はもはや薄いと考え,今回の改正を行うこととした。
一方で,御指摘のとおり,大学院の質保証の仕組みの在り方については,当部会でもさらに議論を深めていただきたいと考えている。
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今後の進め方については,本日いただいた意見を参考にしながら具体的な検討テーマを立てて進めていきたい。また,各大学の取り組みについてヒアリングを行ったり,有識者の方からの意見発表をしてもらったりすることも考えていきたい。
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