答申素案

平成20年1月15日

4.具体的方策

 3.の目指すべき施策の方向性を踏まえ、今後国及び地方公共団体では以下のような具体的方策を推進することが考えられる。

(1)国民一人一人の生涯を通じた学習の支援−国民の「学ぶ意欲」を支える

1今後必要とされる力を身に付けるための学習機会の在り方についての検討

  •  変化の激しい社会を担うために必要とされる力を国民一人一人が身に付けるためには、学校教育のみならず、広く生涯を通じて学習する機会があることが重要である。これまでは、例えば、子どもたちに必要とされている「生きる力」の育成を目指して、社会教育において、どのような方法で子どもを支援できるか必ずしも検討されてこなかったが、今後はその共通の目標に向かい、社会教育関係者が積極的に連携して支援していくことが考えられる。また、成人を対象とした社会教育活動についても、同様の視点から検討することは重要である。
(子どもの学校教育外の学習等の在り方の検討)
  •  平成19年度より、放課後や週末等に小学校の余裕教室等を活用して、子どもたちの安全・安心な活動拠点を設け、地域の人々の参画を得て、学習やスポーツ・文化活動、地域住民との交流活動等の機会を提供する「放課後子ども教室推進事業」が実施されており、各地で取組が行われている。本事業は厚生労働省の「放課後児童健全育成事業」(「放課後児童クラブ」)と一体的あるいは連携した総合的な放課後対策(「放課後子どもプラン」)として推進されている。
  •  今後は、子どもたちの安全な居場所づくりを行う観点のみならず、「生きる力」の育成を学校外の活動においても支援する観点から、活動内容の参考となるプログラムや、参考となる事例の収集・分析等を通じた情報提供、それらを円滑に進めるための人材の確保や養成の支援方策等について、具体的に検討していくことが求められる。
  •  また、その際には、「放課後子ども教室推進事業」の他に社会教育として実施されているボランティア活動や自然体験活動、キャリア教育等、他の学校外における学習活動・教育活動との連携の在り方を含めて検討することも考えられる。
  •  成人の学習については、1.に記述したとおり、国際的にも、例えば、個人や社会にとって必要不可欠で普遍的な技能等の成人能力について調査測定しようとするOECDにおける動向等、成人に必要とされる能力に対する関心の高まりが見られる。我が国においても、成人が変化の激しい社会に対応するために求められる力の観点から、今後の生涯学習振興行政の在り方を考える上で、これらの動向に積極的に対応し、関連情報の収集に努めることは意義があると考えられる。
  •  中央教育審議会や政府の各種会議等において提言されている「生きる力」、「学士力(仮称)」、「人間力」等の能力は、それぞれ異なった目的の達成、課題の解決を目指している。これらは共通に、自立性、協調性、問題解決能力、情報分析能力、倫理観、積極的な社会参画といった資質の重要性を指摘していることに見られるように、大人についても変化の激しい社会を生き抜いていくために分野横断的・普遍的な力が求められている。
  •  これらの力に例示されるような大人が社会の変化の中で自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力を養成していくためにも、学校教育段階からの継続的な学習を支援していくことが必要であり、その中で社会教育は大きな役割を果たし得、また、果たすべきと考えられる。その際、「生きる力」等の提言について整理し、学校教育、社会教育等の各施策を生涯学習の理念を実現する観点から総合的に調和・統合させる生涯学習振興行政として、わかりやすく提示していくことは、今後、人々の自立を具体的に支援していく方策を検討する上でも意義深いと考えられる。
  •  生涯学習振興行政の推進に当たって、このような総合的な力を具体的に提示していくことは、従来社会教育施設等がこれまで以上に中心的な役割を果たさねばならないが、加えて民間事業者等による教育サービス提供のための指針ともなり得るものである。さらに、一般の企業等の「民」が社会的責任を果たし、公益を担うために具体的にどのように活動するかを考える際の一助となり得る。社会全体でその教育力の向上を図るに当たっては、目標を共有することを促進し、連携を深めるものと期待される。

2多様な学習機会の提供、再チャレンジが可能な環境の整備

  •  国民の生涯にわたる学習活動を支援し、学習機会の充実を図る上で、社会教育行政としては、地域の学習拠点である社会教育施設の活用を図ることが重要な課題となっている。社会教育施設については、地域によっては専門的職員の配置や設置状況等に課題があるものも多く、その活用を図ることが現状では困難な状況にある施設も少なくない実情もあるが、上述の様々な社会のニーズや高まる社会教育行政の重要性を背景に、今一度地域の重要な資源であるこれらの社会教育行を担う施設の活性化が期待される。
(社会教育施設等を活用した多様な学習の場の充実)
  •  住民の地域社会への貢献やコミュニティづくりへの意識を高め、地域独自の課題や公共の課題に対応するなど、民間事業者等によっては提供されにくい分野の学習を支援するため、公民館、図書館、博物館、青少年教育施設等の社会教育施設の機能強化が望まれる。各施設の具体的な役割等については後述するが、例えば、住民の主体的な地域課題への取組や、社会の要請が高い分野の学習、家庭教育に関する学習等を行う学習拠点として位置付け、またその際には情報通信技術を活用するなどし、地域社会における課題解決の機能を総合的に確保することが重要である。
  •  また、特に成人の学習支援においては、各個人が住む地域の課題への対応のほか、職業生活上の課題への対応として各個人の職業能力や就業能力(employability)を向上させるためのニーズに応える必要があることから、職業能力開発行政と連携した行政による機会の提供等も重要である。例えば、公民館と職業訓練校とが、カリキュラム、テキスト、指導員等についての情報の交換や資源の共有を行うこと等が考えられる。
  •  また、国民の生涯学習へのニーズに応えるため、全国の国民に放送を通じて幅広く大学教育の機会を提供している放送大学については、時代の変化に対応し、学生がより質の高い授業を受けられるよう、放送のデジタル化等を踏まえて、学習者の視点に立った多様な取組を推進することも求められる。
(相談体制の充実)
  •  国民の学習を支援していく上では、学習機会の整備のみならず、学習への需要と供給のマッチングを図るための支援を行うことも重要である。就業・起業やボランティア活動・社会参加等の新たなチャレンジをしようとする人に対し、地域や社会・産業界のニーズを具体的に把握、明確化し、キャリア形成支援を含めた学習相談を行うとともに、必要な知識等が習得できる学習機会を、大学・専修学校・企業・NPO等の民間団体等の協力を得つつ社会教育施設等において提供する等、学習相談から社会参加までを一貫して支援する学習支援システム(ワンストップサービス)を構築することが有効である。その際には、産業界・大学・専修学校・NPO等の民間団体や首長部局の労働行政担当等との連携を強化することが求められる。
  •  また、学習活動を行う上で、産業界・大学・専修学校・NPO等の民間団体等が連携して、キャリアアップ等に資する学習コンテンツの提供や学習相談を行い、学習活動を推進する地域の基盤(「生涯学習プラットフォーム」)の形成が図られることが期待される。その際、時間や場所等に起因する制約要因を解消するため、インターネット等の情報通信技術を活用することが有効である。
(情報通信技術の活用)
  •  今後、情報通信技術の発展により、学習機会の提供・支援方策についても、様々な形態が考えられることから、例えば、携帯電話、インターネット配信、地上デジタルテレビ放送等の情報流通・配信手段に対応した社会のニーズが高い優れた教育・学習用コンテンツの視聴・利活用を促進する等、情報通信技術を活用した具体的方策の充実を図ることが重要である。
  •  その際、新しいコミュニケーションの形態が浸透してきていることも踏まえ、情報通信技術を活用した学び合い、教え合いの手法開発・検証等の施策を進め、例えば、ニート等に対し、情報通信技術の活用により新たな人材として掘り起こし、各個人が持つ経験・知識等を社会的な活動の中で活かせるよう支援するなどの具体的方策を検討する必要がある。
  •  また、図書館や博物館についても、例えば、資料のデジタル・アーカイブ化等の情報通信技術の発展に対応した規定を法令上設けることが必要ではないかとの指摘がなされている。これらの指摘についても、生涯学習社会の実現に向けた社会教育施設の機能の向上の観点から重要であることを踏まえつつ、引き続き検討する必要がある。
  •  さらに、情報リテラシー(情報及び情報伝達手段を主体的に選択し、活用していくための個人の基礎的な資質)に関する学習、デジタルデバイドへの対応や有害情報対策等、多様な学習機会を提供する必要がある。特に、インターネットや携帯電話の普及等の情報化社会の進展に伴い、メディア上の有害情報が深刻な問題となっていることを踏まえ、社会の有害環境から子どもたちを守るため、子どもたちが適切に情報を判断する能力や、相手への影響を考えて情報を発信する態度等の情報モラル育成や成人に対する啓発等にも配慮した有害情報対策の充実に地域社会全体で取り組むことが必要である。また、一般的には情報通信技術の利用率が低いとされる高齢者等の支援が重要である。
(再チャレンジ支援)
  •  また、従来企業内で行われてきた個人の能力開発について、「会社主導から自助努力へ」という傾向が中小企業を中心に強くなっていることや、非正規社員の学習機会が少ないことを踏まえ、また、出産・子育て後の女性や働き盛り世代の再就職・キャリアアップのための学びの需要に応えるため、地域のニーズに応じて社会教育施設等において提供される学習プログラムや学習相談の機会を、情報通信技術も活用しつつ、広く提供するような取組を支援することが重要である。この際、域内の職業能力開発施設と連携することは重要である。
  •  また、社会教育施設・大学・専修学校・企業・NPO等において、社会人のキャリアアップや地域活動への参加に役立つ実践的な教育プログラムを共同で開発し、このような教育プログラムの学習成果が広域的に通用し活用されるよう、その普及を図ることも重要である。
  •  さらに、新たなチャレンジを目指す若者、中高年、女性、フリーター・ニート等を支援するため、職業訓練施設とともに、専修学校等の持つ職業教育機能を活用するなど、それぞれの特性等に応じた職業能力向上のための学習機会の提供の充実を図ることが重要である。
(学習成果を生かす機会の充実)
  •  生涯学習の振興においては、学習機会の充実を図ることのみならず、各個人がその学習の成果を生かすことができる社会の実現が求められている。学習成果の活用は、職業生活や社会における多様な活動において行われるものであるが、社会全体の教育力向上の観点からも、各個人が学習した成果を地域社会における様々な教育活動に生かされることが期待されている。具体的には、地域全体による様々な学校支援活動や放課後対策、家庭教育支援等が考えられる。例えば、いったん家庭に入った女性が学習活動や地域活動等により社会参画をしていくことは社会の活性化にもつながるものである。また、今後は特に、定年を迎え地域に帰る団塊世代に協力を求め、その力を有効に活用する方策を検討することが必要である。
  •  また、このような各個人の学習成果の社会への還元を促進するため、その成果が社会的活動として発揮されることを通じて、新たな学習機会へのインセンティブを得られる等、学習活動と教育活動の循環につながる具体的な取組等について支援することが考えられる。
  •  さらに、各個人の学習機会の充実のため、また、同時に学習成果の活用のために身近な地域で誰もがボランティア活動に参加できるようにするため、地域におけるボランティア活動支援センターの在り方を検討し、ボランティア活動の支援機能の充実を図ることが求められる。このような取組は地域社会全体の教育力を高める様々な活動における人材の確保や今後特に期待される団塊の世代の力を生かす観点からも重要である。

3学習成果の評価の社会的通用性の向上

  •  学習成果の活用を促進するためには、学習成果の評価の社会的通用性を向上させることが必要である。そのため、民間事業者等によって提供されるものも含めた多様な学習機会について、その内容の質の保証の在り方や学習成果の評価の在り方等について今後検討することが必要である。
(履修証明制度等の活用)
  •  平成19年に改正された学校教育法により、大学等が社会人等を対象とした課程(教育プログラム)を修了した者に対して証明書を交付することができる履修証明制度が導入されており、その活用を図ることが重要である。
(多様な教育サービスの評価の在り方やそのための質保証の在り方の検討)
  •  多様な民間事業者等が提供する教育サービスの評価制度を検討するに当たり、その第一歩として、各個人の学習成果を評価する各種検定試験について、全国レベルでの一定の基準を満たすものを対象とし、個々の検定の評価手法の有効性、安定性、継続性及び情報の真正性等を確保する仕組みを検討することが考えられる。
  •  この場合、行政改革の経緯等から行政の直接的な関与が困難であれば、民間事業者等による第三者評価機関が検定について認定等をするという仕組みが検討に値しよう。その際、国がその客観性や公平性を担保するため、評価を行う際の参考となるガイドライン等を作成するなど、民間事業者等の主体的な取組を行政が支援する等、両者の適切な連携に留意する必要がある。
  •  なお、このような検定に関する学習成果の評価の質保証の仕組みを構築することは、生涯学習という広い分野において学習成果の通用性を向上させるための一つ方策であるが、このような生涯学習における多様な学習成果の通用性の向上を図ることは、地方公共団体等において既に行われている生涯学習パスポート等の取組に資するものであると考えられる。例えば、欧州においても各国における多様な学習の成果を共通の仕組みで評価する「生涯学習の評価のためのフレームワーク」の構築が始まったところであり、その評価フレームワークによる学習成果の評価が定着した際には、欧州における生涯学習パスポートにおいて反映・活用させることが予定されており、我が国においても、まずは生涯学習の成果の評価のための仕組みが根付くことが期待される。
  •  また、地域における多様な教育活動等において民間事業者との連携が期待される中、そのような連携を一層促進するため、各地域の実態に応じて民間事業者が提供する教育サービスの質の保証の在り方や行政との連携方策について検討することも重要である。

(2)社会全体の教育力の向上−学校・家庭・地域が連携するための仕組みづくり−

  •  それぞれの地域社会の教育力の向上のためには、学校、家庭、地域がそれぞれ持つ教育力の向上を図ることとあわせて、学校、家庭及び地域住民のほか、その地域の企業やNPO等の関係者が、それぞれに期待される役割を果たしつつ、緊密に連携・協力して地域社会が一体となって地域の教育課題等に取り組むことが重要である。国及び地方公共団体は、以下に掲げる施策等を実施することにより、これらの関係者・関係機関が十分に連携できるようにするための仕組みづくりを積極的に支援することが必要である。

(身近な地域における家庭教育支援基盤の形成等)

  •  これまでの家庭教育支援の取組として、家庭教育に関する理解を深める場や機会を保護者等に対して提供することを中心とした支援策が行われてきた。今後は、子育てに無関心な保護者や子育てに不安や悩みを持つ孤立しがちな保護者、子育てに関心は高いが学ぶ余裕のない保護者等に対しても十分な支援を行うことが必要である。このため、このような保護者も含めた様々な保護者に対するきめ細かな家庭教育支援を積極的に進めていくことが課題であり、今後は地域コミュニティや企業を含む社会全体で家庭教育を支えていくためのよりよい環境を醸成していくことが重要である。
  •  具体的には、就学時健診や入学説明会等多くの親等が集まる機会を活用した家庭教育に関する学習機会の提供や、父親の家庭教育への参加促進を図るための企業等への働きかけ等、様々な状況にある子育て中の保護者等がいることを踏まえた多様かつきめ細かな家庭教育支援策を講ずることが必要である。
  •  このような家庭教育支援策を講ずるに当たっては、教育委員会のみならず、福祉・労働部局や、学校、家庭教育支援団体、企業等の関係者の参画を得るなど、首長部局や子育て支援団体等との連携も意義深いと考えられる。また、子育てサポーターリーダー等の地域の人材が中心となって、各家庭の求めに応じ、個別の対応をすること等も含め、きめ細かな情報提供や相談対応、学習機会のコーディネート等を身近な地域で行う仕組みをつくることも有効である。なお、子どもの教育が困難な状況にある家庭等のきめ細かい支援のためには、福祉・労働行政等との連携が重要である。
  •  さらに、子どもの生活リズム向上の取組としてこれまでも行われてきた「早寝早起き朝ごはん」運動のさらなる展開を各地域において今後も進めるとともに、行政・学校・家庭・企業・メディア等が連携して社会全体で家庭教育支援を行う機運を高めるための普及啓発を行うことも有効である。このような活動を通じて地域社会の関係者の意識の共有化や啓発を通じて地域社会の関係者の連携と教育力の向上を図ることが期待される。

(家庭教育を支援する人材の養成)

  •  地縁的なつながりの減少等により、地域や社会全体で親子の学びや育ちを支える環境が崩れてきているとの指摘もある。家庭教育支援を行うに当たっては、上述のとおり地域社会や企業を含む社会全体で家庭教育を支えることが必要であり、地域において関係機関との連携や保護者同士をつなぐこと等を担う人材が求められている。このため、家庭教育の支援のための取組に携わる子育てサポーターや子育て経験者等を対象として講習を行い、地域における支援活動全般の企画・運営や子育てサポーター等の資質向上を担う人材(子育てサポーターリーダー等)を養成する必要がある。

(学校を地域の拠点として社会全体で支援する取組の推進)

  •  子どもたちを健やかに育むため、地域全体で学校を支えることができるよう、学校と地域との連携体制を構築し、学習支援活動や登下校の安全確保のための活動等、地域住民による積極的な学校支援の取組を促進することは、学校教育と社会教育の新たな関係を築いていくという意味からも重要な取組である。
  •  このような取組を行うことにより、学校と地域が子どもたちの健やかな成長のために共通の目的に向かって緊密に連携することは、学校と地域の信頼関係を深めることになる。また、学校を支援する地域住民にとっては、これまで培ってきた知識や経験、学習の成果を生かすことにもつながるものであり、ひいては地域社会全体の教育力を向上することが期待できる。
  •  先行事例では、この取組がうまく機能するためには、地域住民が学校支援活動に参加することについての教職員の理解と校長のリーダーシップ発揮や、学校支援のボランティアとなる人材や学校と地域住民のニーズの調整を行う人材の確保、地域住民の活動経費の確保、教育委員会における学校教育担当部局と社会教育担当部局の連携等が重要であると指摘されている。したがって、今後、国や地方公共団体においては、これらの指摘を踏まえつつ、地域社会全体で学校を支援する取組を推進する必要がある。
  •  また、地域における学校という場を核とした取組として、平成19年度から全国の小学校区で実施されている「放課後子どもプラン」は、学校教育外において子どもたちの学習・多様な体験の機会を地域ぐるみで提供する仕組みをつくる観点からも重要である。具体的な取組の有り様は各地域の実情に応じた創意工夫が期待されるが、このような取組に地域の人材が幅広く参加すれば、地域社会全体の教育力の向上も期待できる。なお、子どもの安全な居場所を確保することは同時に保護者等が安心して働く環境づくりにもつながり、結果としてワーク・ライフ・バランスの確保にも資するものである。

(学校・家庭・地域を結ぶPTA活動の充実)

  •  PTAは保護者と教員がお互いを高めあい、子どもたちの健全な育成を支援する団体であり、学校行事の支援や登下校時の安全対策等、地域の行事、親子が参加してふれあう活動、保護者に対する子育て教室等様々な活動を各地域の実情に応じて実施しており、前述の子どもの放課後の居場所づくりへの協力や早寝早起き朝ごはん運動の推進等、学校・家庭・地域を結ぶ要として重要な役割を担っている。
  •  一方、近年、一部の地域では、共働きや勤務形態の多様化等によりPTA活動に参加したくとも参加できない保護者がある一方で様々な価値観からPTA離れが進んでいるとの指摘もあり、活動が停滞しているPTAもあると考えられる。保護者にとって、PTA活動は、地域の社会活動への参加の端緒となるものであることから、学校・家庭・地域の連携・協力を進める上で、PTA活動は重要であり、各地域におけるPTAの活動状況等に関する実態を把握するとともに各地域における活動の充実が求められる。

(地域の教育力向上のための社会教育施設の活用)

  •  民間事業者等も含めた多様な学習機会が提供されるようになっているが、社会教育施設は、行政が地域住民のニーズを把握し、主導的に学習機会を企画し、自ら提供することができる地域の学習拠点である。これらの社会教育施設において、地域が抱える様々な教育課題への対応、社会の要請が高い分野の学習や家庭教育支援等、地域における学習拠点・活動拠点としての取組を推進することが必要である。
  •  具体的には、例えば公民館においては、地域が抱える課題への対応として、高齢者を交えた三世代交流等の学校と連携した教育活動の実施、大学・高等学校等との連携講座の実施、高齢者、障害者、外国人等地域において支援を必要としている者への対応、裁判員制度や地域防犯や消費者教育等の社会の要請が高いと考えられる事柄についての学習機会の提供が望まれる。
  •  図書館においては、レファレンスサービスの充実と利用の促進を図ることはもとより、地域の課題解決に向けた取組に必要な資料や情報を提供し、住民が日常生活を送る上での問題解決に必要な資料や情報を提供するなど、地域や住民の課題解決を支援する機能の充実を図ることが求められる。その際、行政支援、子どもの学校外の学習支援、ビジネス支援、家庭教育支援等、地域の実情や生涯学習社会における高度かつ多様な学習ニーズに応じた役割を果たして行くことが望まれる。
  •  また、博物館においては、各館の特色・目的を明確にした上で、地域の歴史や自然、文化あるいは産業等に関連した博物館活動を地域住民の参画を得ながら積極的に展開したり、地元出身の偉人を顕彰する記念館や地域のシンボルである文化財や自然環境等を活用した博物館等を核として、地域住民が地元に対する誇りや愛着を得られるようなまちづくりを実施すること等が望まれる。

(大学等の高等教育機関と地域の連携)

  •  各大学や専修学校が地域における社会貢献としてそれぞれの特色を活かして行う公開講座等の地域振興に貢献する取組を促すことも地域社会の教育力向上を図る上で効果的である。その際、各大学等の教育研究の連携を図り、地域において活躍する人材の育成等、大学等の地域貢献機能の強化・拡大等を国又は地方公共団体が支援することも重要となってくる。行政が積極的に関わって、大学等と社会教育施設、関係団体等のネットワーク化を推進することも大切である。
  •  また、地域社会において若者に多様な体験の機会を提供し、社会の変化等に対応した実践的な学習機会の充実を図るため、地域の専修学校の職業教育機能を一層発揮することができるよう、例えば、高等学校等と連携を行うなどして、子どもたちの職業体験等の機会の確保を図ることや、専修学校と地域の中小企業等とが連携を図ることにより、地域において必要とする職業人材の育成を行うこと等についてその支援方策を充実することが重要である。

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