答申素案

平成20年1月15日

2.社会の変化や要請に対応するために必要な力とそのための生涯学習

(次代を担う子どもたちに必要な「生きる力」)

  •  我が国の学校教育においては、変化の激しい社会を担う子どもたちに必要とされる力をいわゆる「生きる力」(注1)と位置付けて、教育内容の改善を図ってきた。すなわち、子どもたちが基礎・基本を確実に身に付け、いかに社会が変化しようと、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力とともに、自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心などの豊かな人間性、たくしまく生きるための健康や体力等の「生きる力」を身に付けさせるため、様々な改革に取り組んできた。

    • (注1)平成8年中央教育審議会答申で提唱。基礎・基本を確実に身に付け、いかに社会が変化しようと、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力、自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心などの豊かな人間性、たくましく生きるための健康や体力などの力。平成19年11月7日中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会の「教育課程部会におけるこれまでの審議のまとめ」においても、その定義が改めて確認されている。
  •  このようなゆるぎない基礎・基本の上に立った総合的な力が必要との認識は、その後、国際的にも共有されており、経済協力開発機構(OECD)は、「知識基盤社会」の時代を担う子どもたちに必要な生活の中で生きて働く能力、すなわち「単なる知識や技能だけではなく、技能や態度を含む様々な心理的・社会的なリソースを活用して、特定の文脈の中で複雑な課題に対応することができる力」をいわゆる「主要能力(キーコンピテンシー)」(注2)として定義づけ、国際比較調査を実施している。

    • (注2)経済協力開発機構(OECD)が2000年から開始したPISA調査の概念的な枠組みとして定義。「単なる知識や技能だけではなく、技能や態度を含む様々な心理的・社会的なリソースを活用して、特定の文脈の中で複雑な課題に対応することができる力」(「教育課程部会におけるこれまでの審議のまとめ」)
  •  言うまでもなく、このような子どもたちの「生きる力」を育む重要な基盤は学校教育である。しかしながら、これは必ずしも学校教育のみによって身に付くものではなく、実社会における多様な体験等と相まって伸長して行くものである。このため、子どもたちが学校の内外で、その発達段階に応じて「生きる力」を育むことができるような環境づくりが求められる。

(変化の激しい社会を生き抜くために必要な力)

  •  同様の認識から、成人についても、「社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」を「人間力」と定義した上で、必要とされる能力を明確化し、その伸長を図ることが不可欠であるとの考え方もある(注3)。また、国際的にもOECDにおいて、成人に必要とされる能力を調査しようとの試みもあり(注4)、国内外で、成人が社会の変化に対応するための力等についての関心の高まりが見られる。

    • (注3)内閣府「人間力戦略研究会報告書」(平成15年4月10日)
    • (注4)OECDが提案するPIAAC(Programme for the International Assessment of Adult Competences)成人対象の調査。個人や社会にとって必要不可欠で普遍的な技能について調査測定することを目的とする。
  •  変動の激しい社会においては、各個人が「自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」を身に付けるために、生涯にわたって学習を継続できるようにすることが求められている。特に技術の進展等が著しい中で、知識や技能等は陳腐化しないよう常に更新する必要がある。また、いわゆる狭義の知識・技能のみならず、他者との関係を築く力等の豊かな人間性を含む総合的な力は、学校教育の期間と場のみならず、人生の発達段階や時期に応じて、多様な場所や方法で学習し、職業生活やその他の社会における活動においてその成果を発揮することを経て身に付くものでもあり、成人の学習についても、このような国民の継続的な学習へのニーズに応えられる環境整備、すなわち学ぶ機会の充実とその成果を生かせる環境づくりが必要である。
  •  また、このような学習や社会的な活動に取り組むことは、個人や地域の自立を促し、家庭や地域の教育力を向上させ、それがさらに個人や地域の自立を促すという好循環を生むことにつながる。このような視点に立てば、成人が社会の変化等に対応するために求められる力及びその向上のための支援について今後検討していくことは重要な意味を持つと考えられる。

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