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医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(第1回)議事録・配付資料

1 日時:  平成17年5月24日(火曜日)13時30分〜15時30分

2 場所: 三田共用会議所第3特別会議室

3 出席者
協力者: 高久座長、福田副座長、大橋、小川、川崎、北村、佐藤、水田、田中、辻本、寺尾、名川、橋本、福井、松尾、南、吉新、吉村の各協力者
文部科学省: 石川高等教育局長、泉審議官、石野医学教育課長、山本大学病院支援室長、小谷課長補佐、加藤課長補佐、ほか関係官

4 議題
1.開会
(1) 高等教育局長挨拶
(2) 協力者会議委員紹介及び座長、副座長の選任
(3) 協力者会議の公開について
2.協力者会議の開催趣旨と文部科学省における取組について
(1)協力者会議の開催について
協力者会議の開催趣旨について
当面のスケジュールについて
(2)文部科学省における医学教育の改善・充実に関する取組について
「21世紀における医学・歯学教育の改善方策について」及びその進捗状況について
「今後の学士を対象とする医学・歯学教育の在り方について」及びその進捗状況について
中央教育審議会大学分科会大学院部会の審議状況について
地域医療に関する取組について
医学部入学定員の削減等について
3.今後の進め方について
4.その他

5 配付資料

6 議事
小谷医学教育課長補佐
 失礼いたします。先生方におかれましては、御多忙の折、本協力者会議にお集まりいただきまして誠にありがとうございます。それでは、遅れてお見えになる委員の先生もいらっしゃるようでございますが、定刻でございますので、只今より第1回医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議を開催いたします。
 私は後ほど座長が選任されますまで司会を務めさせていただきます医学教育課課長補佐の小谷と申します。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、暫くしましたら局長があいさつに参ると思いますが、泉大臣官房審議官よりごあいさつ申し上げます。

泉審議官
 審議官の泉と申します。今、進行の小谷の方から申し上げましたように、石川局長は急な業務のため少々遅れて参りますけれども、後ほどごあいさつ申し上げますけれども、私の方から少しだけの格好で大変僭越ではございますけれども、冒頭のごあいさつを申し上げたいと思います。
 まず、先生方におかれましては、この度、この協力者会議に委員の就任いただき、また、本日は大変御多忙の中、第1回会合に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。御案内のとおり、医学教育の在り方につきましては、平成13年に医学教育、歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議の報告をいただきまして、良き医療人養成の観点から、それぞれの大学におかれてはカリキュラム改革、あるいは参加型臨床実習等の取組を実施していただいているところでございます。また、昨年度から始まりました卒後臨床研修の必修化ということにも積極的に取り組んでいただいているところでございます。
 現在、へき地や離島などをはじめとする地域医療におきましては、医師不足ということがございまして、その確保が大変深刻な課題になっております。昨年2月になりますけれども、厚生労働省、総務省、文部科学省で開催いたしました地域医療に関する関係省庁連絡会議におきまして、当面取り組むべき課題についてとりまとめたところでございますけれども、その中でも医師の需給見通しの見直しを踏まえた大学における医師養成の在り方の検討を行うこととされたところでございます。こうしたことを踏まえ、今般、文部科学省といたしまして、この喫緊の課題である地域医療を担う医師養成について対応していくとともに、現在の医学教育改革の進捗状況を十分に検証や分析いたしまして、大学、更には大学院等における医学教育の今後の更なる改善・充実に資するための検討ということで、今回協力者会議を設け、先生方に委員をお願いしたという次第です。
 先生方におかれましては、現在、厚生労働省の方でお進めいただいております検討状況も視野に入れていただいて、特に地域医療を担う医師の養成及び確保について中間的な取りまとめなどを行っていただきながら、今後2年程度を目途に医学教育の改善・充実方策について御議論をいただき、御報告をいただければと考えております。大変御多忙のところ、誠に恐縮ではございますけれども、今後の医学教育の改善・充実のために積極的な御意見、あるいは御指導を賜れればと思います。今日はどうもありがとうございました。

小谷医学教育課長補佐
 続きまして、御出席いただいております委員の皆様を、配付資料の2枚目に名簿をつけさせていただいておりますが、この名簿に沿いまして、五十音順で紹介させていただきます。委員の皆様方の役職等につきましては、その主なもののみの紹介となりますことを御了承願います。
 それでは、信州大学医学部長の大橋 俊夫様です。

大橋委員
 よろしくお願いいたします。

小谷医学教育課長補佐
 学校法人順天堂理事長、順天堂大学長の小川 秀興様です。

小川委員
 よろしくお願いします。

小谷医学教育課長補佐
 学校法人川崎学園理事長、社団法人日本私立医科大学協会会長の川さき 明のり様です。

さき委員
 よろしくお願いいたします。

小谷医学教育課長補佐
 東京大学医学教育国際協力研究センター教授の北村 聖様です。

北村委員
 よろしくお願いいたします。

小谷医学教育課長補佐
 山形大学医学部講師の佐藤 慎哉様です。

佐藤委員
 若輩者ですが、研究をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

小谷医学教育課長補佐
 九州大学病院長の水田 さち代様です。

水田委員
 よろしくお願いいたします。

小谷医学教育課長補佐
 自治医科大学学長の高久 史麿様です。

高久委員
 よろしくお願いいたします。

小谷医学教育課長補佐
 東京医科歯科大学医学部附属病院総合診療部長の田中 雄二郎様です。

田中委員
 よろしくお願いします。

小谷医学教育課長補佐
 特定非営利法人ささえあい医療人権センターCOML理事長の辻本 好子様です。

辻本委員
 患者の立場です。どうぞよろしくお願いいたします。

小谷医学教育課長補佐
 浜松医科大学長の寺尾 俊彦様です。

寺尾委員
 よろしくお願いします。

小谷医学教育課長補佐
 東京大学腫瘍外科教授の名川 弘一様です。

名川委員
 よろしくお願いします。

小谷医学教育課長補佐
 社団法人日本医師会常任理事の橋本 信也様です。

橋本委員
 よろしくお願いいたします。

小谷医学教育課長補佐
 聖路加国際病院院長の福井 次矢様です。

福井委員
 よろしくお願いします。

小谷医学教育課長補佐
 千葉大学大学院医学研究院教授の福田 康一郎様です。

福田委員
 よろしくお願いします。

小谷医学教育課長補佐
 名古屋大学大学院医学研究科教授、医学部附属病院副院長の松尾 清一様です。

松尾委員
 よろしくお願いします。

小谷医学教育課長補佐
 読売新聞東京本社編集局解説部次長の南 砂様です。

南委員
 南でございます。

小谷医学教育課長補佐
 東京北社会保険病院管理者、社団法人地域医療振興協会理事長の吉新 道康様です。

吉新委員
 吉新でございます。よろしくお願いします。

小谷医学教育課長補佐
 北里大学医学部長、全国医学部長病院長会議会長の吉村 博邦様でございます。

吉村委員
 よろしくお願いいたします。

小谷医学教育課長補佐
 なお、新道委員、垣生委員、吉田委員は本日御欠席でございますので、次回以降御紹介させていただきます。続きまして、総務省と厚生労働省よりオブザーバーとして御参加いただいておりますので、御紹介いたします。総務省自治財政局公営企業課地域企業経営企画室長の大西 秀人様です。

大西総務省自治財政局公営企業課地域企業経営企画室長
 大西でございます。よろしくお願いいたします。

小谷医学教育課長補佐
 厚生労働省医政局医事課長の中垣 英明様です。

中垣厚生労働省医政局医事課長
 よろしくお願いします。

小谷医学教育課長補佐
 続きまして、文部科学省の出席者を御紹介します。冒頭ごあいさつ申し上げました大臣官房審議官高等教育局担当の泉 紳一郎でございます。

泉審議官
 よろしくお願いいたします。

小谷医学教育課長補佐
 医学教育課長の石野 利和でございます。

石野医学教育課長
 どうぞよろしくお願いいたします。

小谷医学教育課長補佐
 医学教育課大学病院支援室長の山本 晃でございます。

山本医学教育課大学病院支援室長
 山本でございます。よろしくお願いいたします。

小谷医学教育課長補佐
 医学教育課課長補佐の加藤 健でございます。

加藤医学教育課長補佐
 加藤でございます。よろしくお願いします。

小谷医学教育課長補佐
 以上でございます。続きまして、座長及び副座長の選任に移らせていただきます。事務局からの御提案でございますが、本会議の座長につきましては高久委員にお願いし、また副座長につきましては座長から御指名いただきたいと思いますが、御異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

小谷医学教育課長補佐
 それでは、これからの議事進行は高久座長にお願いいたします。高久座長、どうぞよろしくお願いいたします。

高久座長
 ただいま座長に指名されました高久です。先ほど審議官の方からお話がありました平成13年度の医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議のときの座長をさせていただきまして、そのときはコア・カリキュラムでありますとか、あるいはコンピューターベースドテストあるいはOSCEとか、いろいろな教育の中の基本的な問題について議論がありまして、そういう意味では非常に気が楽といいますか、楽にしていたのですが、今回は先ほどお話がありましたように、地域医療に従事する医師の養成ということがテーマになっていまして、大学にはそれぞれにいろいろな使命がありますので、その中でどのように取り扱っていくのかということ、なかなかある意味では難しいテーマに取組をしなければならないと考えています。
 しかしながら、先ほどもお話ありましたように、国の問題として地域医療に従事する医師の養成ということが大きなテーマになっていますので、その要望にこたえるべく努力をしたいと思います。委員の皆さん方、今後ともよろしくお願いします。先ほど、事務局の方からありましたように、副座長につきましては私が指名をさせていただくということになっていますが、千葉大学の福田先生にお願いできればと思います。もし御異論がなければ福田先生にお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 それでは福田先生、よろしくお願いします。
 最初に配付資料の確認ということで、これは事務局からよろしくお願いします。

小谷医学教育課長補佐
 それでは、配付資料の確認をさせていただきます。
 今回の会議次第がございまして、その次に各委員の名簿、そして座席表がございます。その後、資料目次がございまして、資料1が「審議会等の整理合理化に関する基本計画(抄)」、資料2が「医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議開催要項」、資料3が「当面のスケジュール」、資料4がカラー刷りで「医学・歯学教育の改革」、資料5が医療系ワーキンググループの報告書、資料6が「へき地を含む地域における医師の確保等の推進について」、資料7が「地域医療等の社会的ニーズに対応した医療人教育支援プログラム」、資料8が「地域を指定した入学者選抜の実施状況」、資料9が「地域を指定(地域枠)した入学者選抜の実施状況」、資料10が「医学部入学定員の削減に関する答申等について(抜粋)」、資料11が「医学部の入学定員の削減の推移」となっております。先生方におかれましては、過不足はございませんでしょうか。

高久座長
 皆さんの方に資料の不足はありませんでしょうか。もしあれば、事務局の方に申していただきたいと思います。
 最初に、本日の会議の公開ということにつきまして、事務局の方からよろしくお願いします。

小谷医学教育課長補佐
 それでは、資料1に基づきまして説明させていただきます。
 資料1を御覧ください。平成11年4月の閣議決定におきまして、審議会等の運営について定められております。審議会等の運営につきましては、公開が原則とされております。この会議につきましては、審議会等ということではなくて、その下にございますけれども、高等教育局長の決定に基づく行政運営上の懇談若しくは会合という位置付けになりますが、こうした会合につきましても審議会等の公開に係る措置に準ずるということになっておりまして、原則公開ということとなっております。
 以上でございます。

高久座長
 今、説明がありましたように、この会議は公開という形で対応したいと思います。よろしく御了承いただきます。
 次に議事に入りますけれども、まず事務局からこの協力者会議の開催の趣旨と、それから当面のスケジュールについて、よろしく御説明をお願いします。事務局よりお願いします。

小谷医学教育課長補佐
 それでは、資料2をお願いいたします。本会議は大学の医学教育の改善・充実に関する専門的事項について調査研究を行うものでございます。冒頭審議官のごあいさつにございましたように、良き医療人の育成のために、卒前教育におきましては平成13年の調査研究協力者会議の報告を受けて、モデル・コア・カリキュラムを踏まえたカリキュラム改革ですとか共用試験の実施、参加型臨床実習などの教育改革が進められております。また卒後教育におきましては、平成16年度から臨床研修の必修化が始まっております。また他方、地域における医師の確保が非常に重要な課題ということとなっております。こうしたことから、卒前卒後教育の一貫性ですとか、あるいは研究者養成の観点にも留意していただきつつ、医学教育の改善・充実方策に関する調査研究を行うこととするものでございます。調査研究事項でございますが、この(1)から(5)にお示ししたとおりでございまして、平成19年3月までの実施の予定ということとしております。なお、本会議の庶務につきましては、医学教育課で担当させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 続きまして、当面のスケジュールについて御説明させていただきます。資料の3を御覧ください。
 本日はこのうち文部科学省の現在の取組を事務局から説明をさせていただいた後に、調査研究手法ですとか今後の進め方などについて意見交換をしていただきます。また、その場で委員の皆様方の御意見を頂戴できればと考えておりますけれども、今回は先ほど申し上げました5つの項目につきまして2年間の調査研究を予定しているところでございますが、第2回目以降は冒頭の審議官のごあいさつにもございましたように、当面喫緊の課題となっております地域医療を担う医師養成の在り方につきまして、これを中心に御審議いただければというふうに思っております。第2回目の会議におきましては、7月12日に開催させていただきまして、委員や地域医療の関係者より説明を頂戴した後、意見交換をしていただきたいというふうに考えております。
 その後、9月以降でございますが、2回の意見交換を踏まえまして、例えばこのスケジュール案にございますように、卒前教育、卒後教育といったように、少し絞った形でのテーマを設定させていただいて、必要に応じて委員や関係者からの意見聴取などを取り入れながら、おおむね月1回ぐらいのペースで御審議いただければと思っております。そして、厚生労働省の医師需給に関する検討会の御審議も視野に入れながら、年度内に中間的な取りまとめを行っていただいて、広く国民に意見募集を行わせていただいた上で、来年度の審議につなげていただければと考えているところでございます。当面のスケジュールについては以上でございます。

高久座長
 はい、どうもありがとうございました。今、当面のスケジュールということで、何か御質問はおありでしょうか。このスケジュールで大体このようにやりましょうということで、調査研究事項としては4つ挙げられておりますけれども、この1、3、4については主に量を達成するためにどういうふうに行くかということになると思いますので、スケジュール、3、4、5につきましては卒前卒後教育における地域医療を担う医師の養成の在り方について御議論をいただきたいと思います。
 続きまして、事務局から文部科学省における医学教育の充実・改善に関する取組について、これを説明していただけますか。

石野医学教育課長
 すみません。加藤さんの方から資料の説明をいたしますけれども、若干協力者会議の目的についての趣旨説明をさせていただきたいと思いますけれども、今の高久座長からのお話にございましたように、地域医療を担う医師養成の在り方というのが、当面2年間を予定しております中の最初の1年間は喫緊の課題ということで、それを中心にしながら関連する事項についても御議論いただければというふうに思っておりますけれども、喫緊の課題である地域医療についてのビジョンが1年ぐらいでまとまりましたら、調査研究事項の(1)(2)(3)(4)等についても、いわゆる一般的に広い形で2年目について少しまとめをいただくという形が私どもの方としてはありがたいなというふうなことを考えておりますので、そちらで御理解いただければ。

高久座長
 それから今、石川高等教育局長がいらしたのでごあいさついただきます。3分か4分くらいでお願いします。

石川高等教育局長
 失礼いたしました。遅参をいたしまして申し訳ございません。先生方には医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議ということで、委員に御就任をいただきまして、また本日は御多忙のところ御出席をいただきましてありがとうございます。医学教育についてはいろいろなことが言われておりますし、医療の問題は教育と並ぶ国民の最大関心事である、こう思っております。
 私も昭和61年ごろでしたでしょうか、医学教育課に少し籍を置かせていただきまして、ちょうどその時に医師過剰問題が起こって、そのとき調査をして、多分初めてだと思いますけれども、医学教育の改善・充実に関する協力者会議といったようなものを立ち上げて、様々な議論をした記憶がございます。高久先生からはそのころから御指導をいただいているような次第でございまして、私としてもこの会議に大変興味を持ってと言うと、何か無責任な言い方になりますけれども、今日は楽しみに出てきたような次第でございます。今、座長からもお話ありましたように、地域医療の問題ですとか、また新しい問題が様々出てきております。昭和61年から数多くのその改善も図られてきた一方で、相変わらずこれからも努力しなければいけない問題というものもたくさんあろうかと思っております。特に私が日ごろ感じますのは、いろいろ議論がありましたけれども、今後大切なことは、やはり医師としてふさわしい人たちを選び、しっかり教育をし、いい医師をたくさん育てて世の中に出していくということが大切だと思っております。入り口のところからしっかりいい人を選んでいくということが大事なことだなと思っております。
 それから、これはこの間も医学部長病院長会議で申し上げて、反発を買ったかもしれませんが、やはり病院とか、あるいは医師の世界、ある意味では一番情報公開が進んでいないのではないかという気もいたしておりまして、そういったものが進む中で適切な競争と緊張関係が生まれて、病院なり医師の資質というものが高まっていくのではないか、平素にそんなことを考えているところでございます。
 どうか先生方には十分御議論いただきまして、医学教育のさらなる改善充実に向けて御指導をいただきますようによろしくお願いを申し上げまして、甚だ簡単でございますけれども、遅れましたお詫びと併せましてごあいさつとさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございます。

高久座長
 どうもありがとうございました。それでは引き続きまして文部科学省における取組ということで説明をしていただきます。

加藤医学教育課長補佐
 文部科学省における医学教育の取組といたしまして、本日用意させていただきました会議の資料の資料4から資料11をもとにいたしまして、手短に御説明をさせていただきます。まず資料4でございますが、これは先ほど来お話が出ております平成13年3月の医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議がおまとめになった報告、これを1枚の概要でまとめたものでございます。医学教育の改善方策につきましては、これまで様々検討の場がございました。その1つといたしまして、昭和62年になりますが、調査研究協力者会議の報告をいただいたところでございます。また平成8年、あるいは平成11年、21世紀医学・医療懇談会がございまして、そこでの各報告など、様々な御提言をいただいたところでございます。こういう流れを受けまして、御提言を少しでも実現化しようということで、平成12年3月でございますが、協力者会議を設置いたしまして、21世紀における医学・歯学教育の改善方策、こういうものを約1年間かけて御議論をいただき、平成13年3月にまとめていただいたところでございます。資料4についてごく簡単に申し上げますと、左上のところにこれまでの医学・歯学教育の問題点というものを掲げております。情報の詰め込み、あるいは記憶教育の偏重だったのではないかとか、あるいは卒業までの到達目標が不明確であった、あるいは臨床実習が短期ローテーション型で見学型であったというような問題点が指摘されてございます。こういった問題点を克服いたしますために、右にあります改革の目標というものも5点ほど挙げたわけでございます。コミュニケーション能力の向上、あるいは基本的臨床能力の修得、統合型カリキュラムの導入等々の目標を掲げたわけでございます。こういった目標を実現するために、ちょうど中央のところにございますが、カリキュラム改革、あるいは教育能力や体制の改革、あるいは臨床実習の改革というものを掲げたわけでございます。これによりまして、一番下にございますが、質の高い臨床能力、課題探求能力を向上させまして、患者中心の医療というものの実現を目指したものでございます。このうちカリキュラム改革でございますけれども、一番大きなものがモデル・コア・カリキュラムの策定でございます。このモデル・コア・カリキュラムと申しますのは、学習内容の到達目標のガイドラインとしてお使いいただくものとして作成をいただきました。カリキュラム全体のおよそ3分の2程度の学習内容を提示しているものでございます。残りの3分の1につきましては、各大学において個性というものを出しながらカリキュラム編成をしていただきたいという考えでございます。このモデル・コア・カリキュラムの作成に当たりましては、約1年余りほとんど毎週のように土日、関係の先生方に朝早くから夜10時、11時ぐらいまでお集まりいただきまして、延べ100人ぐらいの先生方にお集まりいただいて、そういった御努力によってなし遂げられたものでございます。現在、各大学におきましてモデル・コア・カリキュラムの導入が順次進んでいるところでございます。
 次に、この表の臨床実習の改革でございます。この改革というのは大きく2つございまして、1つは臨床実習開始前の学生の能力、技術、こういったものを適正に評価するということでございます。またもう1つは実習体制を充実するという2つに分かれようかと思っております。このことによりまして、これまでどうしても見学型と言われていました臨床実習を、診療参加型実習というものへ転換していこうというものでございます。このうち実習前の適正な評価の実施でございますけれども、先ほど高久座長からお話のありましたコンピューターを使ったCBT、あるいはOSCE(オスキー)こういった試験を使った共用試験との実施が提言されたわけでございます。CBTは主に知識の習得の評価を行い、オスキーは臨床実習、つまり患者様の診療に参加する実習を行うにはやはりそれなりの心構え、あるいは基本的態度が身についているかどうかの評価をするというものでございます。この共用試験でございますけれども、共用試験実施機構という大学の関係者によります任意団体が発足いたしまして、平成14年からトライアルが行われております。また、今年からこの機構が社団法人化をされまして、責任ある実施体制のもと、12月以降に本格実施されるというところでございます。以上が資料4でございます。また、この報告に関連をいたしまして、「今後の学士を対象とする医学・歯学教育の在り方について」という報告も御用意させていただいております。この報告が取りまとめられた背景といたしましては、平成10年度以降におきまして医学部以外の学部を卒業した方を対象として、医学部の途中の年次から編入学をさせる制度、こういったものがどんどん取り込まれてきたわけです。なぜ導入されてきたかといいますのは、そのメリットといたしまして、やはり高卒後に入学する学生よりも、様々な経験に基づいた幅広い教養でありますとか、豊かな人間性ですとか、あるいは明確な目的意識を持っているということ、あるいは、医学以外の学問分野に医学の学識を乗せることで、医学とほかの領域の学問分野の融合ということができるなどのメリットがあるということでございます。このため、この制度を最大限有効に利用できる方策はどういうものか、あるいは将来的な方向性についてどう考えるかといった観点でまとめたものでございます。
 次に、資料5でございます。大学院教育の関連でございますけれども、大学院全体のお話といたしまして、我が国の大学院は質的及び量的整備が図られてきたところでございますけれども、従来から大学院は課程制大学院である、あるいは教育機関であるというのが大前提であったわけでございますが、この部分がちょっとおろそかになっているのではないかという指摘がなされたわけでございます。したがいまして、大学院における教育の課程の組織的展開、こういったものをいかに強化していくか。つまり、大学院教育の充実をいかに図るかという点に焦点を当てながら、平成15年12月から中央教育審議会大学分科会の大学院部会におきまして鋭意審議検討を重ねているところでございます。この大学院部会におきましては、昨年8月に審議の概要を取りまとめたわけでございますが、その際やはり分野別に少し違いがあろうということで、人社系、理工農系、医療系の3つの分野におきましてそれぞれワーキンググループを設置したわけでございます。約半年間の議論の結果、医療系ワーキングといたしまして資料5にありますような報告をまとめまして、本年5月大学院部会に報告したところでございます。医療系ワーキングの議論の中では、医学、歯学、薬学、看護学、医療技術系分野全般にわたって議論がなされております。そのうちの医学に関しますところでポイントだけ申し上げさせていただきますと、この1ページ目のまるでございます。これまでの医療系大学院は、いわば研究者養成、あるいは学術研究の遂行を主たる目的としていたが、現在の医療系大学院は、それ以外に高度な専門性を必要とされる業務に必要な能力とか研究マインド、こういったものを涵養することが求められるなど、大分機能も多様化しているということでございます。したがいまして、まるの2つ目の第2段落目でございますけれども、研究者養成と、優れた研究能力を備えた臨床医、臨床歯科医等の養成のそれぞれの目的に応じて2つの教育課程を設けて学生に選択履修させることが適当であるというようなまとめでございます。また、2ページは教育研究指導の在り方でございますけれども、一番下のまるで、医学・歯学系大学院につきまして、研究者養成を主たる目的とする課程においては、研究者に求められます医学・生命科学研究の遂行に必要な基本的知識・技術をコースワークで習得させるということとか、3ページ目の最初のまるですが、もう一方優れた研究能力を備えた臨床医等の養成については、御覧のような内容をコースワークに盛り込むということが指摘されております。あわせて、博士論文作成のため臨床研究のテーマを課すことも必要である等々の提言をいただいたところでございます。大学院部会におきましては、現在中間報告の案を作成中でございまして、近々中に最終案が取りまとめられるというような予定でございます。
 続きまして、資料の6でございます。地域医療につきましては先ほどお話も出ておりますけれども、地域における医師不足が深刻な状況でございまして、この問題の対応のため、平成15年11月でございますが、厚生労働省、総務省、文部科学省の3省が連携をいたしまして、いわゆる3省庁の連絡会議というものを設け、議論を重ねてまいりましたところ、この結果、16年2月でございますが、3省庁として取り組むべきことを取りまとめたところございます。それを1枚にまとめましたのがこの資料6でございまして、このうち朱書きのものが文部科学省として今後進めていく必要があろうというものでございます。例えば一番上にございます地域における医療対策協議会の開催の促進でありますとか、あるいは大学病院による地域医療の支援、あるいは遠隔医療システムの整備の推進、あるいは医師養成課程における地域医療に関する教育の充実等々が文部科学省として進めていく内容として挙げられているものでございます。
 次に資料7でございますが、これは地域医療に従事します医師の養成を促進する必要があるということでございまして、国公私立大学の大学病院が全人的医療、あるいは地域医療を担う医療人を養成するために、どういう特色ある教育を行うかと、こういった取組に対しまして重点的な財政支援を行う必要があろうということで、平成17年度予算におきまして医療人教育支援プログラムの予算を新規に計上したところでございます。選定に当たりましては、1件当たり年額3,000から4,000万円程度で、全体で20件程度予定をしておりまして、これを3年間程度継続した財政支援を行いたいというものでございます。選定に当たりましては、大学病院関係の先生方、あるいは専門家、その他有識者によります公正な審査を実施するということを予定してございます。
 また、資料8でございますが、地域における医師不足が指摘されておりますが、医学部の既存の入学定員の中に、将来地域医療に従事する意欲のある方のための入学者枠、いわゆる地元の地域枠でございますが、こういったものを設けるということもこういった問題の対応策の1つではないかと考えております。私どもの方で医学部において地域枠の実施状況、あるいは検討状況についてちょっと調べさせていただきましたが、その結果が資料8ということになっております。これによりますと、現在実施している大学が7大学、実施を予定している大学が7大学、検討中が4大学というような状況になってございます。
 資料9でございますが、これは今申し上げました実施している大学の一覧として表したものでございます。既に実施している大学は7大学ですが、国立で3大学、公立3大学、私立1大学でございまして、18年度からの予定も国立大学では6大学となっております。これは今現在の予定でございますので、今後またさらに大学の数がふえていくのではないかというように思っている次第でございます。

 資料10でございますけれども、医学部入学定員削減に関する答申等ということで挙げております。そもそも入学定員の削減というものは昭和57年7月でございますが、臨時行政調査会、ここで行政改革に関する第3次答申というものが出されております。ここでアンダーラインを引かせていただいておりますけれども、医師については過剰を招かないよう合理的な医師養成計画を樹立するということで、そもそものタイトルが医療費の適正化、この項目の中にこういった医師について過剰を招かないというようなことが答申として出されたわけでございます。昭和57年9月には閣議決定といたしまして、「今後における行政改革の具体化方策について」の、アのところにございます医療従事者については養成計画の適正化に努める。特に医師、歯科医師については全体として過剰を招かないように配慮し、適正な水準となるよう合理的な養成計画の確立を進めなさいというものでございます。これを受けまして、厚生省におきましては医師需給の検討委員会を設置いたしまして、昭和61年6月最終意見として、平成7年を目途として医師の新規参入を10パーセント削減すべきとされました。この動きの中、文部省におきましても、会議を設けて検討し、昭和62年9月でございますが、平成7年に新たに医師になる者を10パーセント程度抑制することを目標として、入学者数の削減等の措置を講ずるべきという結果が出ております。さらに、平成10年5月でございますが、厚生省におきまして医師の需給に関する検討会の報告が出されます。このときは昭和61年に立てた10パーセント削減というものがまだ達成していないということで、当面この未達成部分の達成を目指すほか、医師国家試験の改善、臨床研修の必修化で医師数を適正化するということでございます。これを受けまして、文部省といたしましても、平成11年2月、21世紀医学・医療懇談会でございますが、入学定員の問題については、削減は国公私立大学全体で対応するというような答申をいただいたところでございます。
 資料11、最後でございますけれども、これまでの医学部の入学定員の削減状況をあらわしたものでございます。ピーク時の入学定員が一番左にございますけれども、昭和59年度は8,280人ございました。10パーセント削減ということになりますと、その右にあります828人が10パーセントでございますが、結果的には平成16年度の入学定員といたしましては7,625人いうことで、7.9パーセント、防衛医大を入れますと8パーセントでございますが、こういうような状況でございます。国立につきましては、10パーセントは達成しておりますが、公立につきましては入学定員そのものが小さいということ、あるいは私立大学におかれましては経営の問題等もございまして、御覧のような削減状況になっているということでございます。以上、若干お時間を拝借して恐縮でございましたが、終わらせていただきます。

高久座長
 どうもありがとうございました。今の説明に対して、何かご質問おありでしょうか。
 大変幅広い、教育のお話がありましたが。よろしいでしょうか。このことは、いずれ今度の議論の中でいろいろと出てくると思いますので、その時にまたお話ししていただければと思います。
 本日は第1回目ということですので、委員の皆様から、この会議の検討事項、あるいは今後の進め方などに関して、自由なご意見をいただきたいと考えています。
 ということで、大橋先生、誠に申し訳ありませんが、先生のお名前が1番目に載っていますので、先生から名簿の順番で、この問題について、信州大学での取組をお話しいただけたらと思います。よろしくお願いします。

大橋委員
 私はそこにございますように、信州大学の医学部長ということで、国立大学医学部長会議の委員をさせていただき、同時に、この医学部長会議で新しく地域医療を担う医師育成の小委員会において、お手元にある「地域における医師の確保等の推進について(提言)」をまとめさせていただきました。そこで私が感ずることは、国立大学というところは、地域における特殊性というものを十分に考慮した形で、その存在意義を再検討しないと、法人化そのものの存在意義が問われるのではないかと存じます。やはり厚生省の政策を伺っておりましても、医療単位も自治体ごとにという流れが来ていると同時に、医療人の育成という視点からは医療人の生涯研修といったところまで、地域にある国立大学法人の医科大学としては責任を負わなくてはならないのではないか、というようなことを感じております。
 一方では、少子化の中で医学部へ入学する学生が極端に成績優秀な人間に偏ってきています。日本全体の知的財産という視点から考えると、それほどまでに医学・医療に偏った人材が来ていいのだろうかと感じると同時に、他方、10パーセントから20パーセントの学生が、入学後に目的意識が欠如し、大変優秀だが本来の医師になるべきモチベーションが落ちてしまうという事例が最近特に私どもの大学では目に付いてきています。
 この会議で検討していただきたいのは、日本全体の医療行政を含めて、地域の医療を担う医師をいかに育成するかということと、地域医療を担う医師を育てる医療系大学院と、どのようにマッチさせながら医師を育てていけばいいのかということが1点ございます。
 もう1点は、法人化になりまして、大学病院の在り方が問われている中、基本的に経営ということが非常に重視され、とりあえず経営が成り立たなければどうにもならないことはよく分かります。しかし、大学病院と地域の大病院にどのような差があるのか、という議論なくして経営的視点だけで大学病院を評価してしまうと、臨床の教員が診療と経営だけで疲弊し、研究教育活動が低下し、その大学自体に魅力が無くなってしまう問題が生じてきています。今後は、大学と地域の大病院との棲み分けや役割分担をきちんとし、医師の養成も量の時代から質の時代へと変更していく視点が必要だと考えております。

高久座長
 はい、どうもありがとうございました。いろいろ御意見をいただきましてありがとうございました。次に小川先生お願いいたします。

小川委員
 難しいことを申し上げるつもりもないのですが、我々医学教育者の側からの話を致します。良き医療人の育成ということは一体何かということですが、私どもが認識しているのは、医師、医療人というものは日本では「仁」、外国では「サイエンティストであると同時に、アーティストであるべきだ。」と言われています。このアートの意味はヒューマンビーイング、良き人間、良き感性を持った人物であるというように解釈されているわけです。そのような教養のある、感性のあるサイエンティストを育てていくということが、医科系大学の当然の使命です。我々医療系の大学人が託されている大学のカリキュラム上の問題というのは大きく分けて3つあります。臨床と研究と教育、これをいかにバランス良く施行していくか。良き臨床をするということは、とても大事なアウトカムの一環であり、目視できるメインの部分でありますが、それを推進するための良き教育、そして、良き研究も、また次代、未来を切り拓くために推進して行かなければいけないと考えております。
 それから医療費の問題、あるいは福祉や介護の問題は、大変経費のかかるものですが、これは人間が生活していく上での必要経費であります。負の部分として考えるのは間違いで、この問題は、むしろ国際社会の中で新しい医療法(医療技術、機器、医薬品等々)を開発していくこと、また我々が新しい介護方法を提言していく、創生していくことは日本として重要です。積極的に研究を推進して、知的財産の発信の拠点として日本が先進的なリーダーシップを執ることが国際的使命であるとも言えます。その重要な担い手として医科系大学そして病院が機能することを推進していただきたいと思っています。いかなるバランスの下に教育、研究、臨床の3つのファクターをバランス良く実行実現するかが難しいが、果たさなければならない大きな問題です。追々各論的な意見を申し述べさせていただきたいと思いますが、今日はこういった“医の志”について述べさせていただきました。

高久座長
 どうもありがとうございました。川さき先生は医師の定員の削減のときに、大分御苦労されましたけれども、そのことを含めてお願いいたします。

さき委員
 大変申し訳ないのですが、私立医科大学だけが定員の削減が非常に少なく、私学は入学定員120名のところがまだ3校残っております。しかし、自主的に入学実員を110名以内にとどめることになっておりますちょうど10年前に、まだ削減が10パーセントに至っていないということで、文部省といろいろ話し合いをした経緯がございました。しかし、そのうちうやむやになってしまい、現在の状態に至っているところでございます。元々入学定員120名の学校はそう多くなく、100名以下の学校もありましたし、100名を割るということは、私学では経営上非常に困難なため、そのままになっておりますが、協会ではこの10年間入学定員を守るように申し合わせをしてきました。良い教育をするためには入学定員は少ない方が良いと言いますが、最近は現実にいろいろなカリキュラム、例えばコア・カリキュラムにしろ、それから4年次に試験をして、5年、6年のベッドサイドティーチングに十分耐えるだけの教育をしていくという、共用試験がこの12月から始まるわけですが、医学部生の学習量が余りにも多過ぎて、今までは1年、2年は教養だったのが、もう1年から専門の授業をする学校もあり、だんだん下におりてきております。この共用試験の問題は、現実にはそのために学生の負荷が増えているのではないかと大変心配しております。
 もう1点は最近、附属病院が安全の問題によって、学生の研修が非常にしづらくなっているという点です。また、臨床研修の必修化が去年から始まったこともあり、大学から多くの人が外へ出て行っております。これはある意味では良いことだと思っておりますが、果たして、その方々が大学に3年目からどのぐらい帰ってくるかということです。地方の国公私立大学では、大学病院の運営と申しますか、学生の教育、卒後の教育、患者の治療を含め病院に医師が不足しているのが現状です。また、科によっても麻酔、救急、小児科、産婦人科、特に外科系の教員が足りないという状態です。そのような意味で、私は20年前から始まったこの入学定員の削減というのは、人口10万人に対しての必要医師数とか、あるいは医師が過剰になると医療費が増えるという視点だけで検討されていたのではないかという気がしております。例えば最近、関西医大の研修医の過労死の問題から出てきた医師のいわゆる過剰労働が労働基準法もからんで、クローズアップされておりますが、医師の絶対数が足りないのではないかという気が強くしております。またいろいろ話させていただきます。ありがとうございました。

高久座長
 はい、どうもありがとうございました。それでは北村先生、よろしくお願いします。

北村委員
 東京大学で医学教育を担当しております北村でございます。学生に比較的近い立場の人間として、それからもう1つ国際協力センターという機能も持っているので、その点から2点述べさせていただきたいと思います。
 1つは地域を担う医師を供給するのに研修医を配置ということがよく言われますが、若い医師にとってへき地、あるいはそのような地域に行けということは元々無理があると考えています。若い人は、最先端の医学で専門領域を勉強したいという気持ちを持つのが当然でありますし、それを抑えて何年か我慢して、2年間行ったら後で何か良いことがあるというような形には無理があると思います。地域の医者を確保するということは、若い医師だけでなく、全世代の医師にとっての課題であると思います。要するに、ある程度、マスターのレベルに達した医師あるいは専門医を再教育する、生涯教育のような再教育することによって、プライマリケアができる熟練医師を育てるということも1つの考え方であって、若い医師をどのように配置するかというようなことに専念するということではないと思います。もちろん、地域にそれほど医師が必要なのかという問題もあると思います。地域に医師が足りないという議論の原点は、その病院に医師が足りないということであって、そこに病院が必要なのかという、要するに病床数の過剰ということもあるのではないでしょうか。そのような面からも、本当は地域にどれだけの病床数があって、どのような医者が必要かということを議論できればと思っています。
 もう1つは国際教育の立場からですが、私の施設では現在アフガニスタンとインドネシアと協力しております。アフガニスタンは実に80パーセント以上の医師が首都に集中しています。インドネシアは50パーセント以上が首都のあるジャワ島に集中しております。いわゆる開発途上国におきまして、特に地域医療が問題になっております。先進国である日本におきましては、地域といってもテレビもつきますし、インターネットもできますし、国際的に見れば、それほど地域ではないわけです。だから、もう少し人が自由に動けるシステムといいますか、地域にいても何の損もないという、地域にいいところがあるというようなマインドを育てたら良いのではないでしょうか。実は、インドネシアでは地域に行くためにイスラム大学で医学部をとってイスラムの教えで地域に出そうという発想をしております。日本にはそういう宗教心がないので、そのように地域に行きたいかというインセンティブを上げるのは非常に難しいとは思います。何らかの自発的なインセンティブを高めるような仕掛けを考えたらと思います。2番目は少し難しいアイディアかもしれませんが、今後ともまたよろしく教えていただきたいと思います。

高久座長
 どうもありがとうございました。佐藤先生、よろしくお願いします。

佐藤委員
 山形大学では平成14年から、山形大学と80の関連病院からなる協議会をつくっています。その協議会において卒後教育、あるいは卒後研修、あるいは地域の医師の生涯教育というものを考えています。更には、医師の適正配置をこの協議会を中心として行えないかという取組を行ってまいりましたが、昨年度、平成16年度から教育GPの支援も得まして、更にこの協議会を発展させるという取組を行ってきております。
 まだこの取組自体始まったばかりですが、これを推進するに当たり生じた問題点、あるいは成果というようなものをこの協力者会議で提示させていただき、御協力できればと考えています。

高久座長
 どうもありがとうございました。では水田先生、よろしくお願いします。

水田委員
 医療が高度化し専門特化する一方、情報社会の進展を背景に国民の医療に対するニーズも多様化しています。このような時代において、若い人たちに私は“professional doctor”すなわち、(1)good clinicianであること、(2)good researcherであること、(3)good teacherであることの3つの要素を兼ね備えた医師であって欲しいと思っております。“good clinician”とは病気には闘志を、患者さんには愛情を持てる医師であり、単に知識の集積だけではなく、その集積された知識を的確に応用することができ、患者さんに対してはfifty-fiftyの立場で接することのできる医師です。またEBMのみではなく、患者さん個々の人生に基づいた医療、Narrative based medicine(NBM)を大切にし、患者さんと話せる医師であることです。“good researcher”とは、医学の進歩における基礎的研究とともに臨床研究の意義を理解し、医師として探求心を持ち続け、physician-scientistであることができる人です。一生researchを続ける場合でなくても、人生の一時期を研究に費やすのもまた素晴らしいことだと思います。“good teacher”とは大学病院の医師のみならず、すべての医師に必要なことです。経験のある年長者が若い人に経験を踏まえて教えていくことは医療人すべてが心すべきことであり、さらに人に教えることによって自分も学ぶことができます。これら3つの要素を持ち、社会が求める医療や医師像をきちんと捉え、単に医学知識のみならず、日常生活の中でいかなる場合においてもgentlemanであり、“noblesse oblige”であることを自覚できるような人になって欲しいと思いますし、そのような人を育てたいと努力しております。
 2年目を迎えました臨床研修制度については賛否両論があるようですが、私はインターン制度を経験しておりますので、個人的にはこの臨床研修制度は良い制度であると思っております。卒後すぐに大学病院以外の病院で研修することによって、大学では経験することの少ない疾患を勉強できることや他学出身の人達と切磋琢磨することによって生じる連帯感を経験することはその後の人生においても大きなポイントとなると思います。しかし、臨床研修が終わって、専門医への道となる専門研修は大学病院で行うべきであると思います。私は、1年次は全員が大学以外の病院で研修を行い、2年次は一般の研修指定病院と違った研修のできる大学病院で研修をしながら、その後の方向性を決め、専門研修へ続けるようにすると良いのではないかと思います。大学で研修する人が少ないから、この制度が悪いと言うのはおかしいことですし、たくさんの研修医が大学病院を希望するような病院になるように私たち大学側も変わる努力が必要です。
 それから、教育に関して医学部は6年教育と言いますが、実際には今5年半くらいです。なぜかと言いますと、国家試験のために卒業試験を早めたりしますので、半年くらいは短くなっているわけです。これは少しおかしいのではないかと思います。国家試験は6年間きちんと勉強していれば合格するような試験ですから、国家試験のために特訓するような状況はやはりおかしいと思います。
 また、地域医療のために入学生の地域枠を設けている大学もありますが、その教育プログラムはどのようになっているのでしょうか。地域医療問題に関心を持つようなプログラムでの教育と継続的に行わないと、地域枠で医学部に入学するだけで終わってしまうのではないかと思います。

高久座長
 どうもありがとうございました。それでは田中委員、よろしくお願いいたします。

田中委員
 私は現在、東京医科歯科大学で卒前教育委員会の責任者と、臨床研修のセンターで責任者をやっておりまして、今日は2つ申し上げたいと思います。
 1つは医師が足りないというお話ですが、以前医療に求められたものと、今求められているものは大分違うと思います。それからやはり客観的に見ても、正確な数字を確認していただきたいのですが、OECD加盟国の中でも日本は人口に対する医師の割合が少ない方だと思います。例えば、英国はどんどん医学部定員を増やし、昨年でたしかちょうど日本と同じ8,000人になりましたが、イギリスの人口は日本の半分ぐらいです。本当に医者が余っており、削減すべきものか、入学定員については、今からでも議論すべきものだろうと思います。少ないところを埋めようとするので、地域偏在が一層ゆがんだ形で出てくるのではないかというところをまず1つ申し上げたいと思います。もしこのままの医師の数でいくのであれば、コメディカルを増やして、医療体制そのものの中で医師の果たすべき役割というものをもう少し限定しないと、患者さんのためにはならないのではないかと思います。
 もう1つ申し上げたいのは、せっかくコア・カリキュラムをつくって、CBTをやり、共用試験をやり、診療参加型実習をやる時の法的根拠、要するに学生の診療行為に対する法的根拠というのが、いま1つ明確ではないということです。これは平成4年だったと思いますが、前川リポートというのがあって、そこでガイドラインが示されているということですが、これについて法的に問題ないのかという明確な見解がどこからも示されていないため、こういったことが解決されないと、地域の枠だけは増やしてもなかなか本質的な問題の解決にはつながらないのではないかと思っております。以上です。

高久座長
 はい。それでは辻本委員、よろしくお願いします。

辻本委員
 私は、国民や患者の立場からということでお話を聞いていただきたいと思います。私どもの活動はささやかながら15年になりますが、以前に比べて、医学そのものの課題の変化ということも含め、活動が広がってきており、本当に嬉しく思っております。お医者さん、あるいは学生さんが、地域への関心が低いのと同じように、私どもが活動を始めた15年ぐらい前は、学生さんが患者の、例えば私たちのような活動に意識、関心を持つということはほとんどありませんでした。逆に言えばそういう活動がなかったのかもしれません。ところが、私どもがささやかに続けてきている中で、先ほども高久座長が「学生さんはかわいいでしょう。」とおっしゃっておられたのですが、本当にかわいらしいと思うような、熱心な学生さんたちの関わりを私たちの活動に参加ということで前よりもたくさんいただくようになりました。
 そして、臨床研修におきましても、大阪府下の某病院については2年目のプログラムということで、お1人ずつ1週間私どもの方でお預かりをするということになり、電話相談や、患者の声などを実際に聞いてもらうということもしていただいております。
 また、いろいろな大学で電話相談、患者の生の声を学生さんに伝えるということも盛んにさせていただいています。先ほど水田委員が「話しなさい。」とおっしゃっているのをお聞きしたんですが、私はむしろ学生さんや研修医の方たちには患者の話を「聞いてください。」とお願いしています。お医者さんは18秒しか黙っていられない人だそうですので、もっともっと黙って患者さんの話を聞いてくださいということを一生懸命伝えております。

水田委員
 ちょっと待って。それは誤解です。私が言ったのは、患者さんにお話ししながら、且つ、自分が話すのではなく、患者さんのことをよく聞きなさいと言ったつもりなので、誤解しないでください。

辻本委員
 ごめんなさい。そのようなことで、一生懸命学生さんに患者の気持ちを聞いていただいています。一方で、厚労省の方でも検討会議にも参加させていただいた折りにも申し上げているのですが、やはりそうした場での議論という状況は、都市部の病院などのお話がほとんどなのです。私どもの電話相談は、いわゆる地方、もっと言えば過疎地域という方々の生の声も届いてきますが、そんな中でまだまだこの広い日本、もちろん患者も、それから医療を提供する側の医療者の方たちの意識の地域間格差ということの大きさに改めて驚きを感じているような状況がございます。
 一方で、国民や患者はマスコミなどを通して、ましてや平成7年厚生白書が医療はサービスと謳った当たりから、良くて当たり前というような思いと、それから米国の医療事情などを参考にする、そのような権利意識の高まりなどで、日々の要求は天井知らずという勢いで進んでいます。
 しかし、私たち電話相談でも申し上げるのですが、例えばお医者さんの数がアメリカの5〜6分の1ぐらいなんですよということを申し上げると、ああそうですかと初めて知る、これがまだまだ国民の意識でございます。そんな中で、電話相談をお聞きしておりますと、患者さんの気持ちは正に100ひく1が0、決して100ひく1が99でなく、100ひく1は0というところで不信感を募らせていくという実態もございます。先ほどの御報告の中で、削減目標10パーセント、到達7.9パーセントであるとなれば、まだまだこの削減に走ると思うとぞっとするような気がしております。
 一方で、医学部などにおかれても女子学生さんが非常に増加していることを思うと、報告書もございますが、女性医師の労働確保というような問題から考えても、患者や国民としてはむしろ増やして欲しいというような思いを申し上げたい気持ちがございます。
 そしてもう1点、意識ということなのですが、コア・カリキュラムの中にも医の原則、患者の原理や、インフォームド・コンセント、コミュニケーションというようなことが随分書かれるようになっていますが、先般、ある国立大学の学生さんに話を聞いてもらったときのレポートに是非お届けしたい言葉というところがございましたので、少々長くなりますが、聞いていただきたいと思います。
 「現在、医学部では患者中心の医療が叫ばれています。インフォームド・コンセントやセカンドオピニオンの始まり、言葉遣いや目線の送り方、相づちの打ち方まで指導されています。しかし、そこまでしてでも患者中心の医療を実現できるとは思いません。それは医師側から見た、患者はこうされたいだろうというただの予想です。患者さんの実際の声を聞いていないからです。だからこの講義はとても有意義なものでした。患者さんの声を聞き続けているからこその内容であるものでした。患者さんに接する上で重要な3つのこと、いたわりの心、わかりやすい説明、患者さんやその家族の希望をできるだけ聞くというようなことが医学部の講義の中でも言われていますが、実体験から来ているものと概念から来ているものとでは全く重みが違います。ドクターやナースの患者さんへの態度の悪さが一番に問題になっているということの話を聞きました。実際に態度が悪い人は多くいると思います。そういうのもただ社会を知らないからです。例えば、私どもの大学でいうと、そのまま大学院で働く人が大勢います。学生時代の先生がそのまま上司になるので、学生気分のまま医師として働いている人がほとんどだと思います。今回の講義を踏まえて、人間味のあるプロ意識の高い医師になりたいと本当に思いました。」
 純粋な学生さんたちは、やはりその教育のありようによって地域にももっともっと目を向けるでしょう。そして患者への意識というものももっと高めていくことが私は可能だと信じております。そういう意味では、この議論の中で精一杯私も意見を、足を引っ張ることになるかもしれませんが、申し上げていきたいと思うのと、それが最近の実態ということを少し聞いていただきました。長くなりました。ありがとうございます。

高久座長
 どうもありがとうございました。それでは寺尾委員、よろしくお願いします。

寺尾委員
 私、医師不足という観点から申し上げさせていただきます。地方の時代と言われながら、医師は大都会に集中し、医師の偏在が明らかであります。その理由としては、学生は卒後研修が充実しているところを選んで大都会へ行く、また、大都会の病院では多人数で勤務していますが、地方へ行きますと少人数の勤務で労働条件が過酷である、そのようなことが原因として挙げられています。これは確かにそうであることが、私どもで卒後3ないし5年経った医師に対するアンケート調査で確かめられました。なぜ静岡県に残ったのか、なぜ残らなかったのかということを調査しました。求めていることは、良い研修ができるということ、労働条件が過酷ではない、ということです。
 しかし、もう1つ、地方に医師が不足している大きな原因に、親元に帰りたい、故郷で仕事がしたいということがあります。静岡県出身者は静岡県に残ります。静岡県に医師を供給するためには入学者の静岡県出身が占める割合を増加させねばなりません。
 先日の国立大学医学部長会議において、本学は入学時に自県出身者が占める割合が最も多い大学であるとかで、なぜに、自県の出身者が多い大学であるのか教えて欲しいというお尋ねがありました。私たちは地域枠を設けるという方法を採用していません。自県出身者が占める割合が多いのは1高校当たりの推薦枠を増加させたことによると思います。最初は推薦枠が1人でございました。推薦は100人中25人が推薦になっておりますが、先ず、1高校当たりの推薦枠を2名にしました。十分な効果がなかったので、それを4名に変えました。また、高校を訪ねたり、あるいは、本学に校長先生をお招きしたりして、是非、優秀な学生を推薦していただきたいと申しました。すると、だんだん校長先生の方にも、どの程度の学生を送れば良いのかが分かってきます。従来は地元の進学校の優秀な学生が大都会へ流れていました。地元の進学校から受験してくれるように仕向ける必要があります。大都会へ流れるようでは困るわけです。私は名古屋の出身でございまして、名古屋のことを書いてある本によりますと、名古屋人はすべて名古屋内でやろうとする。例えば、子どもさんが東京の大学を受験したいと言うと、車を買ってあげるから東京へ行くな、名古屋へ残れ、と親は言うそうです。名古屋は自己完結型の都市で、そのキャパシティもあります。私たち浜松も自己完結型都市にしたいと思っています。できるだけ静岡の人が東京や名古屋や大阪へ行かないよう防ぐ努力をしています。
 一方、静岡県の中でも、浜松や静岡などはミニ大都会でありまして、静岡と浜松との間のところが医師不足になっています。東京と地方の関係と同じことが成立している気がします。これを解消するために多くの自治体の市長や町長さんたち1人1人に根気よくお会いして、機能分担をしていただきたいとお願いしました。ある病院には産婦人科がなくてもいいから眼科だけはある、ある病院には産婦人科があるが眼科がないというように分担する。眼科がある病院には眼科医が少なくとも3〜4人というようにいてチーム医療ができる。派遣される若い医師も喜んで行く。研修病院としても魅力になる。医師不足問題に関しては県もいろいろ支援してくださっております。例えば県で採用した医師を他の都市に派遣するということもやってくださった。残念ながら彼は小児科でしたが、赴任後、過労になり、脳内出血をして入院してしまった。そういうことで、いろいろ多難ではございますけれども、1つ1ついろいろな方向でこれを解決していかないと地方の医師不足が解消しないというふうに考えております。

高久座長
 どうもありがとうございました。私は座長なので余り話しませんが、地域医療を担う医師育成のテーマは自治医大がずっとやってきたテーマの1つです。しかしながら、大学の仕事には医師の養成、専門医の養成とか、あるいは研究ということがありまして、それなりの苦労をしてまいりましたが、経験したことをお話ししたいと思っております。
 それでは福田先生。

福田副座長
 私も一応高久先生を支えてまとめることになっておりますので、余りバイアスがかかるような発言は差し控えさせていただきたいと思います。
 今まで先生方の話をお聞きして、いろいろな問題を御指摘いただきましたが、これらは、問題が非常に大きいということです。4年ぐらい前に、厚生労働省医政局との研修の問題の制度設計を検討した段階で痛切に感じたことがありました。
 あの時からすべてが顕在化している、目立って問題が多くなってきたという気がしています。これからどういう方向で基本方針を打ち出すかというのが一番大事になっており、それぞれの観点でいろいろなお話しお尋ねがありましたが、全体的にどうやって進めていくかをまとめることがこの会議で一番大事なことではないかと思います。辻本先生からいろいろ大事な御意見を伺いました。いわゆる医療者側の、要はやっている側の目というのは、物をやはり上から見ている面がどうしてもあるということだと思います。このいい機会に、これらも含めた広い視野に立ってぜひまとめる作業に御協力をいただければと思っております。以上です。

高久座長
 どうもありがとうございました。それでは名川委員、よろしくお願いします。

名川委員
 これはまとめるのも大変だろうと思いますので、お察し申し上げます。意見だけ言うのは多分簡単だろうと思いますけれども、これをどのようにまとめていくかという意味で、論点だけを申し上げたいと思います。
 医学教育に関しては、今何が一番重要かというと、先ほどお話が出ましたが、医療安全だと思います。その上で、例えば患者の心を思いやるとか、そういうことが来るわけで、基本的な医療安全という教育が十分できていないのが現状です。それでいろいろ今問題になっているということですので、こういう観点を医学教育の中心に据えていただきたいと思います。
 それからもう1つは意見が出ましたけれども、共用試験の位置付けです。これも本来は人格の高い医師を養成するのが目的ですが、医学教育の全体像を見ますと、とてもそこまではいっていないのが現状です。学生をあるレベルまで持ってきて、それから高度の教育を施すということで、この共用試験はその第1段階目ですので、共用試験の位置付けを法的根拠も含めてしっかりしていくというのが第2点目です。それから第3点目は地域医療の問題ですけれども、いろいろなことが今まで言われていますが、やはり最終的に帰結するのは数の問題だと思います。いわゆる病院の数と医者の数とのバランスの問題、それがどの辺にあれば適切なのかという、少し大きい視点での、ここでは回答が出ないかもしれませんが、そちらの方向での考え方を一定程度示すということが重要だと思います。以上です。

高久座長
 それでは橋本先生、よろしくお願いします。

橋本委員
 私は東京慈恵会医科大学内科を定年退職し、現在は、日本医師会におります。現役時代は、日本医学教育学会という学会で医学教育について勉強しました。今日のこの会議は地域医療を担う医師の養成の在り方ということだそうですが、そこで申し上げたいのはまず、今回新医師臨床研修制度ができまして、「地域保健医療」が必修科目になったということについてです。これは本当に喜ばしいことだと思いますが、問題はその研修内容が大きな鍵を握っているということです。つまり、「地域保健医療」を行うのは臨床研修協力施設という、ある決められた7カ所、8カ所でしょうか、施設が指定されております。その中に当然、開業医師、中小病院が入っておりますし、へき地や離島の診療所なども入っています。しかし、その研修のプログラムは主として単独型にせよ管理型にせよ、病院長あるいは研修管理委員会が決めるわけです。そこを十分注意していただきたいと思います。注意しませんと、せっかくの地域医療研修が有名無実になってしまってはいけないと思うわけです。
 もう1つは、この地域の医師会は、今回の臨床研修制度で我が国の医師養成に大変関心を持っています。協力しようとしております。それにこたえるためには、やはり今回の臨床研修の「地域保健医療」を十分充実させておく必要があるのではないかと思います。その意味では、やはり卒前教育と卒後教育との地域医療の学習や研修というものをカリキュラムの上で充実させる必要があるのではないかと思います。先ほど事務局の資料説明を聞いておりまして、更に気が付いたことがございます。
 1つは平成13年3月27日のこのブルーの報告書の11ページに今後の学士編入学制度の在り方というのがございます。そこを見ますと、実施している大学というのが1学年に5ないし10人程度でございます。つまり、1クラスの中でクラスの学生が二層化をなしてしまうことに1つ問題があるのではないかと思います。これはこの時点ではこれでもよかったのかもしれませんが、結果はどうであるかということです。もし、この編入学を100パーセントにすれば、これはメディカルスクール構想というかつていろいろ議論されたものになるわけでして、改めてこの度、また検討する必要があるのではないかと思います。
 それからもう1つ気付いたことは、地域を指定した入学者選抜でございます。地域枠の学生、現在7大学が施行しているようでございますが、これが行われたとしても姑息的に過ぎないのではないかという懸念がございます。つまり、卒業し、義務を果たすとまた都会へ出て行ってしまう。しかし、長期的に見たときには、こうしたやり方が地域枠の学生ということが本当に良いかどうかということはやっぱり一度十分検討する必要があるのではないかというふうに思った次第です。以上です。

高久座長
 それでは福井先生。

福井委員
 今、私は聖路加病院に勤めておりますが、昨年8月まで京都大学、その前は佐賀医大におりました。2つの大学におりましたので、どちらの大学のことを言っているのか分からないと思いますので、大学教育についてのコメントをさせていただきたいと思います。
 先ほど、水田先生、辻本さんがおっしゃっていたように、理想的な医師の在り方は既に多くの人がいろいろなところで提言していて、医師の理想像については大体コンセンサスが得られていると思います。最大の問題は大学病院は、そのような医師をつくるのに適した場所でないということだろうと思います。つまり、教員の量と質の問題であり、優れた医師を養成している外国の大学と比べますと、明らかに教員の数が少ないですし、残念ながら質の問題もあります。診療と教育に全く情熱のないドクター、教員がたくさんおります。今私が勤務しております聖路加病院と比べますと大学では皆さん、ブラウン運動をしているようなもので、大学では理想的な医師を養成する、そういう雰囲気、環境をなかなか作りにくいというのが実情だと思います。
 もう1点だけ簡単に申し上げますと、学生の質と、教員の負担のことを考えますと、橋本先生がおっしゃった4年制のメディカルスクールのコースをトライアル的にでも行う必要があると思います。教育はいつまで経っても恐らくすべての人が理想だと考えるシステムはありえないと思いますので、よく優れているかもしれないと思われるようなシステムがありましたら、それを並行して認可して、パラレルに幾つかの異なった教育課程を走らせて、それを評価するということもいいのではないかと思っています。
 例えばカナダですと4年制の大学を4年間の課程を卒業してメディカルスクールに入りますけれども、3年間で卒業させるメディカルスクールもあるわけです。アメリカでも4年制のメディカルスクールだけではなく、高校から大学に入る時点でメディカルスクールに入れるような体制をとっている大学もあります。いろいろな教育課程を試し、評価をして、継続する価値があるかどうかを評価するというようなフレキシビリティーを持ってもいいのではないかと思います。以上です。

高久座長
 それでは松尾委員、お願いします。

松尾委員
 先ほど寺尾先生のお話に出ました名古屋大学の松尾です。私からは3点申し上げたいと思います。
 第1点目は、今、大学病院において臨床系教員は臨床活動に多大の時間を割かざるを得ない状況があり、研究、教育に深刻な影響が出ているということです。名古屋大学で法人化を迎えるに当たって全教官を対象に実施したタイムスタディーでは、全教官平均で臨床活動55パーセント、研究活動33パーセント、教育活動12パーセントでした。法人化以後の調査では、病院の経営改善や組織再編の必要性もあり、臨床活動の比重はさらに高まって、診療60パーセント、研究31パーセント、教育9パーセントとなっています。実感的には教員の管理業務も含めた診療の比重は70パーセントくらいにはなっているかもしれません。全員が臨床、教育、研究を発展させようと使命感に燃えて働いているのですが、どうしてもしわ寄せが教育と研究に及んでしまうとともに総労働時間も長く、厳しい現実の前に疲れ切っている状況があると思います。
 第二点目は市中病院においても勤務医の悲惨な状況が存在するという点です。名古屋は結構都会ですが、名古屋を一歩出て周辺の自治体病院、公的病院を見ると、ほぼすべてが医師不足です。しかもほとんどの病院が地域医療を支えてゆけなくなるような深刻な状況にあります。名古屋大学では現在、内科の専門6分野が病態内科学講座という大講座で様々な課題に対して協力して取り組む体制を作っていますが、この病態内科で2年前に関連病院の内科医の二一ズがどのくらいあるかを調査しました。すると神経内科や老年科を除いた6つの内科専門分野で600名の求人があることが分りました。病態内科では教授から大学院生、研究生まですべて含めて200名くらいが在籍していますので、とても要求には応えられないことが数字の上でも明らかになりました。この極端な勤務医不足の一因は、勤務医が過酷な勤務実態と将来への展望のなさに耐えかねて大量に開業していることにあると思われます。橋本先生には正確な数字をお聞きしたいのですが、昨年1年で開業された先生は数千名に及びそのソースは病院の勤務医だといわれています。これは何を意味しているのかを私なりに考えてみますと、地域の病院で頑張って来た勤務医の士気の低下であると思われます。
 先ほど田中先生がイギリスのお話をされましたが、サッチャー政権下の厳しくも長期にわたる医療費抑制政策のもとで、医療従事者の士気低下が起こり、医師はミドルないしアッパーローワークラスとしてしか評価されないような状況下で大量の医師がイギリス国内で働くモチベーションを失い国外へ職を求め、そのため海外から医師の逆輸入を余儀なくされる状況に陥ったと言われています。イギリスが世界に誇ったNHSは崩壊の危機に瀕し、医療事故の頻発や入院待機時間の延長など国民の不満はかつてないほど高まったので、ブレア政権下では医療費を1.5倍に増やして、同時に医療の側の説明責任もはっきりさせる形で改革を進めているといわれています。日本は今や世界で最も厳しい医療費抑制政策をとっていると言われていますが、このままでは医療者の一層の士気低下が心配なところです。しかし、今の日本で医療費を増やせといっても国民の理解を得られるかは疑問です。医療事故あり、大学医局の問題あり、様々な問題が噴出する中で、世論を味方に付けることが難しい状況です。
 したがって、第3点目ですが、この委員会もそうだと思いますが、医療を行っている側、あるいは医学教育を行っている側が自己改革をして、国民に分かるような形でしっかりと説明責任を果たし、もっと人もお金も増やさないと結局国民のための良い医療はできないことを明らかにしてゆく必要があると思います。

高久座長
 それでは南委員、よろしくお願いいたします。

南委員
 医療や医学教育の現場にいない立場ですので、申し上げることに見当違いなことがあるかもしれません。新聞では、医療というのは専ら叩かれるばかりで、私はその叩く側にいるので、大変申し上げにくいのですが、なぜ医療がこんなに叩かれるようになったのかということを考えてみますと、医療からは長い間情報が出てこず、医療というのは報道の対象でなかった時代が長くあったからだと思います。皆さんもよく御存じの山崎豊子さんの「白い巨塔」は1960年代ですが、このころから告発のようなことが始まって、次第に情報が外へ出るようになったわけですが、国民にとって、出てくることがすべて不信の材料になってしまっているように思います。そういう告発的なものから始まって、最近では、必ずしも告発的記事だけではなく、本当に良質な医療を提供していただきたいという立場から、いい医療を受けるための患者の知恵や、患者学のようなもの、また患者の満足がどうあるべきか、といったことまで医療記事も踏み込んできております。
 最近では、逆に辻本さんはよく御存じですが、患者の立場や、患者が選ぶ、患者が主役とか、そういうことを余りにも言い過ぎて、むしろその弊害も出てきているというのが現状ではないかと思います。必ずしも患者が主役とか患者が選ぶということによって患者さんが良質の医療を受けることになっていないという、非常に怖い現状もあるのではないかなと思っています。私は患者の立場とか、誰の立場とかを言わずに、客観的に国民にとっていい医療というものを目指すべきではないのかと思います。そういう立場からこの会議にも参加させていただきたいと思っております。医療というのは非常に国民にとって関心が高いのですが、一方で国民が医療の現状を十分に理解していないということに大きな問題があると思います。私は20年前読売新聞に入った時に、医師が余りにも社会的に悪者だと思われていることにも驚いたのですが、それだけでなくて、医学教育ということをほとんど知らないということにも驚きました。たとえば、医師を目指した人は最初から皮膚科とか内科とか耳鼻科とか、そういうような道に進むかと思っている。最近は医療を手がけている記者はそんなことはありませんけれども、それでも一般の解説記事を書く時には、やはり説明を加えた解説記事を書くのが現状です。まだ世の中の人は医学教育とか卒後教育、生涯教育なんか全然分けて理解していないという、そういう現状だということをまずは先生方に知っておいていただきたいということです。日本では今、患者さんの団体もたくさんでき、国民の声というのが非常に大きくなってきている現状がある一方で、国民はやはりまだまだお役所頼みであったり、医療に対しても非常に反発があるのに、まだ心のどこかでは非常に求めているものがある。だからこそ3分診療と言いながらこんなに病院が混んでしまうわけです。皆さんが医療には期待しない、もう結構だと思えば病院は混まないわけですから。ぜひそんな国民の期待に応えるような良質な医療という観点から、医療のグランドデザインというものをきちんと考えていく必要があると思っております。その意味では、大学が何をすべきかというところをきちんと考えることが必要だと思います。どなたか先生おっしゃいましたけれども、国立大学が法人化して経営が問われているという時代ですが、民間の基幹病院と同じというのは少しおかしいので、大学は何をすべきかということをきちんと極める必要があると考えています。
 もう1つ。先ほどメディカルスクール構想の話が出ていますが、18歳という年齢の現状を考える必要があるのではないかという気がしています。メディカルスクールがいいのか、大学院大学がいいのか、どういう方法がいいのか分かりません。とにかく医学部の学生は勉強しなければならないことが極端に増えている一方で、18歳という大学に入る年齢の人の現状というのが、皆さんも御存じのとおり、非常に未熟というか、未熟にならざるを得ない社会状況になっています。なかなか水平には昔の18歳と今の18歳と比べることはできませんが、やはり今の18歳の人の現状を考えたときに、今の6年の学部教育というものが本当に医師になるのにふさわしいかどうかなど、そういうところから医師養成のグランドデザインというものを考えていかないといけないのではないでしょうか。医師が非常に未熟だとか、若い医師の礼儀がなっていないとか、教養がないとか言われますが、社会全体の若者の現状から見て、余りにも一方的な議論だと思います。やはりきちんと踏むべきプロセスを踏んで、教えられるべきことを教えられて、きちんと育まれていくということが大切であって、何かこのままだと若い医師が潰されてしまう危険があるのではないかと思います。やはりもう少し社会の現状にあわせて若い人を育てていくという観点から手を打つべきなのではないかと思います。

高久座長
 どうもありがとうございました。では吉新委員お願いいたします。

吉新委員
 私は平成10年の時の、これからは医師が過剰になるのでもっと削減しろという委員会のメンバーでございました。
 現在、私は地域医療振興協会と申して全国的な「へき地の医師の確保」を目的とする組織の理事長でございます。また、自治医大の1期生です。
 当時、自治医大に入学しましたら、医療評論家が、あんなインチキ大学はないということで、おそらく自治医大は卒業生が地域医療に従事せず、失敗するだろうと。そこで、学生と教員が相当頑張りました。夏休みとなれば、栃木の山奥や自分の都道府県に帰り、夏期実習でへき地の家の1軒1軒アンケートをして、「おばあちゃん、どういう医療が欲しいですか。」というようなことを1週間ぐらい村に滞在して、研修したこともありました。また、全寮制で学生が少なく教員の割合が非常に多かったものですから、教員と一緒に生活し、寮のお風呂で教授の背中を流したり、「おまえ、たまには講義に出てこい。」ということを言われた覚えがあります。全寮制は、自治医大生のみならず、大学教員にも有効だったと思います。
 地域医療の確保というのは、へき地や離島ではなく、その手前の中小病院の医師不足が非常に深刻になっています。中小病院では、医師は専門を越えてグループで動いていて、専門以外も含め、何でも診なければならない。中小病院の医師は、臨床研修、医学教育に職業訓練として、要するに、まず、医者屋になる必要があるのです。大学で行われている専門教育、研究だとかは、どちらかというとリサーチ志向の医療教育です。ですから、大学では、職業訓練と教育が混乱してしまっている。実はこれらは全く違うものだと思います。
 卒業して早いうちから、極端な話、失礼ですけれども、眼科というと眼科以外のことは全く分からなくてもいいように、眼科の専門医になっているわけですね。そうではなく、幅広く、いわゆるコモンディジーズにはどんな医師でも対応できるという、医療の基本の確立を、まず1つ目指すべきだと思います。
 日本の医学教育では、職業訓練が、もしかすると全く欠落している。医師が中小病院になぜ行かないかというと、忙しくて、また、訓練を受けていない専門以外も何でも診なくてはいけないと怯えているからです。あと、マスコミも大変怖い。何かあればすぐ駆けつけてきますし、すぐ裁判沙汰になりますし、この先、国民と医師の信頼再構築が必要です。そういう意味では、できればこの委員会で、ぜひ家庭医を、制度というか日本の医者として当然持つべき能力を明らかにし、研修の目標とする。もう1つ、地域に根ざした大学及び医療機関には、地域に貢献したら、もっとリソースをたくさんあげる、ベッド数を差し上げるとか、研修の補助を増やすとか、そういったような仕組みをできれば作っていただきたいと思います。

高久座長
 それでは最後に吉村先生。

吉村委員
 最後になりました。北里大学の医学部長をしております吉村です。御承知のように、大学というのは教育、研究、診療を担っているわけですが、特に医育機関でございますので、医師の養成というのが第1の使命です。現在、全国の大学医学部では医学教育の改革に取り組んでいるところですが、残念ながら大学の弊害ばかりが、ここのところ強調されておりまして、非常に残念に思っています。
 実は先週の金曜日、全国医学部長病院長会議の総会が開催され、そこでも地域医療が話題になりました。その中で、やはり新医師臨床研修制度のことも少し話題になりまして、もちろん新研修制度導入の趣旨である「幅広い臨床能力を付ける、そしてまた処遇をしっかりする。」ということには、皆さん賛成なのです。しかし、問題は、今回の初期研修の主眼がプライマリケア研修ということで、研修指定施設の認定基準が大幅に緩和されまして、現在2,168施設が認定されています。残念ながら、大学ではどうしても処遇の限度がございます。またプライマリケア中心という2年間のプログラムでございますので、やはり専門教育が中心の大学では初期研修に相応しくないのではないかということで、どんどん大学から人がいなくなっている。特に地方の大学は入ってくる人が6人しかいないといった大学がある状況で、本当に崩壊寸前のところが続出しています。地方の大学が崩壊しますと周辺の地域医療も崩壊するという状況になっています。大学に限らず医療機関にとっては、人材の確保と養成ということが基本です。
 皆さん心配していらっしゃるのは、医師の養成というのは1年2年の問題ではなく、5年10年の養成システムでなければいけないのですが、1施設だけでそういった養成をするということは当然不可能でございまして、大学病院とともに専門病院、場合によっては中小病院もローテーションしながら、大体10年くらいかけて1人前のしっかりした専門医を養成する必要があるわけです。もちろん専門医の中には家庭医の専門医ということも是非考えていく必要があるものと思っています。先ほど水田先生は、今回導入された2年間の初期臨床研修の終了した後は、自分勝手に好きなところに行けばいいのではないかということをおっしゃったのですが、それで本当に良いのか。むしろ、後期の専門研修について、しっかりしたシステムをつくり上げていくべきではないかというのが、皆さんの御意見だと思っています。
 全国医学部長病院長会議といたしましては、やはり、この新医師臨床研修制度をもう1回見直すとともに、特にプライマリケアを担うような教育や研究システムをしっかり作ること、あと、学生の医行為を可能とする法的措置を確立し、現在の卒後の新医師臨床研修制度のプログラムの一部を卒前の中に取り入れて、卒前卒後の一貫した研修システムを充実すべきという御意見でした。先ほど、出ましたが、やはりグランドデザインというのが必要なのではないか。つまり、本当にどのくらいの専門医が必要で、どのぐらい家庭医の方がおられて、あるいは勤務医もどのくらい必要か、そういったことを踏まえた上で、医師の養成システムを考えていかなくてはいけないと私は思っています。以上でございます。

高久座長
 どうもありがとうございました。今日は第1回ということで、委員の皆さん方の忌憚のない御意見をお伺いいたしました。次回は7月12日が予定されていまして、この資料3にありますように、関係される方々からのヒアリングということで、いろいろな御議論をお願いしたいと思います。7月12日1時半からこちらの会議室です。本日はどうもありがとうございました。


(高等教育局医学教育課)

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