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Home > 政策・施策 > 審議会情報 > 調査研究協力者会議等 > 原子力安全規制等懇談会 > 試験研究用原子炉施設等の安全規制のあり方について(案) > 4−2


2. 規制の考え方

 新たな規制の対象は、現在、原子炉等規制法第61条の3に基づく国際規制物資(核燃料物質)の使用許可を受けた者であり、同法第61条の8に基づき核燃料物質の計量管理が義務付けられているが、同法第57条に基づく使用及び貯蔵の基準等は適用されていない。
 このため、BSS免除レベル算出シナリオを参考として評価を行い、当該基準等の適用の範囲について検討を行った。

(1) BSS免除レベル算出シナリオによる放射能の算出

BSS免除レベルの算出シナリオによる放射能の算出は、
1 作業場所における通常シナリオ
2 作業場所における事故シナリオ(飛散)
3 作業場所における事故シナリオ(火災)
4 処分場での公衆被ばくシナリオ
で、それぞれのシナリオの被ばく経路について、同一の使用者又は公衆に対して発生すると想定される被ばく経路に関し、合算を行い、その結果の中で一番厳しい値を国際免除レベルとして採用している。現在の国際免除レベルは、4処分場での公衆被ばくシナリオにより算出された値が採用されている。
 少量の核燃料物質の使用に関し、上記シナリオの中で4処分場での公衆の被ばくシナリオについては、使用場所を特定し、使用後の核燃料物質等を、工場又は事業所内で保管廃棄するものとすれば、核燃料物質等が処分場などに直接排出されることはなく、上記1から3のシナリオで評価することができる。
 2002年10月、放射線審議会基本部会での国際免除レベルの妥当性を検討した際に、パラメータ、被ばくシナリオの一部を我が国の事情を考慮して、同基本部会のワーキンググループで試算した結果を参考にすると、1から3のシナリオの中の1のシナリオが一番厳しくなり、天然ウラン及び劣化ウランでは81グラムで年間10マイクロシーベルトであるので、300グラムであれば年間40マイクロシーベルトと推定される。また、3g以上900グラム未満のトリウムでは、トリウム232の試算が行われていないため、同基本部会のワーキンググループでの試算結果がある核種のうち、トリウム232の放射平衡になっている核種を全て考慮している天然トリウムで計算すれば、25グラムで年間10マイクロシーベルトであるので、900グラムでは年間約400マイクロシーベルトと算定できる。したがって、上記1から3のシナリオによれば、作業者の被ばくは、一般公衆の被ばく限度である年間1ミリシーベルトを下回ると考えられる。
 放射能の算出シナリオを放射線審議会基本部会ワーキンググループで行った年間被ばく10マイクロシーベルトとした場合の試算値(例としてウラン238プラス注1での試算値)は以下のとおりである。(トリウムについてもウランと同様に4のシナリオが一番厳しい評価となり、4のシナリオを除けば1のシナリオが一番厳しくなる。)
注1: プラス」は、永続平衡中の短寿命娘核種を含めての評価を行ったもの。

  試算値(ウラン238プラス   試算値を端数処理
1作業場所における通常シナリオ   8.76かける10の5乗ベクレル(70.6グラム)   1かける10の6乗ベクレル(80.6グラム)
2作業場所における事故シナリオ(飛散)   1.74かける10の7乗ベクレル(1403.2グラム)   1かける10の7乗ベクレル(806.5グラム)
3作業場所における事故シナリオ(火災)   8.77かける10の6乗ベクレル(707.3グラム)   1かける10の7乗ベクレル(806.5グラム)
4処分場での公衆被ばくシナリオ   5.82かける10の4乗ベクレル(4.7グラム)   1かける10の5乗ベクレル(8.1グラム)
:国際免除レベルで採用されているシナリオ
4のシナリオを除いて一番厳しいシナリオ

 これらを考慮し、現行の核燃料物質の使用等に関する規則(以下「燃料規則」という。)第3条に定める使用の技術上の基準等の一部を適用し、核燃料物質の施設外への排出を管理することにより、一般公衆の安全を確保することができると考えられる。

(2) 使用の技術上の基準等の適用

 原子炉等規制法第61条の3に基づく国際規制物資(核燃料物質)の使用許可を受けた者(以下「国際規制物資使用者」という。)のうち、新たに規制の対象となる者(約1,000事業所(天然ウラン又は劣化ウランを使用する者:1,400施設、トリウムを使用する者時30分0施設))の実態は、密封での使用(天然ウラン又は劣化ウランを使用する者で約5%、トリウムを使用する者で約20%)、粉末を溶液に溶かして非密封で使用(電子顕微鏡染色、分析等)する場合が多く、天然ウラン又は劣化ウランを使用する者で約90%、トリウムの使用者で約65%となっている。
 核燃料物質を施設外部へ排出しないように、使用の技術上の基準等の適用について検討した結果、以下のような措置を講じることが妥当との結論に達した。
1  作業者の被ばく線量は、年間1ミリシーベルト以下と算定されるため、使用場所の空間線量及び空気中濃度からは、燃料規則第1条第2号の規定に基づく管理区域注2を設定する必要はない。ただし、使用者は、使用の場所、貯蔵の場所の特定を行う。
2  作業者の被ばく線量が年間1ミリシーベルト以下と算定されるため、燃料規則第1条第3号の規定に基づく周辺監視区域注3を設ける必要はない。
3  核燃料物質の貯蔵は、貯蔵施設で行い、施錠管理を行う。
4  作業者の被ばく線量が年間1ミリシーベルトを超えないので、気体廃棄物の廃棄施設は必要としない。
5  現状の国際規制物資使用者の核燃料物質の使用に伴う液体廃棄物(一次廃液)及び固体廃棄物は保管廃棄しており、これを適用する。(ただし、排水施設等を設置して、処理等を行う場合は、該当する技術上の基準等を適用する。)
6  技術上の基準等の遵守のため、管理者や作業者に対して安全教育を行う。

注2:  使用施設、廃棄施設、貯蔵施設等の場所であって、その場所における外部放射線に係る線量が文部科学大臣の定める線量注を超え、空気中の放射性物質(空気又は水のうちに自然に含まれている放射性物質は除く。)の濃度が文部科学大臣の定める濃度注を超え、又は放射性物質によって汚染された物の表面の放射性物質の密度が文部科学大臣の定める密度注1を超えるおそれのあるものをいう。
注1:  試験研究の用に供する原子炉等の設置、運転等に関する規則等の規定に基づき、線量限度等を定める告示(以下「線量当量告示」という。)第2条
注3:  管理区域の周辺の区域であって、当該区域の外側のいかなる場所においてもその場所における線量が文部科学大臣の定める線量限度注2を超えるおそれのないものをいう。
注2:  線量当量告示第3条

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