本文へ
文部科学省
文部科学省ホームページのトップへ
Home > 政策・施策 > 審議会情報 > 調査研究協力者会議等 > 原子力安全規制等懇談会 > 試験研究用原子炉施設等の安全規制のあり方について(案) > 3−1


1. 現行の安全規制

(1) 解体に係る安全規制

 現行の原子炉の解体に係る安全規制としては、原子炉等規制法第38条(原子炉の解体)及び試験研究の用に供する原子炉等の設置、運転等に関する規則第15条の3(解体の届出)において、原子炉設置者は、原子炉を解体しようとするときは、解体に着手する30日前までに、解体に係る工場等の名称、解体の方法及び工事工程並びに核燃料物質等の処分の方法を記載した書類を、あらかじめ主務大臣に届け出なければならないと定められている。また、主務大臣は、解体の届出があった場合において、必要があると認めるときは、原子炉設置者に対し、原子炉の解体の方法の指定、核燃料物質による汚染の除去その他核燃料物質、核燃料物質によって汚染された物又は原子炉による災害を防止するために必要な措置を命ずることができると」旨定められている。なお、核燃料物質の使用については、解体に関する手続きはない。
 試験研究用原子炉施設については、現在までに、表−1に示すとおり7基が廃止済であり、また、表−2に示すとおり8基が解体中である。
表−1 廃止済の試験研究用原子炉
No 事業者名 名称 熱出力 解体届届出日 廃止届届出日
1 日本原子力研究所 AHCF 10ワット 昭和42年11月注 昭和54年2月注
2 日本原子力研究所 JRR−1 50キロワット 昭和44年10月 平成15年7月
3 住友原子力工業株 SCA 100ワット 昭和45年12月 昭和46年2月
4 三菱原子力工業(株) MCF 200ワット 昭和48年12月 昭和49年3月
5 日立製作所(株) OCF 100ワット 昭和49年7月 平成15年7月
6 日本原子力研究所 JPDR 90メガワット 昭和57年12月 平成14年10月
7 日本原子力研究所 JMTRC 100ワット 平成7年10月 平成15年3月
注1: 昭和42年11月24日に「水性均質臨界実験装置の解体について」を旧科学技術庁へ提出
注2: 昭和54年2月10日に解体撤去工事完了

表−2 解体中の試験研究用原子炉
No 事業者名 名称 熱出力 解体届届出日
日立製作所(株) HTR 100キロワット 昭和50年6月
日本原子力研究所 むつ 36メガワット 平成4年8月
日本原子力研究所 JRR-2 10メガワット 平成9年5月
日本原子力研究所 VHTRC 10ワット 平成12年3月
東芝(株) TTR 100キロワット 平成13年8月
核燃料サイクル開発機構 DCA 1キロワット 平成14年1月
立教大学 立教大学炉 100キロワット 平成14年8月
武蔵工業大学 武蔵工業大学炉 100キロワット 平成16年1月

 試験研究用原子炉施設の安全規制を所管する文部科学省は、原子炉等規制法第38条に基づく原子炉の解体届が提出された後の運用に関し、解体中の安全確保の確実な遂行を確認する観点から、資料に示すとおり、これまでの解体に係る安全規制の経験、原子力安全委員会の「原子炉施設の解体に係る安全確保の基本的考え方」(昭和60年12月、一部改訂平成13年8月)等をもとに、
1  解体届の記載にあたっての注意事項
2  解体届の受理に際しての内容の検討事項
3  解体工事の安全性確認の観点から、解体工事の内容の詳細を把握し、必要に応じて現場確認を行うため、解体届受理後30日以内に、解体届を提出した原子炉設置者に対し、工事方法等明細書及び工事工程明細表の提出についての通知を発出すること
などを示した「原子炉施設の解体・廃止並びに核燃料物質及び核原料物質使用の廃止に関する手続きマニュアル」(以下「解体・廃止に関する手続きマニュアル」という。)を、平成15年7月に定めている。
 現在解体中の8基の試験研究用原子炉施設の設置者に対しては、解体・廃止に関する手続きマニュアルに基づき、解体中の安全確保の確実な遂行の確認がなされている。

(2) 廃止に係る安全規制

 現行の廃止に係る安全規制としては、原子炉等規制法第65条に、原子炉設置者が、当該許可に係る原子炉のすべての運転を廃止したとき、使用者が当該許可に係る核燃料物質のすべての使用を廃止したとき等は、30日以内に、主務大臣に届出なければならないことが定められている。また、同法第66条には、廃止等に伴う措置として、原子炉のすべての運転を廃止した原子炉設置者、核燃料物質のすべての使用を廃止した使用者等は、核燃料物質を譲り渡し、核燃料物質による汚染を除去し、若しくは核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物を廃棄する等の措置を講じなければならないことが定められている。主務大臣は、原子炉設置者などが講じた措置が適切でないと認めるときは、核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物又は原子炉による災害を防止するために必要な措置等を講ずることを命ずることができると定められている。
 試験研究用原子炉施設については、昭和40年代より解体・廃止措置がなされてきており、これに係る安全規制の経験が積み重ねられてきたところであるが、解体に係る安全規制と廃止措置に係る安全規制の関係や、設置許可に係る原子炉の一部を廃止する場合の安全規制等、必ずしも明確とは言えない部分がある。
 このため、文部科学省では、平成14年10月に、原子炉等規制法第65条及び第66条に基づく廃止に係る手続きに関して、廃止の時期や廃止の要件を示した「文部科学省が所管する原子炉の廃止に係る手続きについて」を定め、その旨を原子炉設置者に通知している。
 具体的には、同法第65条第1項の「廃止をしたとき」の要件として、
1 1事業所に1原子炉が設置されている場合
 解体に係る工事・作業が終了していること
 核燃料物質及び放射性廃棄物が、他の原子炉等規制法に基づく規制下にある事業所に引き渡され又は廃棄されていること
 建家等を再利用する場合は、施設の除染が確認されていること
 放射線管理記録が指定機関に引き渡されていること
2 1事業所に複数の原子炉が設置されている場合の1原子炉の廃止
 当該原子炉施設の解体に係る工事・作業が終了していること
 当該原子炉施設に係る核燃料物質及び放射性廃棄物が、事業所内の他の原子炉施設又は他の原子炉等規制法に基づく規制下にある事業所に引き渡され又は廃棄されていること
 当該原子炉施設の建家等を再利用する場合は、施設の除染が確認されていること
 当該原子炉施設に係る放射線管理記録が、引き続き当該事業所において保管され、又は指定機関に引き渡されていること
 なお、1事業所に複数原子炉が設置されている場合に1原子炉を廃止するときは、原子炉等規制法第65条第2項(許可の失効)により失効する許可とは、当該原子炉に係るものに限るとしている。また、廃止に伴う措置については、文部科学省の職員がその適切性を確認することとしている。

 文部科学省は、このような手続きに基づき、これまでに日本原子力研究所のJPDRやJMTRC、日立製作所(株)のOCF等の廃止届を受理している。

(3) 解体中の施設に係る保安規定、保安検査及び施設定期検査等

 解体中の原子炉については、原子炉からの核燃料等の撤去等、解体の進捗に応じ、安全確保の内容は、核燃料物質等による災害の防止の観点から、原子炉の運転により発生した放射性物質で原子炉施設内に残存しているものによる放射線障害の防止の観点に重点が移っていくにもかかわらず、現行の安全規制では、運転中の原子炉と同様の義務が課せられている。以下に解体中の原子炉に対し適用されている主な規制を示す。

1 解体中の施設に係る保安規定及び保安検査

 現行の安全規制においては、原子炉等規制法第37条第1項に基づき、原子炉設置者は、主務省令で定めるところにより、保安規定を定め、原子炉の運転開始前に、主務大臣の認可受けなければならいと定められている。これを変更しようとするときも同様とすると定められている。
 解体の進捗により、原子炉の運転機能停止措置や使用済燃料の取り出し等が順次行われていくこととなるが、原子炉設置者は、解体の完了までは、災害の防止上支障がないよう所要の措置を講じる必要がある。このため、原子炉の運転に関することや管理区域の設定等について、解体の進捗に応じて、施設の運転・管理、巡視点検、放射線管理、放射性廃棄物の管理等の安全上の重要な事項や品質保証に関する事項を記載した既認可の保安規定を変更し、主務大臣の認可を受けることとなっている。
 また、同法同条第5項の規定に基づき、原子炉設置者は、保安規定の遵守状況について、主務大臣が定期に行う検査を受けなければならないと定められている。現行の安全規制の下では、解体中の原子炉施設についても、運転中と同様に年4回の検査で、解体の進捗を勘案して認可された保安規定のすべての状況について検査が行われている。

2 施設定期検査

 原子炉等規制法第29条に基づき、原子炉設置者は、原子炉本体、核燃料物質の取扱施設、貯蔵施設及び原子炉冷却系統施設等の性能に関し、原子炉の停止装置、崩壊熱除去装置及び非常用動力源等が、設置又は設置変更許可申請書及びこれらの許可の際に付された条件を記載した書類(以下「申請書等」という。)に記載した条件において、申請書等に記載した時間内に確実に作動することなどの技術上の基準に適合することについて、主務大臣が毎年1回定期に行う検査(以下「施設定期検査」という。)を受けなければならないと定められている。現行の安全規制においては、解体中の原子炉施設についても、同法第29条が適用され施設定期検査を受けることとされている。
 なお、解体中の原子炉に係る施設定期検査の技術上の基準の適用については、使用済燃料の取り出し等解体の進捗に応じた適用がなされている。すなわち、原則として、原子炉からすべての核燃料及び中性子源の撤去など原子炉の機能停止措置がなされた後は、施設定期検査に係る技術上の基準のうち、原子炉の停止装置、崩壊熱除去装置及び制御系の反応度抑制効果などの性能に関する事項の検査は適用されていない。

3 原子炉主任技術者の選任

 原子炉等規制法第40条に基づき、原子炉設置者は、原子炉の運転に関して保安の監督を行わせるため、原則として、原子炉毎に原子炉主任技術者を選任することとされている。
 現行の安全規制では、解体中の原子炉についても、原子炉の機能停止措置、解体中の施設の維持管理及び解体撤去作業における安全確保等の措置は、災害防止の観点から、原子炉の運転と同様と捉え、解体完了までは、原子炉主任技術者を選任することとされている。

4 核物質防護対策

 原子炉等規制法第35条第2項に基づき、原子炉設置者は、原子炉施設を設置した工場又は事業所において、ウラン235のウラン238に対する比率が20/100以上のウランであって、ウラン235の重量が15グラムを超えるものなどの防護対象特定核燃料物質を取り扱う場合には、当該核燃料物質の防護のための区域を定め当該区域を鉄筋コンクリート造りの障壁等の堅固な構造の障壁によって区画するなどの防護措置を講じることとされている。
 解体中の原子炉については、核燃料が当該施設外へ搬出されるまでの間は、核物質防護措置を講じる必要がある。
 また、核燃料物質の使用施設についても、防護対象特定核燃料物質を取り扱う場合には、同様の措置を講じる必要がある。

←前のページへ 次のページへ→


ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ