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資料9−2

永久挿入線源の取扱いについて   (案)

平成15年5月29日
文部科学省科学技術・学術政策局
原   子   力   安   全   課


1.趣旨

   前立腺がんの治療のために患者に永久的に挿入されたヨウ素125等の放射線源の取扱いについては、文部科学省所管の「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」(以下、「放射線障害防止法」という。)の適用を除外し、厚生労働省所管の医療法の枠組みによる規制とすることについて、放射線障害防止法施行令に基づき、文部科学大臣から厚生労働大臣に対して協議することとしたい。

2.現状

(1)    局所的ながんの治療には、外科手術、体外からの放射線照射、組織内での放射線照射、ホルモン療法等がある。特に早期の前立腺がんについては、ヨウ素125密封線源を体内に永久的に挿入し、組織内で放射線を照射する治療が、欧米を中心に広く普及しており、米国においては、年間数万件程度実施されている。この治療法においては、患者は線源を体内に挿入したまま社会復帰することになる。
   我が国においては、近年、年間14,000人以上が新たに前立腺がんと診断されており(この20年間で7倍程に増加)、この治療法の潜在的な適応患者は、年間数千人に達すると推定されている。

(2)    上記の早期の前立腺がんの治療に用いられるヨウ素125のような放射性同位元素を装備した医療用具は、薬事法(厚生労働省所管)による製造の承認を受け、放射線障害防止法による製造と販売の段階の密封線源としての規制を受け、さらに放射線障害防止法と医療法により病院内での使用の段階の規制を受けることとなっている。
   なお、薬事法第2条第1項に規定する医薬品については、既に放射線障害防止法から適用除外となっており、放射性医薬品の病院内での使用は、医療法の枠組みによる規制が行われている。


3.放射線障害防止法の適用除外

(1) 法制度
   放射線障害防止法の施行令第1条第3号においては、「薬事法第2条第4号に規定する医療用具で文部科学大臣が厚生労働大臣と協議して指定するものに装備されているもの」は、放射線障害防止法の適用対象となる放射性同位元素等から除外できることとなっている。

(2) 厚生労働省における対応
   厚生労働省は、昨年12月、薬事法において前立腺がん治療用のヨウ素125密封線源を医療用具として承認した(舌がん等の治療に用いられる金198については既に承認済み)。
   また、同省は、密封線源を永久的に挿入する治療を可能とする環境を整えるため、本年3月にヨウ素125及び金198の密封線源が永久挿入された患者の退出基準(放射能及び線量率の基準、線源脱落への対応、患者への注意及び指導事項等)を定めた。

(3) 当省における検討
   当省において、厚生労働省の対応を踏まえ、患者へのヨウ素125及び金198密封線源の永久的な挿入に係る安全性ついて検討したところは、次の通りである。

1 患者へのヨウ素125及び金198密封線源の永久的な挿入については、今般、厚生労働省により上記(2)の措置がとられたことにより、厚生労働省における患者に永久的に挿入後の線源の取扱いは、一般公衆への被ばく線量等を考慮した退出基準の設定からみて、基本的に、放射性医薬品の取扱いと同様であると考えられること。(別紙1参照)
2 線源脱落の対策として、脱落の可能性のある期間を考慮し、ヨウ素 125密封線源については最低1日間、金198密封線源については最低3日間入院させ、脱落に十分備えることとしていること。(別紙1−参考参照)
3 一定期間内に患者が死亡した場合については火葬に付す前に医師による線源の回収が行われることとなっているが、なお念のため、一定期間経過後に患者が死亡した場合の線源からの影響について評価したところ、1mSv/年を十分下回っており、放射線防護のための特別な措置は必要ないと考えられること。(別紙2参照)
(4) 結論
   以上のことから、放射性医薬品と同様に、薬事法に規定する医療用具のうち、永久的に挿入する治療法に用いられるヨウ素125又は金198を装備しているものについては、患者に永久的に挿入された後は、厚生労働省の医療法の枠組みで規制されることが適当であると考えられる。患者に永久的に挿入されたヨウ素125と金198密封線源については、放射線障害防止法の適用を除外することについて、放射線障害防止法施行令第1条第3号に基づき、文部科学大臣から厚生労働大臣に対して協議することとしたい。


4.今後の進め方

   文部科学大臣から厚生労働大臣に対する協議について、パブリックコメントも求め、協議が整った際には、同法施行令第1条第3号に基づく指定を告示をもって行うこととする。

 



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