平成20年3月14日(金曜日)9時30分〜11時30分
アルカディア市ヶ谷 3階「富士西」
上野、梶原、金、久保田、佐々木(隆)、里中、椎名、瀬尾、津田、常世田、野原、野村、生野、三田の各委員
吉田長官官房審議官,山下著作権課長 ほか関係者
【野村主査】
それでは、第1回過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の開催に当たりまして、高塩文化庁次長よりごあいさつをいただきたいと思います。
【高塩文化庁次長】
失礼いたします。文化庁次長の高塩でございます。第8期の文化審議会著作権分科会過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の開催に当たりまして、一言ごあいさつ申し上げたいと思います。
皆様方におかれましては、大変ご多用の中前期に引き続きまして本委員会の委員をお引き受けいただきまして、まことにありがとうございます。前期、この小委員会は昨年から発足をしたわけでございますが、前期の1年間の小委員会におきましては10回にわたりまして会議を開催していただきまして、著作権の保護期間のあり方、また過去に作成されました著作物の利用の円滑化に関する方策につきまして活発にご議論いただいたと承知をいたしております。
これらの課題は現在大変社会的に関心が高い問題と考えておりまして、先生方のご議論を踏まえまして一定の方向性が出た場合には、文化庁としましても法改正を含めまして諸作業を進めさせていただきたいと思っておりますので、先生方のご協力をどうぞよろしくお願いいたします。
今期の先生方の一層のご協力をお願い申し上げまして開催に当たりましてのあいさつとさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
【野村主査】
それでは次に、形式的な手続になりますけれども、任期が改まったということで、本小委員会の今期の設置の趣旨や所掌事務及びワーキングの設置につきまして、事務局よりご説明をお願いいたします。
【黒沼著作権調査官】
それでは、資料2と資料3に基づきましてご説明させていただきます。
資料2は先月の文化審議会著作権分科会で、どのような小委員会を設置するかということについて決定された資料ですが、この過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会につきましては引き続き設置をということで認められております。所掌についても昨年と同様です。
また、議事運営につきましても、4、その他のところにございますが、分科会の議を経て公表するということで、昨年と変わりはございません。
その次の資料3は、ワーキングチームの関係でございます。
ワーキングチームは、昨年設置をお決めいただきまして、既に2枚目以降のメンバーで幾度か議論がされております。形式的な手続で恐縮ですけれども、継続のご確認をいただければと思っております。共有ワーキングチーム、アーカイブワーキングチーム、合計で2つでございます。
ワーキングチームの座長は小委員会の主査の指名など、昨年と同様の形で引き続き設置をしてはいかがかと思っております。よろしくご確認をいただければと思います。
【野村主査】
どうもありがとうございました。
それでは、ご説明のとおり、前期に引き続きましてこの小委員会の下に共有ワーキングチームとアーカイブワーキングチームの2つを設置するということについてご異議はございませんでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【野村主査】
どうもありがとうございます。
ワーキングの設置について決定としたいと思います。なお、座長につきましては共有ワーキングについては上野委員、それからアーカイブワーキングについては渋谷委員に引き続きお願いしたいと思います。
各ワーキングの議論につきましては適宜小委員会にご報告していただきますようお願いいたします。
それでは、早速本日の実質的な議題に入りたいと思います。本日は利用の円滑化方策として2つの点について議論をしたいと思いますが、1番目は、著作隣接権に関する裁定制度、それから2番目は裁定制度以外での利用円滑化方策として提案された事項についてということで、この2点につきましてまず事務局より資料4、資料7についてご説明をお願いいたします。
【黒沼著作権調査官】
それでは、資料4から資料7まで4つほど資料がありますが、それに基づいてご説明いたします。多少お時間いただくかもしれませんが、よろしくお願いいたします。
まず、資料4でございます。こちらは10月の小委員会で一度ご議論いただいたものの続きで、著作隣接権に関する裁定制度についての議論でございます。今までの小委員会で出てきたご意見につきましては逐一ご紹介はしませんが、簡単におさらいをしておきます。
まずは、裁定制度をつくらなくても運用による対応で十分ではないかという意見が幾つかございまして、権利者情報の管理、関係者間で自主的なファンドを積み上げることなどで対応ができるのではないかというご意見でございました。
その一方でなお裁定制度は必要だという意見もございまして、特に過去の放送番組を利用の際には実演家の所在不明の場合などもあるということで、裁定制度は必要だというご意見や、そのほかの手段で解決できるかどうかということ、最終手段としての裁定制度が必要かというのは別の話ではないか、そういったご意見がありました。
それから2ページ目、もっぱら実演が念頭に置かれて議論されておりましたが、レコードについてもどうするのかというご議論もございました。必要ないという意見と必要であるという意見の双方がありました。
こういった一連のご意見はありましたが、10月の段階としましては、結局は条約との関係で「強制許諾」を設けることができるのかできないのか、これに大きくよってくるのではないか、そういったところでご議論が止まっていたと承知をしております。
そのことについて事務局として宿題をいただいている状況でして、遅くなっていており大変恐縮でございます。実はまだ関係省庁とも相談している最中でして、最終結論は出てはいないのですが、ざっと現状についてご説明をさせていただきます。
2.の著作隣接権の裁定制度と関係する国際約束というところでございます。現状の規定では、「ローマ条約」、つまり「実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約」では、保護の例外として認められる範囲を著作権の保護の例外と同一の種類のものということにしているのですが、特に強制許諾についてだけは「ローマ条約」に抵触しない範囲に限定されるという留意をつけております。
ここで言われている「強制許諾」というのは、保護の例外には幾つか種類があるのですが、その中で特定の条件の下に権限のある機関によって強制的に与える特別の形式の許可、ということで一般に理解されているということです。この定義にあてはめますと、文化庁長官の裁定制度も手続の外形からするとこの類型に当たる可能性があるということでございます。
ただ、中身を見てみますと、同じ裁定制度といいましても現行の制度上3種類ありまして、67条の権利者不明の場合の裁定制度、それから68条、69条にそれぞれ放送やレコードの利用につきまして、協議が成立しない場合でも使えるという裁定制度がございます。前者につきましてはそもそも協議のしようがないという場合でして、また利用を廃絶しようとしていることが明らかな場合には裁定してはいけないというような規定もありますので、協議不調の場合の裁定制度とは多少性格が違うというようにも考えられる部分があるのかと思っております。
この違いにつきましては、例えば著作権関係の条約のところで見ますと、68条と69条の協議不調の場合の裁定制度については著作権関係条約で根拠規定が特別に定められておりまして、そういった意味でも条約上も多少取扱いの違いがあるのかどうかと気になるところでございます。この辺りにつきまして、「ローマ条約」でも同じような考え方があったのかどうか、まだ調べる余地が残っているのではないかと思っております。
実際、諸外国では、カナダあるいはイギリスのように著作隣接権に関係する部分の裁定制度を設けている国もありますので、そういった国もある中で本当にできないのかどうかさらに研究の余地があるのではないかと関係機関と調整を続けております。
なお、「ローマ条約」以外の関係する国際約束では、どういう基準が採用されているのかについて簡単に整理しております。
1つは「実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約」ですが、こちらは強制許諾について特に言及がなく、著作権の制限と同一の種類の制限であること、それから「スリーステップテスト」の基準に合致すれば保護の例外を設けることができるということになっています。
WTO設立協定は、「ローマ条約」の認める範囲内であれば保護の例外を設けることができるということです。
次は10月の小委員会ではご紹介しなかったものですが、仮にレコード製作者につきましても強制許諾を設けるということになった場合にはこの条約が関係してきまして、「レコード保護条約」ですが、こちらの中では「ローマ条約」と同じように強制許諾は一定の条件が満たされない限り認めることができないというような厳しい条件がつけられております。
結局のところ、ここの部分はもう少しお時間いただかなければはっきりしないのですが、ただその結論を待っていると相当先になってしまうかもしれないということもありまして、今回の議論のポイントでは、仮に、ということでご議論をいただければと思っております。
まず1点目は、仮に権利者不明の場合の裁定制度について、国際約束に抵触しない形で実施することが可能であるとしたらということで、その場合には文化庁長官の裁定制度を著作隣接権についても創設することとしてはどうかということでございます。
その次のイは、もし条約との関係でそれが難しいとしたらという場合ですが、裁定制度ではなく、ほかの権利制限規定と同じように国が関与しない仕組みでの制度を何らか設けることが考えられるのかどうか。こういった形でご議論いただければと思っております。
また、10月の引き続きですが、実演家のほか、レコード製作者、放送事業者などについても同様の制度を想定すべきかどうかという点について引き続きご議論いただきたいと思います。
資料4につきましては以上でございます。
引き続きまして、資料5以降についてご説明をさせていただきたいと思います。著作隣接権に関する裁定制度は10月からの引き続きの課題であったのですが、そのほかの利用円滑化策について、まとまった議論をしていない項目が幾つかありますので、それについて資料5以降をご用意しました。
まず資料5ですが、こちらは昨年第1回の小委員会で大村委員から宿題をいただいていたものでして、各国が保護期間延長の際にどういう交換条件をつけて延長したのか、どのような代替措置があったのかについて外部に委嘱して文献調査をして調べてもらったものです。それぞれ死後50年に延長したときと、死後70年に延長したときについて調べております。
ドイツにつきましては特に延長時に代替措置としての何らかの利用円滑化方策を設けるというような議論は見つけられておりません。
フランスでございますが、フランスも50年のときには特に議論はないのですが、70年のときには若干新たな制度を導入しているようなものが見受けられます。
まず、著作物利用に関して裁判上の統制を可能とするという制度を設けております。著作者の相続人による権利行使の濫用とか、相続人の不存在、不明といった場合については、裁判所に申立を行い、裁判所があらゆる適切な措置を命ずる判決を出せるという規定でございます。条文につきましては7ページに記載しておりますので、適宜ご参照いただければと思います。
それから2番目としましては、映画の著作物の保護期間算定についての著作者確定の簡略化という措置が行われております。共同著作物の保護期間はご案内のように、共有の著作者のうちの最後の生存者の死亡時を基準に計算されますが、この規定では映画の著作物の保護期間についてはどれだけ共有者がいようとも、脚本、台詞、音楽著作物、監督、この4つの要素の最後の生存者の死亡を基準に計算する、ほかの要素については考えないというような方策がとられております。なお、この措置につきましてはフランスだけではなく、EUディレクティブに基づいた措置という側面もありますので、ドイツやイギリスを初め、ほかの国でも導入されております。
それから、フランスでは段階的に発表される著作物が20年以内に発表し終わった場合には、全体として最後の発表のときから保護期間を計算するという特則があったのですが、その優遇措置を廃止するということも行われております。
引き続きましてイギリスですが、イギリスは50年のときには特に議論は見当たりませんでした。
70年のときも代替措置としての利用円滑化方策そのものはあまり見当たらなかったのですが、経過措置として幾つか規定が設けられております。特にイギリスでは一度消滅した保護期間を復活するということが行われていますので、それについての経過措置として、復活する以前になされた取決めに従って行われた行為であれば著作権侵害にならないというような規定を置いているようです。
それから、イギリスでは70年延長時自体ではそれほど議論はなかったのですが、その後議論がいろいろあるようです。中身につきましては昨年の第5回の小委員会で今村哲也先生からご発表いただいたものと同じですが、ガワーズレビューというもので、利用円滑化も含めていろいろと調査が行われております。中身としては下の3点です。権利者不明の著作物の利用を認めるための何らかの措置を提案すべきではないかといった内容とか、どこまで調査すればいいのかというようなガイドラインを発行すべきであるとか、あとは著作権登録システムを構築すべきと、そういった提言がなされているようでございます。
次にアメリカに移らせていただきます。アメリカは1976年に50年に延長しているわけですが、この延長にあわせて導入されている制度として、善意侵害の場合の法定賠償の減免という措置がとられているようでございます。具体的には、侵害者が侵害に当たるということを知らなかった、もしくは侵害行為でないと信じているような場合には法定賠償額が減額されるということ。それから、図書館について特に規定を設けておりまして、フェアユースであると信じているような場合には支払が減免されるという措置が設けております。
なお、1976年のアメリカの法律といいますと、このほかに有名なフェアユース規定などが明記された年でもあるのですが、ご案内のようにフェアユース規定は判例法理を単に明文化しただけといわれておりますので、延長の代替措置ということでこの規定が設けられたということではないと思われます。ただ、その後の70年延長の際には、延長の正当化根拠などにもなっているようでして、そういった規定がこのときに設けられていたということで追加でご紹介いたします。
それから、70年の延長時ですが、こちらは明確に70年に延長することの代替措置であろうと思われる措置が合わせて行われております。図書館や文書資料館における利用の場合の権利制限規定でして、下の3行ぐらいに具体的な中身が書いてありますが、保護期間の最後の20年に限った特例措置でございまして、50年以降70年までの間の著作物の利用については、商業利用ではないもの、それから合理的な価格で市場で入手できないものについては図書館が著作権者の許可なく複製などを行うことができるという規定を設けているようです。
また、アメリカでは延長後に非常に活発な議論が行われておりまして、特に「孤児著作物」、これは権利者不明著作物と言い換えてもいいかもしれませんが、といわれる著作物についての対応がさまざま検討されておりまして、幾つか立法的な検討も行われております。いずれも実現しているものではありませんが、簡単にから
まで記載しております。
は、パブリックドメイン強化法案、通称エルドレッド法案などともいわれているものですが、50年間までは無方式で保護を与えるけれども、その後は登録を行って1ドルの補償金を支払う。10年ごとにそれを繰り返して、更新が行われなかった場合には著作権が消滅するという措置をとってはどうかという案でございます。この法案の目的として、古い著作物の著作権者は容易に判断し得るようにする、要するに登録をさせるインセンティブをつけるというような目的もその中の1つだったといわれております。
と
は同じもので、第5回の小委員会で今村哲也先生からご報告があったものでございます。具体的には権利者不明著作物について真摯な調査を行った場合には、その後の損害賠償などが一定程度制限されるというような内容の提案でございます。
このように諸外国で延長に伴いましてさまざま利用円滑化策が講じられているわけですが、全体を総括いたしますと、大きく2つであると思っております。まず図書館などの非営利利用とか商業的に価値のないものの利用の自由度を高めるといった問題意識が1点あるかと思われます。もう1つ全体として問題視されているのは、やはり権利者不明物が増えることへの対応。共通して見てとれる問題意識はこういうことではないかと思っております。
資料5については以上です。
このように諸外国で、全体として権利者不明の対応が中心的な位置づけを占めている場合が多いことが分かりましたが、それを受けて権利者不明の場合の対応策として、裁定制度以外も含めて全体を横並びで比較検討してみてはどうか。そういう観点でつくったのが資料6でございます。
今までの小委員会でのご意見については、無料での利用や、簡易迅速な利用を意図している場合などでは、裁定制度は費用や期間もかかるのでなかなか使いづらいのではないかというご意見がございました。具体にも、使用料を自主的に積み立てておくことによる対応とか、イギリス、アメリカで提案されているような新たな制度を導入してはどうか、あるいは権利制限規定によって対応すべきではないか、そういったご意見が出てきておりました。
それぞれ簡単に見てみますと、使用料の積み立てによる対応に関しては、関係者間でファンドをつくればいいのではないかとか、権利者に代わって許諾を出せるような管理センターのようなものを考えてはどうか、保険などでカバーしてはどうか、そういった提案がございました。
それから、英米型の新たな制度を設けてはどうかというご提案。
権利制限についての対応については、フェアユース規定のような枠組みを考えるべきではないかとか、二次創作などに関する権利制限を考えてはどうかというご意見もございました。なお、権利制限についてはこの小委員会ではなく法制問題小委員会で検討すべきというご意見もございました。
これらのご意見を踏まえまして、諸外国の状況について整理をしております。権利者不明の場合に利用できる関連制度ですが、まずアメリカは、先ほど資料5で紹介したものですが、図書館、文書資料館などにおいての最後の20年間についての権利制限規定があります。
イギリスでは、合理的な調査によって著作者の身元を確認することができないというときには侵害とならないという規定が置かれております。2番目の実演の強制許諾制度、こちらは資料4でご紹介したものでございます。それから3番目で、これはまた興味深いものでございますが、合理的な調査によって著作者の身元が確認できないときには、著作者が知られていないものとして扱うということになっております。これはどういう効果があるかというと、著作権の保護期間の算定期間が死後ではなく公表時から計算される、そういう効果があるわけです。そうすると、捜索する人によって保護期間が変わってくるということになって、どういう形で運用しているのか疑問ではありますが、こういった制度も例としてはあるようです。
カナダについては日本と同じように裁定制度が設けられております。資料4でご紹介したものです。
その他の国々ですが、一般の権利制限規定での対応があるということ、また、特徴的なのは北欧諸国ですが、代表的な集中管理団体から許諾を得ると、その団体が権利を管理していない権利者に対しても合意が拘束力を有するという制度を設けているようです。
以上が現行制度ですが、そのほか、アメリカ、イギリスにおいて、何度も繰り返しになりますけれども、新たな権利者不明の場合の制度が検討されているところです。後ほど詳しくご紹介いたします。
それから、我が国におきましても日本経団連においていろいろ権利者不明時におけるクレーム対応機関について検討が行われているということです。
こういったさまざまな制度、提案を踏まえまして、今回の議論のポイントとしましては、我が国が採用している現行裁定制度とのメリット、デメリット、その違いをどのように考えていくのかということと、先ほどの著作隣接権の裁定制度につきましても、裁定制度の拡充で考えるのか、それとも別の形を考えるのかというような論点をご提示させていただきましたが、そういった議論にどう反映していくべきなのかということで、関連づけてご議論いただいてもいいかと思っております。
それで、各制度・提案について比較をしてみたのがその資料6の最後のページの表です。今の日本の裁定制度、カナダの裁定制度、イギリス、アメリカでそれぞれ提案をされている制度、それから日本経団連で検討されているもの、それぞれを比較して整理してみました。
制度の構成については、日本とカナダは裁定制度でございます。イギリスは権利制限、アメリカは事後の救済制限。日本経団連につきましては事後の請求について対応する機関をつくる、そういったものです。
これらをざっと整理すると大きく2つに分かれまして、法的効果のところですが、左の3つはあらかじめ侵害ではないことにするタイプです。アメリカより右は事後解決型といいますか、要するに侵害としたまま、事後に解決をはかるというタイプでございます。
以下は具体的な要件です。権利者捜索のための努力の程度について、左4つの提案は大体同じですが、右端の日本経団連での検討では相当の情報、実績を有する団体による調査でやろうということでございます。
それから、支払額につきましては、これは5つの提案ほぼ一緒でございまして、通常の使用料に相当するような額、合理的な額という形にされております。
ただ、事前に支払うか事後に支払うかということで差がありまして、日本とカナダ、日本経団連は事前に支払が必要という制度で、イギリス、アメリカにつきましては事後に、権利者が判明したときに支払えばいいという制度でございます。
事前に支払うという制度では請求がなかった場合にはどうなるのかということですが、日本は国庫帰属になります。カナダにつきましては事前の支払が寄託された集中管理団体がそのまま使うことができるという形になっております。また、日本経団連の場合は、見つからなかった場合には返還をするという形になっております。
差止請求、刑事罰のところでは、日本、カナダはもともと侵害ではないので特にこちらの規定は関係してきません。イギリスの場合は、イギリスは侵害ではないのですが、権利者が判明した後につきましては権利者の了解がない限り継続はできないというような形式でございます。ただ、その後で一定の場合には利用が継続できるというような措置もとられているようでございます。アメリカの場合にはもともと侵害ですので差止めは可能ということですが、一定の場合には引き続き利用ができる場合があるといった形になっております。
こういったさまざまな制度、提案につきまして比較整理をしてみましたので、ご議論の参考にしていただければと思っております。
説明が長くなりましたが、以上でございます。よろしくお願いいたします。
【野村主査】
どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの説明につきましてご質問、ご意見がありましたら自由にご発言をお願いします。生野委員、どうぞ。
【生野委員】
資料4の3ページ目の3.の議論のポイントで、国際条約との関係に関してはさらに調査が必要だということでそれを待つということですが、それが仮にクリアされた場合、アで著作隣接権に関しても裁定制度を創設することとしてはどうかとあります。この著作隣接権に関しての裁定制度の必要性が実態的にどの程度あるのでしょうか。著作隣接権に関していろいろ調べたけれども分からないというのが、相当な努力のレベルまで調べた結果なのか、著作権にかかる裁定制度で求められる要件程度に調べた結果なのか。その辺りについて実態がどうなのか、どの程度のニーズがあるのかというのが見えないので、もし分かれば教えていただけますか。
【黒沼著作権調査官】
特にご議論が出たのは過去の放送番組の活用の際の議論だと思います。その際、今までで出てきた議論としましては、例えば代表的な管理団体でいろいろとつてをつたって調べたけれども、もう既に俳優業を廃業しているなどでもうどうにも足跡がつかめないという場合があるというようなことがこの委員会でもご紹介があったかと思います。そのときに自主的な対応で済ませるのか、それとも何らかのものを、使うかどうか分からないけれども最終的に法的な措置がとれるという状況にしておくのかというようなご議論ではなかったかと思っております。
実際にやられている捜索がどのぐらいのものなのかというところは、すみません、詳しくは聞いておりません。
【野村主査】
梶原委員、何かこの点についていかがですか。
【梶原委員】
最初のヒアリングのときに資料をお出ししたと思いますが、放送番組についてやはり10年以上古いようなドラマ番組の場合に大体1割ぐらい、ちょっと数字は今覚えていませんが、大体1割ぐらいだったと思いますけれども、それぐらいが不明者になっています。当然我々のほうでも当時所属していた事務所あるいは権利者団体等でも調べていただいたけれども分からないといったケースがあるということで、放送番組の中の実演家の方々については実際に不明のケースが、特に古い番組についてはあるということでございます。
【野村主査】
よろしいですか。それでは、椎名委員、どうぞ。
【椎名委員】
今10年以上古い番組とおっしゃったんですが、やはり古いもので情報が分からなくなるというもの、いわゆる二次利用などを想定していなくて製作された番組でその権利情報が散逸してしまって分からないというものと、これから権利情報を集約しながら製作がされていくものとは明確に分けるべきだと思います。裁定制度というような恒久的な制度を設ける場合に、古いものに対する手当てのために、恒久的な制度までは必要ないのではないかということがあります。
そういったことを判断するために、生野さんもおっしゃったのですが、やはりどのような具体的な事例が、漠然としたお話ではなくて、どのような具体的な事例がどのような量存在するのかということをもう少し例を挙げながら検討していく必要があると思います。これまでも権利者不明の場合と一口に言われて、実はその中に実演家ではない一般の人の映り込みの話が混在していたりとか、実際に具体的な事例に当て込んで考えていくと話が成立しなくなっていったりするようなことも多々混入していると思います。そういったところの議論が必要なのではないかと思います。
【野村主査】
ほかにご意見いかがでしょうか。生野委員、どうぞ。
【生野委員】
先ほどの海外の裁定制度の事例の中で、イギリスは実演を対象として裁定制度を設けているということですが、著作隣接権の中でも例えばレコードが含まれていないのはなぜなのかということはお分かりになりますでしょうか。
【黒沼著作権調査官】
すみません、そこまでは調査がまだ及んでおりません。
【野村主査】
後ほど今後の進め方についても事務局からご説明いただきますが、次回もこの問題をさらに進めたいとは思っておりますが、今日の段階でいろいろご意見伺えれば非常にありがたいです。生野委員、どうぞ。
【生野委員】
仮に著作隣接権について裁定制度を創設し、レコードに関してもその対象となった場合、それが複製、販売されて、レンタルに利用された場合、レンタルの利用に関しては、一定期間経過後のレコードは報酬請求権なので強制許諾の手続きは必要ないはずですが、そういった利用に関しての扱いはどうなるのですか。
【吉田長官官房審議官】
隣接権について裁定制度を設ける場合に、今の67条の著作権に関する裁定制度との比較において、範囲を限定するのかどうか、裁定によって許容される利用方法ですね、そこのところに一定の限定をかけるのかどうかという議論は必要だと思いますけれども、現在の67条の裁定制度では利用方法についての限定は行ってはいないということがありますので、最大限それと同じような著作隣接権に関する裁定制度を設けるという可能性はあるとは思います。ですから、そのときにはレンタルとかというようなことまで及ぶ可能性はあるとは思います。
ただ、この裁定制度というのは、あくまでも一定の調査を行っても権利者がだれか分からないという非常に特別の状態を前提にしてどのように合法的な利用ができるかということを探っていこうとしているわけですね。だから、先ほど実態がどうかという話がありましたが、恒常的に一定の量として存在し得るような利用方法の世界とは違う世界の話だということをまず一つ押さえておく必要があるのではないかと思います。
例えばある利用方法について権利制限というような手法を導入するときに、その必要性がどの程度存在しているのかということをある程度定量的にも把握をした上で考えていかなくてはならないということはございますが、権利者不明の場合、先ほど梶原さんのほうからお話がありましたように、ある程度の数は想定され得るわけですが、それが常にある時点において一定量存在するかということについては必ずしも明確ではない。そういう意味ではこの制度というのは一種のセーフティネットのような性格の制度であるということを踏まえた上でご議論いただいたらどうかと思います。
【野村主査】
椎名委員、どうぞ。
【椎名委員】
セーフティネットという意味はすごくよく分かるのですが、そうすると、定量的な分析、具体的な分析が必要ないということですか。
【吉田長官官房審議官】
もちろん一定程度それが存在し得るということは前提でございます。そういった意味で梶原さんのほうからお話がありましたように、少なくとも10年以上たった放送番組については1割程度の実演家の不明といったものがあり得るのだということですから、そういった事態に備えるためにセーフティネットとしてのこの制度を何か考えなければいけないのではないかということです。
【野村主査】
ほかにご発言いかがでしょうか。椎名委員、どうぞ。
【椎名委員】
先ほど申し上げたことのほかに、やはりコンテンツ、とりわけ放送番組、放送コンテンツの利用の円滑化というのはあちこちで話がされていて、流通が進まないことにはさまざまな要因がある、あるいは著作権がネックになっているとか、あるいはビジネスニーズがないとかあるとかいろいろ言われるわけですけれども、権利者側からもコンテンツホルダーからも情報を集約していくことが、なにより利用の円滑化のためにはマストなわけですよね。そういう途上にある中で、そういう努力を迂回できる楽な制度というのができてしまうと、今度そういうシステムができ上がっていかなくなるという懸念を持っています。それであればどういう制度になるべきかというのはやはり具体的な事例を挙げていかなければ検討ができないのではないかと思います。
例えば、一定の努力をした結果とかということがどういうことを意味するのか、ということをきちんと検証した上でないと、ただいたずらに、必要な手続を省略するための制度になっていってはいけないと思うのです。
【野村主査】
生野委員、どうぞ。
【生野委員】
吉田審議官から裁定制度というのはセーフティネットを趣旨としたものと、それは非常によく理解できるのですが、実際裁定にかかって世の中に出ていった場合、その恒常的な利用と、そのセーフティネットとしての利用、これが区分けできるのかどうなのか。いわゆる一般のビジネスと同じような使われ方をされるのではないかと思うのですが。お話をよく理解してないのかもしれませんけれども。
【吉田長官官房審議官】
それは当然商業的な利用という場合もあり得るわけですね。ただ、その特定のレコードについて、仮にそのレコード製作者が不明であるということになりますと、今の仕組みの中では他の権利制限規定か何かに該当しない限りは、許諾がとれない以上それを利用することは違法ということになりますから、そのレコードについては世の中に出ていかないということになります。もちろん権利者が分かっているものについては、普通の許諾システムなりでやっていけばいいわけですけれども。
ですから、通常の利用を妨げるかどうかという点を生野委員はご懸念なのかもしれませんけれども、当該レコードが何か代替的な許諾を与えるようなシステムがないがゆえに、世の中に出ていかないことによる社会的な不利益をそのまま是認していいのかどうかというところだと思います。
【野村主査】
三田委員、どうぞ。
【三田委員】
現行の裁定制度というものは、基本的に著作者を守るということを前提とされて、だからなるべく利用者が使いにくいようにしようというようなコンセプトでつくられているように思います。つまり、まず申請をするだけでお金がいるとか、それから相当な努力というのもかなり厳しい努力が必要であるということを前提としてシステムができている。それから、供託金を取られて、権利者が現れなかったら国が取ってしまうとか。こういうシステムのすべてを見ると、利用者にとって使いづらいようなシステムにしておけば利用がないだろうと、これが著作者を守ることになるというようにつくられていると思うんですね。
これから検討しなければならないのは、利用の円滑化というコンセプトでやるわけですから、抜本的に考え方を変える必要があるだろうと思います。ですから、まず申し込みにかかる費用というのはゼロでもいいのではないかと思いますし、供託金も、諸外国の状況を調べていただいたら、権利者が現れてから事後に払えばいいのだと、これは使いやすいシステムになっていると思います。それから、著作者、権利者を探すための相当な努力というのもなるべく簡略化するような、その方法として例えばイギリスでは任意の登録システムとかデータベースとかいうものをつくりなさいという指令が出ているわけですけれども、これを裏返せば、そのデータベースや登録の状況を見るということが相当な努力になるということで、そこになかったら裁定制度に移行できるというようなことであろうと思います。
日本でもそういうシステムができれば大変利用しやすいものになるだろうなと思うのですが、私が疑問に思うのは、例えばイギリスでこういう制度ができたとして、例えばフランスでこれを使うというようなことがあるんだろうか。例えば英語の原典をフランス語に翻訳したようなものがあって、それが相当期間経っているというようなものをイギリスのデータベースを見て探すということを相当な努力と考えてフランスでも使えるようになるのか。例えば日本で翻訳の古い文献を利用するといった場合に、このイギリスのデータベースを見てなかったらもう使っていいのかとかそういう外国のものはどういうことになっているのだろうかということを分かる範囲で教えていただきたいと思います。
【黒沼著作権調査官】
詳しい運用状況まで調べているわけではありませんけれども、翻訳物ということであれば原作者の捜索と、それから翻訳者の捜索とそれぞれ必要になるかと思います。原作者の捜索をするという意味ではもちろんイギリスのデータベースを使うということが相当な努力と認められる場合も、実際の運用は分かりませんけれども、理論上は当然あり得るかと思います。
【野村主査】
ほかに。里中委員どうぞ。
【里中委員】
今の三田委員のお話でちょっと不安になったのですが、もちろんいろいろ著作物なり何なり使いやすいほうがいいのですけれども、この権利者不明の場合、イギリスとアメリカが事後となっていますよね。支払が事前じゃなくて事後、権利者からの請求によると。こういうことで例えば権利者が出現して判明して、判明した時点で利用した業者が倒産してしまっていて支払えなかったとかいろいろあったりするのではないかと思います。中にはもうそれを最初から考えて詐欺まがいのこととか。ありとあらゆる事態を想定してしまうのですが、そういうトラブルってないものかどうかという例がお分かりでしたらお伺いしたいと思うのですが。
【黒沼著作権調査官】
イギリスとアメリカの制度につきましてはまだ導入されているわけではないので実例があるわけではございません。ただ、事後の支払ということであれば、この制度の場合だけではなく今の権利侵害の場合はみな同じことですので、支払能力がなくてトラブルになるというようなことはもちろんあるのかとは思います。
【野村主査】
梶原委員、どうぞ。
【梶原委員】
実際に放送番組の流通をしている利用者にとっては、とにかくリスクをなるべく少なくしたいと思っています。ですから別に裁定制度でなくてもいいのですが、実演家が不明の場合は経団連の枠組みの中である一定の合意をしましたけれども、ただそれも最終的には完全にリスクがゼロではないということなので、例えば資料6の最終ページの表にありましたけれども、9番とか10番の差止めの可否とか刑事罰のところで何らかこういった努力をしていれば刑事罰に問われないといったことも1つ考えられてもいいのかなと思います。全くゼロということが難しければ、そのリスクをかなり軽減するような方法がないのかなということも思ったりしております。
【野村主査】
上野委員、どうぞ。
【上野委員】
先ほど審議官からもお話がございましたけれども、形式的にみますと、裁定制度というのは、権利の内容や制限とは異なりまして、本来は権利の範囲内であるにもかかわらず、これをいわば強制的に許諾させるというものですから、――もちろん権利者不明の場合と協議不調の場合とで多少の違いがあるとしましても――、これはやはり著作権法における大きな例外であるということになろうかと思います。
ただ、著作隣接権について裁定制度を設けるといたしましても、個別具体的にどのような条件を加えるかによって、条約の適合性であるとか、その妥当性であるとか、変わってくるのではないかと思います。
例えば、裁定の対象となる客体をどうするかという問題があります。現状では著作権法67条から69条までの3つの規定が裁定制度となっているわけですけれども、そこではいずれも著作物が客体になっております。そこで、その客体について、例えば実演を加えるかどうかとか、あるいは視聴覚実演だけを加えるかとか、いろいろ選択肢があろうかと思います。
また、裁定制度の対象となる主体をどうするかという問題もあります。現状の規定の中でも、著作権法68条の主体は放送事業者に限定されております。そこで、新たに裁定制度を作るといたしましても、その主体をどうするかについてさまざまな選択の幅があるでしょう。
また、行為につきましても同様であります。つまり、「利用」行為一般が含まれるものとするのか、それとも「放送することができる」とするのか、「公衆送信」一般ができるとするのか、いろいろな定め方が考えられると思います。現状の著作権法68条も、放送の公共性に鑑みて特別の措置をしたものとされているわけですから、新たに裁定制度を設けるとしましても、例えば、インターネット配信は裁定の対象にしないけれども、放送だけは裁定の対象にするとか、きめ細かい規定をつくるということも可能ではないかと思います。
さらには、裁定が認められる条件につきましても問題となります。現在では、権利者不明の場合というのがもっぱら議論されていると思いますが、場合によっては、協議不調のケースというのも考えられなくはないと思います。協議不調の場合における裁定は、現状もすでに著作権法68条および69条として入っているわけですから。もちろん、68条、69条というのはこれまで現実の裁定例がないわけですから、それは極めて例外的だということかもしれませんし、先ほどのご報告によりますと、諸外国における著作隣接権に関する裁定制度もやはり権利者不明の場合だということですから、協議不調の場合における裁定を新設するのはなかなか難しいのかもしれません。
以上のように、仮に著作隣接権について裁定制度を設けるといたしましても、客体、主体、行為、条件といった観点から幅広い選択肢が考えられますので、個別具体的にきめ細かな条件設定をすることによって適切な立法をすることが検討されてもいいのかなと思います。
そして、そうした条件設定をすることが、著作隣接権について裁定制度を設けることの条約適合性を担保することにもなろうと思います。つまり、裁定の対象となる客体が限定されていればWPPT違反にならないのではないかとか、裁定の対象となる行為が限定されていればローマ条約違反にならないのではないか、というわけであります。今後はそういった観点から検討を進めていけばよろしいのではないかと思います。
【野村主査】
それでは、瀬尾委員、どうぞ。
【瀬尾委員】
これは今日初めての会合なので確認ですが、今までやはりこういった小委員会の中ではどうしても法改正ということが最終目的になりがちではないかと思います。ただ、私はこの小委員会においても、今裁定の話が出ていましたが、裁定をセーフティネットとすると。これをただどんどん使いやすくしていくとザルになってしまうのではないかというところが非常に悩ましいところだと思います。ただ、今の議論の中で、不明の場合にもっと使いやすい裁定制度をという声があることも事実だと思います。
そういうことを解決していくのに、単に法律を改正することだけではなくて、もっと制度的な運用とか、例えば民民の機構であるとかそういうところまで踏み込んだ提言、例えばこういう組織が必要なのではないか、こういうふうに運用したらいいのではないか、そしてそのための立法措置はこういうことが必要なのではないかという総合的な提案というのをこの小委員会でしていければいいのかなと。ただ、そういうことでよろしいのかどうかをここで確認したいということが1つあります。
興味深かったのは、資料5の4ページですか、図書館が主体になって、4ページ、(2)の2つ目の下ですか、最後の20年においては図書館が著作権者の主体となってこういうことを行うことができると、図書館という制度と組み合わせてあるところがすごくおもしろいなと思いました。このように複合的な策を講じていかないと、単純に裁定制度をどんどん簡便化していくことについては、私はやはりちょっと危険だと思っております。
また、先ほどの強制許諾のようなことにしても、私は第三者機関の設置による強制許諾ということについては可能性を考えておりますが、ただ相当分野を狭めていかないと汎用的なセンターの設置なんていうのはやはり、これは私は危険性が大きすぎると思いますので、個別の場合において1つ1つの運営と立法、総括的な策をここで論じられたらよろしいのかなと。また、そういう方向で話していって皆さんのコンセンサスとしてよろしいのかどうか、そういうことは最初にここで伺いたいところだと思います。
【野村主査】
何か事務局のほうからありますか、委員会の役割というか、法改正以外の部分まで視野に入れるかということですが。
【黒沼著作権調査官】
こちらの委員会の議論は法改正だけに手段を限定するという制限は特にございませんので、幅広に運用面も含めてご議論いただければとは思っております。
なお、今ほど資料5の4ページの図書館に関する措置挙げていただきましたけれども、アメリカではこういった規定があるにもかかわらず、これだけでは結局汎用性がなくて使えないのではないかということで今さらなる議論が行われているということです。とはいえ何でも使える制度でなければいけないということを申しているわけではなく、いろいろな要件をつけるということはもちろんあり得るとは思いますが、アメリカではそういう議論になっているということで念のため申し上げます。
【野村主査】
よろしいですか。どうぞ、佐々木委員。
【佐々木委員】
皆さんご承知のとおり、今の新しいデジタルコンテンツ流通のしくみですと、非常に大量のコンテンツが常に利用されるような仕組みが日々進化しております。こういった中で、例えば音楽なんかでも10万曲、100万曲、200万曲という巨大なサービスが始まっているわけです。我々も利用者側の立場で以前にもお話しさせていただきましたけれども、1曲の中の権利が非常に細分化されている場合、もしくは1つのコンテンツの中に非常に細分化されている場合、どうしてもリスクとして一部の著作者が分からないとかそういったことが、事前に分かればいいんですが、どうしても後で分かるという形が多いのです。
先ほど吉田審議官がおっしゃったセーフティネットという考え方非常に重要でして、こういった流通システムが円滑に運用されるためには何らかのセーフティネットがないと実務上なかなか難しくなってくるというもの事実ですので、裁定制度はもちろんですが、瀬尾さんがおっしゃったような意味はそういった仕組みもやはり知恵としては必要ではないかと思っております。
いずれにしてもそのどちらか一方がリスクを負うという形ではなくて、社会の著作権と著作物の流通の全体の調和の中でみんなが使いやすい、また何かあったときでもそのリスクが巨大化しないようなセーフティネットというのはやはりこういう時期にしっかり議論してつくっていく必要があるのではないかと思っております。
【野村主査】
野原委員、どうぞ。
【野原委員】
まだご説明いただいていない資料7についてはこの後ご説明いただくのでしょうか。
【黒沼著作権調査官】
すみません、資料7の説明は省略をしてしまったのですが、9ページ以降に書いてあるのが日本経団連での権利者不明の場合のご検討でして、資料6の表のほうに大体中身は盛り込んでいるつもりでございます。
【野原委員】
そういうやり方も変えましょうという発言ですが、私は今資料7の9ページ、10ページ、全体も拝見させていただいたのですが、まさに9ページ、10ページのところでは今議論している権利者不明の場合どうするかということをこちらはこちらで検討しているわけですよね。同じテーマに対して違うメンバーがこのようにそれぞれ議論していて、そのまま平行に走って全然世界観でいても仕方がない気がします。
こちらの資料7の9ページ、10ページのほうを拝見しますと、メンバーや事務局の方のスタンスの違いもあるんだと思いますが、非常に積極的に、そもそも「映像コンテンツ大国の実現に向けて」ですから、非常に積極的にコンテンツの流通を促すためにどういう体制をつくったらいいのだろうかということを議論されていると思います。
その中で、10ページの2つ目のカテゴリに、まさにこの文化庁の過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会でこの裁定制度の検討が行われているけれども、現時点ではそれが決まってないのでということで、まさに裁定制度でやるべきところと、そうではなくて、では民間でどうするかといったようなところが議論されているわけですよね。
できればというか、この内容とここで出すものとがもっと連携すべきだと思うんですね。例えばここでどういう議論がなされてどんなことが問題だというように具体的に、こちらのほうがとても具体的にどういう場合にどういうことをしていったらいいということが非常にイメージできるような形でアウトプットされているような気がします。
今日ご説明していただいた内容というのは確かに制度的な説明はあったかもしれませんが、何人の方がいろいろな言葉でおっしゃっているような、実際にどんな内容のことをどのように扱うのかということが非常に分かりにくいといったこともありまして、もう少しそういうトーンで議論がしたいということです。
もう1つ、せっかく同じ議論をやっている研究会があるのですから、もっと交流できないだろうかということです。例えばここでやってくださった方に説明いただいても構わないのではないかと思います。そういった意見交換についてはどのように考えていらっしゃるのか、ぜひ事務局の方の意向をお聞きしたいです。
【黒沼著作権調査官】
私の説明が至らない点についてはまずお詫びをいたしたいと思います。なるべく実態を踏まえたご説明ができるように勉強したいと思います。ただ、日本経団連の検討の場にも文化庁のほうからオブザーバー参加させていただいておりますし、そちらで検討されている内容については我々としてもフォローしているつもりでございます。両者の関係は、基本的にはこの場は最終的に制度改正を行うといった手段をとり得る検討であるのに対して、民間のほうではどういう法制度ができようと、制度への対応をどうするかの話し合いが必要になったり、お互いの話し合いによって制度と違った運用をすることも可能ですし、民間で別の検討がある部分というのは当然どうしても出てきてしまうものではないかと思っております。
【野原委員】
もちろんそれはよく分かっておりまして、お互いが積極的に検討していくということがとても重要だということをむしろ私は申し上げているわけで。その際に、もう少し具体的な実際のビジネスの状況とかコンテンツのやりとりのイメージができるような議論になっていくためにも、例としてこの研究会で実際に議論してらっしゃる方にどなたかに来ていただいて意見交換するというようなこともあるでしょう。今事務局の方は同席してらっしゃるかもしれませんが、それはこの場にはほとんど何の影響も及ぼしていないと思うので、もう少し意見交換するというようなことをするなどによって、この場がもっと具体的な議論になっていくといいなということを申し上げておきます。
【野村主査】
梶原委員、どうぞ。
【梶原委員】
私も研究会に委員で出ておりました。こちらの研究会は実際に実務をやっている人たちが集まってかなり細かい具体的な議論をしていたので、さらに実務上どんどん進めていかなければならないということで、ある程度お互いが妥協できる部分は妥協できるし、若干リスクがあってもやろうという話も出てきてこういった報告になったわけです。確かに両方出ていて、やはり文化庁の議論になるとなかなか進まないかなという感じです。民間の中でやっていると早く結論づけないとコンテンツの流通が進まないということで、研究会ではこういう報告になっています。
私もこちらの委員と両方やっていてなかなか難しい立場ではあるのですが、何かご不明の点が、この報告の部分についてあれば、またお答えはしたいと思います。
【瀬尾委員】
こちらは主体が経団連さんの会議ですよね。社団である経団連さんは大変大きな団体ではありますし、日本の産業を代表するところのご意見ですから、非常に参考になるし、先ほどのお話じゃないですけれども、いろいろ伺ったらいいと思います。
ただ、写真でもいろいろ社団がありますが、社団がやる会議や提言を、この委員会が同等に扱ってしまうということは大変危険であると思います。参考にするべきではありますが、ここでもし法律がこの流れによって改正されたとしても、例えば音楽や写真、美術や文学にも全部に及ぼされる影響があって、そういう意見が反映されてないんですね。ですから、1つの側面からの意見として十分に重要視することはあると思いますけれども、例えば法制度全体に対しての影響を考えると、やはりいくら経団連さんの意見でも一意見としてまず考えるほうがいいと思います。
しかし、経団連さんのここまで煮詰められた議論というのはかなり詳細だし、私も先ほど申し上げたように参考になる部分はたくさんありますので、そこを聞くことはいいのではないでしょうか。ただ、組織的な違いをきちんと考えて分けていかないと、これを並列に考えてしまうと違うかなと思います。
【野原委員】
おっしゃることは私も大賛成で、別にこのとおりやりましょうとか言っているわけではなくて、もう少し全体像が必要なんですよね。どんな社会になっていくかとか、どんな法制度があり、どんな民間の活動があり、そしてどのように著作権が扱われているかという全体像が必要なわけで。そういう意味でも他のところで同じテーマを議論しているのであれば、もっと積極的に意見交換したほうがいいのではないかと思うんです。とても何かここで議論していても進んでいく気がしないのです。それは決してこのとおりやりましょうということを言っているのではなく、もう少しいろいろな外からの声をここにも入れて議論するというのも1つの手ではないかと思うので、できればぜひご検討いただきたいと思います。
【野村主査】
今までもいろいろヒアリングもしていますし、資料としてこういう形でも出てきていますので。
【野原委員】
それでも議論になかなか反映されないところがあるのではないでしょうか。
【野村主査】
ただ、先ほど瀬尾委員からもありましたけれども、経団連と協力してというようなニュアンスで言われるとちょっと難しいという気はします。事務局もアンテナを張っていると思いますし、むしろ団体のほうから積極的に文化庁への提言みたいなものもいろいろあると思いますので、そういったものもここではもちろん紹介されております。
【椎名委員】
やはり諸外国の制度をこうやって見てまいりますと、具体的な事例に対するソリューションとして、かなり細々と書かれているのかなと。先ほど梶原さんがおっしゃった、免責事項があればいいんだということもある意味で具体的な言及だと思うんですね。だから、そういうレベルの話にするべきであって、裁定制度を導入しますということをただ決めて、あとは法制局にお任せというわけにはやはりいかないと思うのです。だから、そのためには具体的な事例の検討が必要ではないかなということを申し上げているわけです。
【野村主査】
ほかにいかがでしょうか。事務局どうぞ。
【木村国際課専門官】
先ほど生野委員からイギリスの制度についてレコード製作者についてはどうなっているのかということでご質問いただいた件です。資料6の3ページ2.ののところにイギリスの制度について触れてございますが、文芸、演劇、音楽、美術の著作権について、合理的な調査により著作者の身元を確認することができない時には侵害とならないと、イギリス著作権法第57条で規定されております。イギリスの著作権法を見ますと、文芸、演劇、音楽または美術の原著作物と録音物、映画、放送また有線番組というのは別のカテゴリに分けられております。録音物の製作者は著作者として扱われるというようになっておりますが、録音物は第57条の対象となっておらず、第57条と同様の規定もございません。従って、レコード製作者に関する権利者不明等の場合の制度は今のところ存在していないだろうと考えられます。
【野村主査】
ほかにご発言いかがでしょうか。生野委員、どうぞ。
【生野委員】
参考までにお聞きしたいのですが、以前事務局のほうから裁定制度による利用の実績を報告していただいたと思いますが、裁定を利用して、その後権利者が現れたということは今まで皆無でしょうか、それとも一定の比率では登場してきているのでしょうか。
【川瀬著作物流通推進室長】
制度としては供託所に権利者が名乗り出て、そこで自分が権利者だということを証明して、供託所から使用料相当額をもらうということになっております。私どものほうにその通知が来るようにはなってないと思うのですが、多分今までそういうことで権利者が現れたけれどもどうなんでしょうかというような照会等もないように思います。ということですので、供託所に不明権利者が現れて供託金から自分の分を受け取られたという事例は、確定的には申し上げられませんけれども、あるとしてもごく少数、多分ないのではないかと推測されます。
【野村主査】
ほかにいかがでしょうか。三田委員、どうぞ。
【三田委員】
裁定制度についてはやはり法律の改正ということだけではなくて、どういう主体が裁定制度を運用するのかということまで具体的に考えていく必要があると思います。今ご紹介があったように、供託金を出してもそれを取りに来る人がいないというような状況で、それが全部国のものになってしまうというのは何か変という感じがします。例えばそういうお金をプールしておいて、申し出があったらあげるということにして、そのプールしていくお金がどんどんたまっていくようでありましたら供託金の金額を値下げするとか、あるいは逆にもっと安いクレーム処理費のような、10パーセントとかそれぐらいのお金を積み立てていって対応するとかいろいろ具体的なやり方があるだろうと思います。そうしますと、里中委員が言われたような、勝手に使われてその会社が倒産してしまうというような事態にも、その積立金を回していけばいいということになりますので、合理的はシステムを考えましたらいろいろなリスクは解決できると思われます。
ただ、それを例えば文化庁長官がやるのだということになるとあまり弾力的な運用ができないかなと。例えば第三者機関で利用者とそれから権利者、それから官は官で新たな機関をつくる側。それから、例えば図書館の利用に関しては図書館協会のような既にある機関が代行するとか、いろいろ具体的なやり方によって運用状況も変わってきますし、権利者の権利をどう守っていくかということも変わってくるだろうと思うのです。法律をただ改正すればいいということではなくて、具体的にどういうシステムをつくっていくのだということも十分に検討する必要があるだろうと思います。
【野村主査】
ほかにいかがでしょうか。特にこれ以上ご発言ないということでしたら、本日はこの程度にしておきたいと思います。
事務局のほうから今後の予定についてご説明をお願いします。
【黒沼著作権調査官】
資料8で今後の日程や進め方についてご提案させていただいております。
今回利用円滑化方策についていろいろご議論いただいたわけですが、次回につきましては、今ワーキングチームで検討中のその他の利用円滑化方策からのご報告をいただければと思っておりまして、それも含めまして利用円滑化方策全体のまとめ的な議論ができればと思っております。
それ以降につきましては、順次昨年10月の検討状況の順番に従って議論を進めておりますので、その後保護期間の関係のほうの議論に入っていければと思っています。第3回についてはある程度日程調整ができておりまして、5月16日を予定できればと思っております。
進め方について何かご指摘等ございましたらよろしくお願いいたします。
【野村主査】
何かご発言ございますか。
特にご発言がなければこのような当面日程で進めさせていただくということにしたいと思います。
それでは、最後に事務局から連絡事項についてお願いします。
【黒沼著作権調査官】
それでは、次回は、資料8にあるような内容をもとにしまして準備をいたしたいと思います。次回の日程はまだ調整中でございますので、決まり次第ご連絡をさせていただきたいと思います。
【野村主査】
それでは、本日は以上で終わりたいと思います。第1回の著作物等の保護と利用に関する小委員会を終わらせていただきたいと思います。
本日はどうもありがとうございました。
午前11時閉会
(文化庁著作権課)