b 図書館での保存のためのデジタル化が、著作権法第31条第2項の規定の範囲内かは議論が分かれており、劣化した資料等の保存、パッケージ系電子出版物の再生方式の変更への対応、インターネット情報のフォーマット等の旧式化への対応のため、マイグレーション等を含むデジタル化による複製、図書館施設内での利用が保障されるような措置が必要。
c また、その再デジタル化に伴う圧縮・解凍による同一性保持について柔軟な規定を検討すべき。
d 書籍が読み取りソフトの性能の問題から誤植のあるデータで保存されることがあり、これは同一性保持権についての問題が生じうるのではないか。書籍は劣化して変色等するため、新刊の時点で保存だけを目的としたなんらかの対応をとっておくべきではないか。
e 前述の裁定制度を簡略化について、アーカイブの利用については特に認めてはどうか。
(3)アーカイブの対象物、利用方法
アーカイブとして著作物そのものを収集・保存する場合の対象の選択については、次のような指摘があった。
a コンテンツに付帯する文献的価値を持つ情報も保存することで、コンテンツの文化的価値を高めることになる。
b 放送番組については、日々大量に製作されているものを全て収集することが現実的なのか。なお、放送番組だけではなく、その元になった脚本そのものにも着目しなければならない。
c 出版物については、絶版でも著作権が消滅するわけではなく、複数の出版社や印刷媒体以外でも出版されていることもあり、絶版かどうかは判断が難しい。アーカイブ化されると出版物として世に出る機会は少なくなり、出版文化の衰退につながるため、保護期間が経過したものに限るべき。
d 音楽配信については、公共のアーカイブスが現在の存在する事業を不当に妨げることも懸念されるため、収集するコンテンツの制限、利用方法(回線速度、利用回数等)の制限など調整が必要である。
そのほか、アーカイブの利用方法についても、次のような提案があった。
a エンドユーザーにとって、多様な著作物の入手のしやすさは重要であり、アーカイブに手軽に触れられる機会を増やすべきである。
b 特に、教育機関に広く公開されるべき。
c すべての障害者にとってアクセス可能な形式で、また利用しやすいシステムとしてアーカイブを設計すべき。
d アーカイブが一度できあがれば、それをインターネットで誰でも利用、閲覧できることとしても、経済的利益を求めていないような権利者の場合には、問題はないのではないか。