a 放送番組では、放送局において今後の放送番組の権利情報の管理に取り組んでいるが、二次利用が想定されていなかった過去のものについては、管理されておらず、権利者が誰なのかも不明な場合がある。また、外部制作の場合には、十分に管理できているか不明であり、メタデータ(権利者情報を含めたコンテンツ情報)を収集するシステムを構築中である。
b 映像制作会社のように小規模な会社では、メタデータの管理の余力がなく、支援が必要である。
c 脚本の分野では、ほぼ90パーセント以上の権利者の所在を把握できており、定期的に連絡も取っているので、権利者不明になることは、ほぼあり得ない。
b 著作者調査の「相当な努力」に多大な費用と時間がかかり、経済的価値に見合わない場合には限界がある。さらに、新聞、雑誌のように1点に出版物に多くの著作物が含まれている場合には、調査が特に困難であり、事実上、裁定制度の利用ができない。
このような現状に対して、次のような制度改善に関する意見があった。
a 手数料の減額や国の補助、裁定に特化した審議会や補償金の額を決定するための審議会について、分野ごとに著作物を類型化して金額をランク付けしておけば、時間が短縮されるのではないか。
b 事前の「相当な努力」についても、例えば文芸の分野では文藝家協会に登録しない者の大部分は経済的利益を求めていない者であり、非営利のアーカイブのような利用であれば、文藝家協会のホームページをチェックして名前がなければ、「相当な努力」を払ったことにする等、利用者に負担のないようなガイドラインを作成すべきではないか。
c 権利者が自ら権利を十分に管理していない場合には、比較的容易に利用を認め、後に権利者が現れたときに相当額が払われる制度や、供託金が国庫帰属でなく共通目的基金となるような新たな裁定制度を考えてはどうか。
d ある作品について裁定手続きが終了した後に、後から同じ作品を利用する第三者が、再度、調査等の手続を経ることは不経済であり、一人が調査を行った場合には、その結果が対世的に及ぶような方策を検討すべき。次の者には、著作物の利用目的の公益性が高い場合、利用態様が権利者を害しない場合には、料金の支払いのみで裁定を認めるべき。
a そもそも、第65条の規定は、共同著作物については共同の創作の意図があること等を背景としていることから、例えば、著作権者が著作者である場合とない場合とで「正当な理由」の解釈の判断を分けて、前者により強い拒絶を許容するなどとすれば、ある程度円滑化に対応できる可能性もある。
b 立法論としても、共同著作物以外の共有の場合にも第65条のルールを適用させる妥当性も考えなければならない。著作権が禁止権であることを考えれば、他の共有者の権利行使も禁止できていいという考え方もあり得るが、報酬請求権とのバランスを考えて、どこまで著作権に禁止権としての性質を認めるべきなのかという問題はやはり残るのではないか。
c 複数権利者が一つの財に対して権利を有している場合、「アンチ・コモンズの悲劇」として市場での解決は困難なことが立証されている。複数権利者のうち一部の許諾が得られない場合については、共有著作権の権利行使に当たり、一定の条件の下に利用が可能となる仕組みについて検討が必要である。
d 強制許諾のような行政の関与による措置や同意の推定規定、より簡便な裁定制度は考えられないか。
一方、一定の法的措置については否定的な見解もあった。
a 権利者の権利を制限するのは難しい問題であり、権利の集中管理を進めることによって、複数権利者の場合の利用円滑化の解決にもなるのではないか。
b 問題となるのは、一部の相続人の所在不明の場合であり、簡易な裁定制度ができれば、不安はほとんど解消するのではないか。
c 相続によって権利者が複数存在する場合も考えられるが、実際は、相続人が多数の場合でも、相続人の代表者との話で大体は解決がつく。