前提
そもそもの前提として、権利者不明が問題になる場面とは、著作権者等から利用許諾を得ようとする際に、権利者の所在情報が十分でないこと(またそもそも誰が著作者・著作権者なのか分からないこともある)により、利用許諾自体が困難になる場面であるが、そもそも、著作権者等から改めて利用許諾が必要となる場合とは、二次利用、すなわち既に製作されたコンテンツを別の用途で用いる場合、又はコンテンツ製作者とは別の者が用いる場合である。
ただし、同じ利用許諾のための交渉が必要となる場合の中でも、利用許諾交渉が必要となる対象の者が、利用しようとするコンテンツの制作に関わっていた者(制作関係者、原著作者や出演者等)である場合と、いわゆる「写り込み」(注1)の関係者である場合とで、その課題が大きく異なってくるほか、対象物についても、著作権・著作隣接権である場合と、肖像や思想・信条、名誉等の人格的利益である場合とがあるため、権利者不明の問題について一律に捉えるのではなく、これらを分けて認識しておくことが重要である。
- (注1) 街頭で映像の収録作業を行った場合に、一般人の肖像、看板やポスター等の美術の著作物、街頭で流れている音楽等が記録されてしまうなど、コンテンツの制作過程において、意図せずに収録されてしまうものを、一般に「写り込み」と呼んでいる。