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   資料4   

平成15年9月25日

委員   生野   秀年

レコード輸入権に関する関係者との協議の状況等について



1. 「レコード輸入権」を要望する背景及び理由
(1) 日本の音楽関係団体は、平成5年から財団法人音楽産業・文化振興財団(PROMIC)を通じ、北京、ソウル、上海などに日本音楽を無料で試聴できる「日本音楽情報センター」を開設し、日本音楽の普及・促進のための環境づくりを行ってきた。近年、特にJ-POPがアジアの若者に浸透しつつある中、9月16日には、韓国政府が第四次日本大衆文化開放として日本語のレコードの販売を来年1月から解禁することを発表するなど、日本の音楽を積極的に海外展開する機運が急速に高まっている。レコード通じて日本の幅広い音楽文化をアジア諸国に紹介することが可能になれば、日本及び日本国民への理解の促進とイメージアップに繋がるとともに、レコード産業のみならず産業界全体への経済的効果も期待される。

(2) しかし、日本のレコード会社が積極的に国際展開した場合には、日本よりはるかに安価なライセンスレコードが国内に還流することが懸念されるため、レコード会社は、ライセンス契約で販売許諾地域を定め商品上に「日本販売禁止」表示を義務付けたり、当該国の需要を超えた過剰な生産がなされないようライセンス数量を限定したり、また国内商品より2週間から1ヶ月程度発売日を遅らせるなど、可能なかぎりの還流防止対策を講じた上でライセンスを行っているのが現状である(資料4−1「アジア地域への原盤ライセンス契約の実態」参照)。ただ、このような対策にもかかわらず、現実にアジア諸国から相当量のライセンスレコードが還流し販売されている実態がある。

(3) 今後、日本のレコード会社が積極的に国際展開を図った場合、特に韓国及び中国に対し積極的にライセンスを行った場合には、両国の地理的条件及びマーケット規模から大量のライセンスレコードの還流が予想され、日本のレコード産業に大きな影響を与えるものと考えられる(資料4−2「アジアにおける日本音楽ソフトの需要予測」参照 PDF:30.8KB)。

従って、積極的な国際展開によって日本のレコード産業及び音楽産業の一層の拡大を図るためには、ライセンスレコードの還流を防止する「レコード輸入権」の創設が必要である。

2. 「レコード輸入権」の内容
(1) 改正を求める法律
GATT(関税及び貿易に関する一般協定)との関係から著作権法の改正による対応が適当と考える。

(2) 著作権法の改正方法(資料4−3「条文案比較一覧表」参照)
以下の三案が考えられる。
1 譲渡権の国際消尽の対象から「商業用レコード」を除外するとともに、消尽について善意無過失の者の保護を図る(資料4−4「条文A案」)。
この場合、輸入は禁止せず、その後の国内での譲渡を禁止する。
【改正条文】
「26条の2、2項4号改正」、「法95条の2、3項3号改正」、「法97条の2、2項3号改正」、「法113条の2、2項追加」
2 譲渡権の国際消尽の原則は維持し、みなし侵害行為を追加する(輸入行為だけを追加、資料4−5「条文B案」)。
この場合、頒布目的の輸入を禁止する。
【改正条文】
「法113条1項3号追加」
3 譲渡権の国際消尽の原則は維持し、みなし侵害行為を追加する(輸入行為、頒布行為、頒布目的所持を追加、資料4−6「条文C案」)。
この場合、頒布目的の輸入、頒布及び頒布目的所持を禁止する。
【改正条文】
「法113条1項2号新設」「法113条1項3号(現2号)改正」

(3) 「レコード輸入権」の対象
「商業用レコード」(市販の目的をもって製作されるレコードの複製物、法2条1項7号)に限定する。

3. 「レコード」と他の著作物の違い
(1) 還流の障壁となる言語の問題がない。
(2) 還流を防止する技術的な手段がないためライセンス契約による措置等に対策が限定され、還流を防ぎきれない。
(3) 現実にライセンスレコードが還流し販売されている実態がある。

4. 「レコード輸入権」に関する関係団体等との協議状況
(1) 社団法人日本経済団体連合会
昨年5月から具体的な協議を開始した。現在、具体的な条文案等に基づき協議を行っており、9月30日の「著作権に関する懇談会」において審議が予定されている。

(2) レコード店等の流通関係者
特に洋盤商業用レコードの並行輸入を行っている主要レコード店と協議を行っている。

(3) 公正取引委員会
還流によるレコード産業への影響が大きいことについて理解を得るため協議を行っている。
以上

【資料】  
  4−1.「アジア地域への原盤ライセンス契約の実態」
  4−2.「アジアにおける日本音楽ソフトの需要予測」(PDF:30.8KB)
  4−3.「条文案比較一覧表」
  4−4.「条文A案」
  4−5.「条文B案」
  4−6.「条文C案」
  4−7.「レコード輸入権に相当する法制度のある諸外国の法制」
以下余白

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