文化審議会
2003年6月27日 議事録文化審議会著作権分科会司法救済制度小委員会(第2回)議事要旨 |
文化審議会著作権分科会司法救済制度小委員会(第2回)議事要旨
1 | 日 時 | 平成15年6月27日(金)14:00〜16:00 |
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2 | 場 所 | 三田共用会議所 3階 D・E会議室 |
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3 | 出席者 | (委員) 蘆立、大渕、後藤、高杉、橋元、細川、松田、前田、光主、三村、山口、山本、吉田の各委員、齊藤分科会長 (文化庁) 森口長官官房審議官、岡本著作権課長、川瀬著作物流通推進室長、俵著作権課長補佐ほか関係者 |
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4 | 配付資料
【参考資料】
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5 | 概 要
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○: | 前回、齊藤分科会長や前田委員から指摘があったが、侵害者が訴訟を提起された後に侵害行為を止めてしまった場合、侵害の恐れがないということで、112条第1項の「侵害の停止又は予防」の請求だけでなく、112条2項の侵害行為によって作成された物の廃棄など「侵害の停止又は予防に必要な措置」の請求もできなくなってしまうという問題を検討事項に加えてはどうか。 |
○: | 裁判実務としては、侵害行為は止めたが、侵害物は廃棄せずに保管しているという状況であれば、差止めの必要性があると判断され、1項、2項に基づく請求を認めることになる。 |
○: | 侵害物は在庫として残っているが、それは売らないから1項は請求棄却にしてくれと弁論しても、在庫がある以上侵害の危険性があるから1項2項とも認容する判決が出ると考えている。この問題については、必要性があれば審議項目の中で整理をするということにする。 |
(2) | 損害賠償制度の強化について 事務局より資料に基づき説明が行われ、続いて後藤委員より説明が行われた後、以下の通り意見交換が行われた。 |
○: | 権利者保護のためには最低10万円の賠償額は認められるということとすべきであり、法定賠償に基づき請求をした場合には、他の規定に基づく請求も認められるということにすべきではないか。 |
○: | 提案の内容は立証ができずに114条の各規定に基づき算定ができなくても最低10万円は請求できるという制度にしたらどうかということであろう。 |
○: | 侵害を受けた1著作物につき10万円の損害賠償額を認めるという提案であるが、例えばいくつものサイトに無断アップロードするような場合でも侵害行為の回数は考慮しないということか。 |
○: | 侵害物の回数は考慮せず、1著作物について、10万円を損害額として認めるべきであるという提案である。 |
○: | 今回の提案は1著作物につきいくらと法定することとして、侵害行為の回数は問わないというものであるが、これは、アメリカの法定賠償制度を参考にしたのではないか。侵害された著作物が特定されていても、ダウンロードの回数がわからないという場合に、1著作物を単位に損害額を算定するというのがこの制度の趣旨であろう。したがって違法アップロードされているサイトの数が2倍だったら損害額も2倍にするということにすると、侵害行為の回数は問わないという今回の想定の趣旨に反することとなる。また、昨年、ダウンロードの回数が分からないとき、現行の114条の4の規定で対応できるのではないかと申し上げたが、114条の規定によるとどれくらいの損害額が認定されるか予想がつかないこと、裁判所に基準がなく、この規定の適用は裁判所にとって容易でないことを考えれば、114条の4を補完するような規定として、1著作物につき10万円という法定賠償制度を導入するということは考えられるであろう。 |
○: | 今回提案の規定に基づいて請求する相手方として想定しているのは、「個人」か。 |
○: | 相手方としては、「個人」を想定している。その個人を特定するのは難しいであろうが、WinMXであれば誰が無断送信した発信元なのかは分かるであろう。その特定された個人が「マトリックス1」、「マトリックス2」、「ターミネーター1」、「ターミネ―ター4」を無断送信していれば、その請求額は40万円となる。 |
○: | 114条の4の規定によるとどれくらいの損害額が認定されるか予想がつかないということであるが、10万円という額が決定されれば、抑止的効果が働くという趣旨か。 |
○: | それもあるが、権利者自身が最低限認められる損害額を想定しながら裁判ができることとなるのが大きい。 |
○: | 必要性はある程度わかったが、実際にこの規定を設けることになれば損害賠償制度全体の中でどうするのかという問題や知的財産の特殊性について議論する必要がある。問題点としては、ファイル交換の例だけが出ているが、今回提案の法定賠償制度は、著作権侵害一般の規定として設けるつもりなのか、それとも「公衆送信権侵害」に限定して規定するつもりなのか。もし著作権侵害一般の規定として設けるつもりであれば、ある程度部数が分かるような著作物も含めて、あらゆる著作物を対象にするのか、検討が必要である。また、実際上1回もダウンロードされなかったから権利者に損害が生じていないということを被告側が立証した場合にも、10万円を請求できることとするのはおかしいのではないか。 |
○: | 侵害行為の対象としては、「公衆送信権侵害」に限定してもいいと考えている。 |
○: | 法定賠償は「賠償額=損害額」という基本的原則に基づくとすれば、現実の損害額が0の場合や非常に低い場合にも、最低額として一律1著作物につき10万円の請求を認めることとするのは、この原則を外れることとなるのではないか。 |
○: | 法定賠償制度導入の意義は権利者の立証負担の軽減であり、抑止効果を求めるべきではない。したがって、法定賠償額としては、例えば10万円と規定しておいて、侵害者の反証により減額できるという、推定規定のようにするのが妥当ではないか。 |
○: | アップロードされているが、ダウンロードされていないような場合については、それを削除するのに費用がかかるため、これを損害ととらえて、法定賠償の適用対象としてもいいのではないか。ただ、侵害者の立証により、損害額を軽減できるという制度をいれるのは一案として考えられる。 |
○: | 今回提案のあった法定賠償制度について「逸失利益(損害額=賠償額)」の考え方に立って規定するのか「抑止的効果」をねらった規定として新しい制度として規定するのか、考えをまとめる必要がある。「逸失利益」の考えに立って規定するとすると自ら販売を行っていない作家の先生が訴えを起こした時どうなるのか。自ら販売していないから、「逸失利益」はないものとして法定賠償の規定は適用できないとするべきなのか。 |
○: | 著作権侵害一般に対象を広げるかどうかについても慎重な検討が必要である。 |
○: | 10万円という額については、他の著作物の権利者にいろいろ意見を聞く必要があるのではないか。1著作物につき10万円では低すぎるという業界もあるのではないか。 |
○: | 新114条の3は正規のライセンス料ではなくて違法行為がなされた場合に受けるべき権利者の額の規定と考えられないか。JASRACのように使用料規定があって、額を予め決めておけば、受けるべき金銭の額に相当する額の立証は簡単であるが、レコードなどの隣接権の場合には集中管理をすべてしているわけではなく使用料規定がない。また、契約書でもライセンス料は秘密である場合が多いので立証負担を軽減するために新114条の3の下支えの規定として、法定賠償制度を導入するということは考えられないのか。 |
○: | 使用料規定がそのまま114条の3の「使用料相当額」として認められるかどうかはわからない。114条の3の規定を適用する場合でも、回数について立証する必要がある。したがって回数が不明で114条の3の規定が適用できない場合の措置として、法定賠償制度を導入するという考え方はありうる。 |
○: | JASRACの使用料規定は、通常の使用量ということで、懲罰的意味をこめて規定しているものでは全く無い。侵害を抑止するための制度として、2倍賠償あるいは3倍賠償ができる制度の導入が必要ではないか。 |
○: | 法定賠償については、法定された金額の範囲内で裁判所が判断するとすべきか、あくまで最低額を規定するのか議論する必要がある。また、侵害行為の対象についても、ある侵害行為についても立証が困難だから、法定賠償制度を導入すべきとするのか、そもそも著作権侵害一般について立証が困難だから法定賠償制度の導入が必要なのか整理する必要がある。 |
○: | 無断ネット配信のような場合は、ダウンロード回数を把握できないので法定賠償制度導入の提案がされているが、この問題を解消するためであれば、「公衆送信権侵害」を対象に限定すればよいが、本当に他の権利侵害についてはこのようなニーズがないのか、整合性がとれているのか検討が必要である。 |
○: | インターネット配信により営業行為を行っていればダウンロード回数についても記録が残っているはずであり、本当に法定賠償制度が必要か実態を検証すべきである。営業行為についても、回数の如何を問わず最低額として請求できる法定賠償制度は必要なのか。また、ファイル交換を例にとれば、100とか1000とか非常に多くのコンテンツが交換されるが、この場合、1著作物10万円とすると1000のコンンツで1億円となるが、これは本当に適当なのか、検討が必要である。 |
○: | 「法定損害額」をいくらにするかという問題がある。10万円という額が適当か検討する必要があるが、著作物の種類によって業界や市場の違いによる、損害額の違いがあるであろう。損害の相場というものがわかれば、異なる金額を法定するという規定の仕方も考えられる。 |
○: | 相手方が損害が0あるいは低額であることを立証した場合は別として、回数がわからない場合に10万円を請求できるという制度にする必要がある。 侵害の対象については、将来的には対象を広げることが考えられるが、まずは、ダウンロード回数がわからないという現状に対応するため「公衆送信権侵害」に限定して制度を導入すべきではないか。10万円の根拠は、ゲームについては○○円、レコードについては○○円と、著作物ごとに規定するのは法制度上困難であるため、おおまかに決めざるを得ないのではないか。法定された金額の範囲内で裁判所が判断できるとするか、最低額を法定するかについては、ここで議論するのは、最低額をいくらにするかという問題に限定していいのではないか。 |
△: | 1本の映画の著作権侵害があった場合、映画製作者をはじめとして、その映画に使われている音楽の作詞家・作曲家、レコード製作者・脚本家など様々な権利者が一緒に訴訟をおこすということも考えられるが、映画1本につき、だいたい何人の権利者が関係しているのか。映画など多様な権利者が関わる著作物の著作権侵害については、10万円に権利者の数をかけた数が損害賠償額となるので損害賠償額が非常に高額となる。 |
○: | 脚本家などは映画会社に訴訟を任せるのが通常である。JASRACについては、一緒に訴訟をしようと相談し、一緒に訴訟をおこしたこともある。 |
○: | 権利者が複数にわたった場合にそれが積算されていくかというということについては、説明の仕方によってはそうならない可能性もある。 |
○: | 3倍賠償について何か意見はないか。 |
○: | 懲罰的な賠償制度は刑事罰の範疇であって、民事の方にはなじまない、あるいは知的財産権侵害、著作権侵害だけなぜこのような規定が必要なのかというのが代表的な、消極的意見である。しかし、刑事罰では抑止効果は期待できないというのが現状である。例えば、告訴しようとしても警察がなかなか受理してくれないという問題がある。また、たとえ刑罰が科されても、侵害者が受けるダメージはむしろ少ないというのが現実である。したがって、JASRACとしては、損害賠償制度を是非とも導入したいと考えている。 |
○: | 従前の114条の横並びの算定方法としての3倍賠償というのは、無理ではないか。新しい制度をいれることについての必要性についてもっと議論をすべきである。 |
○: | 無数にある侵害事例の全体からするとごくわずかしか刑事罰が科されていないという実情があるので、侵害の抑止機能を果たす制度として刑事罰だけでは十分ではないといえるのではないか。であれば、抑止機能の役割を果たす何らかの制度が必要となるのではないか。例えば労働基準法とか船員法には、雇用者、使用者が休日手当等を払わなかった場合、労働者は「倍額」を使用者に請求できるという制度があるし、キセル乗車などに対しては、割増運賃という形で実質的には「倍額」請求できるという制度がある。著作権侵害に対しても、何らかの類似した制度を設けることができないか。 |
○: | 警察が機能していないのであれば、民事の方でなんとかするというよりは警察に取りしまりの強化をしてもらうように努力すべきであろう。また、侵害し得については、侵害されててもその立証が極めて難しいことから、侵害が行われていてもそれを見過ごさざるを得ないという問題がある。したがって、これは、3倍賠償制度の導入というよりも、権利者が権利行使しやすい制度を導入するということを考えるべきであろう。 また、船員法など、懲罰的な制度もあるのかもしれないが、著作権行使の問題の参考にはならないのではないか。人権侵害のように、公益の侵害の抑止の必要性から生じるものはわかりやすいが、著作権侵害は問題点が異なるのではないか。 |
○: | 3倍賠償について、侵害の抑止効果が必要とされていて、そのためには侵害者に対して多くの賠償額を支払わせる必要性が仮にあるとしても、抑止のために科した分の賠償額をなぜ権利者に支払わせるということになるのか、その理由が必要である。抑止効果は刑事罰に基本的には委ねるというのが理論的にはすっきりするのではないか。推進計画においても刑罰を見直すということが課題としてあげられているので、こちらの議論をみた上で検討すべきではないか。 |
○: | いわゆる「悪意」のものについては、3倍賠償を科せられるというような制度を設けることはできないか。 |
6 | 閉会 事務局から今後の日程について説明があった後、閉会になった。 |
(文化庁長官官房著作権課)