3 調査結果

2.文芸

【C事業者】

(1)管理業務の概要

 文芸の分野では、C事業者が仲介業務法制定以来、文芸作品の放送・有線放送利用、教材への利用等に係る集中管理の窓口として業務を行っている。

 C事業者の管理委託契約約款では、C事業者は委託者が現在有する著作権及び将来取得する著作権について、管理委託契約申込書において委託者から指定された利用形態の管理を行うこととされている。
 また、著作権管理委託契約申込書では、映画、テレビ放送への利用、教科書準拠ドリルや入試問題集への利用などの利用形態について委託者に権利委託の選択をさせており、一任型による管理を行っている。

 一方、C事業者は、委託者から権利委託を受ける際に非一任型による管理を指定されている場合がある。非一任型管理として指定されている例としては、石碑等への利用やコマーシャルへの利用など特別な利用の場合が多い。

 平成18年3月末現在、C事業者が管理している委託者数は約3,100名である。なお、C事業者は、非一任型管理に関する情報提供は特に行っていない。

(2)利用手続の流れと使用料の決定方法

 C事業者は、原則として一任型管理を実施しており、使用料規程に基づいて利用者に許諾を与えている。
 しかし、利用者から利用申請が行われた場合、一任型管理の場合であっても、利用方法によっては、著作者の名誉声望を害することもあるので、利用申請の内容を念のため委託者である作家本人に報告している。
 特に、利用者から映画化やテレビドラマ化に関する利用申請があった場合、企画内容を事前に作家に報告することとしている。
 なお、利用者は、映画化やビデオ化を行う場合、作家が存命であれば、C事業者に申請を行う前に、あらかじめ、作家本人に企画内容を説明する場合が多いと聞いている。

 利用申請の内容が、委託者から使用料を指定されている利用方法の場合には、C事業者は、委託者が指定した使用料を利用者に伝え、利用者の了解が得られた使用料を最終的に委託者に確認してもらい、許諾書を発行している。
 特に石碑への利用や酒のラベルに作品を利用するなどのコマーシャル利用の場合、委託者が使用料の額を決定するケースが多い。

 このような非一任型管理に係る年間の許諾件数は数件程度であり、一任型による管理がほとんどである。

 なお、管理委託契約申込書では委託されていなかった利用について、利用者から利用申請があった場合、C事業者は委託者に利用申請の内容を伝えるようにしている。その際、当該利用形態について委託者から新たに委託の申し出を受けることがあるが、その場合、その時点で委託があったものとして利用者と交渉して使用料を決定することとしている。

(3)一任型管理業務を実施していない理由

 石碑への利用やコマーシャル利用などの特別な利用については、委託者は自ら使用料を決定したいという意向があるため、非一任型管理にならざるを得ない。
 なお、後述するD事業者では、入試問題集への利用について委託者に許諾の可否の決定権を委ねているが、C事業者の場合、入試問題集への利用は、入試問題をそのまま二次利用していること、利用される作品は、いわゆる著名な作品に限られず、試験問題への利用のし易さという観点から利用される作品も多いことなど、委託者に許諾の可否の判断を委ねる理由がないことから一任型による管理を採用している。

(4)利用者とのトラブルについて

1事業者の意見

 非一任型管理業務について、特に利用者とのトラブルはない。

2利用者の意見

 特になし。

【D事業者】

(1)管理業務の概要

 D事業者では、文芸作家や挿絵作家との間で著作物の利用許諾等の手続代行に関する委任契約を締結し、主に教科書に準拠した学習参考書や大学入試問題集としての利用についての管理業務を実施している。

 D事業者では、「著作物に関する使用許諾等の手続き代行委託契約約款」を定めており、本約款に基づき、委託者との間で著作物の利用許諾等の手続代行に関する契約を交わしている。
 同約款では、委託者は、教材等の紙媒体・CD等の記録媒体への複製、放送等の公衆送信、口述・朗読その他一切の利用行為について独占的にD事業者に対して許諾手続の代行を委任することとされており、著作物の利用許諾を与える場合の許諾の可否、許諾条件等は委託者本人の同意が必要とされている。

 委託者は、D事業者に許諾手続の代行を委任する際に、あらかじめ著作物ごとの利用形態を指定することになっている。委託者が指定する利用形態は委託者により異なるが、大学入試問題に利用された著作物を入試問題集として利用するなどの教材利用、講演会で用いる印刷物への利用、テレビ番組への利用、ポスターへの利用、インターネット利用などが多い。

 また、同約款では、契約期間中の利用許諾手続の代行窓口は、全てD事業者が独占的に行うこととされ、委託者本人であっても各種教材等に自ら著作物を利用したり、委託者が直接第三者に許諾を与えてはならず、D事業者以外の第三者に管理又は利用許諾の代理契約を締結してはらない旨規定されている。

 D事業者では、広報誌やインターネット上のホームページなどを通じて業務の概要を公示しており、平成19年3月末現在、D事業者に委託している委託者数は約240名である。

(2)利用手続の流れと使用料の決定方法

 利用者からD事業者へ電話等によって利用申請が行われた後、D事業者は申請内容を委託者本人に伝え、許諾の可否と使用料の額を委託者に決定してもらっている。
 委託者からD事業者に対し、指定する額の判断材料として他の委託者はどの程度の使用料にしているかという問い合わせがあった場合、D事業者は他の委託者の使用料の実例を回答しているが、最終的な決定は委託者が行っている。
 委託者の了解が得られた場合、委託者名とD事業者名を記載した許諾書を利用者に発行している。年間の利用契約者数は、約300件程度である。

 許諾にあたって、D事業者は、作成した教材やポスターなどの成果物を2部提出するよう求めている。1部は委託者に送付し、残り1部は、利用者が適正に利用したかどうかをD事業者において確認するために使用している。

 使用料の額については、委託者の意思で決められているが、特に教材利用については、事実上、大部分が裁判による和解内容を参考に決められている。この裁判は、教材出版者が権利者に無断で入試問題を教材として出版したとして文芸作家が教材出版者を相手取り、出版差止等を求めた裁判である。裁判による学習教材の過去分の精算は印税率8パーセントで和解されている例が多いため、D事業者に委託をしている有名作家が8パーセントを指定すると、他の作家は横並びで有名作家と同率を指定しており、結果として、ほとんどの作家が同じ使用料(印税率)になっている。
 ただし、利用者が教育関係者や福祉関係者の場合であれば、委託者は使用料を安く指定する場合が多い。
 なお、委託者は、申請内容が著作物の改変を伴わない利用であれば、無断で利用している利用者の場合は、過去分の使用料の精算と、今後の利用申請が適正に行われることを条件として基本的に了解する場合が多い。

(3)一任型管理業務を実施していない理由

 D事業者に許諾手続の代行を委任している文芸作家は、入試問題を入試問題集として販売する場合、一次利用は著作者の了解を得ずに作成されたものであるため、二次利用については著作者が利用許諾の決定権を行使したいという意向がある作家が多い。また、D事業者は利用者からの申請内容が適正かどうかをあらかじめ検証した上で許諾を行っているため、このような業務内容が作家の意向に合致している。
 なお、D事業者に許諾手続の代行を委任している文芸作家は、教材への利用について一任型管理事業を実施しているC事業者へ委託すれば全て許諾されてしまうこと、一部の利用者がC事業者の一任型管理を利用して、あたかも、この方法だけが正当な利用だと主張し、文芸作家の意思を尊重する姿勢を失していることに憤りを感じているとのことである。
 特に、国語の試験問題の場合、文芸作家は、虫食い問題や自分の気持ちと違う回答を用意された問題を試験問題集として販売されることを嫌がる作家が多い。D事業者に委託している作家の中には、そもそも自分の作品を問題集にしてほしくないと思っている作家や、許諾そのものを拒否してほしいという指定をしている作家もいる。

(4)利用者とのトラブルについて

1事業者の意見

 利用者からの意見があることは事実だが、委託者の意向を無視できないため、利用許諾手続代行業務の内容が問題だとは思っていない。

2利用者の意見

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