著作権分科会(第23回)議事録・配付資料

1.日時

平成19年10月12日(金曜日)13時〜15時

2.場所

フロラシオン青山 2階 「芙蓉」

3.出席者

(委員)

青山、石坂、大渕、岡田、加藤、河村、佐々木、里中、瀬尾、大楽、高井、玉川、辻本、道垣内、常世田、土肥、永井、中田、中山、野原、野村、福王寺、松田、三田、宮川、村上の各委員

(文化庁)

高塩文化庁次長、吉田長官官房審議官,山下著作権課長 ほか関係者

4.議事次第

  1. 開会
  2. 平成19年度使用教科書等掲載補償金について
  3. 平成19年度使用教科用拡大図書複製補償金について
  4. 法制問題小委員会 中間まとめについて
  5. 私的録音録画小委員会 中間整理について
  6. 過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会 検討状況について
  7. 著作権等の管理業務に関する実態調査報告
  8. 閉会

5.配付資料

資料1
  「平成19年度使用教科書等掲載補償金について」関係資料
資料2
  「平成19年度使用教科用拡大図書複製補償金について」関係資料
資料3
  法制問題小委員会 中間まとめ(概要)(PDF:351KB)
◆法制問題小委員会 中間まとめ
資料4
  私的録音録画小委員会 中間整理(概要)(PDF:245KB)
私的録音録画小委員会 中間整理(参考)(PDF:308KB)
◆私的録音録画小委員会 中間整理
資料5
  過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会における検討状況
資料6
  著作権等の管理業務に関する実態調査報告
資料7
  金原委員意見書
資料8
  大林委員意見書
参考資料1
  文化審議会著作権分科会委員名簿
参考資料2
  「知的財産推進計画2007」(平成19年5月31日知的財産戦略本部決定)−著作権等関係部分抜粋−
(※法制問題小委員会(第4回)議事録・配付資料へリンク)
参考資料3
  映画の盗撮の防止に関する法律の概要
(※法制問題小委員会(第5回)議事録・配付資料へリンク)
参考資料4
  文化審議会著作権分科会(第22回)議事録
(※(第22回)議事録へリンク)

6.議事内容

○委員及び事務局の交代の紹介

 新しく委員となられた、石坂委員、高井委員、中田委員の紹介があり、続いて事務局の異動に伴う紹介があった。

○平成19年度使用教科書等掲載補償金について

 使用料部会長及び事務局より説明があり、諮問案のとおり議決された。

○平成19年度使用教科用拡大図書複製補償金について

 使用料部会長及び事務局より説明があり、諮問案のとおり議決された。

 以上の議事については、文化審議会著作権分科会の議事の公開について(平成18年3月1日文化審議会著作権分科会決定)、その1(2)に基づいて非公開とし、同決定の6及び7に基づき議事要旨を作成し、公開することとする。

【野村分科会長】

 それでは、次の議題に移りたいと思います。
 法制問題小委員会において取りまとめていただいた中間まとめについて、議論をしたいと思います。この中間まとめについては、今後、意見募集を行い、それを踏まえてさらに審議を進めていくものでございます。
 それでは、中山主査より御報告をお願いいたします。

【中山主査】

 それでは、概要につきましては私から御説明いたしまして、その後、詳細につきましては事務局の方から説明をするということにしたいと思います。
 法制問題小委員会におきまして、中間まとめをいたしましたので御報告申し上げます。
 法制問題小委員会では、平成17年に著作権分科会においてまとめられました著作権法に関する今後の検討課題に掲げられた課題を中心といたしまして、政府の知的財産戦略本部から提言された検討課題などを適宜含めつつ検討を進めてまいります。今後は、主として「デジタルコンテンツ流通促進法制」、資料3の1ページ、それから海賊版の拡大防止のための措置、資料3の2ページ、権利制限の見直し、資料3の3ページ、検索エンジンの法制上の課題、資料3の6ページ、ライセンシーの保護等のあり方、資料3の7ページ、次にいわゆる「間接侵害」に係る課題、資料3の8ページの6つの課題を取り上げまして議論を進めてまいりました。
 主な結論を御報告申し上げますと、まず、海賊版の拡大防止のための措置につきましては、インターネットオークション等を利用した海賊版の取引の増加が指摘されておりまして、ネットでの取引の申し出段階で差しとめられるようにすべきとの要望があったところです。これに対応するため、「情を知って」等の一定の要件のもとで、海賊版取引のための告知を行うことを権利侵害とみなすことが適当であるといたしました。
 権利制限の見直しにつきましては、平成17年度から積み残しの課題も含めまして、薬事、障害者福祉、ネットオークション等の関係について検討をしてまいりました。それぞれ公益的な目的での利用であったり、その他もろもろの必要性が認められると判断されますので、権利者の経済的利益を不当に害することにならないように配慮するなどの一定の条件のもとで、権利制限を行うことが適当であるといたしました。
 検索エンジンの法制上の課題につきましては、検索エンジンの行うウェブサイトの収集等が複製権等の侵害になるおそれがあると指摘されておりまして、インターネットで必須のサービスである検索エンジンが我が国でも安定的に実施できるよう、著作権者の権利等の調和に配慮しながら、権利制限を講ずることが妥当であるといたしました。
 このほかにももろもろの検討を行いましたが、詳細につきましては事務局より説明をお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】

 それでは、引き続きまして残りの課題等を含めまして御説明いたします。
 資料3の1ページをお開きいただければと思います。
 「デジタルコンテンツ流通促進法制」についてでございますが、こちらはインターネット等で、十分にコンテンツが流通していないという御指摘が諸方面からあったことを踏まえまして、「経済財政改革の基本方針2007」や「知的財産推進計画2007」で、2年以内に「デジタルコンテンツ流通促進法制」を整備することとされております。
 こちらの問題意識等を小委員会で分析いただきましたところ、経済財政諮問会議等の問題意識は、過去のテレビ番組等をインターネットで二次利用すると、そういったところに問題意識があるということが分かり、さらに分析をしたところ、再利用が進まないのはビジネス上の採算の問題等も大きいということのほかに、著作権契約に関する課題についても、権利者不明等の場合で契約交渉が容易ではない場合などの利用円滑化策を講じるべきだということで、まとめていただいております。こちらにつきましては、具体には別途設けられております過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会がございますので、そちらの方の検討をよく見ていこうということになっております。
 そのほか、経済財政諮問会議の問題意識以外の課題としましても、インターネットで行われております新たな創作形態などについて、いろいろと著作権法上の課題があるのではないかということで、まずこういったものの実態を調査すべきであり、その上で、より総合的に検討を行っていくべきではないかと。2年を目途にとされておりますので、今期ではこういった背景分析などがまとめられております。
 引き続きまして2ページ目でございますが、海賊版の拡大防止のための措置について、上段は先ほど中山主査から御説明がありましたので省略いたします。下段の方で親告罪の範囲の見直しを課題として議論が行われました。著作権法においては多くの罰則が親告罪とされております。要するに起訴するための要件として被害者からの告訴が必要であるという犯罪でございますが、そういったものについて重大・悪質な侵害事犯に対応するためには、見直しが必要であるという指摘がございました。
 これについては、著作権法の罰則には軽微なものも含めまして多様なものがあるということで、一律に親告罪を採用するということは不適当ではないかと、また、理論的には一部の犯罪類型を新たに設けて非親告罪化するというようなことは考えられますが、それについても社会的な影響を見て、慎重に検討することが必要ではないかと。そういった結論でおまとめいただきました。
 引き続きまして、3ページからの権利制限の見直しについてでございますが、こちらは薬事、障害者福祉、ネットオークション関係について検討が行われました。
 薬事関係の要望の内容は、資料の3ページの上段にありますように、製薬企業から薬事法の規定に基づいて、医薬品の適正使用に必要な情報を医療機関に提供する際の文献の複製などにつきまして、著作権者の許可なく行いたいというような要望でございました。
 結論としましては、患者の生命・身体にかかわるなど迅速な対応が必要ということで、時間をかけることが不適切な分野でございますので、権利制限をすることは基本的に適当ではあるということ。ただし、その際には補償金が必要という御議論をいただきまして、補償金が実効的に機能するためには、あらかじめ補償金額の合意など関係者間で合意をとることが必要ですが、まだそういった環境整備が現状では整っていないという状況もございましたので、環境整備が整うことを前提としてやるべきであると、そういった御議論をいただきました。
 その次のページでございます。障害者福祉関係では非常に多数の要望が寄せられておりますが、代表的なものを御紹介いたしますと、視覚障害者関係では、録音図書の作成について、現在、貸し出し目的で点字図書館等の一定の施設だけで限定的に行われておりますけれども、それを公共図書館でも実施できるようにしたいという点や、聴覚障害者関係では映像や放送などに字幕や手話をつけて複製をするという点、それから知的障害者・発達障害者関係でも、それぞれに適した形でデジタル録音図書の作成などができるようにと、そういった御要望が代表的なものとしてございました。
 これにつきましては、障害者の情報アクセスを保障するという観点から、できる限り障害者が著作物を利用できるような方向で検討すべきだということで、御結論をいただいております。ただし、その際の留意事項としましては、健常者への流出防止策など、権利者への不利益が生じないように考慮すべきという点が付せられております。
 引き続きまして、5ページでございます。ネットオークション関係の権利制限の問題点といたしましては、インターネットオークション等で美術品や写真などを売買するということが行われておりますけれども、その際に商品の画像を掲載するということが著作権との関係で、複製権や公衆送信権の関係で問題になるのではないかという指摘がございまして、整理が求められていたところでございます。
 これにつきましては、商品を紹介するというのは取引の際の売主の義務であり、そのために必要不可欠なものですので、画像の掲載をできるようにしなければ、取引そのものができなくなってしまうということもございまして、許諾なしに商品の画像掲載ができるようにすることが適当であるという結論をいただいております。ただし、その際に、ネット上に載せました画像などが他に流通するなどで権利者に不利益を及ぼすことのないように、環境整備などが必要であるという留意事項をいただいております。
 引き続きまして6ページの検索エンジン関係ですが、こちらは先ほど中山主査からも御紹介がありましたが、検索エンジンの仕組みとしましては、常日頃からいろいろなウェブサイトをソフトウエアが回って、自動的にウェブサイトのコピーをとりましてサーバーに蓄えているということを行っておりまして、こういった行為が著作権の侵害になるおそれがあるという指摘がございました。
 これつきまして現行法の解釈で対応が可能なのか、もしくは立法措置が必要なのかなどの検討を行いました。結論としましては、検索エンジンサービスが果たしているような役割を安定的に果たしていくためには、権利制限という手段が適当ではないかということで結論をいただきましたが、なお検討を要する点といたしまして、「検索エンジン」というものの対象範囲をどのように捉えるのか、違法な複製物がインターネット上にあった場合に、それを検索エンジンが拾ってしまった場合にどのように対応するかなどといった点があるとしております。
 7ページでございますが、ライセンシーの保護といたしまして、過去数年来、ずっと検討を続けている課題でございます。問題点といたしましてはライセンサー、許諾する側が破産した場合に、そこから許諾を受けていた方のその地位が不安定になってしまうという問題をどう解決していくかという点でございますが、特許等の分野では今年の通常国会で法律改正がされまして、特定通常実施権登録という新たな制度が創設されまして、これと同じような制度を設けることなどについても併せて検討が行われました。
 結論といたしましては、特許等の分野と同様にライセンス契約で設定された利用できる権利を登録できるようにすることが適当ではないかという結論をいただきましたが、さらに制度設計の詳細につきまして、関係業界の意見なども聞きながら、より活用しやすい制度となるように引き続き検討すべきということとしております。
 また、検討課題としましては、利用権、いわゆる独占的に利用できる地位を登録する制度についても新たな制度を設けるべきではないかというような指摘もございました。こちらについては現行著作権制度の仕組みを大きく変える必要があるということになりますので、引き続き今後の課題として検討するということとしております。
 8ページでございますが、いわゆる「間接侵害」、自ら直接的に利用行為をする人でない場合にも差止請求ができるかどうかという問題でございまして、一昨年から引き続き検討している課題ですが、そういった場合、あるいは幇助に当たる場合などについて、差止ができるかという点につきましておいて訴訟上様々な事件がありまして、これらについてどのような立法措置が必要かということで、検討が続けられておりました。
 結論としましては、裁判例などが様々になってしまっている状況がありますので、著作権法において差止請求の対象となる範囲はどこなのかということを立法措置によって明確化を図ることが適当ではないかということで結論をいただきましたが、ただ、立法化によって対象をはっきりさせる際には、その要件について裁判例や民法の基本理論などとの整合性にも配慮しながら、引き続きその詳細について検討を進めるべきだということとしております。
 最後になりますが、その他の検討事項といたしまして、中間まとめまでに議論ができた課題以外として、過去の著作権分科会の18年あるいは19年の報告書で一定の結論が示されていながら、他の状況も踏まえて改めて結論を得るということをされている課題もございまして、例えば機器利用時、通信過程における一時的固定、あるいは私的使用目的の複製の見直しなどがございますが、これらの課題につきましては中間報告後もまた必要に応じて検討を続けるということと、それから通信・放送のあり方への対応についても、今後、さらに適宜検討を続けるということとしております。
 以上でございます。

【野村分科会長】

 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの御報告につきまして御意見がございましたら、御発言をお願いいたします。

【高井委員】

 日本映像ソフト協会の高井でございます。
 ただいまの項目の中の権利制限の見直しについてのところにつきまして、特に障害者関係の権利制限については総論としては全く異論はございません。ただ、映画を制作する側からとって、映画の複製が我々の知らないところで自由に行われるということについては、どうしても神経質になりがちですので、権利者とユーザーとの間で、なるべく早目に権利制限の趣旨に沿った適正なルール作りというのもできますよう、今後、引き続き慎重に検討していただきたいというのが一つのお願いでございます。
 ちなみに、現在、映画界というのは聴覚障害者の皆さんに対しては、日本語の字幕つきの映画の上映を全国的に行ったり、それから聴覚障害者の団体に対しても著作物を無償で提供するなど、そういう対応を一応継続的に行っている実績がございますので、こういうことも今後の議論の参考にしていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

【野村分科会長】

 どうもありがとうございました。
 ほかにご発言ございますか。福王寺委員どうぞ。

【福王寺委員】

 日本美術家連盟の福王寺と申します。
 権利制限の見直しについての3で、ネットオークションについて書かれておりますけれども、美術品の譲渡を行う際で、許諾なしにインターネットのオークションに乗せることができるということが適当となっておりますけれども、これについては法制問題小委員会の方で美術家連盟の方でもヒアリングに伺ったと思うんですが、もう一度作家の集まりの代表として申し上げます。美術品の作品、絵画作品、彫刻ももちろんなんですけれども、あと版画、そういったものをやっぱりインターネットオークションに載せる場合には、必ず許諾をとってから載せていただくというのが大前提だと思うのです。これについては本当に慎重に審議していただきたいと思います。国税庁がそういったことをしているということで新聞にも出ておりましたけれども、やっぱり政府がそういうことをしていること自体が、本当に考えていただかないといけないと思います。よろしくお願いいたします。

【野村分科会長】

 瀬尾委員、どうぞ。

【瀬尾委員】

 今の件に関してですが、やはり写真・美術を販売するときに、当然、画像がないと健全な取引というのを妨げる可能性があると、これは十分に理解されるところです。今、福王寺委員のおっしゃったような基本的な問題もあるかと思います。ただ、私が心配いたしますのは、販売もしくはオークションという名目をつけることによって、事実上、画像の掲載が無制限に行われてしまう可能性が非常に強いということでございます。
 具体例を申し上げますと、例えば写真集を1冊持ったとします。この1ページを販売するとして、例えばその1ページに対して数十万円のような法外な値段をつける。でも、それは一応販売目的であるということで、その1枚ずつのページを掲示することが許されてしまうような形になってしまいます。ですので、要件や目的など、きちんと流通に資する、かつ無制限な掲載に至らない、オークションもしくは販売という形の名目で、事実上の画像の無制限な掲載を許してしまうような設計にはならないように、そういった意味では非常に難しい部分でございますので、今後も慎重な議論をお願いしたいと思います。

【野村分科会長】

 ほかに御発言はいかがでしょうか。三田委員、どうぞ。

【三田委員】

 障害者福祉関係の権利制限の見直しについて、著作者の立場からすれば、権利制限の拡大については慎重に議論していただきたいというのが前提ですが、障害者の中には緊急性の高い人たちがおります。そういう人たちの要望に対して慎重に議論をしている間に、その障害者の方が致命的な損失をこうむるということもありますので、できれば障害者の立場に立って、なるべく早く結論を出すべきであろうと思います。
 例えば一例を挙げますと、学習障害児童という方がいらっしゃいます。この方たちは知能が劣るわけではなく、識字障害という本を読んでも理解できないという方々であります。そういう方々でも録音図書を聞いていただくとちゃんと理解できます。ですから、教科書やあるいは学習参考書、それから優れた児童文学のようなものを録音図書で聞きますと、すっきりと頭に入って知能がさらに発達するということです。逆に適正な年齢のときに適正なそういう情報が入りませんと、知能そのものが遅れてしまうおそれがあるのです。ですから、学習障害児童に対しては緊急性があると御理解いただきたいと思います。
 それから、ここには公共図書館での録音図書についてしか言及されていないんですが、例えば点字図書館等が録音図書を作っております。これは郵便によって全国に配付されますし、今はインターネットでも権利制限で利用できるようになっております。ただし、これは視覚障害者の方に限られているわけです。点字図書館には膨大なコンテンツがありますので、こういうものを学習障害児童にも利用できるようなシステムの変更ができないだろうかと、そういうことも併せて検討していただければと思います。
 以上です。

【野村分科会長】

 それでは、加藤委員、どうぞ。

【加藤委員】

 日本経団連の加藤です。3点ほど簡単にコメントさせていただきます。
 まず、「デジタルコンテンツ流通促進法制」に関連して、インターネット上での不特定多数の者が関わっているような創作活動についても、利用形態や検討課題の整理を進めると言っていただいております。この点につきましては日本経団連は非常に重要な事項だと思っておりますので、ぜひしっかり御検討いただきたいと思います。
 2点目でございますが、薬事行政に関する権利制限について、一定の条件のもとで権利制限を行う方向が示されております。これは高く評価させていただきたいと思います。患者の方々の生命・身体を守るために薬事法上の努力義務を遂行するという、いわば公的な理由で権利の制限が認められたというものと認識しております。一方では、この権利制限にかかわる複写を行った者が権利者に通常の使用料の相当額の補償金を支払うこと、また、補償金の額について権利者と利用者の間で合意形成がなされることに留意することということを触れていただいております。公的な理由で権利制限を課すというベースではありますが、一方ではビジネスベースで、契約で金額を決めるというのにはいささか違和感があるということで、ぜひこの公的な理由があるということを踏まえた今後の対応をお願いしたいと思います。
 3点目でございますけれども、ライセンシーの保護のあり方に関連しまして、新たな登録制度を創設するという方向で、今、制度設計の詳細について検討いただいているということでございます。先ほど触れられましたとおり、特許権については一足早く実施権の登録制度の議論が進みまして、我々産業界でもこの議論を行いました。産業界では実務上、これはアメリカ等で行われているように契約を優先してこういう場合、ライセンシーを保護するということがむしろ望ましいのではないかという意見が多数であったように思います。当然、現行の日本の制度の中で現在検討されているような新たな登録制度を設けるということも、今の現状に比べますとリスクを低減するということで一歩前進ではないかという意見もございます。ただ、今回の取りまとめ案にありますとおり、ぜひ今後も引き続き関係の方々の御意見を十分聞いていただいて、先ほど事務局からも御説明がありましたとおり、活用しやすい制度設計をぜひお願いしたいと思います。
 以上です。

【野村分科会長】

 どうもありがとうございました。

【黒沼著作権調査官】

 すみません。先ほどちょっと資料7の御紹介をし忘れておりましたので、御紹介させていただきます。本日、御欠席の金原委員からあらかじめ書面で意見が提出されておりまして、先ほど言及のありました薬事、それから障害者福祉、ネットオークション関係の権利制限についての意見書が提出されております。特に薬事につきまして反対の意見といいますか、国際的な状況や契約の現状の観点から、実情を正確に踏まえて議論すべきだというような御意見を頂戴しております。長いものですので詳細は省略いたしますが、御覧いただければと思っております。補足でございました。

【野村分科会長】

 佐々木委員、お願いします。

【佐々木委員】

 今、権利制限に絡んでの薬事関係とネットオークションの関係でございますけれども、これらについては直接的には生命・身体の安全、あるいは公正な商取引という確保ということでありますが、その根底、前提にあるのはやはり営業的行為なんですよね。そういう営業的行為と、それから著作者等の権利とをどうバランスしていくかというのが、この問題についてはあるように思われますが、こういう根底にある部分についてどう考えていくのかということについては、少し慎重な扱いが必要なように思います。

【野村分科会長】

 では、瀬尾委員、どうぞ。

【瀬尾委員】

 今の権利制限の薬事関係の件につきまして、非常に公的な性格というのも分かりますし、補償金で代替するということも分かります。ただ、私も複写権業務に関わっている立場として申し上げますと、実は先年度、ヨーロッパ、アメリカで複写権の実態というのを調査した結果がございます。その中で各国の中で教育関係の複写というのは、実は非常にベースになるぐらい扱う量が多いんですね。ただ、日本では完全に権利制限となってしまっている部分があり、また、それを拡大しようという方向もあると。それによって日本で複写権事業というのが非常に困難な状況にあるという現実もあると思います。
 その中で、さらに公的な理由ということのみでの補償金の金額、その辺りにどう反映していくかという部分もありますが、権利制限をどんどん取り入れていくと、日本での健全な複写権管理事業というのは甚だしく阻害されると思います。ですから、公的な理由によっての権利制限ということがもしあるとしたら、それに関して補償金等のきちんとした議論が必要であり、公的だから最低料金でいいとか、そういうことにはならないようにして欲しい。よく現状を反映した上で、かつ公平な部分にしていただくということが必要かと思います。複写権事業に関しては今管理事業業界全体でも変化が起きているところでございますので、その業界の変化自体も注視しつつ慎重な議論をお願いしたいと思います。

【野村分科会長】

 それでは常世田委員、お願いいたします。

【常世田委員】

 図書館関係でございますが、先ほど事務局の方から継続的なものがほかにもあるということで、これからも御検討いただくということではありますけれども、特に平成15年のこの分科会報告で法制化が適当ということで方針が出されております、再生手段の入手困難なコンテンツについての図書館での複製という件でございます。これは例えばベータとか、あるいはコンピューターのOSでもうなくなってしまっているものとか、そういう状況が次々に出てきております。特にここに来て中古の電気製品の流通についての法律等ができてくると、ますます再生そのものが困難になるコンテンツが増えてくるということがあります。
 図書館というのは、文化的なものを次代に伝えていくという非常に重要な機能を持っているものでありますので、再生可能な媒体に変換された新しい商品として販売されるものについては、当然、購入をして利用者に提供するということになるわけですが、再生する機械そのものが供給されなくなってしまって、媒体そのものが再生できないということについては、再生可能な媒体に複製をするということを図書館で行うことが適当であるという結論が既に出ているわけでありますが、これが法制局等で棚上げになってしまっていると聞いております。
 このことについては18年の分科会での報告書においても、適当だという御意見をいただいておりますので、こういうことについては具体的に何が問題になっているのか、どこをどのようにすれば法制化が進むのかというようなことも、事務局も含めてぜひ御検討いただきたいと思っております。
 また、図書館においてインターネットの内容をプリントアウトするということを、一々許諾を得ることがそもそも不可能なものがありますので、これを可能にする権利制限とそれから官公庁で刊行されているものついての全部分の複写ということ、これを要望として出しておりまして、これも18年の分科会報告の中では妥当であるという御意見をほぼいただいております。
 このことにつきましては、諸外国の例を見ても図書館からの情報提供によって社会を活性化していく、国を強くしていく、経済的な発展、活性化をそれで図る、あるいは医療情報や法律情報を提供するというような国レベルでの情報政策の中に、図書館の情報機関としての役割というものを位置づけている国が大変多くなっております。これは欧米だけではなくてアジアでもそういう傾向が出てきているわけでありまして、日本でも文部科学省からの大臣告示でありますとか、政策をあらわすための各種の報告書の中で、はっきりこれが明示されております。こういう点から、この要望については今回も要望事項として出させていただいておりますので、これは政策的な面からの御検討もぜひお願いしたいと思っております。
 それから、先ほど三田委員の方からもお話がありました障害者に対する情報提供の権利制限でありますけれども、一般的に健常者へ障害者用のコンテンツが流れるのではないかということを権利者の方は御心配になるのでありますけれども、図書館界としては公共図書館がそれを管理することによって、おおむね公務員が法律に基づいて公的な行政事業として行うことによって、そのようなことを防ぐことができるのではないかと御提案を申し上げているところでありますので、この辺も含めて御検討いただければと思っております。
 以上でございます。

【野村分科会長】

 どうもありがとうございました。それでは、野原委員どうぞ。

【野原委員】

 2点ほど申し上げます。1番の「デジタルコンテンツ流通促進法制」についてで、基本的にはここで検討されているとおりだと思っていまして、ぜひ、この方向で進めていただきたいと思います。先ほど事務局の方からの御説明の中に、「これは2年以内にと言われているので、じっくりと」というコメントがあって少し気になったんですけれども、インターネット上で十分にコンテンツが流通していく環境を作るというのは非常に重要な課題だと思いますので、余り腰を据えてじっくりというよりも、ぜひ積極的に実態調査等も行い、積極的に進めていただきたいと思います。
 同じような観点で、4番の検索エンジンの法制上の問題についてで、こちらも検討していただいている方向についてはこのとおりだと思っていまして、やはり我が国でも検索エンジンが適正にしっかり普及していく環境を作るということはとても重要だと思います。なので、こちらの方もきちんと論点を検討した上で、早急に結論を出していくという方向でお願いしたいと思います。以上です。

【野村分科会長】

 どうもありがとうございました。
 宮川委員、どうぞ。

【宮川委員】

 弁護士の宮川と申します。簡単に3点ほどコメントさせていただきます。
 まず、海賊版拡大防止のための措置についての中の2ページ目でございますが、親告罪の範囲の見直しにつきましては、日本弁護士連合会では2007年2月に知的財産戦略本部などに意見書を提出しております。日弁連といたしましては、著作権侵害罪が非親告罪とされることには反対の意見を表明しております。この中間まとめにもありますように、一部を非親告罪化するということについても、その実効性等を考えながら慎重な検討を進めていただきたいと要望するものです。
 それから、権利制限の見直しにつきましては、薬事行政関係のところで、文献・論文の複写については多数の意見が今出てこられたと思いますけれども、やはり健全な文献の複写事業ということと、それから公的な利害の必要性ということを調整するためには、最後には補償金の問題というものがやはり大きく出てくることになると思いますが、今回の中間まとめの中には補償金の額としては通常使用料相当額というような言葉がありますが、資料を拝見する限りではそのような合意というのが当事者間、関係者間の間ではまだできていないと思いますので、さらに関係者の方の話し合いあるいは関係各省の御指導をもちまして、いい方向に進めていただけたらと思っております。
 それから、最後になりますが、次の5ページ目のネットオークション等の関係でございますが、画像掲載については今後もまたいろいろと検討されることになると思いますが、私が1つ懸念しておりますのは、美術家や写真家等の権利者の方の利益を害することがないようにということで、非常に粗悪な画像や一部加工したような画像が逆に利用されることによって、同一性保持権の問題や著作者人格権侵害の問題も出てくるように懸念しておりますので、その点についても同時に御検討いただけたらと思っております。以上です。

【野村分科会長】

 ありがとうございました。では、最後に中山主査。

【中山主査】

 ただ今ちょうだいしましたいろいろな御意見を参考として、これからも詰めてまいりたいと思います。
 一言だけ申し上げます。まずネットオークションが随分問題になりましたけれども、美術品に限らず商品を売るときにはきちんと見せるというのは通常であり、普通は美術品を見て検査して買うわけですけれども、それが遠隔地であるがゆえに見ることができないでインターネットで見せるわけです。その場合、一々個別的にすべて権利者の許諾というのはなかなか難しい。しかし、かといって一回ネットに流れてしまうと、無制限に複製されてしまって利用されてしまっては困ります。これはまさに瀬尾委員のおっしゃったことだろうと思います。この2つをどう調和させるかというところが課題であります。一方ではきちんと見せなれば売買としてはおかしい。他方では乱用されては困る。この辺りを詰めていきたいと思います。
 それから図書館、常世田委員のおっしゃったのももっとなことと思います。これは審議会で決めたことではなく、私個人の考えですけれども、図書館はこれからどんどんデジタル図書館化していくだろうと思います。エジプト時代以来、本をため込んで大きな場所をとって、そこで閲覧させるというスタイルから、コンピューターを置いておいてインターネットでアクセスするという時代が現に来ていますし、また、それが拡大するだろうと思います。そうなると恐らく様々な大きな問題が出てきますので、図書館については今後ともいろんな検討をしていかなければならないだろうと私は個人的に思っております。
 あと1点、非親告罪の問題ですが、これは実は特許法等で非親告罪化しております。知的財産法全体の中で、著作権法だけが同じような情報を持っていながら非親告罪でいいのかという問題もありますし、10年以下の懲役という非常に重い罪の場合に、果たして親告罪として残しておくことが妥当かという問題もあります。非親告罪にするには強姦罪のような被害者の問題とか、あるいは非常に小さな細々した犯罪とか、いろいろ理由はありますけれども、10年以下の懲役となると難しいという意見もと同時に考えなければいけないのは、特許法はどちらかというとプロだけの世界の話であるということです。
 ところが、著作権法は現在、国民全体の問題になってきております。ちょっと語弊があるかもしれませんが、この部屋で、特許権侵害をしたことがある人は恐らくいないと思いますが、著作権侵害をしたことがない人は恐らくいないだろうと思います。公権的な解釈によると、大学での研究者が研究目的で複製するのは違法だそうなので、私も含めて日々侵害をしていない人はいない。国民のすべてが何らかの形で侵害に関与している。そうすると、特許法とは少し違うという側面も有しております。果たして特許法と同じように非親告罪化していいかどうか。また、著作権侵害というのは侵害罪を初め人格権侵害その他もろもろの犯罪類型がいっぱいあります。これを全部一律で非親告罪化していいか等の問題がありますので、これはこれから慎重に議論をしていきたいと思っております。
 以上でございます。

【野村分科会長】

 それでは、ほかの議題もございますので、法制問題小委員会の御報告についてはこのくらいにいたします。
 先ほど中山主査からもありましたように、本日、各委員からいただいた御意見やこれから意見募集で寄せられた御意見等も踏まえて、引き続き小委員会において検討を進めていただければと思います。
 それでは次に、私的録音録画小委員会において取りまとめていただきました中間整理について、議論を行いたいと思います。この中間整理についても今後意見募集を行い、それを踏まえてさらに審議を進めていく予定になっております。
 それでは、中山主査より御報告をお願いいたします。

【中山主査】

 私的録音録画小委員会において中間整理を取りまとめましたので、御報告申し上げます。
 私的録音録画問題は、平成18年1月の文化審議会著作権分科会報告書において、制度の抜本的見直しが提言されたことから、平成18年3月に発足した私的録音録画小委員会において1年半にわたりまして、著作権法第30条の適用範囲の見直し、私的録音録画と補償の必要性、仮に補償の必要性があるとされた場合の私的録音録画補償金制度のあり方などについて、議論をしてまいりました。
 まず、著作権法30条の適用範囲の見直しにつきましては、近年の利用実態等を調査した上で、違法録音録画物、違法サイトからの私的録音録画や適法配信事業により配信されたコンテンツからの私的録音録画については、それぞれ理由は異なりますけれども、一部反対意見はあったものの、適用範囲から除外することが適当であるとする意見が大勢でございました。
 また、私的録音録画と補償の必要性につきましては、権利者がこうむる経済的不利益について検討を行い、利用者が行う私的な録音録画全体としては権利者に経済的不利益が生じていることについては、おおむね共通理解が得られたところであります。また、一方で著作権保護技術と権利者がこうむる経済的不利益との関係についても検討を行いましたが、著作権保護技術に関する見解の相違から意見の一致には至りませんでした。
 仮に、補償の必要があるとされた場合の私的録音録画補償金制度のあり方などについての論点ごとに検討を行い、課題を整理いたしました。特に補償金対象機器・記録媒体の範囲の見直しにつきましては、携帯用オーディオレコーダーなどの記録媒体内蔵型録音録画機器については、対象に追加すべきであるという意見が大勢でありましたけれども、パソコンなど汎用的な機能を有する機器については意見の一致には至りませんでした。そのほか、対象機器・記録媒体の決定方法や補償金支払い義務者、補償金額の決定方法などの論点について検討を行い、見直しの要点を整理いたしました。
 なお、小委員会のまとめが「中間整理」という名称になっておりますのは、この問題の解決方法について一定の結論を記述しているものではなく、これまでの議論から対応策に対する基本的な考え方と、委員間での合意の形成の状況と、その論点などについて整理したものであるということでございますので、その点には御留意をお願いいたします。
 詳細につきましては事務局から説明をお願いいたします。

【川瀬著作物流通推進室長】

 それでは、事務局から御説明をさせていただきます。資料4と併せて資料4参考を御覧いただけますでしょうか。
 まず、この中間整理につきましては、第1章から第7章までで構成をされておりまして、第7章が検討結果でございます。資料4につきましては「はじめに」と第1章関係、それから第7章の検討結果ということで、結論部分だけ説明をさせていただきます。それ以外の2章から6章につきましては、資料4参考というところで、これは私的録音録画の現状や、それらの事実関係について書いてあるものでございますので、参考という位置づけにしております。
 それでは、まず資料4の1ページを御覧下さい。
 「はじめに・第1章関係」ですが、この問題に関する経緯等について記載しております。御承知のとおり、私的使用のための複製(30条)につきましては、昭和45年に制定され、その適用範囲についてはその後昭和59年、平成11年とその適用範囲を縮小していったという事実がございます。また、補償金制度につきましては、平成4年にそれまでの長い間の議論を踏まえ、著作権法の改正によって、デジタル録音録画機器及び記録媒体から補償金を徴収するという制度が導入されました。それから、平成18年1月に、先ほど主査からの御指摘もありましたように、著作権分科会で抜本的な見直しが提言されております。それを踏まえまして、平成18年4月から私的録音録画小委員会で検討を行い、まとめたものがこの中間整理ということでございます。
 次にめくっていただきますと、これが第7章関係の検討結果でございます。
 まず、この委員会で検討するに当たっての基本的な視点として3点挙げております。
 (1)は、現行の補償金制度は長い間の議論を経て、国際的な動向も考慮しながら関係者の合意の上に設けられたものですが、時代の変化等に合わせて見直しを行う、ということでございます。
 (2)は、平成18年1月の著作権分科会の報告書の提言でございまして、現行の制度について様々な分析を行い、かつ課題を整理した上で、いわゆる抜本的な見直しの検討の必要があるという提言をいただいたものですが、そこで示された課題に留意するということでございます。
 それから、(3)が本小委員会としての基本的な視点ということで、アとして、基本的には私的録音録画といいますのが社会に定着した現象ですので、そういった社会のニーズを尊重して円滑な利用を妨げない。それから、イとしまして著作権保護技術や音楽・映像ビジネスの新たな展開というものを踏まえて、そういった状況の変化を十分考慮する。それから、ウとしまして、仮に補償金制度を維持するとした場合でも、できる限り公正かつ合理的な制度を目指す。それと今後の利用実態の変化との関係における補償金制度の位置づけをできるだけ明確にするという視点でございます。
 3ページでございますけれども、私的録音録画補償金の関係の検討の前に、それと関連しまして著作権法30条の範囲の見直しについて整理をいたしました。
 そこで、2つの視点で検討しまして、1が権利者に著しい経済的不利益を生じさせ、著作物等の通常の利用を妨げる利用形態ということで、基本的な考え方は昭和45年の法制定以来、立法当初予想していない実態が生じた場合には見直しは当然であろうということでございます。
 それから、23の項目について検討したわけですけれども、1つが違法録音録画物や違法サイトからの私的録音録画ということで、ファイル交換ソフトの利用とか携帯電話向けの音楽の違法サイトのダウンロード、これはストリーミング配信は対象外ですけれども、正規商品等の流通や適法配信等の阻害というものがあり、調査結果については資料4参考の4ページにもあります。後で御覧いただけますでしょうか。かなり大量の許諾を得ない複製物が作られている実態が明らかになっているわけです。そういうものを踏まえまして、括弧書のような理由から、30条の適用除外が適当であるとする意見が大勢でありました。ただし、利用者保護の観点から、違法録音録画物や違法サイトと承知の上で行う場合に限定し、罰則の適用は従来どおりなしということでございます。ただ、これらの意見に対して一部反対意見もございました。
  3につきまして、他人から借りた音楽CDからの私的録音についても課題として挙げられましたが、これは違法状態が放置されるだけであることから、適用除外については慎重な意見が大勢でございました。
 さらに、4ページにおきまして、2つ目の視点として、音楽・映像等のビジネスモデルの現状から、契約によりまして私的録音録画の対価が既に徴収されている、またはその可能性がある利用形態について検討いたしました。
  1における基本的な考え方としましては、著作権保護技術と契約の組み合わせなどによりまして、一定の管理下に置いてこれを許容しているというような実態がある利用形態につきましては、著作物等の提供者との契約によって録音録画の対価を確保することが可能であり、かつ30条から適用除外としても、利用秩序に混乱は生じないというようなことが考えられるということから、それを踏まえて検討したのが23でございます。
  2は、適法配信事業者から入手した著作物等の録音録画からの私的録音録画でございますが、これはこの図にも書いていますように、30条があるにもかかわらず配信事業者がユーザーとの契約によって、ユーザーが行う複製を管理しているという実態があるわけです。そういう実態を踏まえた上で、30条の適用から除外することが適当であるという意見が大勢でございました。
 なお、この点につきましては、平成18年1月の文化審議会報告書でも指摘されました著作権料と補償金との二重取りの懸念が解消されるということにも留意するべきだという整理をいただいているところでございます。
  3のレンタル店から借りた音楽CDからの私的録音、また適法放送のうち有料放送からの私的録画につきましては、これは事務局で契約実態、それから契約書の内容その他の調査をしましたが、録音録画の対価が徴収されているという実態は確認できませんでした。また、そういった対価を徴収するような契約体系に変更することは、様々な理由から困難であるということもございますので、適用除外については慎重な意見が多かったということでございます。
 それから、5ページに行きまして、補償の必要性につきましては、権利者がこうむる経済的不利益について、平成4年の補償金導入時に考え方が示されていますけれども、改めて再整理をしまして、法律的な視点から(1)と(2)という整理をしたところでございます。
 また、著作権保護技術と権利者がこうむる経済的不利益の関係につきましては、著作権の保護技術によりまして録音録画回数に一定の制限があるものの、その範囲内の録画は認める場合について、どのような場合に経済的不利益が生じるかについて検討した結果、次の意見に分かれておりまして意見は一致しませんでした。
  1として、著作権保護技術によって普通の利用者が必要とする30条の範囲内の録音録画ができるということであれば、1の基準に戻って権利者の経済的利益及び補償の必要性も判断するべきであるという意見がございました。他方、2として、権利者は提供された著作物等がどのような範囲で録音録画されているかを承知の上、それは著作権保護技術の内容によって想定できるわけですけれども、提供しているので重大な経済的不利益がなく、補償の必要性はないとする意見がございまして、今言いましたように意見の一致は見ておりません。
 それから、6ページにまいりまして、補償の必要性の有無ですけれども、2の2の見解では補償の必要性がないということでございます。前ページの(2)の2の意見でございます。また、2の(1)の見解に立った上で1の考え方を踏まえて整理すると、まず、経済的不利益に関する評価については、いわゆる購入した音楽CD間のプレイスシフトやタイムシフト目的の録画について、経済的不利益が十分立証されていないという指摘もございましたけれども、1人の利用者が行う私的な録音録画は様々な形態があり、全体としては経済的不利益が生じているということでおおむね共通理解が得られました。
 また、経済的不利益があるだけでは補償の必要性はなく、当然、権利者の受忍限度を超えるということが必要となりますが、この基準については改めて定めるのは困難であり、平成4年の補償金制度導入時の実態等を総合的に評価して判断する必要があるという整理でございます。
 さらに、著作権保護技術による補償の必要性がなくなる場合の試案として、著作権保護技術の内容や当該技術と契約の組み合せによって、そのあり方次第では補償が不要になるという場合があるというところについては、大きな反対はございませんでしたので、そういう場合は補償金制度も不要になるということは当然でございます。
 (4)におきまして、補償の必要性がなくなる試案として、次のような整理が提案されているという3つの提案がされております。1として、著作権保護技術の効果によりまして私的録音録画の量が減少して、一定の水準を下回ったとき。それから、2として著作権保護技術の内容によって権利者の選択肢が広がり、コンテンツごとに関係権利者の総意として権利者側が選択権を行使できるようになって、そのような実態が普及したとき。それから、3として著作権保護技術の契約の組み合わせによりまして利用者の便を損なうことなく個別徴収が可能となり、そのような実態が普及したときには、補償の必要性がなくなるのではないかという試案が提案され、議論がされたところでございます。
 7ページにまいりまして、補償措置の方法についてですが、補償金制度による対応策としましては、1として録音録画機器・記録媒体の提供という行為に着目した制度設計、これが従来の補償金制度でございまして、国際的に見ましてもこの1の考え方が一般的でございます。それから2として、録音源・録画源の提供という行為に着目した制度設計の2つについて検討をされました。そういうことから、2の点につきましては様々な問題点があるということから、仮に補償金制度を導入するとすれば、1の制度を適当とする意見が大勢でございました。
 また、民間の契約によって対応するという方法も検討されました。これは例えば権利者が補償金の請求権をだれかに対して持つというような制度的なものを前提にしたということではなく、いわゆる民間の契約に任せて、そういった解決する方法があるのではないかという意見でございましたけれども、民間同士の契約関係に全面的に委ねるこのような方法については、実現可能性等の点から問題があり、課題が多いとされております。
 8ページにまいりまして、仮に補償の必要性があるとした場合の補償金制度のあり方について、特に補償金対象機器・記録媒体の範囲の見直しにつきましては、基本的な考え方でございますけれども、現在は主たる用途が私的録音録画である分離型のデジタル録音録画機器・記録媒体が対象でございますが、社会の実態の変化等がございますので、利用実態などを踏まえて対象機器・記録媒体の範囲を適切に見直す必要があろうという基本的な考え方が整理されました。
 見直しの要点としましては、対象機器の範囲の考え方については、このアとイが見解が対立しておりまして、意見の一致には至っていません。アは著作物等の録音録画が行われる可能性がある機器等は、原則として対象にすべきであるという考え方。イは現行法の考え方、これは私的録音録画の可能性が高い機器等を対象とするというのが現行法の前提ですが、それを原則として維持すべきであるという考え方です。上記の点から、記録媒体内蔵型の録音録画機器につきましては、対象に追加すべきとするという意見が大勢であったものの、汎用的な機能を有する機械、これはパソコンとか携帯電話ですけれども、これについては意見が一致を見ておりません。
 それから最後の9ページですが、その他、対象機器・記録媒体の決定方法の見直し、補償金支払い義務者の見直し、それから補償金額の決定方法の見直し、それから補償金管理団体や共通目的事業、補償金制度の広報のあり方等の見直しについて、問題点、課題が整理されたところでございます。
 なお、お手元の資料8ですが、本日、御欠席の大林委員から意見書が提出されておりまして、その前段の部分におきまして、補償金制度について中間整理で一定の方向が示されなかったということは残念だということ、それから特に録画については総務省におけるコピーワンスの議論を踏まえた見解が示され、最後に補償金制度の再構築について早期に結論を得ることを強く希望するということで締められております。
 以上でございます。

【野村分科会長】

 それでは、以上の報告につきまして御意見がございましたらお願いします。
 石坂委員、どうぞ。

【石坂委員】

 日本レコード協会の石坂と申します。
 著作権法第30条の範囲の見直しについて一言申し上げたいと思います。
 2005年、一昨年ごろから、特に携帯電話向けの違法音源提供サイトが急激に増えておりまして、このようなサイトからの違法な音楽ファイルのダウンロードが正規の音楽配信ビジネスの拡大を明らかに妨げております。中間整理にも記載されておりますように、昨年、日本レコード協会が調べたところの数値によりますと、このような違法サイトからのダウンロード数は年間で約2億8,700万ファイルと推計されます。昨年の正規のビジネスである着うた・着うたフルという音源配信のダウンロード数約2億8,300万回を上回る巨大な規模になっております。したがいまして、正規の音楽配信ビジネスの一層の拡大を図るために、違法サイトなどからの私的録音録画を著作権法第30条の範囲から除外するべく、著作権法の改正をぜひお願いしたいところでございます。
 以上です。

【野村分科会長】

 ほかにご意見はありますか。それでは、岡田委員どうぞ。

【岡田委員】

 作詞家の岡田と申します。
 2年前に法制問題小委員会で、iPodのようなハードディスク内蔵型の機器が補償金の対象とならなくて、先送りされたという大変残念な結果だったんですけれども、そのとき私は、それでは権利者というのは、かすみを食べて生きていきなさいということなのですかと発言したことを覚えております。その後、私的録音録画小委員会でいろいろ議論していただきまして、補償の必要性について随分整理していただいたことに対しては大変感謝申し上げます。しかしながら、新製品というか新しい機器というのはどんどん出ておりまして、そこで多くの人が私的録音録画を行っています。1日遅れれば、それだけ不利益が拡大してしまうということで、何とぞ迅速な処置をお願いしたいと思っております。
 そして、今の制度では追加指定ということで発売後の追加指定ということになっておりますが、これでは、発売されて一応ひとまわり売れた後に指定されて補償金をいただくというのでは、実際の不利益というのが改善されていないと考えますので、その辺りもよろしく考えていただきたいと思います。19年度中に結論を得るということですが、中山主査には議論をしっかりリードしていただきまして、世界に恥じない補償金制度をまとめていただきたいと思っております。
 それから、今日の報告の中で1つだけ私がちょっと違うと思ったことは、4ページの著作権料と補償金の二重取りの懸念が解消されることに留意というところ、2のところの一番下ですけれども、これに関しましては前の会議で、私はイメージ的にはネットから音楽を買ったのはパッケージを買ったのと同じことであって、パッケージから自分の録音機器にダビングするというのと同じことなので、著作権料と補償金の二重取りではないということを強く申し上げたはずですが、ここでこのようなことが述べられていることには少し不満を持っております。
 以上です。

【野村分科会長】

 それでは、辻本委員お願いします。

【辻本委員】

 コンピュータソフトウェア著作権協会の辻本でございます。
 私的録音録画小委員会中間整理案の中で、違法サイトからの私的録音録画を30条の適用範囲から除外するというのが適当とされておりますが、30条の適用範囲から除外する場合の条件といたしまして、複製一般でなく権利者の不利益が顕在化している録音録画に限定するということになっております。
 しかしながら、我々の協会で調査いたしました結果、ファイル交換ソフト利用実態調査やWinnyによる被害相当額調査などによりますと、音楽・映像のみならず、ゲームソフトやビジネスソフトなどのコンピューターソフトウエアにつきましても、量的にかなり多く、また1本当たりの単価も高いことから、権利者の不利益が顕在化していることは明らかでございます。したがいまして、権利者の不利益を顕在化している著作物に限定して30条の適用から除外するとしているものであっても、録音録画だけに限定するものではなく、すべての著作物を対象とするところから、議論を行うべきではないかと考えております。
 具体的に言いますと、現在、Winnyなどの交換ソフトや違法サイトからの私的目的のダウンロードを行うことは、先ほど申しましたように著作権法第30条で適法とされております。この点につきましては、ダウンロードも違法とすべきの意見があり、また、私的録音録画小委員会におきまして議論されておることは聞いております。結果として、ファイル交換ソフトや違法サイトなどに見られる違法録音録画物のダウンロードにつきましては、30条の適用範囲から除外するとの意見が大勢であると、私的録音録画小委員会中間整理の第7章第2節に盛り込まれておりました。
 しかし、上記中間整理におきまして、利用者保護の観点から、著作物全般でなく、被害が顕在化している録音録画に限定するということになっておりますが、この点について、なぜ録音録画に限定するのか問い合わせましたところ、私的録音録画小委員会での審議は、法制問題小委員会からの要請で私的録音録画に限って議論したからということでございました。したがいまして、ゲームソフト、ビジネスソフトについては、そもそも議論の対象外であったということをお聞きしております。このままではコンピューターソフトウエアが対象から抜け落ちるという法律に改正されるおそれがありますので、今後はコンピューターソフトウエアも含めた著作物全体のダウンロードを了とするところから議論していただきたいというのが私どもの要請でございます。よろしくお願いしたいと思います。

【野村分科会長】

 それでは、続けて高井委員、どうぞ。

【高井委員】

 補償金制度の見直しについてですが、実は今日本当は日本映画製作者連盟の迫本委員が御出席してお話をする予定だったのですが、急に欠席になりまして、私も映連の一員であることから、迫本委員の依頼を受けまして、この補償金制度の見直しについて一言申し上げさせていただきたいと思います。
 今般の総務省の第四次中間答申に提言されましたコピーナインプラスワンの複製回数に関してですが、これまでコピーワンスだったものが一挙にいわばコピーテンなったわけで、正直言いまして、実は映画業界は大変衝撃を受けています。しかし、この中間整理を読ませていただきますと、一応暫定的なルールであることや、あるいは海賊版の流通を助長しないように努力していただけるということなので、映連としては不本意だけれども、しようがないのかなというところに今立ちつつあるわけです。したがいまして、本当にもしそうなるのであれば、やはり私的録音録画補償金制度の運用というものは、絶対的な条件であると、今映連としては考えておりますし、主張させていただきたいと思いますので、この点だけぜひよろしく御理解いただけますようにお願い申し上げます。
 以上です。

【野村分科会長】

 ほかに御発言いかがでしょうか。
 野原委員、どうぞ。

【野原委員】

 私も私的録音録画小委員会のメンバーで、10数回にわたっての議論に参加してきましたが、ずっと違和感がある点が1点あるので、発言したいと思います。というのは、私的録音録画補償金制度がないと著作権者の方が不利益をこうむるということが大前提になっていて、補償金の制度をどうするかという議論が毎回行われているんですけれども、エンドユーザーというか消費者の立場に立ってみると、もっと大きな不利益をこうむっているぞという感じもしなくはないんです。
 何を言いたいかというと、例えば30年ぐらい前、私も音楽が大好きで、たくさんレコードを買いました。レコードでずっと好きな曲をたくさん聞いていたんですけれども、レコードが廃盤になって、レコード針も売られなくなって、レコードのプレーヤーで聞くことができなくなったので、仕方なく同じ楽曲をCDでも買うようになりました。そうすると、最初に買ったLPで3,000円だし、プレーヤーで聞く環境を自分で買って準備してそれで音楽を楽しみ、その後、今度はCDをまた買って、CDプレーヤーも買って音楽を聞き、最近ではやはりiPodが出たり、いろんな新しい形で音楽が聞けるようになると、また、そのためにお金を払ってプレーヤーも買うし、それから楽曲を新たにもう一度同じ曲をダウンロードしないと携帯で聞けなかったりするというふうに、著作権者の方が一度つくって提供されたものを私一人が個人的にいろんな形で視聴するために、何度も何度もお金を支払っているということも言えると思うんですね。
 そういった形で見たときに、そのたびにある分量がちゃんと著作権料として支払われていると思うんですけれども、その話はなくて、それを一度たまたま私が例えばiPodでも歩きながら聞きたいと思って録音すると、それに対して補償金をくれというふうに言われる著作権者の理論ばかりが、この場で議論されている点に違和感を覚えます。これまでにユーザーが何度も新しいデバイスになったり、制度になったりするために支払ってきている金額はだれに行っているんでしょうかと。
 もちろん、それは著作権者には来ていない部分もあるとおっしゃられるのはよく分かります。でも、であれば、そのプレーヤーをつくっていらっしゃる方、それからレコーダーをつくっていらっしゃる方、著作権者との契約をきちんとやっていらっしゃる方々に、そこを解決していただきたいと思うんですよね。消費者がみんなそのたびに補償金も上乗せして、レコーダーを買ったときに一緒に支払って下さいと言われているわけで、やはり少し消費者軽視ではないかなと感じます。
 消費者が何回も同じ楽曲を聴くためにその対価を支払っているのに、著作権者の方はかすみを食っていると言われるというのは違和感を覚えます。
 以上です。

【野村分科会長】

 それでは、岡田委員、どうぞ。

【岡田委員】

 今の野原委員の御発言ですけれども、その根底に音楽というのはなぜただで聞けないのかということがあると思います。音楽というのはただで聞いて当たり前で、お金を払って聞くものではないという考え方が根底にあるように思います。我々権利者は、技術が発達していろんな機器が出回って、普通だと昔、大ヒット曲だと100万枚ぐらい売れたものが、ダビングをすることが非常に簡単で楽になって、そしてみんなが1枚買ったものを回してたくさん録音するようになったその結果、売上げ枚数が減るということは我々の収入が減っていくということで、お父さんが会社に働きに出ている人は、春になるとベースアップということで労働運動をなさいますが、我々は日々年々収入が減っているわけでして、かすみを食べて生きていけと言われているような気がすると言ったのはそういうことです。
 創られたものに対するリスペクトがあれば、それに何がしかのお金を払って音楽を聞く、楽しむということがあっていいと思いますし、そういうことが作家のインセンティブを上げて、また、おもしろいものをつくろう、楽しい音楽をつくろう、そしてよりすばらしいものをつくって、みんなの心が豊かになってもらえたらいいなというところに行くわけで、音楽はただで聞くものだ、どうしてお金を払わなければいけないんだというところから発想すると、それは今ここで議論されていることはおかしなことだということになると思います。

【野村分科会長】

 それでは、野原委員、どうぞ。

【野原委員】

 音楽をただで聞こうとは全く思っておりませんので、そこのところを誤解なさらないでいただきたいと思います。適正な金額を支払って、サービス料として対価をお支払いして、音楽を楽しむものだと思っています。それが何度も何度もAという曲に対してCDを買って3,000円払い、1曲だけダウンロードしてプラス150円払いというふうに複数になっているわけで、今、支払っている対価が作曲家の人たちや楽曲をつくった人たちに対するリスペクトが足りない態度だとは思わないんですよね。ということで、消費者から見ると、レコードプレーヤを買ったり、CDプレーヤーを買ったり、iPodを買ったりと新たなデバイスを次々に買ったり、メディアとしても、レコード盤、CD、ダウンロード楽曲と、視聴環境が変わるたびにその変化を受け入れてコストを支払っているにもかかわらず、プラスアルファで私的録音録画に対して補償金という対価を支払うよう言われているわけで、自分のメディアを自分で楽しむために、ちょっとiPodに動かすだけに何で補償金が要るんだろうという疑問も感じられるということです。
 以上です。

【野村分科会長】

 それでは、ほかの方、御意見いかがでしょうか。
 河村委員、どうぞ。

【河村委員】

 主婦連合会の河村です。
 3点ほど申し上げたいことがあるんですけれども、1点目は先ほどの高井委員の御発言ですが、総務省で検討されたコピーワンスがコピーナイン、複製10回になったという件などについてでございます。私は、私的録音録画小委員会に所属しておりますが、補償金の話をするときに、皆さん、その制度を支持する方々は、諸外国、ヨーロッパなど、よく外国法制ではというお話をなさいます。
 一方、このコピーワンスの問題になると、その方たちは諸外国のことをおっしゃらないので、私は自分の知っていることをここで皆さんに申し上げたいと思います。地上波の無料広告放送や公共放送に技術的著作権保護をかけているのは世界で日本だけです。そして、私は総務省の会議にも出ておりますが、米国、韓国などでは技術的に複製の制限をしなくても、放送番組の豊かな二次利用のビジネスが展開されていまして、先ほど岡田委員は何か「かすみを食べて」とおっしゃっていましたけれども、そのビジネスによって大変な利益を上げていらっしゃいます。実演家の方、音楽家の方、制作者の方も、大変な利益を放送番組の二次利用によって得ています。そのような諸外国の例というのも申し上げたいと思います。
 それから、2点目なんですけれども、先ほど岡田委員が、4ページの適法配信事業者から入手したもののことについて、二重取りの懸念が解消されることに留意ということについて、ここで配信事業者から入手することはパッケージを買うことと同じだというようにおっしゃったように思います。私に誤解があればお許し下さい。私の判断では、岡田委員が少し誤解なさっているのではないかなと思い、私の見解を申し上げますと、適法配信事業者は例えば何回複製できるなどという指定をして配信事業を行っているわけですね。そこからユーザーがそのルールのもとに、契約のもとに入手して使うということは、権利者は配信事業者に許諾を与えている時点で、ユーザーがするコピーの分も了承しているということになり、従って30条から外すという意味ではないかなと解釈しております。ですから、もしここを30条から外さないままですと、ここに書かれているとおり、まさに二重取りということが消費者からは言えると私は判断しております。
 それから、3点目ですけれども、補償金制度に関しまして、普通の消費者の素朴な印象を申し上げます。デジタルの複製は権利者の方への損害が大きいということで補償金を取られているわけですが、まず1つに、ハードディスクというのは、必ず中に録音録画されているものは消える運命にあるということを申し上げたいと思います。ハードディスクというのは数年の命しかない、ずっともつものではありません。また、CDというメディアについても、私は技術的には詳しくはないですが、耐久性においても技術的な安定性においても、問題があると言われていると聞いています。
 ユーザーの素直な感想といたしまして、テープで録音していたときには、それをどこかのテープデッキにかけて、例えば車の中のテーププレーヤーにかけて、音が鳴らなかったなどということは一度もありませんでした。もしそういうことがあったら、不良品だといって文句を言ったと思います。でも、今CDで補償金のかけられた音楽用のCD−ROMを買っておりますけれども、それでコピーしても、再生できるかできないか運に任せるような形です。再生できない場合も多々あります。もっとひどいことには、デジタルと言われているからには1かゼロかのはずですが、同じ複製物が同じ機械に対して再生できたり、できなかったりします。本当に私は手かざしをして祈るような気持ちでプレーボタンをきがあるぐらいでございます。
 消費者としては、そのような機器の不安定性なども全部引き受け、保護技術も受け入れた上で、いつもいつも補償金を取られているという立場にあるということについては、とても不公平な部分があると考えております。
 以上です。

【野村分科会長】

 ほかに御意見いかがでしょうか。
 村上委員、どうぞ。

【村上委員】

 お聞きしていても、かなり根本的なところで、見解の違いがあるように感じます。ただ、前回の議論と比べたら、今回の中間整理案というのは非常によく整理されていますし、まあまあ結論もこういうものかなという気がしています。前回のときは私も言ったのは、欧米主要国といって大体アメリカ、EU、イギリス、フランス、ドイツあたりの実態を十分に調査して、それで抜本的な見直しも検討したらどうかと、そんな感じで話したと思います。けれども、私は国際比較レポート、報告書を読んでいまして、本当に抜本的な解決というのはできるのかなというのが私の受けた印象となります。
 というのは、国際比較を見ていまして、私の受け取り方が間違いないならば、第一に補償金制度を導入した国で、これを完全に廃止した国というのはどうやらないようだと思いますし、また、対象となる機器を、前に対象としていたのを一部減らしたとか削減した国というのも、どうやら主要国ではないような気がしています。それから第2に、ここでの神学論争というか、根本的な論争というのは、欧米でも最終的な決着はついていないのではないかという気がいたしています。したがって、各国の対応を見ましてもやっぱりいろいろと分かれている、特にいろんな機器を追加するかどうかについての取り扱いというのは国ごとに分かれているというのが実態かと思います。
 そういう意味で、日本でも現時点で最終的に取りまとめるということになると、本当に抜本的などちらかにした対応というのは本当にできるのかどうかというのは多少疑問なので、ある意味で一部の機器を追加する、中間的な対応みたいなことをせざるを得ないことにもなるのではないかなと思います。小委員会で検討するときにはいろいろなことを考えて、検討していただければと思っています。
 それぐらいが意見になります。

【野村分科会長】

 どうもありがとうございました。では、最後に一言、中山主査よりお願いします。

【中山主査】

 いろいろな貴重な御意見ありがとうございました。
 この補償金の問題は、平成4年につくられた補償金制度が絶対的に正しいものであるということを前提にすれば、手早く新しい機器を政令で追加し、迅速に処理すれば片がつくわけですけれども、技術の発展によって平成4年時代と大分状況が違っております。そこで、知的財産戦略本部におきましても、この制度について抜本的なことを考えろという指示がございまして、平成18年のこの審議会におきましても、この制度は廃止や骨組みの見直し、さらには他の措置の導入も視野に入れ、抜本的な検討を行うべきであると書かれております。したがいまして、なかなかそう手早く新しい機器を指定すればすむというわけにもいきません。
 非常に難しい点は、技術が完全に進歩して、個々のユーザーの利用をコントロールできるというところまではいっていない。しかし、ある部分ではコントロールできている。そういう中間段階、中二階の段階でなかなか制度を抜本的に変えるというのは難しいわけで、今、村上委員おっしゃったような、どうもこういう結論に落ちつかざるを得ないと思われます。
 なお、今日頂戴した意見を参考にして、もっともっと議論していきたいと思いますけれども、ただ、二重取りの議論というのは小委員会でも盛んにしましたけれども、これは二重取りであるという意見とないという意見がございます。法律家の目から見ますと、はっきり言ってどちらでも理由づけできます。しかし、二重取りであるかどうかという議論をあまり続けていても生産性がないので、要は利用者が便益を受けたと、その一部をいかにして権利者に還元するかというそれが大事であって、二重取りかどうかという議論はちょっと措いておくというか、これだけを追求しても妥当な結論は出ないだろうと、私は主査としてはそんな感じがいたしました。

【野村分科会長】

 それでは、以上で私的録音録画小委員会の報告について終わりたいと思いますが、この点につきましても、中山主査からもありましたように、各委員からいただいた御意見、それから、これから行う意見募集で寄せられる御意見等も踏まえまして、引き続き小委員会で御検討をお願いしたいと存じます。
 最後に、過去の著作物の保護と利用に関する小委員会の検討状況について報告させていただきます。
 これについては、私自身が主査代理として委員会の審議に参加しておりますけれども、まだ中間的に取りまとめて報告するという段階に至っておりませんので、本日は事務局から検討状況の報告だけをしていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】

 それでは、資料5の方を御覧いただければと思います。
 こちらにつきましては、過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の9月27日、直近の小委員会で配付された資料をもとにしているものでございます。
 まず、30ページを御覧いただけますでしょうか。
 こちらが小委員会の開催状況でございますけれども、今まで8回ほど議論しておりまして、第1回目は検討課題についてのフリートーキングでしたが、その後、どのような観点から検討すればよいのか、どのような点に留意しながら検討すればいいのかということをまず網羅すべきだろうということで、関係者から幅広くヒアリングを行っております。それに基づきまして、ヒアリングの総括と検討課題の整理を行いまして、議論の柱立てを決めて、それ以降、個別の課題ごとに一つ一つ議論を続けてきました。そして、前回9月27日に今回の配付資料のような形で、とりあえず論点ごとの意見をそれぞれ併記するような形で意見を取りまとめていると、そんな状況でございます。
 本日、大分時間も押しているようでございますので、議論の観点だけ簡単に御紹介させていただきたいと思います。
 1ページに戻っていただきまして、まず経緯でございます。こちらの小委員会は元々17年1月のこの分科会の「今後の検討課題」において挙げられておりました保護期間の延長、それから戦時加算の問題について議論するというところが出発点でございますが、昨年9月に著作権問題を考える創作者団体協議会からの要望書もありましたし、一方で、逆に昨年11月には著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラムから、慎重に実証的な議論を行うべきという旨の要望もあり、さらには日本弁護士連合会からも同じく慎重な議論を求める旨、さらにはもし延長するのであれば、データベースの整備や実効性のある裁定制度など、利用を困難にしないための措置を講ずるべきだと、そういった提案もございまして、これらを総合的に議論するということで、小委員会の議論が進められてきております。
 こういった御指摘なども踏まえまして、保護期間の問題だけではなく、過去の著作物等の利用の円滑化、それからアーカイブ事業を円滑に行うための方策、意思表示システム、そういったものについてもセットで検討課題としながらやってきているわけでございますが、次のページでは、これらの課題の相互の関係について、次のような意見が出ているところでございます。
 上の1つ目の丸のところですけれども、仮に保護期間が延長された場合には、利用許諾を得るための権利調査などが一層困難になる、そういった場合も考えられますので、例えば権利者情報のデータベースの構築ですとか集中管理の一層の促進、あるいは裁定制度の改善、それから、その他需要に見合ったコストで著作物が利用できるような方策、こういった方策をセットで講じるべきだというような意見がございました。一方で、延長の代替措置として考えるべきではないというような御意見もありましたし、代替措置であるのであれば、まず、実効性のあるシステムが実際にできるのかどうかを考えてから議論すべきではないか、そういった観点もありまして、いろいろな検討課題が交ざり合っているという状況になっております。
 こういった観点のもとで、それぞれの個別の検討課題が議論されておりますが、まず1番目の過去の著作物等の利用の円滑化方策については、どのようなものが課題とされているか、簡単に御紹介いたしますと、4ページの上のところに個別に列挙されておりますので、そちらで御紹介させていただきます。
 利用の円滑化策として提案・御要望が出てきたものとしましては、まず、権利の集中管理を一層進めることあるいは関係者間協議の推進ですとか、権利者情報をしっかり管理するような仕組みを構築すべきだというような議論、それから先ほども申しましたように裁定制度の簡素化、あるいは著作隣接権の裁定制度の新たな創設というような意見も出ておりました。それから、例えばアメリカ、イギリスなどの例を参考に、権利者不明の場合には裁定制度のように費用のかかる方法以外の方法もあるのではないかというような御提案ですとか、複数の権利者のうちの一部の人のみが反対した場合に、全体が利用できなくならないように措置を講ずべきではないかという観点から議論が行われておりまして、それぞれにつきまして(2)から(5)まで様々な意見が出されているところでございます。
 引き続きまして、11ページのアーカイブの議論についての主な観点でございます。アーカイブにつきましては、基本的には新たな創作は過去の文化遺産の土台に依拠しているのではないかという問題意識から、文化の発展に寄与する意味でも、アーカイブが広く収集・保存されて利用できるようにすることは重要だという基本認識のもとで議論が行われております。ただ、小委員会の状況といたしましては、「アーカイブ」とはどういうものを指すのかということで、その共通認識がまだ委員会の中で図られていないような状況ではないかと思っておりまして、今後、そういったところを詰めながら、具体策の議論に入っていくのではないかと思っております。
 現段階で具体に提案されているものとしましては、保存のためのデジタル化、もしくは劣化した資料の保存のための複製、そういったものについての手段を講ずるべきではないかといった御議論ですとか、アーカイブとして仮に著作物そのものを収集するようなアーカイブを想定した場合の基準としまして、絶版ということを基準にすべきなのか、すべきでないのか、そういった議論がされております。
 次に、保護期間の問題についての検討の視点でございますけれども、こちらは13ページにざっと視点を整理させていただいております。こちらも様々な御意見がございまして、それぞれ賛否両論、それから、それぞれの意見についても検証が必要ではないかというような御意見があるわけですが、検討の視点といたしましては、aからeまでに整理してございます。
 aは、保護期間の国際的な調和を図るべきなのか図るべきでないのか、あるいは諸外国と合わせるとすれば、欧米に合わせるのか、アジア・アフリカを考えるのかといった御議論、それから欧米に合わせるとするのであれば、欧米それぞれ延長したことにそれぞれ背景がございますので、その理由が日本にあてはまるのかどうか、そういった観点から御議論がされております。
 bのところでは、著作権法の目的が文化の発展に資することが最終的な目標だというところから端を発しまして、保護期間の延長がその後の文化の発展につながるのかどうかという点で、創作インセンティブの増減の観点、利用の支障となるかどうかの観点、それから文化の創造サイクルにどういう影響を与えるのか、そういった観点から議論が行われております。
 cのところでは著作権ビジネスへの影響、それから、dとしまして創作者の創作意図などの人格的利益の保護の観点からどうか、eでは情報流通の今後のあり方と整合的になるのかどうか、そういった観点から幅広い議論が行われております。個別の意見は相当出ておりますので、省略させていただきます。
 なお、その中で著作隣接権の保護期間につきましては、資料8で、本日御欠席の大林委員からあらかじめ御意見を頂戴しておりまして、下半分でございますが、実演家の保護期間に関しまして、実演家の場合には今、実演後50年ということで、生存中に権利が失効する場合があるということから、70年という形にするか、もしくは死後起算にすべきではないかという御意見が寄せられております。
 元の資料に戻っていただきまして、最後、27ページのところで意思表示システムの議論の観点を御紹介いたします。こちらにつきましては、それほど意見の量が出ているわけではございませんが、意思表示システムについて、著作権者が利用許諾の意思などを表示しておくことによって、より流通が広がるのではないかといった観点から、利用促進の措置として意思表示システムの信頼性を上げるための法的な措置、あるいは利用条件をあらかじめ定めて許諾するような意思表示システムを権利者情報のデータベースとセットとして議論してはどうか、そういった御議論がされているところでございます。
 簡単でございますが、以上でございます。

【野村分科会長】

 それでは、御意見いただきたいと思います。三田委員、どうぞ。

【三田委員】

 今の事務局の説明ですと、様々な意見が出て収拾がつかないような印象をお持ちだと思うんですけれども、私がそこに自分で出席して感じた印象は違っておりますので、私の個人的な見解を簡単にお話しさせていただきたいと思います。
 この小委員会に出ていらっしゃる方の中には、著作権というのはなるべく制限をして、自由な流通を図った方がいいという考え方と、それから自分で作品をつくっている人は、できるだけ権利を長く延ばしてほしいという考え方をしておりますので、50年がいいか70年がいいか、あるいは100年にした方がいいのかということは永遠に結論の出ない問題であります。そこで、私が提案しているのは、コンテンツが非常に多い欧米先進国が既に70年になっているのに対して、日本がなぜ50年にとめ置くのかと。日本の作家のつくったものは、それだけ価値のないものなのかということで、なぜ日本だけ50年にとめ置かれているのかについて御意見を求めたかったんですけれども、なかなかそれについての具体的な御意見は出てまいりませんでした。
 ヒアリングで出てきた様々な意見というのは、50年で今切れておりますので、それからアーカイブするにしろ、ネット上に掲示するにしろ、復刻版を出すにしろ、許諾なしでできている。これが70年になったら困りますという利用者の側の御意見であります。これに対して私は、データベースの整備とそれから裁定制度の簡略化、これをしっかりやりまして、そこに意思表示のシステムであるとか、そういういろんな要素を盛り込んで提供すれば、50年以後70年の分の今簡単に利用できているものを同じような感じで全くストレスなしに利用できる、そういう状態にすることは可能であると考えております。
 しかも、このシステムがうまく動きますと、50年以内のものについても、御遺族の方が意思表示をすれば、許諾なしに利用できるということになりますし、あるいはアーカイブをするというものも、このデータベースに提示されていないものについては簡単な裁定制度で利用できるようにしましたら、これは利用者にとっては非常に便利なシステムになると考えます。
 利用を促進するシステムというものは今までいろいろ考えられているんですけれども、その中には権利制限を含むようなものも出てくると思います。普通の場合、著作権者は権利制限を拡大するということになりますと、これは一致団結して大反対をするということになるんですけれども、今回の場合は50年を70年に延ばすんだという著作者の権利の拡大の中で議論されている裁定制度の利用とか、そういう新しいシステムの構築でありますので、このチャンスをうまく使って、利用者にとっても利用しやすいシステムをつくるというのがまたとない絶好の機会ではないかなと思います。
 その意味では、いたずらに年限を幾らにするのが本当はいいのかという議論を長引かせるよりも、できるだけ早く決着をつけて、利用者の皆様にも大変便利なシステムができたと喜んでいただけるようなシステムづくりに向けて、積極的に具体的に動きを始めるべきだと考えます。
 以上です。

【野村分科会長】

 ありがとうございました。
 道垣内委員、どうぞ。

【道垣内委員】

 この検討状況の紙をくまなく読んで読み尽くしているわけではございませんが、私が思うところが書かれていない、あるいは議論されていないようなので、もし可能なら議論していただきたいのですが、文化の発展に寄与するというのが著作権の目的で、作品の保護期間を延ばすことによってその目的達成のためのインセンティブを与えるべきだという議論があるわけです。ただ、そうであれば、新しく施行日以後に創作されたものについてそうするのであれば分かりますが、そうでなく、既に50年という前提でつくられたものについて遡及的に延ばすということの説明がないので、そこを納得できるような御議論をぜひしていただきたい。もちろん諸外国との関係でハーモナイズが必要だという話ならばまだ納得できますけれども、文化の発展に寄与するという議論については、今のような点について疑問を抱く私のような者に対しても、納得できるような御議論をいただきたいと思います。

【野村分科会長】

 ほかに御意見いかがでしょうか。
 それでは、特に今日の段階ではよろしいでしょうか。
 この委員会はまだ議論をこれから進めていくということですけれども、今回は意見募集ということを行う段階には至っておりませんので、本日、御意見いただいた内容を踏まえて、引き続いて小委員会において検討を進めていきたいと思います。
 それでは、最後に、本日の議事の最後ですけれども、著作権等の管理業務に関する実態調査について、事務局より簡単に御報告をお願いいたします。

【木村著作権課課長補佐】

 それでは、資料6でございますが、著作権等の管理業務に関する実態調査を実施いたしましたので、その報告書で概略を御報告させていただきます。
 まず、この調査の目的でございますけれども、この報告書の1ページのところに示させてもらっておりますが、平成13年から著作権等管理事業法が施行されたところですが、その附則第7条、これは施行後3年経過後の見直し条項でございまして、これに基づきまして著作権分科会において平成16年、17年に見直しの検討をしております。その検討結果につきましては18年1月の分科会報告書で示されておりまして、制度改正の必要性はないものの、非一任型管理事業の業務の実態等をよく調査するようにということが求められております。そして、その求めに応じまして私ども文化庁では、今後の参考資料とするために、昨年、平成18年6月と平成19年3月にヒアリング調査等を行いまして、実施した結果を取りまとめたものでございます。調査方法等につきましては2ページに示しております。
 なお、この調査に当たりましては、関係者の利害関係等に配慮いたしまして、回答事業者名を公開しないことを前提にしまして調査に協力を得たものでありまして、報告書の中では事業者名を一切公表しておりません。便宜上ですが、A事業者、B事業者等によって表示をさせてもらっております。
 実態調査の内容につきましては、目次のところを見ていただくと、調査結果のところにありますように、音楽、文芸、コミック等様々な分野につきまして調査をさせていただきまして、それをまとめております。3ページから41ページにかけまして各分野ごとに管理業務の概要、利用手続等の流れ、非一任型管理業務を実施している理由、利用者とのトラブルの有無などにつきまして整理をしております。
 本日は、その総論としまして、まとめのところだけ御紹介させていただきますが、42ページのところでございます。先ほど一任型とか非一任型という言葉が出てきたので、簡単に御説明申し上げますと、現行の著作権等管理事業法においては、著作権等の管理を、使用料額を決定する権限を管理事業者が持っているような場合には一任型管理としております。それとは違って委託する方、委託者側に留保されているような場合には非一任型管理と区分しておりまして、今回の調査の対象となっておりますのは、委託者に使用料額の決定権限が留保されているような非一任型管理の場合について調査をしております。
 その主立った分野の特徴的なところを申し上げますと、音楽の分野でございますけれども、映画への録音、ビデオグラム等への録音、出版利用、こういったものにつきましては諸外国では自己管理とするような慣習がありまして、我が国では外国曲に限って非一任型管理といったものを採用しているようです。また、国内曲については逆に一任型管理ということをやっておりまして、世界的に見るとこのような例というのは珍しいようであります。そのほかにゲームソフトへの録音、コマーシャル送信用録音につきましては、著作者の感情等への配慮などを理由に、国内・外国曲とも非一任型管理が採用されております。
 また、翻訳出版、美術の分野におきましては、元々一任型管理による取引慣行がないといったことで、ほとんど非一任型管理になっているような状況でございます。
 文芸の分野ですと、教材への利用の場合、また、文献複写の分野になりますと、自然科学系や医学系の学術論文の複写利用の場合は、利用する著作物が特定され、代替性を有しないといったことから、利用者からは使用料が高額になると大きな負担になるというような意見が出ております。
 次に、実演の分野ですけれども、ビジネスに直接影響する一次利用、テレビ放送への収録とかの場合には実演家または所属事務所で直接使用料を決定している例が多く、収録された番組の二次利用に関する許諾手続については、管理団体に委託して行っているような状況でございます。ここでは、特に事業者からは、実演家のイメージ戦略とかマネジメント戦略に直接影響するといったような理由で、一任型管理にはなじまないというような意見が出ておりますし、また、利用者の方からは、できれば一任型管理を望むというような意見が出ております。
 今回の調査はほんの一部分でございますけれども、非一任型管理とか許諾手続の代行、関係者の取引ルールに基づいた利用許諾など、調査結果のところにまとめております。著作者の名誉声望への観点とかビジネスへの影響などの観点から、一任型管理にはなじまない利用形態が結構存在していることが明らかになったところでございます。
 以上、調査結果の概略だけでございますが、報告でございます。

【野村分科会長】

 どうもありがとうございました。
 何か御意見等ございますでしょうか。特によろしいでしょうか。
 以上で本日の分科会を終了したいと思いますので、最後に事務局から連絡事項がございましたらよろしくお願いします。

【山下著作権課長】

 本日はまことにありがとうございました。また、各小委員会の委員の方々におかれましては、活発な御議論をいただきまして、このような形におまとめいただきましたこと、改めて事務局からも感謝を申し上げさせていただきます。
 本日御議論いただいた法制問題小委員会の中間まとめと私的録音録画小委員会の中間整理でございますけれども、来週週明け16日から1カ月間、広く国民の皆様に対しまして意見募集を行うということとさせていただきたいと思っております。その後、それぞれの小委員会におきまして御審議をいただきました後、1月になりましてから著作権分科会へ御報告をいただき、分科会で再び御審議をいただいて、分科会の報告書として取りまとめていただくということとなりますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。

【野村分科会長】

 それでは、本日はこれで文化審議会著作権分科会第23回を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。

─了─

(文化庁著作権課)