我が国では、音楽著作権の管理については、古くから管理事業者による集中管理が行われているが、映画への録音、ビデオグラム等への録音、出版、ゲームソフトへの録音、コマーシャル送信用録音など一部の利用形態については、非一任型による管理が行われている。
なお、映画への録音、出版等に係る権利行使について管理事業者に委託している例は世界的に見ても珍しく、諸外国の管理団体では、音楽出版者による自己管理とされている場合が一般的である。
A事業者は、古くから放送利用や演奏利用など、様々な利用形態について音楽著作権の管理事業を実施している。
平成19年4月現在、A事業者が管理している楽曲数は、約720万曲(国内曲:145万曲、外国曲:575万曲)である。また、A事業者は諸外国の管理団体との間で管理契約を締結しており、その数は平成19年1月末現在、111団体(81ヶ国、4地域)に及んでいる。
A事業者は、映画への録音、ビデオグラム等への録音(著作物の固定に係る使用料に限る)、出版については、それぞれ外国曲に限って、また、ゲームソフトへの録音、コマーシャル送信用録音については、外国曲、国内曲にかかわらず、委託者は利用契約の都度、使用料の額を決定できることとしており、非一任型による管理を行っている。
なお、広告主からの依頼によりテレビCM用に創作した音楽や劇場用映画のテーマ音楽、背景音楽など、いわゆる委嘱楽曲については、著作者は依頼者に対し、依頼目的として掲げられた一定の範囲の使用を認めてもよいこととされている。
この場合、著作者はA事業者に作品届を提出する際に一定の範囲の使用を認める旨を記入して提出しA事業者の承諾を得る。
A事業者は、非一任型管理事業について、それぞれの利用形態ごとの手続の流れをホームページ上で情報提供している。
上記の分野において、A事業者が使用料の額の決定について関与することはない。
出版の場合においては、外国曲に限って非一任型管理としている。出版利用は利用者からの利用申請が多く、利用申請ごとに音楽出版者に確認する手続を省略するため、OPと契約を結んだSPが出版に関する権利を取得している外国曲に限って、SPがOPへの確認を経て指定する使用料をA事業者にあらかじめ登録する方式を採用している。
実際の利用手続の流れとしては、利用者は、あらかじめ音楽出版者から同意を得た後A事業者に利用申請を行う。申請を受けたA事業者は、利用者に対してSPの事前同意の有無を確認した後、あらかじめ登録された使用料に基づいて許諾を行っている。
なお、音楽出版者であるSPが自社で出版を行う場合は、A事業者の管理から除外されている。
映画への録音及びビデオグラム等への録音の場合については、外国曲に限定して非一任型管理にしている。これは、諸外国では、このような利用形態については権利者による自己管理とされており、A事業者と諸外国の管理団体との相互管理契約の対象ともされていない。これらのことを考慮し、非一任型管理としている。
出版の場合についても外国曲に限定して非一任型管理にしている。諸外国では、出版については古くから音楽出版者による自己管理とされており、A事業者と諸外国の管理団体との相互管理契約の対象ともされていない。
また、OPとSPとの契約では出版権についてはOPが権利を留保している場合も多いことから、OPと契約を結んだSPが出版に関する権利を取得している曲に限って、非一任型管理としている。
ゲームソフトへの録音及びコマーシャル送信用録音については、外国曲、国内曲にかかわらず、非一任型管理にしている。
これらの利用は、演奏等のように音楽をそのまま利用する場合と異なり、企業・商品・サービスのイメージ、ゲームのイメージ等の強い印象を楽曲に与えてしまう傾向があるため、著作者の感情に配慮して非一任型管理としている。
非一任型管理による利用者とのトラブルは起こっていない。
特になし。
著作権等管理事業法施行後、音楽著作権の管理事業を新たに開始したB事業者においては、映画への録音、コマーシャル放送用録音について非一任型管理を行っている。
B事業者の管理委託契約約款では、取次による委任契約が採用されており、一任型管理を原則としている。ただし、映画への録音とコマーシャル放送用録音については、利用契約の都度、委託者が使用料の額を決定することとされている。
なお、B事業者では、いわゆる委嘱楽曲については取り扱っていない。
平成19年3月末現在、B事業者が管理している著作物の件数は約1万4千件である。
B事業者は、A事業者と同様に、非一任型管理事業に係る利用形態ごとの手続の流れをホームページ上で公開している。
映画への録音及びコマーシャル放送用録音ともに、利用者は権利者にあらかじめ同意を得た上でB事業者に利用許諾の申請を行っている。
使用料の額については、完全に委託者の意思に任せているが、まれに委託者からB事業者に対して一般的な使用料の問い合わせがあると聞いている。このような場合、B事業者はこれまでの許諾実例の使用料を紹介している。
一般的にプロモーション効果を期待するコマーシャル放送の場合は、使用料を安くする傾向があり、新曲のプロモーションの場合は無料という場合が多い。また、旧作の場合は新曲に比べて使用料は高くなる傾向がある。
これまでに、使用料の折り合いが付かないため、利用申請を断ったケースはほとんどない。
映画への録音の場合は、音楽を映像とともに利用する形態であり、諸外国では権利者による自己管理とされているため、このような慣行に配慮して非一任型管理としている。
コマーシャル放送用録音の場合は、音楽を広告に利用することから、音楽と商品のイメージが合わない場合も考えられるため、著作者の感情に配慮して非一任型管理としている。
非一任型管理に関する大きな混乱は起こっていない。ただし、利用手続を知らない利用者が、権利者の同意を得ずに直接B事業者に申請する場合がまれにある。このような場合、B事業者は利用者に対して、まず権利者の同意を得て使用料の額を決定するよう回答している。
特になし。