参考資料1

各国の私的録音録画補償金制度

  ドイツ フランス オランダ オーストリア
1.許諾を得ずに私的複製が許容される範囲 営利を目的とせず、明らかに違法に作成された原本が用いられない場合、私的使用を目的とした著作物の少量の複製を行うことができる。

  • 国会で審議中の改正法案では、インターネット上で違法に提供されているものからの複製は、私的複製から除外することとしている。
私的使用を目的とし、集団的使用が意図されていない場合、著作物の複製を行うことができる。ただし、著作物の通常の利用を妨げる、または、著作者の正当な利益を不当に害するものであってはならない。 商業目的でなく、家庭内で、個人での使用や研究のみを目的として著作物の少量の複製を行う場合は、著作権の侵害とみなされない。 私的使用を目的とする場合、複製を行うことができる。
2.導入時期及び対象行為 1965年
録音及び録画
1985年
録音及び録画
1991年
録音及び録画
1980年
録音及び録画
3.補償金制度の趣旨 私的使用のために供される録音・録画用の機器・記録媒体を提供する製造業者等は、著作権侵害に寄与するものであり、その侵害につき連帯責任を負うべきものと考えられた。 音の分野における私的複製は、権利者がコントロールできない著作物の新しい利用方法であって、著作物の通常の利用を妨げ、かつ、著作者の正当な利益を不当に害している行為といえるため、著作者はこのような行為について補償を与えられなければならないと考えられた。 私的利用、研究、練習を目的とした利用に関して、著作権者に公正な支払(fair payment)がなされるべきと考えられた。 私的複製により著作者が経済的に受ける不利益を補償するためのもの。私的複製により恩恵を受けるのは消費者であるが、消費者から補償金を徴収するのは困難なため、製造業者等が補償金を支払うとされている。
4.対象機器・記録媒体の範囲 デジタル・アナログの録音・録画機器(一体型含む)及び記録媒体

  • ドイツ特許庁がパソコンを補償金の対象とすることを決定
デジタル・アナログの記録媒体(一体型機器に内蔵されたフラッシュメモリ又はハードディスク、外付けのメモリーカードを含む)

  • パソコンは対象とされていない
デジタル・アナログの記録媒体 デジタル・アナログの記録媒体(一体型機器に内蔵されたハードディスクを含む)

  • 最高裁において、パソコンのハードディスクは補償金の対象とならないとされた。
5.対象機器・記録媒体の特定手続き 法律の別表で定められているが、改訂は行われておらず、実際には、徴収団体と製造業者との交渉で決定。 権利者代表、製造業者・輸入業者代表、消費者代表、議長(国の代表)によって構成される委員会で決定。 法務大臣により指名された私的複製協会及び製造業者からなる組織(SONT)で決定。 法律は技術的に中立な規定となっており、個別に特定はしていない。実際には、管理団体と製造業者との交渉で決定。
6.補償金額の決定手続き 特約がない限り、法律の別表に定める額が適用されることになっている。アナログ機器・媒体は別表の規定によるが、デジタル機器・媒体は別表に存在しないため、製造業者との交渉で決定している。

  • 補償金の額を全て交渉で決める制度に変更予定。改正案では、以下の要因を考慮すべきことを規定する予定。
  • どの程度私的複製に使われるか。
  • 媒体の性質・性能
  • 製造業者や輸入業者の負担
上記の委員会で決定。
額は、
  • 11時間当たりの料率、
  • 2保護著作物の複製率、
  • 3記録時間
を乗じて算定される。
法務大臣により指名された私的複製協会及び製造業者からなる組織(SONT)で決定。 管理団体が額を決めて、産業界の代表と協議し決定。不調の場合は特別仲裁手続きあり。
7.補償金の単価の例(2006年) 録音・デジタル・機器 2.56ユーロ 対象外 対象外 対象外
録音・デジタル・媒体 MD/0.08ユーロ 1h/0.4373ユーロ 1h/0.42ユーロ 1h/0.18ユーロ
録画・デジタル・機器 18.42ユーロ 対象外 対象外 対象外
録画・デジタル・媒体 4.7GB(ギガバイト)/0.174ユーロ 1h/1.2577ユーロ 4.7GB(ギガバイト)/0.60ユーロ 1h/0.18ユーロ
8.徴収額(2005年)(注1) 約1億4,700万ユーロ
(約205億8,000万円)
約1億5,500万ユーロ
(約217億円)
約2,681万ユーロ
(約37億5,340万円)
約1,763万ユーロ
(約24億6,820万円)
9.著作権保護技術の反映方法 特になし。

  • 改正案では、額の決定にあたりDRMの程度を考慮すべきとしている。
額の決定にあたり著作権保護技術を考慮することとされている。 法律の覚書にて、額の決定にあたり著作権保護技術の影響を考慮しなければならないとされている。 著作権保護技術が適用されている場合は権利者との合意ができているとみなされ、証拠として契約書を提示すれば補償金が返還される。
10.著作権保護技術の実装に関する規制 実装に関する規制はないが、私的複製等の権利制限規定に従い著作物が利用される場合、著作権保護技術を用いている権利者は、必要と認められる限度において、当該利用をし得るために不可欠な手段を提供する義務を負うとされている。 技術的措置規制機関が、私的複製等の例外措置を受益者から奪うことのないよう監視、必要な場合は調停等を行う。 なし なし
11.支払義務者 製造業者・輸入業者
販売業者も連帯して責任を負う
製造業者・輸入業者 製造業者・輸入業者 製造業者・輸入業者
卸売・小売業者は保証人としての責任を負う
  スペイン アメリカ カナダ
1.許諾を得ずに私的複製が許容される範囲 私的使用を目的とする場合、複製を行うことができる。 複製一般について、フェアユースの要件を満たす限りにおいて複製を行うことができる。
また、録音については、消費者が非商業的目的で音楽を録音することは著作権侵害として訴訟を提起できない。
複製一般について、調査や私的研究を目的とした複製を行うことができる。
また、録音については、私的使用のために、音楽の著作物、実演、レコードを複製する行為は著作権の侵害にならない。
2.導入時期及び対象行為 1987年
録音及び録画
1992年
録音
1998年
録音
3.補償金制度の趣旨 私的複製により本来権利者が受け取るべき使用料を補償するという性格を有すると考えられている。ただし、消費者から補償金を徴収するのは困難なため、製造業者等が補償金を支払うとされている。 本来、消費者が自ら使用した著作物の対価は自ら支払うべきと考えるものの、市場が機能しないため、権利者への報酬を確保できるよう補償金制度が存在する。消費者から補償金を徴収するのは困難なため、製造業者等が補償金を支払うとされている。 家庭内で行われる私的録音に対して権利者がコントロールを及ぼすことができないため、私的録音を許す代わりに報酬を受けることができることとした。
4.対象機器・記録媒体の範囲 デジタル・アナログの録音・録画機器及び記録媒体

  • 一体型オーディオ機器については、現在、政府で調整中。
    パソコンについては対象とされていない。
DAT、DCC、MDの録音機器・記録媒体 アナログ・デジタルの記録媒体

  • カナダ連邦控訴裁判所において、メモリー内蔵型デジタルオーディオレコーダーは対象とならないとされたが、再度、著作権委員会が追加を決定し、現在、異議申し立てを受け付けている。
6.補償金額の決定手続き アナログの場合、一定額を法律上に明記。
デジタルの録音録画機器・記録媒体の場合には、製造業者等と徴収団体との交渉を経てスペイン文化省と産業観光商務省が承認。決定の際には、
  • 権利者が実際に被る損害
  • 機器・記録媒体の使用程度
  • 機器・記録媒体の容量
  • 複製の品質
  • 技術的保護手段の利用可能性、応用程度、効果
  • 複製の保存期間
  • 機器に適用される補償金相当額は一般的平均市場価格と経済的に釣り合うこと
を考慮に入れて補償金を決定する旨を規定している。
法律で一定率を規定 徴収団体であるCPCCの提案に基づきカナダ著作権委員会が決定。
7.補償金の単価の例(2006年) 録音・デジタル・機器 0.6ユーロ 移転価格の2パーセント 対象外
録音・デジタル・媒体 0.36ユーロ 移転価格の3パーセント 700MB(メガバイト)/0.77加ドル
録画・デジタル・機器 6.61ユーロ 対象外 対象外
録画・デジタル・媒体 4.7GB(ギガバイト)/1.4ユーロ 対象外 対象外
8.徴収額(2005年)(注2) 約5,870万ユーロ
(約82億1,800万円)
約1,433千ドル
(約1億6,900万円)
約3,508万ドル
(約35億4,300万円)
9.著作権保護技術の反映方法 額の決定にあたり、著作権保護技術の利用可能性、応用程度、効果を考慮することとされている。 なし なし
10.著作権保護技術の実装に関する規制 なし VOD、有料放送、DVD等からの複製を除き、家庭内の複製を制限する技術の使用を禁止。 なし
11.支払義務者 製造業者・輸入業者
流通業者や卸売・小売業者は連帯責任を負う
製造業者・輸入業者 製造業者・輸入業者

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