第7章 検討結果

第5節 私的録音録画補償金制度のあり方について

 「第4節 補償の方法について」において検討したとおり、仮に補償の必要性があるとすれば、その対応方法は、録音録画機器及び記録媒体の提供に着目した制度によることが最も現実的であると考えられることから、この方法を前提に具体的な制度の仕組みについて検討した。

1 対象機器・記録媒体の範囲

(1)現行制度の問題点

1 現行制度による対象機器の範囲
a 分離型専用機器

 現行制度は、支払義務者を利用者にし、利用者が機器及び記録媒体を購入時に一括支払方式により、包括的に補償金を支払うこととしている。これは機器等の購入者が高い確率で私的録音録画を行うことを前提にした制度設計であるので、現行制度は、主たる用途が私的録音録画である機器等を想定しているものと考えられる。また、第30条第2項の規定の仕方から、録音録画機器とその記録媒体が分離していることを想定している(分離型専用機器)。

b 附属機能の除外

 第30条第2項では、対象機器を「デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器」とし、その後に続く括弧書で、放送用の機器等のように私的録音録画以外の目的で製作される機器と録音機能付電話機等の「本来の機能に附属する機能として録音又は録画の機能を有するもの」を対象機器から除外しており、機能に着目して用途を推定する方法を採用している。

c 用途への着目

 平成4年の現行法制定当時は、録音録画機能が附属機能でない機器は、当時の機器の実態から特に考えるまでもなく主たる用途が録音録画の機器と考えられていたが、その後の機器の実態を踏まえ、平成10年の政令改正で「主として録音(録画)の用に供するもの」という規定が挿入された。これはパソコンにおける録音等が立法当初は事実上不可能であったのが、その後の技術の進展により可能になってきたことを踏まえ、パソコンの録音等の機能は附属機能ではないので対象機器になるのではないかという疑念を払拭するため、主たる用途が録音録画である機器を対象とするという立法の趣旨を確認するために行った措置と考えられている。

 以上の点を前提に現行制度における対象機器を整理すると、主たる機能が録音録画機能のものは、主たる用途も録音録画であると捉えていることとなる。なお、録音録画機能しかない機器や、附属機能はいくつかあるが主たる機能は録音録画機能である機器が対象になることはいうまでもない(注1)。

 また、反対に、次のような機器については、現行制度の下では対象にはならないと考えられる。

 現行法では機器と記録媒体により録音録画される場合についてのみ補償金の支払義務が生じるように制度設計されていることから、対象機器にはならない。

 現行制度の趣旨は、録音録画の可能性が高い機器だけを対象とするということであるから、録音録画機能を含む複数の主要な機能を有しており、利用者の選択により録音録画が主たる用途にもなり、そうでなくなることもある機器については、対象機器として想定されていないと解される。

 現状では録音録画機能はあくまでも附属機能であると思われるので対象機器とはならない。

 このようにIT技術の急速な発達に伴い現行法制定時には想定しなかった機器が開発され普及している。これらの機器の中には、現行制度では対象にならないが、立法時に整理した対象機器についての考え方に照らすと対象に加えても特段の問題はないと考えられる機器もある一方、新たな考え方を構築しなければ対象機器になし得ないものもある。対象機器の範囲をどのように設定するかは、制度の問題点とも関係し、制度の安定性という観点から配慮が必要な事項でもある。

 いずれにしても、平成4年当時とは機器の現状が大きく変わっていることは間違いないので、現状を踏まえ、どのような考え方に基づき対象機器を整理するかについて、十分検討する必要がある。

2 対象記録媒体について

 対象記録媒体についても、対象機器と同様の問題がある。

 現行制度は、対象機器が政令で決定されれば、その機器に使用される記録媒体が対象になるとしている(専用記録媒体)が、基本的には録音録画が主たる用途の記録媒体が対象となっている。例えばCD−RやDVD−Rについては、録音用又は録画用の媒体が開発されており、一般のデータ用とは切り離した形で制度の運用が行われている。

 しかし、現行制度は、専用記録媒体(例えば録音用CD−R)が、政令指定の対象になっていない機器(例えばパソコン)でも使えることや、既存の記録媒体や今後市場に普及するであろう新しい記録媒体について、基本的に同じ仕組みを使いながら録音録画用とその他の用途用を仕分けできるかどうかなどの問題があるとする意見がある。これは、記録媒体も汎用化の傾向にあることから生じる制度的課題だと考えられるが、こうした記録媒体の現状を踏まえながら、対象記録媒体の範囲を再整理する必要がある。

(2)見直しの要点

1 基本的考え方

 現行制度は、分離型専用機器と専用記録媒体を対象にしているが、現状では、平成4年当時とは状況が異なり、専用機器等以外に様々な機器等が開発普及している。このようなことから、対象機器等の範囲を定めるに当たっては、次のような考え方に分かれ、意見の一致に至っていない。

 なお、「第3節 補償の必要性について」で整理したいくつかの論点について、そこで合意された内容次第では対象機器等の範囲のあり方に影響するのはいうまでもない。

 分離型専用機器は、時代の進展とともに減少する傾向にあるが、一方、他の機能を有しながらも録音録画機能を有し、かつ実際に録音録画に用いられている機器が増加しており、利用態様に応じて補償金額に差を設けることはあり得ても対象には加えるべきとする考え方に基づく。

 この考え方からは、現行制度の仕組みのままでは問題が生じるとすれば、対象機器等を拡大するということを前提に制度の仕組みを再構築すればいいということになる。

 もともと補償金制度は、包括的な制度であるが、録音録画の可能性が高くない機器等からも補償金を徴収するとなると、録音録画をしない人からも補償金を徴収する可能性が現在よりも高くなり、制度の問題点を拡大することになるので適切ではないという考え方に基づく。

 この考え方からは、仮に対象機器等の範囲を拡大する場合には、利用形態、著作権保護技術等を考慮し、制度の問題点の拡大が最小限となるよう対象機器等を限定するべきということとなる。

2 機器等の類型ごとの考え方

 対象機器等の範囲について、機器等の類型ごとに整理すると次のとおりである。

 現行制度の対象となっている分離型専用機器と専用記録媒体については、特に対象から除外する理由はなく従来どおり対象にすべきであることでおおむねの了承を得た。

 ただし、第30条の適用範囲から除外された利用形態のみに使用される機器等は対象範囲から除外されるべきこと、著作権保護技術の内容によっては当該技術を用いたシステムのみに使われる機器等が対象外になることもありうることに異論はなかった。

 私的録音録画を主たる用途としている機器である限りは、特に分離型機器と一体型機器を区別する必要はないので、対象にすべきであるとする意見が大勢であった。

 例えば最近の携帯用オーディオ・レコーダーの中には、附属機能かどうかは別にして、録音録画機能以外に静止画・文書等の記録やゲームのサポート機能等の機能を有しているものがある。このような機器については、製造業者の販売戦略、利用の実態等から少なくとも現状においてはほとんどのものが録音録画を主たる用途としていると考えられるので、対象機器に加えて差し支えないと考えられるとの意見があった。

 パソコンについては、先述した立場の違いにより対象にすべきかどうかについて考え方の差があり、意見の一致に至っていない。

 なお、仮にパソコンを除外した場合、補償金の対象とならない録音録画が拡大することになるが、第30条の範囲の見直しにより、パソコンを用いた違法録音録画や違法サイトからの録音録画や適法配信からの録音録画が第30条の適用範囲から除外されること、また一方で、パソコンの場合は、音楽CDから録音し、当該機器を経由して例えば携帯用オーディオ・レコーダーに更に録音されることも多く、最後の機器等のところで補償金の支払があれば事実上補償されているのではないかという意見があった。

 また、パソコンについては、製造業者はハードウェアを提供しているにすぎず、録音録画機能を初めとして文書作成機能、メール機能、インターネット機能など全ての機能はソフトウェアにより実現しているが、録音録画機能は発売時点でインストールしているものもあれば、後から利用者が任意でインストールしたものもあるので、その全てについて製造業者側が責任を負うのはおかしいのではないか、または、仮に製造業者側が一定の責任を負うとしても、機器等のどの範囲まで責任を負うのか明確にするべきだとする意見があった。

 留守番電話のような他人の著作物等が録音される可能性が低くしかも大量に利用されることがないものを対象にしないことについて異論はなかった。

 しかしながら、携帯電話、録音機能付カーナビゲーションについては、前述した立場の違いによって考え方の差があり、意見の一致に至っていない。

 なお、例えば、録画機能を組み込んだテレビのようなものについては、購入者のほとんどがテレビの視聴と放送番組の録画の二つの目的を持って購入するところから、当該機器を利用して録音録画が行われる可能性が高いこと等から、このような機器については対象に加えるべきであるという意見があった。

 元々記録媒体は、録音録画に限らず、文書、写真等の静止画など様々な情報が記録できるものであり、録音録画機能はその記録機能の一部であるものが多い。

 この記録媒体の取り扱いについても、前述した立場の違いにより何を対象にすべきかについ考え方の差があり、意見の一致に至っていない。

 なお、録音録画機能を有する機器等は多種多様であり、以上の整理は代表的な機器等を念頭において整理化して検討を加えたものであり、個別の機器等についてはこれらの考え方を踏まえて、更に詳細な検討の上、判断されるべきである。

 また、第3節2(3)イ−2の立場からは、著作権保護技術が使用されている録画源(例えばデジタル放送(注2))を録画する機器及び記録媒体については、対象機器等にはならないとすべきであるとする意見があった。

2 対象機器・記録媒体の決定方法

(1)現行制度の問題点

 文化審議会著作権分科会報告書(平成18年1月)では、現行の政令指定方式については、

の2点が問題点として指摘されている。

 また、「1 対象機器・記録媒体の範囲について」で説明したように、現行制度の導入時には専用機器がほとんどであったものが、技術の発展に伴い、様々な機能を組み込んだ機器が開発普及しているという状況の変化がある。当時は分離型専用機器と専用記録媒体により録音録画される方法しかなかったので、現行制度は、主たる機能が録音(録画)機能であれば、その主たる用途は録音(録画)であることを念頭に制度設計されている。したがって、主たる用途の要件は、ある程度客観的な要件であり、政令上このような要件を定めたとしても運用上特に問題は生じなかった。

 しかし、機器等の範囲については、前述したように立場の違いによって考え方が違いその範囲は決まっていないが、仮に専用機器だけでなく、それ以外の機能を有する機器等にも拡大する場合は、現行の政令指定方式で問題が生じないのかについて十分検証する必要がある。

 更に、現在では記録装置を内蔵した一体型の機器も普及しており、この点からも現行の政令指定方式で問題ないのかどうかの検証も必要である。

(2)見直しの要点

1 政令指定方式の見直し

 政令指定方式は、法的安定性、対象機器等の特定の明確性の点で優れた制度であることは間違いなく、その方式を踏襲するという考え方を否定する必要はない。

 ただし、文化審議会著作権分科会からの問題点の指摘を踏まえ、機器等の現状と対象機器の変更の課題も考慮して、次のような整理を行った。

 以上の点を踏まえ、次のような見直し方策があると提案され、基本的方向性はおおむね了承された。なお、この点については、基本的な方向性は了承するものの、具体的な制度設計を見た上で、制度の可否を判断したいという意見があった。

 法令で定める基準に照らして、公的な「評価機関」の審議を経て、文化庁長官が定める。

2 特定の方法

 技術による指定については、現行法制定当時と比べて録音録画技術は多様化する傾向にあり、新たな技術が市場に投入されることも多くなっているが、対象機器等の明確性という観点からは、技術を指定することは対象機器を特定するための重要な要素の一つであることは否定する必要はないと考えられることに異論はなかった。

 ただし、現行制度は、分離型専用機器を前提として、一定の規格を有する磁気テープ、光磁気ディスク、光ディスク等の記録媒体への固定を想定した指定ぶりとなっているが、仮に一体型の機器についても対象にするとした場合、その記録技術の特定方法については、更なる工夫が必要であるとの意見があった。

 次に、今後は用途の基準が重要になると考えられるが、現行の用途の基準については、先述したようにある程度客観的な要件として規定されているが、機器等の現状においては、録音録画機能が主たる用途かどうかの判断が難しくなってきており、仮に用途要件を定めるとすれば、できるだけ紛れがないように詳細な要件を法令で規定することや、上記の方法のように最終的には関係者の合意で判断するような仕組みが必要と考えられるとの意見があった。

3 補償金の支払義務者

(1)現行制度の問題点

 現行制度は、利用者を支払義務者とし、機器等の製造業者等を協力義務者(補償金の支払の請求及びその受領に協力)としている。

 文化審議会著作権分科会報告書(平成18年1月)では、利用者が機器等の購入時に一括して補償金を支払うという特例方式で実際は補償金が支払われている現行制度の下では、「実際に著作物の私的録音録画を行わない者も機器や記録媒体を購入する際負担することとなる」とした上で、「この問題を解消するための返還金制度もそもそも返還額が少額であり実効性のある制度とすることが難しい」とし、補償金の返還制度に対する問題点について指摘している。

 現行制度は、第30条第2項により、利用者が私的録音録画を行ったときに権利者に補償金請求権を認めるという形式をとっているが、機器等の購入者のほとんどは私的録音録画をするということを前提にした制度であっても、機器等を購入したが当該機器等の使用期間中に私的録音録画を一切しなかった場合を完全に否定することはできないので、返還制度が設けられている。

 返還制度は、以上のとおり補償金支払義務者を利用者としていることとの関係で設けられたものであり、返還制度の問題を解消するとすれば、補償金の支払義務者を誰にするかということに直結する問題として、制度設計を行う必要がある。

(2)見直しの要点

 支払義務者については、世界各国の制度と同様に私的録音録画に供される機器や記録媒体の販売によって利益を上げている製造業者等とすべきであるとする意見がある一方、録音録画を実際に行う利用者を支払義務者とする現行制度の考え方を維持すべきであるとの意見がある。

 支払義務者の考え方を法律的に整理すると次のとおりである。

 このような法律上の整理については、特にエに関して、民生用録音録画機器等が業務用等に利用される場合があること、実際に私的録音録画に使用しない利用者もいることなどから、消費者の返還請求権を奪うのは問題であり、返還制度をより利用しやすくする観点からの検討も必要ではないかとの意見があった。

 法的な整理は、以上のとおりであるが、先述したように支払義務者の問題は、返還制度を実効性のあるものと見るかどうか、また対象機器等の範囲をどうするのかによって、結論が異なることになると思われるので、他の制度上の仕組みを検討する過程の中で更に検討を進める必要がある。

4 補償金額の決定方法

(1)現行制度の問題点

 現行制度における補償金の決定手続きに大きな問題点はないと思われるが、現行法制定当時と異なり、著作権保護技術により録音録画が一定の制限を受ける場合があることの影響度をどのように補償金に反映させるかという問題がある。

 なお、補償金額は、認可申請前に関係者が意見交換を行い、合意又はほぼ合意された金額が申請される慣行があるが、事前に関係者間で意見交換することは制度化されていないところから、関係者の意見が制度上反映される仕組みが必要だという指摘がある。

(2)見直しの要点

 補償金額の決定に当たっては、著作権保護技術の影響度を補償金に反映できるようにすべきであることに異論はなかった。これは、「第3節4 著作権保護技術により補償の必要性がなくなる場合の試案」のところで整理したように仮に補償金制度の必要のない社会状況が実現するとしても、そこに至る過程の中で補償金は減っていくはずであるから、そのことを制度上担保することは重要であると考えられるからである。外国法制においても、著作権保護技術の影響度を考慮することを法制化している国がある(注3)。

 なお、著作権保護技術の影響度を補償金の額に反映するため、具体的にどのような仕組みにするかについては、具体的な制度設計を待つ必要があるが、いずれにしても権利者、製造業者、消費者等の関係者の意見が十分反映できる仕組みを考える必要がある。

 契約に基づく私的録音録画や、プレイスシフト、タイムシフトなどの要素は補償金額の決定にあたって反映させるべきであるとすることについてもおおむね異論はなかった。

 補償金の決定プロセスとして、補償金はその性質上原価というものがないので、支払い側がどの程度までなら負担できるかということが重要な要素になるところから、事前の意見交換そのものがなくなることはあり得ず、認可申請に当たっては、関係者の意見を充分反映した案が提出されることは今後も期待されているところである。

 なお、現行制度においては、申請された案は、文化審議会著作権分科会使用料部会(学識経験者で構成)の審議を経て、認可されることになっている。この方法では、補償金の額の決定が恣意的に行われる可能性は少なく、必要に応じて使用料部会で利害関係者の意見を聞くなどすることで手続きの透明性等は確保されるという意見がある一方、補償金額の決定にあたっては、著作権保護技術も考慮に入れながら、対象機器等の特定やその利用実態とも関連するので、2(2)で提案された「評価機関」で審議すべきであるとの意見があった。

5 私的録音録画補償金管理協会

(1)現行制度の問題点

 現行制度は、現行法制定当時の機器等は録音用と録画用に完全に分かれていたこと、録音と録画では関係の権利者が異なる場合もあること等から、両者を完全に切り離した形で制度設計をしているが、最近では同一の機器等において録音と録画ができる機器等も販売されていることから、同じ機器等に対し二つの団体から別々に補償金を請求する可能性が生じている。

 補償金管理協会の事業の一つとして共通目的事業があるが、現行制度では、それぞれの協会が(現実には両協会で調整しているとはいえ)独自に事業を実施しているので、合理的、効率的な事業が実施できるのかという問題点の指摘もある。

(2)見直しの要点

 同一機器等に対する二つの補償金管理協会からの別々の請求の回避、共通目的事業の合理的・効率的実施、管理経費の削減等を考えると、補償金管理協会は1つにすることで異論はなかった。

 なお、補償金管理協会は両団体とも公益法人(社団法人)であるが、公益法人の合併は認められていないので、両団体を解散した上で、新たに法人を設立し、業務を引き継ぐ必要があること、公益法人改革の一環で公益法人制度が根本的に改められることとなっていること等から、補償金の徴収・分配業務が円滑に行くよう制度のあり方は十分検討する必要がある。

 また、補償金請求権は、補償金管理協会が徴収分配機関として文化庁長官から指定された場合は、権利者の意向に関わりなく強制管理されることになっているので、現行制度と同様の制度設計であるときは、補償金管理協会は一つに限定されると考えられる。

6 共通目的事業のあり方

(1)現行制度の問題点

 文化審議会著作権分科会報告書(平成18年1月)では、「共通目的事業の内容が十分知られていない。また、権利者のみならず、広く社会全体が利益を受けるような事業への支出も見られる」との指摘があった。

(2)見直しの要点

 補償金制度は包括的な制度であること、個々の利用者の録音録画の実態を詳細に把握することは事実上不可能であり、個々の権利者へ厳密な配分を行うことには限界があるので、権利者全体の利益に資するような共通目的事業を廃止する必要はないことでおおむね了承された。

 事業内容については、法律によって、「著作権及び著作隣接権に関する保護に関する事業」と「著作物の創作の振興及び普及に資する事業」を実施することが定められているが、この範囲を更に限定する必要はないことでおおむね了承された。

 なお、文化審議会著作権分科会の「権利者のみならず、広く社会全体が利益を受けるような事業への支出も見られる」との指摘であるが、

などの意見があった。

 また、共通目的事業の用途については社会的関心が高いと考えられるところから、事業の透明性を確保するため、事業内容の公開を義務付ける等の措置が必要と考える。また、事業の実施に当たっては、権利者、製造業者、消費者等の幅広い意見が反映できる仕組み作りが更に重要となる。

 なお、共通目的事業の割合については、現行制度では二割となっており、おおむね適正な割合と考えられるが、正確な分配ができないこと等の理由からこの割合を引き上げるべきであるとの意見があった。

7 補償金制度の広報のあり方

(1)現行制度の問題点

 補償金制度の広報については、補償金管理協会が独自の事業を実施しているほか、製造業者等においても商品の説明書にその旨を記載するなどの方法により広報が実施されている。しかしながら、補償金制度の認知度は低く、これが補償金制度を分かりにくくしている大きな原因であると指摘されているところである。

(2)見直しの要点

 制度設計の仕組みに係わらず、消費者に補償金制度を十分説明し理解してもらうことが重要であることはいうまでもない。この制度に関する理解度を進める事業については、補償金管理協会の役割が最も重要であると考えられるので、法律上補償金管理協会に補償金制度の広報義務を課し、その位置付けを明らかにする必要があると考えられることでおおむねの了承を得た。

 もっとも、広報事業については、補償金管理協会だけの事業にとどまるわけではないので、関係の権利者団体、製造業者等、消費者団体等の幅広い関係者がこのような事業に積極的に協力する必要があるとの意見があった。

 また、補償金がどのように徴収・分配されているかの内容を消費者に知らせることがより重要であるとの意見があった。

 なお、広報に大きな予算を割くよりは他の有意義な事業を優先すべき等の理由から、広報事業の義務化に反対する意見があった。

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