第7章 検討結果

第4節 補償措置の方法について

 仮に補償の必要性があるとして、考えられる補償措置の方法としては、補償金制度による対応と契約による対応の二つに大別される。

1 補償金制度による対応

 この補償金制度による対応としては、個々の利用者から個別の私的録音録画行為ごとに補償金を徴収することは困難であるので、それに代わる方法として、以下の二つの考え方について検討した。

 補償金制度を採用している全ての国と同様の制度であり、私的録音録画が行われるのは録音録画機器と記録媒体が普及したためで、権利者の被る経済的不利益と機器等の普及には因果関係があることから、機器等の提供行為と結びつけて権利者への補償を実現しようとするものである。現行制度も基本的にこの枠組みの上に制度設計されている。

 この方法による場合、機器等の製造業者にもその責任の一端(我が国の場合は補償金の請求及び受領に関する協力義務)を担ってもらうのが不可欠であり、我が国では協力義務者、諸外国では支払義務者という位置づけの違いはあるが、機器等の製造業者に一定の責任を負ってもらい権利者と利用者の利益調整をしようとするものである。

 制度設計としては、包括的な制度にならざるをえないが、できるだけ実態に即した制度になるよう、対象機器、記録媒体の範囲及びその決定方法、補償金の支払義務者、補償金の決定方法、補償金の徴収・分配の仕組みなど幅広い点について法的又は運用面から整理する必要がある。

 世界に例がない制度であり、録音源・録画源が提供されるから私的録音録画が行われるので、権利者の被る経済的不利益と私的録音録画と録音源・録画源の提供とは因果関係があり、録音源・録画源の提供者にもその責任の一端を担ってもらうという考え方に基づく。

 この考え方は、著作権保護技術の普及により、著作物等の提供者が著作権保護技術、又は当該技術と契約を組み合わせることによって、利用者の行う私的録音録画を管理することが可能となってきており、著作物等を提供する段階で補償金を支払えば合理的・効率的であるという考えに通じる。

 制度設計としては、権利者と提供者が契約する際の対価に補償金を上乗せして支払えばよく、機器等の範囲、補償金額の決定も、補償金管理協会や共通目的事業も必要なくなるなど極めて単純になる。

 イの制度については、私的録音録画問題の本質を根本から見直す必要が生じる。また、録音録画機器を所有していない者からも事実上補償金を徴収することになること、対象機器の決定の論点は解消されるが、私的録音録画の可能性を一切無視して補償金を徴収することになることなど、制度の不合理さが目立つ制度にならざるをえず、仮に補償金制度を導入するとすれば、アの制度が適当であるとする意見が大勢であった。

2 権利者と録音源・録画源提供者との契約による対応

 補償金制度だけに固執せず、権利者と著作物等の提供者との契約によって解決する方策を関係者は追求するべきであり、その結果第30条を改正して、補償金制度を廃止したり、場合によっては第30条の適用範囲を縮小することができるという意見がある。

 この意見は、著作物等が消費者に提供される場合、著作権保護技術の発達により、その著作物等がどの程度録音録画されるかは事前に想定でき、また想定されないまでも録音録画されることが不可避であるとすれば、あらかじめ権利者と著作物等の提供者の間でそれを見越した契約をすることで権利者は利益を確保できるという考え方に基づく。このような契約によって権利者の利益が確保される利用実態が増加すれば、相対的に補償金制度の必要性は減少するというものである。ただし、この考えは、先述のイのように著作物等の提供者に法的に補償金の支払義務を課すことまでは求めず、あくまでも民間同士の契約関係に委ねることになる。

 これはこの問題を解決する一つの方策ではあるが、次のようないくつかの問題を含んでおり、権利者と著作物等の提供者の契約に委ねることによってこの問題を全面的に解決できるかについては課題が多いものと考えられる。

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