アメリカ合衆国では、1981年からアメリカ合衆国議会において補償金制度に関する審議が始められたが、いわゆるベータマックス裁判(「参考資料2」参照)の結果、私的録画を除く私的録音に係る機器・記録媒体に課金するAHRA法(家庭内録音法)が制定され、1992年に発効した。その後、技術の進展により新しい製品が登場しているにもかかわらず、アメリカ合衆国では、同法に基づく対象品目の追加はなされていない。
アメリカ合衆国では、包括的な権利制限規定を置き、著作物の性質、使用の量・程度、潜在的な市場又は価値への影響等の要素を勘案し、「公正な使用(fair use)」を認めている(第107条)。
なお、2001年2月にアメリカ連邦第9巡回区控訴裁判所は、ファイル交換ソフトを利用した著作物のダウンロードはレコード会社の複製権を侵害すると判断している。
対象行為は、私的録音(デジタル録音に限る)である。請求権は、著作者(レコード製作者を含む)に認めており、機器及び記録媒体の製造業者等に対して行われる(第1003条(a))。
なお、同法は、汎用コンピュータやその関連の機器・記録媒体は対象とされていないが、これは、同法制定当時、コンピュータを介して音楽を録音する行為を想定していなかったためである。
また、デジタル録音機器にデジタル複製の世代コントロールを可能にするコピー制御SCMS(Srial Copy Management System)等の採用を義務づけている。
デジタル録音機器及び記録媒体の製造業者及び輸入業者に補償金の支払義務が課されている。
現在、家庭内録音法の対象とされている機器・記録媒体は、DAT、DCC、MDなどの録音機器・記録媒体であるが、これらの製品は年々売上額が減少しているため、補償金の徴収額も減少している。
なお、1998年にアメリカ連邦第9巡回区控訴裁判所は、MP3形式のポータブルレコーダーは、コンピュータを介して音楽をMP3形式のレコーダーにダウンロードしているため、そのような行為を想定していない家庭内録音法の対象とはならないと判示している。
私的録音に係る補償金の額は、法律で録音機器・記録媒体ごとに一定率を定めている。
年 | 徴収額(単位:千ドル) | 徴収額(単位:百万円) |
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2006(前半期) | 約1,433 | 約169 |
2005 | 約2,420 | 約286 |
2004 | 約2,667 | 約275 |
製造業者や輸入業者が、録音機器・記録媒体の頒布報告書を添えて補償金をアメリカ著作権局に支払っている。
権利者に対する分配については、家庭内録音法で規定されており、分配対象者は、レコード製作者、実演家、ソングライター・音楽出版社である。これらの分野の徴収管理団体を通じて個々の権利者に分配されている。
補償金の返還制度は存在しない。
徴収した補償金を社会的・文化的事業に使用することは行っておらず、全て権利者へ分配されている。