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著作権分科会 国際小委員会(第1回)議事録・配付資料

1. 日時
  平成18年5月26日(金曜日)10時30分〜13時

2. 場所
  パレスビル3-D会議室

3. 議事次第
 
(1) 開会
(2) 委員及び文化庁出席者紹介
(3) 議事
1 国際小委員会主査の選任等について
2 文化庁長官官房審議官あいさつ
3 国際小委員会審議予定について
4 SCCR(著作権等常設委員会)の報告について
5 アジア地域等における著作権分野の国際協力の在り方について
(4) 閉会

4. 配付資料一覧
 
資料1   文化審議会著作権分科会国際小委員会委員名簿
資料2 文化審議会著作権分科会の議事の公開について
(※著作権分科会 私的録音録画小委員会(第1回)議事録へリンク)
資料3 小委員会の設置について
(※著作権分科会 私的録音録画小委員会(第1回)議事録へリンク)
資料4 文化審議会著作権分科会国際小委員会審議予定(案)
資料5 SCCR(著作権等常設委員会)結果概要
資料6-1 海賊版対策の概要
資料6-2 政府における日本文化の海外発信と海賊版対策の位置づけ
資料6-3 アジア地域著作権制度普及促進事業(APACEプログラム)
資料6-4 アジア諸国の著作権関連条約締結状況について(PDF:81KB)
資料6-5 アジア諸国の著作権法整備状況について

参考資料1   文化審議会関係法令等
参考資料2-1 文化審議会著作権分科会委員・専門委員名簿
参考資料2-2 文化審議会著作権分科会各小委員会委員名簿

  午前10時30分開会
 
秋葉課長 定刻になりますので、ただいまから文化審議会著作権分科会国際小委員会の第1回の会合を開始させていただきたいと思います。先生方におかれましては、本日はご多忙の中ご出席を賜りましてまことにありがとうございます。国際課長の秋葉でございます。本日は初回の会合でございますので、後ほど主査を選任していただくことになりますが、それまでの間、私が進行役を務めさせていただきたいと存じますので、どうぞよろしくご了承願いたいと思います。
 それでは、まず初めに、今回国際小委員会の委員にご就任された委員の方々をお座りの順にご紹介させていただきたいと存じます。
 私の左側の方から、池田久志委員でございます。石井亮平委員でございます。上野達弘委員でございます。上原伸一委員でございます。久保田裕委員でございます。後藤健郎委員でございます。佐藤恵太委員でございます。里中満智子委員でございます。菅原瑞夫委員でございます。大楽光江委員でございます。道垣内正人委員でございます。中村伊知哉委員でございます。橋本太郎委員でございます。浜野保樹委員でございます。福王寺一彦委員でございます。前田哲男委員は、若干遅れていらっしゃるようでございますが、間もなくいらっしゃると思います。増山周委員でございます。山本隆司委員でございます。
 続きまして、文化庁関係者をご紹介させていただきたいと存じます。
 辰野裕一長官官房審議官でございます。甲野正道著作権課長でございます。川瀬真著作権課著作物流通推進室長でございます。千代光一国際課国際著作権専門官でございます。田中健太郎国際課海賊版対策専門官でございます。
 それでは、議事に入らせていただきたいと存じますが、まず事務局から配付資料の確認をさせていただきます。

事務局 議事次第と書いた紙の下の方に配付資料一覧と書いてございます。本日は、初回でございますので、少し事務的な資料が多うございますので、念のため配付資料の漏れがないかご確認いただきまして、漏れがございましたら事務局の方にお申しつけいただけると幸いでございます。
 資料1から5とずっと右肩の方に番号が振ってありますので、そちらの方をご確認いただければと思います。それから、資料6−1、6−2、6−3と枝番が振ってあるのがございまして、資料6−4が1つちょっと横刷りの紙が入ってございます。それから、資料6−5と、そこまでが資料でございまして、さらに参考資料1と2−1、2−2とございます。資料一通りお手元にございましたでしょうか。
 それでは、引き続きよろしくお願いします。

秋葉課長 それでは、続きまして、本国際小委員会の主査の選任をお願いしたいと存じます。主査の選任方法でございますけれども、文化審議会著作権分科会運営規則、これは後ろの方の参考資料の1にございますけれども、この運営規則の第3条第3項に規定がございますように、主査につきましては、本小委員会に属する委員、臨時委員及び専門委員の互選により選任するという規定になってございます。事務局といたしましては、前期の主査もお務めいただきました道垣内委員に今期も主査をお願いしてはどうかと思いますが、いかがでございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

秋葉課長 ありがとうございます。
 それでは、ご異議がないようでございますので、道垣内委員に主査をお願いしたいと存じます。それでは、道垣内委員には大変恐縮でございますけれども、主査席の方へお移りいただきたいと思います。
 それでは、これからの議事進行については道垣内主査にお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。

道垣内主査 前期に引き続きまして、主査に選任していただきました道垣内でございます。よろしくお願いいたします。
 私は、本来国際私法が専門でございまして、国際というところはいいんですけれども、著作権を含む私法一般をやっておりますので、教えていただきながら議事を進めていきたいと思います。
 まず、著作権文化審議会著作権分科会運営規則の規定に基づいて主査代理人の指名ということをさせていただきたいと思います。3条5項によるものでございます。私といたしましては、大楽委員を指名させていただきたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

道垣内主査 では、大楽先生に主査代理ということになっていただきたいと思います。よろしくお願いします。
 では、議事に入りますが、その前に会議の公開の取り扱いについて事務局からご説明いただけますでしょうか。

事務局 それでは、資料2の方をごらんいただければと思います。こちらの方は、今年の3月1日の著作権分科会決定となっておりまして、一番最初のところに会議の公開とございますけれども、会議は公開とするとなっております。ただし、1から3の案件ということで、(1)のところにございますように、主査の選任ですとか、その他人事にかかる案件は例外となっております。その他会議の傍聴ですとか、議事録の公開、会議資料の公開というあたりにつきましては、細かい規定がございますので見ておいていただければと思います。以上です。

道垣内主査 これは従来のものとは大きくは変わっていないと思います。
 ここの6番にありますように、原則として発言者の氏名を伏して議事録を公開することとしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、議事の公開の方針について、このように分科会の方で決定があったということでよろしくご承知おきいただきたいと思います。
 本日、人事につきまして終わりましたので、今後の議事につきましては特段非公開にするということはなさそうでございますので、公開ということでよろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

道垣内主査 それでは、異議がございませんでしたので、これ以降、本日の議事は公開といたします。それでは、もし傍聴者の方がいらっしゃればお入りいただきたいと思います。
 では、これから第1回の国際小委員会の開催ということになりますが、まず辰野審議官にごあいさついただけますでしょうか。

辰野審議官 辰野でございます。第6期の文化審議会著作権分科会国際小委員会の開催にあたりまして一言ごあいさつを申し上げます。
 まず、皆様方におかれましては、大変ご多用中の中、文化審議会著作権分科会国際小委員会の委員をお引き受けいただきましてまことにありがとうございました。
 今期の国際小委員会におきましては、著作権にかかる国際的課題のうち、特に重要性と緊急性が高いと考えられます放送条約への対応、それからアジア地域等における著作権分野の国際協力のあり方、この2つを取り上げて、集中的にご議論いただきたいと考えております。
 まず、放送条約の関係でございますが、放送機関の方につきましては、WCT、WPPTに引き続き、インターネット時代における著作権、著作隣接権の国際的な法体制を完成させるため、1998年以来、条約の制定に向けてWIPOにおいて精力的に議論が進められてまいりました。そして、昨年9月でございますが、WIPOの一般総会におきまして、2006年12月、すなわち今年の12月、または2007年の外交会議の開催を求めるというスケジュールまでが合意されるにいたっております。交渉はいよいよ大詰めを迎えつつあるところでございます。
 委員の皆様方にはこのような状況を踏まえまして、わが国の対応のあり方の方向性を示していただきたいと考えているところでございます。
 次に、アジア地域等における著作権分野の国際協力のあり方についてもご議論をお願いしたいと考えております。わが国文化の海外の発信の強化と文化流通において影の側面であります海賊版対策の強化、これは総理の施政方針演説等にも取り上げられているわが国の最重要課題の1つであります。文化庁といたしましても、これまでさまざまな対策に取り組み、一定の成果を上げてきております。しかしながら、デジタル化、ネットワーク化の進展によるオンラン上の海賊版の横行等により被害はむしろ拡大しているとも、そういう側面もございます。
 このような状況下において、限られた行政リソースを効果的、効率的に投入することによって、海賊版対策を徹底し、アジア地域における知的財産保護の基盤を確立することが緊急の課題となっていると考えております。
 今期は、以上2つの課題についてご検討いただき、方向性を示していただきたいと考えているところでございます。委員の皆様方には大変お忙しい中、恐縮ではございますが、ご協力をお願いいたしまして、私のごあいさつとさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

道垣内主査 ありがとうございました。
 今、ごあいさつの中にも、この国際小委員会の課題について触れていただきましたけれども、改めてこの小委員会の設置の趣旨及び所掌事項等について、資料に基づいてご説明いただけますでしょうか。

事務局 それでは、資料3の方、こちらの方も3月1日の著作権分科会決定となっておりますが、3つの小委員会の設置が決定されておりまして、本小委員会についても審議事項、分科会によって決定されておりますので、そちらの方をご説明させていただきます。
 まず、設置の趣旨でございますが、著作権に関する特定の事項を審議するということで、3つの委員会というのは昨年からでございますけれども、今年は私的録音録画小委員会と非常に重要なテーマということで、新たに小委員会が設けられております。それ以外の法制問題小委員会と国際小委員会については、従来からということになります。
 各小委員会の審議事項でございますが、法制問題小委員会は著作権法制のあり方、さまざまな緊急に検討しなければならない案件がございますので、こちらの方は既に検討を開始いただいているところでございます。それから、(2)の私的録音録画小委員会、こちらの方も私的録音録画に関する問題について昨年の法制問題小委員会、分科会の報告書を受けて検討を既に開始していただいているところでございます。
 (3)の国際小委員会、これが大とりで、本日検討を開始いただくということで、審議会からのごあいさつ申し上げましたとおり、国際的ルールづくりへの参画のあり方とそれからアジア地域等における著作権分野の国際協力のあり方、この2つのテーマについてご審議をお願いできればと思います。
 以下、構成ですとかその他の手続きにつきまして決定されております。以上でございます。

道垣内主査 はい、ありがとうございました。
 この資料3の2の(3)の2つのテーマが分科会から与えられているということになりますが、それを受けて、どのようなスケジュールでどういうふうに議論していくかということについても引き続いて資料4をご説明いただけますでしょうか。

事務局 次の資料4の審議予定でございますが、これはとりあえず事務局として準備いたしておる予定でございまして、また審議の状況等において変更いただければと思いますけれども、本日初回ということでございまして、この中で決まっているスケジュールとしましては、3行目の方のカッコに8月24日、著作権文化会とございますのと、それからその次のカッコにございます9月、SCCR、それからWIPO一般総会というのがございますので、それに合わせてスケジュールを組ませていただきました。本日はまだ初回ということですので、8月の著作権分科会の前に第2回で国際協力のあり方について1回実質的なご審議をお願いいただければ、いかがかと考えております。
 放送条約につきましては、9月のSCCRと一般総会が終わってみないとちょっと方向性も見えてこないということでございますので、10月にそのご報告とご議論をいただければと考えております。年内に昨年同様報告書案を取りまとめいただくということを考えますと、10月と11月に中身の審議をいただければなと考えております。
 以上、とりあえず事務局の予定のご説明を申し上げました。

道垣内主査 はい、ありがとうございました。
 この資料4は、今お話がありましたように案ということでどのように進めていくかはこの小委員会で決めればよいことでございますので、この紙につきまして、ここはこうした方がいいんじゃないかとか、その他何かご意見がございましたら、どうぞいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 よろしゅうございますか。よろしければ、この資料4の記載を小委員会として決めたということにさせていただきたいと思います。
 それでは、このスケジュールに沿って行うことにしたいと存じます。次回以降のことがこれでございまして、本日の議題につきましては、これも本来決めていただかなければいけないことですけれども、特にご異議なくここまで来ていますので、本日のスケジュールも議事次第の記載のとおりということにさせていただきまして、まずはその中で放送条約の対応についてご議論いただきたいわけですが、その前提として今月1日から5日にジュネーブで開催されたWIPOの著作権等常設委員以下での議論の結果について事務局からご報告いただけますでしょうか。

事務局 それでは、資料5に基づいてご報告させていただきます。
 第14回SCCR結果概要という紙でございますが、今月の1日から5日というゴールデンウィークの真っ只中に開催するということでございまして、文化庁からは秋葉課長と私が行かせていただきました。委員の中では上原委員や増山委員などがご出席されました。
 アジェンダとしては、5の放送機関の保護という放送条約の外交会議の開催に向けた詰めの議論中心でございました。
 4.の会合の概要でございますけれども、会合の前に議長がベーシックプロポーザル案と、それから作業文書というのを作成して、配付していたわけでございます。ベーシックプロポーザル案とは、従来の議長テキストの中で、あの中にはさまざまなオールターナティブな選択肢が入っていたんですが、その中で、1つの案を議長が選んでベーシックプロポーザルという条約の形にしてあるものです。オールターナティブの中で、その条約の形に入れてないものが作業文書です。その2つの文書をベースに外交会議に提案する最終ベーシックプロポーザル案を完成するということを目標として会合を行ったということでございます。
 しかしながら、会議に入ったところで、ウェブキャスティング、従来、国際小委員会の方でもご議論いただいておりますウェブキャスティングの保護について、非強制的保護ではあるんですけれども、それがベーシックプロポーザル案という、どちらかというと本体のような感じのところに入っていた一方で、ブラジルですとかラテンアメリカの国を中心にさまざまな新しい提案を出してきていたんですが、そちらの方がベーシックプロポーザルではなく、作業文書というワンランク低いような形で扱われていたので、それについてブラジルが非常に反発いたしました。そういう形式的な議論で相当空費したという感じでございました。議長が一生懸命ベーシックプロポーザル案と作業文書というのは、別に中身について差をつけているということではなくて、両方一体として見るんだということを説明して、インクルーシブネスと言ってすべての国の提案を平等に扱うし、すべてを外交会議に持っていくということを約束したということでとりあえず収めたという状況になります。
 それから、ウェブキャスティング、添付文書、アペンディクスという形で入っていたんですけれども、これについてもやはり残すということに非常に反発が強くて、日本からは別にインクルーシブネスなんだから、いいじゃないかということも言ったんですけれども、それがある限り、もう議論には参加できないというか乗れないという感じでしたので、議長としても外交会議に行くということをまとめるために、伝統的な放送の保護ということと、それからウェブキャスティングの議論というのは切り離して、まず伝統的な放送、無線放送と有線放送の議論を先にやると。それで、今回の一般総会ではその議論の詰まった伝統的放送の保護を外交会議に持っていくということを目指すということで、ウェブキャスティングの問題については、完全に落としはしないんですけれども、とりあえず今回の一般総会の前にはそれを議論しないということで、一般総会の後に、ウェブキャスティングの議論専用の検討を開始するという2段階の提案を行いました。
 そういったことで、一応、ウェブキャスティング、サイマルキャスティングについては、先送りというような話になったので、提案国のそれぞれ米国、EUにとっては不満も残るところだったとは思うんですけれども、それも両方リラクタントリーといいながら、伝統的保護、放送の保護をしなければいけないということについては理解をして、とりあえず伝統的放送の保護についてSCCRを9月にもう一回開いて、一般総会の後に開催を提案をするという方向での合意となりました。以上でございます。

道垣内主査 はい、ありがとうございました。
 この放送条約の点につきましては、昨年の国際小委員会として対応としてご議論いただいて、一応の政府の方針も決まって、それをもってこの会議に臨まれたわけで、そこからはずれるような方向には進んでいないと、むしろ問題を2つに分けて、まずは伝統的な放送について議論しましょうということですので、特に、新たな論点を議論するという必要も必ずしもないかとは思います。しかし新任の委員の方もいらっしゃいますし、この問題については影響は少なくともないと思いますので、また重要な課題だと思いますので、この場で何かご意見がございましたらそれを取り入れて9月の会合に臨んでいただくということにしたいと思います。それぞれのお立場から、お立場でなくても抽象的なお立場でも結構ですが、ご意見ございますでしょうか。
 橋本委員、どうぞ。

橋本委員 伝統的放送という部分で、技術的な基準については議論されてないというのが私の理解なのですけれども、それはその理解でよろしいのでしょうか。

事務局 すみません、ちょっと質問の。

橋本委員 伝統的なというのは、有線とか無線の放送という言葉でずっと通していて、特に技術的定義(技術基準等)は、これまで条約、あるいは著作権の流れで議論されていないという認識なのですけれども、このあたりというのは何か議論されたのでしょうか。

事務局 伝統的な放送については、その議論は何も、要するに通常どおりのブロードキャスティングとケーブルキャスティングということです。むしろウェブキャスティングの方がどういったあたりまで認めるんだという議論が特に米国とEU、それぞれ保護しようという範囲も微妙に違いますので、もっとインフォメーション・ミーティングを開いたり、勉強、理解を深めなければいけないねという話をいたしておるところでございます。

橋本委員 何でこういう質問をしたかと言うと、過去において著作権の議論は技術領域に入っていくということをせず、割と曖昧模糊とした状態でとどまっていたのが、国際会議の場でそこまで踏み込むということが行われるようになっているのだと理解しています。したがって、どこかの議題でウェブキャスティングと今呼ばれているものが、技術領域的にどんな説明がなされ、本会議、あるいは分科会的で議論されているのかをぜひ我々にご紹介していただければと思います。よろしくお願いします。

秋葉課長 ちょっと今のご意見というかご議論に補足させていただきますが、ウェブキャスティング、サイマルキャスティングについては先ほどご報告申し上げましたように、切り離すということになりまして、一般総会後のSCCRでこれらについて議論する際に、今おっしゃいましたような、技術的な定義でございますとか、概念がどうなっているかということについて、有識者のヒアリング等も含めて検討するという整理になってございますので、また次回以降の話ということで理解しております。

道垣内主査 よろしゅうございますでしょうか。ほかにどなたかご意見ございますでしょうか。
 どうぞ、上原委員。

上原委員 特段、大きな意見ということではございませんが、ご報告いただきましたように、いよいよ詰めのところに入ってきた状況にあるということだと思います。
 とりわけアフリカ諸国などもウェブキャスティングを別にして、それでその他の伝統的な放送事業者のアップデートを早くやりましょうという声が次々と上がってきたところでございますので、状況としてはかなりいよいよ詰めましょうという雰囲気が高まっているところだと感じておりましたので、先ほど、下の方からもお話がございましたように、大きな枠としてはこの小委員会の枠をはずれるようなことがない中で進めていますので、この流れがうまく進んでいただくようにということで、今後ともよろしくお願いできればというふうに思っている次第でございます。

道垣内主査 その他、何かございますでしょうか。よろしゅうございますか。
 そうしましたら、この点につきましては、今ご提起いただきました問題点というか関心のありようも念頭に置いた上で、9月の議論に臨んでいただくということにしていただきたいと思います。
 その後、また改めて、その状況が少し進展すると思いますので、その段階でまたご議論をいただくということにしたいと思います。それでよろしゅうございますでしょうか。
 では、今の点で、このアジェンダの(4)、SCCRの点につきましては、そこまでといたしまして、次に(5)であります。これはアジア地域等における著作権分野の国際協力のあり方ということでございますけれども、特に海賊版対策ということが政府の重要課題にもなっておりますし、国民一般、あるいは業界の関心も強いところだと思います。その点、きょうご議論いただいて、どういう点を考えていけばより海賊版をなくすという方向に動くのかという、そのフリーディスカッションは後でしていただきたいと思っておりまして、予定では、五十音中に皆さんにご意見をいただきたいということになっておりますので、ご報告をいただきながら、よい方法なり、ここがポイントではないかという点がございましたら、後でご発言いただきたいと思います。
 では、そのことを前提に資料の6−1から事務局から状況についてご説明いただけますでしょうか。

事務局 はい、それでは、事務局の方からご説明をさせていただきます。申しわけありませんが、資料の6−2から先にお話をさせていただきたいと思います。
 アジア地域における海賊版対策につきまして、また日本文化の海外発信とにつきまして、政府のいろいろなところでも、その重要性について取り上げられているところでございます。
 まず最初に、日本文化の海外発信について演説等であらわれていますところをまとめてございますので、この資料に沿ってご紹介をさせていただきたいと思います。
 164回国会における小泉総理の施政方針演説におきまして、日本のブランドを育成し、国内外に広く発信していくことが大切であるといったお話がなされております。これは、文化芸術は国の魅力を世界に伝えるだけではなく、多様な価値観を有する世界各国の間をつなぐ架け橋になる。また、伝統文化ばかりではなく、映画やアニメ、ファッションなどわが国の現代的な文化芸術というものが世界で高く評価をされて、多くの人々を魅了しているというところで、こういった新進気鋭の方々の創作の活動を支援したりするということが大切であるというお話であろうかと思います。
 また、『「文化交流の平和国家」日本の創造を』という文化外交の推進に関する懇談会の中におきまして、政治や安全保障の経済分野といった、いわゆるハードな外交交渉というところにおきましても、文化交流における不断の相互理解ということが促進されることによって、交渉相手国との世論と国際社会での支持を増やすことにつながり得るものではないか、といった考え方が出ております。
 また、さまざまなレベルでの文化交流を通して、日本理解を推進することこそ、政治、安全保障、対外経済関係、経済協力といった外交的課題に取り組んでいくための効果的かつ現実的な外交手段であると言われております。
 また、日常生活から伝統芸術まで、広く多様な現代日本の文化を的確に発信して魅力ある日本の姿を効果的に伝えるとともに、世界の日本理解を深めることが今最も強く求められる。ということが言われております。
 これら、文化を発信するということは非常にバラ色のイメージでございまして、特に日本の文化は既に、アジアにおいては受け入れ始めているというところであり、そこを後押ししていくということについては議論を待たないところかと思います。
 しかし、それに対して影の領域というところに、海賊版という問題があります。これは、文化の発信を進めていこうという中で、海賊版が非常に横行しているということが、その障壁となっているという問題で、これについての対策の重要性が各所で言われているわけでございます。
 海賊版対策については、これも同じく小泉総理の施政方針演説におきまして、模倣品・海賊版の取締強化や特許審査の迅速化など、知的財産を創造し、保護・活用するための基盤を整備します。ということが言われておりまして、また「政府開発援助における中期政策」におきましても、わが国が経済連携を推進している各国地域に対しては、知的財産保護の分野における国内法制度構築支援を行うということが言われております。
 このようにして、対策を進める上におきまして、我々が維網としておりますところは、知的財産推進計画ということになるわけですが、この『知的財産推進計画2005』の中におきましても、第2章、知的財産の保護、「2模倣品・海賊版対策を強化する」という中におきまして、模倣品・海賊版は製造国、(地域)から世界中に拡散し、特に近年、模倣品・海賊版と犯罪組織やテログループとのつながりが指摘されるなど、模倣品・海賊版問題は世界各国が協力して取り組むべき問題である。そして、模倣品・海賊版の問題は、権利者が本来得るべき利益を奪い、新たな知的財産の創造意欲を減退させるとともに、消費者の企業ブランドへの信頼を低下させ、消費者自身の利益を阻害するものである、ということが言われております。
 また、これらはテログループや犯罪組織とのつながりということも指摘されることによりまして、単に権利者の権利の侵害にとどまらない問題があるということが言われてきておるわけでございます。
 わが国が、「知的財産立国」を目指す上では、国内はもとより海外においてもわが国企業の模倣品・海賊版による被害から守るよう、官民挙げて強力な対策を講ずることが強く求められていると。
 また、『デジタルコンテンツの振興戦略』という「知的財産戦略本部コンテンツ専門調査会デジタルコンテンツ・ワーキンググループ」の中におきましても、わが国企業が安心して公正なビジネスができるよう、海賊版対策の強化を官民挙げて世界に働きかける。ということが言われております。
 このように、日本文化の発信及び海賊版対策の重要性が取り上げられていますが、そこにおきまして、これまで文化庁がどのようなことを行ってきたかということを、資料6−1に戻りまして、ご説明をさせていただきたいと思います。
 6−1の一番上に侵害状況というグラフがございます。これはちょっと見づらくて申しわけありませんが、IFPI(国際レコード産業連盟)から出ておりますレコード、CD等の市場規模を示すデータがございまして、毎年これが発表されておりますけれども、その中からわが国と特に関連が深い中国、台湾、韓国、香港の4カ国地域を抜き出しまして、侵害市場と、また正規品市場ということで比較するためのグラフでございます。
 各国の高さが、すべてを含めた市場規模の大きさをあらわしております。そして、その全体の市場の中で、侵害品、つまり海賊版が占める割合がどれだけあるかという数字が出ております。中国においては85パーセント、台湾においては36パーセント、韓国においては16パーセント、香港においては19パーセントが侵害品で占められているというグラフでございます。
 このデータは、単にレコード・CDという音楽のパッケージの販売のことで、海賊版による著作権侵害のすべてをあらわすものではありませんが、ただ海賊版についてはどうしてもそのもの自体がブラックなマーケットで回っているものですので、なかなか統計としてあらわれてくるというものがありません。また、各国から独自に出された情報というのは、やはりそれなりのバイアスがかかっている場合もあります。これは国際的な団体が出した1つの、わかりやすい数字として参考情報として示させていただいているものでございます。
 知的財産推進計画についてのポイントについては、資料のとおりですが、そのための施策として、6−1の後半の部分にあります事業をこれまで行ってまいりました。
 まず1つ目は、2カ国間協議における侵害発生国への取締強化の要請ということで、特に一番侵害の大きい中国に対しましては、著作権担当部局であります中国国家版権局との間で日中著作権協議というものを実施しております。これは平成12年に申し合わせをいたしまして以来、毎年中国と日本とを行ったり来たりしながら、続けているものでございまして、本年には第4回目が中国で行われることとなっております。こういった機会を通じまして、中国における海賊版の取締の強化ということを要請してきております。
 また、韓国に対しましては、日韓文化交流局長協議というところにおきまして、著作権の問題についての協議を実施しております。
 また、台湾につきましては、日台貿易経済会議という場所を使いまして、またこれも著作権問題についての協議を毎回話題としまして進めてきております。
 また、このようなガイでの協議のほかに途上国対象の協力事業ということを行っております。これは、1つ目は文化庁からWIPO(世界知的所有権機関)に対して信託基金を拠出し、WIPOと共同でシンポジウム及び研修等を内容とするアジア地域著作権制度普及促進事業、いわゆるAPACEプログラムということを実施しております。
 この中では、リジョナル・シンポジウムや東京特別研修といったことを行っておりますが、この件につきましては、別の資料を使いまして、後で詳述させていただきたいと思います。
 また、このAPACEプログラムとは別に、毎年3月には東京セミナーということで、各国、特に最近ではアジアのASEAN(アセアン)諸国及び中国、韓国という国から代表者を招きまして著作権の最新状況についての各国の情報を交換するということを行っており、またそこには米国やNGO等からの専門家を招聘しまして、最新の動向について共有するといったことも行っております。
 その次に、アジア諸国の国民向けの著作権教材の開発普及ということを行っております。これは、平成16年に著作権の一般向けの教材としまして、ASIAN COPYRIGHT HANDBOOKというものを英語と日本語とでプロトタイプとしましてつくりました。まずこの英文でつくったものを各国に広く配付をし、これを使いながら、各国に赴きまして、その現地語での翻訳をつくり、またその現地で必要と思われるQ&Aのページをさらにつくるということで、こちらにいらっしゃる先生方にも局面、局面でご協力をいただきながら、これまでに平成17年3月にはベトナムにおいて、また9月にはミャンマー、そして本年1月にはインドネシアにおきまして、この著作権啓発セミナーということを行ってまいりました。
 この事業は、特に著作権に関する対策が低調な、あまり進んでいない国に乗り込んで、相手国の政府や関連団体などと協力して1つセミナーを行うということにおきまして、そして国民に著作権の重要性を知らしめる教材を一緒になってつくるということにおきまして、その政府やまたは関連団体等の中での意識啓発を進めるという意味での効果が非常にあったかと思います。
 これの副産物としまして、ASIAN COPYRIGHT HANDBOOK各国語版、今はベトナム語版、ミャンマー語版、インドネシア語版ができておりますけれども、それらが数万という単位で印刷されまして、各国の隅々にまで配付をされる。そこからまた副産物としてその各地域でのセミナーなどが行われていくということを進めるものとなっております。
 本年5月にはこれはちょっと内容的には少しバージョンを変えるつもりでございますけれども、中国におきましてもこの著作権セミナーを行うことを企画しております。
 次に、わが国の企業の諸外国での権利の行使の支援ということです。いろいろと外国に対する支援要請などを行っておりましても、結局は日本の権利者が侵害を受けたときに、それをエンフォースメントしないと何も起こらないということがあります。
 なかなかこれまでに実施の件数がそれほど多くないということは、どれだけ費用と手間がかかって、どういったことをすれば権利行使がうまくできるのかということが、外国で行われることであるので、情報が少ないということもありまして、なかなか日本で海外における権利行使ということが進んでいかないという状況があります。そのために、わが国の権利者がアジアの地域において、権利執行を行っていく場合に、役に立つためのハンドブックをつくろうということで、平成16年には台湾でのエンフォースメントハンドブック、そして昨年には中国のハンドブックというものをつくりました。
 また、本年につきましては、韓国においてどのような権利執行をするための手続きが必要であるか、またどのような法的な基礎知識が必要であるか。そういったことをまとめたハンドブックをつくろうとしております。
 そして、この資料の最後になりますが、官民合同ミッションの派遣など、官民の連携の強化ということで、これも本年が4回目になりましたけれども、IIPPFが行っております官民合同ミッションに参加し、著作権のみならずその他工業所有権の方々とも一緒に、民間の方々とそして政府の各機関とが一丸となりまして、中国の各担当の部局に赴きまして、それぞれ交渉を行うということを続けてきております。
 これは、今年が第4回目になりますけれども、第1回目、第2回目は、なかなか議論自体に入れなかったというようなことを私は聞いております。
 去年の3回目からはそこら辺はやはり反省をしまして、「協力と支援」ということを表に立てて、中国が著作権についての対応を進めていく上で、日本はこのような協力ができるから、中国としてもここは直してほしいというように、協力を前面に、その後に要請を行うというような方向性をとっています。
 今年第4回目実務レベルにおきましては、日本から申し出たアポイントが全部言ったとおりの時間で15カ所取れたという、これまでには考えられないような形で、中国側もきちんと受け入れる体制ということができてきております。また、我々からの要請文書につきましても、前もってきちんと学習をしておりまして、一応議論には乗りましょう。ただし、乗れるところ、乗れないところがありますと。きちんと議論をしていこうという状況にはなってきており、やはりこれは毎年続けきた中で成果が出てきているものかと思われます。
 この対策の内容ですけれども、その中のAPACEプログラムにつきまして、6−3に基づいてご紹介させていただきたいと思います。
 きょうは、限られた時間の中で、これについてちょっと詳しく述べさせていただきたいと思いますのは、特にこのWIPOに対して拠出した基金で行われている事業でございまして、多くのことが外国で終始してしまう。対象者も外国人であるということで、日本の国民の、皆様におきましても、なかなかビジビリティーが低いというところもございまして、今回このような機会に、どういったことが行われているのかということをちょっと詳しく説明をさせていただきたいと思います。
 これは、文化庁からWIPOに対して毎年継続的に信託基金を拠出して、これをWIPOが中心となりながら、日本と協力をしながら企画実施をしているものでございます。
 拠出額、スイスフランで金額が決まっておりまして、このレートによって日本からの拠出金額は毎年少しずつ変わるということになっております。
 この事業自体は、1993年から始まっております。
 WIPOに対して拠出金を出している国は、先進国をはじめあるんですけれども、アジアにおきましては、日本と韓国がこのような拠出をしているということでございます。
 ただ、このアジア地域プログラムということにつきましては、ほぼほとんどの事業はこのAPACEプログラムに基づいて行われているということになります。
 最初のAですけれども、アジア・太平洋地域著作権・著作隣接権国際シンポジウムということで、これはアジア・太平洋地域全体を対象として、1カ所に集まって行うシンポジウムで、このAPACEプログラムの中心的な事業ということになります。
 毎年、各国で持ち回りをして行っているわけですけれども、昨年は中国の杭州で行われました。また、本年はつい先週、インドネシアのジョグジャカルタにおいて行われております。毎年テーマを定めまして、今年は、マルチメディア環境の中でどのような著作権保護を行っていくかということでしたが、やはりWIPOが集めるということで、スピーカーについても国際的に活躍している方を呼んでくることができ、また各国からもそれなりの代表者が集まるということで、活発な議論が行われていると聞いております。
 また、Bでございますが、東京特別研修プログラム、これは日本におけるAPACEプログラムの大きな事業でございますが、アジア・太平洋地域の、特に、途上国の著作権に関連する専門家を対象とする約2週間の研修プログラムで毎年行われております。これも平成6年から始まっておりますが、ずっと人数的には10名前後の方が来日をしてきまして、昨年についてはブータン、カンボジア、中国、モンゴル、マレーシア、スリランカ、ベトナムといった国から代表者がまいりまして、2週間の研修を行いました。2週間というそれなりの時間が持てますので、その間に、日本の集中管理団体であるとか、著作権関連団体、または税関ですとか、そういったいろいろなところに訪問をしながら、また理論的なことについても研修をするということを行っております。
 特に、この東京特別研修プログラムは、エンフォースメントを中心としていこうということを考えておりまして、これまではいろいろな職業の方、著作権関連といいましても、政府の著作権関連の組織の人であるとか、また集中管理団体の人であるとか、または警察の方であったり、税関の方であったり、いろいろな方が混ざっていましたが、昨年につきましては、警察の人を中心しようということで、主に警察官の方が集まりまして、著作権に関する取締りを中心としながら研修しました。
 南太平洋地域サブリジョナル・セミナー、はごらんのとおり6年、8年、10年、12年に行っておりますが、現在は行われておりません。南太平洋地域を対象としたセミナーでありました。
 それから、著作権に関する専門家派遣ということにつきましては、これはやはり各途上国がそれぞれ持っているニーズに合わせる、またなるべく多くの人にその研修を行わせるという意味では、非常に効果のあるものでございまして、ごらんのとおり、特に最近ではスリランカに対して専門家を送っております。
 (E)は、集中管理団体実務研修、これも日本の各団体に大変ご協力をいただいて行っている事業でございますが、途上国の政府職員、これは集中管理団体などの管理に伴う職員、または集中管理団体、そのものの職員を対象としまして、日本に招きまして、各団体などに訪問をしながら、集中管理の制度についての研修を行うというものでございます。
 毎年、これは2カ所につきまして、1週間ぐらいの研修を行ってきたわけですけれども、昨年につきましては、タイから5名ということが書かれております。これはちょうどタイが集中管理団体が乱立するというような状況があって、なかなか対処に困っている。そういうこともあり、WIPOを通じまして、何とか日本の制度等をよく勉強したい、またそれはタイにおける制度を変える中での参考としたいという非常に具体的な要請がありましたものですから、これは年度途中でございましたけれども、急きょタイから5名の方という、団体でおいでいただきまして1週間の研修をしていただいたというものでございます。タイでは、まだ法律ができたということではありませんが、それを進めているというところと聞いております。
 また、(F)ナショナルセミナーの開催、これも同じく、各国のニーズに伴いまして、各国にこちらから赴きまして、途上国における著作権思想の普及、またはその国民に対するセミナーということで、各国別に行っているもので、昨年度はモンゴルとミャンマーにおいて行われました。
 そして、そのほかにはいろいろな団体、いろいろな区切りでのサブリジョナル・ワークショップといったようなことも行われております。
 このようないろいろな対策を進めてきたわけですけれども、それが実際にどのように生かされているかということを検証するのは、実はあまりたやすいことではございません。ですけれども、1つの参考として、APACEプログラムを開始した以降、どのような状況であるかということをお示しするために、2つのことを取り上げてまとめた表をつくってみました。それが6−4と6−5でございますが、6−4、これはアジア諸国の著作権関連条約の締結状況についてということでございます。各国、外国におきまして著作権の管理がどれぐらい行われているかということについては、やはり国際的な条約にまずきちんと入っていただくということが共通の基盤に立って守っていくということの前提になろうということで、日本におきましても、各国との交渉等においてやはり基本的な条約にきちんと入っていくということを進めてきました。
 また、最近におきましては、WCT、WPPTというインターネット環境下における対策を行うための条約に入っていただきたいということを進めてきているわけでございます。
 この表、上から順に1993年から始まりまして、ずっと年代を追うごとに下に下がっていく形になっております。欄外の一番下に書かれております日本、インドネシア、タイ、パキスタン、フィリピン、スリランカ、フィジー、マレーシア、中国、香港といったところは、93年以前からベルヌ条約に加盟しておりました。これ以降に、96年に韓国、97年にインドネシア、98年にシンガポール、モンゴルといった国々が新たにベルヌ条約に加盟をしてきております。2004年のベトナム、ブータンがございます。
 そして、TRIPSにつきましては、95年に協定を発行した時点で、ごらんの国々が加盟をしまして、これはWTOに加盟をして、そのTRIPS協定が発効したことにおきまして、これらの国々におきましても著作権に関して、一定の保護をするということが義務づけられたものでございます。
 そして、そこにつきましても、96年以降、次々と国が加盟をしてきておりまして、特に2001年の中国の加盟ということは大きなものかと思われます。
 そして、WCT、WPPTにつきましては、まだ実際に加盟をしている国ということは、それほど多いわけではありませんが、インドネシア、そしてフィリピン、モンゴル、シンガポールなどは既に両方に加盟をしております。また、韓国は、WPPTに加盟するということも予定としておるわけでございますし、また中国につきましては、もう近い将来、WCT、WPPTに対して加盟をするということが表明をしています。
 ただ、一方では、これらの条約に一切入っていない国というのが、やはりイランやラオス、サモワなどという国については、まだ全くこれらの条約に加盟をしていないという状況もございます。
 それから、6−5でございますが、こちらはアジア諸国の著作権法整備状況についてということで、各国、著作権の法律自体を持っていない国というのは、私どもの調べたところではラオスは著作権法という法律がないということでございます。これは知的財産法という大きな法律はあるんですけれども、著作権という法律はないということです。それぞれ各国が割と古くから法律自体は持っているのですけれども、ただこれはやはり95年のTRIPS以降、またWCT、WPPTの作成以降に、法律の改変をする国がたくさんあるということを示したいということで、このような表をつくったわけでございます。
 要は、TRIPSの協定、WCT、WPPTに適合した形での新しい法律の改定はそういった中で行われてきているわけでございまして、新しく法律を改定しているということは、やはりその国において著作権法をきちんと整備していこうという意識のあらわれであると言えるかと思います。
 ごらんのとおり、いろいろな国が改めているわけでございますが、特に韓国や台湾、中国などにつきましては、これからもさらなる法律の改定が準備されていると聞いております。
 また、グラフの一番上の方にありますミャンマーは1914年のイギリスの統治下の中で行われた法律がいまだに使われているということでございますけれども、昨年の著作権テキストを使ったワークショップなどで私もミャンマーに参りましたが、ミャンマーではちょうど新しい法律をつくろうとして、ドラフティングをしているところであり、APACEプログラムのナショナルセミナーを行ったり、いろいろな形で先進国からの情報を集めようという状況が見られました。
 また、イランにつきましてもこれはまだ実際に実現はしておりませんけれども、やはりWIPOを通じて、自分たちの法の改定のためにいろいろな協力を願いたいといった希望があると聞いております。
 また、タイについても94年に最新の改定をしておりますけれども、さらに改定を進めているということを聞いております。
 このように各国におきまして、条約の加盟、また著作権法そのものの整備ということもだんだんには進められてきております。ただやはり6−1のグラフに戻りますけれども、これだけ法律が制定されてきているとは言いながら、やはり国のマーケットの中で、85パーセントが侵害品であるというような状況がいまだに残っているということも事実でございます。
 このように、これまでの著作権における国際協力の一環としまして、条約への加盟、また法律の整備というようなことはずっと主張してきまして、またそれについての一応の成果は出てきているのではございますが、これが海賊版の撲滅ということに対してどれだけの効果を持っているものであるのかというところがこれから考えられなければならないのではないかと思われます。
 以上、ちょっと長くなりましたけれども、事務局からのご説明とさせていただきます。

道垣内主査 はい。どうもありがとうございました。
 それでは、今ご説明いただいた点について、まずはご質問があれば、ご意見をいただく前に、この資料の内容についてご質問ありましたらどうぞしていただきたいと思います。
 私の方から1点いいでしょうか。資料6−1の一番上のところに、レコード、CD等と書いてありますけれども、日本は大体どれくらいの数字なのかおわかりでしょうか。

事務局 1パーセント台までの数字が出ている国というのは、特に被害の大きな国というところに対して、特別に19パーセントというような数字が出ているんですけれども、その他の国におきましては、10パーセント以下、そして10パーセントから25パーセント、25パーセントから50パーセントというようなカテゴリー分けで出されておりまして、日本はアメリカと一緒に10パーセント以下というところに入っております。日本では数パーセントであると聞いております。
 具体的に聞きましたところ、日本では数パーセント未満であるというふうに私聞いております。

道垣内主査 ああ、そうですか、はい、わかりました。
 それから、関連して、中国、台湾等におけるその損害額が大体数字が出ているわけですけれども、この中で日本の著作物の侵害の数字は、この統計からは出てこないかもしれませんが、ほかのソースでどのくらいの額がわかっているのかでしょうか。

事務局 そうですね、これは従来のこの調査自体は、日本の商品のものといったものが特定されているものではありません。ただ、最近IFPIとMPAが共同で調査を行った際に、これまではMPAが行っているということで、アメリカや欧州の商品を対象として行っていた調査に日本のコンテンツも含めた調査を行ったということを聞いております。
 ただ、すみません、今ちょっとその資料がございませんで、どれだけだったかということは申し上げられないんですけれども、ただこの情報自体には、日本の数字が特定されることはございません。

道垣内主査 わかりました。
 ほかの方、いかがでしょうか。
 私ばかり聞いて申しわけありませんが、同じ紙の下から2番目のところで、わが国の企業がこれらの国で権利行使をする際のハンドブックとかをつくっていますということですが、実際にどれくらい訴訟を行っているのでしょうか。それからもう1つお聞きしたいのは、これは費用対効果の問題で、うまくいったという例がどれくらいあるのか。もしわかれば教えていただきたいです。

事務局 これをもって訴訟を起こしたという具体的な事例は実は今までのところいただいておりません。

道垣内主査 これを使ったかどうかは、それはわからないと思いますが。

事務局 ええ。

道垣内主査 そもそも著作権の分野で、どれくらい提訴しているのか。特許とか商標とかについてはときどき新聞にも出るような気がするんですが、著作権についてどうなのかをお聞きしたいんですが。
 ほかの委員の方、ご存じであれば。

後藤委員 私は、コンテンツ海外流通促進機構のCJマーク委員長というのをやっていまして、海外の海賊版に対応するという団体です。文化庁さんと経産省さんにご支援いただいて活動しているわけですけれども、昨年1年間におきまして、中国、香港、台湾において、とりあえず中国においては行政処罰で、特に違法営業ということ、それと香港と台湾においては著作権侵害ということで、昨年度1年間において約1,000件の検挙です。今、ちょっと数字は全部把握しているわけではありませんけれども。逮捕者が大体500名以上。それで押収された海賊版が220万本ぐらいです。香港においてはもちろん実刑が下っています。ということで、それなりの成果が上がっています。
 それと合わせてトレーニングセミナーということで、現地の執行機関の皆さんを対象に、中国の北京とか上海とかシンセンとかそれぞれのタスクホースを集めまして、12カ所でトレーニングセミナーを行い、約1,200名を対象に日本のコンテンツの真贋の見分け方や取締りをお願いしますというようなことをやった結果が昨年1年間の成果です。

道垣内主査 わかりました。そうしますと、司法手続き、取締り要請等と書いてありますが、取締りの要請の部分が相当大きいと。民事訴訟を起こすんじゃなくて、現地の当局に取り締まりをしてもらうと。

−− ええ。

道垣内主査 わかりました。
 ほかにございますでしょうか。

久保田委員 アジアというところに視点を置いて議論をしようということですけれども、実際、海賊版が拡散しているという説明を聞きますと、中国でつくられて、ヨーロッパでも売られていという事実があります。
 日本と同じような法制度を持っている国にも海賊版が大量に流通しているわけでありまして、我々と同じような制度を持って、執行機関を持っていて、そういうところで日本のコンテンツの海賊版がたくさん売られているという実態の方にもう少し目を向けないと、視点が落ちているのかなという気がします。
 要するに中国には日本や海外のコンテンツの海賊版工場があって、それがヨーロッパの国にも供給されている。ヨーロッパの国としては、流入しないようにしたいということもあるわけですね。そうするとその国で海賊版の摘発をやったことによって、次に何をしなければならないかということを考えますと、各国生産国に対してプレッシャーをかけていかないといけない。実態としてはヨーロッパの人たちも海賊版を利用しているということを目の当たりにして、私はもっとヨーロッパやアメリカは知的財産に対する認識は高いのかと思っていたのですけれども、その考えは間違っていたと今思っております。
 最近、ネットワークの事例を見ても、アメリカには、どんな日本のアニメも見れてしまうという無断アップロードがはびこるホームページもあります。ネットワークの話と海賊版の話は一緒にすると混乱する部分はあるんですけれども、アジアの対策に限定する意味がどのくらいあるんだろうかという気がします。
 また、先ほど言いましたように、知的財産に対する認識が高い国同士が情報交換をすることによって、囲い込んでいくというようなことを考えていかないと、日本が単独で、中国とか台湾とかに出ていってもあまり効果は期待できないのではないかなと考えています。
 とりわけ、ビジネスの話とも深い関係がありまして、海賊版対策をきちんとやっていれば、日本が知的財産立国になるかと言えば、それは全然違いまして、正規ビジネスを展開するに当たっても、権利侵害があったときの対応を想定した契約が結ばれるとか、監視する条項を盛り込まないと、契約不履行があってもよくわからないと。そういう土壌が続いていると、ヨーロッパのような知的財産に対する認識がある国でも、契約が甘いためにオーバープロダクトといった海賊版に近いようなものが大量に市場に出回るようなことの方が大きい問題と感じています。
 コンテンツビジネスを例えばアメリカ相手にやると、英語の契約書がドカッと来ると大体日本の弁護士さんは手を上げちゃうんです。私がよく知っている弁護士なども、自分は頑張っても3勝7敗ぐらいかなと。そういう意味で、ビジネスの視点も持って、マーケティングについてもしっかりと状況を見ないと、海賊版がなくなったから知的財産立国になるかというと、これは何か違うんじゃないかなと感じています。
 また、主査からのご質問ですけれども、日本の違法コピーの問題の1つの数字としましては、ソフトウェアの違法コピーは、ビジネスソフトビジネス・ソフトウェア・アライアンス(BSA)というアメリカの団体の数字によりますと、今日本では28パーセントぐらいが違法コピーで稼動しているという状況であります。

道垣内主査 はい、ありがとうございました。
 今、この審議会の検討の範囲について少しご意見いただいたのかもしれませんが、一応今年度についてはアジア地域等におけるというのが分科会の方で決めたテーマでございまして、そこをもう少し拡大していかないといけないというのであれば、それはまたご意見として、今後文化庁の方でお伝えいただくようにしたいと思います。
 それから、中国から出ていく違法ソフトというか、著作物については文化庁の方では、まずは日本から出ていく方を押さえて、そういうことを他国に働きかけようという動きもされていると理解していますが、少しご説明いただけますでしょうか。

事務局 法制小委の検討状況については、私も必ずしもフォローしておりませんが、日本国内で海賊版対策に関して、罰則の強化であるとか、の取り組みであるとか、そういったあたりについては法制小委員会の方で検討いただいているところでございます。

道垣内主査 ですから、それは日本からの輸出の際の違法著作物は取り締まっていこうということで、それは単に日本だけを考えているだけではなくて、私たちの理解は恐らく日本がちゃんとやったあかつきには、中国等にも働きかけて、出ていくところも押さえてくださいということをするのかなと思っていたんですが。

事務局 まず、庭先を対応するということで始めようということであったと思います。

道垣内主査 今のところは、入ってくるところで押さえるのが一般的で、出ていくところについてもやるというのは1つのあり方かなと思っています。
 ご質問についてはよろしいですか。
 それでは、最初にお願いしましたようにご意見の方をいただきたいんですが、まずは各委員の方からご発言をいただいて、さらにその中で議論があればしていただくということでよろしゅうございますでしょうか。
 池田委員からお願いします。

池田委員 久保田委員からお話がありました中国が要するに世界の海賊版の工場になっているというところが一番問題なんだろうと思います。
 著作権に限らず権利の成果物の本来得られる収益をそこで損なわれているという、そのもとの原因をつくっている一番大きいのは中国だろうと思います。
 著作権思想の普及で、文化庁さんの方でここ数年取り組まれていることにつきまして、大変評価はできるかと思います。
 最近は、そういうことで、エンフォースメントの部分を重視して取り組まれているということで、その方向で進めていただくのがいいだろうというふうに思います。
 ただ、限られた文化庁さんの持っておられる手段といいますか、できるその力を久保田委員の方からより世界を見てと、それから契約部分にまでというお話もあったんですが、私は逆に中国にということで、どういうふうな取組みができるかという、アジアではなくてむしろ中国に絞るぐらいの感じで検討した方がよろしいのではないかというふうに思っております。以上です。

道垣内主査 はい、ありがとうございました。
 続いて、石井委員。

石井委員 海賊版というか不正利用対策についてですけれども、実は先週ですか、ABU、アジア太平洋放送連合と、我々放送事業者が組織しているんですけれども、そこで著作権部会というのを行いました。ブルネイでやって16放送機関程度集まったんですけれども、そこでNHKの方から、デジタル放送のコンテンツ保護の話をしたところ、やはり各国もデジタル放送の開始を控えていて、非常にそういうものが無断に使われないためにどうしたらいいかと、強い関心を持つようになってきたというふうに聞いております。いろいろ質問も集中しました。
 そういうことからも推察されますように、アジア諸国の海賊版に対する認識というもの、頭の上では固まりつつあるのではないかと思います。
 例えば、これは先ほどご報告がありましたWIPOのSCCRにおきましても、ECとかアメリカがウェブキャスティングの扱いを巡ってやや躊躇する中で、アジア諸国から例年になく積極的な発言が続いたのではないかというふうに私ども報告を受けております。
 そういうことから、この機会をとらえて、ぜひアジア諸国との連携を深めて、海賊版対策というものを行っていただきたいと思います。
 私どもも文化の発信、あるいは文化交流ということもありまして、アジア、欧米諸国にもいろいろな放送番組を流しているんですけれども、最近はネットを通じてすぐ外国に、画質はよくないけれども無断で流れてしまうというような事態も起きております。そういうこともありますので、アジアを中心にもちろんヨーロッパもそうですけれども、海賊版対策というのは必要になってくるのではないかと思っています。

道垣内主査 ありがとうございました。
 上原委員。

上原委員 まず、最初に今の石井委員の話を受けまして、1つだけ、資料の6−4なんですが、恐らく加盟国が日本とフィリピンしかないからお書きになってないと思うんですが、ローマ条約というのが抜けているんですね。2つしか入ってないですから、下のこめじるしぐらいでいいとは思うんですが、放送コンテンツのというような話になると、やはりローマ条約の関係がございますので、やはりちょっとどこかに入れておいていただければと思いました。
 それで、海賊版の問題というのは、やはり年とともに、時代とともに流れはかなり変わってきている部分があるんだろうというふうに見ておりまして、ものの部分とネットの部分と2つが今大きく出てきているんだろうというふうに見ております。
 ものの部分につきましては、大変に、両方難しいんですが、ものの部分について一番難しいのは、特にアジア諸国といった場合、物価の問題といいますか、収入の問題でたしか数年前の東京セミナーのときだったと思いますが、出てこられている各国の政府の方のお一人、お二人の方から、海賊版の値段差がある限り、いくら取り締まっても、おまわりさんが出ていったときだけ道の中からいなくなって、戻ったらまた出てきて売っているよと。
 だから、究極の海賊版対策は海賊版と同じ値段にすることだというふうな政府代表の方がいらっしゃったんですが、政府代表というかオウエンした方がいらっしゃったんですが、それは海賊番だからそんな値段にできるので、正規版だったらできるわけはないわけで、永遠の追いかけっこというか問題点ではありますが、当然経済的にその地域が反映すればそれはなくなるかと言うと、先ほど久保田委員からもありましたように、ヨーロッパ諸国でも、あるいはアメリカにおいても大いに海賊版が見られるということがございますので、必ずしも経済的に豊かになればなくなるというものではないと思いますが、やはりアジア地域においてはその問題が、根底に1つどうしても出てくるところであろうと、ここはなかなか一筋縄ではいかない問題が出ているんだろうというふうに思っております。
 とりわけ若い世代の人たちにあっては、ネットの世界と一緒になりまして、ある程度海賊版、安いものを使うのは当たり前という認識がある程度出ているところもあるようでございますので、文化庁によって行ってらっしゃるような意識に訴えるという部分は、目に見える成果がなかなか少ないかもしれませんが、そこがないとやはり根本のところに行き着かないと思いますので、今後、ご努力いただければというふうに思っております。
 1つ、私の方のあれで、おもしろかったのは、昨年ですか、経済産業省さん系統のプログラムで依頼を受けまして、やはり中国の方を何人かまとめてお呼びして、知財の勉強をしていただくということがあって、私は放送のところをちょっとさせていただいたこともあるんですが、10人前後いらっしゃったんですけれども、最後、質問のところになりましたら、こんなことも違反とは考えてなかったのかという質問が出たんですが、その中国の人の間でも、いやそれは違反だという話があって、大討論になってなかなかおもしろかったんですけれども、実はちょっと思いましたのは、各国からお一人ずつとかということじゃなくて、むしろ各国からまとめて、先ほどタイの方が5人というのがありましたけれども、来ていただいて、中のレベル差のある方々でお話をしていただくと、こちらから押し付けるというよりも、話し合いをしていくのを持ち上げていくというような形で深めていただくというやり方も1つあるのかなと思いまして、そんなこともちょっとプログラムの中に入れていただいたら、ひとつおもしろいかなとアイデアとしては思っております。
 あと、やはり今後最大の問題は、先ほどものの問題はどうしても経済的な問題がありますので、なくならないと思いますけれども、一方でやはりネットの問題は極めて大きくて、私どもの放送で言いますと、ほとんど、とりわけアニメなどというものは、日本のサイトに行くよりは、韓国やアメリカのサイトに行った方がはるかに簡単に検索できて、アニメが楽しめるという状態が現実にございます。
 それをどうやって止めたらいいのかというのは極めて難しい問題でありまして、何らかの形で出せばブツは手に入って乗っけられてしまうわけでございまして、簡単に言うと、数年前までの段階、全盛期の段階では、台湾という国においては、日本で放送されたものがほんの数日後には、向こうのCATVで勝手に放送されていたと。それは日本で同録したやつを飛行機で運んで、それでCATVの小さなところでおやりになっているというようなことが結構あって、それに対応していたんですけれども、そういうことは今なくなったんですが、そこの部分、政府の規制が働く部分についてはなくなってきましたけれども、そのかわりをネットの世界が果しているという部分がかなり広く、これは世界中まさに出てきておりますので、これは今混ざっているところにプラスしてやはり今後のテーマとして、ぜひ強く対応していただきたいと、考えていただきたい。私どもも一緒に考えていきたいというふうに思っております。
 以上です。

道垣内主査 はい、ありがとうございました。
 それでは、久保田委員、お願いします。

久保田委員 海外に関する海賊版の対応で一番感じているのは、権利者の意識がまだまだということです。文化庁さんがされている事柄に関してどういった対応ができるとか、そういう提案自体も自分の手でやってみないとわからないです。そこで得た情報が制度や国際間のいろいろな協定等に反映されていくべきですが、実態面の調査や、現実に自分たちの権利を行使することなしに、実態はこんな感じらしいが、何とかしてもらえないかと言っても、政府の人も困ると思うんです。
 私どももイタリアのローマで1年2カ月かけて、アニメ、ゲームソフト、ゲーム音楽の海賊版に対する刑事手続きをやってみたんですけれども、先ほどマーケティングの話をしましたが、現地ではどのくらいのビジネスの可能性があるのかや、ヨーロッパの人たちが日本の文化に対してどのくらい意識があって、どのような興味を持っているのかということなども考えながら、先ほど上原さんがおっしゃったような文化経済との間を埋めていかないきつつ行動しないと、海賊版の問題だけでとらえていても非常に難しいと感じています。
 ローマで我々の活動のお手伝いをしてくれた現地の人は、タチクジニアトを訳しているんです。日本人にとっても希書でありまして、こういうものを一生懸命イタリア語で訳すという、日本通もいまして、非常にうれしかったんですけれども、そういう日本のファンがたくさんいるということを感じましたし、ルッカというところで開かれたアニメフェアでは、日本のアニメのコスプレをした人たちがたくさんいました。そこでも日本のアニメやゲームソフトの海賊版がたくさん売られてもいるんですが、ローマの大使館に文化庁さんから出ているご担当者と話をして思ったんですけれども、もう少し「文化」というところから攻めていくことも有効なんじゃないかなと思います。
 「文化」を裏打ちしているのは、著作権であるというメッセージの送り方になるんですけれども、権利者自身が権利交渉してみると、著作物によって権利行使の仕方などが違うんですね。そうすると十把ひとからげに著作権という中でくくっても、なかなか的を射た対策がでない。同時に、これは模造品という工業所有権侵害品と海賊版という著作権侵害では対応においても違いが大きく、これも十把ひとからげに無体財産の保護でくくっても、これもなかなかピンポイントで当たらない。刑事手続きや民事手続きを体験してみて、他団体とか、アメリカの団体とかに、委嘱してやってもらうんではなくて、我々自身の眼で文化を含めて見て、それを審議会に上げていくような努力をしていかないと、なかなか具体的な対策は立たないというのが私の個人的な感想です。
 ですから、できるだけ当協会は、具体的な事件を通して、審議会やその他の場に、情報を発表することによって、現実を共有してもらうところから対策を立てたいと考えております。以上です。

道垣内主査 はい、ありがとうございました。
 後藤委員、お願いします。

後藤委員 きょうの資料の6−1でございますけれども、海賊版対策の概要というところで、やはり私は海賊版対策の実務家として思うのが、やはりまず法制度をしっかりしてもらうということが大切だろうと。その法制度を完備した中で、広報、啓発というところで、それぞれの国によって、国民に法を知ってもらうということが非常に大切だろうというふうに思います。この文化庁の取組みにおきましては、非常にありがたいと思っております。
 問題は、1つ、やはり権利者自身がエンフォースメントをするということが、これからは具体的に求められてくることだろうと私は思います。このハンドブック等々を文化庁の方でもご指導をちょうだいしているところでございますけれども、さらにこれを具体化したエンフォースメントのあり方等々について今後協議ができればというふうに思います。
 権利者、日本のコンテンツフォルダーが海外でのエンフォースメントを行うには、やはりリスクが非常に多うございます。そして、費用対効果を考えてもなかなか難しい面がございます。
 「ハウルの動く城」が非常に人気がありますけれども、その海賊版が一被疑者、一店舗にどれくらいあるかということになると限られるわけです。その店をジブリさんが権利行使をするかと言ったら、そういうお店が100軒も200軒もあるわけです。そうするとなかなかできないという部分があります。
 それでは次に製造本犯を検挙したらどうかというと、調べるのに非常にお金がかかる。また、仮に、製造現場を発見しても、DVDフォーマットということになれば、これは何でも入るわけですね。映画だろうが音楽だろうが、ジャンルを問わず全部収録できてしまうというついては、その時に「ハウル」を製造したのか否か判らない。これがほかの産業財産権の模倣品と違うところであります。
 この部分も含めまして、今一歩突っ込んだ形でこのエンフォースメントに関して、ご支援、ご議論いただいて、次の段階の具体的なご支援や要請をさせていただければありがたいなというふうに思います。意見です。
 それから、先ほど主査からありました仕出しの関係ですけれども、日本の場合はほとんど海賊版を海外に出すということはまず今はないですね。大体日本で出た、放送されたり発売されたがすぐオンライン上を介して海外に行ってしまいますから、それをオンラインからダウンロードして、有形物にして出す、さらには諸外国に出すということです。いわゆるオンラインによって国外に流れるというのが大きいのかなというふうに私は思います。
 それと最後に1点ですけれども、先ほども申し上げた成果については、一応に中国の関係者や韓国でも、日本がそういう対策をやっていて非常におもしろいじゃないかという興味を持っていただいていますので、ぜひともこれを継続していくことが大事かなというふうに思っています。以上でございます。

道垣内主査 佐藤委員、お願いします。

佐藤委員 佐藤でございます。欧米を忘れるなという久保田さんのご指摘はよくわかるんですが、私自身ベトナムとかカンボジアの法整備支援を行った経験から申しますと、アジア地域における著作権の考え方を普及するということに、特に重視するということはやはり必要じゃないかなというふうに思います。
 と申しますのは、欧米はどちらかと言うと模倣品を販売するというのは、マーケットの隅っことか、ちょっと暗いところでこそこそやられているというイメージがあるんですけれども、ベトナムとかアジア地域だと、割とあっけらかんと売られているというところがありまして、売っている人に直接話を聞いてみたりしても、どうしていけないのという感覚がやはりまだ支配している。ここを変えてやるということが、ある意味で言うと、現状ではそういうベトナムみたいな地域はネットの普及が、それほど市民の方には行き渡ってないという感じを受けていますけれども、まだそういう意味では、目が出るか出ないか、そのぐらいの段階のうちに、著作権をちゃんと守るんだよという意識をどうやって市民に植え付けていくか。そういう観点からは、アジア地域の著作権の考え方の普及というのはそれなりの効果が、将来に向けて出てくる、そういうふうに僕は期待をしたいというふうに思うわけです。ネットの話題を必要ないというつもりはございませんけれども、アジア地域への普及というのはそういう意味があるというふうに感じています。
 具体的な模倣対策については、2つ重点領域を考える必要があると思いまして、第一は、現地専門家とか政府関係者に対する立法支援とか、そういったことであるとか、エンフォースメントが、例えば実際に裁判が行われるといったときに、それをどうハンドリングしたらいいかということの教育、これが第1点。
 それから、第二は、市民ベースにおける著作権の考え方の普及の仕方をどうやってやったらいいか、こういうことを現地政府関係者であるとか、現地の団体の人に普及してやる、伝えてやると。この2点じゃないかと思います。
 比較的、第1点の方については、APACEのプログラムなどを拝見しても、大分いろいろやられているというのはよくわかるんですけれども、ここの点で1つ改善すべきところがあるとすれば、日本で教育を受けた方が現地にお戻りになってから、どういうことをやっているか、これのフォローアップをある程度見てはどうか。ここで現地語の資料なんかが出てきているとすれば、それを蓄積していくことによって、さらに日本からもう一回別なことをやろうとしたときに、現地語の情報があるということになりますので、情報の伝達において飛躍的な効果が高まることが可能になるんじゃないかというふうに思います。
 現地の言葉で情報提供をしないと、それはほとんど意味がない。英語ができる人が極めて少ないというところで、いくら英語で説明をしても効果が上がらないと思います。
 それから、第2点ですけれども、現地において市民ベースで著作権の考え方をどうやって普及していくか、その点、日本は割と学校に冊子を配ったりとか、種々の事業をやっているというのをお伺いしていますけれども、こういった知恵であるとか、セミナーのやり方にしても、こういうふうにやってはどうかということを現地の人と、日本の経験者とが一緒にセミナーをやってみるとか、そんなことをやるとか、あるいはベトナムなんかだと、政府関係者がかなり田舎の方まで説明会をやりに行くということをやっているようですので、そういうところに日本の専門家が一緒に行って、具体例の持ち出し方であるとか、そういったことを、例を示して、こんなことも考えてみてよろしいんではないかと思います。
 抽象論だけでは役に立たない、久保田さんのご指摘、そのとおりでありまして、もう少し現地の立場に立って、どういうことができるかということを検討してみたらどうかというふうに考えます。ちょっと長くなって恐縮です。

道垣内主査 里中委員、お願いします。

里中委員 海賊版対策ということで、特にアジアということなんですが、実はアジアの近隣諸国の中で海賊版というものが昔と今とでは少しニュアンスが違うと。日本人が違法コピーイコール海賊だと思っておりますけれども、海賊版にもランクがありまして、昔々は、日本の、私のマンガを中心に付き合うことが多いものですから、マンガを通じての知識が主になってしまいますけれども、例えば昔は、バンコク、あるいは香港、台湾、中国あたりで日本のマンガが違法コピーされていた。その場合、作者名は明らかに日本人ではない作者名になっていたわけです。
 ところが、20年ぐらい前から日本人の作者名になってきたんです。それでも、違法コピー、海賊版であることにはかわりないんですけれども、かつては日本のものだということも伏せて海賊版をつくっていた。
 ある時代からこっち、日本のものだ、日本の作者がつくっているということが一種ブランドになってきたわけですね。日本のものだから上質な作品である。中身は上質であるということで、お客さんにアピールしやすい、ということで日本人の作者名を堂々と表に出すようになってきたということです。ですから、海賊版の歴史も少しずつではありますけれども、進歩しておりまして、進歩というのはおかしいですけれども、そういう歴史を振り返りますと、今いくら著作権を守らなければいけないという権利者側の呼びかけで、いくら呼びかけてみても、ある地域によりますと、昔は名前を伏せていたのに、今はマルシー誰々って、ちゃんと日本の出版社や作者名が書いてあるではないか。私たちは作者を尊重していますというわけです。勝手にマルシーをつけるんです。
 だけれども認識としては、昔は作者名をつけていなかったのに、今はこうやって、マルシーということは作者が誰かということの記号だと思っているようで、要するにそれに対して権利が発生するので、交渉しなければいけないとか、交渉済みであるとか、そういうことだと気がついていない。つまり作者が誰かということを正直にこう書いているのだから、私たちは著作権者が誰かということを読者に対して、ちゃんと伝えていますよと。その程度と言ったら大変失礼ですけれども、だから著作権のことについて知っているのだと思い込んでいる人たちもいます。
 また、つい日本側から著作権についてお話に来ましたとか、そういうことを言うと、日本はどうしていつもいつも自分の権利ばかりを言うのかということで、ついつい過去の話を持ち出したくなると。私たちだって、権利を侵された思い出があるというところから話がこじれてくるみたいです。
 私の場合は、基本的に何かをしょって出でいくというわけではなくて、ボランティアで活動をしているマンガの展示会とか交流とか、そういう中でのことですが、ただし特に中国に関しましては、近年特に、公のところが、これを機会に著作権について話してくれと。いろいろ言ってきます。
 それは著作権について、ちゃんとこうやって勉強しています。国際法も知っています。加盟していますということでの我々は著作権を守ろうとしている国だということになっているわけですね。実態はともかくとして。
 組織に入る、あるいはその著作権を議題に取り上げて、シンポジウムを開く、そういうことで本当に誤解を恐れずに申し上げれば、精一杯のところがあります。だけれども、そこで何をお話ししても、所詮は、日本人がまた自分たちの著作権を使うなと言っているのか、あるいは金を出せと言っているのか。そう構えて見られることが多いんです。
 いろいろなお話をしていて気がついたことは、経済性ですよね。結局、人はそれで動くと。私たち日本人はついそこに気がつかないまま、文化とか、交流とか、感動を分かち合おうとか、そっちの方に話が行ってしまうんですけれども、やはり経済性というのはとても大事なことだと思います。
 中国の若者たちがしようがないから話を聞こうじゃなくて、業者もしようがない、エクスキューズとして話を聞こうというのではなくて、真剣に聞いてくれるようになったきっかけを体験いたしました。
 それは、著作権をちゃんとしておかないと、将来あなたたちが著作権者になったときにこれだけ損をするのだ、という話し方でアプローチしてからですね、知っておかないと儲け損なうということは大変なことなんです。本当に、例に出す言葉が下品で申しわけありませんが、とても説得力がありました。
 ですから、著作権について各国の方に来ていただいて、知っていただくときに、経済性を強調して、将来あなたの国が得るかもしれない膨大な利益をつかみ損ねないためには、著作権をしっかり勉強しましょうという方向に持っていった方が効果が上がるような気がいたします。
 ですから、日本作成のハンドブックとか、そういうのがどんなものか勉強不足で存じ上げませんが、知っておかなければこんなに損をするという、何かそういうつくり方で、楽しく作成することはできないかなとふと考えます。
 著作物が違法コピーされる場合に、有名な笑い話がありまして、中国に行きますと、映画館の表の屋台で、今その映画館で上映している映画のDVDが売られていると。お客さんにとって安くても中身がわかればいいという人がたくさんいるわけですね。そういう人がいる限り、やはり品質は悪くて粗悪な違法コピー商品が絶えないと思います。
 ただし、よい品質で、それと価格がイコールして納得できるのであれば、だんだん買い手の方が二分化してくると思うんですね。そこに期待するしかないと。そんな日のためにも、我が国としては、我が国オリジナルの文化の原版は絶対に外に出さないと。外に出さないって言ったって、コピーして持っていけば終わりじゃないかということのために、違法コピーができない技術に対してお金を惜しむべきではないし、税制上の優遇措置もするべきではないかと思っております。原版は国内から出さない。これはこういう映画とかアニメとか音楽だけではなく、その他の重要な我が国の誇る文化資産といってもいい最新の技術がありますよね。そういう金型にしても絶対に国外に持ち出さない。その努力をしている企業に対して、もう少し税制優遇措置を。
 つまり世界の工場といわれている中国で、人件費が安いからといってどうしてもそっちにシフトしてしまう。そして、国内で、例えばネジ1個にしましても、本当にその型というのは大事なわけです。この国の文化と技術と努力の結晶です。それを守るべき企業を、どうもそんなに優しく扱ってこなかったような気が、思い過ごしかもしれませんがしています。そういうことが文化に対してもあるのではないかと。
 ですから、今後は違法コピーを手に入れたがる、粗悪でもいいけれども、違法コピーを手に入れたがる客と正規の料金を払ってでも品質のいいものを手に入れたがる客の二分化を見込んで、原版の確保ということに力を注いでいくことが大事かなと思っております。
 創作者の苦労をわかってくれ、そのために金を出してくれというのは、絶対にわかっていただけない理屈です。ですから、中身の素晴らしい品質、粗悪でないちゃんとした正規のコピーですね、変な言い方ですけれども、それを国内でしかつくれないように、何らかの方法を考えるようにしていければと思っております。

道垣内主査 はい、ありがとうございました。
 それでは、引き続いて菅原委員。

菅原委員 菅原でございます。海賊版の問題というのは、これは恐らく結論は出ない。国内であっても、常に継続をしていかなければいけない問題ではないかというふうに思います。
 ただ、海賊版が先ありきではなくて、文化的な意味での裏づけとなる著作権制度ができていればまずいいであろう。そこに大きな問題として、現象として海賊版というものがあるので、それをどうしようかということだと思います。そこをまずもう一回整理する必要があると思います。
 特に、アジアというふうに考えますと、今文化的な面も含めた、制度といいますか、環境といいますか、それができていないので、どうやってつくっていったらいいだろうかと言うことであろうと思います。
 それから、例えば日本が知財立国で情報発信ということが今うたわれているわけですけれども、そのときに双方向でアジアの文化をどう取り入れるかというのは必ずあるはずだというふうに思います。
 そうしますと、各国で、日本で言っているような創造のサイクルというものは各国レベルでどうできていって、それが彼らの文化面、経済面、どういうふうに貢献できるか、ということが少しずつでもわかってくれば自ずとそういう方には行くはずなんです。その上で、これは同時的かもしれません。国際的な中での、海を越えたといいますか、もう1つ大きな創造のサイクルというものをどうつくっていくか。というような視点が必要ではないかというふうに思います。
 そうしますと、この海賊版の対策といわれていること、これは継続してさらに重ねていかなければいけないんですけれども、文化庁でも行われているAPACE、その他の対応と同じように、もうちょっと現場的に、彼らがどう権利を守り、そのことがその国の文化の創造に貢献していけるのかというところを日本もまだ進めていこうというところですが、一緒にどうやって行けるのかという視点で話が進められると、もうちょっと彼らも取り入れやすいといいますかわかりやすいのではないかと。常に彼らが罪人的な見方で、この海賊版ということになりますと、常にそういう見方、そうではないのではないか。その共有ができていくと、自ずといろいろ動いてくるのではないかというふうに思います。
 そのあたりは、実感として一部ですけれども、音楽の分野に限った話でございますけれども、例えばアジアでいいますと、管理している団体、これは許諾のシステムができているわけですけれども、それぞれで使われたものの使用への送金をするわけです。ここに来まして、昨年度、今年に入ったぐらいで中国の団体、あるいは台湾の団体から、大変送金額が増えております。
 このことは繰り返しでやってきた中で、やはりそういう利用されているものに対する評価というものも上がってきているでしょうし、もちろん彼らの管理能力が上がってきたということもあると思います。1つの実例ではないかと思います。
 それから、もう1つは、アジアに限りませんが、日本の曲で何が一番使われるかと言うと、アニメの歌ですね。これは、アニメであっても、中に音楽が入っていますから、そこが管理のシステムの中で動くんですが、ヨーロッパ等から来るものでも圧倒的なアニメの曲というのが多いです。ということは、それはまず許諾システムに乗った形の放送で使われているということがあるわけですけれども、当然そうなると、そこの裏打ち、先ほど久保田委員がおっしゃったような、ほかの展開ですね。二次利用、三次利用の展開というものも考えられるわけですから、そういうものに対して、どう適正なものといいますか、そういうふうに持っていくかという視点があれば、これはまさに知財立国の情報発信、成果ということも出てくるでしょうし、それをやはりアジアが今環境がないとすれば、一緒に日本もなってつくっていくということではないかというふうに思います。

道垣内主査 どうもありがとうございました。
 大楽委員、お願いします。

大楽委員 先ほど、田中専門官からご紹介のあったAPACEプログラムの一部にお手伝いを少しさせていただいた経験からいたしますと、2つのことが、今私は気にかかっておりまして、1つは研修に関してなんですけれども、いろいろな形で、研修、またはセミナーというのが提供されているんですけれども、研修に関しては、どうやって効果を検証するかという問題があるかと思うんですが、1つは、入り口のところで、参加者の方たちの人選というのが非常に難しいのがあるのかなと、実際に拝見していて思います。
 中には、ご自分の国のカントリーレポートを一生懸命英語につくってこられて、一生懸命読んで、自分の役目は終わったというふうな方たちもいるんですね。そうしますと、その研修の部分についても、それから第2点、その意識向上についても、自分たちの問題だという認識を共有してもらって初めて効果が上がったと言えるんじゃないかと思うんですけれども、自分たちの問題になる前に、役目が終わりというのではちょっと困るなと。
 ですから、言語の能力というのを人選のときに、どういうふうに条件づけるか、そこは難しいかもしれないんですけれども、せめてディスカッションがある程度できるということを条件につけていただいたらいいのかなという気がいたします。
 それができれば参加者の中で、たとえ10人でも問題点、それから著作権の法的問題についての意識をそこで共有できると。各国間の違いについても考えることができるということで、随分効果が上がるのではないかというふうに思います。
 それから、2番目に、各国からお一人ではなくて、丸ごとある国からお呼びしたらどうかというご提案がありましたけれども、私もそれには賛成です。各国からお一人ずつ、ないしは何人かずつというのもいいんですけれども、例えばほかの団体のところで見たことがあるんですけれども、ある国の最高裁の判事をかためて十何人呼んでしまうと。一体その間、最高裁はどうなっていたのかと心配なんですけれども。
 それでそういうふうにいたしますと、どこがいいかと言うと、私がお目にかかったのは、タイと中国とそれぞれ1カ月だったと思うんですけれども、その国の言語をお話しになる通訳の方をつけられるんですね。そうすると本当に、いや実は私の持っていた事件ではこういうところがあって、すごく困ったんだというようなことで、その参加者相互の間で、情報交換が始まって、ああ、そうか、そういうふうに考えればよかったんだと。そこでわかっていただいても遅いかなという気はしないでもないんですけれども。
 そういうふうに、言語の問題がそこで1つクリアできるということと、自分たちの知見をさらに深められるという点では専門家、例えば判事をかたまりで呼ぶというようなこともいいかなという気がします。
 3番目に、研修の効果の検証としては、フォローアップをどうするかということで、それについては文化庁さんの方でもいろいろ具体的に今お考えのようなので、例えばフォローアップのための補助金などの制度を整備するというようなことをお考えのようですので、何らかのフォローアップ、そして実際にただ参加したということではなくて、その後、花がそれぞれの国に咲くように、そのルートを何らかの形で実現していくということも必要かなと思います。
 第2点として、現地、各国での意識向上をどうお手伝いできるかということなんですけれども、いろいろな国の代表者の方から国内の事情についての報告をいただくと、一番最後に必ず問題になるのは、アオヤネスレイジングという、意識の向上という意味なんですね。そういうことを考えますと、最終的には各国の庶民レベルの方たちに著作権の問題は自分たちの問題だと考えてもらうようになるためにはどうしたらいいのかということに帰着するように思うんですが、そのためには、例えば研修の参加者、または現地での国内セミナーでも、リジョナルセミナーでもいいんですけれども、そういうところへの参加者からさらに一般市民へ伝わるときのその温度を、なるべく高いままの温度で伝えてほしいなという気がするんですね。
 今年の1月にたまたま田中専門官とご一緒させていただいて、インドネシアで、あれはユネスコの関係の、正式な名称を忘れてしまいましたけれども、日本の部会のところでスポンサーになられたと思うんですけれども、APACEプログラムの一環なんでしょうか、アジア諸国の著作権教材の開発というところのインドネシア版に同行をさせていただいたんですけれども、そこでは主に出版業界の方たちが集まってこられて、100何十人体制だったかと思うんですけれども、それでどういうふうに一般の人たちに著作権思想を普及させるかというので、そういう現地の関係者の方たちがご自分たちでワークショップをすると。ワークショップに同席させていただいて、そのときはこういうふうにしたらいいんじゃないでしょうかということをちょっとお話をさせていただくというような役割だったんですけれども、そうするとご自分たちが抱えている生々しい問題がいっぱい出てきて、現地での問題は何なのかというQ&Aをつくっていくという作業で、現地化ができる、問題の現地化と意識の共有化とそれから例えばインドネシアの場合だと、田舎にその著作権思想を普及させるためにはどうしたらいいか。それには長老を使う方がいいんじゃないかとか。独特な現地のチャンネルというのが出てきて、私はとても感動したんですけれども、ですから、現地の情報チャンネルを使うということで、現地化をするということもあるのではないだろうかと思います。
 もう1つは、自分たちの問題と考えていただけるようになったとしても、簡単な、契約のためのフォームというものがあればもっといいのかなと。取締りも大事なんですけれども、菅原委員がおっしゃったように、何か許諾のシステム、メカニズムができていていると、それにすぐに接続させて乗っけていくということができるのかなと。
 とりとめのないことをお話しいたしましたけれども、2つ。

道垣内主査 ありがとうございました。
 それでは、中村委員、お願いいたします。

中村委員 中村です。こうした対外的な問題というのは、私は大きい対策を単独主義を廃して進めることが必要だと思います。
 その観点で3つ申し上げたいんですけれども、まず第一は、政府一体となった取組みを進めてもらいたいということです。
 こうした問題に対して、経済産業省あるいは外務省などが前向きに取り組んできているのは非常に望ましいことだと思いますので、そうした関係省庁の中の間の連携をより推進していただいて、日本国全体として対応していただきたいというのが1つ。
 それから、2つ目は、同じように、対外的な文化発信というのは、政治的な環境と非常に強くかかわりますので、これも先ほど話がありました中国の基本的な関係が悪いと先方の対応も期待できないことがあるということです。
 政治や国会、政府との連携というものが大事ではないかというふうに考えます。今、先ほど司法との関係も出ましたけれども、政府と与野党との連携というものをこの観点で推進してもらいたいというのが2点目です。
 3点目は、データの整備です。こうした運動のもとになる統計やデータというものが不足していると思います。市場とかあるいは利用の実態について、政府としての関連のデータ、統計の整備や調整というものを急いでいただきたい。意見はこの3点です。

道垣内主査 ありがとうございました。
 はい、橋本委員、お願いします。

橋本委員 先ほど来、お話がいろいろ出ていますけれども、韓国とか台湾について言うと、ドラマ、映画に関して、またそれに使われている楽曲も含めてだと思いますけれども、彼らサイドでの意識というものが相当の高まりを見せていてます。ご存じの方も多いと思いますけれども、彼らが日本で提供を始めている作品の権利利用料の高騰は本当は大変なものです。数年前と今を比べると、大分アジア諸国の中でも日本のマーケットに進出をしてきたという思いがある国において、意識レベルが変わりつつあるんじゃなかろうかと感じております。
 先ほど、里中委員からもご指摘があったように、必要性を認識した人は急速に意識を高めているのだということにも通じると思います。
 そういう文化交流というよりは、事業としてコンテンツ流通、彼らが制作したものが日本国内で流通を開始しているということは、もちろん日本国内で流通するときには、きちんとしたルートできちんと流通しているわけで、こちら側の話に耳をかたむけてもらう環境が、相当整ってきているというのが私の意識です。したがって、これまで継続されてきた努力をきちんと継続していただきたいなということと、あともう1つあるのは、日本でも実はそうだと思うんですけれども、ちゃんとした人たちが眉をひそめて、ちゃんとしていない人たちを苦々しく思っている、そういう実態も一方であるわけです。
 私は、いつも映画館で映画が上映される前に、違法コピー、海賊版に対する非常に強烈なメッセージ性のある1、2分のものが流れるのを見ているわけですけれども、もう一歩進んでの通報制度が必要です。眉をひそめているだけから、実際に「あそこで見たあれはやっぱりおかしいんじゃないの」と思っても、普通の人はどうすればよいかわからないのが現状です。
 ひょっとするとそういう通報制度というものがあるのかもしれないんですけれども、もしあるんだったら、それをもっと活用されるように努力をする。あるいは、もしないのであれば国際規模で、そういう何か、心ある善意の人が、ここでおかしいことが行われているということを、きちんと通報してもらうのがよい。何となくあまり気持ちのいい話ではないかもしれませんが、それが文化的価値を破壊している海賊版、あるいは違法コピーというものを駆除していくことに多大な貢献をするという可能性もあると思いますので、1つ、私のアイデアとしては、そういう通報制度を作って、善意の国民一般、あるいはアジア諸国にもそういう方がたくさんいらっしゃると思いますので、そういう人たちの行動に期待することも検討したらいかがでしょうか。

道垣内主査 はい、ありがとうございました。
 浜野委員、お願いします。

浜野委員 1つは、里中先生もおっしゃったんですが、権利を持っている人から、その国の中から権利者に声を上げてもらうのがいいのではないかと思います。
 1分1秒でも早く欲しいというニーズをくみ上げて、海賊版というブラックマーケットができているという面もあります。そのため日本の流通が整備されていないという証拠です。
 そういうものを欲しがる人々を説得するというのも必要ですが、欲しいという欲望そのものは消しえませんから、それを打ち消しては元も子もないので、それだけでは解決しません。
 昨年アニメーションの会社の社長とプロデューサーが、日本に研修に来られたときに、海賊版のデータを見せて、その国ででているのはほとんど海賊版なので、「すごく日本は困っている」と言ったところ、「我々はもっと困っている」と言っていました。アニメーションについては日本の作品ほど人気がないので海賊版は出ないが、実写映画は日本映画以上に競争力があるため、海賊版に悩まされていて、本当に困っているとのことでした。日本人以上に資本主義的な人たちですから、権利侵害に敏感でした。
 ですから、プロデューサーとか作家などの権利者と協調して声を上げ、また権利者としての意識を持っていただくのが一番手っ取り早いし、効果的ではないかと思います。そういう方々は文化人ですから、国内での発言力もあるでしょうから。
 2つ目は、上原さんから出たのですが、値段を安くしても問題が解決しません。中国での「クレヨンしんちゃん」の海賊版に手を焼いた双葉社が、2年前に海賊版を駆遂するために海賊版と同じ値段で作品を出し、キャラクターライセンスを出しました。しかし数年前に登録商標をとられていて、「クレヨンしんちゃん」の正規版は全部違法版だということで、撤去命令が出ました。あらゆる手段で違法なことをやります。面白い作品が出るたびに登録商標で押さえられてしまったら、正当なビジネスなど成立しません。「クレヨンしんちゃん」の事件がどう決着したのか私知りませんけれども、一私企業が外国の政府に対して法律を変えろと訴えるのは難しいので、ぜひそういったことも考えていただきたいと思います。さらに海賊版より悪質なのは、オーバープレスの問題なども絡んできます。契約本数の何倍、何十倍という商品が、本物の姿をして出てくるわけですから、データにはのらない海賊版となります。久保田さんのおっしゃるとおり契約の制度とか、あらゆるところでもう本当にミスをつかれているので、そういうこともどうするのかというのをぜひご議論いただきたいと思います。

道垣内主査 はい、ありがとうございました。
 福王寺委員、お願いします。

福王寺委員 きょう初めて出席させていただきまして、先日、この会議の文化審議会著作権分科会報告書の中で、フォークロアの保護について書いてあるところがありまして、興味深く読みました。文化というものの中で、いろいろなことがあると思います。今問題になっている海賊版にしてもそうですが、先日の文化審議会の中で、文芸の三田誠広先生がおっしゃったことがありまして、サン・テグジュペリの「星の王子さま」が日本で出版されていますけれど、海外では70年の著作権の期間があって、日本では50年ということですよね。それを著作権の期間の国際統一をまず解決しなければいけない問題ではないかと思います。
 先日もJASRAC(ジャスラック)の事務所で、非公式ではありますけれども、音楽の方と文芸の方とそのオフィスの方で話し合ったんですが、そういったことも大事なことだなと思います。
 僕は美術の作家なんですけれども、美術家連盟といって約5,200人の会員がおりまして、日本画、洋画、彫刻、版画とそれぞれの作家が集まって、美術家の職能擁護を目的として活動しています。理事長は吹田文明先生です。僕自身は、日本画を描いています日本美術院に出品しておりまして、その院展の理事長は平山郁夫先生で、芸大の学長をされたり、中国や韓国の方でもいろいろな事業をやってらっしゃっております。作家として今後、意見を述べさせていただければありがたいと思います。
 先ほどのWIPOの会議や研修会、セミナーシンポジウムについても、文献ではわかるんですけれども、プロジェクターのようなもので、映像で説明していただくと、とてもわかりやすいかなというふうに思いました。
 以上です。

道垣内主査 はい、ありがとうございました。
 前田委員、お願いします。

前田委員 前田です。私は海外の海賊版対策では、権利行使のコストパフォーマンスをよくすることがぜひとも必要だと思います。
 この点について、先ほど後藤委員からもご指摘がありましたけれども、産業財産権の侵害と著作権の侵害とでは異なる点があると思います。産業財産権の場合は、1つの権利が大規模に侵害されるという事件が発生しますけれども、著作権侵害の場合には合計すれば大きな損害額となるけれども、多数の権利者の権利が少しずつ侵害されている。したがって、1つの権利侵害あたりの被害額が産業財産権侵害のケースと比べると小さい。
 そのために、権利行使のパフォーマンスをよくしなければ、なかなか権利行使が進まないという、そういう点があると思います。  そのために、後藤委員からもご紹介がありましたけれども、CJマークという商標権を絡めることによって海賊版対策をより効率的にやるやり方。それから、コストが安い刑事事件、民事と比べれば刑事事件の方のコストのほうがやすいから、刑事事件の方を多用するやり方。それから、多数の権利者が共同して権利交渉をするやり方というように、工夫がとられているわけですけれども、どうしても民事でやらなければいけない場合もありますので、この民事での権利行使に対する政府の具体的な支援が期待されるところではないかと思います。以上です。

道垣内主査 ありがとうございました。
 増山委員、お願いします。

増山委員 増山です。手短に申し上げます。
 この海賊版対策につきましては、今の政府の方針には全く賛成でございますが、それを実施する段階で、いわゆるワーキングレベルで、工夫する余地がまだいろいろとあるのではないかと思います。
 先ほど、大楽委員からもご指摘があったように、例えば研修生を受け入れるときに、どのような人に研修をさせた方がいいのか、正しい相手方候補者を選ぶことが非常に重要だと思います。
 また、専門家派遣プログラムに参加して相手国へ行って、その国の著作権制度あるいは法整備の話をする時も、著作権法の話だけではなくて、海賊版対策はどうしたらいいのか。あるいは現地の情報というのもある程度収集して、対策強化に生かすことも可能かと思います。
 また、浜野委員がおっしゃったように、資料6−1を見て、こういう侵害状況の中で、例えば中国で85パーセントというのは、これは決して、全部日本のコンテンツではない、現地の権利者が侵害を受けて、実際に被害にあった事例もたくさん含まれているかと思います。従って、日本の権利者と現地の権利者がいかに連携を図って、ともに海賊版対策を強化していくことも、検討する意味があります。その横の連携を図るときに政府はどのような支援をすることができるかということも検討していくことができるのではないかと、思います。
 あと資料6−4なんですが、このTRIPS協定について、2001年中国加盟としか書いてありませんが、たしか台湾も中国に遅れた形でTRIPS協定に加盟しているはずだと思いますが、ご確認いただきたいと思います。以上です。

道垣内主査 どうもありがとうございました。
 皆さん方からのご意見をいただいて、本来、クロスで論点を深めていただきたいんですが、この会場は借り物の場所ですので、あまり長くはできないと思います。
 次回以降、この問題について検討する時間もございますので、事務局の方で、今いただいたものの中で論点を整理していただいて、詰めていけるようなペーパーを出していただきたい。それでよろしゅうございますでしょうか。
 それでは、議事の不手際でせっかくの議論の時間を十分とれなくて申しわけございませんでしたが、これで本日の議題は終わりますので、今後のスケジュールについて、事務局からご説明いただけますでしょうか。

事務局 冒頭、お諮りいたしましたように、第2回は8月24日著作権分会の前に、できれば委員の皆様方の夏休みとぶつからないように、開催させていただければと思います。

道垣内主査 はい、それではこれで国際小委員会の第1回を終わらせていただきたいと思います。どうもご協力ありがとうございました。
 何か連絡事項がありましたらどうぞ。

事務局 次回については、また改めてご連絡させていただきます。
 なお、本日は、昼食のご用意がしてございますので、お時間おありの方はご参加いただければと思います。
 本日は、ありがとうございました。

  午後 12時40分閉会

(文化庁長官官房国際課)

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